超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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 第九十六話及びそれ以降の戦闘にて、『ニザヴェッリル級汎用空中戦闘艦』というものが登場しましたが、これは正しくは『ミズガルズ級汎用空中戦闘艦』でした。何故別の名前を?…という事ですが…私なりに陸上艦と空中艦の名前の設定にはルールがあり、それにおいてルールに反している(別の名前を使ってしまった)事に気が付いたので、変更させて頂きます。


第百九十三話 神の国を護りし天門

 艦隊の再編。これは分かり易く言えば、艦隊の陣形を組み直すという事。状況や目的に合わせて全体としての動きを変えるのは当然の事で、人であろうと女神であろうと、艦船であろうと具体的にやる事は変わらない。

 でも、今必要となる、今求められている再編は、かなり困難なもの。そもそも巨大な存在である戦闘艦が、人と同じペースで動ける訳がなく、加えて今の戦いは…負のシェアの城と、城から放たれる負常モンスターとの最終決戦は、その戦域が嘗てなく広大。尚且つ緊急での出撃であり…何よりこの再編は、自軍内のみのものではない。四ヶ国での、事実上の連合艦隊としての作戦行動を目指した再編だから……これを負常モンスターの迎撃をしつつ行うとなれば、相当な時間がかかるのは必至。

 けれどこれは、必要な事。そして、それを成功させる為に私達が出来るのは…再編の負担が少しでも減るように、負常モンスターを引き付け、蹴散らす事。私達の戦う姿で以って、人々を鼓舞する事。

 

「敵は無限にも等しき存在!恐るるべき死すら持たぬ、虚ろの軍勢!されど…否、だからこそ恐れる必要はない!確たる信念を持つ貴君等を、虚ろな存在が挫く事など出来るものかッ!」

 

 高らかに声を響かせながら、私は戦場を突き進む。行く先へ迫る負常モンスターは悉く斬り伏せ、武器の射出で貫き、先導するMGの部隊を正面から鼓舞する。

 それに応えてくれるように、背後から光弾と光線が私の左右を駆けていき、更に負常モンスターを撃破していく。そうして私達が向かうのは…プラネテューヌ方面の、最前線。

 

「……ッ!?くッ、ぅあ……ッ!」

「何…!?パールス15、立て直せパールス15!」

 

 前進を続ける中で私の視界の端に映ったのは、制御を失った状態で回転しながら落ちていく一つの機体。同じ隊の隊長は即座に機体を変形させ、立て直しの邪魔となる負常モンスターを退けるべく援護射撃をかけるも、それ自体は立て直しに直結しない。そして、落ちていく機体は今航空形態で…スラスターが後方に集まっている航空形態のまま、完全に制御を失った状態から立て直すのは難しい。実際に操縦した事はなくても…感覚的に、何となく分かる。

 とはいえ、プラネテューヌの主力MGは遠隔操縦の無人機。墜落したところで、パイロットの死には繋がらない。繋がらないけど…だからって、見過ごす?そのまま進む?…まさか。

 

「すまない、少しだけ寄り道をさせてもらう…ッ!」

 

 素早く一言、それだけを言って、私は身を翻す。圧縮シェアエナジーの解放で方向転換と加速を同時にかけ、一気に落ちていく機体の下へと飛び込んで……支える。ほんの一瞬触れ、押し上げ…機体の落下を、止める。

 

「うぁっ!?…え…め、女神様……!?」

「間に合って良かった。…だが、墜落は免れたとはいえ、コックピット内の光景は相当に荒れた筈。…まだ、戦えるか?」

「は…はい、勿論です…!ありがとう、ございます…ッ!」

 

 僅かな間の並走。私の問いに答えたそのパイロットはスラスターを吹かし、自分の持ち場へ戻っていく。私も負常モンスターを躱しながらそれを見送り…戻ったのを確認したところで、精製した巨大な盾をその場に残す事で追い掛けてきていた負常モンスターを自爆させつつ、率いていた部隊の最後尾に追い付く。

 

「申し訳ない。味方の為とはいえ、突然君達に予定外の負担をかけてしまって……」

「いえ、問題ありませんオリジンハート様。私達の同僚を助けて下さった事、感謝します」

「そうですよ!むしろ女神様の雄姿に、勇気付けられた位ですから!」

「ふふっ…そう思ってくれるのなら、私もより一層その思いに応えたくてはな…ッ!」

 

 理由はどうあれ、突然先頭を進む者がその場を離れたら動揺するもの。なのにこう返してくれるパイロットの人達には感謝したいし…その思いに対しては、それに相応しい行動で以って返すのが女神というもの。

 私は再び先頭へと躍り出て、道を切り開く。部隊が少しでも余裕を持ったまま進めるように道を作り…そうして辿り着く、目的の地点。

 

「全機、ブレイク!これより格闘戦に移行する!」

 

 先頭の私を追い越し、変形と同時に右腕部で持つビームマシンガンとフレキシブルスラスターの機銃で前方の負常モンスターを蹴散らす隊長機。続く形で他の機体も変形や旋回を行い、火器で負常モンスターを撃ち落としていく。

 

「この場は任せたぞ、勇士達よ!」

『了解ッ!』

 

 軽快な動きで、脚そのものが自在に動く推進器となっているMGならではの空中機動を発揮しながら、生活圏へ向けて侵攻する負常モンスターを迎撃するオンミニド部隊。その部隊に今いる場の先頭を任せ、更に私は前へ…最前線の先端へ。

 ここまでの目的は、最小限の負担で部隊をここまで送り届ける事。そしてここからの目的は…後退の支援。

 

「ヴィオレ1!ヴィオレ2!」

「……!待ってましたよイリゼ様ー!」

 

 最前線の先端、最も多くの負常モンスターを相手にしなければならない場所で奮戦するのは、先程私達の離脱を助け、それからはここで持ち堪えていてくれた二機の機体。どっちの機体も、依然としてその大出力を見せながら飛び回っていて…だけど、放たれる弾幕は私達の離脱時より薄い。

 

「助かりました…!流石にもう、実体弾が尽きかけていたので……ッ!」

 

 二機共にビームシールドで押し寄せる負常モンスターの中を抜けながら、隙を見てビームで薙ぎ払う。

 巨大なユニットを装備しているだけあって、消耗した状態でもその火力は段違い。とはいえさっきは、私達が離脱する時点では、機体各部からの砲撃でそもそも負常モンスターを寄せ付けていなかった。それが間に合わない場合にビームシールドを使っていた筈で…防御の合間に砲撃を仕掛けている今の二機は、間違いなく殲滅速度が落ちていた。

 

「私が援護する!後退と補給を!」

「そうさせてもらいます…ッ!この装備、強力ですけどアタシの性には……」

『……ッ!ヴィオレ2!』

 

 長剣と精製したもう一本、二振りの刃を伸長させた状態で片っ端から撫で斬りにする私。女神や多くの人がいる場所…即ちシェアの反応が強い対象へ引かれ易い負常モンスターの性質を利用すれば、自分が囮になる事で味方を助けるのは容易であり…けれど、必ずしもそうなる訳じゃない。

 大回りで進路を変え、反転する二機。大推力にものを言わせて、二機は後退に移る……その時だった。少なく見積もっても数十m以上の、巨大であるメギド・ユニットすら容易に飲み込みそうな程の超大型が上からヴィオレ2、ノーレさんの機体に襲い掛かったのは。

 

(不味い……ッ!)

 

 恐らく反射的に撃ち込まれた、複数の機銃による迎撃。けど超大型級の負常モンスターはそれだけじゃ止まらず、私が放った巨大剣と、リヨンさんのメギドのビーム砲が超大型を貫くも、その時には既に迎撃からビームシールドによる防御へ切り替えたノーレさんのメギドを超大型が飲み込んでいた。

 一瞬止まる、超大型級の動き。今ので駄目なら、と私はもう一本巨大剣を作り出そうとし……次の瞬間、上部を吹き飛ばされていた超大型級は崩れ落ちるように四散する。──その内側から、落下するメギド・ユニットと、舞い上がる一機のMGを吐き出しながら。

 

「ぷはぁ…!どこぞの純粋種専用機と同じ結末を辿るところだった…!」

「無事ですか、ヴィオレ2…!」

「えぇ、この通り!メギドの方は、防御の隙間から入ってきたやつのせいでスラスターが火を噴いたんで、パージしましたけど…ねッ!」

 

 インカムから聞こえるのは、動揺を感じさせながらも元気のある声。逃れたノーレさんのオンニミド・セーガは負常モンスターを交わしながら人型に変形し、振り返ると同時にビームマシンガンの連射をメギドの後部、メインスラスターがある場所へと撃ち込んで…爆発させる。まるで自爆させるような形で(厳密には違うけど)、爆発を用いて多数の負常モンスターを吹き飛ばす。

 

「…けど、抜かった…こんな形で、メギドを失うなんて……」

「この状況です、離脱し最後に爆破出来ただけでも上々と言うべきでしょう。それよりも……」

 

 爆破の直後、ノーレ機は後退しつつビームマシンガンの砲身を分割。上下二分割の開放型バレル状態に可変させ、高出力の単射ビームで一閃。津波の様な負常モンスターの大群を光芒で貫き、直後に航空形態へと戻り、今度こそリヨン機と共に離脱していく。メギド装備のリヨン機はビームシールドで、ノーレ機は機敏な空中機動で負常モンスターを凌ぎ、最前線の先端から離れていく。

 

(…さて、ここからは……)

 

 大分前、初めてのライブの時の戦闘でも精製した、モーニングスター風の武器を複数作って射出。それ自体の飛翔と破裂による周囲への拡散、その二段攻撃を大群に浴びせ、数百、数千、或いはそれ以上の負常モンスターを瞬く間に蹴散らし…それでも負常モンスターの勢いは、微塵も削がれない。一度の攻撃で数千数万もの物量を倒したところで、広いプールからコップ一杯分の水を掬い出した程度にしかならない。そして掬い出した水も、暫くすると水源からまたプールに戻っていくような状態が、今のこの戦いで……

 

「…だが人は、窮地を乗り越えられるものだ。そして女神は、そんな人々を支え、盾として剣として、共に戦うものだ……ッ!」

 

 弱気になった訳じゃない。だけど私の思考は、自分でも気付かない内に下向きへとなってしまっていて…だから言葉で、心を奮い立たせる事でその思考を吹き飛ばす。

 窮地だって事は、とっくに分かってる。でもこれは、勝ち目のない戦いじゃない。勝利を目指した、その為の道を歩む戦いで…私が、女神が戦い、それを勇姿として見せ続ける事が、一人一人の戦いを、その心を支える事になると信じている。

 温存の為に、今はリバースフォームを使えない。だけどリバースフォームなしでも、戦う事は出来る。突入を担う私達を信じ、その為の準備を進めてくれている軍人の皆の為に…私も、戦い抜いてみせる。

 

 

 

 

 各国にMGが配備された今、MGが前線を構築し、空陸それぞれの戦闘艦がその大火力を活かした後方からの支援及び、抜けてきた負常モンスターの迎撃に当たるという基本姿勢はどの国も同じ。最終防衛ラインを担う、有志や非兵器乗りの下まで辿り着かせてなるものか、と各国国防軍が奮戦し…しかしその特性は、国毎に少し違う。MGは勿論、戦闘艦に関してもプラネテューヌの艦は足の速い自国MGに随伴する為高速艦…即ち速度を重視した設計が成され、適性の性質上MGの物量を他国程容易には伸ばせないルウィーの艦は、MGの運用能力よりも艦そのものの戦闘能力に重きを置いているなどの違いがあり、当然それは戦い方にも影響している。

 

「焦るな!味方機との位置関係を常に把握しろ!攻撃範囲が被ってしまえば、その分が無駄になるぞ!」

 

 ルウィーのある地点で迎撃を行う、レグファ部隊の一つ。地上からの攻撃を行うその部隊は横に広がり、両肩部に備えられた魔術投射砲…即ち魔法を撃ち出す為の装備を用い、範囲攻撃に長けた火炎や爆裂の魔法を全機揃って一斉発射。放たれた魔法は狙い通りに負常モンスターを焼き払い…しかしすぐに後続が、次の負常モンスターの大群が押し寄せる。

 

「くっ…倒しても倒してもキリがない…!」

「これじゃすぐに、こっちの魔力が……ッ!」

 

 次の投射後もやはり押し寄せ、各機は個々での迎撃に移行。しかし一斉の範囲攻撃でもすぐに押し寄せてくる敵には、自衛はともかく突破の阻止など困難以外の何物でもなく…そこで聞こえる、一つの声。

 

「ハイドライブロングレンジブラスターで薙ぎ払います!射線上から退避を!」

『……!』

 

 スピーカー越しに声が聞こえた直後、モニターに表示されるのは攻撃範囲を示す表示。その範囲内にいた機体はスラスターを吹かし、或いは飛行システムを起動させる事で上空へと逃れ……次の瞬間、二条の光芒が、膨大な出力の照射砲撃が負常モンスターの波を薙ぎ払う。

 局地的ながらも大きく削れた負常モンスターの侵攻。照射の光が消えた直後、追撃の様に魔力の光弾が連続で放たれ、更に大群を削っていく。

 そして、魔力弾を追う形で躍り出るのは、一対の赤い翼を備えた、重装の騎士。

 

「立ち止まっている余裕はないか…!」

 

 両腕部に装備した魔力砲、マギア・ライフルを交互に放ちながら着地した重装騎士、アロンダイト・コンクエスター。着地と同時にスノウスピナーを展開する事で雪原を滑走しながら射撃を続け、撃ち漏らしに対しては前腕部のマギア・アンカーを射出する事で確実に迎撃。戦闘ではなくスケートのパフォーマンスをしているが如き機動で、鮮やかに撃破を重ねていき…しかしやはり、単独での通常兵装による迎撃では、どれだけ巧みだろうと大群を捌き切る事は出来ない。

 しかしそれも、アロンダイトのパイロット…朱雀は初めから承知の上。着地してからの動きは全て、多くの負常モンスターを引き付ける事こそが真の目的。そしてそれを果たしたアロンダイトは跳躍しバックパックの追加武装、二門の大型砲の内右側だけを肩越しに展開。同じく右のマギア・ライフルと連結し…再び砲撃を、放つ。

 

「これで……ッ!」

 

 砲口より放たれる光が、数瞬前までアロンダイトのいた、今は勢い余って次々と突っ込む負常モンスターの数々がいる地点を焼き払い、その場の負常モンスターを一掃。次の瞬間にはアロンダイトもその場を離れ、遊撃機として更に前へと進んでいく。

 無論そうなれば、その場の戦力は低下する。相手が相手な以上、何もしなければ戦況は先程の状態に逆戻りであり…されどそれも織り込み済み。

 

「これは…よし、やっときたか……!」

「颯爽と来て、後少しの時間を稼いで次の場所に、か…大したもんだぜ、あいつは…」

 

 飛来する数十の大型ミサイルと、MGの火器とは比べ物にならない威力を見せ付ける砲撃。それは後方から現れた…より正しく言えば到着したルウィーのニザヴェッリル級汎用陸上戦闘艦の攻撃であり、ここにいるのは艦隊再編に先行して展開していた該当艦の所属部隊。

 単独で小規模艦隊と戦闘し得るだけの能力を、というコンセプトで開発された各国の主力艦の戦闘能力は圧倒的で、一気に戦線を押し返す。レグファ部隊も強力な支援砲撃によって大幅に動き易くなり、撃破のペースが上がっていく。

 

「無茶してまで倒す必要はねぇ!無理なら素通りさせても構わない!だから持ち堪えろ、生き残れ!味方がいる、まだ立っている…それだけで、周りは勇気をもらえるんだッ!」

 

 各機、各艦に響くのは、指揮を執りながらもエースと同等以上の勢いで負常モンスターを撃滅していくブランの声。別の地点ではロムとラムも迎撃を繰り広げ、巨大な氷解や魔力の光芒で迫り来る大群を薙ぎ払う。

 その活躍は、希望そのもの。守るべき君主が自分達と同じ場に立ち、敵を打ち砕き、活路を切り開くさまは、一人一人の心を強く奮起させる。

 

「これが女神、か……」

 

 戦場を駆けるアロンダイトのコックピット内にも、その声は届く。そして朱雀が漏らしたのは、どこか感嘆混じりの声。これまでブラン…守護女神である彼女と直接会った事もあり、同じ戦場に立つ経験もあり、しかし今の様な姿を見る事はこれまでになかった…他国出身であり、その分彼女への認識も他の軍人達とは少し違う彼だからこそとも言える、理解を深めたような呟き。

 同時に彼は考える。自身に与えられているのは大きな力であり、それは期待と信頼であり…力には、義務や責任も付随すると。この大きな力を振るう以上、そこにある使命は果たさねばならないと。その為に引き金を引き、空を駆け、押し寄せる波を切り開き……そこで朱雀は、あるものに気付く。

 

(…うん?あれは……)

 

 発見したのは、数機のMG。それだけなら当たり前の事だが、それはルウィーの機体ではなく、リーンボックスの機体であるルイースフィーラ。それも国色である緑に加え、全機が黒のラインが引かれたカラーリングを施されており…更によく見れば、動きもおかしい。見る限り行っているのは自衛だけで、積極的な迎撃は仕掛けていない。何かを守っている訳でも、損傷している訳でもない機体が、戦場の片隅で自衛のみを行っているというのは奇妙なもので……しかし朱雀はそれを頭の片隅には起きつつも、それ以上の詮索はせず迎撃戦闘を続行する。

 他国の機体であれば、動きだけでは分からない何かの命令を受けているのだろうと考えたのだ。それに今は、この戦場にいる人全てがそれぞれの形で戦っている。ならば自分がすべきなのは、持てる力の全てを惜しみなく戦いに注ぐ事だ。朱雀は心の中でそう呟き…戦場を駆ける。

 

 

 

 

 少しずつ、四ヶ国の軍の、四つの艦隊の再編が進む。わたし達を信じて、どの国の人達も頑張ってくれているのは嬉しいし、戦いの為…っていうのは素直に喜べないけど、わたし達女神だけじゃなくて、四ヶ国の軍全体が協力しようとしているのも、なんだか誇らしい気持ちになる。

 皆、頑張ってくれている。だったらわたしは、それ以上に頑張らなくちゃいけない。だってわたしは、女神だもの。

 

「32式…エクス、ブレイドッ!」

 

 引っ切り無しに迫り続ける負常モンスターを交わしながら、右手にシェアエナジーを集中させる。普段よりももっと、何倍も集めて、自分の中でイメージを固めていって…大太刀を芯に、根元にする形で超巨大なエクスブレイドを、シェアエナジーの刃を作り出す。翼を広げ、踏み締めるように空へ立って、横一文字に薙ぎ払う。

 普段なら大き過ぎて逆に使うタイミングがないような攻撃でも、今となっては有効な一撃。サイズの関係でもう、斬るというより撥ねていくようなものだけど、撃破出来るのなら同じ事…というか、よく考えたら久し振りにエクスブレイドを、「32式」まで入れて言った気がするわね…。使い方的には本来のものとは大分違うっていうか、某もう一振りの星の聖剣って感じだけど……って、そんな事を考えてる場合じゃないわ。

 

「まだ、まだぁ!」

 

 右から左へ振り切った後は、両手首を百八十度回転させ、今度は左から右へ、やや上向きにして斬り返す。数なんて数え切れる訳ないけど、この一往復で多分相当な数の負常モンスターを斬り飛ばして…でも別方向から、エクスブレイドの通らなかった場所から、他の負常モンスターが束になって襲ってくる。これまでも味方の被害を気にしない、自分がやられる事を厭わない相手っていうのはいたけど…負常モンスターはもう、レベルが違う。モンスターとは呼んでるけど、殆どミサイルとか特攻兵器とかを相手にしているようなもので、撃破は簡単だけど倒しても倒してもキリがない。

 二往復目はいけない。そう思ったわたしはエクスブレイドの大半を解除し、大太刀サイズ分だけのシェアエナジーを左手側に。そこで改めて作って、右手の大太刀と共に、二刀流の形で接近する負常モンスターを片っ端から捌く。両手用の大太刀を片手で振ったら本来の力なんて全然出せないけど、それでも難なく斬れる程に相手は脆い。

 

「援護します、女神様!」

「パープルハート様には、そう簡単には近付けさせません!」

「ふふっ、ありがとう皆。でも、近付けさせないっていうのは…それはそれで、困っちゃうわね!」

 

 その場で次々捌いていると、わたしの周囲に何本ものビームと多数の光弾が飛んでくる。続けてオンミニドとルエンクアージェの混成小隊がわたしの左右に現れて、心強い言葉と共に射撃で蹴散らす。

 その内の一人の言葉に少しだけ笑ったわたしは、感謝を返してぐっと前進。困る理由?それは勿論、相手が遠いんじゃわたしも戦えないから、よッ!

 

「援護は出来る範囲で良いわ!何よりまず自分を、次に仲間を守る事を優先して!」

 

 突進の勢いだけで小型の負常モンスターを散らしながら、わたしは二刀流戦法を続ける。斬って、突いて、捌いて、凪いで、出来る限り刃の動きの全てを攻撃としてぶつけていく。

 そんな中で聞こえてくるのは、戦闘艦のオペレーターの声。切羽詰まった、全体への言葉。

 

「敵拠点に反応有り!再び負常モンスター、出現ですッ!」

 

 反射的に、視線を上げる。目線を上へ、負のシェアの城へと向ける。

 何度も何度も起こっている、断続的な負常モンスターの出現。城の周囲に、降り出した雨が地面を濡らしていくように闇色の影が増殖していき…それが四方に、分かれていく。

 今現れたのは、どの位か。…それはきっと、考えたくもない程の数。わたし達が、皆が必死に戦って、倒してきたのを嘲笑うように、一つ前の出現以降で減らされた物量を補って余りあるかもしれない程の負常モンスターが現れて……数秒後、また全体へ向けた声が聞こえる。

 

「ぐっ…こちらパールスγ中隊!後退に失敗し、現在孤立中!救援を、誰か救援を……ッ!」

「……ッ!」

 

 届いたのは、助けを求める声。伝わるのは、本当にギリギリの、寸前で持ち堪えている状態なんだという思い。

 殆ど反射的に、わたしは近くの機体から救援を求めている部隊の位置を聞き、そこへ向かおうとする。…見捨てられる訳がない。見捨てられる筈がない。

 

「……っ…邪魔を…ッ!」

 

 でも、それを阻まれる。押し寄せる大群が、対応を強いる。わたし一人なら、切り抜ける事も出来るけど…無理な突破は、周りで戦う皆の負担になる。しかも今は、新たな負常モンスターが出現した直後…どうしても皆の心が揺らぐタイミングで、ただ突破するなんて事は出来ない。

 歯を食い縛り、全力で両手の刃を振る。強行突破出来ないなら、一秒でも早く大群を切り刻んで、行くしかないと。だけど当然、ここまでだって本気だった。だから撃破の速度が大きく上がるなんて事はなくて、その間にもまた助けを求める声が聞こえて、焦りの思いが生まれ始めた……その時だった。

 横から飛来した光実それぞれの光弾が、三本の線を描くように負常モンスターを撃ち抜いていく。次の瞬間には、わたしの目の前で航空形態から人型形態に変形する一機のMG、オンニミド・セーガが現れて、引き抜いたビームサーベル、反りの入った特殊な刃で中型以上の負常モンスターを斬り裂いていく。関節部から紫色の粒子を散らして、他の機体よりもかなり滑らかな挙動を見せながら。

 

「行って下さい、ねぷ子様…じゃなかった、ネプテューヌ様!」

「あ、貴女は……!」

 

 見覚えのある機体と武器。何よりねぷ子様という、他の軍人ならまず言わないような呼び方で、これが誰なのかをわたしは一瞬の内に理解。…ふ、副会長…貴女、なんて格好良い登場の仕方を……!

 

「…助かるわ。けど、幾ら何でも貴女一人じゃ……」

「大丈夫です、わたしには秘策がありますからっ!」

「秘策…?」

 

 彼女は強い。うちの有名なエースの一人なんだから、実力は間違いない。けど味方の士気が多少なりとも下がっちゃってる今、わたしの代わりにここをというのはあまりにも無茶な話で…だけど彼女は、秘策があると言った。そしてわたしが訊き返す中、副会長は右腕部で持ったビームサーベルを…聖剣ネプテューヌを掲げて、他の機体と違うフレキシブルスラスターから翼の様に広がる噴射炎を煌めかせて……言う。

 

「皆、ねぷ子様の下に集え…!」

「…………」

「…………」

「…………」

 

 

「…あ、ごめんなさいねぷ…テューヌ様。滑りました…」

「なんでわたしの名前出してそんな事するのよ!?そ、それが秘策!?わたしがただ恥ずかしくなっただけじゃない!」

 

……まさか、こんな事になるとは思わなかった。ポーズはさまになってるけど…多分周りの軍人達は、「えっ?」…としかなっていなかった。しかもわたし的には赤っ恥な訳で…思わず思いっ切り突っ込む。なんでこんな事を…と、頬が熱くなるのを感じながら突っ込んで…でもそこから彼女は、思わぬ活躍を見せてくれる。

 

「でも、安心して下さい。滑っても、わたしにはこれがありますから…!」

「い、一体何を安心して……って、それは…」

 

 空中で構え直した副会長の機体は、負常モンスターの大群へと突進。そこからビームサーベルによる連撃を繰り広げて…でもそれは、ただの斬撃じゃない。流れるように、踏み込みながら次々と斬っていくその攻撃には、凄く見覚えがある。だって…その攻撃は、わたしのクロスコンビネーションそっくりだから。

 普通なら出来る訳がない、というかやろうと思わないであろう、MGでの再現。それを彼女は、ある機能で機体の負荷を逃がしながらとはいえ確かに成し遂げていて…しかもその姿が、周りの士気を回復させる。段々と皆の動きが戻っていく。

 

「…やるじゃない、副会長。なら、任せたわよ…!」

 

 自然に溢れた笑みと共に、わたしは任せると言う。言って、正面の負常モンスターを斬り払って、一気に目的の場所まで向かう。

 救援の為に、一直線に目標地点へ。飛んで、駆けて、全速力で向かって…そうして見えてきたのは、孤立しながらも何とか持ち堪えている、十数機のMGの姿。

 

「間に合った…!皆、もう大丈……」

 

 声を上げながら、エクスブレイドを精製する。今度は射出する為に作り出して、それをわたしの側から打ち出して……その瞬間に、別方向からビームが駆け抜ける。わたしのエクスブレイドとほぼ同時に届いて、二方向から負常モンスターの一団を吹き飛ばす。

 

「え…ネプギア!?」

「お姉ちゃん!?」

 

 なんとそれは、ネプギアの攻撃。どうやらわたし達は、期せずして同じ行動を取っていたみたいで…でも驚いている場合じゃない。二人いるんだからと一気に負常モンスターを薙ぎ払い、孤立していた中隊が下がる為の道を作る。

 

「まさか、ネプギアも同じように動いてたなんて…今はプラスに働いたけど、こういうのは気を付けないとね……」

「だね…けど、大丈夫かな…ひょっとするとこれ、予想していた以上のペースで……」

 

 射撃を続けながらネプギアが浮かべるのは、不安混じりの懸念の表情。ネプギアが言っているのは、こっちが予測していたペースよりも、負常モンスターの増えている量が多いかもしれないって事で…確かにそうだったとしたら、不味い。かなり不味い。

 だけど、だとしても今、わたし達がそれを表情に出しちゃいけない。それで皆を不安がらせちゃいけない。だからわたしは、気持ちは分かると思いつつも、そこを注意しようとして……三度、全体への通信がインカムに届く。

 

「これより、ある攻撃の射線を全軍、全部隊へ送りますわ!早急に射線上の部隊は離れて下さいまし…!」

「え、ベール…?これ、一体……」

 

 その通信内容自体は、別におかしくない。味方を巻き込まないようにする為の、普通の通達で…でも全体ってなると話は別。こういう通信をするって事は、多分局地的な域を超える攻撃って事で…でもそんな規模の攻撃なら、わたし達に先に教えてくれていなきゃ変。

 

「…これ、って…まさか……!」

「え、ネプギア知ってるの…?」

 

 わたしは完全に困惑する一方で、何か分かったらしいネプギアが浮かべたのは…興奮の面持ち。物凄く瞳を輝かせた…ネプギアがメカオタモードになった時の声と表情。

 本当に、一体これはどういう事なのか。すぐに訊きたいところだけど、そんな時に限って大きめの束が向かってくる。それを無視出来る筈もないから、わたしはネプギアと協力する事でその束を撃破し、改めて訊こうとしたその時──極大の光が、空間そのものを灼き尽くしてしまいそうな程の光芒が、戦場を貫く。

 

「な、ぁ……ッ!?」

 

 一瞬、わたしはオリゼが戻ってきたのかと思った。オリゼが全力を、《女神化》も辞さないという考えに変わったのかと思った。そう思う程の、そう思わざるを得ない程の閃光が、戦場を飲み込む程に貫いて……その光が消えた時、戦況がひっくり返るんじゃないかと思う程の、信じられない程の空白が、負常モンスターのいない空間が出来上がっていた。

 

「こ、これは…この光は……」

 

 茫然とするわたし。一方のネプギアは、今まで以上に目を輝かせていて……そんな中で、また一つの声が…戦場に、響いた。

 

「──特装機動要塞艦・ヘブンズゲート…これより戦線に参加するッ!」




今回のパロディ解説

・どこぞの純粋種専用機
ガンダム00シリーズに登場するMAの一つ、ガデラーザの事。直前の展開を含めてのパロディだったりします。そして私、ずっと「ガラデーサ」と勘違いしてました…。

・某もう一振りの星の聖剣
Fateシリーズに登場するキャラの一人、ガウェインの宝具、転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)の事。ガラティーンは…他にもありますね、えぇ。

・「皆、ねぷ子様の下に集え…!」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズに登場するキャラの一人、マクギリス・ファリドの台詞の一つのパロディ。そうです、こちらもポーズ含めてのパロディです。
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