超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第七話 今日も色々あって

 改めて見るイリゼの戦い方、イリゼの強さは、本当に圧倒的だった。ただパワーがあるとか、スピードが凄いとかじゃなくて…なんというか、イリゼが主役の舞台みたいだった。グレイブが必殺技で相手を取り巻き諸共吹っ飛ばすヒーローだとしたら、イリゼは巧みな立ち回りで殺陣を繰り広げる女優…僕の目には、そう見えていた。

 負ける事はまずないと思ってたし、実際そうだったと思う。けど、他の相手もいる中で、飛んで逃げる相手を逃さず倒すのは、イリゼだって大変な筈。だから僕は、スターに手伝ってもらった。群れのボスらしいモンスターは硬いから、無理に撃ち落とす事は狙わず、わざと当たらない…でも目の前を通るような位置に攻撃をさせる事で、驚かせる事で動きを止めた。それで止まったのは凄く短い間だったけど、その間にイリゼは距離を詰めて…すれ違いざまに、鱗に覆われていない部分を斬り裂き戦いを終わらせた。

 そこまでは本当に凄かったし、イリゼの事を流石だなぁと思った。そのイリゼへ、少しだけど援護が出来たのも嬉しかった。元々の目的の、信次元のモンスターを見たいっていうのも果たせたから、ここまでは本当に良い経験が出来ていて──。

 

「……ん、んんぅ…?」

 

 目が覚める。僕の身体は、緩くゆらゆらと揺れていて…何だか温かい。温かいけど…少し、頬と首とがくすぐったい。

 

「…あ、起きた?」

「あ、いりぜ…おはよぉ……」

 

 少し近くから聞こえたイリゼの声に、言葉を返す。軽く目を擦って見回すと、ここは外で、横を向けば鼻が頬に触れそうな程イリゼの顔が近くにあって……

 

「…って、え、ぅええええぇぇぇぇッ!?」

「おわっ…!」

 

 びっくりした。びっっっっくりした。だ、だってそうでしょ!?おんぶだよ!?僕、何故かイリゼにおんぶされてるんだよッ!?

 

「ど、どどっ、どういう事!?なんで!?どうして!?」

「あ、う、うん。一旦落ち着こうか、愛月君。…えと、降りる?」

 

 イリゼからの言葉に、僕はぶんぶんと首を縦に振る。あ、当たり前だよっ!降ろしてもらえないと、恥ずかし過ぎて落ち着けないもんっ!

 

「よいしょ…っと。愛月君、体調はどう?具合悪かったりはしない?」

「うぅ…うん、具合は大丈夫…。でも、どうして僕はイリゼに……」

「…愛月、覚えてない?」

 

 降ろしてもらい、もう一度見回して見れば、ここは外…というか、草原を走る道路の上。

 ええっと、僕はイリゼに頼んで、モンスターを見に来たんだよね?で、それからイリゼはモンスターの群れの退治に行って、それを僕達は見ていて…と、順番に思い出す中、掛けられた声。反射的に振り向いた方向にいたのは、イリスちゃんで……イリスちゃんを見た瞬間、僕は思い出した。寝てしまう…じゃない、気絶する直前にあった事、それにその時見たものを。

 

「う……で、でもそっか…イリスちゃんは、モンスターなんだもんね…」

「…愛月、もしかして、嫌な思いした?」

「え、と…それはその……」

「…ごめんなさい。イリス、イリゼから聞いた。愛月が倒れたのは、イリスのした事に、凄くびっくりしたからだと。…イリス、愛月の事、考えてなかった。だから…ごめんなさい……」

 

 嫌な思いをしたのか。…その問いに、僕はすぐには返せなかった。不愉快だった訳じゃないけど、気絶しちゃったのは事実だから。

 そんな僕を見て、イリスちゃんはしゅんとする。表情は変わってないと思うけど、雰囲気がしゅんとしていて…これは、嫌だなと思った。だって、イリスちゃんは別に、僕を気絶させようとしてした訳じゃない…と、思うから。

 

「…うん。ほんと、びっくりしちゃったよ。…だけど、イリスちゃんはわざとびっくりさせようとしたんじゃないんだよね?」

「そう。イリス、あのモンスターの事、気になった。だから、食べた…」

「なら、もういいよイリスちゃん。僕、怒ってないから?」

「本当?…また食べても、いい?」

「そ、それは…その、食べてもいいけど僕には見せなくていいからね…?」

「分かった、気を付ける。…良かった、やっぱり愛月は優しい」

 

 こくん、と頷いたイリスちゃんは、安心してくれた。安心してくれたって事は、きっと僕と仲良くしていたいって事で…もしその通りなら、嬉しい。…や、やっぱりちょっと、イリスちゃんの…捕食?…は見たくないけど……。

 

「…さて。それじゃあ愛月君も目を覚ました事だし、ここからは飛んで戻ろうか」

「わーい」

「へ?…あ、もしかして大変だった?」

「違う。イリス、飛ぶの好き。だから、わーい」

 

 両手を挙げて喜びを表すイリスちゃんだけど、今も顔は無表情のまま。ジェスチャーは大喜びのやつなのに、顔はそのままだから…何だろう、凄く不思議…。

 

「…あれ?どうして僕が気絶してた間は飛ばなかったの?」

「いやほら、意識がない状態じゃ、当然ちゃんと掴んでてもらえないし、いきなり身体がガクッてするかもしれないでしょ?一人ならまだ何とかなるけど、もう一人いる状態でそれだと、流石に危ないからね」

「そっか、それは確かに…」

 

 僕が理解したところでイリゼが女神化をして、そのイリゼに運んでもらってプラネテューヌの街へと戻る。空は、飛行タイプのポケモンの背中に乗って飛ぶ事もあるけど、抱えられて飛ぶっていうのはやっぱりポケモンとは違う感じ。抱えててくれるのが女神様だからか、凄く安心感があるし…イリスちゃんも、抱えられると暖かいから好きだって言っていた。マフラーもそうだけど、イリスちゃんって暖かいの好きなんだね。

 

「…っと、そうだ。プラネタワーに戻る前に、一ヶ所寄り道してもいい?」

『寄り道?』

「うん。イリスちゃんは、知ってるかな?ギルド、ってところなんだけど」

 

 建物がもうはっきりと見える距離にまで来たところで、思い出したようにイリゼが言った言葉。それを聞いて、僕は思った。気になった。ギルドって、どういうところなんだろう…って。

 

 

 

 

 クエスト、というものがあるらしい。

 それは誰かからのお願いで、簡単なものから難しいものまで、色々あるんだとか。

 そのお願い…クエストと、それを受ける人の仲介?…をするのが、ギルドだとイリゼは言っていた。

 

「…と、いう事なので逃げていった群れの残りが再び現れるという事もないと思います。ただ万が一という事もあるので、暫くは警戒しておくようにお伝え下さい」

 

 イリゼはギルドの受け付けで、そこの人と話している。

 それを、イリスと愛月は待っている。

 

 ここの椅子は、少し高い。

 だから、足をぷらぷらさせる事が出来る。

 …やはり、楽しい。

 

「イリスちゃん、ここには色んな人がいるね」

「ん、人、多い。一人の人も、何人かといる人も、色々いる」

「だね。…あ、そこの人は見るからに強そう。モンスターを倒すクエストを受けに来たのかな?」

「強そう…?あの人、大きい。けど、強いブランは、あの人よりずっと小さい。…つまり、強さは背丈と関係がない?」

「え、あ…そ、そうだね。あの人は、僕が強そう、って思っただけで、実際に強いのかどうかは分からないけど…」

 

 新らしい場所は、知らないもの、知らない事が多い。

 知らないが多いは、知る機会が多いという事。

 それはとても良い。イリスの知識が深まる。

 

 そこでふと横を見たら、愛月の頬が緩んでいた。

 

「…愛月、楽しそう」

「へ?僕、楽しそうにしてた?」

「してた」

 

 言われた愛月は、きょとんとした顔。

 訊き返されたからそうだと伝えると、最初に愛月は「そっかぁ」と一言。

 それから愛月は前を見て…ちょっと恥ずかしそうにしながら、顔の向きをこっちに戻す。

 

「…あのね、僕は周りから子供だって思われたり、グレイブの弟みたいに見られる事が多いんだ。まぁ、子供なのはその通りなんだけど…やっぱりそういう見方ばっかりされるから、イリスちゃんと話すのは楽しいのかも。イリスちゃんとだと、お兄さんになったみたいな気分になるから」

「お兄さん?愛月は、イリスの兄?」

「あはは、そういう事じゃなくて、歳上…って意味だよ。…って、こういう事を考えるのも、やっぱり子供っぽいのかなぁ……」

 

 そう言って、愛月は頬を掻く。

 照れ臭そうな顔をする愛月。

 

「…愛月は、お兄さんになりたい?」

「う、うーん…そう言われると、どうなんだろう…お兄さんみたいに思われたら嬉しいし、やっぱりそうなのかなぁ…?」

「愛月も、よく分からない?」

「あはは…うん、よく分からないや」

 

 今度は、肩を竦めてちょっと笑う。

 自分の事なのに、よく分からない?

 

 …う、難しい…愛月に分からない事なら、イリスにはもっと分からない…。

 

「愛月、凄く難しい事を言っている…」

「そ、そうかな?えっと、変に悩ませちゃったならごめんね…」

「……でも、愛月はイリスと仲良くしてくれる。知らない事も、教えてくれる。愛月といるのは、楽しい。だからイリス、愛月の事、好き」

「イリスちゃん…うんっ。僕もイリスちゃんの事、好きだよ」

 

 色んな顔をしてきた愛月だけど、今度は笑顔。

 にっこりした顔で、僕も好きだと言ってくれた。

 

 嬉しい。

 胸のところが、ぽかぽかする。

 

「二人共、お待たせー……って、あれ?二人共、何かいい事あった?」

「え、どうして?」

「いや、二人共何となく、嬉しそうな雰囲気してたから」

 

 そこで戻ってきたイリゼ。

 …そうだ。

 

「イリゼ」

「うん、どうしたのイリスちゃん」

「イリゼも、色々教えてくれる。優しいし、楽しい。だからイリゼの事も、好き」

「へっ?…あ、えと…ありがとね。私も好きだよ、イリスちゃん」

 

 イリスは愛月の事好きだけど、イリゼも好き。

 だからイリゼに伝えると、イリゼも笑ってくれた。

 

 やっぱり、嬉しい。

 笑ってくれると、嬉しい。

 

「イリゼ、ここでの用事は終わったの?」

「そうだよ。ごめんね、ほんとにただただ待たせちゃって」

「ううん、大丈夫。イリスちゃんと、色々話してたから。だよね?イリスちゃん」

「ん。愛月と、色々話した」

「そっかそっか。それじゃあプラネタワーに戻るまでの道すがら、その話でも訊こっかな」

 

 こくりとイリスが頷くと、またイリゼはにこりと笑う。

 …違った。イリスだけじゃなくて、愛月も笑ってる。

 何故かは分からないけど…笑ってるから、よし。

 

 もうイリゼの用事は終わったらしい。

 ならここにいる理由はないから、ぴょい、っとイリスは椅子から降りて……

 

「あ…い、イリゼ様…です、よね……?」

 

 その時知らない人が、イリゼに話し掛けた。

 イリゼの知り合い…じゃ、ないみたい。

 

「貴女は…確か、あの時話を聞いた……」

「はい、そうです…!覚えていてくれてたんですね…!」

「ふふっ、勿論ですよ。…それで、どうかしたんですか?」

「どうも何も、イリゼ様が言った通りになったんです…!数日前、不思議な光が見えた後すぐに、私の家族が…!」

 

 興奮した様子で、その人はイリゼに話をする。

 何の話なのかは、さっぱり分からない。

 けど、それを聞いたイリゼはぴくりと肩を震わせてから…笑う。

 

「…それは、良かったです。貴女が、人が笑顔になってくれる事…それが私達女神の、幸せですから」

「はい、はい…!本当に、本当にありがとうございます…っ!」

 

 ぺこぺこと何度も頭を下げて、それからその人は去っていった。

 見送るイリゼの顔は…凄く、穏やか。

 

「…イリゼ。今の人って……」

「…うん。これもあの、空の城に纏わる事でね…愛月君やイリスちゃんの世界もそうだと思うけど、信次元もほんと、色々あるんだ」

 

 そういうイリゼは、遠くを見るような目をしていた。

 でも、すぐに元の顔に戻って、またイリス達を見る。

 

「…なんて、言われても困るよね。大丈夫。大変な事、予想もつかなかった事があったりもしたけれど、私は元気です…じゃなかった、何とかしてきたし、これからも何とかしてみせるから」

「…だよね。前の時もそうだったけど、僕はイリゼの事、信じてるから」

「ありがと、愛月君。…でもその前の時は、『大丈夫なの…?』って訊いてなかった?」

「うっ…それはほら、信じてても心配になったりする事はあるし……」

「あはは、ごめんごめん冗談だよ。…その気持ちは、私にも分かるから」

 

 イリゼと愛月が、淀みなく話す。

 まだ知らないが多いイリスには、中々出来ない事。

 

 羨ましい。

 でも、それは何故?

 知っている事が多いから?それとも、こうして話せる事が羨ましい?

 

『…イリスちゃん?』

「……?イリゼ、愛月、どうかした?」

「ううん。イリスちゃん、ぼーっとしてるように見えたから呼んだだけだよ。考え事?」

「そう。けれどもう大丈夫。…帰る?」

 

 答えたイリゼに頷いて、イリゼもイリスの問いに頷く。

 今度こそ、プラネタワーに帰る。

 …帰る?

 

 イリスが帰るのは、イリスの次元の、ルウィーの教会。

 だから、この場合は、戻る?

 …言葉の使い分けは、難しい。

 

「さて、ここからは歩きでも良いかな?」

「ん、構わない」

「大丈夫だよ、イリゼ」

 

 そうしてイリス達は、プラネタワーへ戻った。

 昨日に続き、このお出掛けでも見るものが色々あった。

 戻ったら、その次は…何をするんだろう?

 

 

 

 

 モンスターを見たいという愛月君の要望に応え、それと共に教会へ送られてきたクエストもこなし、色々あったけど何とかなった…夜。最初の日に賑わっていた私の部屋は…今日も賑わっている。

 

「ブーイっ!」

「ちーるっ!」

「わー」

 

 仲良く遊ぶるーちゃんとスターに、その鳴き声に応じて声を出している(遊んでる…?遊んであげてる…?)イリスちゃん。どうもイリスちゃんはポケモン…ゲイムギョウ界以外のモンスターともすぐに仲良くなれるらしく、一昨日会ったばかりとはとても思えない仲の良さ。勿論るーちゃんは元々人懐っこい…いや、イリスちゃんは正しくはモンスターだけど…でもるーちゃんはライヌちゃんや、向こうで出会ったポケモンとも割とすぐに仲良くなったし…ごほん。…人懐っこいけれど、それでもやっぱり私の目には、最初から警戒や不安を抱かれていなかったように思う。

 

「ぬらぁ…ぬふふぅ……」

「ふふっ。僕の作ったぬいぐるみ、気に入ってくれた?」

「ぬらっ…!?……ぬ、ぬら…」

 

 ちらりと視線を移してみれば、そこには飾ってあるいりぐるみ…つまり、私からすれば直前の一件で愛月君が作ってくれた私のぬいぐるみを見て、何だかほっこりとしている様子。

 そしてそれを見る製作者、愛月君もご満悦な様子。話し掛けられたライヌちゃんは驚いて距離を取ってしまったけど、びくびくしながらもライヌちゃんは頷いていて…悲しいけど嬉しい、そんな感じの表情を愛月君は浮かべていた。

 

(…良かったな。二人共、ここを楽しんでくれてるみたいで)

 

 それぞれ楽しそうにする二人…それにスターを見て、私は素直に安堵する。

 これまで私は、何度も次元移動を経験してきた。でも、突発的な次元移動で誰かがやってくる、その人に手を貸すという側になったのは初めてで、だから不安もあった。帰れるまでの間、二人が安心して過ごせるか、ちゃんと帰れると思っていられるか…って。

 でも、その不安は取り越し苦労に終わった。勿論、不安なんて欠片もない…とは限らないけど、少なくとも今、二人は楽しそうにしている。ここまでも、プラネテューヌでの生活を楽しんでくれていたと思う。だからほんとにほっとしたし…私自身、楽しめている。

 

「ちる?ちるる〜」

「ブイ?」

「あ、るーちゃん…るーちゃん、またイリゼの頭に乗った…」

 

 そんな事を考えていたら、こっちを見たるーちゃんがぱたぱたと飛んで私の頭へ。ちょこんと私の頭に乗った事で、遊んでいたイリスちゃんとスターの視線も私の頭上へ。

 

「るーちゃんは、私の頭がお気に入りみたいでね。愛月くーん、これってチルット全体の傾向なんだよね?」

「あ、うんそうだよ。人をあんまり怖がらなくて、そうやって帽子みたいに振る舞うのが好きで、凄く綺麗好きなのが、チルットってポケモンなんだ」

「おー、愛月詳しい。愛月は、ポケモン博士?」

「あははっ、博士なら確かに僕の世界にいるけど、僕は博士でも何でもないよ。単に、図鑑を読んで覚えていただけだもん」

「図鑑?図鑑は、イリスもよく読む。あれは良いもの。辞典と同じで、読めば読む程知識が手に入る」

『えっ、辞典…?』

「そう、辞典」

 

 けろっとした顔で答えるイリスちゃんに、私も愛月君も目をぱちくり。…分かる。図鑑も辞典も情報が詰まっているものだし、他の書物と同様に良いものだと思う。でも今の口振りだと、図鑑はともかく辞典までも「何か気になった時にだけ開く」ではなく、「読書の対象として読んでいる」ようで…そ、それは楽しいのかな…?某国民的RPGの大辞典とか、某狩りゲー大辞典とかなら、ついつい読み込んじゃうのも分かるけど……。

 

「…と、とにかくるーちゃんはそういう子なんだ。可愛いでしょ?」

「うん。るーちゃんも、ライヌちゃんも、スターも可愛い」

「だね。るーちゃーん、よしよーし」

「イリスも、よしよし」

「ちるぅ?るちる〜♪」

 

 ベットに座っている私の頭上に手を伸ばし、愛月君はるーちゃんをよしよしと撫でる。逆側からはイリスちゃんもなでなでとしていて、撫でられたるーちゃんは嬉しそうな声で鳴く。…私視点だとまるで私が撫でられてるようにも見えるから、少し恥ずかしいけど…二人もるーちゃんも嬉しそうだから、ここは我慢。

 その内羨ましくなったのか、ライヌちゃんがぴょこぴょこ跳ねて私の足元に。そこからぴょこんと大きく跳んで、私の太腿にすとんと着地。そこで止まって、くりくりした目で私の事を見上げてくる。…うーん、可愛い。凄く可愛いし、ライヌちゃんのひんやりした身体が太腿に触れて気持ちも良い。

 

(…あ、勿論るーちゃんも可愛いし、ふわふわの翼が心地良いんだよ?…って、私は誰に言ってるんだろう……)

「ライヌちゃん、後ろ姿も可愛い」

「ぬらら?ぬ〜らぁ〜…」

「わぁ、尻尾がゆらゆら揺れてる…イリスちゃん、良いなぁ……」

 

 そのライヌちゃんもイリスちゃんが撫でれば、同じく嬉しそうにのんびりとした鳴き声を上げる。驚かせたくないという優しさからか、愛月君は触れてこそいないけど、凄くライヌちゃんの事を見ていて……

 

「ブーイ、ブーイっ……ヘブッ!」

「うぇ?あ…ご、ごめんねスター…僕はスターの事も大好きだよー…?」

 

 唯一取り残される形となっていたスターは、トレーナーの愛月君がるーちゃんやライヌちゃんばっかり見ている事で拗ねてしまったのか、不機嫌そうな声を出していた。…大丈夫。君も可愛いよ、スター。

 

「……♪イリゼ、イリスは楽しい」

「そう?それは良かった。私も楽しいし、ライヌちゃんやるーちゃんも同じ気持ちだと思うよ」

「それなら、イリスは嬉しい。一昨日も、昨日も楽しかった。多分、明日も楽しい」

「うんうん、明日もそうなったら……」

 

 そうなったら良いよね。…そう、私は言おうとした。でも、私は気付く。

 二人が信次元に来てから、明日で四日目となる。そして明日中に、イストワールさんの言っていた「三日」となる。イリスちゃんと愛月君、二人の元居た次元と世界の場所を突き止めるのが順調に進んでいた場合、明日にも帰還の目処が立つ訳で……そうなれば、二人との時間は明日が最後になるかもしれない。

 勿論、それは望ましい事。二人は帰れなきゃ困る訳だし、時間の流れによっては、二人を知る人達が心配しているかもしれないんだから。それに、別次元や別世界を探すのは簡単な筈がないんだから、明日じゃまだ終わらない可能性もある。それでも、やっぱり…明日はイストワールさんから、何かしら情報が上がってくる筈。

 

「…イリゼ?今度はイリゼが、考え事?」

「今度は?…あぁ、そっか、そうだったね。まあ、そんなところかな」

「ふー…二人は今、何の話をしているの?」

「何、って言われると…雑談、だね」

 

 思考に耽りつつあった私は、イリスちゃんの問い掛けで意識を目の前の事に戻される。スターに機嫌を直してもらい、今は両腕で抱っこしている愛月君もそのタイミングで戻ってきて、不思議そうにしている二人へ私は軽く肩を竦める。

 そうだ。明日何かしらある事は間違いない。だけど、それは別に嫌な事じゃないし、表現としてはアレだけど…どうしたって、向こうからやってくるような事。だから気にしても仕方ないし…それなら私は、普通に楽しみたい。皆と楽しもうと思ってる。だって私は、この「次元移動」という事故を、それでも楽しい事も沢山あったと、二人に思ってもらいたいから。




今回のパロディ解説

・「〜〜したけれど、私は元気です〜〜」
魔女の宅急便のキャッチフレーズのパロディ。じゃなかった、とは言っていますが、イリゼは元気です。今日もイリゼは元気なんです。

・某国民的RPGの大辞典
ドラクエシリーズ及び、そのネット上におけるまとめwikiの事。下記のもう一つのパロディやゲームカタログwikiなんかは、ほんと読み出すと中々止まりませんね。

・某狩りゲー
モンハンシリーズ及び、そのネット上におけるまとめwikiの事。文章中のリンクや関連項目から飛びまくって、気付けば本来の目的とは全然違うの読んでたりしますよね。
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