超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第四話 まずはどこへ行こう

 自分でもよく分からない内に信次元…イリゼのいる世界に来てしまってから、一日が経った。一番初めはほんとに訳が分からなくて不安だったけど、一緒にいたスターの為にも何とか街まで頑張ろうと思って、旅の経験を活かして街についてからは、出来る限り歩き回ってみて…そうしている内に、僕は見た。ビルの大画面TVに映る、今いる国の女神…ベールさんを。

 その姿は、女神化したイリゼやピーシェに似ていた。容姿が…じゃなくて、感じる雰囲気が似てると思った。だからもしかしてと思って、頑張って教会を探して……そこでベールさんに会えた事で、やっと僕はここが信次元だって事、僕はイリゼの世界に来ちゃったんだって事を理解した。

 それからイリゼと再会出来て、イリスちゃんっていう僕と同じように飛ばされてきた子とも出会って、帰れるようになるまでこの世界で生活する事になった。いきなり飛ばされてほんとに困ったし、るーちゃんと再会した後はイリスちゃんが実はモンスターだったって事が分かってびっくりもしたけど、僕はわくわくしている。これからきっと経験する、イリゼの世界のあれこれを。望んできた訳じゃないけど…折角来たんだから、楽しまないとね!

 

「ん…この炒り卵、温かくて美味しい」

「だね。けどイリスちゃん、これは炒り卵じゃなくて、スクランブルエッグだよ」

「スクランブルエッグ…炒り卵と、どう違う?」

 

 朝起きて、簡単に支度をして、今はここの食堂でご飯を食べている真っ最中。食べているのはスクランブルエッグとかソーセージとか、朝ご飯って感じの料理で…ふふふっ。やっぱり皆でご飯を食べるのは楽しいよね。いつも以上に美味しく感じられるし。

 

「…あ、イリゼ。この果物、持って帰ってもいいかな?スターにあげたくて……」

「勿論いいよ。…っていうか、その分は用意するよ?ライヌちゃんやるーちゃんだって食べるんだから」

 

 こっちの世界じゃモンスターは危険な存在、普通一緒に生活するような生き物じゃないらしいから、普段の様にはいかない事も多い。けどそれは仕方ないし、ここプラネタワーの『家』としての部分を使っている人達は皆、ライヌちゃんやるーちゃんの事も知っているから、そこでならスターも自由に動ける。それにモンスターボールに戻せば何とかなるから、それ以外の場所でも人がいないって断言出来る時はちょっと位外で遊ばせても大丈夫…な筈。

…なんて、ご飯を食べながら一人で考えていた、その時だった。

 

「あ、おはようございますイリゼさん、ブランさん。それに、そっちの子達はもしかして……」

「やっほー!一泊二日でラステイションから帰ってきたネプ子さんとネプギアが、プラネタワーに帰ってきたよっ!」

 

 後ろ…食堂の出入り口から聞こえてきたのは、優しい声と、元気な声。振り返れば、そこにいたのは何だか似ている女の子二人。

 一人は僕より少し背の高そうな、髪の長い女の子。優しい感じの声をしていたのは、きっとこっちのお姉さんで、そしてもう一人の女の子は……

 

「え…お、お姉ちゃん!?」

「ねぷ?あ、うん。わたしネプギアのお姉ちゃんだけど…あれ?今の、わたしに対する発言で合ってる…?」

 

 忘れる訳ない。見間違える筈もない。左右に跳ねてる感じの髪に、僕より小さい背に、一目で感じるこの明るさは…お姉ちゃんだ。神次元っていう所で出会った、ネプテューヌお姉ちゃんだ…!

 

「わぁぁ…!久し振りだねネプテューヌお姉ちゃん!…あ、いや、でもこっちはあの後すぐなんだっけ…?…と、とにかくイリゼだけじゃなくて、お姉ちゃんともまた会えるなんて…!」

「お、おおぅ…?えぇっと、これは……はっ!まさか弟…!?記憶を改竄され、わたしに弟が…!?」

「えぇぇっ!?お姉ちゃんそうなの!?」

「いや、何よその反逆の物語の二期第一話みたいな展開は…ネプギアも信じてるし……」

「は、はは…えーっと、愛月君。喜びに水を差す形になるんだけど…ちょっといいかな…?」

 

 神次元で出会った、優しくて面白くてちょっと変わってるけど、頼れるネプテューヌお姉ちゃん。ここでイリゼだけじゃなくてお姉ちゃんとまで会えるなんて思いもしなかったから、何だか凄くテンションが上がっちゃう僕。けどそこで、イリゼが僕の事を呼ぶ。…何だろう……?

 

「…結論から言うね。確かにネプテューヌはネプテューヌだけど…ここにいるのは、愛月君の知ってるネプテューヌじゃないの」

「え…?…あ……」

 

 言い辛そうな顔でイリゼが口にしたのは、「違う」って事。一瞬、僕はその意味が分からなくて…でも、すぐに思い出す。そうだ、イリゼとお姉ちゃんは、それぞれ別の次元から来たんだった……。

 

「…その、ごめんね。会う前に言っておけば、ぬか喜びさせる事もなかったのに……」

「う、ううん。これは僕が勝手に勘違いしただけだし、イリゼが謝る事なんてないよ。…その、お姉ちゃん…じゃなくて、ネプテューヌさん…もごめんなさい。いきなり変な事言っちゃって…」

「え?あ、いいよいいよ気にしないで。この姉力溢れるねぷ子さんを目の当たりにしたら、お姉ちゃんと呼びたくなるのも仕方のない事だからねっ!」

「いや、そういう事じゃないからネプテューヌ……」

「姉力…?…ブラン、姉力とは…?」

「あぁ、うん…あれはネプテューヌが適当に言ってるだけだから気にしなくていいわ…」

 

 ここにいるのは『ネプテューヌ』だけど、僕の知ってる『お姉ちゃん』じゃない。それは残念で、悲しくて…でも、僕が勘違いしただけの事。だから驚かせちゃってごめんなさい、とネプテューヌさんに謝ると、全然気にしてないよ、って感じにネプテューヌさんは言ってくれて……やっぱり、別次元の同一人物?…っていうのは、似てるんだなぁ…。

 

「えぇと、それでこの子達は結局……」

「っと、そうだったそうだった。二人共紹介するね。この子達は、別次元と別世界から飛ばされてきた……」

「イリス」

「愛月です。えっと…お世話になります」

 

 それから僕達は自己紹介。まずは僕とイリスちゃんが話して、次はネプテューヌさんと妹のネプギアさんの自己紹介を聞いて…ネプギアさんがネプテューヌの妹だって事にちょっとびっくり。そりゃ、さっきも「お姉ちゃん」って言ってたけど…見た目は、ネプギアの方がお姉さんっぽいし……。

 

「あ"っ…うぅ、またネプギアの方がお姉ちゃんっぽいって思われてるぅぅ……」

「え…!?ど、どうして僕の思ってた事を…!?」

「ふふ…これぞ一部の信次元民の特技、『地の文読み』だよ…」

「…ブラン、地の文って……」

「イリス、それを貴女が知るのはまだ早いわ」

「……?」

 

 わいわいがやがや、皆で話す。何だか話してる内容は変な感じだけど…こういう賑やかな雰囲気は楽しい。それこそ二ヶ月前の、神次元での日々みたいで……皆、元気かなぁ…。

 

「はぁ…あ、ところで皆は今日何するの?というか、帰る目処は立ってるんだっけ?」

「それはまだイストワールさんに調べてもらってる真っ最中。だから今日は、二人と街に出ようかな…って」

「お、良いね!じゃあわたしもプラネテューヌの守護女神として案内を……」

「お姉ちゃん…一昨日いーすんさんとした、『明後日からまたばっちりお仕事するから、明日は一日オフにさせてよー!ネプギアと遊びに行きたいよー!』…って話は……」

「うっ…な、何であんな事言っちゃったのさ一昨日のわたしぃぃ……」

「はは…って訳で、朝食が終わったら一服して、それから行こうか。それとも、先に何かしたい?」

「ううん、僕はそれで大丈夫だよ」

「イリスもそれで良い。プラネテューヌの街、知りたい」

 

 先に僕が答えて、イリスちゃんも賛成して、それに僕はうんうんと頷く。リーンボックスの時はここがどこなのか、どうすれば戻れるかで頭が一杯だったから全然「観光」なんて気分になれなかったし、今度こそ楽しみたい。

 

「…あー…その事、なんだけど…イリス、やっぱりわたしがいないと不安?」

「……?…ブラン、来ない…?」

「来ない、というか…まぁ、そうね。昨日は急遽仕事を全部休んじゃったし、今日は今日中に片付けたい仕事もあるというか……」

「う…ブラン、忙しい。忙しいブランについてきてもらう…良くない事…」

 

…と、僕は思っていたけど、ブランさんは忙しいみたい。それを聞いたイリスちゃんは困ったような声を出して、ブランさんの事をじっと見つめる。

 どうしよう。何か言った方が良いのかな…と思った僕だけど、イリゼの方を見たら、少し待ってと言うように小さく首を横に振る。だから僕は、それに頷いて…数秒後、黙っていたイリスちゃんは視線を僕とイリゼの方に。僕、イリゼ、ブランを順に何度も見て…それから言う。

 

「……大丈夫。イリスには、このマフラーがある。それに、イリゼも愛月も、優しい。だから…イリス、大丈夫」

「イリスちゃん…あの、ブランさん。イリスちゃんは僕達が一緒についていますから、大丈夫です!」

「え?…あ、いや、わたしは心配というか…まぁ、心配してない訳でもないけど……。…けど、うん…そうね。そう言ってくれるなら、貴方とイリゼに任せようかしら」

「はい!」

「ん。イリス、愛月とイリゼに任せられた」

「あ、そこで胸張っちゃうんだイリスちゃん…」

 

 マフラーを握って、それから僕とイリゼの名前を出して、大丈夫だも言ったイリスちゃん。それが嬉しくて、信頼してくれてるんだなって思って、僕もブランさんに言った。勿論、僕だって街の事は全然分からないし、イリゼに比べたら頼りないかもだけど…それでも、イリスちゃんは信頼してくれてるんだもん。頑張ろう…!……頑張る機会があるかどうかは別として…!

 

「じゃあイリゼ、わたしはこの後帰るけど、事が事だし何かあれば呼んだ頂戴」

「わたしも、ね。…あ、仕事面倒だからとかじゃないよ?」

「あはは…呼んでくれれば、すぐ行きますね」

「ありがと、皆。ほんとに何かあれば、その時はお願いね」

 

 それから僕達はご飯を終えて、プラネタワーの一階へ。そうして僕は、出発する。再会したイリゼと、出会ったイリスちゃんと…全く違う世界の、未知の街へ。

 

 

 

 

 イリス、プラネテューヌの街に出る事になった。

 知らない街、とても楽しみ。

 今日はブランがいてくれないけど…マフラーと、イリゼと、愛月がいるから大丈夫。

 

 ……?…あ、間違えた。

 マフラーがあって、イリゼと愛月がいるから、大丈夫。

 …言葉というのは、難しい。

 

「わー…空から見た時も思ったけど、ほんとプラネテューヌって、都会…って感じだね」

「ルウィーと、全然違う。プラネテューヌ、高い建物、多い」

 

 プラネタワーを出て数分。イリス達は、街を歩いている最中。

 大きい建物、気になる。

 あれは全部、人が住んでいる?プラネテューヌの人は、高いものが好き?

 

「…………」

「さて、二人共どうしようか。案内っていったって長期滞在する訳じゃないし、どっちかっていうと遊びに行く感じで…って、イリスちゃーん?どこ行くのー?」

 

 そう思っていたら、イリゼがイリスを呼んでくる。

 振り向いたら、いつの間にかイリゼと愛月はちょっと遠い所。

 

「イリゼ、愛月、はぐれるの、危険」

「え、えぇー…?一人でぽてぽて歩いて行っちゃったの、イリスちゃんだからね…?」

「…そうなの?」

 

 こくり、と揃って頷くイリゼと愛月。

 二人じゃなくて、イリスがはぐれそうになっていた?

 …反省。上を見たまま歩くのは、危険。

 

「…こほん。じゃ、話を戻すとして…こういう所が気になる、っていうのはある?」

「こういう所…う、難しい…イリス、色々気になる…」

「うーん…そもそも僕はこっちの世界…信次元の事をよく知らないから、どういう施設があるのかも分からないっていうか……」

「あ、それもそっか…それじゃあ、生活に便利なお店とか教えてもしょうがないし……ゲームセンターとかにする?」

「ゲームセンター…ゲームで、遊ぶ場所?」

「そうそう、どうかな?」

 

 ゲーム。ロムとラムが好きな、少し難しいけど、面白い遊び。

 そのお店?…があるなら、イリスは行ってみたい。

 

「イリス、ゲームセンター、賛成」

「僕も賛成、こっちにどんなゲームあるか見てみたいし」

「じゃ、まずはゲームセンターに決定だね。行くよー、二人共!」

「はーい!」

 

 歩き出したイリゼと、元気良く答えた愛月と一緒に歩いていく。

 さっきははぐれそうになったから、今度は二人をちゃんと見る。

 …あ、でもそれだと、街を見られない。…むむ……。

 

「…イリゼ、イリゼ」

「うん?イリスちゃん、どうかしたの?」

「はぐれるのは、困る。…ので、こうする」

「あ…ふふっ、そうだね」

 

 そこでイリスは思い付いた。

 イリゼの手を握っておけば、はぐれない。街も見る事が出来る。

 両立可能、これは賢い。

 

「…愛月君も、手を握っておく?」

「うぇっ!?ぼ、僕はいいよ!大丈夫だから!」

「あはは、だよね。愛月君、しっかり者でよく周りも見えてるもんね」

「う、うん。そういう事だから…」

 

 ぎゅっとイリスがイリゼの右手を握った後、イリゼは愛月にも手を差し出す。

 けれど愛月は否定。しっかり者でよく周りが見えているから、大丈夫らしい。

 愛月、凄い。…けど、少し愛月の顔、赤くなっていた。何故?

 

「…そういえば愛月君。愛月君の世界にも、こんな感じの街はあるの?前に二人と行った街は、ここまで『都会!』って感じじゃなかったけど…」

「あ…うん、あるよ。イリゼが来た地方…シンオウだったらコトブキシティとか、僕の出身のガラルだったらシュートシティとか…って、名前を言われても分からないよね…はは……」

「…愛月の世界にも、色々な国、ある?」

「それは…なんだろう。今言ったシンオウとかガラルとかの、『地方』って括りが、ここで言う『国』かなぁ…?」

 

 シンオウ、ガラル、コトブキ、シュート…知らない名前、いっぱい。

 イリスのいた次元?…のルウィーと、こっちのルウィーは、多分おんなじ。…けど、愛月の…世界?…は、違う?

 …気になる。知りたい。

 

「愛月、愛月の世界にも、ルウィー…ある?女神、いる?暖かい?寒い?」

「え、えぇぇ…?そんな、一度に聞かれても困るよぉ……」

「あはは…イリスちゃん、プラネテューヌの街を見るのは良いの?」

「あ……」

 

 しまった、プラネテューヌの街を見るのを忘れていた。

 折角の機会を無駄にするのは、惜しい。

 だから、愛月の話は、今は我慢。

 

「……イリゼ」

「うん?今度はどうしたの、イリスちゃん」

「イリゼの手も、暖かい。イリス、暖かいの、好き」

「…そっか。ふふっ、手を握るのって、素敵だね」

「ん、素敵。…愛月も握らなくて、いいの?」

「だ、だから良いのっ!もうっ!」

 

 時々イリゼの手をにぎにぎとして、ルウィーにはない物が沢山のプラネテューヌの街を色々見ながら、二人と歩く。

 その間も、色々話して…そうしてある時、イリゼが急に止まる。

 ……?……あ、そうか。

 

「イリゼ、ここがゲームセンター?」

「そうだよ、イリスちゃん。愛月君。愛月君の世界のゲームセンターもこんな感じ?」

「こんな感じだね。…けど、良かったぁ…『ながらくの ごあいこ ありがとうございました』…とかになってなくて……」

「い、いやうん…確かにリメイク繋がりはあるけど、そうやっていたら悲しいけども……!」

 

 そう言って愛月が向かうのは、中でカラフルな機械が動いている施設。

 これが、ゲームセンター…ロムとラムのよくやるゲームより、どれも大きい…。

 大きいという事は、その分凄いという事?もしそうなら、楽しみ。

 

「イリスも行く。イリゼ、早く」

「あ、う、うん…!」

 

 イリゼの手を引っ張って、少し早足で歩く。

 それからイリスは愛月を追って、空いた扉からゲームセンターの中に……

 

 ──!?

 

「……へ?イリスちゃん…?」

「うぅ……」

 

 …凄い音。聞いた事ない音が、凄く多くて、凄く大きい。

 ぐわんぐわん響く。

 これは…音の攻撃?なら、防御しないと……。

 

「イリスちゃーん…?何故にまたしゃがみガードを…?」

「イリゼー!僕、早速やってみたいものが…って、い、イリスちゃん大丈夫…!?」

「…二人共、平気……?」

 

 びっくりしたイリスは、耳を塞いでしゃがみ込んだ。だけど、イリゼと愛月は全然気にしていない様子。

 二人は、イリスより強い…?イリゼは女神だから強くて…愛月も、実は強い…?

 

「もしかして、イリスちゃんこういう騒がしい所は苦手…?」

「う…慣れれば、大丈夫…だと、思う……」

 

 不安そうな愛月にふるふると首を横に振って、イリスは立つ。

 ちょっと手を離したら、やっぱり騒がしい。

 けど、耳が痛い程じゃないから…その内慣れる。…多分。

 

「イリスちゃん、辛くなったら言うんだよ?」

「ん、分かった」

「じゃあ…ええと、愛月君はやりたいの見つけたんだよね?ふふふっ…向こうで買い物の際のお金を出してもらったお礼が、漸く出来るよ」

 

 何だか嬉しそうなイリゼと、苦笑いをしている愛月。

 その愛月がやりたいというのは…上に機械がぶら下がっている、箱の様なゲーム。

 クレーンゲーム、と言うらしい。

 

「……!…小さいブランと、イリゼが沢山いる…」

「これはぬいぐるみだよ、イリスちゃん。女神の姿の、私達のぬいぐるみ…はは、こうして見ると何だかちょっと恥ずかしいなぁ…」

「…ねぇイリゼ、ぬいぐるみと言えば……」

「うん。部屋に飾らせてもらってるんだけど…あれ、気が付かなかった?」

「あ、あれ?あったの?…うぅ、今日帰ったらちゃんと確認しないと……!」

「……?」

 

 むむむ、という風な顔をした愛月は、それからクレームゲームの前に。

 

「…これは、どういうゲーム?」

「えっとね、あそこにアームがあるでしょ?あれを操作して、中の景品…この場合はぬいぐるみを取るゲームなんだよ。だから、ただ楽しむだけじゃなくて、成功したら景品も貰えるゲーム、って感じかな」

「成功したら?」

「そう。大概こういうゲームのアームって力が弱いし、見ての通り距離が分かり辛いところとかもあるから、結構難しいゲームなんだ」

 

 イリゼが説明してくれる。下にある四角の穴から入れば好きなだけ取れそうだと思ったけど、それはルール違反らしい。

 周りのゲームと違って、音と映像で遊ぶゲームじゃない。

 それにイリゼが難しいと言っていたので、イリスはやらない方が良いかも?

 

 …………。

 

 ………………。

 

 ……………………。

 

「はふぅ……」

「……イリゼ、イリゼ」

「な、何かなイリスちゃん」

「愛月、全然苦労してない。連続で取ってる。あれは、クレーンゲームではなかった?」

「う、ううん…あれはクレーンゲームだよ、イリスちゃん…ただ単に、凄まじく愛月君が上手だっただけで……」

 

 数分後、愛月は五種類のぬいぐるみ(多分、残り三種類は他の守護女神)を抱えて戻ってきた。

 愛月は凄く満足そうな顔。

 

「いやぁ、やっぱり髪の毛の部分は重さの計算が難しいね。結構疲れちゃった」

「立て続けに取ってたのに!?え、本当に疲れてる!?」

「う、うん…あれ、僕何か駄目だった…?」

「う、ううん…そういう訳じゃないんだけど……」

 

 何故かイリゼはげんなりした様子。

 理由はよく分からない。愛月がぬいぐるみを入れる為の袋を貰いに行った時に訊いても、「グレイブ君の影に隠れがちだけど、愛月君も偶にぶっ飛んでるよね…」…としか言わなかった。

 

 そして、イリスもクレーンゲームをしてみたけど、上手くいかなかった。

 やはり、愛月は凄い。

 辞典にあった、「能ある鷹は爪を隠す」という言葉は、愛月の為にあるのかもしれない。

 

「〜〜♪」

「愛月、ご機嫌。取れたのが嬉しかった?」

「うん!僕がやってる間、イリスちゃんには待たせちゃったし、今度は僕が付き合うよ。何する?」

「ん…なら、あれをやってみたい。あれは音が色々と出ていて、面白そう」

 

 今度はイリスの番…という事で、気になっていたゲームの所へ。

 これは、映像に合わせてボタンを押して、リズムを刻むゲームらしい。

 このゲームもあまり上手くは出来なかったけど…誰かと一緒にやるのは、いつも楽しい。だからこれも、楽しかった。

 

「イリゼ、イリゼも何かやらないの?」

「え、私?そうだねぇ…じゃあ、私はシューティングゲームでもやろうかな。反射神経の高さ、見せてあげるよ…!」

『おー』

 

 その後はイリゼもゲームをやって、三人で楽しむ。

 気付けば騒がしいのは、あまり感じなくなってた。

 これは、イリスが音に強くなった結果?それとも、慣れただけ?

 

 …分からないけど、分かった事もある。

 イリス、皆と行くゲームセンターは…好き。

 

「ふー…どうする?二人共。まだ遊ぶ?それとも次の所行く?」

「イリス、十分に楽しんだ。愛月は?」

「僕もだよ。だからイリゼ、次の所行こ?」

「そっかそっか。じゃ、出よっか」

 

 ここは楽しいけれど、他の所も見てみたい。

 だからまたイリスはイリゼと手を繋いで、出口の方へ。

 

 その道中、イリスはさっきのクレームゲームの横を通る。

 

「…………」

「…うん?イリスちゃん?」

「……ここで待っていると、ネプテューヌ?…のぬいぐるみを取ろうと、何回も頑張る人が来るかもしれない…」

「あ、あぁ…いやそれは違う次元だよ!?確かにイリスちゃんとは関係がなくもない人かもしれないけど…多分来ないからね!?イリスちゃん変な電波受信してない!?」

 

 …イリス、自分でもよく分からない事を言ってしまった。

 やはり、ここは音の攻撃がある場所だった…?

 

「イリゼ、次はどこに…って、あ…なんか良い匂いする……」

「これは…あ、そこのたこ焼き屋さんからだね。…買ってく?」

 

 ゲームセンターから出たイリス達。

 愛月も言った通り、何だか良い匂いがすると思っていたら、近くにお店があった。

 

 たこ焼き、名前からしてタコを焼いた料理。

 タコ、知っている。赤くて、足が八本ある、海の生物。

 という事は、タコの丸焼き?…それは、食べ応えがありそう。

 

「お待たせ、二人共。はい、どうぞ」

「ありがと、イリゼ」

「……?ありがとう…」

 

 と、思っていたら、イリゼが買ってきたのは茶色くて丸い小さな食べ物。

 これが、たこ焼き?タコは焼くと、こうなる…?

 

「…薄い紙が沢山付いてる……」

「薄い紙?…あははっ、イリスちゃんこれは鰹節だよ〜」

「鰹節?食べられるもの?」

 

 愛月が教えてくれた。薄い紙の様な物は、鰹節という食べ物らしい。

 まだ、これがタコだという事には少し疑問。…けれど良い匂い、美味しそう。

 食べるのには、丁度良いサイズ。だからイリスはいただきますと言って、一つ目を口に……

 

 

 !?

 

「──!……!?…!!?」

 

 痛い、痛い。

 口の中が、舌が痛い。

 間違いない…これは、危険…!

 

「そういえば、たこ焼き食べるのも久し振りだなぁ…」

「あ、イリゼもなの?実は僕もなんだー。じゃあ、頂きま……」

「駄目」

 

 これはとても危険。けれど、イリゼも愛月も気付いていない。

 だからイリスは、二人から取る。取って、後ろに隠す。

 

「え、あの、イリスちゃん…?だ、駄目って……?」

「駄目、痛い、駄目。二人が痛い、駄目。イリス、嫌」

 

 全然分かっていないイリゼに言って、イリスはゴミ箱を探す。

 イリス、痛い思い、した。けど、イリゼと愛月が痛い思いをするのは、もっと嫌。

 

 それからイリスは、ゴミ箱を発見。

 後はこれを捨てに行けば……

 

「痛い、って…もしかして、イリスちゃん…たこ焼き冷まさずに、そのまま食べちゃったの?」

「…これは、そのまま食べてはいけない食べ物…?」

「そうだよー、イリスちゃん。たこ焼きは、ふーふー冷ましてから食べる物だよ?」

「…つまり、スープと同じ?」

『うん』

 

 思いもしなかったイリゼの言葉に訊き返すと、愛月がそうだと言う。

 ふーふーする。それは、スープと同じ食べ方。

 つまり、イリスは食べ方を間違えていた…?

 

 二人に言われた通り、ふーふーしてから食べてみる。

 すると、全然痛くない。熱いけど、美味しい。とても美味しい。

 それに、中にタコの足らしきものが入っていた。…タコ、いた。

 

「どう?イリスちゃん。ふーふーすると食べられるし、美味しいでしょ?」

「美味しい。外はサクサクしていて、中はトロトロ。タコの足?…の食感も、独特で楽しい」

「わ、結構ちゃんと感想言うんだね…でも、美味しいと思ってもらえてよかったよ」

 

 食べ方の分かったイリスは、二人と食べる。

 少ししょっぱいけど、これも良い。

 二人もはふはふしながら、美味しそうに食べている。

 

「教会とか家の中でゆっくり食べるのも良いけど、外の風を感じながら食べるのも良いよね。…じゃあ、これを食べたら、プラネテューヌ散策再開だよ!」

「おー!」

「おー」

 

 楽しそうな愛月に続いて、イリスも右手を挙げてみる。

 次にどこに行くのか分からない。

 けど、きっと楽しい。イリス一人じゃなくて、イリゼと愛月がいるから。

 

 イリス、もっと知りたい。もっと楽しみたい。

 だから、いっぱい見て、いっぱい遊ぶ。

 イリスの知らない、この街で。




今回のパロディ解説

・反逆の物語の二期第一話
コードギアス 反逆のルルーシュR2の第一話、魔人が目覚める日の事。このシーンでのやり取りは、『大人ピーシェの頑張る話。合同コラボ』絡みですよ。

・『ながらくの〜〜ございました』
ポケモンシリーズの一つ、アルファルビー・オメガサファイアにおけるキンセツゲームコーナーの前に貼られている張り紙の事。ダイパリメイクも無いみたいですね…。

・「〜〜ネプテューヌ?〜〜頑張る人〜〜」
イリスちゃんは知りたい、の作者、ロザミアさんの短編の一つ、『いつものように綺麗な君と』のあるシーンのパロディ。勿論、このネタの許可は取っております。
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