超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
長かった。これは、凄く長い時間だった。今の『俺』として認識している時間は、そこまで長くないが…あの日から、終わってしまった俺とうずめの時間が今こうして再び動き出すまでは……本当に、長い時間がかかった。
これを、俺のこの選択を、皆はどう思うだろうか。まあまず唖然とするだろうが…その後は、どうしようとするだろうか。…分からない、分からないが……なんであれ、俺は俺を貫くだけだ。やっと俺は…あの時止まった時間の、その先に辿り着く事が出来たんだから。
「ウィード…ウィード……っ!」
「大丈夫、大丈夫だ。ちゃんと俺は、ここにいるから」
俺があの日渡せなかった髪留めを渡し、うずめが自分自身を縛っていた鎖を、心の壁を解いてから、うずめは何度も俺の名前を呼んだ。その言葉で、そこに籠る思いで、俺は強く、深く感じる。どれだけうずめが、俺を思ってくれていたかを。どんなに俺を、信じてくれていたのかを。
気を遣ってくれているのか、皆は何も言わなかった。俺もうずめを、抱き締め続けた。キザな言い方になってしまうが…もう少しの間でいいから、俺もこうしていたかった。離したく、なかった。
「……落ち着いたか?」
「……うん…」
どれ位かは分からないが、うずめを抱き締め、言葉と思いを受け止め続けてから、暫くの時間が経った。俺の言葉に顔を上げたうずめは、小さく頷いて…その時の表情は、当たり前だがプロトダークと戦った後、思い悩んでいたうずめと俺が話し、同じように思いを吐き出した後のうずめとそっくりだった。…そっくりっていうか、完全に同じ…だな。
「…立てるか?」
「……これ位、一人で立てるさ」
「かもな。でも、手を貸してもらった方が楽だろ?」
先に立ち上がった俺が、手を差し出す。うずめは一度躊躇って…だが俺の言葉に小さく笑うと、俺の手を掴んで立ち上がる。
「よ、っと。…ありがとう、皆。俺に、時間をくれて」
引っ張り上げた後、手を離した俺は振り返り…皆へと頭を下げる。
理由はどうあれ、事情はどうあれ、うずめは信次元を、三つの次元を窮地に陥らせた、謂わば敵。対して俺は、仲間ではあっても、この戦いにおいては何にもやっていない訳で…その俺に何も言わず時間をくれた事、俺の気が済むまで待っていてくれた事には、感謝しなくちゃいけないと思っていた。
「大丈夫だよ、ウィード君。…ウィード君の本気は、ずっと伝わってたから」
「わたしもです。ウィードさんの貫きたい思いは…わたしにも、伝わっていました」
「うんうん、素敵だったよウィードくん!…それに、嬉しいな。こんなにも、くろめを思ってくれる人がいたんだって分かったから」
頭をあげると、皆が向けてくれていたのは微笑み。イリゼ、ネプギア、それに大きいネプテューヌ。三人は次々と、俺の思いと行動を肯定してくれて…嬉しいが、その反面恥ずくもあった。そういう事を言われると、途端に「あぁ、やり取りぜーんぶ見られてたんだよなぁ…」と感じてしまうものだから。
(…でもこれは、俺に対する言葉だ。俺にであって…うずめに対する言葉じゃない)
そう。俺には分かってる。うずめにはもう、黒い感情は…行き過ぎた思いによる、歪んだ正しさを追おうという意思はない。勿論、人の理念や信じるものはそう簡単には変わったりしないし、うずめだってそうだろうが…少なくとも今のうずめを、その『正しさ』へ何が何でも駆り立てようとするものはない。
けどそれは所詮、俺がそう感じているというだけの事だ。例えばこれが、個人の喧嘩とかなら、皆も俺の言葉で納得してくれるかもしれないが…うずめのしようとした事、してきた事は、そんな些細なレベルじゃない。だからどんなに話しても、理解してもらえないかもしれない。だけど俺だって、諦めるつもりはない。うずめの為なら、幾らでも……そう思っていた、時だった。
「……へっ。良かったじゃねぇか、ウィード、【オレ】」
「…ぁ……」
聞こえたのは、落ち着きのある声。そちらを向けば、そこには肩を竦めているうずめ…もう一人のうずめがいて、うずめはぴくりと肩を震わせる。
「ったく、俺達は必死に戦って、俺はその後更にお互いボッコボコになるまで殴り合ったってのに、お前は無傷で美味しいところを全部持っていきやがったな?一緒に戦えとは言わねぇが、流石に少しズルいっての」
「う…それは、まぁ…なんていうか…悪い……」
「で、【オレ】も【オレ】だ!なーにが遅過ぎるだ、ずっと待ってただ!周りとかいうレベルじゃない範囲で迷惑かけまくりながら待つとか、何考えてんだ!待つなら静かに待てっつの!」
「なっ…【俺】にオレの何が……」
「何が分かる、はもういいわ!…つか、分からないなら何なんだよ。分かるなら素直に聞き入れるのか?」
「…聞き入れるさ、それが納得のいく言葉ならね」
「あぁそうかい、それは自分の都合で良し悪しを決められる言い方だっつーの。…ほんとに、【オレ】は勝手なんだよ…何もかも、全部……」
俺は普通に言い返せず、うずめは皮肉気味な笑みを浮かべて言葉を返し、険悪…というか、いがみ合うような雰囲気を見せる二人。俺はそれに苦笑いし…だが、気付いた。最初は笑っていたうずめの表情が…よく見ればどこか、寂しげである事に。
「…ほんと、良かったなウィード。ちゃんと思いを、果たしたかった事を果たせて。これで俺も、一安心だ」
「……?…そりゃ、勿論良かったが…どうしたんだよ、急に……」
「別に、何でもねぇよ。…けど、やっぱ…そう、だよな…お前が、ウィードが想ってたのは…【オレ】、なんだよな……」
「……っ…うずめ、それは……」
落ち着いた、もう受け入れている事だからと言うような雰囲気と共に言ううずめに、俺ははっとする。
多分俺は、そこまで察しのいい人間じゃない。心の機微なんて、分かってなかった事の方が多いだろう。…けど、そんな俺でもこれは分かる。これまでずっと記憶のないうずめを見てきて、思いにも触れてきた俺だからこそ…その気持ちだけは、分からない筈がない。
「いや、いいんだウィード。何となく分かってた事だからよ。それに、ずっと大切に想ってたのはウィードも同じだろ?なら、俺に構う事なんかねぇって」
「や、だから……」
「……俺は…、…いや。…勝手に話を進めないでもらおうか、【俺】」
あまりにも悲しい穏やかさ。納得という蓋で感情を押し込めているような、そんな笑み。そんなのは、そんな表情は、俺が望んだものじゃなくて…だけど、それに待ったをかけたのは俺だけじゃなかった。一度は表情を曇らせたうずめが、今は真っ直ぐな瞳を浮かべて…もう一人の自分に、柔らかくも悲しい笑みをするうずめに、真っ向から向き合う。
「…何だよ、何か文句でもあるのかよ」
「あぁあるさ、大有りだよ。一体何のつもりかは知らないけど…オレはこの次元と神次元を崩壊に陥れ、その上で作り変えようとしたんだ。そしてその結果負けた、完全に打ちのめされたオレが、ウィードに相応しいとでも?」
「…お前…それを自分で言うのか……」
「ふん、既にこれ以上ない程無様な姿を晒したんだ。今更気にする恥があるか。…それに、今のオレはもう、昔の『俺』じゃない。…ふふ、何とも皮肉なものさ。記憶のない【俺】が昔のままで、記憶のある【オレ】は昔とは違う…【俺】とぶつかって、それをまざまざと見せつけられるなんてね」
まるで調子を取り戻したように、うずめとは違う穏やかさを持って言葉を紡ぐうずめ。それからうずめは肩を竦め、自分は昔とは違うのだと…【オレ】ではなく【俺】こそが、より『うずめ』らしいのだと言う。
それは…確かにそうかもしれない。俺の記憶の中にある、イメージとしてのうずめは、確かにそうだ。…でも、それは…だとしてもそれは……。
「…強がんなよ、さっきまでわんわん泣いてた癖に」
「【俺】こそ強がる事はないさ。まるで表情を隠せていないよ」
「う…ずっと待ってたんだろ?だったら今更何を気にしてんだよ…!てか、ウィードの気持ちを考えやがれ!」
「ウィードの事を言うなら、尚更だ…!ウィードが想ってくれているのは『うずめ』であって、今のオレじゃ……」
「ちょっ、待った!待てってうずめ!うずめも!」
『どっちがどっちだよ!』
喧嘩を仲裁しようとしたら、両方から(言葉か物理的に)叩かれるというベタな展開を味わい、思わず俺はたじたじに。
けどまぁ、言い返しの内容自体はご尤も。ここまでは感情優先で両方「うずめ」と呼んでいたが、それじゃどっちの事なのかなんて俺以外が分かる訳がない。
「あ……じゃ、じゃあ取り敢えずは、うずめとくろめで…」
「…分かっただろう?結局今のオレは、『くろめ』なんだ。そして、勝った者こそ正しい、正しい者こそ勝つのだとすれば…でっち上げだったのは、オレの方だったのかもしれないんだ。…あぁ、そうだよ…うずめなんてどーせ……」
「い、今になって急にネガティヴ思考してんじゃねーよ!んで、ウィードもウィードだ!うずめって名前は、本来【オレ】のもんだろうが!ちょっとは気を遣え気を!俺の事は…えーっと、オレンジ…は上手く組み込めそうにないから、別に殺し屋じゃないがアカメとか……」
「いや、だから…あーもうッ!ほんとになんで二人は…うずめってやつは人の話を聞かないかなぁ!?」
『うぇっ!?』
一先ず呼び直す俺だったが、二人は俺が続けようとしていた言葉を待つ事なく、くろめは一人で落ち込み出すし、うずめはまあまあ理不尽な事を言ってくるしで、どっちも俺の話を聞く気は皆無。どっちも頑固で、どっちも退く気がなくて…つい、また俺は声を荒げてしまった。
うん、分かってる。この短いスパンで二度目のキレを見せたら、キレキャラっぽくなってしまうのは。けど、考えてみてほしい。二人共、完全に俺の意見を無視して…どころか、勝手にこうだと思って言い争っているんだ。私の為に争わないで!…的な展開は、創作じゃよくあるが…人の考えを無視して争われるなんて、理由にされる側としては堪ったもんじゃない。
「なんでいきなり…ってか、また言い争うんだよ!しかも、俺に相応しいとか、俺の気持ちをって…言っておくけどな、相応しい云々を言い出したら、よっぽど俺の方が相応しくねぇよ!だってうずめは女神だし!」
「あ、いや…オレはそういう意味で言ったんじゃ……」
「それに女神ったって、今は国の長じゃ……」
「そうやって言い訳出来るなら、相応しいかどうかも言い訳出来るだろ…それに、何より…俺はそんな事、うずめとくろめのどっちが良いとか、どっちかを選ぶとか…そういう事は、ちっとも望んでなんかいねぇよ!」
『……っ!』
言った、言い切った俺の言葉に、うずめもくろめも…いや、全員が目を見開く。
…正直、これを言うのは恥ずかしかった。皆の前どころか、うずめとくろめの二人しかいなかったとしても、俺は躊躇っていただろう。けど…躊躇う気持ちはあろうとも、何も言わないという選択肢は俺にはなかった。…少し、怒っていたから。俺にとっての大事な思いを…譲れない想いを、勝手に決めるな、って。
「言っとくけどな、うずめとくろめ、どっちか一人でいいなんて事は、絶対にないからな!あぁそうだよ、俺はあの日から…いいや、その前からずっとくろめの事を想ってた!記憶を取り戻してからずっとくろめにまた会いたいって思ってたし、あの日渡せなかったものを渡せて、本当に良かった!そりゃ勿論、くろめのやった事は俺だってちっとも、これっぽっちも肯定なんて出来ないが…それでもくろめは、俺にとって心から大切な相手なんだよッ!」
「な…ななっ……!」
「……っ…だろ…?だったら、やっぱり……」
「けどな、今ここにいる俺は、あの日から直接来た俺じゃねぇ!記憶喪失だった頃の記憶も、その時の思いも…うずめと紡いだ時間だって、俺の中にはあるんだよ!記憶喪失だった俺が支えたい、これからも一緒にいたいって思ったのはうずめで、それは記憶を失う前の俺の思いやくろめの存在なんて関係なく、うずめ自身に抱いた想いなんだよ!この想いは、くろめへの想いと順位を付けられるものじゃなくて、うずめだって大事なんだッ!」
「んなぁ……っ!?」
反論は聞かない、受け付けない。意見でも主張でもなく、俺の思いなのだから。そう宣言するように、叩き付けるように、俺は言葉を重ねる。
くろめもうずめも、そんな俺の言葉に固まり、顔を赤くする。けど多分、俺も赤い。こんなのほぼ…っていうか、完全に告白なんだから、そりゃ赤くなるに決まってる。
……ああ、でも…これが俺の、想いなんだ。そして多分、こんな事を言う機会なんて、滅多にない。あるかどうかも分からない。だったらもう、躊躇うものか。全部全部言い切って…伝え切る。その思いで、その気持ちで……俺は、言う。
「分かるよ、分かってるよ!記憶のない、二人になる前の自分の事が分からないうずめの引け目も、もうあの日までの自分とはかけ離れちまったくろめの負い目も、全部!けど…記憶がなくたって、一緒にいた時間は…今の時間は、確かだろッ!どんなに変わった部分が多くなって、昔の…変わらないままの部分だってあるんだよッ!二人自身がどう思おうが、どう感じてようが、俺からすればうずめもくろめも、どっちも紛れもない『うずめ』で……──そんなうずめが、俺は好きなんだよッ!」
頬が熱い。なんで俺は、皆が見てる前でこんな事を言ってんだ、って気持ちもある。…でも、後悔はない。あるもんか。俺は『うずめ』が好きで…この想いだけは、誰にも負けないと思っているから。
──そうだ。俺は、歩みたい。これからの時間を、未来を…二人の、うずめと共に。
「…わぁお…もしかしてこれって、お前達が俺の……」
「そうだよそういう事だよ!悪いか!てか、俺は本当に二人共好きで、二人共かけがえのない存在なんだよ!なのに、好きだって思いに順番を付けるとか、どっちかへの思いを切り捨てるとか、そういう事をする方がよっぽど不誠実なんじゃないのか!?」
「ちょっ、まっ、分かった!分かったからウィード!」
「こ、これ以上は止めてくれ…恥ずかしくて、顔が上げられなくなる……」
人間一度フルスロットルになると急には止まれないもので、ぶっとんだテンションのまま大きいネプテューヌにまで言葉をぶん投げてしまう。これには流石の大きいネプテューヌも目を白黒させていて、それを見て俺も「いや、何言ってんだ俺…」って気分になり…真っ赤な顔で慌てふためくうずめと、その言葉通り俯いてしまった(しかも耳が赤くなっている)くろめの制止を受けて、我に返った。
「…………」
『……?』
「……ちょ、ちょっと待って…ヤバい、俺も落ち着いたらくっそ恥ずくなってきた…」
で、俺も大ダメージである。大ダメージというか、大火傷である。…うわ、恥ずっ!落ち着けば落ち着く程恥っず!何これ、俺マジで何言ってんの!?いや、言った内容に後悔はないけども!多分後々、「何だかんだあの時ちゃんと言って良かったな」って思えると思うけどもッ!
「…えっと、貴方大丈夫…?」
「ノワール、今はそっとしておいてあげるのが一番ですわ…」
「そっとしておいて、って言えばぁ…セイツちゃん、いつもならこういう話の時すっごく感動したりするのに、今日は珍しく落ち着いて……って、うわぁ…」
どうしよう、俺も顔上げられないかも…なんて思いながら両手で顔を覆っていると、聞こえてきたのはプルルートの引いた声。なんかもう、ただただ引いてるみたいな声に、なんだと思った俺がちらっと視線を向けてみると……
「はぁ…あぁ…素敵…すてきぃ……♡」
……左手を腹部に這わせ、右手を頬に当て、恍惚な表情を浮かべて艶かしい吐息を漏らす、どう見てもヤバい女神がいた。…うん、これは変態だわ…こっちが一気に冷静になる位の、とんでもない女神様ですわ…。
「…え、えぇと…セイツさんの事はともかく、アタシはウィードさんの想いは、別に間違ってないと思います。…というか、元の『うずめさん』から二人に分かれたんだとしたら、両方す…好きって思うようになっても、この場合においてはおかしくなさそうっていうか……」
「んー…わたしはロムちゃんのこと好きだけど、おねえちゃんのことも好きよ?それとちがうのー?」
「わたしも、ラムちゃんも、おねえちゃんも…ネプギアちゃんも、ユニちゃんも、みんな好き…だよ?」
「二人共、それはまた意味が違うっていうか…いや、一旦その話はいいんだよ。それに関しちゃ、それこそ外野がどうこう言う問題じゃねぇ。それより、今は……」
意外なフォローに嬉しいような、フォローされるのもそれはそれで恥ずかしいような…なんて気分になる中、ブランの一言でふっと雰囲気が変わる。
そして皆の視線が向く先にいるのは、くろめ。それは当然の事であり、本来ならすぐこうなった筈の事。そこに俺が割って入ったのであり、皆はそれを許してくれただけ。
「…くろめ……」
視線を向けられたくろめは、いつの間にか顔を上げていた。顔を上げ、しっかりと皆からの視線を受け止めていて…俺が呼ぶと、くろめは小さく頷いた。大丈夫だ、と返すように。
多分…いや間違いなく、これまでの事は全部水に流そう、チャラにしよう…なんて事にはならない。それは許される事じゃないし…きっと、くろめ自身も望まない。
ここからは、『女神』の話になる。ならば、俺の出る幕はないのだろうか。だとしたら、俺は……そう考えていた俺だったが、そこに待ったの声がかかる。
「…皆、くろめの事もだけど…オリゼも、まだ……」
「そうよねぇ。それに、ぴーしぇちゃんの事も、ね?」
イリゼとプルルート、待ったをかけたのはその二人。出てきた名前に、他の皆も反応し、流れが変わる。
一連の騒動の元凶、その一人であるくろめとの戦いは終わった。でもまだ、全部に方がついた訳じゃない。そして俺も、皆と同じように…未だ空に浮く闇色の城を、見上げた。
*
高速で空を疾駆する、二つの影。人と大差ない体躯を持ち…されど人を遥かに凌駕する、基準を女神に置いたとしても尚桁外れの領域に立つ、二人の姿。
オデッセフィアの守護女神たる、オリジンハート。タリの女神であった、キセイジョウ・レイ。原初と最古、それぞれの次元における、始まりの女神同士が今、初めて万全の…或いはそれ以上の状態で、最後の戦いを繰り広げる。
「あはははははははッ!そーら、よッ!」
バスタードソードと杖、双方の武器が激突したせめぎ合いの体勢で、レイがオリゼを押す形で、両者は信次元の空を横断する。航跡雲を残すように、光を放つ二人のシェアエナジーの軌跡が、空に一本の線を作る。だがそれは、航跡雲が伸びる速度よりも遥かに速く…長い。
その光が伸びた先で、高笑いと共にレイは杖を振り抜く。振り抜かれた杖は、バスタードソードごとオリゼの身体を吹き飛ばす。
「……貴様…」
「そーらそーらそーらぁッ!やっとあんたと邪魔なく、真っ向からぶっ潰せる時が来たんだから…もっと足掻いてくれなきゃ困るのよぉッ!」
即座に姿勢を立て直すオリゼへ、レイも瞬時に再度肉薄し、再び仕掛ける。一見煩雑な、力任せのようで、その実相手の動き、姿勢や目線を的確に捉え、より多くの負担を強いる事が出来る場所へ連撃を与える。
しかし、それはオリゼも同じ事。彼女もまた、レイの一挙手一投足全てを見切り、右手に持つバスタードソードで全て防ぐ。その上で左手を引き、左手にもバスタードソードを精製し、貫き手の要領でレイへと突き出す。
「はっずれ〜♪遅過ぎて当たりませ〜ん!」
「…余程自信があるようだな。わざわざ有利な場を捨てるとは」
放たれた刺突が胸を貫く直前、半身となる事でレイは避け、そこからひらひらと、おちょくるように飛び回る。対するオリゼは追撃をかけず、冷ややかな眼差しと共に言葉をぶつける。
そう。イリゼ達が落とされた時、オリゼは落ちていなかった。小細工も何もない、純粋な能力で力に抗い…そこへレイが牙を剥いた。彼女からすれば邪魔になる有象無象を廃した上で、真っ向からオリゼを倒す為に仕掛け……数度の打ち合いの末、突進で以ってオリゼを押し切り、幾つもの壁を破り、戦場を城内から外へ移した。
自身に絶対の自信を持つレイならば、確かにその有利な場を捨てようと、自身が負けるなどとは思わない。しかし…理由は、それだけでもない。
「そっちこそ、勝てると思ってるんですぅ?今の、私にぃッ!」
暫く飛び回っていたレイだったが、次の瞬間電撃を撃ち込む。それをオリゼが斬り払えば、その時点でもうレイはオリゼの懐へと飛び込み、刃が如き鋭さを持つ蹴りを放つ。避け、下がるオリゼを猛烈な勢いで追う。
レイは、闇色の光を纏っていた。シェアエナジーだが、レイ自身のものではない…負のシェアの城を構成する膨大なシェアエナジー、それを用いて自らの力としていた。
「ほらほらぁ!どうよ、敵わない?手も足もでない?あぁ、ズルいなんて言葉は聞かないわよ?あれは私のものなんだから、そっからの力も私のものに決まってるでしょうッ!」
息つく間もない、乱射の様な攻撃。避けようと、斬り裂こうと、次なる攻撃がオリゼを襲う。躱された攻撃、弾かれた攻撃が地上に降り、幾つもの砂塵を巻き上げる。
当然オリゼも反撃はする。斬撃で、打撃で、作り出す武器を放つ事で。こちらもまた激しく、鮮烈な攻撃。それはまるで隙のない、回避不可能と言っても過言ではない攻撃であり……だがレイは、そこからこじ開け、更なる攻撃をオリゼに押し込む。
「はぁぁぁぁぁぁッ!」
「ふ……ッ!」
上空から飛来するような、杖にシェアエナジーの刃を纏わせたレイの斬り下ろし。低空から駆け上がるが如き、バスタードソードによるオリゼの斬り上げ。双方の斬撃が激突し、それ自体が攻撃を思わせる程の風圧を、衝撃波を周囲に放ち、押し合い……されどどちらかの刃が振り抜かれる事はなく、弾き合う。大きく離れ、空に立つように減速し…向き直る。
「まさか、今のが本気じゃないわよねぇ?もっとやれるわよねぇ?」
「……これが、貴様の在り方か」
歪んだ笑みを浮かべるレイと、静かに睨みを向けるオリゼ。どちらも一騎当千…否、単独で十分に、十二分に世界を覆し得るだけの力を持つ女神。だがしかし、対極な程にまで見るもの、目指す先の違う両者の激突は……続く。
今回のパロディ解説
・「……これ位、一人で立てるさ」「かもな〜〜楽だろ?」
マクロスfrontierのノベライズ版における、主人公と登場人物の一人、早乙女アルトとミハエル・ブランのやり取りのパロディ。このシーンは、前後含めて暖かいものです。
・アカメ
アカメが斬る!の主人公の一人の事。うずめのパーソナルカラーはオレンジですが、髪は完全に赤色ですもんね。…まぁ、それで言ったらくろめは黒じゃなく藍色ですが。
・「〜〜お前達が俺の……」
こちらはマクロスfrontierの主人公、早乙女アルトがアニメ、ノベライズ版共に言った代名詞的な台詞の一つのパロディ。私はこの台詞、本当に好きです。大名言でしょう。