超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
四ヶ国の国防軍による、連合艦隊によって構築されて戦線は、迎撃…つまり、防御の為のもの。負のシェアの城から押し寄せる、負常モンスターの大津波から人と国を守る為に展開した防衛線。
だから、戦線は城の周辺にまでは広がっていない。迎撃の最前線と、城まではまだ距離があり、その間は全く迎撃を受けていない、100%の状態の大群を相手にしなければいけない。その中を、突破しなくてはいけない。個々はあり得ない程に弱く、何百万や何千万の単位でも容易に片付けられるような負常モンスターでも、天文学的数字の物量が一斉に迫り、その中を進まないといけないとなれば…その脅威は、強大且つ凶悪な敵と相対するのと変わらない。
だけど、私は一人じゃない。私達女神だけが、戦っているんじゃない。最前線の先でも尚…私達に力を貸してくれる人達が、ここにはいた。
「とーーりゃーーーーっ!」
「てぇぇぇぇい……っ!」
進路上の負常モンスターを例外なく飲み込みながら、真っ直ぐに進んでいく二つの大きな魔力球。暫く進んだところでそれ等は爆発し、広範囲に渡って負常モンスターを消し飛ばす。ロムちゃんとラムちゃん、二人が溜めて放った一撃は強力で…だけど、負常モンスターが消えた空間は、一瞬の内に埋められる。その後ろ、負のシェアの城側から押し寄せる負常モンスターの物量の前では、二人の強力な魔法でもすぐに埋め尽くされてしまう。
「次行くわよ、ネプギアッ!」
「うんッ!」
でもそれは、既に皆分かっている事。二人と入れ替わる形でネプギアとユニが前進し、照射ビームで薙ぎ払う。ネプギアとユニ、ロムちゃんとラムちゃんで交互に広範囲の攻撃を放ち、一瞬だけでも道を開く。一瞬を重ねていく事で、私達は進む。
勿論私やネプテューヌ達も、ただ眺めている訳じゃない。道を切り開く事は四人に任せ、上下左右から突っ込んでくる負常モンスターの全てを叩き潰す。
高度な技術なんていらない、とにかく攻撃をぶつけ続ければいいという状況は、楽?…まさか。むしろ、どんなに技術があっても大差ない状況だなんて、大変でしかない。
「ぬぉおおぉぉぉぉ!?」
「くぅッ…まだ、まだぁ……!」
そんな私達の後方を飛ぶのは、追随してくれる一部のパイロット。彼等の後詰めも受けながら私達は飛び、城への接近を続けている。
もう、後少しのところまで来ている。後少しで、近付く段階から、城内に突入する段階に入れる。…だけど、その後少しが遠い。女神候補生の四人が必死に道を開いてくれているけど…ここから先に進むには、負のシェアの城へと到達するには、もう出し惜しみなんてしていられないのかもしれない。そしてそうだとしたら、有効になるのは……私の力。
「…皆ッ!ここは、私が……」
無限にも迫る程の物量には、同じく無限…ではなくても、膨大なシェアエナジーを力として叩き付けられる私のリバースフォームが有効な筈。その思いで私が声を上げた、次の瞬間…その必要はないと言わんばかりに、インカム越しに声が響く。
「いいえ、女神様達はそのまま突き進んで下さい!さぁ、行くよあんた達!ここまで付いてきた力と心意気、敵と女神様に見せてやりなッ!」
覇気に満ちた声と共に、私達の前へ躍り出る一機のMG。二丁の機関砲と二門の頭部機銃で正面を開き、両腕部から別々に展開した高エネルギーシールドで側面からの攻撃をシャットアウトし、恐らく走攻守全てに全力を注いだ状態でそのMGは突撃を仕掛け…されどすぐに囲まれ、防御ごと押し潰すような勢いで負常モンスターに殺到され、姿が見えなくなる。闇色の球体に包まれてしまう。
でも、一瞬の沈黙の後、負常モンスターによって作られた球体は爆ぜる。内側から爆ぜ、その中から無数の弾丸と、飛翔するマイクロミサイルが大津波に一つの風穴を開ける。
そしてそこに飛び込むのは、風穴を上げたMG…指揮官機と同様の装備を纏った複数の機体。それぞれのパイロットの叫びと共に突っ込み、攻撃を撃ち込み、開いた風穴を広げていく。
「ラステイションの軍も中々やるじゃねぇか!」
「だね…ッ!勇猛な露払いに、称賛と感謝を…ッ!」
私達女神ですら苦心する猛攻の中、何人ものパイロットが自ら斬り込み突進する事で道を開いてくれる。その穴へと私達が突入すれば、更に複数の機体が私達の後方から周囲に展開し、進むべき道を弾丸とミサイルで固めてくれる。
──だけど、全てが上手くいく訳じゃない。私達も、軍の皆も、全員が奮戦し…それでも負常モンスターは、暴走する闇は、飲み込む。
「……ッ!?しまっ、弾切──うわぁああああああッ!!」
「な……ッ!?く、そ……ッ!」
『……!?』
周囲を飛ぶ、空戦仕様のラステイション機。その内の一機が、バックパックに一対二枚の大型ウイングスラスターを備えた…私達のすぐ側を飛んでいた味方が、多数の負常モンスターの突撃を諸に喰らう。真正面から一気に受けたその機体は姿勢を崩し、放たれる頭部機銃では纏わりつく負常モンスターを蹴散らす事など出来ず…落ちていく。どんどん負常モンスターに機体を埋め尽くされながら、落下していく。
被害はそれだけに留まらない。その機体と組んでいたもう一機も、突如相方がやられた事で対応が間に合わず、同じように取り憑かれる。全てのスラスターを滅茶苦茶に吹かして振り払いにかかっているけど、全方位に数え切れない程の敵がいる今、一度大量に取り憑かれてしまったらどうにもならない。
「不味い…ちょっとで良いから耐えてッ!すぐにアタシが……」
「駄目よ、ユニッ!」
反射的に身を翻すユニ。すぐにユニは落ちていく二機を助けに行こうとして……だけどそれを、ノワールが止める。肩を掴んで、強引に引っ張る。
「なッ……お姉ちゃん、なんで…ッ!」
「今は、全員が全身全霊で道を作ってくれているのよ!?これは何度も出来る事じゃないの、今を逃せば次はないかもしれないって事位、貴女も分かってるでしょッ!?」
「でも、今ならまだ……ッ!」
声を荒げるユニに対し、有無を言わせぬ剣幕でノワールも返す。反論を許さない…必死に堪えるような表情で言い、ユニの肩を離さない。だけどユニの方も、それでもと食い下がり……これは、どっちが正しいとかじゃない。敢えて言うならどっちも正しくて、間違っている事があるとするなら、それはこうなる事を避けられなかった、避けるだけの力がなかった私達の弱さで…実を言えば、この時私はユニ寄りだった。今全力を解放すれば、助けつつすぐに戻る事も出来る。突撃の為に力は温存するべきだけど、人を助ける為に、全力を注がない理由もまたないじゃないか…そう、思ったから。……でも、
「行って下さい、女神様…俺がここにいるのは、女神様に助けてもらう為じゃないんです…助けられるんじゃなくて…手助けする為に、ここにいるんです…ッ!だから……ッ!」
「……っ!…貴方……」
既に機体の大半を覆われてしまったMG。でも、その状態でも携行火器が、ビームマシンガンが放たれ、私達の行く先を撃つ。自衛ではなく、私達の援護の為の光弾が空を駆けて敵を撃ち抜く。
インカム越しに聞こえたのは、願いと信念…それに何より意地の籠った、パイロットの言葉。その声が聞こえた瞬間、ユニの動きが止まり…再び身を翻す。心を打たれ、声に背中を押され……私達は、向かうべき先へと突き進む。
(…報いないと…その思いに、皆の思いに……ッ!)
今の人だけじゃない。誰もが命を危険に晒してでも、戦っている。窮地に陥ろうと、追い詰められようと、私達と共に…未来を目指して、戦ってくれている。
だから…報いるんだ。示すんだ。信じて良かったと思われるように。信じた事が正解だったと、証明する為に。
「これ以上…阻ませるものかッ!」
両手と周囲に一瞬で作れるだけのナイフを精製し、一斉に発射。飛翔したナイフはすぐに爆ぜ、解放された圧縮シェアエナジーの力で負常モンスターを吹き飛ばす。普段より圧縮率の低い、ナイフとしても爆発としても大した事無い粗製乱造の様な武器だけど、こんなものでも負常モンスターには十分通用する。むしろ威力が低いからこそ、周囲の味方への影響を気にせず手当たり次第に投げ放てる。
個々の力を大切にしているとはいえ、組織で動く事を前提としている軍故の対応力か、それともさっきの声は各機にも聞こえていたのか…或いは、理屈なんてない意地か。ものの数秒で二機が隊列から外れても残りの機体は位置を修正し、噴射炎をなびかせ、私達の支援を続ける。そして……
「くっ……すみませんブラックハート様、皆様…!これ以上は、弾薬が…ッ!」
「ううん、貴女も皆も良くやってくれたわ。後は…任せなさい」
静かな、だからこそ安心を抱けるようなノワールの言葉を受け、MG部隊は後退を始める。私と守護女神組の四人で後退支援の為の攻撃を放ち、女神候補生の四人が同時攻撃でまた穴を開き……私達は、捉える。負のシェアの城を、射程圏内に。
「一気に突っ込むわよ、皆ッ!」
ネプテューヌの言葉を合図に、全員で遠隔攻撃を叩き込む。城の再生能力は全員が知っているから、確実に突入出来るよう前回以上の火力を城壁へと叩き込み……けれど次の瞬間、私達は愕然とする。全員の攻撃が着弾し、爆発が起き…だというのに、爆炎が晴れた後の城壁は全くの無傷であった事に。
「えぇー!?効いてないの…!?」
「いえ、これは…違いますわ!効いていないのではなく……」
発されたうずめの言葉を否定すると共に、ベールは普段より細いシレッドスピアーで城壁へ向けてもう一度攻撃。進路上の負常モンスターを蹴散らしながら伸びた槍は、城壁へと突き刺さり、消え…確かに刺さったにも関わらず、城壁はやはり無傷。
でも、見えた。本当に一瞬よりも短い、刹那の合間に…女神の目ですら辛うじて見える程度にしかならない、それ程の速度で城壁が再生していく光景が。
そう。ベールの言う通り、効いていない訳じゃない。城壁に攻撃が通用した上で…殆ど無力化してるも同然の速度で、城は再生をしているだけ。
「マジかよオイ…負常モンスターの時点で大概だが、どうなってんだよこの再生力は……!」
「えっと…バリアーで進むのは、どう…?」
「バリアー…あっ、こんなかんじ?」
「それも一手だけど…こんな再生力がある城に対して一発本番を仕掛けるのは、勇気がいるわね……」
魔力で球状に自分を包み、その状態で突進する事で負常モンスターを倒すラムちゃん。悪くない案だけど、ネプテューヌが難色を示すのも同然の話。透過するんじゃなく、バリアなりなんなりで押し退けつつ進む以上は再生能力との削り合いになる訳で、もしも押し切られた場合、一瞬で飲み込まれてしまう。これ程の暴走をしている負のシェアエナジーに、完全に飲み込まれたら…どうなるか分からない。
だけど一旦下がる選択肢はないし、じっくり考える時間もない。通常攻撃での突破はほぼ不可能な以上、危険でも何でもやるしかなくて……そう思って私が賛成の声を上げようとした、その時だった。
「…使うなら、使うとしたら…今、だよね。……皆さん、少しだけ時間を下さい。わたしに、策があります…!」
背後から聞こえた、ネプギアの声。振り向けばネプギアは、真剣な…何かを試そうとする者の表情をしていて……ビヨンドフォームを解放。光に包まれ、雰囲気とプロセッサが変わり…加えて今は、ネプギアの前にコンソールらしき複数のウィンドウが浮かび上がる。
「ここまでの戦闘で得られたデータは十分。NPドライヴの稼動状態も良好。後は、プログラム構築さえ上手くやれば…いける…!」
「ね、ネプギアアンタ、何をする気…?」
「まあ、見てて。それとわたし、回避は頑張るけど攻撃にまでは手が回らないから、その間お願い…!」
「え、ちょっ……!?」
言うが早いか、ネプギアはその場から上昇。迫り来る負常モンスターを四方八方へ飛ぶ事で避け、視線を走らせ……左手にM.P.B.Lを持ち替えると、右手でキーボードを弾き始める。弾きながら、飛行を続行。
「対象物質の構造性質及びエネルギー状態分析、確認…これは、再生っていうより状態の固定…?修正による結果的な再生…?だとしたら……!」
僅かな隙間に滑り込むような回避を続けながら、不意にネプギアは城へと攻撃。単射で数回ビームを撃ち込み、けど当然城の再生には通用しない。だというのにネプギアは攻撃を続け、単射の後はフルオート連射、その後は照射による薙ぎ払いと、刀身に纏わせたビームを放つ事による遠隔斬撃を城壁へぶつける。
どれも、通用していない。一見無駄にすら見える攻撃で、私も皆も訳が分からず……けど次の瞬間、ネプギアはふっと動きを止める。M.P.B.Lを手放し、左手もキーボードに当てがい…そこから始まったのは、超高速のキーボード捌き。
「やっぱり、そういう事なら…ッ!」
「ネプギア大丈夫!?何をしてるか分からないけど、手伝いが必要なら……」
「大丈夫ッ!キャリブレーション取りつつ、ゼロ・モーメント・ポイント及びSEGを再設定…くっ、だったら変性プログラムのリアルタイムフィードバックに制御システムを直結!ニューラルリンケージ・ネットワーク再構築!NP粒子精製パラメータ更新!フィードフォワードデータ反映、伝達関数!マギア偏差修正!ヴァリエーションマップ接続!NGシステムオンライン!ブートストラップ起動ッ!」
「……!?お、おいネプテューヌ!お前の妹、どこそのスーパーコーディネイターか超高速の超脳力者みたいになってるぞ!?」
心配したネプテューヌの声を一蹴せんばかりの「大丈夫ッ!」で返したネプギアの、凄まじい程の……何か。指は超難度の鍵盤楽曲を弾いているかの如く走り、瞳も一瞬たりともどこかの向きに留まる事なく動き続け、風に舞う木の葉の様に回避をし続けながら何かしらのものを…何かのプログラムを作り上げていく。そちら方面に明るくない私には何をどうしているのか全然分からない、ただ凄まじいという事だけが伝わる言動で作業を進め……そして、キーボード含む全てのウィンドウが消え去る。その代わりのように、再びネプギアの手元にM.P.B.Lが現れる。
「これでッ!いっけぇええええぇぇぇぇぇぇッ!」
粒子を…単なるシェアエナジーの光とは違う輝きを後部から放ちながら、射出させるネプギアのビット。大型から小型がそれぞれ分離し、十二基の端末がネプギアの周囲に展開し、ビットを装着していた両肩と両腰の浮遊ユニットからも同様の粒子を放出しながらネプギアは一斉掃射。大型四基、小型八基、それにM.P.B.Lを合わせた十三門からの光芒が射線上の負常モンスターを貫きながら城壁へと直撃し、爆発を起こし……でも、弱い。初めに放った、私達全員での攻撃に比べれば、遥かに威力が低く、範囲も狭い。
「ネプギア、これじゃ……!」
「いいえ──成功です」
用意したのは段違いの出力を持つ攻撃か、それとも再生を上回る程の手数か。そんな風に思っていた私は、想像と違う掃射に対して思わず「駄目だ」と思ってしまった。
でもネプギアは、成功だという。成功を宣言し、爆炎が晴れ……そうして私は、私達は目にする。再生が間に合わないどころか、一切再生の気配を見せないまま空いた、城壁の穴を。
「ぎあっち…これ、どうやって……」
「ちゃんと説明をすると長くなってしまうんですが…今の攻撃で、破損箇所の構造性質を書き換えて修復が機能しないようにしたんです。これが、わたしのビヨンドフォームの力…シェアエナジー、魔力、そしてNP粒子の融合により作り出す、NG粒子を用いた性質の付与と変革ですっ!」
目を丸くするうずめの言葉に、ネプギアは胸を張るようにして答える。女神の姿だからか、自信満々で…でも、胸を張れるだけの事をしている。だって危険な賭けをするしかないのかもしれないって状況を、一人で…しかも恐らく、成功の確信を持って覆したんだから。
「でも、暫くは開いたままだとしても、城の修復能力が変わっていたように、直すじゃなくて被せるとかでまた塞がれてしまう可能性もあります!だから、皆さん急いで……」
飛び回り全方位に攻撃を仕掛けるビットを呼び戻し、自らに随伴させながら突撃をかけるネプギア。今ネプギアが言った事は勿論だし、私達には一秒でも、一瞬でも早く暴走を止めなきゃいけない理由がある。
だから私達も後に続く。先陣を切るネプギアは射撃とビットの砲撃で正面を開き、城内への突入に差し掛かり……
「な……ッ!?」
『……──ッ!?(ネプギア・ネプギアちゃん・ぎあっち)ッ!』
その瞬間、濁流の様な負常モンスターの大群が、左上からネプギアへと襲いかかった。一瞬の内に大群はネプギアを飲み込み、流れは止まる事なく下方へと駆け抜け……直後、大出力のビームが濁流の一部を切り裂く。そこからネプギアが、大量に粒子を放出しながら脱出する。
「ネプギア、無事!?」
「う、うん…ありがとうロムちゃん、ラムちゃん。二人のバリアー案を聞いてなかったら、粒子を盾代わりにする事を多分思い付いて…わわっ!」
危なかった、と言うようにネプテューヌの問いに答える最中、更に濁流が…別の濁流が、ネプギアを再び襲う。ネプギアは勿論、私達にも襲いかかる。今度は全員で散開し、各自で迎撃する事で凌げてはいるけど…これじゃ、突入出来ない…!
「なんですの、急に……!」
「絶対に突入なんざさせねぇって事かよ…ッ!」
城内へ入る為の穴は開いた。もう城の近くまで来ている。なのに、だというのに、突入が敵わない。土砂降りの様に次から次へと、一瞬たりとも絶える事なく負常モンスターが殺到し、後少しなのに辿り着けない。
もう、目を瞑っていても確実に攻撃が当たる。全ての攻撃が、薙ぎ払いや大量掃討に繋がる。繋がってしまう程の物量が、最後まで負常モンスターが道を阻む。
(くっ…結局さっきの強行突破を試さなきゃいけない訳…!?)
今一度私の頭に浮かび上がる、全方位防御を展開したまま突っ込む作戦。全方位…いや、正面を殺到する負常モンスターに覆われ、視界を塞がれてしまうだけでも穴からの突入は難しくなる訳で、それは賢明な作戦では決してないけど、これだけの物量を前に突入する方法なんて他には……そう思っていた時、再び一つの声が聞こえた。
「皮肉な話ではあるけど…あれを使うには、絶好のチャンスじゃない。ネプギアが、鮮やかに結果を出したんだもの…今度は、アタシの番よッ!」
それは、落ち着きを抱いたユニの声。ここまで照射による薙ぎ払いを続けていたユニは、輝きと共に前進をかけ…ビヨンドフォーム、解放。全身に火器を、牙や爪を思わせるパーツを纏った姿へと変わる。
でも、それだけじゃ終わらない。ビヨンドフォームになった直後、遠隔操作端末を射出するようにプロセッサ各部の楔状パーツが切り離され…それ等は円を描くように、ユニを中心に広がっていく。
そしてその円の中に浮かび上がるのは、実体化していくのは、巨大な翼。ユニ自身の何倍もある、巨大な黒翼が形成され……次の瞬間、黒翼が羽ばたくように動いた瞬間、膨大な数の光線が全方位に轟いた。閃光の如く光線が広がり…周囲の負常モンスターが、一掃される。
「これ以上、邪魔は…させないッ!」
一瞬じゃない。一度切りじゃない。すぐに二度目、三度目の光線が全方位に放たれ、更に広い範囲で負常モンスターを殲滅する。巨大な黒翼、そこに無数存在する羽根一つ一つからビームが伸び、骨組みに当たる部位を中心に多数の大型ビーム砲も展開し、両翼の基部には高出力の拡散ビーム砲すら備える……一片たりとも隙のない、数多のビーム砲で作り上げられたと言っても過言ではないような翼から、光の雨が降り注ぐ。
大部隊どころか、大艦隊の斉射を思わせる制圧砲撃。アタシの番、その言葉の通りに…今度はユニが、状況をひっくり返す。
「ユニ…貴女、こんな切り札を……」
「これこそがアタシの力の、ビヨンドフォームの本領よ!すぐには使えない、多くの溜めの時間を必要にする事と引き換えに、超高火力とエネルギー吸収能力を両立した、絶対的制圧能力を持つこの姿こそが……」
「フルアーマーユニちゃん…フルアーマーユニちゃんだよねッ!!」
「いやなんでネプギアが言うのよ!?っていうかアーマー要素はないから!アタシ自身に限定したらむしろ防御力減ってるから!…まぁ言うだろうなとは思ってたけど…ッ!」
これでもかって位目を輝かせたネプギアに割って入られ、折角格好良い流れだったのに何か締まらなくなってしまったユニ。それに確かに、楔状のパーツ全てが分離した分、ユニ自身はかなりの軽装に、肌が露わになっている部位も多い装いになってしまっている。
だけどやはり、火力はそれを補って余りある程。翼とは別に、X.M.B.を思わせる砲もユニの左右に二門浮遊し、ユニ自身も両手にハンドガンを持ち、その状態の全力砲火でどんどん濁流を切り刻む。負常モンスターの土砂降りを、光の弾雨が真っ向からぶつかり吹き飛ばしていく。
「…ならば、ここはわたくし達が引き受けますわッ!ロムちゃん、ラムちゃん…力を、貸して下さいましッ!」
「……っ!うんッ!」
「任せて…ッ!」
変わったのは、状況だけじゃない。切り開いていくユニの姿は私達の心も撃ち、真っ先に動きを見せたのはベール。ベールもネクストフォームを解放し、槍の雨が、吹き荒れる突風が負常モンスターの大群を討つ。光弾の雨と槍の雨が共演し、更に広い範囲を薙ぎ払い退ける。
同時に発された声に応じて、ロムちゃんとラムちゃんもビヨンドフォームに。弾丸と槍に魔弾が加わり、城壁の穴を中心としたかなりの範囲が晴れに変わる。雨上がりのように、僅かな数の負常モンスターが紛れ込む程度の空間が四人によって成立する。
「よーしっ!ロムちゃん、わたしたちもあれやろ!」
「ネプギアちゃんと、ユニちゃんだけじゃ…ないんだから…!」
無論、すぐにその空間を負常モンスターは侵そうとする。飲み込み、埋め尽くそうとする。
けど、それを四人は許さない。四人は…ロムちゃんとラムちゃんは、許さない。
ビヨンドフォームになると共に、二人が四方へ展開する、八つの魔法陣。これまで多彩な魔法を、二人の力を発揮していた魔法陣は、これまで以上の光を帯び……そして、次の瞬間変わる。白い光と共に、誰もが目を見開く三つの『姿』に。
『いっくよー、ロムちゃん!』
『やろう、ラムちゃん……!』
『思いっ切りやれ、ロム、ラム!カバーはわたしがしてやるよッ!』
『え…えぇぇッ!?』
重なり聞こえる三つの声。変化したそれによって魔法が放たれ、戦斧が振るわれる。三人のロムちゃんと、三人のラムちゃん、それに二人のブランが…新たに、現れる。
分身とかじゃない。それはブランも、初めからいた彼女も目を見開いている事から明白。劣化コピーでもない。それは新たに現れた、どう見てもブランとロムちゃんとラムちゃんである八人の動きから見ても絶対の事。
「ふっふーん。すごいでしょ?これが、わたしたちの力よッ!」
「これで、おねえちゃんたちが行っても…だいじょうぶ…!(ぐっ)」
振り返った二人が見せる、自信満々な笑み。薄々分かってはいたけど、これは二人の能力なようで…確かに、見るからに頼もしい。ネクストフォームのベールと、ビヨンドフォームのユニ、ロムちゃん、ラムちゃん…四人の力を結集させた事による攻撃の嵐は、晴れた空間を今度こそ完全に、一体たりとも内側にいる事を許さない『絶対』の状態を作り上げているんだから。
「ユニちゃん、ロムちゃん、ラムちゃん、ベールさん…。…分かりました、ここは…お願いしますッ!」
「外からの敵は来ないものとして突入するわ。…いいんでしょ?そういう事で」
「無理すんな、とは言わねぇよ…見せてやれッ!二人の…いいや、女神の本気をッ!」
ネプギア、ノワール、ブランの三人が声を上げ、私達も四人に頷き…四人から、受け取る。任せてという、自信と意思に満ちた視線を。その思いを。
加速をかけ、城内へと突入。感覚を頼りに、今度は壁も天井も床もぶち壊しながら、私達は進む。目指すは、必ずどこかにある負のシェアの城の核。そこに辿り着き…この戦いを、暴走を、終わらせる。その為に、突き進む。
*
戦場となった、生活圏外の上空。その高高度に位置するのは、巨大なレドームを背負ったラステイションのMG。早期警戒・電子戦仕様の装備群を纏い、連合艦隊の目の一つとして情報収集とその処理、得られたデータの分析と送信を続ける天空の機体から、一つの情報が響き渡る。
「ネグロ10から全部隊へ!敵拠点と浮遊大陸の中間地点を中心とした空間に、異常な力場の発生を確認!これより送信するデータを確認されたし!」
その通信が行き渡った直後、言葉通りに送られるデータ。各艦や各部隊の隊長機に送信されたデータには、ネグロ10が観測している力場の情報が、発生した異常な力場の性質と、それが急速に拡大していく予測結果が載せられており、確認した者の約半数は危険だと、不用意に近付かない方がいいと考えた。だが残りの半数は…違う。
「…ほぅ。この力場、観測データ通りであるなら、内部では全ての機体が自立した飛行が可能になるな。いや、より正しく言うなら浮遊し続ける、と言うべきか」
「みたいだな。中々面白そうな舞台だが…そっちはどうするよ?特務隊長」
「ふっ…無論、利用するに決まっている!全機、私に続けッ!」
言うが早いか、メイジン機はスラスターを吹かして跳躍。SA型の高出力を活かす事でどんどん高度を上げていき、麾下の特務隊機も隊長に続く。上昇しながらも負常モンスターを躱し、蹴散らし、かなりの高度にまで到達したところで、各機はコンテナユニット外部に装備されたアンカーを射出。それにより、力場の影響か剥離した浮遊大陸の一部…大岩の様な地盤の一部に機体を引っ掛け、ワイヤーアクションをするが如く更に空へと昇っていく。
「ひゅー、格好良いねぇ。……さて、んじゃあ俺も…シュバルツ大隊全機に告ぐ!シュバルツ中隊γとδは戦線を維持!βは中隊長の指揮でポイントFを中心に再展開!そしてαは…俺と一緒に空中遊泳だ!ちょいと陸戦装備で空を飛んでみようじゃねぇか!」
「了か…いや、こちらシュバルツ15!流石に力場までは少し遠いと思うんですが!?」
「ま、それもそうだな!だから一度母艦へ帰還!カタパルトで空に打ち出してもらえ!その間に、俺が力場での運動データを調べといてやるよッ!」
小隊長の一人からの返答に分かってきたとばかりの答えを返したシュゼットは、高速形態だった機体を通常形態に戻し、脚部とバックパック、それぞれのスラスターを最大出力で動かし彼も空へ。陸戦仕様の機体でありながら卓越した技術と判断力で負常モンスターを迎撃しながら高度を上げ、力場の発生した空間へと向かっていく。
しかし、そのままでは届かない。推力が持たない。そんな現実を彼は分かっており…それ故に、落ちてきた浮遊大陸の一部を、力場の外に出た為に落下する地盤の一部を足場にする事によって、距離を伸ばす。時には高速形態で地盤の上を走り、抜けた瞬間再び通常形態に戻すという芸当も見せながら上っていき……しかし運の悪い事に、後少しで落下する足場が足りなくなる。どこかからの流れ弾で目標にしていた足場を破壊され、後一歩で届かなくなってしまう。
「……お、おおぅ…やっべ、これは不味いかも…」
「ちょっと…何やってんのよあんたは!」
「うぉっ!?…クラフティ……」
試しに機体の腕を伸ばしてみるが、やはり届かない。結果推力の足りなくなったシュゼット機は上昇が止まり、シュゼットは冷や汗を垂らし…しかし次の瞬間、機体が持ち上げられる。滑り込んできたクラフティ機が支える事で、再びシュゼット機は昇っていく。
「へへ、やっぱり信じるべきは頼れる妻だな!」
「馬鹿な事言ってないでそっちもスラスター吹かしなさいっての!」
そうして二機も力場の内側へと辿り着き、機体越しに頷き合って左右に展開。陸戦機であれば飛行が可能となり、空戦機であっても滞空に推進剤を必要としなくなる空間を存分に活用する事で、降り注ぐ負常モンスターを迎撃していく。
決戦は、佳境。負常モンスターが、負のシェアが次元を飲み込まんとする中……希望を失わぬ人々もまた、戦いを終わらせんとする女神と共に戦い続ける。
今回のパロディ解説
・「〜〜キャリブレーション〜〜トラップ起動!」、どこぞのスーパーコーディネイター
ガンダムSEEDシリーズの主人公の一人、キラ・ヤマト及び彼の代名詞的な台詞の一つのパロディ。台詞の方は、適度にそれっぽく変えています。OS書き換えでもないです。
・超光速の超脳力者
SCARLET NEXUSに登場するキャラの一人、アラシ・スプリングの事。声優ネタでもありますね。普段ぐでっとしているのはネプギアではなくネプテューヌの方ですが。
・フルアーマーユニちゃん
機動戦士ガンダムUCに登場するMSの一つ、フルアーマーユニコーンのパロディ。フルアーマーユニちゃーん…アーマーは追加されてない点も、元ネタと同じですね。