超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
全軍、全部隊への
しかしその状態が長い間続く事はなく、各員はそれぞれの持ち場へ、自らの戦うべき場所へと走る。立ち直りの早さは、軍という大規模な組織としては異様に早く…それを実現させたのは、一人一人の信仰心。国防軍人は、その性質上信仰心の強い者が多く、それ故に女神様からの勅命ならばと行動を始めたのだった。
そして、戦場に向かうのは条約の下建造された、各国の戦闘艦。陸上艦、空中艦、文字通りの全艦が出撃し、搭載されたMGも発艦準備が進んでいき…その中で、軍人達は目にする。望遠映像によって映し出される、想像を絶する程の物量を。
「…確かにこれは、全軍への出撃命令を出すわよね……」
ラステイションの有する空中艦、ヴァナハイム級一番艦のブリッジにて、元アーテル中隊隊長、現アーテル大隊隊長であるクラフティは、モニターに映し出された映像を、戦闘の光景を見てそんな言葉を漏らす。
まだ距離がある為に、細かな動きまでは見えていない。見えているのは、自国の女神であるノワールとユニ、それに同行したうずめが凄まじい勢いで撃破をしている事と…三人の奮闘を嘲笑うかのように、次々と押し寄せるモンスター擬きの猛威。遂に女神達だけでは抑え切れない程の物量となったモンスター擬きは、多くが迎撃をすり抜け、空に陸に分かれて生活圏へ、艦隊と向き合う形で進んでいく。
「女神様からの情報では、防御能力こそ皆無と言って差し支えないレベルとの事ですが……」
「これだけの物量が、断続的に…それも右肩上がりの数で現れ続けていると考えると、我々はともかく新兵には辛い戦いとなるな……」
同じく映像を見ている副官と艦長も、渋い顔で言葉を紡ぐ。如何に強い信仰心を有する軍人達とはいえ、あくまで一人一人は人間の枠を超えぬ存在。尚且つ彼等は指揮官、即ち人を動かす側であり、それも踏まえた思考と判断をしなくてはならないのだ。
しかし当然、作戦を放棄する事は出来ない。つまり必要なのは現実を伝えつつも、部下を鼓舞する事であり…そこでスピーカー越しに、ある声が届く。
「おいおい、作戦を控えた会議室ならともかく、もう戦闘開始が目前まで迫ってるって時に、そんな気が重くなるだけの現状を並べ立てたって意味ないだろ?」
「シュゼット…ならあんたは、気が軽くなるような事でも思い付いてる訳?」
それは別の艦にいる元シュバルツ中隊隊長、現シュバルツ大隊隊長であるシュゼットの発言。既に格納庫にいる彼の言葉に、クラフティは半眼で訊き返し…それを聞いたシュゼットは、にやりと笑う。
「そりゃあ作戦前じゃなくて、作戦後の事を考えるんだよ。終わったら何しよう、何しに行こう…あんま大層な事考えるとフラグっぽくなるが、基本こういう思考は、目の前の事への活力になるもんだからな」
「…案外まともな事言うわね…てっきりもっと下らない事を言うかと思ったわ…」
「はっ、俺を舐めんなよクラフティ。下らない事なんて…考えてるに決まってんじゃねぇか。こんな大決戦、全軍出撃の大一番なんだ。それが終わった暁には、ラステイション中の…いいや四ヶ国全部を、いやいや女神様すら巻き込んだ、大々的な水着コンテスト位は女神様に企画してもらおうじゃねぇか!だよなぁ皆!」
『おおぉぉぉぉ……ッ!』
人の心理を考慮した、有用なアドバイスを口にした…かと思いきや、その十数秒後に信じられない爆弾発言を上げるシュゼット。しかも内容が内容だからか、格納庫内…それに通信で繋がっている各艦から少なからず声援が上がってしまい、クラフティは思わず額を押さえる。
自他共に認めるトップエースの一角であり、大隊を纏める指揮官でもある彼でなければ…否、彼であっても実力主義の現国防軍でなければ許されないような問題発言。それでもある意味士気の向上には繋がった訳だが……次の瞬間、全く想定していなかった声がシュゼットの耳に届いた。
「シュゼット中佐、聞こえてるわよ?」
『あ……』
ぴしり、と凍り付く空気。理由は勿論…言うまでもない。補足するなら、ノワールの聴力が凄まじいという訳でもない。女神の基準で言えば、ノワールは普通であり、単に彼女のインカムにも通信が繋がっていたというだけの話。
「いやー…はは。落ち着きと余裕のある声を聞く事が出来て、安心致しました」
「そう。で、水着コンテストがどうとか言ってたわよね?」
「はははは。自分、スタイルにはそこそこ自信あるんですよ。って、訳で…如何です?」
ある意味戦場に匹敵する緊迫感の中、流石に冷や汗を垂らしながらもシュゼットは誤魔化す……だけなら誰もが予想した事だが、なんとそこからシュゼットは誤魔化しつつも自身の発言を無かった事にせず、それどころか直接女神本人に尋ねて見せる。
何を血迷ったのだ、彼は。これは不敬罪に処されても文句は言えまい。…そんな雰囲気が流れ、クラフティは頭を抱え、いっそ命知らずにすら思える発言にはノワールも数秒黙り込み……
「ったく、もう…いいわよ、やってやろうじゃない!けど、だったら…参加出来るように、貴方達死ぬんじゃないわよッ!」
「……ッ!…って事だお前等!今の女神様の命令を聞いたな?わざわざ承諾してくれた女神様な為に、死ぬんじゃねぇぞ!」
『了解ッ!』
無限という物量を前に、それに対して軍人とはいえ自国民を戦わせる事を思えば、その程度安いものだ、という判断なのか、それともこの場において、最も士気を上げられる言葉は何かという思考の下の答えなのか。何れにせよノワールは、その勢い任せの提案を肯定し…そして言った。死ぬな、と。
それを受けたシュゼットは、自身もまた繰り返す。部下に、自分の声を聞いている味方に、死ぬなという命令を果たせと声を上げる。
恐らくこんな流れになるとは、誰も予想しなかっただろう。実際無茶苦茶な流れである事は事実であり、クラフティは溜め息を吐き…その上で、笑みを浮かべる。しょうもない話を抜群の形に作り変えた女神様は、本当に凄いと。そんな話の源流となったシュゼットもまた…果てしなくしょうもないが、大したものだと。
「中佐」
「えぇ、作戦の具体的な確認は出来なかったけど…良い雰囲気じゃない」
艦長からの呼び掛けに応じ、クラフティも格納庫へ。既にMG、艦船共に足の速いプラネテューヌ国防軍は本隊が交戦に入っており、ラステイション国防軍もそれは目前。
そうして開く、格納庫の扉。カタパルトには次々とMGが、ラステイションの最新鋭主力MGであるガエリブルの姿が現れ、それぞれの装備群を纏って発艦していく。重装備の機体は地上に、翼を持つ機体は空に。
「さぁて、まずは俺等で引っ掻き回すぞ!付いて来いよ、テメェ等ッ!」
地上部隊、その先頭を切るのはT型装備群を纏うシュゼットのガエリブル。彼を中心に、槍の穂先の様な陣形で展開するのもまた、同様の装備群を纏った機体。
突出と同時にバックパックを展開し、四脚の高機動形態へと可変する先頭部隊。各機が備えるのは大剣のようでもある巨大な槍であり、その刀身がスライドする事によって露わとなったのはビーム砲。シュゼットの指示により一斉掃射が行われ、放たれたビームはモンスター擬きの最前線を強かに撃ち抜き…騎兵が如く、T型装備群のガエリブルは敵陣の中へ突入した。
「ははははッ!こりゃ一瞬で誰でもエースですねぇ隊長!」
「バーカ、こんなもん何百体倒しても撃墜数にカウントする訳ねぇだろうが!」
鋼鉄の塊であるMG、それも突撃用の槍剣による突進を受ければ、脆いモンスター擬きは一溜まりもない。まるで風船を針で割るかのように、或いは砂利を箒で掃くかのように、偃月陣形で駆け抜ける突撃部隊の後には殆どモンスター擬きが残らず…されどすぐに、その空白は埋まっていく。圧倒的な物量を持つモンスター擬きは空いた空間へと雪崩れ込み、瞬く間に突撃部隊の退路が消える。
しかしそれに、突撃部隊が怯む事はない。一体でも押し潰す事が出来れば良い、そう言わんばかりに突撃を続け、先頭のシュゼット機は槍剣に内蔵された四門の機銃を撃ち込む事によって、刺突前から正面の相手を砕いていく。
これは、玉砕か。後続の部隊へ向かう敵を少しでも減らせるのなら、犠牲になろうとも構わないという覚悟故か。──否、違う。彼等は犠牲になるつもりなど、毛頭ない。
「アーテルリーダーより各機、聞こえてるわね?予定通り、女神様の飛ぶ空を穢す無法者を蹴散らしながら、突撃部隊に支援爆撃をかけるわよッ!うちが強いのは陸戦だけじゃないって事を、見せてやりなさいッ!」
空に幾つもの噴射炎を輝かせる、空戦仕様の機体達。二対四枚の翼を持つG型装備群の機体、そちらをベースに安定性と操縦性を重視した一対二枚の翼を有するW型装備群の機体、その混成である航空部隊が二手に分かれ、機体各部に装備された砲門を開く。
重爆兵装に当たるミサイルユニット。各機が装備したその火器より無数のミサイルが放たれ、空に広がる火球の波動。続けて光実織り交ぜられた弾幕がモンスター擬きを打ち砕いていき、そこへ二手へ分かれた片割れが突入していく。対空制圧をかけた部隊と同様に爆撃をかけ、地上のモンスター擬きにミサイルと弾丸の雨を浴びせる。
そして更に、地上を四機のガエリブルが疾駆する。陸戦仕様のT型とも、最新の通常仕様であるAF型とも違う、謂わば特別仕様のSA型の装備群を纏うのは…遊撃を担う特務隊。
「嘗てない程の多勢に無勢…しかし、敢えて言おう!だとしても、負ける気はしないとッ!」
菱形陣形、ダイアモンドの編隊で薄くなったモンスター擬きの大群へと切り込んだ特務隊は、そのまま方円陣の様な体勢に移行し、携行武装での砲火を浴びせる。ビームライフル、ビームマシンガン、ロケットランチャーに重軽それぞれの機関砲。各パイロットが選択し、携行状態で…或いは背部と脚部、大小合わせて四基のコンテナに格納した状態で装備した武装を的確に使い分け、推進器という人体にはない装置も用いて方円陣のまま、そこから陣形を維持したままの回転もかけながら射撃でモンスター擬きの大群を食い破っていく。
「よぅメイジン、相変わらず特務隊は動きが鋭い、なッ!」
「そちらこそ、変わらずの勇猛果敢さを見せてくれる…ッ!」
左腕部の重機関砲を新素材の実体剣に切り替えたシュゼット機の薙ぎ払いと、同素材の刃をビームライフル下部に備えた特務隊隊長機…メイジン機の射撃が、交代の為の穴を切り開く。そこから突撃部隊と特務隊は後退し、当然モンスター擬きはそれを追う形となり……だが、モンスター擬きの大群は瞬く間に蹴散らされ、吹き飛んでいく。到着した陸戦本隊、空戦機よりも重装備の爆装を纏った部隊が防衛線を構築し、モンスター擬きを押し留める。
「物量任せにただ突進してくる相手には、大火力による迎撃が最も有効だ!砲火を止めるなよ!」
その後方、全艦所定の位置へと展開を完了した国防軍艦隊。各艦は400mを超える巨体に恥じない、大出力の艦砲で以って射線上のモンスター擬き全てを文字通り消し飛ばし、撃ち出される大型ミサイルはそれ自体が徹甲弾であるかのようにモンスター擬きを次々と貫いた上で、爆裂し戦闘艦の火力を見せ付ける。
艦船の計器であってもその数を把握し切れない程のモンスター擬き。それに比べれば、誤差程度の物量しかない国防軍。しかし彼等に対しては、最前線で別格の動きを見せる女神達の雄姿が、女神達にとっては自分達の背後を支えてくれる国民の存在が、心の活力と勇気になる。
そしてそれは、ラステイションだけの話ではない。プラネテューヌ、リーンボックス、ルウィー…それぞれの国で、同じような光景が、戦いが繰り広げられ始めていた。
*
迎撃の最前線。女神がその力を発揮する戦線にも多少ながら国防軍機の姿があり、しかしそこで駆ける国防軍人は皆エース。それは、一般兵ではとても捌き切れない、すぐに飲み込まれてしまう程のモンスター擬きが押し寄せているからであり…その中で特に目立っているのはどの国の機体かと言われれば、やはりプラネテューヌの二機だろう。
「倒しても倒してもキリがないとは、正にこの事…ですが……!」
「まだまだぁッ!」
MGの大部分を格納する、格納出来る程のサイズを誇る巨大モジュール、メギド・ユニット。愛機越しにそれを駆るのは、二人のエース。
オンミニド・セーガ。配備の進む最新鋭主力機、オンミニドの姉妹機であり、エース用の少数量産機でもある本機が航空形態でメギド・ユニットを纏い、その過剰過ぎる程の火力を存分に発揮する事によって女神の戦いを支援する。
「ふふっ、ほんとに派手ねぇ。ゴテゴテしてるばっかりに見えるのに、大したものだわ」
「でしょう?大火力と大推力による一撃離脱、とにかく出力にものを合わせて一気に薙ぎ払い離脱するというのは一見短絡的な思考ですが、相手が対応し切れない速度で、相手が対応し切れない攻撃を叩き付けられるのなら、そんなにも強力なものはない……」
「だからなんでぷるるんはネプギアの琴線に触れるような事を言うのかしら!?わざとなの!?わざとなのよね!?」
二機の支援を受け、女神達はそれぞれの攻撃を大群へと向けて叩き付ける。モンスター擬きの性質を利用してネプテューヌ達が引き付け、誘い出されたモンスター擬きを二機が焼き払い、それを免れたモンスター擬きも女神達の追撃からは逃れられない。
既に、ネクストフォームやビヨンドフォームは活動限界寸前になった事で解除しており、殲滅能力は落ちている。故に二機との連携は、その落ちた殲滅能力を補う為のものとも言えよう。
「残弾はまだ十分…で、あれば……ッ!」
巨体故の大出力を持つメギド・ユニットだが、弾薬を始めとするリソースもまた豊富。それを確認したヴィオレ1、リヨンはビームカノンとレールカノンの同時発射によって開いた穴へと機体を捻じ込み、機体中央部と後方、光実合わせて八門装備する機銃の斉射を近距離から浴びせる。
もう一機のメギド・ユニット装備のオンミニド・セーガ、ヴィオレ2であるノーレ機は機銃を背面に向ける事で追い掛けてくるモンスター擬きを迎撃。尚且つ機体後方、メギド・ユニットのシルエットを大きく膨らませている四基のマルチコンテナユニットの内、下部二基に搭載された二連大型ビームカドリングを展開。計四基からなる超連射のガトリング砲撃は正に光弾のシャワーであり、押し流されるように前方のモンスター擬きも撃墜していく。
全くもって容赦のない、機体各部からの火力投射。当然女神や艦船程ではないものの、エースとはいえ一人の人間が振るう火力としては最早恐ろしいの域であり…彼女達の活躍と、国防軍による防衛線の構築が進んだ事もあってか、女神達のインカムにある通信が届いた。
「皆さん、一度後退を!各国国防軍に余裕がある内に、負のシェアの城攻略に向けた会議をするべきだと思います!
(`・ω・´)」
「確かに、それはそうね…!けど、今後退するって言ったって……」
前方から斜めに駆け上がるように斬り上げ、続けて真下へ急降下と共に大太刀で斬り裂き、超大型のモンスター擬きを撃破するネプテューヌ。国防軍の参戦で彼女達は持ち直し、今も凄まじい勢いで撃破を重ねている…が、逆に言えば凄まじい勢いでの撃破が続いてしまう程、無限である事の裏付けとしては十分どころか十二分過ぎる程に、モンスター擬きが押し寄せ続けている事も事実。
それ故に、後退するのもただ下がればいいという事ではない。単純に果てしない物量が押し寄せてくる上、常に女神達を多くのモンスター擬きが追い掛けてくる為に、ただ下がれば大量のモンスター擬きを牽引してしまう形となる。だから、何かが無ければ、或いは何かをしなければ下がるに下がれないというのが、ネプテューヌの思いであり……それにリヨンが反応した。
「女神様。お下がりになるのでしたら、私達にお任せを」
「お任せを…って、まさか貴女達二人でここを抑えるつもり?」
「ふふふ、この装備を甘く見ちゃいけませんよネプテューヌ様。メギドオンミニド・セーガは次元最強ですっ!…とネプギア様が言っていそうな位の性能を有していますからね!」
「さ、流石にそこまでは…。…でもお姉ちゃん、どっちにしろわたし達が下がるなら戦線も後退させなくちゃいけないと思うし、一時的に抑えるだけなら……」
ビームシールドを展開したまま機体にロール軌道を描かせ、突進の様にしてモンスター擬きを消し去りながら、通信越しにノーレが言う。何とも調子のいい発言にネプギアは一時困り顔を浮かべつつも、出来ない話ではないと姉に返す。
迷いは一瞬。その提案に乗るか、別の策を模索するか、ネプテューヌは目の前のモンスター擬きを斬り払いながら考え……決める。
「…分かったわ、出来る範囲でいいから…任せたわよッ!」
「りょーかいですッ!ヴィオレ1!」
「えぇ、ここで…ッ!」
任せた。その言葉に応じるようにメインスラスターを吹かし、一度大きく離脱する両機。しかし当然、それは逃げる為のものではなく…十分な距離、十分な射角を取れる位置まで到達したところで、両機は反転。各砲門とコンテナユニット…メギド・ユニットの有する全装備を展開し、最大火力を叩き付ける。
本装備の主砲であり、同時発射は400m級戦闘艦の副砲にも匹敵し得るギガ・ビームカノン二門。機体上部と下部、それぞれに位置する大型砲塔、ビームカノン二門とレールカノン二門。基本は迎撃用ながら、モンスター擬き相手には十分な威力である光実機銃合わせて八門。大出力砲六門と高連射砲八門に加え、ノーレ機のコンテナには二連ビームガトリングユニットが二基に、四十八連装のマイクロミサイルユニットが二基。リヨン機に至っては、四基全てが同様のマイクロミサイルユニットであり、その合計数は圧巻の百九十二。
それに加え、更にオプション装備である四発のミサイルが放たれる。ノーレ機からは二発の広域掃討用大型クラスターミサイルと、二発の超大型対艦重ミサイルが、リヨン機からは大型クラスターミサイルのみで構成された四発が、本体及びコンテナ内の武装と共に撃ち出され……光が、爆煙が、空を飲み込む。
『いけぇぇぇぇええええええッ!』
三種六門のカノンが巨大な風穴を開け、クラスターミサイルより吐き出される多数の小型ミサイルがその穴を食い破るように広げ、マイクロミサイルのシャワーが理不尽な程の追撃を浴びせる。機銃とガトリングの弾幕が運良く逃れた個体も例外無く吹き飛ばし、何もない空間となった空を駆け抜ける対艦重ミサイルが、その果てに信管が起動し…正に戦艦並みと思しき超巨大モンスター擬きをも飲み込みながら、風穴の先すらも焼き尽くす。
これを持ってしても、モンスター擬きの殲滅には至らない。今存在するモンスター擬きの全体からすれば、末端を削られた程度の存在。それ程までに、歴然たる物量差があり……それでもメギド二機のフルバーストは、女神様が離脱するのに十分な程の状況をその場に作り上げた。
エクスブレイド、射撃、そして魔法。離脱していく女神達の支援攻撃を受けながら、掃射を終えた二機はすぐにその場を離れて攻撃を続行する。流石に女神様が抜けてしまえば、この場を維持し続ける事は出来ない。だとしても、女神様達が完全に離脱するまでは、絶対に持ち堪えてみせようという意思をパイロットが胸に燃やしながら。
*
情報はインカムから得られるものだけど、最前線で、インカムからの情報だけで、全てを整理し先の先を見据えた作戦を立てるのは困難。勝利を望むのならばこそ、落ち着いて考える時間が、それをする場が必要。そう考えて、イストワールさんからの提案を受けた私達は最前線を離れ、プラネテューヌ国防軍艦隊、その旗艦へと移動した。
「私もイリゼも問題ない、早速話を始めてくれ」
位置の関係で到着が少し遅れた私達は、女神化したままブリッジに入ると同時に先に来ていたネプテューヌ達へと視線を送る。オリゼが皆に言って、私もそれに頷く。
皆と言っても、プラネテューヌに残った面々以外は各国の旗艦にいて、イストワールさんや教祖の皆さんも当然教会にいて、映像越しに会っている状態。でも、別にそれは問題じゃない。
「じゃあ、いーすん。まずは聞かせて頂戴。結局のところ、今起こっているのは何なの?」
「はい。初めにくろめさんが、可能性の一つとして暴走状態である事を挙げていた、との事ですが…恐らくそれで、間違いありません。あの城はシェアエナジーの塊であり、規格外にも程があるシェアエナジーの集合体であり、シェアエナジーそのものはエネルギーだとしても、根源は…シェアは思いである以上、制御を失えば、暴走してしまう事は十分にあり得ます(・ω・`)」
負のシェアエナジーの暴走。イストワールさんの見解に対して、私が抱いたのは成る程という感想。時に感情は我を失わせるものだから、感情が根源になっているシェアエナジーが暴走するというのは、おかしな話だとは思わない。今のところ負のシェアの城…というか、モンスター擬きの攻撃が突撃一辺倒なのも、制御を失って暴走してるだけと考えれば納得がいく。
「じゃあじゃあ、もう一回おしろに行って…っていうか、おしろを壊せばかいけつするの?」
「かも、しれません。ただ、あれだけ膨大な負のシェアエナジーを力技で何とかするのは、モンスター擬きの存在を無視するとしても、極めて困難と言わざるを得ないでしょう( ̄^ ̄)」
「…イストワール。それは、私の力を…《女神化》を用いても尚、という事か?」
ただ壊すのは困難。そう答えたイストワールさんに対し、オリゼがじっと見つめて訊く。
《女神化》。奇跡を任意に、意図した通りの形で振るう、オリゼの…女神にとっての絶対的な力。確かにそれを使えば、何とかなるのかもしれない。…でも……
「…駄目。駄目だよオリゼ。オリゼはその《女神化》で、一度大変な事になったんだよ?なのにまた、同じ条件である今の信次元でやろうとするなんて……」
「イリゼ。その発言…まさか、我々に力を貸してくれる、共に戦ってくれまでしている人々の存在を忘れての言葉ではないだろうな?」
「違うよ、そんな事はない。…今また《女神化》をしたとして、前と同じ結果で済むとは限らない。それは、オリゼがどうこうだけじゃなくて…人に害を及ぼす何かが起きてもおかしくないって事でしょ?その賭けは…今絶対に、しなくちゃいけない事なの?」
私はさっきオリゼがイストワールさんを見つめて言ったのと同じように、真っ直ぐにオリゼの瞳を見ながら言う。勿論、言うまでもなくオリゼの事は大切だけど…それだけじゃないんだと、奇跡の力を振るう以上、オリゼに何かあったら、《女神化》も負のシェアの城同様暴走するかもしれないんじゃないかと、ちゃんと危険性も踏まえて返す。
そう言ったのは、返したのはあくまで私。でもオリゼの事は、イストワールさんも、セイツも見つめていて……数秒後、黙っていたオリゼは表情を緩める。確かにそうだな、という言葉と共に。
「その発想は一理ある。それに…安心するといい、イリゼ。私はあくまで訊いただけだ。確実に《女神化》で鎮められるのならまだしも、不確実となると、半端に抑えた状態であの時のようにまた《女神化》が切れ、結果解放された城が今以上の暴走を起こす…といった可能性もあるからな」
「そ…そういう事は先に言って頂戴…。不用意な心配は煽らないでほしいわ……」
「…すまない」
続くオリゼの言葉で少なくとも今すぐやる気はないのだと分かった私は、ほっと安堵。でもセイツが言った通り、それなら最初から「一応確認だけはするが」みたいな前置きをしてほしい訳で……オリゼ、やっぱり女神としては本当に凄いけど、それ以外の部分は(いや女神としてもだけど)色々独特過ぎるよ…。
「…こほん。では、話を戻すとして…力尽くでの破壊が無理となると、どういった方法が考えられまして?…と、いうか、止める方法は分かっていますの?」
「あ…それに関しては、先程くろめさん自身からお聞きしましたが、負のシェアの城にも、核と呼ぶべきものがあるとの事です。断言こそ出来ませんが、その核を何とか出来れば、止められる可能性は十分にある筈ですd( ̄  ̄)」
「推測でも、止められる可能性があるなら良かったわ。…で、そうなるとまずは突入しなきゃだけど…何にせよ、モンスター擬きがネックね」
「だな。イストワール、さっきイストワールは無限っつってたし、あの物量を見りゃ無限ってのにも納得がいくが…一体こりゃどういう事だ?モンスター擬きは全部負のシェアエナジーだろ?シェアエナジーを半永久的に生み出せるようになってるって事か?」
実際の部分は分からないにせよ、止める方法は分かった。となれば次は、そこに至るまでの道な訳で…ブランからの問いを、イストワールさんは否定する。
「いえ。現段階でも絶望的とすら思える物量を前に、恐怖や諦観を抱いた人の思いが、負のシェアとなって城のシェアエナジーに…というのもありますが、そういう事ではありません。モンスター擬き…いえ、負のシェアによって形作られながらも、異常な状態となっている存在という事で、一先ず負常モンスターと呼ばせてもらいますが、負常モンスターの性質が、無限の原理に直結しているのです(-_-)」
「どういう、こと…?(はてな)」
「簡単な話ですよ。負常モンスターは、通常のモンスターの様に生命としての姿形を得ているのではなく、本当にただ負のシェアエナジーが集まっただけのような存在。それ故に、倒しても元の負のシェアエナジーに戻るだけなんです。そして城はそのシェアエナジーを引き寄せる力があるのか、倒された負常モンスターは100%全てが城に戻っていくのです。その結果……」
「またそのシェアエナジーから負常モンスターが生まれるって訳ね。幾らでも倒せるって考えると魅力的だけどぉ…どれだけ始末しても纏わり付いてくるって考えると、果てしなく面倒だわ」
面倒。そんな表現をしたプルルートだけど、表情は険しい。険しくなるに決まってる。こっちはどう戦っても消耗するのに対し、相手は消費ゼロで蘇ってくるって事なんだから。そして増えれば増える程、押されれば押される程、恐怖や諦観を抱く人は増えるだろうし…そうなればそこで生まれた負のシェアが城の力となって、大元のリソースが増えて、更に多くの負常モンスターが生まれる事になる。最悪の負のスパイラルに嵌っていく。
「時間が経てば経つ程こっちが不利になるんですから、出来るのであればすぐに城に突入して、止めるのが一番…ですよね」
「出来るのであれば、ですわね。既に相手の物量は、わたくし達でも恐らく突破に苦労するレベル。無理に仕掛けてダメージを負い、一時撤退となれば…次の難易度は、跳ね上がりますわ」
「だが、だからって先に負常モンスターを殲滅してから、ってのも通用しねぇ。…ちっ、弱ぇ個体なら子供でも倒せそうな位だってのに、ここまで厄介になるなんて、どこぞの史上最弱の
少し考えて話したユニの言葉に頷きながらも、ベールとブランがそれぞれに返す。どっちの言う事もその通りで、でも時間が経てば経つ程というユニの発言も正しくて、だから私達はどうするか悩む。悩んで、色々考えて…そんな中で声を上げたのは、女神化方法の関係で今は人間の姿をしているうずめ。
「なら、やっぱ…皆で力を合わせて、一丸になって戦うしかねぇよな」
「…うずめさん…その、一丸になってというのは…?(・・?)」
「それは…その、今考えてるところだ……」
何か良い案が…?…と思いきや、訊き返されたうずめは頬を掻きながら苦笑い。言ってる事自体は間違ってないんだろうけど、今のは行き当たりばったりもいいところな発言で……でもそれが、私達へと良い刺激を生む。
「皆で、一丸で……あの、皆さん。今は、四ヶ国同時に戦っている訳ですけど…これって今は、同じ相手と戦っているだけで、協力しているとまでは言えない状態ですよね…?」
『…それは、確かに……』
現状では、それぞれの軍がそれぞれに…自国の大陸を中心に戦っているだけ。ネプギアのその指摘に、私達は全員が同意し……同時に、それで全員が気付いていた。そうか、まだ国防軍同士の…信次元全体での協力や連携はしていないじゃないか、と。
そこからは一気に話が進む。まだ大枠程度の話で、細かい部分は各国の国防軍に任せなきゃいけない話ではあるけど、道筋は構築されていき……
「四ヶ国の国防軍が連携し、連合軍状態で防衛線を再構築。迎撃能力を向上させた上で、各国から募ったエース部隊が道を切り開き、一気に皆さんが突入へと向かう……言葉で言う程楽な事ではありませんが、これならいけるかもしれません…!(`・∀・´)」
「それで足りないなら、ぴぃ達…というか、こっちの皆に任せて。まだ時間はかかるけど、皆来てくれるって言ったから」
ぐっ、と胸の前で拳を握るイストワールさんの言葉に続いて、うずめと同じく…でもこっちは「女神化してると会議についていけない」という理由で人の姿になったピーシェも言う。
イストワールさんの言う通り、これは考えてる程楽な事じゃない。戦いながら他国の部隊と防衛線を再構築する、というのはかなり大変な上時間がかかる事で、しかもそれは各国の人達に頑張ってもらうしかない。期待して、信じるしかない。
だけど確かに、可能性がある。それに協力する事、連携する事、それは私達がこれまで積み重ねてきた勝利、成功と常に一緒に存在していたもので…だからこそ、いけるって信じられる。
「話は決まったな。であれば、私は……」
「待って、オリゼ。…ここは、この戦いは……私達に、任せてくれないかしら?」
今の時代においては、国を持つ女神じゃない。つまり指導者としての立場はないからか、話はついたのだからと早速オリゼは戦線復帰をしようとし…それを、ネプテューヌが止める。
止められたオリゼは怪訝な顔。そのオリゼに対し、ネプテューヌは画面越しにノワール、ベール、ブランと視線を交わして……言った。自分達に、任せてほしいと。
「オリゼ。貴女の存在は心強いわ。悔しいけど、まだわたし達の力は貴女に及ばないって事も認めざるを得ないと思ってる。…だけど、それでも今の信次元を守るのは…今の信次元の守護女神は、わたし達なのよ。だから……わたし達に、守らせて。今を生きる人達と、わたし達に…今の信次元を、信次元の未来を」
真正面から、真っ直ぐにオリゼを見つめての、ネプテューヌの言葉。信念、覚悟、誇り、意地……きっと凡ゆる思いの籠った、集まった意思を、オリゼに伝えて答えを待つ。
…分からなかった。これに対し、オリゼがどう答えるかを。そんな御託よりも、人を守る事の方が大切だ…そう答えるかもしれないとは思ったけど、絶対そうだとまでは思えなかった。だから私もオリゼを見つめ、皆がオリゼを見つめて、オリゼも守護女神の四人を、皆を見つめ返して……
「……いいだろう。他ならぬ君達の、正真正銘の女神である君達の思いを、私は同じ女神として、尊重する」
『オリゼ……』
「…だが、私の本意は、女神の本懐は人を守り導く事。故に……戦いではない形で、人々を守らせてもらう。それは、私も譲らない」
「…勿論よ。わたし達は戦う事で皆を守るわ。だからオリゼも、オリゼの思いを貫いて」
そして、オリゼと四人は、原初の女神と当代の守護女神は、頷き合う。頷き、意思を交わし合い……そうして私達は動き出す。真の決戦…本当の最終決戦を勝ち、信次元の未来を掴む為に。
今回のパロディ解説
・「〜〜メギドオンニミド・セーガは次元最強〜〜」
機動戦士ガンダムUCに登場するキャラの一人、タクヤ・イレイの台詞の一つのパロディ。でも別に、フルアーマーじゃないです。むしろMSを埋め込むタイプに近いです。
・どこぞの史上最弱の
ジョジョの奇妙な冒険第3部 スターダスト・クルセイダースに登場する