超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第百八十五話 未来を掴むもの

 信次元と神次元、それぞれの女神と相対する暗黒星くろめ。ダークメガミ…自らの生み出した、偽神の巨躯を己が身に纏い、女神達と激突する。

 漸く行き着いた決戦。今の信次元を守る女神達にとっても、今の信次元を変え、自身の思う『在るべき形』へと再編しようとするくろめにとっても、譲る事の出来ない戦い。

 妄想能力という唯一無二の力を持ち、その上で決して妄想能力特化ではない暗黒星くろめ…否、『天王星うずめ』という女神が強大である事は、間違いない。完全な状態でないにも関わらず、ここまで脅威となり得た時点で、それは火を見るよりも明らかな事。…だが──。

 

『はぁああああぁぁぁぁッ!』

「ぐッ、うぅぅッ!くそぉッ!くそッ、くそ…ッ!」

 

 そよ風に舞う木の葉が如く滑らかに、それでいて猛禽を思わせる程機敏に空を、宙を駆ける女神達。縦横無尽に飛び回る彼女達は、ダークメガミを…くろめを翻弄し、その迎撃を全て振り切り、くろめの動きの先を行く。各部から放たれるエネルギー刃、二対四本の腕を持ってしても女神全員を捉える事は敵わず…死角から飛び込んだ攻撃が、ダークメガミの装甲を叩く。強固といえど、無敵ではない装甲が傷付き、エネルギー刃の射出部位が砕け、何度もその巨体が揺れる。

 確かに彼女は強い。ネクストフォーム、ビヨンドフォーム、リバースフォーム…イリゼ達の掴んだ新たな力と比較しても、くろめの妄想能力は何ら引けを取らない。状況によっては、比較にならない程優位に立つ事も十分にあり得る。…されど、その能力を十全に発揮出来るのは、あくまで非戦闘時。彼女の駆るダークメガミ…プロトダークも強大ながら、女神達は対ダークメガミ戦を十分に経験済み。そして今は、あまりに多勢に無勢であり……幾ら強くとも、いまのくろめは全てが「手遅れ」の状態だった。

 

「そこッ!」

「てりゃーッ!」

「ユニちゃん…!」

「えぇッ!」

 

 守護女神達が付かず離れずの距離を飛び回る事で注意を引く中、地面すれすれの高度から一気に上がり、左右からダークメガミの正面に躍り出たネプギアとラム。ネプギアは装着状態のビット四基とM.P.B.Lによる五門同時斉射を、ラムは展開した四つの魔法陣からそれぞれ違う属性を持った魔法を放ち、ダークメガミの胴を撃つ。撃ち込んだ直後、二人は離脱し…入れ替わる形で、ユニもロムが上空から強襲。巧みに迎撃を避けるネプギアやラムとは対照的に、二人はロムが四つの魔法陣を重ねる事で展開した障壁を用いて正面突破し、迎撃網を抜けたユニは至近距離から全ての銃器を展開し放つ。

 女神候補生四人の、それもビヨンドフォームでの連携連続攻撃を受け、ぐらつくダークメガミの巨体。先に後退したロムに続く形で退避しようとするユニを、踏ん張り堪えたくろめは何とか右の拳で横から殴り付けようとするが…それは彼女達の思う壺。

 

「プルルート!ピーシェ!」

「ふふっ、任せて頂、戴ッ!」

「いっくよーっ!てぇぇええいッ!」

 

 右腕部の拳が振り出された時、神次元からの三人もまた、攻撃態勢に入っていた。女神候補生達の攻撃は、勿論それ自体がダメージを狙ったものではあったが、同時に反撃を引き出し、そこへのカウンターへ繋げるという意図もあった。

 加速し、滑り込むように反対側から拳の側を駆け抜けたセイツは、連結状態の剣ですれ違いざまに一閃。その一撃は、ダークメガミの手首を強かに斬り裂き、直後にプルルートの蛇腹剣が斬られた右の手首へ巻き付く。腕を捉え、更に刃が切り口へ食い込む。プルルートが締め上げる事によって、セイツの与えた傷がより深いものへと変わっていく。

 そして最後にピーシェが強襲。エネルギー刃を砕きつつも猛烈な勢いで飛び込んだピーシェは、拳に向かって全力で殴打。突進の勢いを乗せた右腕の鉤爪を叩き付け、軋ませ、そこでプルルートが今一度全力で蛇腹剣を引き…拳を、引き千切る。裂けた部分からへし折るように、三人の連撃が手首から先を切断する。

 

「ちッ、ぃぃ…ッ!ただの女神程度が…ぐぁあぁぁッ!」

 

 武器こそ持っていないとはいえ、手としての機能を失うのは大きな損失。当然掌底部からの砲撃も出来なくなり、歯噛みしつつもくろめは下がる。

 だがその背後を、衝撃が襲う。回り込んでいたブランの砲…ブラスターコントローラーによる砲撃がダークメガミの翼の一部を吹き飛ばし、同時に再びその姿勢を崩す。

 

「悪いな。このまま一方的にやらせてもらうぞ」

「抜かせ…ッ!オレはまだ、八割しか力を出して──」

「なら、わたしは五割…とでも言おうかしら?」

 

 振り向いた時、ブランは二射目の段階に入っていた。反射的にくろめはダークメガミの左腕を突き出し、掌底部からの砲撃で何とか二射目を相殺するも、その隙にネプテューヌが迎撃を抜けて一気に肉薄。脇構えを思わせる姿勢から逆袈裟を放ち…それ自体は、間一髪で避けられる。ほんの僅かに、触れてみなければ分からないレベルの擦り傷が一つ付く程度にしか大太刀は届かず……されど次の瞬間、その斬っ先が掠めた肩部の装甲が、丸ごと消失する。彼女の攻撃、彼女の力の前では、如何なる装甲も、如何なる防御もその意味を成さないと言い放つように。

 巨体且つ単独故に完全回避など出来る筈もなく、ある程度は装甲で受けて耐える必要のあるくろめにとって、ネプテューヌの力は天敵中の天敵。そのネプテューヌからの追撃だけは受けるものかと即座に反撃しようとするが、直後にくろめが感じた危機。その直感に促されるままに、候補生達の遠隔攻撃を受けながらもくろめは飛び上がり…一瞬前までダークメガミがいた場所を、巨大な槍が貫いた。別の場所から放たれたのではなく、その場に直接現れた槍が。

 

「こ、のッ…お前達、なんかにぃぃぃぃッ!」

 

 その一本を皮切りに、次々と槍が飛来する。一本一本は装甲で容易に弾けようとも、まともに受け続ければすぐに押し切られる程の槍の嵐が。

 それを受けながらも、高度を上げたくろめはダークメガミの前面を下に向け、エネルギー刃の集中砲火を叩き込む。このままやられてなるものか、負けるものかという意思の籠った集中砲火は、既に何割かの射出部位を破壊されても尚十分な火力を持ち…それでも、捉え切れない。

 

「諦めなさいッ、くろめッ!」

「貴様に勝ち目は、ないッ!」

 

 速いを超え、最早気付けばそこにいたとしか言いようのない速度で懐に飛び込んだノワールは、すれ違いざまに斬り付ける。その後を追うように舞い上がるイリゼは圧縮シェアエナジーの解放を惜しげもなく使う事で強引に突破し、巨大な剣を…凡そ人が使う物とは思えないサイズの剣を左右に携え挟み込むような形で振り出し、ダークメガミへ追撃を浴びせる。

 二人の攻撃で、更に破損し散っていく装甲。その頃には他の女神達もエネルギー刃の乱射から脱し、逆に彼女達の攻撃が装甲の欠損した場所へと喰らい付いてダークメガミの力を奪っていく。

 

「無理だよ、【オレ】っ!【オレ】の力は、うずめより強いのかもしれないけど、皆は一人じゃないもん!皆で合わせた力の方が、ずっとずっと強いんだもんっ!」

「五月蝿いッ!オレの方が…オレの、力こそが…ッ!」

 

 抑え切れない動き、止む事のない攻撃にくろめが追い詰められていく中、うずめはダークメガミのすぐ側を飛び回る。他の女神達程派手な動きこそないものの、同じ「うずめ」であり、くろめの方は相当焦っているからか、うずめは動きが読めているかのようにダークメガミの攻撃を巧みに躱し、打撃で、音波攻撃で一つ一つエネルギー刃の射出部位を破壊していく。そしてその間も他の女神達の攻撃は止まず、どちらかに意識を向けようとすればどちらかから諸に攻撃を受け、両方意識しても対応し切れずと、そんな悪循環にすらくろめは陥る。

 

「これだけ受けてもまだ致命傷だけは巧みに避ける辺り、プロトダークっていうのは油断ならないね…」

「そうね、でもここまで粘れてるのは、間違いなく彼女の精神、意地あってのものよ。…ほんと、残念…敵じゃなければ、今すぐ抱き締めたい位なのに……」

「あ、あはは…けどこのままだと、短期決戦では終わらせられない気もします。どう、しますか?」

「積み重ねるだけじゃ押し切れないなら、一気に決めるしかないわ。…皆、少しだけ時間を稼いでくれるかしら?」

 

 今のくろめは、瀬戸際で踏み留まっているようなもの。瀬戸際まで追い詰められ、押され続け、しかしそのままやられる事だけはなく、踏ん張っているようなもの。

 勝つだけならば、それでも問題ない。だが今イリゼ達が目指しているのは、そうせんとしているのは、短期決戦。くろめがプロトダークと完全に一体化する前に決着をつけるべく戦っている以上は、このままではいけない。

 ならば、どうする。…それに対し、声を上げたのはネプテューヌ。言った直後、ネプテューヌは同じ守護女神の三人へと視線を送り…今一度、イリゼ、セイツ、ネプギアを見る。その動作によって、三人はネプテューヌのやろうとしている事を理解し…揃って、頷く。

 

「頼んだわよ、皆…ッ!」

 

 身を、翼を翻し、離れていくネプテューヌ達四人。対象的に近接戦を主体とする五人の女神は突進をかけ、女神候補生の四人は四方に分かれて射撃と魔法を叩き込む。

 ネプテューヌが頼んだのは、あくまで時間稼ぎ。しかしその時間稼ぎで終わらせるつもりは、誰にもない。

 

「ほにゃーっ!」

「ぴぃもほにゃー!」

「いくわよぉ?ロムちゃん、ラムちゃん!」

 

 迎撃の範囲内からはイリゼの射出する武器が、範囲外からはネプギアとユニのビーム照射がダークメガミを襲う。イリゼの射出はフルオートの機関砲が如き勢いで放たれ、二人の照射は一切の威力減衰を起こさないまま薙ぎ払われ、装甲の失われた部位を捌いていく。

 されどそれは、くろめの気を引く為の攻撃。くろめはまだ残る左掌底部からの砲撃でネプギアとユニを、武器と一体化したもう一対の腕でイリゼを狙うが、その上方からうずめとピーシェが同時に強襲。突き刺すような二つの飛び蹴りがダークメガミの頭部を打ち、衝撃で以って頭を前に倒し、砲撃と振り下ろし、そのどちらの攻撃も空振らせる。

 そして更にそこへ、プルルート、ロム、ラム…魔法に長ける女神三人による、光芒が如き電撃がダークメガミの左脚を襲う。正面、側面、後方…それそれ違う方向から放たれた攻撃ながら、三つの電撃は全てダークメガミの膝を貫き、がくりと大きく姿勢が崩れる。

 

「つぁ…ッ!だが、この程度…飛んで、しまえば…ッ!」

「──天舞弐式・椿ッ!」

「──真巓解放・敬愛ッ!」

「……ッッ!」

 

 先のブランの砲撃を始め、翼にも何度も被弾している。それによる飛行、滞空能力の低下を意識し降りていたくろめだが、脚部をやられたとなればこのまま立っている事こそ危険。完全に後手に回っている事に歯噛みしつつも、くろめは飛翔をしようとし…しかしそこにはイリゼとセイツが、二人の連携が待っていた。

 長剣と連結剣。それぞれの得物を用いた、流れるような連撃。イリゼは有り余るシェアエナジーを展開し、セイツはプロセッサに装填されたシェアエナジーを的確に解放し、的確に装甲の隙間を斬り裂いていく。触れるすれすれの距離で飛び回り、位置も向きも一太刀毎に変えていき、一度たりともその動きの先を読ませる事なく舞い上がる。

 そうして斬り裂き続けた末、半ば強引に張り出された武器腕の一撃を鮮やかに回避した二人は視線を交わらせ、同時に最後の一太刀を放つ。武器腕の背を、振り抜かれた瞬間に裏側から二人の刃が強かに打ち据え…武器腕の先の刃が砕ける。砕けて折れ、その先が落ちていく。

 

(まさか…ここまでの攻防で損傷していた場所を狙って……)

 

 プロトダークは満身創痍。殆どの部位に細かな傷が、ダメージが蓄積しており、万全と呼べる部位などはどこにもない。そして巨体故に、完全な一体化はしていないが故に、くろめ自身は自らが操るプロトダークの微細な損傷を把握し切る事が出来ない。

 右手を失い、武器腕も片側が破損し、左脚と翼も機能が落ちている。装甲とエネルギー刃射出部位の損害は最早比べるまでもなく……対する女神達はほぼ無傷。少なくとも戦闘能力の低下に繋がる怪我は一切無く、くろめからすれば絶望的な戦況以外の何物でもない。そこまでの状況にありながら、それでもくろめが諦めないのは、歯を食い縛って踏ん張るのは、それだけ強い意思の表れか。それとも物理的にも、精神的にも、もう退く事など出来ない、逃げる先などないからか。

 万に一つの可能性もないような劣勢でも諦めない彼女の姿は、その理由が何であれ、曲がりなりにも『女神』である事を思わせるかもしれない。だが、引きながらも射出した刀剣で、撃ち込んだ圧縮シェアエナジーの解放爆発で追い討ちをかけるイリゼとセイツを逃がしてしまったその瞬間…完全に、決着の形という未来が確定する。

 

「待たせたわね、皆」

「後はわたくし達に任せて下さいまし」

 

 正面からイリゼ達が退いた事により、前方という包囲が一気に開いた事により、逆にくろめの意識はそちらに向かう。

 その開いた空間の先には、守護女神の四人が…まだ扱いが難しいネクストフォームでの全力を制御する為、意識を集中させていたネプテューヌ達が構えていた。即座にくろめはその意図を理解し、距離を取る事を考えるが……声が、叫びが音の衝撃となって戦場に響く。

 

「任せるよ、皆ーッ!!」

「……──ッ!?【俺】…よくも……ッ!」

 

 再び真上から叩き付ける、うずめの攻撃。メガホンを介して広がる叫びは、ほんの一瞬ながらダークメガミを押さえ付ける。押さえ付け、下がる動きが一瞬鈍り…次の瞬間には、飛来する。砲撃が、刺突が、刃が。

 

「これで終わらせてやるよ、くろめ…ッ!」

 

 何よりも速く駆け抜けたノワールの斬撃が、機能不全に陥っていた左脚の膝部を斬り飛ばし、完全にその機能を奪う。

 続くブランの青い光を浴びた砲撃と、その周囲を吹雪の様に舞う無数の槍。対するくろめはダークメガミの両腕部に備えられた盾、それを用いて防ごうとするも、巨大な光の柱となった砲撃は二つの盾を同時に破り、追撃の槍群が盾を粉々に砕き散らす。

 更に飛来する、黒紫に輝く斬撃。仰け反りながらも反射的にくろめは破損していないもう一方の武器腕を振るうが、斬撃に触れた次の瞬間にはもう武器腕を切断されていた。凡ゆる要素を無視し、ただ『斬れた』という事実だけが残ったが如く、無情な程にあっさりと。

 

「ぐぅッ…だと、しても…オレには、まだ……ッ!」

「いいえ、終わりよ…くろめ」

 

 吐き捨てるように、絞り出すようにまだだというくろめとは対照的に、静かに響くネプテューヌの声。振り抜かれた大太刀を構え直し、くろめを、決着を見据え…最後の攻撃が、始まる。

 前方のベールと、後方のノワール。緑と黒の光となった二人は凄まじい速度でくろめの、ダークメガミの左右に回り込み、槍と剣の連撃を…無限にも迫る創造の刺突と、時間の概念を超えた加速の斬撃がダークメガミの両腕部を貫き、穿ち、捌き、斬り裂く。

 それに対するくろめの対応はない。だがそれはしないのではない。何十、何百…否、何千を優に超えていたとしてもおかしくない程の物量と、気付いた時にはもう全ての攻撃が済んだ後だったと言っても過言ではない速度を前に、対応など出来る筈がなく……粉微塵となって、両腕部が砕け散る。その両腕が、失われる。

 

「ブランッ!」

「このまま行きなさいなッ!」

「あぁッ!」

 

 崩れ落ちる腕の破片の中で二人は退き、天空からブランが急降下。猛烈な勢いと共に、大戦斧を振り被った状態で飛来し…くろめは避けようとする。先の攻撃とは違い、見切れる速度である為に、寸前で躱す事を考えていた。確実に避ける為、引き付けた上で寸前に。

 だが…見切ろうとしていたブランは、まだあった筈のブランとの距離は、気付いた時には無くなっていた。既に背後に回り込んでいた。…ノワールとは表裏の力、時間の流れを凌駕する減速の力がくろめへと停止を与え、素通りを果たしたブランの一撃が、全力の振り下ろしが翼を基部から叩き斬る。既に被弾を重ねていた翼が彼女の全力に耐えられる筈もなく、砕け散った腕の後を追うように翼もまた落ちていく。

 

(…まだ、だ…まだオレは、オレは……ッ!)

 

 背面に広がる翼を失い、ダークメガミは前方によろける。片脚が機能を失い、両腕は最早ない今のダークメガミは姿勢を立て直す事すら出来ず、巨体の動きを止められない。

 その内部で、心の中で、くろめはまだだと、まだ終わりではないと叫ぶ。全てを失い、引き返す道も自ら断った自分にはもう、望み願った未来を、未来という過去を得るしか道はないのだから、自分にはもうそれしかないのだからと。

 されど…嗚呼、それは叶わない思い。姿勢を崩した先で待つのは……その刀身に煌めく光を、シェアエナジーを纏わせたネプテューヌ(当代のパープルハート)

 

「この一撃を以って、わたしは、わたし達は、未来を掴み取るわ。それが…女神だものッ!」

 

 放射状に広がる、紫のシェアエナジーの光。その光をたなびかせ、突っ込んでいくネプテューヌ。そして…大太刀が、ネプテューヌが、絶対の破壊を以って未来を斬り開く彼女の力が……消滅させる。核となったくろめは、くろめだけは微塵も傷付ける事のないまま、ダークオレンジとなったプロトダークを、歪んだまま貫かれ続けたくろめの大望を…滅びの、未来を。

 

『────ガーディアンフォース・ザ・ネクストッ!』

 

 ネクストフォーム。自らの限界を超え、高みへと手を伸ばし、未来を掴む女神の力。シェア(思い)が生んだ、新たな奇跡の可能性。その力は、その思いは、繋がりの強さは……繋がりを断ち、未来へ至るのに必要な今を歪んだ形でしか見えなくなっていたくろめを、『自分の思い』だけに囚われたくろめを凌駕するには、十分過ぎる程のものだった。

 

 

 

 

 プロトダーク…恐らくはダークオレンジと呼ばれるダークメガミは、消滅していく。わたしの力で、わたしが大太刀を振り抜いた瞬間に、胴が完全に消失して…他の部位も、宙に溶けるようにして消えていく。

 わたしは、ゆっくりと降りていく。くろめを、抱えながら。ダークメガミだけを斬り、消滅させた事で残ったくろめを抱えて、大地に降り立つ。

 

(…輝く紫電・ネプミサイル…なんて、ね)

 

 完全勝利出来たとはいえ、これは黒幕の一人であるくろめとの戦い。だからか、自分でも思っていた以上にわたしは緊張していたみたいで…着地し、ネクストフォームを解いた瞬間、人の姿の時みたいな事を考えてしまった。それに思わずくすりと笑って…それからわたしは、くろめを降ろす。

 

「…くろめ。貴女の、負けよ」

「…………」

 

 感覚的に、分かる。くろめには、一切の怪我を与えていない。間違いなくわたしは、プロトダークだけを斬った。

 けれど、くろめは反応しない。聞こえてはいる筈だけど…それに対する答えがない。

 

「お姉ちゃん!」

「ねぷっち!…ってわわっ!?…あ、あっぶねぇ…ぎりぎりシェアエナジーが持ってくれたぜ…」

 

 空からの声と共に、皆も降りてくる。皆無事で、誰も欠けてない。着地の直前に、シェアエナジー切れでうずめは女神化が解けてしまったけど…当然、元気。

 勝てた事も勿論嬉しいけど…それ以上に、こうして皆がいる事の方がわたしは嬉しい。だって…皆で迎える事が出来なきゃ、どんな勝利も虚しいもの。

 

「ねぇ、わたしたちって勝ったのよね?だいしょーり、よね?」

「これでみんな、守れたんだよね…?」

「えぇ、これで後は…って、そうだ…!オリゼさん、それにレイがまだ…って、あれ…?」

 

 興奮の声を上げるロムちゃんとラムちゃん。それにわたしは、そうだと答えようとして…直後のユニちゃんの言葉で、思い出した。確かにくろめには勝ったけど、くろめにも引けを取らないもう一人の脅威が、まだ残っている事に。

 反射的にわたしは…というか皆視線を上げた。上げて、負のシェアの城を見て…気付いた。城の一部が、砕けている事に。しかもどういう事か、直る事なく砕けたままになっている事に。

 

「…あの砕け方…ただ攻撃が当たったっていうより、内側から何かが飛んでいったような形だよね……」

「内側…まさか、オリゼとレイがあそこから……」

「……!…おねーさん……!」

「え、ちょっ…ぴーしぇちゃん…!?」

 

 呟くイリゼとセイツの声が聞こえた次の瞬間、ピー子が不意に飛び出す。ぷるるんが慌てて呼んだけど、脇目も振らずにピー子は行ってしまった…わたしがぷるるんに視線を送ると、ぷるるんはゆっくりと首を横に振った。…大丈夫、止めないであげて。そんな雰囲気を、瞳に籠らせて。

 

(ピー子……)

 

 よくは知らない。訊いた事もないし、話された事もないから。でも多分、ピー子にとって彼女は…レイは、ただの敵じゃない。今飛び出していったのも、きっとそれが理由で……

 

「……もう、いいや…」

 

 そう、思っていた時だった。ぼそりと、小さな声が…疲れ切ったような声が、前から聞こえてきたのは。

 もう、いいや。…そう言ったのは、くろめ。振り向くと、そこには顔から表情の消えた…何もかもを諦めた後のような顔をしたくろめがいて、そのままくろめは倒れ込む。脱力したように、後ろへばたりと。

 

「…くろめ…さん……?」

「もう、十分だ…もう、沢山だ…これだけ頑張って、何もかも費やして、皆の為にずーっとずーっとやり続けて…また否定されるなら、もう全部がどうだっていい…。結局全部が無駄、うずめがやってきた事は、全部全部…なーんの意味もない、誰も分かってくれなんかしない、無駄に終わる頑張りで……」

 

 困惑するネプギアの声にも返す事なく、くろめはぼぅっとした目で一人呟く。怒りや悲しみ、悔しさや無念…そんな思いも全て抜け落ちた後の、諦観の果てにあるような声で。

 くろめに対して、わたしは知らない事が多い。知っている事もあるけど、きっと知らない事の方が多い。それでも今のくろめはあまりにも悲痛で、哀れで、わたしは思わず声をかけようとし……だけどそれよりも早く、うずめが前に出る。

 

「うずめ…?」

 

 無言で、うずめが前に出る。出て、歩いて、くろめの前に向かっていく。くろめはそれにも気付かない中、すぐ側まで歩いていって…くろめの胸ぐらを、掴む。掴んで、引っ張り上げる。

 そこまでされて、漸くくろめは気付いた。うずめを見て、でも表情は変わらないままで、うずめに何か言おうとして……

 

「ふざ、けんじゃ…ねぇぇぇぇええええええッ!!」

 

──うずめは、腕を振り抜いた。右腕を、右の拳を振り抜き……くろめを、殴り飛ばした。全ての思いが凝縮されたような、「ふざけるな」という言葉と共に。




今回のパロディ解説

・「〜〜オレはまだ〜〜を出して──」「なら、わたしは五割〜〜」
家庭教師(かてきょー)ヒットマンREBORN!の主人公、沢田綱吉とキャラの一人、白蘭のやり取りの一つのパロディ。淡々と五割だ、と返すシーンは格好良いですね。

・輝く紫電・ネプミサイル
STAR DRIVER 輝きのタクトの主人公、ツナシ・タクトが乗るサイバディ、タウバーンの必殺技の一つのパロディ。中にいる人だけを助けて破壊する攻撃、という事ですね。
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