超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第百九十一話 押し寄せる闇

 謎の光を灯し始めた負のシェアの城、そこから現れた無数の存在。兵器ではない、けれどモンスターと呼ぶ事も出来ない…負のシェアエナジーが固まっただけのものにしか見えない、そうとしか感じられないその存在に対し、私達は迎撃の選択をした。

 その存在は、はっきり言って弱い。小さい個体はそもそも近くを飛ぶだけで、その風圧だけで砕け、それなりに大きい個体も一撃で両断する事が出来る。出来るどころか、斬っても勢いが碌に落ちない為に、速度を落とさないまま次々と斬り裂いていってしまえる。脅威にならない、普通の戦闘なら障害にもならない、そんな程度の存在。

 けど、私達は今…この存在に対して、脅威を感じている。個々は強くない、どんなモンスターよりも弱いと確信出来る存在に。その存在の……物量に、対して。

 

「天舞壱式・桜ッ!」

 

 飛び回り、縦横無尽に動き回り、モンスター擬きを引き付ける。十分に引き付けた上で翼を直線起動重視から姿勢制御重視に可変させ、一気に減速し、四方八方から迫ってくるモンスター擬きに対して、全方位への斬撃による迎撃をかける。

 十や百…そんな程度じゃない数のモンスター擬きが、一気に吹き飛び消え去っていく。何体…或いは幾つ倒せたかなんて、分からない。多過ぎて、消えるのも早くて、とても数えるなんて出来ない。

 

「ふっ…はぁああああッ!」

 

 目に映った密集箇所へと突撃をかける中、その向こうに見えたのはセイツの姿。セイツは縦に連結させ大剣状態となった剣から不可視のシェアエナジー弾を放ち、そのシェアエナジーの解放による爆発で正面のモンスター擬きを多数吹き飛ばすと、続けて柄尻同士を互い違いに連結し直し、それを身体全体を使って投擲。投げ放たれた連結剣は、回転する事で弧を描きながら進路上のモンスター擬きを例外なく斬り裂いていき……ブーメランの様に、手元へ戻る。

 セイツだけじゃない。皆がそれぞれに飛び、仕掛け、モンスター擬きを薙ぎ払う。モンスター擬きは最早、近付いた時点で倒される事が確定しているようなもので…だというのに、私達は有利にならない。それ以上の物量が、倒しても倒しても…押し寄せてくる。

 

「ちっ…戦いは数だよ、とは言うが……!」

「一体何がどうなってるのよ…ッ!」

「しかも、一体一体は弱過ぎて何にも倒し甲斐がないし…嫌な相手だ、わッ!」

 

 しなるプルルートの蛇腹剣から、広範囲への放電が走る。その一撃でまた、大量のモンスター擬きが塵となり…されど、止まらない。どれだけ近くの個体がやられようと、被弾を免れた個体は一瞬も止まらず、微塵も躊躇う事なく突撃を続けてくる。

 本当に、ノワールの言う通りだと思った。あまりにも弱く、思考というべきものがほぼ感じられず、何なのか全く分からない。ただひたすらに押し寄せ、それだけで私達の力の上を行こうとする……それは、やられるとはまるで思わないのに、ある種の恐怖を感じさせるものだった。

 

「……っ!しまった、ネプギア…!」

「任せてッ!」

 

 幾度も現れては迫ってくる中で、その度に数を増す中で、私達は気付き始めた。モンスター擬きは、私達に迫ってくるものもいるけど、私達の背後…生活圏へと向かっていこうとするものもいると。それを踏まえ、オリゼが最前列、私達近接戦を主体とする女神が次列、ネプギア達女神候補生が後列という陣形を組んでいて…その瞬間、一部ながらモンスター擬きが後列を突破してしまった。

 ただ、それに対する対応は早い。声を上げたユニに弾かれるようにネプギアは反転し、突破したモンスター擬きを追って飛び…その最中に、ビヨンドフォームを解放。M.P.B.Lで後ろから撃ちながら遠隔操作端末を射出し、その攻撃で残りのモンスター擬きも全て撃ち落として後列に戻る。

 

「さっすがネプギア……って、あっ!」

「おねえちゃん、また…ッ!」

 

 無事撃破出来た事による安堵も束の間、聞こえたのはロムちゃんの切羽詰まった声。まさか、と思って視線を負のシェアの城へと向ければ…そこではまた、新たなモンスター擬きが発生していた。まだ全て撃破し切っていないというのに、膨大な数の新たな敵が。

 

「…まだ序の口、とでも?…舐めてくれる……!」

「ちょっ、オリゼ!?せ、セイツここお願い!」

「えぇ!?」

 

 ぽつり、と声が聞こえたかと思えば、次の瞬間オリゼは嵐の様な武器の射出を続けながらも突進。待ちはしない、即座に片っ端から薙ぎ払うとばかりに突っ込んでいって…でもそれは、こっちからすれば想定外。オリゼですら処理し切れない物量が押し寄せてきている訳で、そこでオリゼがいきなり場所を移れば…当然、そこに穴が生まれてしまう。しっかり陣形を決めていた訳じゃないけど、最前列にオリゼがいる前提で私達も動いていた以上、その穴の影響は侮れない。

 だから私は前進すると共にリバースフォームを解放。オリゼと同等…とまではいかなくても、それに近しい力で以って、オリゼの代わりを務めに入る。…けど、もう…!これまでずっと一人で戦ってきたのは分かるけど、スタンドプレーが過ぎるよオリゼ…!

 

「いきなり任せてきたイリゼもイリゼだけどね…!…けど、その信頼は嬉しいわ!姉としても、感情的にもっ!」

「ほんとに嬉しそうねセイツ…って、いうのはともかくとして…どうやら出し惜しみはしていられないみたいね…ッ!」

 

 左に、右に、上に、下に。私が一度に作り出せる限界まで、一気に武器を精製し、それ等をモンスター擬きへ向けて一斉に射出。進路上の個体は勿論、周辺の個体も風圧で以って斬り裂き飛ばし、射出を続ける。溢れ出すシェアエナジーを遺憾無く用いて、全力の攻撃を維持し続ける。尚且つ私自身も、左手に長剣と同サイズの剣を作り出して可能な限り数を減らす。

 そう。リバースフォームでも、オリゼでも、単独じゃ数を減らすのが手一杯で…次の瞬間、背後から斬撃が駆け抜ける。飛翔する黒紫の斬撃は、確認するまでもなくネクストフォームのネプテューヌのものであり…ネプテューヌに呼応するように、他の皆もネクストやビヨンドフォームになっていく。

 

「ロム、ラム…!」

「うん、おねえちゃん…っ!」

「いっくわよーッ!」

 

 背中合わせになるように構え、組み合わせた四つの魔法陣を正面に展開したロムちゃんラムちゃんの魔力砲撃。二つの魔力の奔流が、左右からモンスター擬きを薙ぎ払っていく。更に二人よりも高高度、魔力照射の射線より上から二人へと向かおうとするモンスター擬きは、前方…モンスター擬きからすれば後方からブランがブラスターコントローラーの砲撃で蹴散らしていき、三人の照射が終わった時に生まれていたのは広範囲の空白。

 

「厄介な状況だけど…あれを試すには丁度良いわね!ユニ!」

「うん、お姉ちゃんお願いッ!」

 

 圧倒的なスピードで駆け巡り、通った側から次々とモンスター擬きを消し去っていくのはノワール。それでも当然、すれ違いざまに出来る攻撃には限界があり、討ち漏らしが…距離の上では近くとも、攻撃を免れる個体は少なからず生まれてしまう。

 されどそれを、全てユニが撃ち抜いていく。ノワールに合わせる…なんてレベルじゃない、初めからどの個体が免れるか、どれをノワールが倒すかを分かっているような制度でユニが打ち抜き、ノワールが通った場所からは完全にモンスター擬きが姿を消す。

 ネクスト、ビヨンド、それにリバース。私達の新たな力を全員が解放した事で殲滅速度は一気に上がり、流れは逆転。ギリギリで留めていた状態から戦線を押し返す程にまでなって、「いける」という雰囲気が私達の中で広がっていく。…でも……

 

(……っ…オリゼが蹴散らした上で、まだこんなに…ッ!)

 

 これで今来たモンスター擬きの波はほぼ片付いた。これで、次の波に目を向けられる。そう思い、目を凝らした私が見たのは…一見今片付けた波と同等の物量とすら思える、膨大にも程がある数のモンスター擬き。

 そんな訳ない。今も凄まじい勢いでオリゼが撃破を続けているんだから。…それでも、一瞬そう思ってしまう程の…気の遠くなるような物量が、こちらへ猛然と向かってきていた。

 

「ふぇぇ…ぴぃ疲れてきたよぉぉ…!」

「うずめも、このペースだと持たないかもぉぉ…!」

 

 誰よりも突っ込んでいき、拳と鉤爪を突き出したままノンストップで穿ち続けるピーシェと、メガホンを介した音波攻撃で面制圧をしつつ、ぐるぐるシールドでわざと突撃を受ける事により、そのシェアエナジーでモンスター擬きを蹴散らすうずめの二人が上げる、切実な叫び。

 うずめは元から、活動限界が厳しい女神。けど今は、私やネプテューヌ達、ネプギア達もそれぞれの理由でより高位の強さと引き換えに活動時間が大幅に減少していて……それ抜きにも、消耗するのはシェアエナジーだけじゃない。休みなく戦い続けていれば、体力や集中力も削れていく。今はまだ良くても、どこかでそれがパフォーマンスの低下に繋がってしまう。

 それを打開する方法は、二つ。一つは、その前に戦いを終わらせる…即ち、元凶と思しき城を叩く事。そしてもう一つは……

 

「──皆さんっ!聞こえていますか、皆さん…ッ!」

「……!イストワールさん…!」

 

 最早狙って撃つまでもない、と武器を乱射し、推進力に使う圧縮シェアエナジーの解放でついでに近くのモンスター擬きを吹き飛ばしながら、次の大群を迎え撃つ。その中でインカム越しに聞こえたのは、イストワールさんの声で…それは、返答。

 暫し前に、私達はイストワールさんへ、このモンスター擬きは一体何で、城には何が起きているのかを調べてもらうよう頼んでいた。そのイストワールさんから連絡が来たという事は、何かしら分かったっていう事で…まだ呼び掛けられただけ。それだけだけど、私も皆もその声音から、並々ならぬ何かがあるんだという事を感じ取った。

 

「いーすん、分かった事を端的に教えて!悪いけど、ゆっくり聞いてる余裕はないわ!」

「分かっています!わたしからも、皆さんへ早急にお伝えしなければならない事があります!」

「…イストワールさん?それは、どういう……」

「危険は承知です!その上で…直ちに負のシェアの城へと突入し、この異変、この暴走を止めて下さい!」

 

 声音だけで、かなり切迫した状況だという事は伝わってきた。でもイストワールさんの声は、切迫なんて言葉じゃ表し切れない程の何かがあるようにも感じられて、私は訊く。

 いや、正しくは訊こうとした。けれどそれは、イストワールさんの次なる発言によって遮られ……発されたのは、今起こっている事を止めてほしいという言葉。

 けれど、それを聞いた事で逆に私達は困惑する。この異変を止める…そんなのは、元からやろうとしていた事だから。

 

「え、えぇそのつもりですわ。されど、このモンスター擬きを対処しなければいけないのも事実……」

「逆です!真正面から対処出来ている内に止めなければ、でないと──」

 

 再び言葉を遮る形で、そうではないとイストワールさんは言う。分からない、何故そこまで焦っているのか分からないけど…そこまで焦っているという事実が、四の五の言っていられる状況じゃない事を私達に理解させる。

 だったらもう、動くしかない。出たとこ勝負なら、まだ余裕のある内に……そう思った次の瞬間、負のシェアの城の輝きが増す。闇色の光が強くなり、また無数のモンスター擬きが現れ──散る。これまでは、全てがこちらに向かっていたモンスター擬きが…一方向ではなく、四方向に。

 

「……ッ!…おい、これってまさか……」

 

 戦慄の声を上げるブラン。それに対する答えはないけど……間違いない。これが、今四方に分かれたモンスター擬きが向かおうとしているのは…各国の、生活圏。

 

「お姉ちゃん、このままだと…!」

「そうね…皆、悪いけどこの場は一度離脱させてもらうわ!」

「わたくしもですわ…!みすみす見逃がす事など出来ませんもの…!」

「大丈夫、行って頂戴!それに、幾ら相手が巨大なシェアエナジーの塊であろうと、所詮は有限。なら、必ずどこかでペースが……」

「…駄目です。それは、望めません」

『え……?』

 

 モンスター擬きを追って自国へ向かおうとする皆を、ネプテューヌが言葉で後押し。持ち堪えれば、どこかで反撃のチャンスがある筈だと、皆へ言いかける。

 けど…三度、イストワールさんは遮る。遮り、否定し……そして、言う。

 

「あれが…この猛威が、尽きる事はありません。……無限、なんです。根源である負のシェアの城を止めない限り…絶対に」

 

 それを、その言葉を聞いた瞬間、全員の動きが止まった。ほんの一瞬ではあるけど…突き付けられた、その言葉で。

 多分、誰もが思っていた。幾ら膨大なシェアエナジーがあったとしても…いやむしろ、同じシェアエナジーを力にする存在だからこそ、どこかに限界はあると。オリゼですら、膨大なだけで無限ではないんだから、こんな無策同然の垂れ流しをしていれば、どこかで勢いは尽きる筈だと。それが、当たり前の考えで…だけど同時に、期待でもあった。

 だけど、そうでないのなら…尽きる事などないのなら、耐えた先にあるのは押し潰される結末だけ。きっとそうならないよう、そうなる前に終わらせなければならないというのが、イストワールさんの言いたかった事で…だけどそれももう、出来ない。新たに現れたモンスター擬きを無視して突入しようものなら、生まれる被害は計り知れない。…だったら、どうする。もう攻め入れない、変えようのない無限という壁があるのなら、出来る事は……

 

「……分かったわ。その言葉で、今の状況がしっかりと分かった。だから…いーすん、全軍に出撃を命じて頂戴!わたし達だけの力じゃ飲み込まれるっていうなら…わたしはプラネテューヌを、信次元を守る為に、全戦力で以って迎撃するわッ!」

 

 空へと響く、ネプテューヌの言葉。ネプテューヌは諦める。自分達だけで何とかする事を諦めて…わたし達だけじゃどうにもならないこの脅威に対し、絶対に諦めない事を選ぶ。

 いいや、ネプテューヌだけじゃない。同じように、ノワール、ベール、ブランもインカムを介して、女神の権限を惜しみなく振るう。

 

「えぇそうよ、拠点攻略、広域制圧、その他全部の装備に無制限の使用許可を出すわ!手続きも問題も全部無視しなさいッ!」

「あれの調整は済んでいますわね?ならば出撃準備に取り掛からせなさい。今出し惜しみをすれば、その損失を全ての国民が負う事になりますわ…!」

「そうだ命令だ!女神からの勅命って事で、全部通せ!後々の問題はその後々に辿り着けなきゃ意味ねぇんだよ!…条約に引っかかる?だったら……」

 

 

『今この時、女神の名を以って、(プラネテューヌ・ラステイション・リーンボックス・ルウィー)は友好条約を破棄(するわ・しますわ・する)ッ!』

 

 視線を交わらせ、四人が同時に上げる宣言。それが意味するのは…これまで積み上げてきたもの、守護女神戦争(ハード戦争)の終結から作り上げてきた四ヶ国の確かな繋がりの一つを捨ててでも、国を…信次元を守らんとする意思。

 言うが早いか、三人は分かれたモンスター擬きを追走する。ユニ、ロムちゃん、ラムちゃんも姉に、守護女神に続く。ネプテューヌとネプギアは構え直し、大きく減った人数の穴を埋める為にこれまで以上の大立ち回りを繰り広げる。

 

「…それが、皆の選択なのね。多くの…ううん、次元中の人と力を合わせ、立ち向かう…あぁ、昔を思い出すわ…ッ!イリゼ、プルルート、ピーシェ、うずめ、わたし達も……」

「…ならば、私にも…為すべき事がある……ッ!」

「うぇっ!?ちょっとイリゼ!?また!?」

 

 申し訳ない。そうは思いつつも、セイツからの言葉をぶった切るようにして私は突進。武器の乱射はそのままに、普段ならとてもやれないレベルまで圧縮シェアエナジーを用いた加速を繰り返し、私は一気にオリゼの下まで辿り着く。

 

「オリゼッ!」

「……!…何があった」

「状況は分かってるでしょ?皆は国を守る為に、皆を守る為に、皆と…人の力を借りて、支えてくれる人達皆と共に、これを乗り越えようとしている。だから……貴女にも、力を貸してほしい。私の愛する、素晴らしき人々の生きる、この信次元を守る為にッ!」

 

 インカムを付けていないオリゼには、今のやり取りが聞こえていない。だけどきっと、オリゼに順序立てた説明は必要ない。だから私は全部すっ飛ばして、思いだけを伝える。皆と…私の、守りたいって思いを、意思を。

 それを聞いた瞬間、ほんの一瞬オリゼは目を見開いた。驚いたように目を見開き…けれどすぐに、笑う。

 

「…ふっ、それは愚問というものだ。そんな言葉などなくとも、ただ人がいるというだけで、十分過ぎる程に理由となる。そして…志を同じくする女神と、彼女達と力を合わせる事もまた…私にとって、迷う理由などないッ!」

「オリゼ……!」

 

 声高に言い切り、その身にこれまで以上の覇気を纏うオリゼ。次の瞬間、私とオリゼの前に、これまでのものとは比較にならない…恐らく100mを超える巨大なモンスター擬きが現れ……されどそれを、オリゼは作り出した超巨大剣、それを投げ放つ事で貫き四散させる。

 そしてオリゼは急上昇。私もそれに続き、高度を上げていき…全てのモンスター擬きを下に見る事が出来る高度となった時、オリゼは放ち始める。自分にもまだ先がある、まだ限界など迎えていないとばかりの、武器の嵐を。

 

「……っ…!随分余力があったんだね、オリゼ…!」

「ここまでは、外から城を両断する事も考えていた。必要ならば即座に移れるよう、余力を残していただけだ…ッ!」

 

 圧倒的なオリゼの火力、制圧力。それを追うように私も、全身全霊で武器を作り撃ち込んでいく。

 オリゼと共に、背中合わせで狙うのは戦域拡大の抑制。仮に私達が四つの戦場、各国に分かれて戦う事になるとしても、その距離を少しでも縮められるように、上からモンスター擬きの濁流を削り潰す。

 余力があった事を、オリゼは肯定する。そしてそれを今捨て、目の前の迎撃に全力を向けているのは…きっと、皆を信頼しているから。同じ女神として、仲間として、仲間の一人として戦ってくれているから。

 

(私も、負けていられない…!私もまた、原初の女神…私も、オリジンハートだ……ッ!)

 

 遥か高みに感じる、もう一人の私の力。オリジンハートの強さ。でも、だからこそ私は鼓舞される。同じ名前、同じ姿を持つ、複製体の私だからこそ…追い続けて見せると、そう思い切れる。

 間違いなく、ここからは各国の軍と…軍拡が進んだ今は、嘗ての守護女神奪還作戦を大幅に超える大戦力との、総力を尽くした戦いになる。そして女神は、それを支えるものではない。任せるものでもない。同じ場所で……最前線で、人と共に戦うものだ。

 

 

 

 

 自分達だけで押し返し、負のシェアの城へと突入し、事態を収束させる。その思考から各国の軍、防衛軍全戦力を用いて迎撃し、総力戦での勝利を目指す形へ意識を移行させた女神達は、その動きも変わった。

 確かに無限を有限で打ち倒す事は叶わない。しかし、無限と言えども一度に押し寄せて来る訳ではないと、瞬間瞬間においては有限の域を超えていないという事は、初めから分かっている事。故に押し切る為の全力から、持ち堪える為の戦いに変わり…奮闘を、続ける。

 

「ここから先は…通しませんわッ!」

 

 言葉と共に、幾百もの…否、それを優に超える数の槍が射出される。弾幕ではなく、槍壁とでも言うべき強固な迎撃が押し寄せるモンスター擬きを突き刺し貫き、多くのモンスター擬きはその射主たるベールに近付く事すらなく消えていく。

 しかしその壁の隙間を、或いは外側を通って抜ける個体もいる。それ等はベールに、或いはその後ろに向かって飛んでいくも、リーンボックス方面の防御に参加するセイツとピーシェが悉く斬り裂き、叩き潰す。

 同様の光景が、各国で生まれる。イリゼとオリゼがまず削り、そこから各国に分かれた女神が処理していく形で、全員が全力ながらも持ち堪える戦いを展開し…しかし、モンスター擬きは増える一方。殲滅し切る前に次の波が生まれる為に、それは時間を経る毎に規模が大きくなっていく為に、どうしても撃破が間に合わない。

 

「あっ…この、待ちなさーいッ!」

「ラムちゃん、だいじょうぶ…!それより、今は……!」

「……!そ、そうだった…ありがとね、ロムちゃん…!」

 

 迎撃し切れず、自身のすぐ側を抜けていくモンスター擬きに対し、反射的に追おうとするラム。しかしそれをロムが止め、ラムもはっとした顔をした後にその場に留まる。

 既に軍の展開は始まっている。故に可能な限り迎撃はするも、抜かれてしまったものは展開しつつある軍が対処してくれると信じ、陣形に穴を開けない事を最優先にする…その方針が、分かれた時点で決まっていた。

 とはいえそれは焦りとなる。少しずつ抜かれる瞬間が増えてきている為に、このままだと大量のモンスター擬きに抜かれてしまう瞬間が訪れるかもしれない。そんな思考が、女神達に一抹の不安を抱かせ始めた……その時だった。

 

「……は?」

「…お姉ちゃん……?」

「…ちょっと、ブラン…?なんか、貴女…というか、ルウィーの方から、信じられない速度で向かってきてる反応があるわよ…?え、これMG?だとしてもこれ…普通の三倍位の速度出てるんじゃないの…!?」

「…ふっ、そりゃあ朗報ってもんだ……!」

 

 グラスパーツを用いて情報収集も行っていたノワールの、突然の言葉。彼女のグラスパーツには猛烈な勢いで移動する反応が映っており…それを聞いたブランは、笑みを浮かべる。

 明らかに反応の強さと速度が見合っていない、謎の存在。一直線に駆け抜けるそれは、グラスパーツに映し出される映像の中で、ブラン達のいる地点と重なり……次の瞬間、閃光がモンスター擬きの一団を撃ち抜く。

 

「ふぇ…!?」

「わっ、はやい…」

 

 閃光を追うように現れたそれは、女神のロムやラムからしても速いと言わしめる…少なくとも、まともな人や兵器では出せない速度で飛来し、その右腕部に備えられた大型の砲を、ビーム砲を連射。双子よりも前で迎撃を行うブランを援護する形で光弾を撃ち込み…彼女の前方で、逆噴射。

 

「約五秒でモンスター擬きの束三つ…中々やるな」

「いえいえ、女神様に比べれば大した事ではありません」

「女神と比較になる時点で凄いんだけどな。…待ってたぜ、赤い流星」

「はっ。──アズナ=ルブ、迎撃を続行する…!」

 

 それが見せていたのは、常識外の速度。しかし、確かにそれはMG…人型を持つ、巨大な兵器の一つであった。

──アザビス。真紅の装甲と、重厚な体躯、それに一対の巨大な翼を持つその機体を駆るのは、元黄金の第三勢力(ゴールドサァド)の肩書きを持ち、今はルウィーを代表するトップエースの一角でもある、一人の男。彼は機体を翻し、モンスター擬きへと突っ込んでいく。ビームライフルで蹴散らしつつも引き付け、十分に引き寄せたところで機体を反転させると同時に多数のモンスター擬きを正面に捉え、腰部の拡散ビーム砲で以って一掃する。

 女神と同等とまでは言わないにしても、凄まじい勢いで迎撃していく真紅の機体。正しく彼はルウィーの…否、国防軍全ての一番槍であり……そこに二つの反応が続く。

 

「女神様、お待たせしましたッ!先行部隊、到着ですッ!」

「いきますよ、ヴィオレ2…!」

 

 プラネテューヌ方面、迎撃を続けるネプテューヌ、ネプギア、プルルートの左右を駆け抜けたのは、MGどころか艦砲を思わせる程の大出力砲撃。直後に今のものとは別である四条の荷電粒子ビームと、電磁投射によって撃ち出された四発の弾丸が初めの砲撃で大きく数を減らしたモンスター擬きの大群に突き刺さり……巨大な影が、女神達の前へ躍り出る。

 

「あら?…凄いわねぇ、箱が飛んでるじゃない」

「……ッ!箱…?箱じゃありませんよプルルートさん!これはMG用の超大型拡張追加武装モジュール、メギド・ユニットです!そしてそのメギドを装備しているのは……」

「うん、雑な表現をしたのは謝るわネプギアちゃん。だから、状況を考えてくれるかしらぁ?」

 

 大型砲だけでなく、機体各部に備えられた機銃も用いて次々とモンスター擬きを蹴散らし、迫るモンスター擬きに対しては荷電粒子の壁…即ちビームシールドを展開する事で悉く消し飛ばす、巨大な兵器。プルルートの失言にネプギアが興奮そのままの態度で訂正を駆け、若干引いたプルルートがそれを止め…その姿に呆れながらも、ネプテューヌが先行部隊として現れた二機、プラネテューヌ国防軍の中核を成すエースの内の二人へ感謝の言葉を投げ掛ける。

 純粋に、単独で圧倒的な速度を持つ機体と、巨大な追加装備の大推力で以って戦域への高速到着を果たした機体。今はまだ、現れたのはその三機のみ。しかし国防軍の機体が現れた、それ自体が軍の展開が進んでいる事の証明であり……今は見えずとも、確かに国防軍の部隊が、全艦隊が、決戦の地へと向かっていた。




今回のパロディ解説

・「〜〜戦いは数だよ〜〜」
機動戦士ガンダムに登場するキャラの一人、ドズル・ザビの代名詞的な台詞の一つのパロディ。信次元は数を質がよく超える作品ですが、それを数が超える事もあるのです。

・「〜〜普通の三倍位の速度〜〜」
ガンダムシリーズにおいて、主に仮面キャラの要素として出てくる表現(実力)の一つのパロディ。アズナ=ルブですからね?勿論この表現が出てくるのです。

・「約五秒でモンスター擬きの束三つ〜〜」
こちらもガンダムシリーズに登場するキャラの一人、シャア・アズナブル(キャスバル・ズム・ダイクン)の逆シャアにおける戦果のパロディ。つまり、登場した機体も…?
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