超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第六話 モンスターを見に行こう

 二人が信次元に来てしまったから、今日で三日目。昨日は二人と一緒に街へと出掛けて、遊んだり、食事をしたりして、たっぷりと一日を満喫した。こっちの…信次元の事を殆ど知らない二人が、楽しんでくれるかどうか…というか、きっと不安や心配もある中で楽しめるかどうか気掛かりだったけど、二人は満足してくれたみたいで…私としても、充実した一日だった。

 そして、三日目となった今日。昨日と違って、今日はこれといった予定がなく、別の国の案内もするか、それともプラネテューヌで何かしようか…そんな事を考えていた時、愛月君にこんな事を言われた。

 

「イリゼ。僕、こっちのモンスターも見てみたい。ライヌちゃん以外にも、僕の世界のポケモンみたいに、色々な種類のモンスターがいるんだよね?」

 

 それは、信次元に存在するモンスターへの興味。ポケモンという、異なる世界の…自分の世界のモンスターと日々を共にする愛月君からすれば、その興味は当然の事だと思う。

 

「うん、そうだね。けど、ポケモンに比べると、凶暴…というか、危険な個体が多いかな。勿論、私が見てきたポケモンは世界全体からすれば極一部だと思うし、私の主観に過ぎないけど…」

「そっかぁ…イリスちゃんの次元も、そうなの?」

「…分からない。けど、多分…そう。ミナもブランも、外は危険と言っていた」

 

 別次元と言えど同じブランがいる世界なだけあって、イリスちゃんの次元のモンスターも似た感じな様子。

 さて、それじゃあどうするか。危ないから駄目、って断るのが一番楽だけど、それはしたくない。安全面を考えるなら、イストワールさんに神次元への扉を開いてもらって海男さん達を紹介するか、ベールに頼んで保護しているモンスターを見せてもらうかだけど…前者は更にイストワールさんの負担を増やす事になるし、後者もまだ秘密裏の事だから、流石にそのモンスター達を見学させてもらう…って訳にはいかない。…であれば、やっぱり……

 

「…それじゃあさ、愛月君。生活圏外まで行って、実際に見てみる?」

「え、いいの…?」

「愛月君の気持ちは分かるからね。環境的にも危ない場所とか、強力なモンスターが多い場所に連れて行く訳にはいかないけど、そうじゃない場所でも良いなら、案内するよ」

「う、うん!それだけでも勿論良いよ!ありがとうイリゼ!」

 

 ぱぁっと表情を輝かせる愛月君に、私も軽く微笑んで首肯。モンスターは興味本位で見に行くものじゃないけど…愛月君だって、トレーナーとして色々な経験を重ねてるだろうし、向こうの神次元ではモンスターとの戦闘も経験している。ならば大丈夫だろう、というのが私の考えで…そのまま私は、イリスちゃんにも視線を向ける。

 

「…イリスちゃんは、どうする?やっぱり、怖い?」

「大丈夫。イリゼが駄目と言わないなら、イリスも行きたい」

「あ、そう?」

「イリスも、信次元…のモンスター、気になる」

「…分かった。それじゃあ、準備が出来たら行こうか」

 

 愛月君が興味を持つのは予想出来たけど、イリスちゃんも気になる、というのは少し意外。ライヌちゃんとすぐに仲良くなったイリスちゃんだし、だから他のモンスターも仲良くなってみたいのか、或いは同じモンスターとして見てみたいのか…っと、後者の考えはあまり良くないかもね。実際のところはどうなのか、っていうのは別にしても。

…と、いう訳でやる事が決まった私は、早速準備。それが済んだところで生活圏外まで行ってくるという事をイストワールさんに伝え、改めて私は二人が待っているリビングへ。

 

「いい、二人共。比較的安全な場所に行くとはいえ、万が一の事だってあるから、勝手にどっか行ったりしない事。もしもの時は、ちゃんと私の言葉を聞いてね?」

「分かってるよ、イリゼ」

「イリス、言う事聞く」

「うん、二人共素直で宜しい!…なーんて、ね」

 

 気を付けてはほしいけど、下手に怖がらせると、逆に変な先入観を持ってしまうかもしれない。だから私は真剣に、でもシンプルに言うだけに留めて、二人と共に出発。向かう先は…まずは嘗て、天界からネプテューヌが落ちて斜めに刺さったという、とある森。

 

「んーっ…何だか気分の良い森だね。僕の世界なら、結構色んなポケモンが住んでそうだなぁ」

「森…だけど、見晴らしが良い。モンスターは……いた」

「え、どこ…?」

 

 発見したと言って脚を止めるイリスちゃんに、それを聞いてイリスちゃんが向く方へと目をやる愛月君。私も脚を止めてそちらを見れば、いたのは数体のスライヌ系。

 

「…溶けてる?」

「うん、溶けてるね…イリゼ、あそこにいるのはそういうモンスターなの?ポケモンにも、身体がヘドロで出来てるのとかいるけど…」

「う、うんそういうモンスターだよ。…けど、ヘドロって…それはまた、凄いポケモンだね…」

「ヘドロ……う…」

『……?』

「ヘドロは、多分…美味しくない……」

『……??』

 

 ゲイムギョウ界にも一頭身のナス型モンスターとか、馬鳥とかいう別の世界のマスコットキャラクターを彷彿とさせるモンスターとか、かなり不思議な種類もいるとはいえ、ヘドロで出来ているポケモンというのには流石に驚き…と思っていると、イリスちゃんは何故か困ったような表情に。当然なんだろうと思って訊いてみた私だけど、何でもないらしい。…本当かな……?

 

「あのタイプのモンスターなら、もう少し近付いても大丈夫か…どうする?ここで見る?それとも……」

「近付いてみたい…!」

「…だよね。でも、大きな声は出さないでね?」

 

 という訳で、私達は木や茂みに隠れつつも出来るだけ接近。スライヌ系といってもそのモンスターはライヌちゃんや同族モンスター程可愛くなくて、格好良い訳でもないんだけど…それでも愛月君は、興味深げにそのモンスター達を眺めていた。

 それから暫く森の中を移動し、モンスターを見て、また移動し…を繰り返した後、私達は次の場所へ。道中は私が女神化して二人を運び、場合によってはモンスター観察も空から行って……そうして最後にやってきたのは、遮る物が殆どない草原の小高い丘。

 

「よいしょ、っと。…さて…二人共、ここからは暫く待っていてもらっていい?」

「……?イリゼ、用事?」

「うん、実はそうなんだ。あそこ、見える?」

 

 きょとんとしたイリスちゃんの問いに答え、私が指差したのはやや遠くにある雑木林。それに二人が頷いたところで、私は言葉を続ける。

 

「あそこ、ある事情で少し前からモンスターの群れが住み着いちゃったらしくてね。で、空から見えたと思うけど、近くには整備された道もあって、その事情絡みで道を通る車両が襲われるって事態が起きてるらしいから、その群れの追い払い、ないしは討伐をする予定だったんだ」

「って、事は…女神の仕事?」

「そういう事。ギルドっていうところから教会に回ってきた依頼で……あ、予定があったのに二人の要望を優先した、とかじゃないから安心してね?むしろ逆で、生活圏外に出るなら何か出来ないかなと思って、それでこの依頼を引き受けたって訳だから」

「じゃあ、イリゼ、今から戦う?」

「そうなるね。だから、二人はここにいて。勿論こっちには一体たりとも行かせないけど、距離は取っておいた方が良いから」

 

 愛月君、イリスちゃんと二人の質問にそれぞれ答え、私は真剣な目で二人を見る。二人共素直だから普通に言うだけでも聞いてくれるとは思うけど、これは体裁的な意味での言葉じゃなく、本気のお願いだって事を分かってほしかったから、私は見つめてそう言った。

 そしてその結果、二人は嫌な顔一つせずに頷いてくれた。だから私は安心し…気を引き締める。今二人に言ったのを、有言実行する為に。

 

「イリゼ、一人で大丈夫?」

「勿論。遠くて見辛いかもだけど…もし見えるなら、私の戦う姿をたのしみにしてて。それと…愛月君、イリスちゃんをお願いね?」

「うん、任せて。…頑張ってね、イリゼ」

「ふっ…原初の女神の複製体、その実力を、今一度お見せしよう」

 

 応援に対して不敵に笑い、私は軽く跳んで飛翔。ある程度高度を上げ、丘周辺にモンスターがいない事を確認してから、雑木林の方へと飛ぶ。

 二人には話さなかったけど、事情というのは、次元中を襲ったあの昏睡による横転事故。食べ物を積んでいた数台のトラックが横転し、車両諸共食料が放置された結果、モンスターの餌となり…その近くの雑木林に、群れが住み着いてしまった。この群れがいる限り、ここの道の安全は保たれない訳で…対処しない理由はない。

 

「(さて…群れの長さえ倒せば、取り敢えず群れは崩れるだろうけど、車両を襲う旨み以上の危険があると思わせる為には、長以外もある程度は討伐を…)…っと、早速来たか…ッ!」

 

 数が分からない以上、殲滅は困難。前にもう一人の私が害虫駆除でやったような方法を使えば別だけど、私にそれをするだけのシェアエナジーはない。つまり群れ全体での一定数撃破と、長の討伐が勝利条件になる訳で…と、雑木林に突入し、わざと目立つような飛び方をしつつ思考していたところで感じる、強い敵意。感覚に従い振り向けば、そこにいたのは唸りながら半円状に広がるモンスターの群れ。

 見るからに気が立っている。けどそれも当然の事。今は襲われるのを避ける為にこの道を使う車両が少なくて、この群れからすれば折角の餌が来てくれない状況なんだから。

 

「悪いが、ここから退去してもらう。それが出来ないというのなら、ここで斬り伏せ叩き潰す。…まあ尤も、端から聞き入れる様子はなさそうだが…な」

 

 言葉を締めると同時に、一歩前にあった木の枝を踏み付け二つに割る。その瞬間、乾いた音が周囲に広がり…それを合図とするかのように、モンスター達は私はと襲いかかってくる。私が思っていた通りに。

 

「別に、見栄え重視で戦うつもりはないけど…今は観客もいるんだ、圧倒させてもらう…ッ!」

 

 軽く身体を左前方に倒し…左脚で踏み締めると同時に、右手へ長剣を顕現させて斜めに一振り。初撃、すれ違いざまの袈裟懸けでモンスターの肩口を捉え…そのまま一刀両断する。

 直後、私はその場から跳躍。後に続くモンスター達の攻撃を避け、右手を振り抜く。それにより長剣を投げ放つ事で真下のモンスターを突き刺し、群れが怯んだ一瞬の内に長剣を回収すると同時に、その個体を他のモンスター達へ向けて蹴り飛ばす。

 

「ふッ…はぁああああぁぁッ!」

 

 相手は斧と盾を持つ、比較的小型のドラゴン系モンスター。武器を持ち、それを活用するだけあってそれなりに知性のある動きをしてくるけど…逆に言えばそれは、武器を使うという意味で、私の土俵に乗ってきてくれるという事でもある。

 武器を使ってくるのなら、その弱点を突けば良い。例えば、斧の弱点はどうしても攻撃が大振りになる事。大きさ的にも重心的にも、ある程度の振りを作らなきゃ中々威力のある攻撃を出来ない事。だから、有効なのはカウンター。敢えて大袈裟な攻撃をする事で周りの個体を牽制しつつ、意図的に一部の個体からは隙があるように見せかけ……振り上げて来たところで、振り向きざまに突き貫く…ッ!

 

(この調子なら、群れへの攻撃の方は問題ない。後は……)

 

 喉元を貫いた個体をそのまま押し切り、離れたところで即座に引き抜く。再び振り向くと同時に追い掛けてきた別の個体の一撃を両手持ちの長剣で受け、押し返した直後に片手持ちに変えて即座に横薙ぎ。怯んだところへ顔面への飛び膝蹴りを打ち込んで、胴を踏み台にまた跳躍。今度は私から突っ込んでいき、片手持ちの素早い剣撃で攻撃を躊躇わせつつ、同じくカウンター戦法を狙っていく。

 その戦い方で数分程立ち回り、次第にモンスター達も理解していく。私との間にある、数なんて通用しない「質」の差を。そして群れの攻勢、勢いそのものが落ちてきたところで…群れの長が、現れる。

 

「…これは…流石に少し、手間が掛かりそうだね……」

 

 聞こえてきた、一際低い唸り声。その唸りの主は、武装したモンスター達より数段大きい、巨体のドラゴン。武器こそないけど…その打撃、爪や牙の攻撃一つ一つが、生半可な武器の攻撃よりもずっと強い事は間違いない。

 圧倒してきたとはいえ、まだ群れはそれなりの数が残ってる。大木ならまだしも、然程太くない木なら群れの長はそのままへし折って攻撃してくる事も十分あり得る。なら、ここは……

 

(場所を変える…ッ!)

 

 草木という遮蔽物が多く、多少ながら起伏もある雑木林の中で群れと戦うメリットとデメリットを考え、私はここから出る事を選択。地を蹴り大きく後退し、木々の間を縫うようにしながら一気に雑木林を離脱する。

 予想通り、長を中心にする形で追ってくる群れ。雑木林を抜け、反転しながら着地した私は長を見据えて構え直す。

 ここまでは優勢だったけども、戦いは最後まで分からない。だから、決着となる瞬間まで油断せず…二人の目に、焼き付けてもらおう。私の…オリジンハートの、実力を。

 

 

 

 

「あ…イリゼ、出てきた……!」

 

 ここで見ているように言われて、イリスと愛月は言う通りにしていた。

 群れ、という事は沢山いる筈。まだイリスはそんなに強くないから、言われた通りにして見ている。

 愛月は…イリスより賢いけど、強いかどうかは分からない。でも、ここで一緒に見ていてと言われたという事は、そんなに強くない…のかもしれない。

 

 そう思って見ていたら、イリゼが雑木林の中から出てきた。

 林の中じゃ良く見えなかったけど、今はよく見える。

 沢山のモンスターと向かい合う、イリゼの姿が。

 

「わ、結構多い…けど、イリゼなら大丈夫だよね…」

「愛月は、イリゼの強さ、知っている?」

「うん。凄く強いんだよ?今の姿は勿論だけど、人の姿でも、ゴーリキーっていう物凄く力の強いポケモンと、普通に格闘戦をしてた事もあるし」

 

 こくりと頷いた愛月の顔は、自信満々。

 そのモンスターの事はよく知らないけど、確かに力が強そうな名前。

 けど、今イリゼは剣を持っている。イリゼは、剣があってもなくても強い?

 

「……?盾を蹴った?…あ……」

「三角跳び、ってやつだね。で、あれは…ボレーシュートとエルボー?」

 

 何度か剣を使って攻撃と防御をした後、何故かイリゼはモンスターの持つ盾にキック。

 あれは意味ない、モンスター何も痛くない。

 イリゼ、失敗した?

 

 …と、思ったらイリゼは後ろに跳んで、脚と肘で二体を攻撃。

 意味ない、違った。

 凄い、これは予想外。

 

「…興味深い……」

「興味?イリスちゃん、あのドラゴンっぽいモンスターが気になるの?」

「それもそう。けど…イリゼの戦い方、興味深い。とても、勉強になる」

 

 一番大きいモンスターの、鋭い爪での振り下ろし攻撃。

 それをイリゼは後ろへの宙返りで避けて、モンスターの腕に剣で一撃。

 横から斧を振るってきたモンスターの攻撃は、真上に跳んで、避けた後すぐ斧を踏み付けて、そのままモンスターの顔をぶすり。

 

 避ける事は、大事。

 でもイリゼは、避けているだけじゃない。避ける動作が、次にする行動に、攻撃に繋がっている。

 だから、イリゼは止まらない。

 

「あの武器持ってるドラゴン達は、相手にならないって感じだね…。…けど、大きい方は……」

「…大きい方は?」

「うん、鱗が硬いのか、イリゼに斬られてもあんまりダメージ入ってる感じないでしょ?…まあ、そもそもイリゼは当たってすらいないから、先にあのドラゴンのスタミナが切れるか、周りのドラゴンが皆倒されちゃうかすれば、イリゼは鱗に覆われてない部分に回り込んで一気にダメージ与えるんだろうけどさ」

 

 愛月は、戦いをよく見ている。

 ちゃんと相手を見ないと、戦いは出来ない。

 つまり…やっぱり、愛月も強い…?

 

 …と、思っていたら……

 

「……?え、あれって……」

「…ブランと、同じ武器…」

 

 両手持ちで振り抜いて一体、片手持ちの連続斬りで一体倒して、それから身体を回して剣を投げたイリゼ。

 投げた剣はモンスターが盾を向けるより早く突き刺さって…でもイリゼは、そのや剣を取りに行かない。

 代わりに身体を軽く捻って…そこに、大槌が現れる。

 

「わっ、豪快…そっか、持久戦じゃなくて、重い打撃で鱗ごと叩き潰す事にしたんだ…」

 

 ぐるりと空中で一回転して、肩に一撃。

 もう一回転して大きいモンスターから離れて、着地後すぐに槌の持ち手、棒の部分の先端で小さい方のモンスターをどすり。

 揺れるように、滑るようにイリゼは動く。

 

「…………」

 

 イリスは知っている。重いもの、大きいものには、引っ張られる。

 重いから、大きいから、ふらふらする。

 上手く動かせても、引っ張られて、次の行動を始めるのが大変。

 

 でも、イリゼは違う。

 ふらふらするのを回避に、引っ張られるのを移動に使っている。

 今のイリゼは大槌を振って、流れるみたいに動いている。

 

「…行動を流れにする、相手の動きを利用する、困るところを逆に活用する……」

「え?イリスちゃん…?」

「…理解した。イリゼの戦い方は、無駄がない」

 

 無駄がないという事は、沢山の行動、時間を有効に使っているという事。

 だから、イリゼは強い。

 

 あれと同じ事を、イリスも出来る?

 …分からない。けれど、出来るように頑張る。

 

「そ、そうだね……あっ、今思いっ切り入った!しかもイリゼ、結構容赦無い…!」

「あれはとても痛そう…」

 

 後ろから引っ張れるような体勢で大槌を持ったイリゼは、大きく斜め前に突進をして大きいモンスターの吐く炎を回避。

 更に走るイリゼの前にまた腕が振り下ろされるけど、また跳んだイリゼは腕を踏んで、横から顔を大槌で一発。

 しかもそこから勢いを使って回転して、今度は真上から頭をどすん。その後は手を離して、ぐるりと回って、大槌の反対側を踵で押してもっとどすん。

 

 もしイリスがやられたら、身体ぐちゃぐちゃ…。

 

「…イリゼ、勝った?」

「…ううん、待って…これは……」

 

 ばごん、どすん、どすんとやられた大きいモンスターは、ふらふらした後前に倒れる。

 けど愛月は、まだ真剣な顔。

 どうしてだろうと思って、前を見て…聞こえた。離れた場所のイリス達にも聞こえる、大きな咆哮が。

 

「……!あれ、もしかして…逃げる気…!?」

「逃げられる、良くない?」

「え、っと…多分!」

 

 翼を広げて飛び上がった大きいモンスターは、イリゼの所から離れていく。

 周りの小さいモンスターも、イリゼから逃げていく。

 イリゼは剣を拾い直して、凄い勢いで振ってるけど…空のモンスターには届かない。

 

 …どうしよう。

 イリス、何かした方がいい?

 でもイリス、飛べない…。

 

「…イリスちゃん、ここで待ってて!」

「えっ?…愛月、駄目。危ない。戦いは強くないと危険……」

「スター!あの空のモンスターの顔…いや、少し前にスピードスター!」

「ブーイっ!イー…ブイブーイッ!」

「……!?」

 

 ふわり、と横から感じた風。

 振り向けば、いつの間にか駆け下りている愛月。

 まさか愛月、戦う気?

 

 …と思ったけど、愛月は走りながらスターを出した。

 呼ばれたスターは元気良く出てきて…そのスターの周りから、キラキラした光が飛んでいく。

 ……星型の光?スターは、色んなものを吸い込めるあの生物だった…?

 

「今だよッ、イリゼッ!」

「……!」

 

 いきなり目の前に飛んできた星型の光に、びっくりして止まる大きいモンスター。

 愛月はイリゼを呼んで、それにイリゼは振り向いて…次の瞬間、イリゼは飛び上がった。

 爆発したみたいな、そんな速さで。

 

「貴様を見逃すつもりはない…落ちろッ!」

 

 一気に追い付いたイリゼは、振り返ってまた炎を出そうとした?…大きいモンスターの上を通り過ぎる。

 …じゃない。通りながら、モンスターのお腹を斬り裂いていた。

 お腹から首のところまでを、ばっさりと。

 

 終わった。これは、イリゼの勝ち。

 けど、大きいモンスターはまだ生きてる。

 ちょっとだけ、息がある。

 

「…ふぅ…ありがとう、愛月君。それにスターも。ふふ、助かったよ」

「ううん。実は、僕も何か出来たらな…って思ってたんだ。…あ、でも…残りのモンスターは……」

「あっちは大丈夫。もうかなりの数を倒したし、これだけ一方的に蹴散らされたんだから、ここでまた群れを作る事はない筈だよ」

 

 降りてきたイリゼと、愛月は合流。

 スターは、何だか自信満々な顔で愛月の周りを回っている。

 

 …………。

 大きいモンスター、倒れている。

 イリスの知らない、イリスの次元とは違うモンスター。

 

「…近くで見ると、やっぱり大きい……」

「へ…?…あ、駄目だよイリスちゃん。どうせもう虫の息だと思うけど、最後に何かしてくるかもしれないから離れて……」

 

 近付いてみる。

 モンスター、イリスを見ていない。気付いていない。

 だから……食べてみる。

 

「がぶり」

『えっ?』

 

 首のところまで行って、そのままかぶりつく。

 もぐもく、もぐもぐ…もぐもぐ……。

 ……──!

 

「い、イリスちゃん…何をして……」

「…凄い。これはとてもジューシー。焼いたお肉の味がする」

「お、お肉の味…?ま、まさかイリスちゃん……」

「結論、これは非常に美味。…イリゼと愛月も、食べる?」

「ひ……っ!?…きゅぅ……」

 

 びっくりした声のイリゼと、震えた感じの声の愛月。

 味はよく分かった。これだけあれば、イリゼと愛月も一杯食べられる。

 そう思って振り返ったら…愛月、倒れる。

 

「ぶ、ブーイっ!?」

「うわぁ愛月君!?ちょっ、大丈夫!?そしてイリスちゃんも何をしているの!?」

「…味見?」

「それは見れば分かるよ!?行動じゃなくて動機を訊いてるんだよぉぉおおおお!」

 

 すとんと倒れた愛月をイリゼが支えて、イリスを見たスターはぎょっとした感じの顔をしていて、とても騒々しい。

 愛月は具合が悪いのかもしれない、イリスは心配。

 

 でも近くに行こうとして、イリスの顔から汁が垂れる。

 …これは、食べる時に付いたもの?…う、マフラーが汚れないように、拭かないと…。

 

「…イリゼ、愛月大丈夫?具合、悪い?」

「いやこれはイリスちゃんのせいだからね!?え、待って…イリスちゃん、普段からそういう事しているの!?」

「あ……。…ブランから食べるなって言われていたの、忘れていた…」

「ちょっ…ショックが大き過ぎるから、そういうのは先に言うかちゃんと我慢するかしてよぉぉぉぉ……」

 

 がっくり項垂れるイリゼを見て、イリスは反省。

 ブランに言われていた事を、忘れていた。

 これは、良くない。

 

 …でも、あのモンスターはとても美味しかった。

 また食べたいと思う味だった。

 イリスの次元にも、同じモンスターはいるのだろうか。…いるなら……楽しみ。




今回のパロディ解説

・馬鳥〜〜マスコットキャラクター
FFシリーズにおけるマスコットキャラクター(モンスター)、チョコボの事。原作シリーズには、本当に「馬鳥」というモンスターがいるんですよね。

・色んなものを吸い込めるあの生物
星のカービィシリーズの主人公、カービィの事。スピードスター、基本は身体の周囲から放つ技ですが、口から出していたら完全にカービィの星型弾ですね。
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