超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

214 / 234
第百八十二話 向かうは未来、その幕開け

 準備は、整った。決戦の為の…脅威を退け、次元同士の衝突を回避し、未来を掴む為の準備が。

 のんびりと過ごす者、可能な限りの準備をする者、普段の日課を変わらずに行う者…決戦の日、その前日に、全員がそれぞれの一日を過ごした。そして今…彼女達は、迎えている。決戦の日を。空間の歪みの無効化…その為の、作戦開始を。

 

「イストワールさん、ここで大丈夫ですか?」

「はい。最低一人いれば問題はありませんが、人数が多ければその分効果も高くなりますので、出来る限りシェアクリスタルの周辺にいるようにしていて下さい

m(_ _)m」

「分かっているにゅ。というか、こんな場でのんびり散歩に行こうとは思わないにゅ」

 

 携帯端末のカメラを用いて、位置の確認を行うのは第一期パーティーメンバーのファルコム。イストワールからの回答にブロッコリーが答え、それに他のメンバーも頷く。

 ここは、うずめ達のいた次元。今や、次元の残骸しか残っていないような…しかし、それでも次元としての存在は保っているこの場所に、第一期パーティーメンバーが訪れていた。

 

「…でも、本当に崩壊の果てっていうか…悲しくなる有り様だね…」

「時に滅びの中にも美しさは存在するが……滅びを美しいと評するのは、生者の特権であり、傲慢なのだろうな」

「確かに、美しい…なんて思えてるって事は、その人はきっと余裕のある生者だもんね。…ちょっと皮肉な言い方だけど、わたし達もその生者の側でいられるように頑張らないと」

「うん、そうだね。…でも、ここからどうやって…?」

 

 もう大地と呼べる場所も散見出来る程度となった空間を見回し、サイバーコネクトツーはそう呟く。するとその発言にMAGES.が、続けてマーベラスAQLが反応し…前向きな発言をしたマーベラスAQLだったが、鉄拳からの小首を傾げての質問を受けた事で、目をぱちくり。確かに彼女達…というより、空間の歪みの無効化に当たる面々は、全員戦う事ではなくその場に留まる事が役目なのであり…そもそも戦闘になるかどうかも分からない状態である為、頑張るも何も…という話なのだ。

 

「あ、あはは…でも、わたしはそういう考え方、好きかな。絶望禁止…こんな環境だからこそ、心位は頑張るぞって気持ちでいないと、ね」

「それはわたしもだよ。格闘技でもそれ以外でも、真面目に前向きに考えるのは大切だもん」

「うんうん。冒険の度に船が難破しても、前向きな心を忘れなければ意外と何とかなるしね」

「いやそれは前向き云々で片付けていい話じゃないにゅ……」

「ふふ…だがこんな環境では、何が起きてもおかしくはない。戦いとなる可能性もあるのだから、その時は…これまで通り、死神ではなく我等が女神達の下に戻れるよう力を尽くそうではないか」

 

 常人からすれば心穏やかではいられないであろう環境でも、数々の経験を重ねてきた彼女達が前向きさを失う事はない。それは、経験によって鍛えられてきた結果であり…女神達を心から信頼しているからこそのもの。

 そうしてMAGES.の言葉に皆が頷き、この次元での歪みへの干渉が始まった。そして勿論…それは、他の二つの次元でも始まっている。

 

 

 

 

「って訳で、一旦私達は戻るけど、何かあったらすぐに呼んで頂戴」

「皆さんはわたくし達にとっても仲間、有事の際は即座に駆け付けますわ」

「既に今の時点で有事…ってのは、流石に野暮な突っ込みか…」

 

 シェアクリスタルの配置に立ち会った後、一度去っていくのは神次元の三人の女神。一旦、という言葉の通り、彼女達三人は後にまた来る手筈となっており…その三人を、第二期パーティーメンバーの面々が見送る。

 

「ばいばーい!また来るのを待ってるからねー!嫁に来るのも待ってるからねー!」

 

 ぶんぶんと大きく手を振るのは勿論RED。そのいつも通りの発言に、他の面々は苦笑いをし…それにしても、と5pb.が話を切り出す。

 

「驚き…っていうか、正直まだ実感がないよね…ボク達が、色んな次元を渡ってる皆と近い状態だなんて…」

「確かに、ね。状況的には、好都合な訳だけど…」

 

 5pb.が口にしたのは、先日判明した驚きの事実。彼女の言葉に、ケイブがこくりと一つ頷き…しかし第二期パーティーの一員であるファルコムは、そのやり取りに対して思案顔。どうしたのだろうか、と皆が彼女に視線を送ると、ファルコムは神妙な面持ちで言う。

 

「いや…おかしな事を、と思われるかもしれないけど…それを知って以降、思うようになったんだよ。自分が、本当にずっと信次元にいたんだろうか…とね」

「…それは、自分の中で記憶があやふやな部分がある、って事かしら?」

「ううん、そうじゃないんだ。…まぁ、難破に遭った時は、大概気付いた時には打ち上げられている訳だけど…そういうのとも違うというか、上手くあたしにも説明出来ないんだけど……」

「…あの、それ…分かります。ボクも実は、似たような感覚があるっていうか……」

 

 少々歯切れの悪い言い方をしながらも語るファルコムの言葉に、5pb.が自分もだ、と同意を示す。

 普通ならば、勘違いで済ませてしまうような話。だが今の自分達が持つ性質が、それを勘違いでは済ませられないような心境にさせる。そしてケイブもまた、思い返す事で二人と同じように感じ始め、どこか重い空気が広がり……だがそれは、あっという間に霧散する。

 

「んー…アタシももやもや〜ってしてるけど、それって大事な事かな?だってアタシも皆もここにいて、一緒にネプテューヌ達が勝つのを信じてるのは、絶対間違いじゃないでしょ?」

「…それは、確かに」

「でしょでしょ?アタシはアタシの可愛い嫁候補達と一緒にいられる…それだけで幸せなのだ!」

「…ふふっ、流石だねRED。その明るさは、やっぱり仲間として頼りになるよ」

「昔じゃなくて、今どうなのか…ネプテューヌさんも、ここにいたらきっとそう言うよね」

 

 よく言えばポジティブな、悪く言えば呑気なREDの言葉。ともすればその楽天的な発言は、更に空気を悪くするものであり…だが、クールそうな表情とは裏腹に、ケイブが割と素直に受け取ったのを皮切りに、ファルコムや5pb.もREDの明るさに頬を緩める。

 そんな反応を見て、REDはぱぁっと表情を輝かせる。続けてまたいつものようにプロポーズ(?)へと繋げ、されどそれに関しては三人にさらりと流され、しかしREDはめげずに…と、彼女達にとってはありふれた、なんて事ないやり取りを交わす。

 実際のところ、これはどうでもいい話…ではないだろう。彼女達の中にある違和感は、彼女達が思う以上に深い元凶があるものなのかもしれない。だが、REDの言葉を受け、思ったのだ。それはどうでもいい事ではないが、今考えなくてはいけない事でもないと。それよりも今は、今目の前にあるもの、起きている事に意識を向けようと。そう意識を切り替えて、第二期パーティーの面々は穏やかな雰囲気を保ちつつも、周囲に目を向け…何が起きてもいいように、これからの事に向けて備えていた。

 

 

 

 

 二つの次元は勿論、信次元にも次元の歪み、その起点となった場所はある。そこからも当然、無効化の為の干渉を行うのであり…そこには第三期パーティー組の面々、それにコンパとアイエフが訪れていた。

 

「予め聞いてはいましたけど…本当に、ただの草原ですね…」

「えぇ。って言っても、私達も黄金の塔があった段階じゃ昏睡していたから、実際には見ていないんだけどね」

 

 シェアクリスタルを背にして周囲を眺めるゴッドイーターの言葉に、アイエフが片手を腰に当てつつ返す。

 第三期パーティーメンバーは、人数の上では最も少ない。それはつまり、戦力的にも他二つの次元よりやや少ないという事であり…コンパとアイエフが同行したのは、それを補う為である。

 

「…………」

「……?ニトロちゃん、どうしたですにく?」

「…別に、何でもないわ。ただ少し、これじゃあよくある正義の味方だな、と思っただけ」

「む?それが何か問題なのか?」

「そういえば貴女、少し捻くれ…こほん。善悪に関して冷めた見方をしていたわね」

「…はっ!チーカマよ、それは『味方』と『見方』を掛けた駄洒落……」

「な訳あるか!」

 

 物憂げな様子で言うニトロプラスの言葉に、ミリオンアーサーとチーカマのコンビが反応。すぐに始まった漫才的やり取りに対しては、主に苦笑いが生まれていたが…その内の一人、ゴッドイーターは少しすると苦笑いから真面目な顔になり、言葉を返す。

 

「…でも、少し分かります。私の使う武器…っていうか力も、ちょっと特殊なもので、胸を張って『正義の味方!』って言えるかと言われると、微妙なので…けど、こうやって協力はしてくれるんですよね?」

「…それは、まぁ。乗りかかった船…じゃないけど、やれる事があって、必要とされていて、少なからず世話にもなっているとなれば、力位は貸すわ。そこは、善悪以前の、人情の話だもの」

「人情…良い響きだ。情を感じさせない統治者は、『王には人の心が分からない…』と言われてしまうものだからな」

「いやミリオンアーサー、貴女がそれを言うってどうなの…?」

 

 善悪ではなく人情、思想や価値観ではなく単純な思い。そう話すニトロプラスの表情はほんのりとだが柔らかくなり…その通りだと、ミリオンアーサーは深く頷いた。その発言自体はアイエフに突っ込まれてしまった訳だが…内容に対しては、皆頷く。…何せ、彼女達のよく知る統治者、即ち女神達は皆、情を惜しみなく感じさせる在り方をしているのだから。

 

「正義の味方…かどうかは分からないですけど、皆さんわたし達に力を貸してくれて、ねぷねぷ達がいなくなってしまった時にはイリゼちゃん達と一緒に行ってくれて、今も皆で協力してくれているです。だからわたしは、皆さんに凄く感謝してるですよ」

「そんな、私は別次元とはいえラステイションを守る者としての務めを果たしてるだけで……でもやっぱり、そうやって言ってもらえるのは、嬉しいです」

「うふふ。…あ、それとお弁当を用意しているので、お昼になったら食べて下さいですっ」

 

 柔らかく笑い、それからコンパが出した弁当箱。すると健啖家なゴッドイーターがここまでで一番の明るい返事を見せ、コンパ手作りの弁当という事でミリオンアーサーも表情を輝かせ、食事の話だからか(別に食べる気ではないだろうが)ニトロプラスは生肉へと目をやり…そんな光景に、アイエフは肩を竦めた。これまでと違い、第三期パーティーメンバーの三人は、共に旅をした訳ではないものの…気付けばこれまでの仲間達と、同じような関係を築けつつあるのだなと、そう思いながら。

 それから彼女等は、空に浮かぶ負のシェアの城を見上げる。当然戦いの内容は見える筈もないが、他二つの次元と違い、決戦の行われる場所そのものは見る事が出来る。だからこそ、より直感的に気持ちが引き締まり…だがそこでアバどんが唐突に「キュイ!」と鳴いた事で、全員揃って軽くずっこけかけてしまった。何故唐突に…?…と視線はゴッドイーターに向かうものの、今のは彼女にも分からず、ただただ苦笑いを浮かべるばかり。

 何とも締まらない流れ。締まらない雰囲気。されど、ある意味それも「らしい」姿であり……今一度、彼女達は城へと視線を送る。…女神の、仲間の勝利と帰還を信じて。

 

 

 

 

 各次元へ、シェアクリスタルと共にパーティーの皆が向かう少し前…プラネタワーには、私達女神と、教祖の四人が集まっていた。

 

「ミナちゃん、いつもみたいにだいしょーりしてくるわねっ!」

「がんばってくるね、ミナちゃん…!(ぐっ)」

「えぇ。お二人はわたしや皆さんが眠ってしまっていた間も、その後も、ちゃんと女神の務めを…守るという責務を果たしてきました。ですから、きっとブラン様達と共に、この戦いも勝って帰ってきてくれると、信じていますよ」

『えへへ…』

 

 母性を感じさせる笑みで答えたミナさんは、ロムちゃんとラムちゃんの頭を優しく撫でる。撫でられた二人はふにゃりと笑い…それから訊いた。セキムって、なーに?…と。

 

「二人は変わらないわね。いつもは子供扱いするなーって言う癖に、無邪気に喜んでるんだから」

「まあまあ、それが二人の良いところでもあるんだからさ。それにユニちゃんだって、仮にノワールさんだったら、撫でられたら嬉しいでしょ?」

「そ、それは……ネプギアこそどうなのよ?」

「わたし?わたしはお姉ちゃんだったら嬉しいな。あ、でもいーすんさんでも嬉しいかも」

「…くっ、訊く相手を間違えた……」

 

 その二人を見て、言葉を交わすネプギアとユニ。ロムちゃんラムちゃんは勿論だけど、そんな二人も微笑ましくて……でも私は、途中から軽ーく視線を逸らした。…だってほら、私も妹な訳だし…私に振られたら、多分恥ずかしい展開になるだろうし…。

…とか何とか思って視線を逸らすと、そこでもほっこりとする(?)やり取りが一つ。

 

「お姉様、アタクシは信じていますわ。いつものように、これまでのように、優雅に鮮やかにお姉様が勝利を収めると」

「これまでも、ギリギリの戦いは決して少なくなかったのですけどね。…とはいえ、負けはしませんわ。まだわたくしには示すべきもの、貫くべき言葉が、数多くありますもの」

「いいえお姉様!お姉様が優雅である事は不変の事実。故に、お姉様の勝利も例外なく美しいのですわ!」

「こ、こうも真っ向から言われると、少し恥ずかしいですわね…。…されど、期待には応えるのが女神というもの。いつも通り、自信を持って待っていて下さいな」

 

 ベールの事が大好きなチカさんと、なんだかんだチカさんを教祖ではなく妹の様に大切にしてるベールのやり取りは、やっぱり温かな気持ちにさせる。…勿論、ちょっと苦笑いも誘われるけど、ね…。

 

「はぁぁ…良いわ、そこかしこから尊い感情が伝わってくる…ちょっと、全員と一回ずつハグしても良いかしら…良いわよね…?」

「駄目ですよセイツさん。顰蹙を買う事間違いなしなんですから(−_−;)」

「う…ごめんなさい……」

 

 そんな雰囲気の中で、セイツは興奮気味。あぁうん、これは変態って呼ばれるよ…と思わせる言動を見せ…そこでイストワールさんが、セイツを窘めるように突っ込む。というか、窘める。

 すると、セイツはすぐに肩を落として反省。簡単に鎮静化した事に、ピーシェは目をぱちくりとさせていて…私とオリゼは、そんなセイツを見て肩を竦め合った。そりゃセイツでも、最近家族だと知ったばかりのお姉ちゃんに窘められれば、従っちゃうよね。

 とまぁ、決戦を前にそれぞれで会話を交わす。この後私達は、艦船で負のシェアの城へと接近しつつ待機し、イストワールさん以外の教祖の三人は各国へ戻って…決戦の、瞬間を待つ。

 

「…こほん。そろそろ本題に入るべきじゃないかい?」

「本題も何も、見送りに来ただけでしょ?」

「……そうだね」

「なんかちょっと間があったわね…普通に認めれば良いのに…。…まあでも、いつも通り貴女は後処理の事とか、以降の事を考えていて頂戴。…心配なんか、一切必要ないんだから」

 

 自分達の戦いを、勝利を不安に思う必要はない。そんな自信を感じさせる笑みをノワールは浮かべ、それに答えるようにケイさんも小さく…けれどノワールと同じような笑みを浮かべた。

 マジェコンヌさんの時、ネプテューヌ達を奪還する時、犯罪神との決戦の時…その時々で人は違えど、私達はいつも見送られ、皆に信じられて戦いへ向かった。勿論見送りの有無が、戦闘能力に直結したりする事はないけど…分かるよね。見送られる事の、見送ってくれる人がいる事の、温かさは。

 

「…い、イリゼ、セイツ」

「うん?」

「どうしたの?…え、えっと…オリゼ」

 

 さっきノワールが言った通り、今は特別何かしなきゃいけない訳じゃない。でもいつまでも話してる訳にもいかないし、その内そろそろ行こうかという雰囲気になり…そこで不意に、私とセイツはオリゼに呼ばれた。

 私は普通に振り返り、セイツも何気無く言葉を返し…てから、少しだけ照れた表情を見せる。当のオリゼ自身が、やっぱり実感がないというのと、私も「オリゼ」と呼んでいる事から、セイツもオリゼの呼び方は変えないって事にしたらしいけど…今は別の、家族としての意味を持つ言葉で呼ぼうとしたんだろうと、私は思う。……ふふっ。

 

「…ちょ、ちょっとイリゼ…何か、失礼な事考えてない…?」

「え、考えてないよ?全然失礼な事じゃないもん」

「ならやっぱり何かしらは考えてたんじゃない……」

「う…あ、あの…二人、共……」

 

 軽い調子で答えると、セイツはちょっと不服そう顔に。その顔を見た私はくすりと笑って…けどそこで、しゅんとした様子のオリゼの声が聞こえた事で、すぐに私達はやり取りを止める。止めて、話を聞くべくオリゼを見やる。

 

「こ、これから、あの城に突入するとなれば…あの、出来損ないとも…また、戦う事に…なると、思います」

「……そうね。あいつには誇りなんて微塵もないでしょうけど、プライドは高いから、戦う前から逃げるなんて事はない筈よ」

「はい。…だから…確認、です。ふ、二人にとって…あの出来損ない、は…どういう、存在ですか…?」

 

 じっと私達を見つめオリゼが話すのは、レイの事。気弱さを感じる人間の姿のオリゼだけど、その目は女神の姿の時と同じ…人にとっての、絶対の存在であらんとする感情が浮かんでいて…だから、私達も答える。女神としての、問いへの答えを。

 

「レイは、敵よ。人の、女神の…人が紡ぐ、人が持つべき幸せのね。彼女が人に仇なすなら、なんであろうと、どこであろうと…絶対にそれを、わたしは許さないわ」

「…私はオリゼやセイツ程、レイに対して『滅ぼす』って意思を持っている訳じゃない。でも…私だって、その行いを見過ごす事はしない。それが私の…女神の、責務だから」

「…二人から、その答えが聞けて…よ、良かったです。イリゼ、セイツ…私達で、必ず…終わらせるんです。人に、不幸をもたらす…あの、存在を」

 

 はっきりと言い切られたその言葉に、私もセイツも頷いた。…きっと、私達というのは、私達三人じゃなくて…皆の事を、指しているんだと思う。だって、私達は皆…人を守る、女神だから。

 

「…だいじょーぶ、ぴーしぇちゃん。女神はね、人だけを守るものじゃないから。女神は、大切なものをぜーんぶ守るもの、だよ?」

「ぷるると…?…うん、そうだね。守るのは人だけなんて…ぷるるともねぷてぬもねぷぎあも、そんなきっちりなんてしてなかったもんね」

「ふふふ〜、でしょー?」

「……人に仇なす、か…俺はもう一人の自分との…【オレ】との決着をつける…なんてのは、女神的にはあんまり良くねーのかもな」

「そんな事ないさ。決着つけられるなら、他がどうなろうと構わない、ってならどうかと思うが…うずめはいつだって、誰かの為に戦ってきたんだ。そのうずめが、自分との決着をつけようとする事に、反対するやつなんているもんか。少なくとも、俺や海男達は…心から、応援してる」

「…へっ、言ってみただけだよ。まあでも、その応援は…ばっちり、受け取ったぜ」

 

 今の私達のやり取りを切っ掛けに、更に生まれた二つの会話。どっちも、私達と見ている先は少し違って…でも、それで良いんだ。集団の強さには、意思統一から生まれる強さと、個性のぶつかり合いで生まれる強さの両方があって…どっちも違う強みを持っているんだから。そして、見ている先は違っていても…人を、次元を、皆を守りたいって思いが同じなら、同じ道を、未来を歩めるって、私は信じてる。

 

「良い雰囲気だ。犯罪神の時もそうだった。私の時も、そうだったのだろうな」

「まあ、ね。…さて、そろそろ行くとしましょ。ミナ、勿論わたし達は勝ってくるつもりだけど……」

「戦いの間、何が起こるかは分からない。だから、国の事は任せた…ですね?」

「流石ミナ、よく分かっているわね。…任せたわよ」

「ユニ、戦いにおいては守護女神も女神候補生も関係ないだろうさ。…ノワールを支えてあげてくれ、仲間としてね」

「えぇ、任せて頂戴。お姉ちゃんも、皆も…全員、支えて見せるわ」

 

 今度こそ、私達は出発する事を決める。まずは、三地点に向かった皆に道を切り開いてもらい…私達が、負のシェアの城へと突っ込む。

 

「じゃあ、行ってきますいーすんさん」

「祝賀パーティーの準備、ちゃーんとしておいてね?」

「ふふ、勿論ですよ。…ネプテューヌさん、ネプギアさん。イリゼさん、セイツさん、イリゼ様。…行ってらっしゃいませ(*^◯^*)」

 

 にっこりと笑った、イストワールさんからの見送り。応援の気持ちも込められた、家族からの行ってらっしゃい。それに私は、私達は、それぞれの言葉で…笑顔と共に、イストワールさんへと返した。

 

「よーっし!それじゃあ皆、目指すはハッピーエンド一択!頑張るよーっ!」

「おー!わたしも応援してるから、ばーんと行ってきちゃってよ!大丈夫、未来は皆の手の中にあるんだから!」

「そうそう、わたしもウィードくんと見てるからね!ううん、わたしやウィードくんだけじゃなくて…皆、信じてるから!」

 

 音頭を取るような、三人のネプテューヌの言葉。ネプテューヌがこうして集まると、それはもう騒がし…もとい賑やかなもので、でも今はそういう元気が丁度良い。こういう形で士気を上げるのが、一番私達には合っている。

 そして、私達は見送られ、背中を押されて、出発する。次ここに帰ってくるのは、勝利の凱旋か、敗北による苦渋の撤退か、或いはマジェコンヌさんの時のように、想定外の事態によって決戦が流れてしまった時か。それはまだ分からないけど……大丈夫。私達なら、きっと…いいや、必ず掴める。私達、皆が望む…最高の、ハッピーエンドを。




今回のパロディ解説

・王には人の心が分からない
Fateシリーズに登場するキャラの一人、トリスタンの名台詞の一つの事。ミリオン「アーサー」な訳ですから、ある意味他人事ではないネタになりますね。

・意思統一から〜〜ぶつかり合い
イナズマイレブンシリーズに登場するキャラの一人、鬼道有人の台詞の一つのパロディ。これはデスゾーン2を開発する中で出てきた台詞ですね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。