超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第百九十五話 まだ、諦めない

 駄目かと思った。諦めてはいなかったけど、なんとかしたいとは思ってたけど…どうにもならない、どうしようもない…そんな風に、頭の中では考えてしまっていた。もしかしたら、諦めてないっていうのもわたしがそう思ってただけで…無意識の中では、心でも「もう無理なの…?」と思ってしまっていたかもしれない。だって…何とかする方法が、一つも思い付かなかったから。一度撤退する選択肢も、じっくり考える余裕も、何一つなかったから。

 そんな中で聞こえたのは、響いたのは、わたしじゃないわたしの言葉。諦めないでっていう……叫び。

 

「ミラ、お姉ちゃん……?」

 

 思いっ切り、背中を…背中と心を叩かれたような、強い気持ちの籠ったミラテューヌの声。それにわたしは、インカム越しなのに思わずプラネタワーがある方向を振り返ってしまって…ネプギアも、驚きを隠せていない声でミラテューヌの事を呼ぶ。

 

「まだだよ、皆!まだ諦めるには早過ぎるよ!…ううん、女神の皆も、人の皆も、皆々本気で、全力で、心から懸命に戦ってるんだもん!そんな中で、諦めるしかない事なんて…ひとっつもないんだよ!」

 

 ネプギアの声に応えるように、ミラテューヌは言葉を続ける。まだ諦める時じゃないって、諦めなきゃいけない事なんかないって。

 

「…ミラテューヌ…もしかして、何か策が……」

「ないッ!」

『えぇッ!?』

「ないよ、全くない!更に言うと、わたしの存在が未来の証明…とかでもないからね!もうこの際言っちゃうけど、わたしの時はこんなの無かったし!」

『えぇぇぇぇッ!?』

 

 何か策があるのか。そう思ったらしいイリゼに対する答えは、まさかの「ない」。完全に「ある」のトーンで、わたしに任せて!…の雰囲気で出てきた否定の言葉に、わたし達は全員仰天。しかも聞いてもいないのに、自分が知ってる…自分の辿った過去とも違うんだとまで言われて、これに匹敵する驚きなんてそうそうないだろう、と思っていたさっきの仰天具合をあっという間に更新される。

 

「あ、貴女ねぇ…こういう時にふざけるのはほんとに違うわよ!?っていうか分かってる訳!?今は正真正銘、信次元の……」

「だから、言ってるんだよ!諦めないでって!」

 

 流石にわたしでもどうかと思うような発言の連続をするミラテューヌに、怒りを孕ませた声と強い語気で問い詰めるノワール。でもノワールが言い切る前に、ミラテューヌは返す。だからこそ、諦めちゃいけないんだって。

 その返しに、ノワールは言葉に詰まる。ノワールだけじゃなくて、わたし達全員が何も言えなくなる。…その通り、だから。今は絶対に諦めちゃいけない、そんな事出来ない戦いをしているんだから。

 諦めないで、って言葉は正しい。けど、それは分かってる、分かってるけどって状態で…そんなわたし達に向けて、ミラテューヌは声のトーンを落として続ける。

 

「…分かるよ、言うだけなら簡単だもんね。ここまでだって皆頑張ってるのに、根拠もなしに諦めるなってだけ言われただけで、よーし!…って気持ちにはなれないもんね。…でもさ、思い出してみてよ。これまで皆は、これまでだって皆は、色んな困難を、勝てないって思うような状況をひっくり返してきたでしょ?それは勿論、誰かが助太刀に来てくれたとか、成功する確率が低いだけで勝てる可能性のある策があったとか、一つ一つにちゃんとした理由があると思うけど…全部全部、それは諦めなかったから掴めたものでしょ?諦めないっていうのは、それ自体が一つの『強さ』だって、皆知ってる筈でしょ?」

「…それは、そう…ですけど……」

「それにさ、皆はくろめを止めたんだよ?犯罪神みたいに消滅させたとか、心をへし折ったとかじゃなくて…あ、いや、くろめメンタルぼろぼろになってたけど…とにかくそういう、これ以上進めない状態にしたんじゃなくて、心を救って、思いを闇の中から掬い上げて、もう一度歩き出せるようにしたんだよ?…そんなの、ただ倒すよりずっと凄いよ。強い敵を倒すよりずっと難しくて、困難で…だけどそれを、皆は実現させたんだよ。それだって、皆が諦めなかったから…仲間を、皆を信じたから、辿り着けた決着なんだよ。少なくとも、わたしはそう信じてるんだから」

 

 語り掛けるようにして言うミラテューヌの言葉は、自然とわたしの、わたし達の心に入ってくる。それは同じわたしだからか、未来のわたし…これまでに同じような経験をしてきた相手からの言葉だからかは分からないけど、言葉の一つ一つが心の中に染み込んでいく。

 

「だからね、諦める事なんてないよ。これまで皆がぶつかってきた事、成し遂げてきた事だって、凄く凄く困難な事で…それでも諦めなかった先にいるのが、今の皆なんだもん」

「…そう、ですわね…えぇ、そうですわ。そうでしたわ」

「まさかネプテューヌ…ミラテューヌに教えられるとはな。…や、ある意味ネプテューヌらしい、か…」

「ふふっ、やっぱり『ねぷちゃん』は流石ね。…けど、そうは言っても状況は変わってない…どころか、更に悪化してるわよぉ?」

 

 柔らかな表情が浮かぶ声で締め括ったミラテューヌの言葉を、皆が聞き入っていた。同じわたし…というか、未来のわたしなのに、少し嫉妬しちゃいそうな位…心に響いた。

 少しだけ、軽くなった空気。だけどぷるるんが今言った通り、気持ちだけの問題じゃない。気持ちが折れてたら可能性なんて掴めないし、気持ちは絶対大事だけど…どんなに気持ちがあってもどうにもならない、絶望的な『現実』があったからこそ、わたし達も気持ちが折れそうになったんだから。

 

「だよね、分かってる。だから……」

「…ミラテューヌさん……?」

 

 そこで一度途切れる、ミラテューヌの声。わたしに任せて、と言うような言葉の後、ミラテューヌは何かをしているようで、代わりにいーすんの困惑したような声が聞こえてくる。

 ミラテューヌは何をしようとしているのか。さっき策はないって言ってたけど、何か思い付いたのか、それとも……そんな風にわたしが思う中──その声が、戦場に響く。

 

「皆ッ!正直さ、皆思ってるよね?こんなのもう無理だって、勝てる訳ないって。…かも、しれないね。そう思うのも当然だし、そう感じても仕方ないよ。だけど…まだ、女神は諦めてないよ。まだ戦ってやるって、勝って信次元を…皆を守るって、本気で心から思ってるんだよ。だから……

 

 

 

 

────皆も、力を貸してッ!皆で、皆で守るんだよッ!掴むんだよッ!未来を、希望をッ!」

 

 それは、わたし達に向けたものじゃない…全方位チャンネルでの、聞こえる全ての人に向けた声。女神の姿じゃない、人の姿のままのわたしの声が、強く高く響き渡って……その、次の瞬間だった。一瞬の静寂と…そこからの、割れんばかりの呼応の声が轟いたのは。

 

「あぁ、そうだ!私達で守るんだッ!」

「未来と希望を掴む…良い響きじゃないか…!」

「こんな窮地だからこそ、活躍すれば一躍有名になれるってものよね!」

「うぉぉぉぉッ!やってやるぜぇええええッ!」

 

 次々上がる、観戦やコンサートの観客席の様な声の波と共に、動きが変わる。絶望的な光景を前に、知らず知らずの内に鈍っていた動きが、一人一人の本領が蘇る。

 脱帽だった。圧巻だった。一人で、一度の言葉で…こんなにもあっという間に、この広い戦場の空気を塗り替えるなんて。

 

「す、凄い…凄いよミラお姉ちゃん…!こんなの、わたしには……」

「ふふん、でしょ?…と、言いたいところだけど…違うよ。こうなったのは、ここまで皆が多くの人を勇気付けて、最前線で戦ってきたから。信頼される女神だったから。わたしはただちょっと、火付け役をしただけで……これも皆が、積み上げてきた事の一つなんだよ」

 

 凄いのは自分じゃないと、これがわたし達のしてきた事の結果なんだと、いつもの調子に戻ったミラテューヌは言う。

 本当に、そうかしら。…とは思わなかった。皆がわたし達を、わたしを思って心を燃やしてくれているなら、胸を張って、堂々と自分に自信を持つ事が、望まれる女神の姿だって、わたしは思うから。

 

「ロムちゃん、おねえちゃん!わたし今、すっごくやってやろうってきぶんだわ!」

「ぴぃも!ぴぃもおんなじきぶんっ!」

「っとと、駄目よピーシェ。気持ちは分かるけど、わたし達には行かなきゃいけない場所が…戻らなきゃいけない次元があるでしょ?……気持ちは、分かるけど…ッ!」

 

 飛び出そうとするぴー子を制止するセイツ。でもその頬は紅潮気味で、よく見れば止めるのとは逆の手で小さくガッツポーズ状態。

 けどほんと、こっちが勇気を貰える位に皆が気持ちを、思いを奮い立たせている。わたし達だけじゃなくて、皆が完全に心を持ち直していて……だけどまだ、足りない。

 

「…ふー……可能性とか、出来るかどうかとか、もうそんな事は関係ないわね」

「…ネプテューヌ?」

「ネクストフォームのわたしの能力で以って、負常モンスター諸共負のシェアの城を完全消滅させるわ。100%どころか100万%無理な気がするけど…出来ないと、決まってる訳じゃないもの」

「100万%ってそんな、気持ちとしての掛け声じゃないんだから…。…けど、ここから勝利する為には、それ位の不可能も実現しなきゃ……」

 

 呼び掛けてきたイリゼに、わたしはやろうとしている事を話す。誇張じゃなくて、本当に100万%位…おかしな表現しか出てこない位、出来るビジョンが思い浮かばない。

 それでも今は、本気でやろうという気持ちが私の中にある。イリゼも初めは怪訝な顔をしていたけど、わたしを支持してくれるような表情に変わって、言葉でも肯定してくれようとした……その時だった。

 

「──いいえ女神様。折れぬ心程強いものはないというのであれば賛同しますが、指導者が無謀な策に及ぶのは如何なものかと思います。故に…ここは私に、我々に一つ試させてもらえますかな?」

「……!この声は……」

 

 突如インカムから聞こえてきた、余裕と自信に満ちた声。その声に、真っ先に反応したのはベールで…次の瞬間、また別の声がインカムから届く。

 

「ポイントB4に大型の反応が出現!熱量からして、戦闘艦クラスです!」

 

 後方の艦のオペレーターからの、新たな情報。タイミングからして、さっきの通信絡みのもので…数秒後、そのポイントB4にいた部隊からの連絡で、反応は戦闘艦クラスではなく戦闘艦そのものであった事……そしてそれが、湖から浮上してきた事が判明した。

 

 

 

 

 ラステイションの戦闘艦とはまた違う色味の黒を基調とし、各部に緑を加えられた空中艦。リーンボックスの空中艦と似た、しかし細部が異なるその艦の出没は、多くの部隊を驚愕させた。

 それもその筈、戦闘艦といえば負常モンスターの猛威を広範囲で抑え蹴散らす事が出来る、迎撃において最も有効な「火力」に長けた存在なのだ。その空中艦が、これまで潜水し戦闘に参加していなかったというのは、周囲を何事かと思わせるのに十分な事柄であり……その遥か後方、現れた空中艦同様に黒と緑、更に金もカラーリングに取り入れられたリーンボックス製MGのコックピット内で、黒衣の男が指示を飛ばす。

 

「全機、これより送られるデータ通りの位置及び角度に移動せよ!移動完了後、反射機はその場で固定、護衛機は反射機を絶対死守!僅かでも位置がズレれば、砲撃に焼かれると思え!」

 

 ガラティーン。専用機として開発されたその機体のモニターには、配下の機体の位置と状態が表示され、同時にある装備のチャージ状態も映し出される。

 表示されているのは、MGだけではない。先の空中艦もまた表示されており…その艦を中心とするように、既に各地へ散っていた部隊が位置の最終調整を進めていく。

 

「随分と機嫌がいいじゃないか。さっきの言葉に絆されたか?」

「まさか。だがここで、求めていた答えの一つが見えそうな気がしているのは事実だな」

 

 飛ぶ、ではなく浮く、という表現が似合う挙動で空中に留まり、両腕部のビームライフルと射出された二基の無人機で負常モンスターを迎撃するガラティーンのコックピットで、一組の男女が言葉を交わす。下段の女性が機体を制御し、上段の男性が無人機を巧みに操りながら部隊への位置データに細かな修正を施していく。

 黒衣の男、ニルは頭部を覆う仮面の下で思い出す。思い出し、思う。嘗てベール…リーンボックスの守護女神と交わしたやり取りの事を。

 国の長だからこそ理想を追い求め、それを貫く…彼女がそう語った後も多くの事があり、既に今は理想などとても描けないような窮地。それでも先の言葉通り、女神達…国の長達がまだ諦める事をせず、そんな女神達の在り方、歩んだ道のりが人々の心を奮い立たせ、一人一人が勇気を持って前を向けているのなら……グリーンハートが貫かんとしていた事は、甘く夢想的でありながらも、確かに無駄な、愚かな事ではなかったのだろうと。

 

(ならば、手を貸すのには十分だ。追い詰められての賭けではなく、信念を持っての懸けだというのなら、勝算はゼロではない…!)

 

 期待ではなく信用。未来への可能性ではなく、過去と今を照らし合わせの結果から、打算ではなく純粋な意地で持てる力を尽くそうと決めたニルは、無言のままに口角を上げる。

 そして、全機の配置が完了。高い情報収集能力と処理能力を有するガラティーン、更にそれを使いこなす彼の技術により、位置や角度だけでなく最適な効果を発揮するタイミングも算出され……その瞬間が、訪れる。

 

「条件は全て揃った!これよりハイドライブロングレンジ砲で以って、戦域を支配するッ!」

 

 迎撃を止め、無人機を両腰に戻し、両腕部を水平に広げるガラティーン。背部からは平行配置された二基の無人機がせり上がり、砲門を展開。無人機そのものが一つの砲であるかのように、二基が肩越しに構えられ……本体と無人機、全てのエネルギーラインが直結。既にフルチャージ状態となっていたエネルギーは臨界状態を迎え……次の瞬間、その二基の無人機より、獄炎が如き鮮烈な赤光が放たれる。

 凡そ単騎のMGが放っているとは思えないような、あまりにも強過ぎる光と轟音。アロンダイト・コンクエスターの有するほぼ同名の武装よりも明らかな高出力を持つ光芒は、余波だけで周囲から迫っていた負常モンスターを吹き飛ばし、射線上を塗り潰していく。

 それだけでも、十二分に強い砲撃。しかし、それだけではない。ガラティーンの砲撃の先、そこにあるのは浮上した先の空中艦。

 

「──散れ」

 

 真紅の閃光は、空中艦の下部に備えられた設備へ直撃。されど設備が爆散する事はなく、むしろ設備のレンズ状の部位へと取り込まれ……ニルの声を合図とするように、拡散する。設備の各部から、分裂した赤光が解き放たれ、遥かに広い範囲を縦横無尽に薙ぎ払う。一方位への絶大な照射が、全方位への乱舞となって戦場を切り裂く。

 だが、まだ終わらない。拡散した多数の光芒。その一つ一つの先には特殊な盾を備えたルイースフィーラが存在し…その盾に触れる事で、更に光芒は幾条にも広がる。網となって、檻となって言葉通りに支配する。

 単純な威力で言えば、ヘブンズゲートの特装砲には及ばない。しかし多段的な拡散により範囲を飛躍的に広げたガラティーンの砲撃は、負常モンスターの脆さもあって圧巻の光景を人々に、戦う者達に見せ付けていた。

 

「ふ、ふふ…ははははははッ!実戦運用はこれが初めてだが、中々壮観なものじゃないか!」

「蹂躙だな。だが一度でも味方に当てたら、顰蹙を買うどころではないぞ?」

「見縊るな、味方の動きも考慮した上での調整をしている」

 

 二門の砲からの照射は続き、複数度の拡散によって四方八方から伸びる光芒が負常モンスターの大群を切り刻む。分断され、寸断され、各国の機体が対処し易くなった負常モンスターを次々撃ち抜き叩き斬っていく。

 そしてその中で飛ぶ機体の内の一つは、白と金の重装機。意図の読めない自衛を行うリーンボックス機は、この為の展開をしていたのか…とパイロットは理解し、空も地も駆け巡りながら、迎撃を続ける。戦場に立つ、剣や銃を機体によって携える、多くの味方と共に。

 

 

 

 

 空から無数に広がり負常モンスターの波を引き裂いていく、真紅の光芒。ヘブンズゲートの空間諸共薙ぎ払うような、何もかも消し飛ばす砲撃とは違う、何度も枝分かれした事で末端はそこまで強くない、それこそMGの防御兵装でもちゃんと受ければ防げそうな位の攻撃だけど…それでも負常モンスターには通用している。もしかしたら、それも踏まえてここまでの広範囲拡散をさせているのか…そんな攻撃が、広い戦場を赤い網で染めていく。

 こんな事もMGと戦闘艦の連携で出来るんだ。そう思ったわたしは興奮したけど、すぐに「これでもまだ足りない」って思った。この広範囲攻撃は凄まじいけど、範囲内全てを撃てる訳じゃない(というかそんな事をしたら味方が巻き込まれる)し、何よりずーっと撃っていられる筈がない。だからこの攻撃でも有利になるのは一時的で、今の状況を打開出来る程じゃない……そう、思っていた。…でも……

 

「今だ、戦線をもう一度押し上げるぞ!全機、前方に攻撃を集中!」

「これより指定範囲に長距離爆撃を開始する!各員、援護は任せた!」

 

 見える光景が、戦闘の流れが、少しずつ…少しずつだけど、また変わる。MGは砲撃の合間を縫うように、網の隙間を潰すように前進と攻撃をし、防衛線を、自分達の戦う場所を前に押し上げていく。戦闘艦も中距離での迎撃に用いていた砲やミサイルを全て押し寄せる波へと叩き込み、近接迎撃は各部の機銃と艦載機部隊で凌ぐ形に変えていく。

 予想通り、暫くした末に途切れた真紅の閃光。すぐに範囲の外からの負常モンスターが空いた空間に飛び込んできて、何事もなかったかのように戦場を埋め尽くしてくる。…だけど、軍の動きも変わらない。怯まず、飲み込まれずに…負常モンスターの猛威を、迎撃で以って押し留めている。

 

(…そっか、再編が済んでどの部隊も動き易くなったから…でも、それだけじゃない。それだけじゃなくて、皆……)

 

 最初は緊急出撃からの、状況もまだ飲み込み切れない中での戦いだっただろうし、再編中は目の前の戦闘に専念出来ない状態だったから、100%の力は出せない…ってなっていたんだと思う。そのどちらの状態も抜けた後だから、疲労がある事を踏まえても存分に力を発揮出来るっていうのが多分現状で…だけど、それだけなんかじゃない。

 ミラお姉ちゃんの言葉を切っ掛けに、皆の心が燃え上がっている。そこにさっきの広範囲攻撃が入って、余裕を持って立て直す時間を多くの人が得られた事で……反撃が、始まったんだ。ただ耐えるだけじゃない、ただ迎撃して時間を稼ぐだけじゃない…勝ってやるんだっていう、反撃が。

 

「これなら…お姉ちゃん!皆さん!」

 

 変わった。気持ちや空気…心の部分だけじゃなくて、確かに戦いの流れそのものが変わった。今も勢い自体は負常モンスターを押し返す程じゃないけど、このままジリ貧になって押し切られ、飲み込まれる…そんな状況からは、脱却した。

 その事実に、各国の皆さんの力にじーんとくるものを感じながらわたしが呼びかけると、お姉ちゃん達も頷く。皆さんが、ここまでのものを見せてくれるなら……わたし達が、やる事は一つ。

 

「いーすん!状況は色々変わったけど…予定通り、負のシェアの城への突入作戦を開始するわ!」

「はい!わたしも…いえ、わたし達も全力でサポートさせて頂きます…!o(`ω´ )o」

「お願いします!それと、各次元に行ってくれた皆の事は……」

「そちらもお任せ下さい。イリゼさん達は…皆さんは、皆さんにしか出来ない事を!(`・∀・´)」

 

 力強いいーすんさんからの声に、わたしもお姉ちゃんもいーすんさんも、まあまあな数の人がこくりと頷く。インカム越しの会話なんだから、頷いても意味はないんだけど…ついやっちゃうっていうか、やっちゃいけない事でもない。

 

「…皆。頑張って頂戴ね?皆が頑張ってくれないと、こっちまで大変になっちゃうんだから」

「ふふっ、分かってるわよ。…ぷるるん達も、頑張って」

「離脱するわたし達が言う事じゃないかもしれないけど…戦う場所が違ったって、思いは繋がってる。そうでしょ?」

「勿論。私達はここを、信次元を守るから…セイツ達は神次元を、守って」

「ぴぃ、がんばるっ!ねぷてぬも、ねぷぎあも、みんなみんな、がんばれっ!」

「はい!絶対に、わたし達は負けませんっ!」

 

 お三人の、それぞれの言葉を受け取って、わたし達も言葉を返して、プルルートさん達はこの戦場から離れていく。神次元に向かった負常モンスターを迎撃する為に、神次元を守る為に、別の戦場へと向かっていく。

 そんなお三人を見送って…わたし達も、動き出す。今度こそ…全部、終わらせる。

 

「どいたどいたーっ!」

「じゃま、しないで…っ!」

 

 うずめさんの音波攻撃と、ロムちゃんの氷魔法と風魔法を組み合わせた攻撃がまず進路を切り開く。続いてわたしとユニちゃんが射撃で更に先を、ラムちゃんが爆裂魔法で切り開かれた場所を大きく広げて、スピードを上げながら突っ込んでいく。お姉ちゃん達もそれぞれの遠距離で、後ろから追って来ようとする負常モンスターを斬り裂き叩き潰してくれる。

 ここまでわたし達がいたのは、防衛ラインの内のかなり後方。最前線から順に、負常モンスターが数を大きく削られた状態で到達する地点だったから、まだ暫くは前進も容易。女神十人がかりなだけあって、全く負常モンスターを寄せ付けない。

 

「援護します、女神様!」

「女神様の足は止めさせません!」

 

 進む毎に、MG部隊からの支援がわたし達を助けてくれる。航空形態での集中砲火、人型形態に変形すると同時のミサイル掃射、色んな形での射撃が周囲に走り、わたし達へ向かおうとする負常モンスターを減らしてくれる。

 皆さんの役目は、自分の持ち場での迎撃。その範囲で、その合間にわたし達の支援をしてくれて…それが、心強い。支援の砲火は勿論、支援してくれるという事そのものがわたし達の背中を押してくれてるようにわたしは感じた。

 

「……っ…段々濃密になってきたわね…ッ!」

 

 時間なんか気にしていられない。トップスピードで、今出せる最大速度で進む選択肢の一択だから。

 後方では、完全にこっちの攻撃が上回っていた。戦線の中程でも、こっちが攻撃のペースを上げれば対処は出来ていた。でも、最前線は全く違う。最前線の先は、全く負常モンスターが削られていない中、土砂降りの中で精鋭が戦い続けているようなもので…そこに近付いた今、ただ真っ直ぐ進むのは難しい。当初はエース部隊に援護してもらう予定だったけど、負常モンスターの物量が跳ね上がった以上それには頼れなくて、実際の突入段階まではわたし達も全力を出す訳にはいかないから、どうしても進むスピードは落ちてしまう。

 

「おねえちゃん、どうする!?ぐるって回る!?」

「上とか下とかも、ダメ…?」

「どう、だろうな…ッ!負常モンスターの性質を考えりゃ、どこに行ったって大差は……」

 

 このまま真っ直ぐ進むか、それとも進路を変えるか。それを口にしたのはロムちゃんとラムちゃんで、ブランさんはただ進路を変えるだけじゃ変わらないと答えようとし……次の瞬間、二方向から実体弾の連射がわたし達の視界に入る。

 

「ヴィオレ2より女神様達へ!援護させてもらいますよッ!」

「同じくこちらシュバルツ1!余裕はないんで以下同文でッ!」

「貴方…いやなんでここにいるのよ!?ここ空中よ!?しかもプラネテューヌ圏よ!?」

 

 わたし達の左右に現れたのは、パープルとスカーレットのツートンカラーを持つオンニミド・セーガと、ダークグレーとパープルを主体に、黒のラインが引かれたT型装備群のガエリブル。両機は連携して射撃を仕掛け…ノワールさんが、素っ頓狂な声を上げる。

 でもそれも、当然の事。ガエリブルはラステイションの機体で、しかもT型装備群は陸戦用の装備なんだから。

 

「えぇ、大隊指揮の為にラステイション圏へ残った方が良いってのは分かってますぜ?けど、流石にここで同じ場所を維持するってのは難しいもんですよ…!」

「って言いつつシュゼット兄、ほんとは女神様の援護をする為にこっち来たんじゃないの?」

「さーて、どうだかな?まあ何にせよ、やる事は一つってな…ッ!」

 

 右腕部に槍剣を、左腕部に重機関砲を持ち、頭部機銃共々一斉に放っているシュゼットさんの機体。それに対して、ノワールさんがどう思っているのかは分からないけど…トップエースがこうして援護をしてくれるのはありがたい。

 その二機体と共に、わたし達は突撃を続行。何とか最前線の端まで辿り着いて…でもこれが、ゴールじゃない。ここはあくまで、防衛ラインの先端であって…まだ、先がある。一切の迎撃を受けていない、負常モンスターの荒波を、わたし達は超えていかなくちゃいけない。

 

「ヴィオレ2、シュバルツ1、援護はここまでで十分です!無理せず、お二人はここで離脱を……」

「いーえ、まだ援護させてもらいますよ女神様!」

「ですが……」

 

 ここから先をMGで進むなんて、無謀そのもの。だからわたしは、ここまでて良いとお二人に伝えた。お姉ちゃん達も、そのつもりだった。

 けどまだ大丈夫だと、ノーレさんは言う。その気持ちは嬉しいものだけど…だからって、じゃあお願いねと軽はずみに言う事なんてわたしには出来ない。だから、改めてわたしは下がってくれるように言おうとして……そうしようとしたその時、お二人の声がインカムを介して空に響く。

 

『自分にも、譲れない意地って(もん・もの)があるんですよッ!』

 

 言葉と共に、オンニミド・セーガの両前腕部から発振されたビームサーベルと、ガエリブルの巨大な槍剣が大型負常モンスターを貫く。貫き、そのまま突進をかける。

 一瞬、その声に圧倒されてしまった。お二人の言葉は、あまりにも強く…揺らぎはしないと感じさせるものだったから。どっちの機体も、一気に負常モンスターを薙ぎ払えるような装備はなくて…それでも一発一発、一太刀一太刀で道を開いて進んでいたから。

 

(……ッ!あれは……)

 

 そんな中で見えたのは、二つの超大型部常モンスター。単騎のMGの武装じゃ基本的に処理し切れない、どうにもならない敵。それを前にしても、お二人は一切退く事がなく……そこはふわりと、寄り添うようにしてお姉ちゃんとノワールさんが隣へ降り立つ。降り立ち、言う。

 

「ありがとう、そこまでの思いを持ってくれて。…なら……」

「ふふ、流石の胆力ね。…だったら……」

 

 

『勇ましい勇士に、心からの加護を──!」

『……ッ!』

 

 次の瞬間、ビームサーベルと槍剣は変化する。ビームサーベルはエクスブレイドを纏った巨大な二振りの刃に、槍剣はトルネードソードを纏った巨大な矛に。そして……

 

「これなら…ッ!信仰・銀河十文字斬りぃッ!…なーんて、ねッ!」

「こりゃ爽快だなッ!喰らいやがれ負常モンスター共ッ!シェア、ドリルぅ…ブレイィィィィィィクッ!!」

 

 十字に交差する二本の剣が、螺旋の力を解放する矛…いやドリルが、二つの超大型負常モンスターを吹き飛ばす。シェアエナジーの輝きが空に広がり煌めいて、そのまま後方の、周囲の負常モンスターを撃滅していく。

 お姉ちゃんやノワールさんと、軍のお二人の連携。女神と人の、未来への意思と意地が交差した二つの一撃。それが前に進む力になって……攻撃が、続く。いつの間にか来ていた、他の部隊の攻撃が続いて……改めて、わたしは感じた。感じさせて、もらえた。今、わたし達は…多くの人と、数え切れない程の人達と共に、思いを重ねて戦っているんだと。




今回のパロディ解説

・100万%
僕のヒーローアカデミアの主人公、緑谷出久の技の一つ、デラウェア・デトロイト スマッシュにおける表現の事。…100万%無理…それ位に普通は無理って事ですね。

・信仰・銀河十文字斬り
STAR DRIVER 輝きのタクトの主人公、ツナシ・タクトのサイバディ、タウバーンの必殺技の一つのパロディ。下のパロディと合わせ、何が繋がりのパロディですね。

・「〜〜シェア、ドリル…ブレイィィィィィィクッ!!」
天元突破グレンラガンにおける、グレンラガンの代名詞的必殺技のパロディ。恐らく上記のパロディと合わせ、シェアエナジーの光が銀河っぽくなってる…かもしれません。
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