超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

228 / 234
 今回の話は、これまでコラボして下さった全ての作品に纏わる描写を入れております。その為よく分からない部分も多いかとは思いますが、ご了承下さい。
 また、各描写に関する訂正も受け付けております。コラボして下さった皆様は、ご指摘があればお気軽にどうぞ。


第百九十六話 繋がりは、どこまでも

 次元を超えての、負常モンスターの侵攻。それは誰一人として予想だにしない、完全な想定外。

 しかし想定外であろうとなかろうと、攻めてくる以上は対応する他ない。その為にセイツ、プルルート、ピーシェの三人はイストワールの開く次元の扉を用いて神次元へと戻り、迎撃の為に動いていた。

 

「のわる、ぶらん、べるべる!たいへんたいへんっ!えっと、どれくらいたいへんかっていうと、これくらい……」

「いや落ち着きなさいピーシェ、気持ちは伝わってくるけど気持ちしか伝わってこないわ…」

「これ位って…まさか、ジェスチャーで表現してるのか…?」

 

 インカム越しにブランが予想した通り、女神化により精神面が幼くなったピーシェは両腕を広げる事で表現をしようとしていた。それは想像すると微笑ましいものであり、実際ベールは表情が緩んでいたのだが…すぐにその空気も霧散する。

 

「信次元で見た後だと、これっぽっちかって思うけどぉ…あれがずーっと現れ続けるんじゃ、やっぱり放っておけないわよねぇ」

「わたくし達も既に向かっていますわ。現地集合と致しますわよ」

「えぇ。でも、その前に…二人共、先に行ってて!」

 

 神次元の空の一角。そこに開いた次元の門から流れ込む負常モンスターを見やりながら、セイツは進路変更。その目的を知っているプルルートはこくりと頷いて見送り、離れたセイツはある場所へと直行。

 迎撃が必須という中で、セイツが単身離れて向かう先。そこにいるのは…信次元から訪れた、今もそこに留まる第二期パーティー組の面々達。

 

「皆、大丈夫!?ここには何か異変はない!?」

「嫁候補の姉、即ち嫁候補のセイツが来たーっ!」

「はは…まあ、見ての通り問題はないよ。まだあれも、こっちには来ていない…来るとしても、もう暫くはかかりそうだからね」

 

 普段とまるで変わらない快活さでREDが声を上げ、それに肩を竦めながら第二期パーティー組のファルコムが冷静に返答。何もない事が分かったセイツは、安心した後退避するよう伝えるが…その言葉に対し、第二期パーティー組の面々はいいやと首を横に振る。

 

「心配してくれて、ありがとうございます。でも、ボク達は…大丈夫です」

「信次元からの通信で聞いたわ。あれの影響で、次元同士の状態もおかしくなっているんでしょう?なら、離れる訳にはいかないわ。私達が離れる事で、更に状態が悪くなるかもしれないし…途中で役目を投げ出すのも、性に合わないもの」

 

 答えた5pb.やケイブは勿論、他の二人も浮かべる表情は同じ。決着の時まで、自分達もまた引き受けた役目を貫くという意思の籠った瞳で見返し…その瞳は、その思いは、セイツを…女神を納得させるのに、十分な程の強さを持っていた。

 

「…分かったわ。貴女達が、人の…イリゼ達の仲間としての意思を貫くなら、わたしも女神の…レジストハートの信念を貫くわ」

 

 そんな彼女達へと深く頷き、セイツは身を翻す。今より安全な場所に退避させる事よりも、彼女達の意思を尊重する事を選び…その上で、決める。彼女達がここに留まる事を選ぶなら、自分は負常モンスターを一体でも多く撃破し、それによって彼女達を守るまでだと。勿論、彼女達が十分な実力を有している事は知っているが…だとしても守るのが、意思を貫く支えとなるのが女神なのだからと、心の中で思いを燃やし……セイツもまた、負常モンスターの迎撃へと向かっていった。

 

 

 

 

 次元によって、門の開いた位置、雪崩れ込む負常モンスターの流れは違う。複数の女神や国家の存在する次元では、そちらに負常モンスターが引き寄せられていたが、ならばそれのない次元ではどうなるか。…答えは、単純だ。

 

「あれって、一人当たりどれ位倒せばいいのかな…」

「多分それを考えるだけで気が滅入りそうだから、ブロッコリーは考えないにゅー」

 

 崩壊した次元。その一角で巨大なシェアクリスタルを背にし、少しずつ迫る負常モンスターを遠くに視認しながら、鉄拳が呟く。ブロッコリーが、覇気のない声でそれに答える。

 

「ふっ、私が薙ぎ払ってやろう、全てを。……と、最初は言うつもりだったのだが…」

「うん、幾ら何でも一人じゃ無理だよね。けどこれは、わたし達全員でも流石に厳しいかなぁ…」

「でも、要はネプテューヌさん達が決着を付けるまで耐え知ればいいんだよね?だったらまだ、希望は……」

「希望はまだある。うん、わたしもそう思うよ。だから……」

 

 参ったなぁ、マーベラスAQLが苦笑いし、それに同意の表情を浮かべつつも第一期パーティー組のファルコムとサイバーコネクトツーが得物を構える。MAGES.も展開している魔法陣を広げ、全員が迫り来る負常モンスターの大群を迎え討つ意思を確たるものとしたその時……空から声と一発の砲弾が飛来した。

 

黄金の第三勢力(ゴールドサァド)withマジェコンヌ…参上ッ!」

 

 大群の先頭を吹き飛ばす爆炎をバックにするように、着地したのは黄金の第三勢力(ゴールドサァド)の一員であるビーシャ。現れたのは一体誰かが一発で分かる声が、周囲に響き…続いて高連射の弾丸と魔弾が追撃をかける。

 

「あ……え、えっと…黄金の第三勢力(ゴールドサァド)ブラック、ケーシャ…参上…?」

「うん、別に真似しなくてもいいと思うわよ?後、ゴールドとブラックでややこしいしね」

 

 射撃は二丁のサブマシンガンを用いるケーシャのもの。着地の直後、釈然としない表情で彼女も名乗りを上げ…それに肩を竦めながらシーシャが突っ込む。

 勿論、現れたのはその三人だけではない。魔力弾の射手…それに剣を携えたもう一人も、第一期パーティー組の前に立つ。

 

「先制攻撃には成功、と言ったところだが…本当にただ、一部を削っただけでしかないな。全く勢いが衰えていないとは…」

「興味ないね。どうせ、やる事は変わらないんだ」

 

 マジェコンヌとエスーシャ、二人は静かな声音で会話を交わし…五人もまた、負常モンスターを迎え討つ広がり構える。

 例外なく実力者と言えども、彼女達はあくまで人間。一部と言えど、負常モンスターを凌ぎ切るのがどれだけ難しいのかは誰しも分かっており…されど臆さないのは、何とかなると自信を持って思えているのは…仲間を、女神達を信頼しているからに他ならない。

 

 

 

 

 二つの次元同様に、信次元にもシェアクリスタルとパーティーメンバーが配置された地点がある。その場所の担当となった面々もまた、女神達を信じてその場に留まり…そしてそこに、ウィード、くろめ、人間であるネプテューヌ…状況が状況故にイリゼ達を見送った三人も、そのままでは危険だと移動していた。

 

「世界の命運を賭けた戦い…もうそうとしか、言いようがないわね…」

「ノワール様、ユニ様…皆さん……」

 

 別次元の住人たるニトロプラスやゴッドイーターをしても圧巻としか言いようのない、負常モンスターの猛威。それはシェアエナジーを感覚で理解する女神でなくてもはっきり分かる程、どれだけシェアの力が絶大なのかを感じさせるものであり…その光景を見上げ、くろめが呟く。

 

「…すまない…こうなったのも全部、オレが……」

「だからくろめ、もういい…って事はないが、そう何度も言うなって。…気持ちはちゃんと、伝わってるからさ」

「そうだよくろめ。…今は、信じよ?皆を、皆の思いを」

 

 暴走を続け、モンスターのなり損ない…生命ですらない負のシェアエナジーの塊を吐き出し続ける城を目の当たりにした事で、否が応でも自分の罪を感じさせられる。そしてそれ故の言葉にウィードと人のネプテューヌが返し、二人の言にミリオンアーサーも続いた。

 

「彼女達は勝つさ。何せ、わたしが見込んだ女神達なのだからな!」

「わたしが見込んだって…まあ、でも……そうね、勝つわよ。だって…皆は、皆なんだから」

「ですです!ねぷねぷ達は、ねぷねぷ達ですからっ!」

 

 ともすれば無根拠の様な、少なくとも胸を張る程ではない理由で自信満々そうにするミリオンアーサー。やはりと言うべきか、それにアイエフは怪訝な顔をし…だが、それからアイエフは笑みを浮かべる。彼女に続いて、確信があるとばかりにコンパも両手の拳を握る。

 説得力のある理由ではない。赤の他人が聞けば、説明になってないと思うような、二人の言葉。しかし二人は、ここにいる誰よりもイリゼ達と長く接している。共に旅をし、戦い、女神達の様々な姿を見てきた友だからこそ…理由なく信じられる、そんな繋がりが二人にはあった。

 そしてそれは、二人だけではない。程度や経緯は違えど、皆女神達を信じられる、そう思える心があり…くろめもまた、空を、戦場を見続ける。既に自分には、どうする事も出来ない。自分が招いた事ながら、ただ見ている事しか出来ない。ならば、それが何にもならないとしても、目を逸らす事は…背ける事だけはするものかと、良くも悪くも強いその責任感を胸に抱いて。

 

 

 

 

 負のシェアの城の力によって…暴走を続ける負のシェアエナジーによって開いた次元の門は、二つの次元へ、信次元と共に災禍の舞台となったそれぞれの次元にも、負常モンスターを雪崩れ込ませる。誰かの意思ではなく、明確な意図のあるものではなく…狂気が伝播するように、周囲の環境を侵食し広がる沼の如く、具現化した負の感情を広げていく。無数の次元が存在する中で、さしずめやり場のない思いを手当たり次第にぶつけているような負のシェアの暴走が、その二つの次元へとむかったのは、二つの次元と信次元とが深い繋がりを持った為なのだろう。

 しかし、開いた門は二つではない。開いた門の数は、十を超え……そして、信次元と繋がりを持つ次元も、その二つだけではない。数奇な巡り会いにより、信次元と繋がりを持った次元は他にもあり…たとえ次元そのものの繋がりはなくとも、そこに生きる人、そこを守る女神によって紡がれた、思いの繋がりは幾つも存在する。

──故に、引き寄せられたのだろう。故に、繋がったのだろろう。拡大する負の感情が、際限なく全てを飲み込む為に。或いは……沈み続ける負の感情が、それぞれに違う色を持つ光に手を伸ばすかのように。

 

 

 

 

 空に開いた道の穴。そこから現れる、正体不明の存在。しかしその大群が、対話など通用しない…人々の生活にとって脅威となり得る存在だと判明した時点で、各国での迎撃が始まった。

 

「よし、着いた。皆、相手は完全に未知の存在。出来る限り慎重に……」

「あはっ!見て見て狙い放題だよ!雑に打っても全弾当たりそうだなんてどうしようっ!?」

 

 プラネテューヌ特命隊。選抜された志願者達で構成されるその組織も迎撃の一翼を担う事となり、特命隊の内一つ、第五班も担当地域に到着した。

 真っ先に車両から降りた青年は周囲に目を走らせ、冷静に判断を…していたのだが、そんな事はどうでも良いとばかりに一人の少女が突出。真っ先に大群へと突っ込んでいき、手にしたショットガンから拡散する弾丸を叩き込む。

 

「や、やっぱりこうなった…こっちでサポートする、二人は予定通りに!」

「はいはーい、任せて〜」

 

 がくりと肩を落としながらも、突出する少女を追って黒髪の少年が声を上げる。普段は手数に長ける反面攻撃の深さにやや難のある彼だが、耐久能力が極めて低い大群にはむしろ相性がよく、手にした二振りのダガーで流れるように撃破していく。

 二人が前衛を務める中、最後に降りたもう一人の少女は相手の規模を確認すると、大量の爆弾を設置開始。当然その間彼女は無防備となってしまうが、二人の迎撃を突破し突っ込んできた存在…負常モンスターを青年が盾で受け止める。

 

「…なんだ?盾にぶつかっただけで潰れて……じゃ、ない…?……ッ!皆、注意してくれ!早くはないがこの敵、物体を通過してくる…!」

「通過?でも触れられる前に倒しちゃえば……」

「確かに、問題はない…なッ!」

 

 防ぎ、捌き、また防ぐという動作を繰り返す中、青年が気付いた一つの特性。しかしそもそも防御などしていない二人にはあまり関係なく、彼も確かにそうだなと思った後、盾に仕込まれたパイルバンカーを用いて通過しつつあった負常モンスターに風穴を開ける。

 班としての経験が為す連携によって、大群を押し留めていく三人。しかし相手の物量は凄まじく、段々と三人は押され始めてしまう。…だが、そこに上がるのは一つの声。

 

「よっし、出来た!皆、程良く引き付けたら退避して〜。もう点火はしてあるからさ」

『えぇ!?』

「うん、任せてっ!」

 

 言うが早いかもう一人の少女はナイフに持ち替え、近付く負常モンスターを斬り裂きながら後退。男二人が既にカウントダウン開始済みである事に仰天する中、ショットガンを扱う少女は軽快な足取りで敵を引き寄せ、仰天していた二人も意識を切り替え、大量の爆弾を背にするように動いていく。

 そして、設置した少女の合図で三人は跳躍。負常モンスターの大群は爆弾の山へ突っ込む形となり…次の瞬間、巨大な爆発が負常モンスターを悉く飲み込む。

 

「よし、これで…って……」

「…そう簡単には、終わらないみたいだ」

 

 一気に減った、負常モンスターの物量。しかし穴からは次々と後続が現れ…少年も青年も、四人全員がこの戦いの果てしなさを理解する。

 そんな中、別の場所で上がったのは一条の火柱。遠く離れた場所からでも見えるそれは……ひょっとすると、大剣と炎、それに折れる事のない心を武器にする、とある青年の一撃かもしれない。

 

 

 

 

 神次元。名称こそ信次元が深い繋がりを持った二つの次元の一つと同一ながら、細部が異なるその次元。そこにも次元の門と、多数の負常モンスターが現れ…そのさまを、女神と女性が眺めていた。

 

「何がどうしてこうなったのか分からないけど…また厄介な事になった……」

 

 濃い黄色の髪を持つ女神は、見える光景に額を押さえる。よく言えば女神の在り方に囚われていない、悪く言えばやや擦れている彼女はこれから起きる事、広がる厄介事を頭に思い浮かべる事で肩も落とし…そこへ、隣の女性が声を掛ける。

 

「どうなさいますか?気乗りしないという事なら、わたしだけで……」

「そうは言ってないでしょう?厄介な事っていうのは、大概放置するともっと厄介になるものだし……」

 

 黒い髪をした長身の女性が気を使うようにして尋ねると、女神はその申し出を否定。現実的な理由を女性へと答え…それから口にはしないものの、女神は心の中で続ける。自分が尊敬する女神達なら、厄介だろうと見て見ぬ振りはしない。それが全て正しいとは思わないが……それを見てきた自分が、真っ向から泥を塗るような事はしたくないんだ、と。

 そんな女神の思いを知ってか知らずか…いや、恐らく察した上で、ならばと女性は頷く。頷き、一歩前へ。

 

「では、行きましょう。先輩達も、来るとは思いますが…まずはわたしが、援護します」

 

 シンプルながらも頼もしい、従者の一言。それに女神は頷きを返し…女神化。女神の姿となり、飛び上がる。

 従者もまた、地を蹴る。自身の技能の一つ、風遁を用いて加速し、飛行する女神に素早く追従。

 

「…ふふっ」

「…なんです?」

「いや…やっぱりちょっと、素直じゃないなぁ…って」

「…うっさい」

 

 生活圏へ進む負常モンスターの対応に向かう中、小さく笑みを浮かべた女性。何だと聞けば、女性は笑みを深め…女神は拗ねたような顔をしつつ、加速。置いてかれては不味い、と少し慌てて女性も追って加速をかける。

 開いた次元の門の先は、見えない。しかし女神の直感なのか、戦いの場へ近付く中…女神は無意識に、「相変わらず厄介な事をしてくれる…」と思っていた。そして、厄介と思いつつもそこに嫌悪の感情はなく…浮かんでいるのはむしろ、温かみのある呆れの感情なのであった。

 

 

 

 

 ある次元では女神が、ある次元ではその仲間や有志が戦う。それぞれの意思で、守りたいという思いで以って。

 しかし本来国と人を守る、国防を担うのは何か。勿論その中核は、守護者でもある女神である。されど組織として、義務として、生業として国の為に戦うのは…軍人に、他ならない。

 

「長距離砲及びミサイルによる第一次攻撃により、アンノウンの約40%が消滅!但し依然勢いは衰えず、後続も多数確認されています!」

 

 スピーカーから聞こえる、前線司令部からの報告。戦力の40%…それを緊急展開した第一次攻撃のみで撃破出来たと捉えると中々に幸先が良いが、一部の者は続く言葉に顔を顰める。

 今ここで、ブリザード中隊を率いる彼もその一人。40%もの戦力を失いながらも勢いが衰えず、散開もせず侵攻を続けるアンノウンに対し、深い困惑を抱いていた。

 

(まともな指揮官であれば、その時点でもう突撃の続行などしない。まともな指揮のない烏合の集や、本能で動く獣ならば、蜘蛛の子を散らすようにして逃げていくに決まってる。……ならば、なんだ。そのどちらでもない敵は…何者だ…?)

 

 アームズ・シェル…有人人型兵器のパイロットであり、近衛隊長でもある彼が気にするのは、敵の正体。何者、と表現はしたが、偵察機からの映像を見る限り相手は知性ある生命には見えず、それが彼の困惑を加速させる。相手を理解出来ない、理解が及ばないという事は即ち、何をしてくるか、どう対処するべきかも不明瞭だという事で……この先に待っているのは絶望だけ。そんな可能性すら、あり得てしまう。

 だが、だからと言って及び腰になっていられる余裕はない。ましてや隊長がそんな姿をすれば、部下の士気が下がるのは明白であり…思考を一度脇に置いて、彼は部隊へ指示を飛ばす。

 

「相手の性質がまだ分からない今、不用意な接近は厳禁だ!陣形を崩さず、弾幕の形成を優先しろ!」

『了解!』

 

 コックピットからの指示に続き、加速をかける彼の機体。外界を認識するカメラか、それを映し出すモニターが壊れたのかと思う程の物量を前に彼は一切恐れる事なく、右腕部に備えた新型ライフルをフルオートで発砲。放たれた高速徹甲弾が瞬く間にアンノウンを蹴散らし、配下の機体もそれぞれの武装で迎撃開始。個としても強力なエースである彼だが、今は組織的に、部隊全体で一つの動きが出来るようにする事を優先し、次々撃ちながら指揮を続ける。その上でライフルと頭部のガトリングポットを同時使用し、弾幕を抜けかけた相手を悉く弾丸で撃ち抜いていく。

 

(まあ何にせよ、これが国を…ブラン様が守りたいものを侵す存在である事には違いない。なら、なんであれ…倒すまでだ…!)

 

 ローラーとスラスターの併用で雪を巻き上げ壁を作り、その裏から彼は更に射撃。

 まるで正体の掴めない敵だが…自分が、敬愛する女神の盾に、矛になる存在である事は変わりようのない事実。であれば、いつものように戦うだけだと彼はプロフェッショナルの表情を浮かべ……幻日の名を持つ巨大な鉄騎は、雪原を駆ける。

 

 

 

 

 幾つもの次元で、戦いが広がる。不思議な出会い、数奇な運命によって生まれた繋がりを辿るようにして現れた負常モンスターを、それぞれの次元に住まう者が守る為の戦いを行う。

 そしてここでも、負常モンスターと女神が戦う。女神同士が複数度の繋がりを持ち、次元同士も一度接続した、この次元でも。

 

「もー!こういう果てしない無双系はゲームだけで十分なんだけどー!?」

「いやそんな事言った…って…!」

 

 機銃が如く矢継ぎ早に放たれる氷の礫。それを放つのは、互いにそっくりな…更にホワイトシスターともそっくりな容姿を持った、二人の女神。氷の礫に加え、二人の片割れ…覇気のある妹の女神は手にした大剣でばっさばっさと比較的大きい負常モンスターも斬り払い、言葉だけはやや控えめな姉の女神も、仕込み刀で妹をフォローしつつ容赦無く相手を斬り刻む。

 

「それにこれ、どうもわたし達に群がってきてない?確かに無視されて突破されるよりは、ここを守るのに都合が良いけど、もッ!」

「群がってきてるね…相手もシェアの力が元になってるみたいだし、だから引き寄せられてるの…か、もッ!」

 

 大剣と仕込み刀、二振りの刃で超大型の表面を斬り裂き、そこへ同時に魔力の光芒を撃ち込む事で沈める二人。やはりというべきか、その連携には一切の無駄がなく、女神故の戦闘能力もあって瞬く間に大量の負常モンスターが消えていく…が、相手の物量はそれ以上。今はまだ良くても、いつまでこのペースでいけるかは分からない…言葉にせずとも、お互い状況をそういうものだと認識していた。

 

「でも確かに、こうも休みなくこられたら、大技で反撃…っていう事が出来ない…!」

「でしょ?こんなのが、いきなり大量に現れるなんて……!」

「──だから、ワタシ思うの。さっきシェアって言ったけど、どちらかと言えばネガティブエネルギーだし、だったら同じ力の方がより一点に集め易いんじゃないかしら、って」

 

 迎撃を続ける中で、不意に姉が口にした提案。それを聞いた瞬間、妹はぴくりと肩を震わせ…しかし振り向かず、姉と背中合わせになったまま、言葉を返す。

 

「…で、集めてる間にわたしが力を溜めて、一切合切纏めてどーんって訳?」

「そういう事。こういう時は、思い切りが肝心……」

「却下よ却下。そんな事する位なら、むしろわたしが……」

「はーい、自己犠牲は美しいですが、どうか止めて下さいねー。まだまだ別次元から現れている以上、お二人にダウンされてしまっては非常に困りますので〜。…それに、準備も整いましたから、ね?」

 

 ぴしゃりと姉の提案を跳ね除けた妹は、そんな事をする位なら…と言いかけるも、そこでテレパシーの様に聞こえてきた声が、二人のやり取りに割って入る。

 そして次の瞬間、二人の持つ魔導書を介して送られてきたのは、絶大な力。強く、それ故に扱いも難しいその力を感じた姉は、「ふふ、言ってみただけなのだわ」とくすくす冗談めかして肩を竦めると…雰囲気が、元に戻る。

 

「これだけの力があれば…よし。今度はわたしが突っ込むから、援護お願いッ!」

「えっ?あ、ちょっ…もう!だったらわたしの魔法、預けるからね…ッ!」

 

 理由はどうあれ妹をあまり良くない気分にさせてしまった。だからお詫びに、という事なのか突進する姉。しかし自分が突っ込むつもりだった妹はむしろ、出鼻を挫かれる形となり…もう、と言いつつ支援の魔法を、幾つもの力を姉に注いで援護に回る。回りながらも、余力で周囲に爆裂を起こす。

 本来この次元ではネガティブエネルギーと呼ばれるものを、一度シェアと呼んだのは何故か。その理由は定かではないが…何となく、直感のどこかで…次元の門越しに繋がる、向こうの次元の事を、そこにいる女神の事を、同じ女神として微かにでも感じていたからかもしれない。

 

 

 

 

 繋がったのは、同じゲイムギョウ界ばかりではない。次元、と呼ばれる世界のみではない。繋がりの糸は、一度結び付いた糸は、どんなに遠く離れていようと途切れてしまう事などなく……だからこそそこにも、その『世界』にも、負常モンスターは現れた。

 

『BoostBoostBoostBoost──!』

「これでッ!」

「せぇいッ!」

 

 倍加し増大していく力を収束させ、砲撃として放つ少年。紅の鎧を身に纏い、龍の翼を有する彼の砲撃によって負常モンスターは薙ぎ払われ、逃れた個体も続く女性の斬撃と、シェアで形作られた複数の剣の飛来が駄目押しとばかりに潰していく。

 

「っと、助かったぜ姉ちゃん!」

「ふふ、もっと感謝してくれていいのよ?…と、冗談を言いたいところだけど……」

 

 広範囲を一掃した二人だったが、その奥から、空に開いた次元の門から、後続が次々と押し寄せる。力を込めた一撃を放っても、簡単に目の前が元通りになってしまうような物量を前にすれば、誰しも意気揚々となどしていられず…しかしその程度で心が折れる程二人は、この姉弟は弱くない。

 顔を見合わせ頷き合うと、二人は左右に展開。弟は肉弾戦で片っ端から吹き飛ばし、姉は…大太刀を持つ女神は流れるような連撃で以って捌いていく。

 

「わたしが引き付けるわ!フォローお願い!」

「応よッ!」

 

 負常モンスターの性質に気付いていた姉が引き付け、弟が倍加させた力で側面から再び薙ぎ払う。大局的に見れば辛い迎撃、しかし局地的に見れば圧倒的な返り討ちを二人は繰り広げ…二人が更にギアを上げようとしたその時、不意に空間の一部が裂けた。

 次元の門とは違う、文字通り引き裂かれたような、まともな存在なら本能的に近付くのを躊躇うような、空間の異変。驚いて二人がそちらを見やる中、裂けた向こう側から現れたのは、一見小さな…しかしその実、非常識にも程がある力を有する龍神。今は少女の姿を取っているその龍神は、二人を…特に姉の方をじーっと見た後、言う。

 

「……?……あ、しまった間違えた。これは違う作品だった」

『へ?』

「気にしないで、こっちの話。じゃ」

 

 ぽかんとする二人を他所に、龍神は再び裂け目の中へ。そしてにゅっと出てきた両手が、裂け目の端と端を掴み、ぐっとくっ付けて閉じるという訳の分からない形で空間を戻し…何事もなかったかのように、元の空間だけが残る。

 

「…な、何だったんだ今のは…?え、人…ってか、龍違い…?いやでも、あの力は間違いなく……」

「そこは詮索しない方が良い事よ。今の状況的にも、ね…ッ!」

 

 当然状況が飲み込めない弟だったが、姉の言葉で我に返り、迎撃を再開。姉も内心で唖然としつつも、今は目の前の敵を…と飛び続ける。

 あの次元の門の先にあるのは何なのか。それは姉弟どちらにも、全く分からない事だったが…そこから感じる力に対し、ある守護女神と同じ姿を持つ姉は無意識に思いを馳せるのだった。

 

 

 

 

 そもそも次元も、世界も、概念的なもの。大きさ、位置、他の次元や世界との距離…全てが定義など出来る訳のない、理解の外にある概念。

 故に、それ等について表す場合は、全てが便宜的な表現となる。理解の出来る範囲で言い換えた形となる。そしてその、便宜的な意味で「より遠い」世界でもまた、雪崩れ込む負常モンスターとの攻防が繰り広げられる。

 

「全く、次から次へと現れる…」

「大分掴めてきた。これも一つの混沌だな。ある意味で深く、ある意味で雑多な…そんな存在だ」

 

 引っ切り無しに迫る負常モンスターを、幾つもの影の様な何かと、何体もの獣の様な何かが切り裂き、引き裂き、打ち砕く。

 それを使役、或いは指揮するのは、二人の男性。片や優美さを感じさせる金髪の、片や無骨さを感じさせる灰髪の男性が…吸血鬼が、どちらも落ち着いた様子で始末していく。決して余裕という訳ではないが…感情を昂ぶらせたところでこの戦闘には、この異常事態にはどうにもならないと理解しての冷静さだった。

 

(あの門諸共一掃…出来るのか?下手に自分の常識だけで判断すれば、何が起こるか……)

 

 世界を、概念を覆すような力ではなく、現実的な戦闘で対処しているのも、思慮の上での事。金髪の男性は、対処しつつ分析を進めようとし……た次の瞬間、空間の一部が裂ける。裂け、少女が…否、龍神が現れる。

 どこかの世界でやったように、龍神は二人をちらり。しかし今度は引っ込む事なく、彼等の側へ。

 

「姿が見えなかったが、どこに行っていたんだい?」

「勢い余って、作品の壁を超えてきた。作者も原作も同じだと、我的にはややこしくて敵わない」

「……こいつは何を言っているんだ?」

「…さぁ……」

 

 奇っ怪な回答をする龍神を、灰髪の吸血鬼が変なものでも食べたのかとばかりの目で見やる。一方金髪の吸血鬼は一見曖昧な笑みを浮かべるだけで回答を飲み込み…しかし内心で「本当に何を言ってるんだ…?」と思い切り困惑をし、しかし追求はしなかった。したところで、まともな回答は得られないと分かっている為に。

 そんな龍神へと迫る負常モンスターの一団。龍神は鬱陶しそうに腕を振り……たったそれだけの動きで生まれた強烈な突風が、一団を纏めて吹き飛ばす。

 強力な援軍を得た金髪の吸血鬼は、見上げる。次元の門を見つめ、何かを察したように笑みを浮かべ…そして、言った。

 

「また随分と、大きな演目が開かれているようだ。だが、何にせよ…無断で我が舞台に乗り込む厄介者には、ご退場頂こうか」

 

 

 

 

 異なる次元が無数に存在するならば、異なる世界が無数に存在するのも道理。ゲイムギョウ界とどこか似ている世界もあれば、まるで違う世界もあり…ゲイムギョウ界からすればゲームの様な世界もまた、存在する。

 

「うっわぁ、近付けば近付く程に大量だった事が分かってくる…。なぁ、これに対してはどう戦えば……」

 

 ポケットモンスター。ゲイムギョウ界とは違うモンスターが多数存在するその世界にも現れた負常モンスターに対し、人々の反応は様々だったが、中には危険な存在だと察知し、迎撃に向かう者もいた。今この時、飛行するポケモンの背に乗り接近した二人の少年もそうであり、黒髪の少年は旅の仲間である、もう一人の少年に声をかけた…その時だった。

 

「バンギラス、ポリゴンZ、コロトック、ケッキング、オクタン…そしてカイリュー、破壊光線」

「えっ…えぇぇぇぇええええッ!?」

 

 着地と同時に、連れてきたポケモン全てを呼び出したベージュ髪の少年。彼が指示を出すと、六匹全てが力を集中させ……絶大な威力を誇る光芒が、その名の通り破壊の光が六条纏めて放たれる。放たれた六条の光は地を、空をそれぞれに薙ぎ払い、一方的な蹂躙を見せる。

 

「いや、ちょっ、いや…何やってんの!?何をやってんの!?」

「え?破壊光線」

「そんなの見れば分かるよ!なんで六匹一斉に出して、同時攻撃とかしてる訳!?」

 

 真顔で答えるベージュ髪の少年に対し、黒髪の少年は愕然とした顔で思い切り突っ込む。彼の常識外にも程がある、普通はやらないどころか思い付かないような芸当に対し、彼の影響で偶に過激な行動をするようになりつつも、基本は至って良識的な彼は突っ込まざるを得なく…しかしそんな突っ込みを受けても、ベージュ髪の少年はけろっとした顔で返答した。

 

「なんでも何も、相手はポケモンじゃないんだぞ?シングルダブル、トリプルローテにマルチと色々ルールはあるが…ポケモンじゃない相手にポケモンバトルのルールを適用する必要なんてあるか?」

「…うっ…そ、それはそうだけど…そうだけども!あー、もう…これだからチャンプはさぁ…!」

 

 ただの無茶苦茶かと思いきや、意外とまともな理由が返ってきた事で、黒髪の少年は言葉に詰まる。しかしやっぱり無茶苦茶な気がした彼は、頭を乱暴に掻き……その後、自身も六匹全員を展開。無茶苦茶とは思いつつも、多過ぎる相手には間違っちゃいない判断だと思ったからであり…隣の少年は、そんな彼に対してにやりと笑う。

 慎重堅実派な黒髪の少年は全体での連携を前提とした配置を作り、大胆ながらも状況の把握と観察は欠かさないベージュ髪の少年は個々が持ち味を活かす事で、結果的に仲間をフォロー出来る陣形を構築。それぞれトレーナーとして指示を飛ばし……どちらも時折笑みを浮かべる。

 勿論、遊びではない。楽な戦いでもない。それでも笑みが浮かぶのは…日々愛情を持って育てているポケモン達が、その力を遺憾無く発揮してくれているからだろう。

 

 

 

 

 同じ名を持つ次元は、複数存在する。別段おかしな事ではない。別次元なら、名前も違う筈…という考え自体勝手な想像に過ぎないのであり、そもそも信次元にしろ、神次元にしろ、「ゲイムギョウ界」という名前の部分は同じなのだから。

 つまり、ここに存在する神次元もまた、違う一つの神次元。同じものがあれば、違うものもあり…同じ国があれば、違う人や女神もいる。

 

「ちッ…倒しても倒してもうじゃうじゃと…ッ!」

 

 空を駆けるのは、深紅の髪をなびかせる女神。彼女は負常モンスターの大群を引き付けた上で反転し、真正面から蹴り付ける事で…飛来する質量弾が如く突っ込む事で、負常モンスターを吹き飛ばしていく。

 元々女神化すると言動が荒くなる彼女だが、倒しても倒してもキリがない敵に対し、今は更に不愉快な様子。そんな彼女の背後にも、別の負常モンスターの集団が迫るが…地上から放たれた一本の矢が、爆発する事によって彼女への突撃を全て阻む。

 

「同感だけど、少し落ち着こう。こんな言葉も通じない相手に怒っても仕方ないんだから」

「通じないから余計にイラッとするんだよ…なッ!」

 

 冷静な様子で次の矢を弓に番えるのは、半身が異形のものとなった青年。それは分かってる、という表情を見せつつも、女神は不満そうな顔で…次の瞬間、急降下。さっきのお礼だ、とばかりに青年の背中側にいた大型の負常モンスターを踏み潰し、それに青年は「ありがとう」と答える。

 

「やっぱり多過ぎて、僕一人だと飲み込まれかねない。だから……」

「はいはい。ま、ウチも安心して背中を預けられる相手がいなくなったら困るし、なッ!」

 

 変に説き伏せるよりも、普通に頼む方が聞いてくれる。家族として長年付き合っている彼はその女神の事をよく分かっており、実際にっと笑って了承を示した女神は彼の思った通りであり…その上で、思った。聡い彼女の事だから、自分の思惑も分かった上で、今の反応を返してくれたのかもしれない…と。

 

「ところで、あれ…向こうでも同じ事が起こってるって事かな」

「さぁ?それに関しても調べてもらってる最中だろ?…ま、何にせよ今は……」

「うん、何にせよ今は……」

『目の前の障害を取り除くッ!』

 

 矢と蹴り、遠近の連携で流れるように負常モンスターを撃破していった二人は視線を交わらせ、それだけで意思疎通を済ませ、右腕と右脚に力を溜める。軽快な動きで負常モンスターを躱しつつも引き寄せ、集め……次の瞬間、腕を、脚を、同時に振り抜く。

 緑の電撃と、紅の閃光。輝く二つの光が織り混ざるようにしながら無数の負常モンスターを貫いていき、僅かな間とはいえ二人の前方の空間が開く。

 

「このまま更に散らすぞッ!」

「勿論…!」

 

 間髪入れずに二人は突進。女神は派手に、激しく仕掛け、青年が多彩な矢を用いて的確に援護。嘗ては正道から外れていた二人は今、国を守る者として、守る為に力を尽くす。

 一気に上昇を掛ける中、女神の視界に映る次元の門。シェアを力とする女神だからこそ分かる何かを彼女は感じ…蹴りで以って、周囲の負常モンスターを薙ぎ払う。はっきり何かを思い浮かべた訳でもないのに、ふっと浮かんだ何かに対し、負けてられるかよ、という思いを胸に抱いて。

 

 

 

 

「……にしても、なんであいつはうちの所属なのに9000文字位前のところで戦ってるんだ?あれか?最終話で旅立った後、あっちの次元に辿り着いたって事か?」

「そういう事じゃないから。確かに名前も武器も同じだけど、ただの同姓同名か、あっても別次元の同一人物…って事だから。多分、そういう設定だから」

 

 

 

 

 幾つもの次元で、それぞれの戦いが繰り広げられている。人を守る為に、国や世界を守る為に、それぞれが自分に出来る形で奮闘している。

 しかし、それは繋がった全ての次元の、全ての存在がしている事か。…否、そんな事はない。敵であると、脅威であると認識すれば、戦いとなるが…そうでなければ、戦いにはならない。戦いという、形にならない。

 

「……あ」

 

 空に開いた次元の門から負常モンスターが次々と現れる中、その次元の一角で、一人の少女が歩いていた。少数ではあるが、少女の近辺にも負常モンスターは迫り…少女もまた、気付く。

 ただただ飛んでくる負常モンスターと、それをじっと見つめる少女。そして一番先頭の負常モンスターがすぐ側まで来た瞬間…少女は、掴む。

 

「…壊れた、消えた。…これは、シャボン玉?」

 

 小型だからか、鷲掴みにされただけで負常モンスターは消滅し、少女も何やら勘違い。しかしすぐにシャボン玉ではないと分かったようで、次の負常モンスターを再び見やり…また、掴む。今度は潰れぬよう、両手で慎重に。

 ゆっくりとだが形が変わり、抜け出しそうになる負常モンスター。それを見ていた少女だったが…次の瞬間、少女は負常モンスターを食べる。

 

「……?味がない…綿菓子よりも早く消えた…これは、モンスター…でもない…?」

 

 齧った時点でやはり負常モンスターは消え、食した結果は舌に触れたかどうか程度。だが好奇心と食欲が旺盛な少女…否、人の姿をしたモンスターは、今度こそ食べようと、味を知ろうと、負常モンスターの捕獲を続ける。

 掴み、齧り、消えてはまた掴む。椀子そばでも食べているのかとばかりに、次々と少女は口に運び…それでもやはり、味を確かめる事は出来ない。

 

「困った、これではいつまで経っても味が分からな……」

 

 思考をそのまま口にしていた少女だったが、ある時気付いた。近くに来ていた存在は全て、自分よりも小さかったが…遠くに見えるものの中には、もっと大きそうなものもいる事に。

 もっと大きい存在ならば、ちゃんと味わい飲み込む事も出来るのではないか。そう考えた少女はそちらに向かって歩き出す。そうまでして食べたいのか、確かめたいのかと言われれば…そうなのである。そうまでしてでも、少女は知りたいのである。

 

「あれの味、楽しみ…」

 

 そんな事を呟きながら、少女は真っ直ぐにそちらへと向かう。その後、彼女の家族が彼女を発見し、危ないから…と連れて行かれるのだが、当然そうなる事などこの時の少女はまだ知らない。

 

 

 

 

 希望に満ちた次元があれば、絶望に沈む次元もある。新たな脅威に見舞われる事もあれば、少しずつ力を取り戻し、未来へと歩み出す事もある。…当然だ。それが世の中というものなのだから。

 では、この次元はどちらか。希望か、絶望か。上がるのか、下がるのか。……答えはこうかもしれない。崩れそうな未来を、それでも繋ぎ止め、前に進もうとしている次元だ、と。

 

「久し振りの外が、これか…いや、こんな形であれ外に出られただけ、まだ良いのかもしれないな……」

 

 黒衣の装備を纏った青年が、空を飛ぶ。飛び、飛来する負常モンスターを手にした火器で撃ち落とす。

 その表情に、覇気はない。まだ疲労が溜まっている訳でもないのに、雰囲気は憔悴し切っており…されど、目付きは一部の隙もない程に鋭く、動きも機敏。的確な射撃を次々放ち、高効率での撃破を続ける。

 

「そんな事言わないの。こんな厄介事に対して歓迎するような事を言うのは、皮肉とかじゃなくてもうただの性格悪い発言だよ?」

「別に歓迎はしてないさ。ただ、こんな状況じゃこういう事の一つでも言いたくなる…」

 

 彼の援護をするように飛ぶのは、赤の装備を纏う女性。大剣を軽やかに振り、叩き潰すように大群を蹴散らす彼女の言葉に、青年は肩を竦め、更に撃つ。

 意味不明の事態ながら、対処必須である事は確実。彼は次元を守るべく戦い…しかしある時から、次第に攻め手が弱まっていく。

 

「…………」

 

 素早く動きながらも、段々と減っていく射撃。そして遂に攻撃は止まり…あろう事か、回避も止まる。途端に数体の負常モンスターが彼に激突し……その身を、その心を、侵食する。

 

「……ッ!?何やってるの!?」

「……っ…思った通り…こんなものを人間が大量に浴びれば、すぐに精神が駄目になるな…何せ既に枯れ果てた俺ですら喰らってくるんだから、まともな人間は……」

 

 反射的に彼を引っ張った女性が抱えたまま回避行動を取ると、彼は光のない目でそう答える。諦観の念に満ちた声を漏らす彼の心は、この状況ではなく、もっと前の出来事で既に磨耗し切っており…だがそんな彼にぶつけられたのは、一つの叱咤。

 

「何を、訳知り顔で言ってるのッ!…確かに、そうしたくなるだけの過去があるのは間違いないけど…ここまで来たのは、他でもない自分の意思でしょ!?自分で犠牲の山を築いてきたんでしょ!?…なのに、そんな事…今更心を投げ出そうとなんて、しちゃ駄目だよ……」

「……ごめん。今の俺は、どうかしてた。…そうだな、その通りだな…」

 

 彼女からの、想いの籠った彼女の言葉に自分の姿を、今の自分のあるべき形を思い出した彼は、謝罪に続いてもう大丈夫だと示し…再び自分の意思で飛ぶ。撃ち抜き、斬り裂き、引き付けた上で遠隔操作端末を展開し…道を切り開く。

 

「どんな形であれ、残ったものはある…それを守らなくちゃ、いよいよ俺は誰にも顔向け出来なくなるな…!」

「そうだよ、既に十分アウトなレベルだけど…それでも私は好きだからねっ!」

「うーん、フォローのようでフォローじゃない…」

 

 少しだけ表情に覇気が現れた彼と、その彼に笑い掛け、完璧な見切りで大剣の乱舞を見せる女性。抜群の連携と対多数戦戦術を見せながら、二人は敵を撃滅していく。自らが重ねた罪…それを十字架として、背負い続けながら。

 

 

 

 

 次元毎に、時代も違う。別次元なのだから、時間の同期などしていない方が当然で、時間の流れも次元によって恐らくまちまち。つまり何度も危機を乗り越えた次元もあれば、その半分もまだ越えていないような次元もあり…しかしどの次元においても、異様な程脆く、大半は突っ込む以外の行動を持たない負常モンスターは、個々で言えばまるで脅威ではないだろう。されど、負常モンスターはその無限にも等しい物量こそが脅威であり、一部であろうとその数は絶大で…故に時代など関係なく、全ての次元において、負常モンスターは厄介な存在となっていた。

 

「ふー…はぁああぁぁッ!」

 

 両手に持った剣を構え、ゆっくりと息を吐く少女。金と白の中間…所謂プラチナブロンドの髪を持つ少女は、迫り来る負常モンスターに向けて突進し、横に一閃。その瞬間刃から魔法の斬撃が飛び、迫る負常モンスターを斬り裂いていく。

 

「次は、これでッ!」

 

 左右から襲ってきた負常モンスターに対しては、魔力の障壁を展開し防御。当たっただけで何割かは消滅し、他の個体も堰き止められ…そこから少女が障壁を地面側へ倒した事で、残りも全て潰される。

 

『まだまだ来ますよ、マスター。大体前方の全てから、とにかく凄まじい数が』

「凄くざっくりとした情報だね!?まあ、そう言うしかない状況なのは分かるけどさ!」

 

 具体的にどの位と言われても、多過ぎて細かい対処なんて思い付かない。というか、具体的な数字を言われたら、果てしな過ぎて心が折れるかもしれないから、雑な情報の方が良いかもしれない。そんな事を考えながら、少女は斬撃と魔法を用いて負常モンスターを迎撃し…同時に少しずつ力を溜める。普通に戦うだけではどうにもならないも分かっている為に、広範囲攻撃の為の準備を進める。

 そうしてここだと思った瞬間、少女は一度バックステップをし、そこから大きく跳躍。溜めていた魔力を電撃に変え、それを刀身から放電する事によって周囲の相手を焼きつつ、大きな一団の中央辺りまで跳んだところで急降下。剣を逆に持ち替えながら落下し、着地と共に剣を地面へと突き立て…電撃の全てを解放。全方位へと電撃が走り、一気に大量の負常モンスターを消し飛ばしていく。

 

「よーし、これなら…って、まだまだ多いんだもんなぁぁ……っ!」

 

 数え切れない程の相手を、今の一撃で撃破した少女。だが、次々新手が現れる負常モンスターの大群からすれば、その一端を片付けたに過ぎず…めげそうになる心を自分自身で鼓舞しながら、少女は戦いを続ける。

 少女は決して、強靭な心や絶大な力を持つ訳ではない。強くはあるが、今彼女が知る女神達程ではない。それでも挫ける事なく戦えるのは、彼女には友達が、仲間がいるからであり…その友達の為に、友達との日々の為に、迷う事なく少女は戦う。自らを支え、助けてくれる相棒と共に。

 

 

 

 

「……ところでさ、そもそも戦ってないところを除いたら、一人だけで戦ってるのって私だけじゃない…?え、なんで…?なんで私だけ……?」

『あぁ、それでしたら恐らく、私が頭数に換算されているのかと。一応、キャラクターという枠にはなるでしょうし」

「あ、あー…。……あ、だ、大丈夫!君がいてくれて、凄く心強いから!君だけじゃ心細くて言った、とかじゃないからね!?」

 

 しまった、相棒に余計な事を言ってしまった!…と、そもそも内容からして変な事を言っていた少女の下へ、友達でもある女神達が援軍としてやってくるのは、それから数十秒後の事である。

 

 

 

 

 幾つもの次元で、幾つもの世界で、戦いが続く。脅威を退け、それぞれが守りたいもの、守るべきものを守る為に、多くの者が戦いを続ける。

 直接の繋がりを得た次元も、人や女神を介して繋がった次元も、その全てでそれぞれの戦いがある。そして、彼女の存在が生み出した繋がりもまた…その一つ。

 

「うん、うん、そういう訳でもう見えてるかもしれないけど、次々出てきてるのがその負常モンスターってやつなの。放っておくと大変な事になるから、そっちの事はお願いね。…いや、だってこれはわたしだって想定外だし、そもそもわたしがここに来るって決めたのも、皆で話し合った上ででしょ?大元はきっと…ううん、絶対こっちの皆が何とかしてくれるから、それまで頑張って。……え、わたし?わたしは…ごめんね。もう少しだけ…こっちで、やりたい事があるの」

 

 女神達に、戦う者全てに声を届けたミラテューヌはその後、イストワールに声をかけ、その後プラネタワー内の司令部を後にした。

 廊下を走りながら、彼女は連絡をしていたのは本来自分がいるべき場所。ミラテューヌには、そこにも負常モンスターが向かったと分かっており、そう思うだけの理由があり、家族や仲間に事情を説明。その上で自分にはまだやりたい事がある、と伝え、連絡を終える。そこからは加速し、そのままプラネタワーの外へと出る。

 

(こんな事になるなんて思わなかった。こんなにも違うだなんて、思いもしなかった。…でも、だからこそ見られたものがある。だからこそ…変わらないものもあるんだって、諦めなければ不可能なんてないって、この目でちゃーんと見る事が出来た)

 

 避難の指示により人々が逃げる街の中で、一人ミラテューヌは周りとは逆に、戦場の方角へと向かって走る。

 走りながら、思い返す。ここで見られた、感じられた、数多くの事を。それ等は何一つとして無駄なものではなく…だからこそ、ミラテューヌは言う。

 

「…信次元に来て、本当に良かった。だから……ここからは、このお礼をする番だよね…!」

 

 見えてくるのは、負常モンスターの集団。遂に艦隊の防衛線を突破する負常モンスターが現れ始め、その数は右肩上がりに増えていき、最終ラインへと近付いている。軍人達や有志が防御を固めており、今のところはまだ防げているが、これもいつまで持つかは分からない。そんな中へ、ミラテューヌは……いや、彼女は降り立つ。降り立ち、手にした大太刀で負常モンスターの一団を薙ぎ払う。

 その姿に、人々は息を飲んだ。目を見開き、心の中で多くの者が「何故?」と言った。当然だろう。彼女の存在を知らない人々からすれば、最前線にいる筈の女神が、何故か後ろから…という状況なのだから。

 そんな人々の前で、彼女はゆっくりと大太刀を振る。振り、構え直し……そして、空へとその声を響かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「────()()()プラネテューヌの守護女神、パープルハート…皆を、皆の信次元を…わたしも共に、守らせてもらうわッ!」




今回のパロディ解説

・「ふっ、私が薙ぎ払ってやろう、全てを〜〜」
機動戦士ガンダムSEED destinyの主人公の一人、シン・アスカの名台詞の一つパロディ。流石に負常モンスターの全てを薙ぎ払うのは無理ですね。無理中の無理です。

・「〜〜わたしの魔法、預けるからね…ッ!」
SCARLET NEXUSに登場するキャラの一人、ハナビ・イチジョウの代名詞的な台詞の一つのパロディ。でも今回の話に出てきた彼女は、炎より氷の方が得意でしょう。

「〜〜これだからチャンプはさぁ…!」
ガンダムビルドダイバーズシリーズに登場するキャラの一人、クジョウ・キョウヤに対するネットスラングの内の一つ。今回の話で言われた彼も、チャンプですからね。

・「…壊れた、消えた。…これは、シャボン玉?」
童謡、シャボン玉の中におけるフレーズのパロディ。パロディというか、この童謡の事ですね。勿論負常モンスターを掴んだ少女も、屋根ではありません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。