超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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 先日、ネプテューヌシリーズとは別の二次創作(短編)を二つ投稿しました。もし興味を抱かれましたら、読んで下さると幸いです。


第百八十話 見据える先

 負のシェアの城を覆う、空間の歪み…それを解くのに必要な要素は、三つ。まず、場所はもういーすんが見つけてくれてる。歪みの元?…に干渉出来る、そういう性質を持ってる別次元組の皆にももう話はして、勿論協力するって言ってもらえた。

 だから後必要なのは、力の増幅?…に使う、エネルギー源。それ用の、シェアクリスタル。作るのは、わたし達守護女神組と、ネプギア達女神候補生組でそれぞれ一つずつ。神次元の皆も、作ってくれるって話になったけど…それからまた少し話し合って、「二つの次元で同時に多くの女神が動けなくなるのは、一番不味い選択肢じゃないか」…って事になって、もう一つのクリスタルは最初の予定通り、二つ完成してからその後もう一つを…って事になった。急がば回レ!雪月花って言うしね!…えへっ、勿論ボケだよ?

 という訳で、今回はクリスタルを作ります!でも多分それ単体だと一話にならないから、他の話も入るんだろうね!

 

「ほらほらネプテューヌ。地の文で余計な話なんてしてないで始まるわよ」

「そうよ。もう相当な話数になってるんだから、これ以上冗長にならないようにしないと」

「おおぅ…ノワールもブランも息をするようにメタ発言してくるね…それがこのシリーズとはいえ、シュールというかなんというか……」

 

 本来なら邪道的ネタを王道の様に使う二人(いやわたしもだけど)の発言に、わたしは思い切り苦笑い。

 またでも、それはともかくとして…今回は、あんまりふざけてる訳にもいかないよね。もしも作るのが遅れたり、ミスっちゃったりしたら、最悪取り返しの付かない事になるかもなんだし。

 

「要領としては、普段シェアクリスタルを作るのと同じ。ただ、大型のものを複数人で作る以上は、慎重に、周りと歩幅を合わせるようにして精製していくのが重要…でしたわね」

「歩幅を合わせる…わたしはともかく、皆出来るー?」

『…………』

「あ、ごめんなさい。普通に嘘です、冗談です…」

「一番それとかけ離れた貴女が言うんじゃないっての。…けどまぁ、緻密な作業で歩幅を合わせるっていうのは、実際難しい事よね」

 

 「は?」…って言いそうな目で返されたわたしは、しゅんとしながら反省。するとノワールが片手を腰に当てて、少し難しい顔をしながら言う。

 それは、ほんとにそう。プロセッサユニットみたいにすっと自分と繋がってるとか、エクスブレイドみたいに短時間持てば良いものとかと違って、シェアクリスタルはシェアエナジーとしての性質を保ったまま、高密度で状態を固定しなきゃいけないものだから、実は結構作るのが難しい。一人で、ポケットに入れられるサイズのを作るなら、慣れたものだけど…今から作るのは、その何倍、何十倍のサイズになる。

 

「まあでもさ、本当に強い相手との戦いで、完璧に連携技決める事に比べれば、まだ楽じゃない?少なくとも、ミスしたからって即命の危機に繋がる訳じゃないんだし」

「いや、それとこれとは…と、思いましたけれど…確かに総合的に見れば、こちらの方が楽、というか心に余裕はありますわよね。要は、見方次第…ってところかしら」

「少なくとも、後ろ向きに考えているよりは、前向きに考えた方が精神的には良いのは事実ね。…そろそろ、始めましょ」

 

 ブランの言葉にわたし達は頷いて、女神化。前にやった四神封晶の時と同じような立ち位置になって、中心に向けて手をかざす。普段なら、シェアクリスタルの間の方が作り易いけど…四人で合わせる今回の場合、その国のシェアエナジーに満ちてる場所はむしろバランスを崩す要因になるからって事で、今わたし達がいるのはプラネタワー内の広い場所。

 

「…皆、準備は良い?」

 

 呼び掛けて、三人がそれに応じてくれて、精製開始。わたし達のシェアエナジーを集めた、巨大なシェアクリスタルの精製がこれから始まる。

 途中でミスをしたら、精製に失敗したら…なんて、思わない。出来ると信じる事、自分に自信を持つ事。…それが、成功の秘訣だもの。

 

 

 

 

 ネプテューヌ達の務めは、シェアクリスタルの精製に集中し、確実にクリスタルを作り上げる事。その為に私達がするのは、何かあった時に対応する事と…何かあっても私達がいるから気にする必要はないって、そう思ってもらう事。…まあ、後者は今から何か出来る事でもないんだけど。

 ともかく、そんな待機・警戒担当になったのは、私、オリゼ、元気を取り戻したうずめに…そして、セイツ。もう信次元は…ううん。最初から信次元は、わたしにとっての『別次元』じゃないんだもの。…そう言ってセイツは、協力を申し出てくれた…というか、何かしらさせてほしい!…と意気込んでいて……結果、私達四人が担当となった。

 

(こうしている間にも、次元の衝突は近付いている。ここまでは一歩一歩、何も出来ずに足踏みする時間があったとしても、何とか進んできた私達だけど…それを回避出来なきゃ、全部が終わる。…訳だけど、あんまり実感、ないな……)

 

 毎回恒例(?)の様にリーンボックスでの待機となった私は、教会の建物の外に出て、ぐるりと空を見回す。

 衝突が近付いていると言っても、見える景色はこれまでと変わらない。街並みも、人の往来もこれまで通りで…むしろ人の往来に関しては、いよいよほぼ元通りだとすら思える。…嬉しいし、だからこそ守りたい。守らなきゃいけない。戻りかけた日常を、戻りかけたで終わらせない為に。

 

「あれ?イリゼー、何してるの?」

「あ、大きいネプテューヌ…私は散歩って程でもない、軽い気分転換かな。そっちは?」

「わたしは運動だよ。流石にここまで来るとゲームも健康的なレベルでしかやる気になれないし、いざって時に身体が鈍ってました!…じゃ洒落にならないからね」

「健康的なレベルではやれるんだ…まあ、ずっと気を張り詰めてちゃ身が持たないだろうけど……」

 

 教会の裏手側から出てきた大きいネプテューヌと、私は遭遇。軽くストレッチをしながら答える大きいネプテューヌの言葉に、私は乾いた声で苦笑い。…因みに、ただのストレッチだけでも揺れる。何がとは言わないけど、揺れる。

 

(…っていうか、太腿とかちらちら見える手首とかも綺麗だよね…ネプテューヌもそうだけど、ズボラなのに綺麗なんだから凄い……)

「……?あれ、どしたのイリゼ。…えっ、まさかここに来て恋愛フラグ!?」

「あ、ち、違うよ!?ちょっとジェラシー的なのを感じてただけだからね!?」

 

 本気なのか冗談なのか、とにかくそう言って自分を守るように両腕を自分の身体へと回す大きいネプテューヌ。そんな事を言われたら軽く返せる訳がなくて、私はぶんぶんと首を横に振る。

 次に向けられたのは、「ほんとに…?」という、雰囲気だけはそれっぽい瞳。それに私は、「違う違う!」…と重ねて否定し…それで誤解は解けた。というか大きいネプテューヌは満足したみたいで、だよね〜と普通に返してきた。

 

「ごめんごめん、ちょっとふざけちゃった」

「だとは思ったけどさ…もう。……運動って、走ったり跳んだり?」

「うん、そうだよ。わたし影分身とか出来ないし、多分影分身同士でやっても複雑な気持ちになるだけだろうし」

「まあ、だよね。…だったら、付き合おうか?」

 

 そう言ってわたしが小さく笑みを浮かべると、大きいネプテューヌはきょとんとした顔になり…それから元気良く頷いた。

 これは、私としても悪い選択じゃない。待機…つまり何もなければ待っているだけだから、自然と手持ち無沙汰にもなる。それに、軽い運動なら途中で何が起きても大丈夫だろうから……私達は、早速二人で運動を始めた。

 

「いっちにー、さーんしー」

「かーつらー、さーんしー……師匠」

 

 何故に某六代目の襲名前の名前を…?…と思いながら、私達は準備体操。背中合わせに腕を組んで、背中に乗せ合いながら身体を伸ばす。これ、相手の背中に乗って身体を伸ばしてる時、「んっ…」って吐息が漏れそうになるよね。

 

「…ねぇ、大きいネプテューヌ。ネプテューヌは…結局どこまで知ってたの?」

「どこまで、って…?」

「くろめの事、だよ。くろめの事、うずめの事…本当は全部、知ってたんじゃないの?」

 

 他にも色んな準備体操やストレッチをする中で、私は大きいネプテューヌへと訊く。根拠はあるかと言われれば…ない。でも私には、幾つか訊きたい事、気になる事があって…折角二人きりなんだから、訊こうと思った。逆に言えば、ただそれだけ。

 

「…そう思う?」

「訊いてみてるだけだよ。そうじゃないならそうじゃないでいいし、そうだとしても、だからどうする…って話でもないから」

「そっか。…くろめは秘密主義っていうか、あんまり必要以上の事は教えてくれなかったからね。雑談の時も、今思えば当たり障りのない事しか言ってくれなかったっていうか……」

「…でも、友達として大切に思ってるんだね」

「それはそれ、これはこれだよ。…うん。思いってさ、単純じゃないよね…」

 

 まぁね、と言うように大きいネプテューヌは軽く笑い…それからふっと、遠くを見るような目に変わる。

 思いは、単純じゃない。それは、私もそうだと思う。敵なら皆嫌いになる訳じゃないし、味方でもただそれだけで肯定出来るって訳じゃない。思いっていうのは複雑で、厄介で、時には自分自身の思いすら分からなくなるもので……

 

「…そうだね。でも…だからこそ、相手を思いやる事が出来たり、分からないなりに理解しようとして…それで少しでも繋がる事が出来たら、嬉しいと思えるんじゃないかな。心は複雑だから、分かり易くなんかないから」

「…だよね。んー、やっぱりこういう事は女神様が言うと違うなぁ」

 

 単純なら、皆同じなら、思いやる事も理解しようとする事もないと思う。だって、そうする必要がないから。そして、分かって当然なら…繋がれても、そこに幸せな感情は生まれない。きっとそういう世界は誤解も、不理解もないんだろうけど…そこには繋がりの温かさも、ない気がする。そしてそんな世界は…私は、嫌だ。

 

「ふふっ。じゃあさ、続けて訊いてもいい?」

「ばっちこーい!」

「いや運動部じゃないんだから…こほん。…ネプテューヌは、ネプテューヌとしての望みは、何?くろめを止めた先で、皆に求めているのは許しなの?」

「ううん。くろめを許してほしくないって訳じゃないけど、ただ許されるのも違うと思うの。わたしは基本、皆幸せならそれで良いじゃんってタイプだけど…それでも、ね」

 

 発した言葉と共に、大きいネプテューヌが浮かべる苦笑い。それは呆れている、というより複雑な感情が籠ったような苦笑いで…その言葉に、その表情に、私は「あぁ、やっぱり」と思った。そう感じたから…もう少し、踏み込む。

 

「つまり、ただ悪として討つんじゃなくて、きっと何か事情があったんだよねって寄り添うのでもなくて…ちゃんと、真っ向から否定を、駄目って言葉をぶつけてほしいって事で合ってる?」

「うんうん、そんな感じ!やっぱり悪い事は悪いって言われるのが一番だよ。…って、そう思うならまずわたしが言えって話だよね、あはは…」

 

 再び浮かべた苦笑いは、今度は自分に対して呆れたような、普通のもの。肯定した事、その表情…そして何より返ってきた言葉で、私の中の「やっぱり」は確信に変わる。だから私は、自然な動きのままに大きいネプテューヌの方を見て、少しだけ頬を緩めて……言った。

 

「大丈夫、私はちゃんと否定をするよ。駄目だって、言葉をぶつける」

「ありがとね、イリゼ。イリゼならそう言ってくれると思ったよ」

「そりゃ言うよ。だって……そう頼まれるのは、二回目だからね」

「──ぁ……」

 

 その瞬間、そう言った瞬間、大きいネプテューヌはぴたりと動きを止めた。私を見て、目を見開いていた。

 それは、その反応は、肯定と同義。私の思っていた事、予想していた事…それが正解なんだと、大きいネプテューヌの反応は示していた。

 

「…いつから、気付いてたの?」

「私も気付いたばっかりだよ。オリゼと一緒に倒したダークメガミ…そのダークメガミから漏れていたのは、私が…あの時、あの場所で、私達が倒した異形の巨人を覆っていたのと、恐らく同じものだったからね」

「あー……もう、困っちゃうなぁ。あの時も勝手にとんでもない事してくれたし、今回もだし…」

 

 軽く肩を竦めて、私は理由を伝える。正直、ダークメガミの段階じゃ「そう思う」の域を超えていなかったけど…大きいネプテューヌと話してそれは確信に変わり、ネプテューヌの反応で証明もされた。あの時の元凶…その正体は、何なのかが。

 

「…それじゃあ、どうするの?流石に一刀両断!断罪!…されるのは嫌だけど、パンチ位ならノーガードで受けるよ?」

「そう?だったら……」

「へっ?あっ、ちょっ…ま、待って!やっぱり歯を食い縛る位の事はさせて!女神パンチを諸に受けたら『ぐふぅ!』とかじゃ絶対済まないからぁっ!」

 

 ならそうさせてもらおうかな、とばかりに右手を引き、地面を踏み締める私。すると案の定、大きいネプテューヌは目をぱちくりとさせ…それからびびった。それはもう青い顔をして、ぶんぶんと首を横に振って。だから、私はそれをばっちり眺めた後…言う。…なーんてね、と。

 

「ふぇ…?…ちょぉっ、冗談キツいってー!」

「いや、それ位の事をされたのは事実だからね?」

「うっ…それはそうだけど……」

 

 言い返せず肩を落とす大きいネプテューヌに対し、私はまた小さくにやり。それから咳払いを一つして、少し真面目な表情で見やる。

 

「それに、私はもう大きいネプテューヌと友達だし、ネプテューヌがどういう思いで行動してきたのかもある程度分かってるから、これ以上の事は言わないけど…もしも皆に会う機会があったら、ちゃんと謝ってよ?」

「それは、うん。悪い事は悪いって言われるのが一番だし…悪い事は悪い事として、反省もしなきゃいけないもんね」

 

 そう思ってくれているなら、心配はない。それこそチョップ位はされると思うけど、皆も最後は許してくれると思う。

 むしろ、頑張らなくちゃいけないのは私達の方。条件を全て満たして、空間の歪みを何とか出来たとしても、それはこっちの方から決戦を仕掛けられるというだけで、結局は勝てなきゃ同じなんだから。

 

「…勝つよ。私は、私達は…絶対に、ね」

「わたしも、最後まで協力するよ。なんたって…わたしもネプの名を持つ者だからね!後普通に、くろめの件はがっつり関係者だし!」

「ネプの名って…まあ、だよね」

 

 100%冗談なんだろうけど、その冗談の中に本気の思いが籠っている事は間違いない。私もそう、大きいネプテューヌもそう、皆だってそう。一人一人の思いはちょっとずつ違うとしても……皆本気で未来を、これからも続いていく信次元を望んでいる。だから…頑張るんだ。思いを、最後まで…貫くんだ。

 

 

 

 

 

 

「……ところでさ、さっきからずーっと準備体操ばっかりだけど…何する気なの?」

「…えっと……ず、ズクダンズンブングン……」

「うん、絶対今考えてなかったから適当に言ったね?それを本気でやったら、多分途中で二人して『何やってるんだろうわたし達…』ってなると思うよ…?」

「だよね……」

 

 

 

 

 むかーしむかしではなく、普通に現代。わたし視点では一応過去に当たる場所。ここ、信次元という次元には、女神のわたしと、人間のわたしがいました。女神のわたしは、シェアクリスタルを作りに、人間のわたしはリーンボックスに行く事になりました。そして……

 

「未来から来たでお馴染み、ミラテューヌこと未来のわたしは特に何もせずプラネタワーにいるのだー!はーっはっはっはー!」

 

 ソファに深ーく座って!ジュースを持って!のーんびりする!なんという幸福!女神的には凄まじく背徳的だけど激しく幸福!いやぁ、全く好環境過ぎて……

 

…………。

 

………………。

 

「…駄目だ、普通に心が痛くなってきた…うぅ……」

 

 普段は楽したい筈なのに、いーすんの目を盗んでぐーたらする術を探しているのに、いざそれが存分に出来るとなると心が痛んじゃうこのわたし。…いや、今の場合はまた別の理由もあるけどね…?皆がそれぞれやる事をやってる中で、自分だけぐーたらするのは、っていう痛みだからね…。

 

「ねぷちゃーん、一人で何喋ってるのー?」

「おわぁ!?あれ!?ぷ、ぷるるんいつの間に!?」

 

 突然ソファの後ろからかけられた声に、わたしはびっくり仰天。あ、危なっ!コップの中のジュースが残り少なくなってなかったら、零してた可能性大だよ…!?」

 

「え〜?えっとぉ…今日あたしはまず起きてぇ、ベットから降りてぇ……」

「あ、ごめんやっぱりいいや…多分そのペースで考えてると、いつなのか分かるまで結構かかりそうだから…」

「そっかぁ。じゃああたしも、考えるのいいや〜」

 

 ぷるるんはそう言いながら、わたしの隣に座ってくる。…基本、隠密行動には向かない…っていうか絶対苦手な筈なのに、偶にぷるるんって気付けばそこにいる的な事あるよね…。天然だから…?天然だから周りの雰囲気に自然に溶け込んで、逆に気配が消え去る的な…?

 

「それにしても、暇だよねぇ…」

「うん、ぶっちゃけ暇だよね…今日は天気良いし、外に遊びに行きたいところだけど…」

 

 暇だね〜、と二人して小さく溜め息。でも別にわたし達はサボってる訳じゃないし、こうしてるのにもちゃんと理由はある。

 今、もう一人の女神のわたしとネプギア達がシェアクリスタルを作ってる訳だけど、皆で大きいクリスタルを作る…っていうのは初めてな訳だし、最後まで想定通りにいくとは限らない。急に「あ、ごめんもう一人手伝えない!?」…とか、「ちょっ、一旦誰か代われない!?」…とかになるかもしれないから、わたしとこっちに来てくれたぷるるん(…聞いてないけど、向こうのいーすんのお説教から逃げてきたとかじゃないよね…?)がそれに備えて待機中。勿論、プラネテューヌには騒動が起きた場合を考えてうずめも待機してるけど…うずめはクリスタル作りなんて慣れてないだろうし、兼業はし過ぎると手が回らなくなる事があるからね。つまりわたしはだらけてたんじゃなくて、待機行動中だったのだ!

 

「これならピーシェちゃんに任せた方が良かったかなぁ…」

「それもどうだろう…ピー子って、何もせずじっと待ってるのは苦手だろうし……」

 

 ピー子は元々元気一杯で、多分考えるより先に動くタイプ。今は立派になって、このわたしみたいにクールな思考も出来るようになったけど、やっぱり性格っていうのはそう簡単には変わらな……え?わたしがクール?そうだよ、クールだも〜ん。女神化すればクール&ビューティなねぷねぷだもんねー。

 

「ねぷちゃーん、このお菓子貰ってもいい〜?」

「いいよー、食べて食べて」

「わーい。じゃあ、ジュースを飲んでいい〜?」

「もっちろん。あ、でもちゃんとコップに出して飲んでね?」

「はーい。後々ぉ、ほんとにねぷちゃんはずっと見てるだけで良いのぉ?」

「それはねぇ、わたしももどかしいところがあるけど…ってねぷぅぅぅぅっ!?この流れでっ!?この流れで、こんな三段オチみたいな感じにそれ訊くぅ!?」

 

 とにかく今は、待ってるしかない。そんな状況だから、わたしとぷるるんはほんわかしたやり取りを……と思いきや、恐ろしい程軽い調子でぷるるんは真面目な質問を突っ込んできた。あんまりにも自然な流れだったから、わたしも適当に答えかけて…で、ご覧の通り。いや…いや駄目だよ!?これはそんな、次はどれ食べようかなぁ…って選ぶ片手間で済ませちゃいけない話だよ!?

 

「えへへぇ」

「いや照れるところじゃないよぷるるん…ある意味凄いけど、それは駄目な凄さだから……」

「そっかぁ。…それで、どうなのねぷちゃん」

 

 のんびりした声音で言葉を返して、それから穏やかな声のまま…でも、ほんのり真面目にぷるるんは訊く。改めてわたしに、しっかりとわたしに。

 そう。言うまでもないと思うけど、わたしはここにバカンスに来たとかじゃなくて、ちゃんと目的が…自分の目で見て、確かめたいものがあったから来た。そしてそれは、待っていれば必ず見られる…とは限らない。わたしが何かすれば見られたかもしれないのに、何もしなかったから見られなかった…そうなる可能性だって、あると思う。でも……

 

「…うん、いいの。わたしが見たいのは、何かをして、行動をして、それで辿り着く『結果』もそうだけど…それと同じ位、『思い』も見たいから。結果には、わたしが何かすれば影響を出せると思うけど…思いは違うし、むしろわたしがノイズになっちゃうかもしれないからね」

「…なんだか、難しいね」

「そうでもないよ。ただ、主人公も偶には、舞台袖から物語の行く末を見たくなるってだけだから」

 

 難しいと言うぷるるんへ首を横に振って、もっと単純な事なんだよってわたしは返す。ただ見るだけなのに、そこまでする?…って思うかもしれないけど、わたしはそこまでする価値があるって思ってる。……あ、それはそうと、今の「主人公も偶には〜〜」…って台詞、ちょっと格好良くない?

 

「わー、急に台無しになった気がする〜。それと、思いって、セイツちゃんみたいな事言うんだね〜」

「え?あー…まあほら、皆と一緒に二つの次元を股にかけた戦いをした仲な訳だしね!わたしとぷるるんの間にシンパシーがあるのと同じように、わたしとセイツの間にもシンパシーはあるのさ!」

「おぉ〜!」

 

 ふふん、とわたしが胸を張ると、ぷるるんはぱちぱちと拍手してくれる。…我ながら別に胸を張る事じゃないと思うし、拍手される事でもないと思うけど…まあ、いっか。何となく楽しいし、ね。

 

「とにかくそういう事だから…わたしはわたしのしてる事に、不安や迷いはないよ。だから、大丈夫」

「うん、それならあたしも安心だよ〜。…あ、それとねねぷちゃん、もう一つ気になるんだけど……」

「うんうん、何かなぷるるん。やる事もないし、質問なら幾らでも答えて……」

 

 もしかしたら気にかけてくれてたのかな、と思って大丈夫だよと返すと、やっぱりそうだったみたいで、ぷるるんはにっこり笑う。それから話は変わるんだけど…って感じで、もう一つ訊きたいんだと言ってくる。それにわたしは頷いて、一体何かなと訊こうとして……ぷるるんは、言う。

 

「…二つじゃなくて、三つじゃないの?神次元と、ここと、それからうずめちゃんのいた次元…合わせて、三つだよね?」

「……あ…そ、そっか…ごめんぷるるん。うわぁ、わたし凄くレベルの低いミスをしちゃったなぁ…あはは……」

「…それとねぷちゃん、ピーシェちゃんの事もよく知ってるんだね。もしかして、未来でも今みたいに一杯会ったり遊んでたりするの?」

「……っ…それは……」

 

 じっと見つめる、ぷるるんの目。のーんびりしてるけど、実は割と周りも見てる、ぷるるんの瞳。その目から、瞳に映る感情からは、わたしにもあるものが見えてきて……

 

「ねぇ、ねぷちゃん。もしかして、ねぷちゃんって……」

「…流石だね、ぷるるん。でもそれは、胸の中に仕舞っておいてほしいな」

「…その方が、いいの?」

「そうしてくれると、わたしは嬉しい」

「…なら、そうするね。ねぷちゃんが嬉しいと、あたしも嬉しいから」

 

 ねぷちゃんが、そうしてほしいなら。…そう言うように微笑んだぷるるんを見て、わたしもにこっと笑顔を返す。

 やっぱりこういうのはわたし向きじゃないのか、それともぷるるんだからなのか。それは分からないけど…わたしは最後まで見届けるって決めている。それがわたしの目的で…願いでも、あるから。

 

「ありがと、ぷるるん。それじゃあお礼に、わたしが見つけた、凄く美味しいジュースの配合割合を教えてあげよー!」

「えぇ〜!いいの〜!?」

 

 じゃーん!…と複数のボトルを取り出して不敵に笑うわたしと、興奮の面持ちを見せるぷるるん。それからわたしはその割合でジュースを注いで、再びふふーんと胸を張る。

 こんなやり取りが出来るのも、今の内。準備が整えば、その後は決戦で……そこできっと未来も、結末も決まる。ハッピーエンドになるか、バットエンドになるか…それとも、勝てても誰かが悲しみの涙を流す事になるか。それは分からない、既にわたしの知ってる戦いとは離れてるんだから、分かる筈がない。…だけど、わたしは信じてる。皆なら絶対…皆が笑顔の、最高のハッピーエンドを迎えられるって。

 

 

 

 

 

 

……因みにその後、わたしが教えた割合でぷるるんが淹れたら、普通に不味いジュースだった。…ちょっと間違えたね、ぷるるん…。




今回のパロディ解説

・回レ!雪月花
機巧少女(マシンドール)は傷付かないのアニメ版における、エンディングテーマの事。急がば回レ!雪月花…何か、口に出して言いたくなりますね。

・「かーつらー、さーんしー……師匠」
落語家、六代目桂文枝こと河村静也さんの、桂文枝を襲名する前の芸名の事。…今更ながら、ほんとに私のパロネタは幅広いですね。何を自分で言ってるんだって話ですが。

・「〜〜ズクダンズンブングン……」
お笑いコンビ、はんにゃのネタの一つのパロディ。イリゼと大きいネプテューヌのズクダンズンブングンゲーム…ちょ、ちょっと見ていられないですね……。


 今回のイリゼと大きいネプテューヌのやり取りは、意味が分からなかった方もいると思いますが……これは、一つ前の作品に当たる、ORに関係する話となっております。これはストーリーそのものには然程関係しない事ですので、分からないままでも問題ありませんが、もし気になった方は、ORを読んでみて下さい。
 より正確にいうと、ORの本編とはまた別のストーリーでの話です。…これで分かって頂けるかな?…と思います。どうしても分からない方は、メッセージか何かで訊いて下されば、お答えします。

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