超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
──それに彼女が気が付いたのは、直前だった。もっと早くに気付くべきだったか、それとも始まる前に気付いただけ僥倖と言うべきか。…何れにせよ、彼女が…くろめが気付いた時、既に事前阻止は間に合わない状態にまで至っていた。
「…これは……」
負のシェアの城を不可侵の領域としている、空間の歪み。その大元、利用している次元の歪みが変調をきたしている事に、くろめは気付いた。
次元の歪みは、自然に解消されたりはしない。通常ならば、ある程度の規模までは自然に直るものだが、今は負のシェアの城が楔となる事により、自然解消を阻んでいる。現に、次元の歪みが薄れているという訳ではなく、何らかの影響で歪みという波に揺らぎが生じている…それが今の状態であり、それに気付いたくろめは一瞬息を呑み……だが自分を落ち着けるように息を吐くと、考える。
(次元の歪みが、自然現象や半端な人為的行為で干渉出来る訳がない…となればこれは、断定までは出来ないが、十中八九ねぷっち達によるもの。…けど、どうしてこんな方法を思い付いた?…まさか……)
空間の歪みを生み出すカラクリは、手掛かりもなしに解けるようなものではない。つまり、これは何者かが手掛かりを与えたという事。そしてそれをする可能性があるのは……あの一組しかない。
そこまで考えたところで、くろめは思考を止める。まあいい、今はそれよりも…と、レイとクロワールを呼ぶ。
「どうしたよ急に。なんかおもしれー事でもあったか?」
「いいや、面白い事になるのはこれからさ。…もうすぐ、ねぷっち達が乗り込んでくる。空間の歪みを、無効化してね」
「…へぇ?ギリギリでこっちから解いて、後がない状態で突っ込んできたあいつ等を返り討ちにするっていう、あんたのゆーしゅーな作戦は企画倒れになっちゃった訳?」
くろめからの言葉に、レイはぴくりと眉を動かし…煽る。不利益を被るのは彼女も同じなのだが、この程度大した事はないと考えているのか、不利益を被らされたからこそ煽りで返したのか、真っ先に彼女が行ったのは悪態であり…しかしくろめもまた、慌ててはいない。
「そういう訳さ。ふん、最後まで上手くいかないものだ。…けど、物は考えようだよ。こっちの準備だって整っているし…きっと今、ねぷっち達はどうにもならなかった壁が何とかなりそうで、調子付いている筈さ。そこには付け入る隙があるし…希望から絶望に落とすのは、君の好みだろう?」
「あはっ、物は考えようっていうより、あんたの場合は『物は言いよう』って感じじゃないの?…けどま、それはそうですけどね〜」
「なら、いいじゃないか。…やる事は、変わらないんだから」
そう言って、くろめは立ち上がる。空間の歪みの消失と女神達の突入…その先にある、女神達との決戦へ後手に回る事なく臨む為に。
今は、次元の歪みの状態が若干変わったようなもの。故にその変化に合わせて調整し直せば、空間の歪みの消失を避ける事も出来るが、今からでは間に合わない。間違いなく、空間の歪みの再展開より早く、突入をされる。だからこその、決戦の意思。
(…思い通りにならない事ばかりだ。間違いなく正しくとも、こんなにも思い通りにならないのが世の中なのか。……ならやはり、変えなくちゃいけない。でなければ、オレは…オレのしてきた事は……)
その意思は、信念によるものか、執念によるものか、或いは引き下がる道を失い、進み続ける事しか出来なくなった末路が生み出したものか。ただ少なくとも、彼女に迷いや躊躇いはなく……くろめに続く形で、レイとクロワールも動き出す。
「さぁて、それじゃあ絶望させて、ぶっ潰して、それで終わりにしてやろうかしらね。…漸く終わりにさせられると思うと、ほんとに気分が良いわ」
「ただでやられてくれんなよ?お前達が勝とうが、あいつ等が勝とうが、そこはどっちでも良いが…詰まらねーオチなんざ、真っ平御免なんだからよ」
悪意に満ちた笑みと、冷たい瞳を浮かべるレイに、まるで当事者ではないかのようなスタンスを示すクロワール。やはり最後まで、彼女達に互いを尊重する形での協力はなく…しかしそれでも、彼女達が強大である事には、変わりない。
信次元の女神達とは対極の…個の力に自信を持ちつつも、その本質を繋がりに置く彼女達とは真逆である、信頼を柱とする他者との協力を廃し、あくまで信ずるのは自分だけという在り方。強大な力を持つが故に、そんな思考が成立し、強大な力を持ってしまったが為に、そんな思考で凝り固まってしまったくろめとレイは……自分達ではなく、自分の力で大望を、野望を果たすのだと、そんな意思を宿していた。…他者の力は信じずとも、自分の力は心から信じて。
*
覆い包むように展開していた、発生していた空間の歪みは、ずっと私達の侵入を阻んでいた。唯一、一度だけ破ったネプテューヌですら、破壊の極致とすら言えるネプテューヌのネクストフォームですら、今はまだ安定しての突破は出来ない…戦闘すらも拒絶する、難攻不落の壁となっていた。
それが今、変わろうとしている。難攻不落だった壁が……崩れ始める。
「……!皆、あそこ!」
交代で負のシェアの城と空間の歪みを監視を続けている戦闘艦。その一つに乗り、来たるべき瞬間を待つ中…声を上げたのは、セイツだった。
艦内で、セイツの指差した先。強化ガラス越しに指し示された先にあったのは…小さな綻び。まだ僅かな…けど、確かな変化。
「遂に効果が現れ始めた訳ね。行くわよ、皆!」
「んもう、そういう系の発言はわたしの役目…っていうのは、今はいっか。突入までは、スピードが命だもんね!」
言うか早いか走り出すノワールに、それを追う形で駆けるネプテューヌ。まだ、通れるだけの穴が出来ているかどうかは分からない。ただの、単なる壁じゃない以上、穴が空いているように見えていても、本当に通れるとは限らない。
でもイストワールさんの見立てが正しければ、歪みはここからどんどん消えていく筈。こうして私達が、移動をしている間にも。
「皆さん、こちらでも反応を確認しました。間違いなく、消え始めています!(`・ω・´)」
「はい!艦長さん、ハッチの開放をお願いします!」
インカムでイストワールさんからの声を受け、ネプギアがブリッジへと連絡し、そのまま通路を駆けていく。そしてハッチ前、開いた先から直接外が見える場所まで来たところで、女神化。
「イリゼ、オリゼ、皆。わたし達も、状況に応じて後に続くけど……無理と無茶は、しないでね」
「ねぷてぬは、お馬鹿な事もしないでよ?…それがなきゃ、ねぷてぬは凄いんだから」
「それじゃあ、皆頑張ろ〜!」
後ろからかけられる、二つの言葉と一つの掛け声。別に間違っている訳じゃないけど、後発組のプルルートが今「頑張ろ〜」と言うのは少しズレてる感があって、私たちはちょっぴり苦笑い。
それから大きいネプテューヌとウィード君…それぞれくろめに対して特に強い思いを持つ二人が、私達を見て、静かに頷く。その視線の、頷きの意味は…訊くまでもない。だから私達も、二人に、皆に向けて頷きを返し…飛び立つ。
「他の所も消え始めてる…が、やっぱあそこが一番広がってるな…!」
「みたいですね…!試しに一発…!」
一直線にセイツが見つけた綻びへと向かう中、ユニが放った一発の射撃。放たれた光芒は綻びに向かって真っ直ぐに伸び…そのまま、貫通。阻まれる事なく内側へと届いた事で、その穴が完全に通常の空間になっている事を確信する。
そのまま加速し、穴の側へ。私達が到達した時、穴はもうMGでも余裕で通過出来る程のサイズとなっており…数秒とかからず、全員が突破。漸く私達は、空間の歪みの内側へ至る。
「よーし、これなら!」
「っと、お出迎えが来ましたわよ…!」
ぐっとうずめが拳を握った直後、ベールが気を張った声を上げ……城から猛争モンスターが飛んでくる。まだ距離があるから断言は出来ないけど…恐らくはシェアエナジーを用いた、再生能力を持ったモンスターが。
こっちも女神十一人という大戦力だから、猛争モンスター程度に遅れを取る事はない。とはいえ決戦前のここで下手に消耗やダメージは追いたくない以上、確実な迎撃を……
「邪魔だ、散れ」
そう考えた直後、オリゼの周囲に次々と現れる巨大な剣。それ等は圧縮されたシェアエナジーの解放によって放たれ、猛争モンスターの群れに飛来し、猟犬が如く群れを蹴散らす。
再生能力を持つモンスターはその再生能力があるが故に、半端な攻撃じゃ止まらない。けどオリゼの放った剣は、大型でもないモンスターへぶつけるには過剰過ぎる程のサイズであり…ある個体は真っ二つとなり、ある個体は身体を大きく削り取られ、立て続けに何体もやられていく。次々と剣が打ち込まれる事で、あっという間に道が開いていく。
「相変わらず凄まじい攻撃だけど…脳筋感がなくもないわね……」
「のーきん?てりゃー!」
「のうりん…?それ……っ!」
「いやそりゃ農業系学園ラブコメディだ…。脳筋ってのは…って、しょうもねぇ言葉に興味を持たせんなネプテューヌ!」
「えぇ!?今の、わたしが悪いの!?」
幾ら再生能力があったとしても、一撃で即死させられてしまえばその能力はないも同然。即死しなかったモンスターも、その圧倒的破壊力故に吹き飛び落下し、それにより開いた道へと私達は突っ込んでいく。最後尾のロムちゃんとラムちゃんは突破したところで振り向き、面制圧に長ける魔法でモンスターの群れに駄目押しをかけて、私達は城へと迫る。
穴の確認の時と同じようにユニが、更にはネプギアも、城に向かってビームを照射。二条の光芒は、城の壁へと直撃し…けれど、壁を抜くには至らない。それどころか、瞬く間に損傷が直り始める。
「……っ!壁にも、モンスターと同じ能力が…?」
「ちっ、だったらもっと高火力で……」
「いいや、ここは…私達に、任せてッ!」
第二射撃に入ろうとした二人を止め、私はアイコンタクト。そして一瞬で意思疎通を交わし…私達は、動く。
手始めに打ち込まれる、ブランのゲフェーアリヒシュテルン。拡散した多数の魔力弾が城壁を叩き、直後に私の精製した巨大剣と、ベールのシレッドスピアーが追撃。広く浅く削られた城壁を、巨大な剣と槍が一気に砕いていき、最後にトルネードソードを纏ったエクスブレイド…ネプテューヌとノワールの合体技である、トルネードブレイドが深々と突き刺さり……爆ぜる。連撃を受けていた城壁を吹き飛ばし、城に大きな風穴を開く。
「突入するわッ!」
ネプテューヌがイストワールさんや艦へとインカムでそう伝え、最高速で私達は突進。先陣を切るようにオリゼが、続いてノワールとベールが城内へ突っ込み、城壁が再生する前に全員が中へ。再生したモンスターの群れはこちらを追い掛けてきていたけど、到着よりも壁の再生の方が早く、私達は城内突入と同時に追撃を振り切る事に成功。まずは決戦の地になるであろう城へ辿り着いた事に頷き合い…それから、見回す。
「…どうやらここは、通路のようですわね」
「広い、ね…(きょろきょろ)」
「どっちに行けばいいのかしら…?」
首を傾げるラムちゃんの疑問は尤もなもの。一先ず突入は成功したけど、くろめとレイを見つけなくちゃ意味がない。そして当然、城内の作りなんて誰も知らない。
「どっち、か…何も別に、通路に従う必要は…ってうぉッ!?…お、オリゼ…壁ぶっ壊すなら先に言え、驚くだろうが……」
「あぁ、すまない。…だがこれは、あまり効率の良い方法ではないようだな」
通路に従う必要はない。恐らくそう言おうとしたブランが言い切る前に、無言でオリゼはバスタードソードを振り抜き…通路の壁を粉砕。木っ端微塵となった壁からは、向こう側が見えていて…けれど外壁同様、内側の壁もすぐに修復されていく。
確かにブランの言う通り、敵の本拠地な訳だから壊して進もうと問題はないし、オリゼの言う通り、破壊しての侵攻は効率が悪過ぎる。こうも簡単に直るんじゃ、くろめやレイを見つけるまでに何十回、何百回と破壊しなきゃいけないだろうし…直ってしまうからこそ、どこを調べてどこを通ったのかもその内分からなくなるだろうから。
「…どうする?地道に探し回ってたらその間にダークメガミを各国にけしかけられる…なんて事もあり得るし、いっそ皆の全力で、この城自体を完全崩壊させる…?」
「さっきのオリゼに続いて、貴女まで脳筋思考って…確かに無策で歩き回るよりはマシかもだけど、戦いの前にそんな事して消耗したら本末転倒でしょ。ネプテューヌの力だって、こんなにも負のシェアに溢れてる場所じゃ使い辛いでしょうし」
「う、確かに……」
本末転倒だ、というノワールの指摘は全くその通り。モンスターの群れの時は消耗の事も考慮出来てたのに、(状況が違うとはいえ)こうも早く忘れるんじゃ世話がない。
けど、ただ歩き回ったり、ここで頭を捻ってるのが賢明な判断じゃないのも明白。ならばどうするんだという話であり…そこで声を上げたのはうずめ。
「…うずめ、分かるかも……」
「分かる…?えと、うずめさん…それはどういう……」
「もう一人の、うずめの場所…上手くは説明出来ないんだけど、こう…ピキーンって、分かる感じ…?」
『ピキーン…?』
肝心な部分が擬音なせいで、正直さっぱり分からない私達。…え、っと…連合のエースとその親のクローンが、互いに何となく感じる的な…?
「正直、よく分かりませんが…分かる事は分かる…んですよね?」
「うん。きっと、間違ってないと思うの」
困惑しながらも訊き返すユニに、うずめは頷く。上手く説明は出来ないけど、きっとそうなんだ、って。
それを受けて、ユニは私達の方を見る。私達も顔を見合わせる。感覚的なものなら確証はないだろうけど、他に代案と言えるのもさっき私が否定されたもの一つ。だったら、うずめの感覚に賭ける価値は十分にある。
「…うずめ、その感覚に頼っても良いかしら?」
「もっちろん!うずめにお任せ、だよ〜!」
向けられたネプテューヌの言葉へ、うずめは笑顔でサムズアップ。それからうずめは目を閉じ、数秒止まり…目を開くと同時に歩き出す。私達も、それに続く。
「えっと…次は、こっちかな」
「さっきブランも言いかけてたけど、何も通路に従う必要はないわよ?闇雲に壊して進むのは非効率だけど、指針があるならむしろ効率は良いだろうし」
「分かってるよ〜。……さっきと言えば、うずめにお任せじゃなくて、うっずにお任せ、の方が良かったかな…」
「なんで情報バラエティ番組っぽく言おうとするの…しかもそれだと、うずめってよりプロのスポーツ選手感あるし……」
ぼそりと零れた変な発言に私が突っ込むと、「あ、言われてみるとそうかも?」とうずめは苦笑い。…今のは凡そ敵の本拠地でするやり取りじゃないと思うけど…私達的にはむしろ、この位が平常運転。我ながら、突っ込める余裕があるのは良い事…だと、思う。
少しずつスピードを上げ、うずめの感覚を頼りに進んでいく。必要とあらば壁や天井を破壊し、構造を無視して向かっていく。これといった迎撃がないのは、やっても無駄だと思っているからか、そんな事するまでもないと考えているからか、はたまた単に城内には迎撃手段がないというだけなのか。
(…いや、三番目はないか…設備はなくても、さっきみたいにモンスターをけしかけてくれば良い訳だし…)
突入まで…より正確に言えば、空間の歪みを突破するまでが大変だった分、何もなく進めている今が、この静かな状態が、拍子抜けに感じてしまう。邪魔が入らないのら良い事だけど、これには何か裏があるんじゃないか…そんな風にも思えてしまう。
だけど、不安があるかと言えば…答えは、勿論NO。楽勝だとは思わないけど、負ける気はしない。
「……皆、ここだよ。多分、この奥に…もう一人のうずめが、いる」
ぴたり、と足を止めたうずめ。今私達が歩いていたのは、長めの通路で…先に見えているのは、大きな扉。
正に、この奥に中心部があるとばかりの場所。あからさまではあるけど…くろめとレイ、どちらを取ってもそれっぽくない、端の狭い場所に隠れるなんてタイプじゃない筈。
「…普通に、開けて入りますか?それとも……」
「その必要はない。出来損ないに向ける礼節など、ありはしないのだからな」
残り数歩の距離まで近付き、足を止める。声に警戒を滲ませながらネプギアが言い…それを否定しながら、オリゼが一歩前に。これまでと同じように、特に構えるでもなくオリゼは扉の前に立ち、扉を見据え……一閃。目にも留まらぬ速度で振り抜かれたバスタードソードは、大きな扉を難無く斬り裂き……内側へと、その衝撃で吹き飛ばす。
「…今の世を守りし女神達よ。これより、決着の時だ」
背中越しにそう言い、オリゼは扉があった場所の奥へと足を踏み入れる。目の前にある、信次元の…三つの次元の脅威と決着を付ける為に。そしてそれは…私達も、同じ事。
「侵入といい今といい、随分と過激な入り方じゃないか」
踏み入れた先は、広い部屋。ドーム状となっている部屋の中心に立つのは…くろめとレイ、その二人。
「これまで、沢山沢山…たっくさん、色んな人を傷付けてくれたね、【オレ】」
「これまでずっと、終わりに向かうばかりだったあの場所で燻ってた癖に、後少しのところでオレを愚弄してくれたね、【俺】」
初めに言葉を、視線を交錯させるのは二人のうずめ。女神化の有無はあるけど、その瞳はよく似ていて…けれど、違う。籠る思いの光は、まるで違う。
「団体でどうもごくろーさま。折角来てくれたんだから、しーっかり潰してあげようと思うけどぉ…そうだ、こういう時にぴったりの言葉があったわよね。世界の半分をくれてやろう、ってやつ。ま、私は親切だからぁ、あんた達の意見関係無しに、死の世界をプレゼントしちゃいまーす。ここに一列にお並び下さ〜い!」
「抜かせ、世界は人のものだ。世界の全ては人の為にあるものだ。故に、貴様が自由に出来るものなどない。そして、貴様という出来損ないに下す審判こそ…世界の、真実だ」
オリゼとレイ、二人の視線も交錯する。うずめとくろめが裏表の様に向き合っているのなら…オリゼとレイは、正に真逆。対極の存在として向き合い……敵意を、露わにする。
「…うずめ」
「分かっているとは思いますけど、気負いはいけませんわよ?守護も、勝利も…わたくし達皆の願いなのですから」
「ねぷっち、べるっち…ふふっ、だいじょーぶ。うずめは、皆と戦うよ!」
一触即発の雰囲気の中、ネプテューヌが呼び掛け、ベールが続ける。振り向いたうずめに、私達皆で頷きを返す。そして、私達からの気持ちを受けたうずめは…にっ、と笑う。心からのものだと分かる笑みを浮かべて、今一度視線をくろめの方へ。
「…またか…ウィードの時も、今も…そうやってお前は、オレが失ったものを…オレにある筈だったものを見せ付けて、オレを嘲笑うのか……」
「嘲笑う…?何を言って……」
「…まあ、いいさ。それも全て、最後には変わる。最後は、オレの望む…正しい形に信次元は変わる。これは、その為の戦いだ」
「む…ほんとにいつも、言ってることがよくわからないけど……」
「これ以上わるいことは、させないよ…!」
笑顔を浮かべたうずめとは対照的に、暗く歪んだくろめの顔。けれどそれは消え、私達とは違う意思の籠った表情へと変わり、雰囲気は更に張り詰める。
既に、全員が構えている。くろめもレイも、臨戦態勢。誰が動いてもおかしくない状況であり……でもそこで、不意にくろめはわざとらしい声を上げる。
「…おっと、そうだ。これを忘れるところだったよ」
「忘れるぅ?あはっ、白々しい言い方ぁ〜」
「そこは別にいいじゃないか。…ねぇ、皆。格の違いはあるとはいえ、流石にこれでは多勢に無勢だと、オレは思うんだ。だから…少しばかり、ハンデをもらうね?」
馬鹿にするようなレイの言葉をさらりと返し、くろめは私達に呼び掛ける。
何かをする気だ。内容以前に、その表情からそれは分かった。だから私達は警戒し、何が来てもいいように備え、くろめの行動を見極めようとした……その時だった。…全身に、信じられない程の重みと圧力がかかったのは。
『……──ッ!?』
それはまるで、体重が何十倍にもなったような感覚。でも女神の身体能力から考えれば、何十倍なんてレベルじゃない。
重い。身体があまりにも重い。気を抜けば、それだけで膝を突いてしまいそうな程重く…しかもそれを感じているのは、私だけじゃない。
「……ッ…あんた、何を…ッ!」
「君が感じてる通りの事だよ、のわっち。…ここはオレ達の本拠地なんだ、オレとレイの力でこういう事を瞬時に出来る位の仕掛けを作っておくのは、当然の事だろう?」
にやりとくろめは笑い、私は焦る。皆も多分、思考をフル回転させ…その上で、きっと「不味い」と思っている。
これが本物の荷重なのか、感覚にだけ作用してるのかは分からないけど…どちらにせよ、これじゃ十全の力は発揮出来ない。数では大きく有利とはいえ、これじゃ戦力差がひっくり返りかねない。
それに…他にも何か、仕掛けが用意してある可能性もある。くろめの言う通り、ここは…敵の本拠地なんだから。
(どうする…リバースフォームで強引に動く…?…いや、駄目だ…ただでさえ全身に負荷がかかってるのに、そこで更に負担が大きい状態になったら、最悪一気に活動限界を迎えかねない……!)
防御も回避も不可の、荷重という負担。文字通り重過ぎる負担を強いられた私達は、精神的、戦術的な観点から動く事が出来ず……くろめは大きく両腕を開く。
「さあ、君達はこれを決戦にするつもりだったんだろう?ああ、オレもそのつもりさ。ここで勝ち、ここで終わりを始めるつもりだったさ!レイ、直接手を下すのは君に譲るよ。これまでの鬱憤を、存分に晴らすといい!」
『……ッ!』
「これまでの鬱憤、ね…そうねぇ、そうさせてもらおうかしらね。それじゃあまずは……」
宣言するように述べるくろめ。それを受け、ぐにゃりと口元を歪めるレイ。そして私達が身構える中、レイは軽く床を蹴って……
…………くろめを、蹴り飛ばす。背後から、仲間である筈のくろめを…正面に。
「ぁ、え…?は……?…お前、何をし……──ッ!?」
茫然とした顔で、くろめはよろけながら前に出る。数歩動かされ、止まり、少しずつ怒りが滲み始めた顔で振り返ろうとし……次の瞬間、膝を突く。…まるで、途端に身体が重くなったかのように。
「…こ、れは……ッ!」
「あっ、ごっめーん。私あんたに気付かれないように、あんたにも影響が及ぶよう弄り直しちゃった〜」
「な……ッ!?レイ…お前…ッ!」
目の前で捲き起こる仲間割れに、私達もまた茫然。それと同時に、床が光り出す。この城全体を構築しているのは負のシェアエナジーであり…私達の立つ部分のシェアが、段々と形を失っていく。
「裏切るのか、レイ…ッ!ここまで来て、後少しのところで…お前が、お前みたいなやつが……ッ!」
「裏切るぅ?裏切るもなにも、私達は元々仲間でも何でもない、相手を利用するだけの関係だったでしょう?そ、れ、にぃ……私は、大っ嫌いなのよ。あんたみたいな、偉そうな独善主義は」
「……ッ!!レイッ…お前ぇええええええぇぇぇぇッ!」
急速に消失していくシェアエナジーは完全にその形を失い、飛び立つよりも早く、私達は落ちていく。この負のシェアの城から、落下していく。
前に、上に見えているのは、見下し見下ろすレイの顔。そして、聞こえるのは…憎悪に染まり、同じように落ちていくくろめの怒号だった。
今回のパロディ解説
・農業系学園ラブコメディ
のうりんの事。のうりんではなく、脳筋です。でも実際、オリゼは脳筋なところがあったりはしますね。何せ技術や戦術が必要になる事など殆どないスペックしてますから。
・連合のエースと〜〜感じる的な…?
ガンダムSEEDシリーズに登場するキャラの一人(三人)、ムウ・ラ・フラガ、ラウ・ル・クルーゼ、レイ・ザ・バレルの事。もしかすると、あのエフェクトが出てるのかも…?
・情報バラエティ番組
アッコにおまかせ!の事。うっずにお任せ…ネプステーションの後に放送している番組か何かでしょうか。格好良い女性、という意味では和田アキ子さんと近いかもですが。
・プロのスポーツ選手感
プロゴルファー、エルドラック・タイガー・ウッズさんや、元プロ野球選手、ウィリアム・タイロン・ウッズさんの事。もしかすると、他にもウッズさんがいるかもです。
・世界の半分をくれてやろう
ドラクエシリーズに登場するモンスターの一体、りゅうおう(竜王)の代名詞的な台詞のパロディ。OEまで続いて、漸くラストバトルっぽいところでこのパロが出てきました。