超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第十話(コラボ編最終話) その日へと誓った約束

 イリゼと愛月がプラネテューヌに行くと聞いたから、イリスも行く事にした。

 よく分からないけど、今はそうしたいような気がしたから。

 だから一緒にプラネテューヌに行って…愛月の友達と、また知らないポケモンに会った。

 

 なんだか愛月より強そうなグレイブと、白とオレンジの、前に戦った狼みたいなモンスターより強そうなソルガレオ。

 またイリスは、知らない人と、知らない生き物に出会った。

 沢山出会って、沢山知った。ここで、信次元で、いっぱい、いっぱい。

 

「…と、いう訳でブラン…というかミナさんから、『今ではもう、着く頃には夜遅くになってしまう筈。イリスさん達の事を思えば、またこちらに来る事は避けるべきです』…って言われたんだけど、二人はどう?やっぱりルウィー行きたい?」

「…イリゼ、何がどう『という訳』なの?」

「え、それは場面転換や次の話に移った際のテンプレ的表現……ってしまった、余計な説明をしてしまった…」

「……?」

 

 答えてくれたと思いきや、がっくりとするイリゼ。

 どうしてがっかりするのか、想像も付かない。

 

「…こ、こほん。ともかく、二人の気持ちとしてはどう?」

「僕はここで大丈夫だよ。どっちにしろ、僕達は泊めてもらってる側だしね」

「イリスも、それでいい。ミナの言う事だから」

「そっか、それは良かった。…で、グレイブ君。今日は取り敢えず泊まる…んだよね?」

「おう。折角だし、ちょっと位は俺も…えぇと、プラネテューヌだっけ?…を観光してみたいしな」

 

 ルウィーで、ミナ達といられないのは残念。

 でも、イリゼと愛月がいるから、ここも嫌ではない。

 だからイリスは頷いて、愛月とグレイブも頷いて、それで決定。

 

 そうしてイリス達は、いつもみたいにイリゼの部屋へ。

 …あ、でも、お風呂入らないと……。

 

「でも、そっかぁ…まさか朝にいつ帰れるか分からないってなったものが、夜には解決するなんてなぁ……」

「なんだ、不満か?」

「別にそういう事じゃないよ。……あ、イリゼ。お願いかあるんだけど、いいかな…?」

「お願い?え?」

 

 廊下を皆で歩いていると、愛月はイリゼに向けてちょいちょい。

 少し屈んだイリゼの横に回って、耳元でイリゼへ内緒話。

 …何を言っているのか、気になる。

 

「…………」

「あ、うん。それなら多分プラネタワーの…っと、こらこらイリスちゃん。聞こうとしちゃ駄目だよ?」

「う、気付かれた…ごめんなさい…」

「いや、そりゃこの状況で後ろに回り込もうとされれば気付くよ…」

 

 何か聞こえる前にイリゼから制止され、イリスは断念。

 流石イリゼ、今のイリスには敵わない。

 

 けれど、ただ後ろに回り込むだけでは駄目だと分かった。

 一つ勉強になったから、良しとする。

 

「ははっ、イリスは不思議な子だな」

「イリス、不思議?…イリスは不思議の国のイリスだった……?」

「へ……?」

「……?」

「え、えっと…イリスちゃん、私もよく分からないけど、多分それは勘違いだね…」

 

 不思議と言われて、思い出したのはある絵本。

 イリスは不思議の国の子?…そう思ってグレイブに訊いたものの、目をぱちくりさせるだけ。

 答えが得られなかったイリスが見つめていると、代わりにイリゼが答えてくれた。

 

 イリスは不思議の国の子ではないらしい。

 …ん、そう。不思議の国のイリス、違う。

 イリスは、ルウィーの子。

 

「…イリゼ、今のは俺の訊き方が悪かったのか…?」

「ううん、イリスちゃんはちょっと独特な子だからね…」

 

 そんな感じの話をしてる内に、イリゼの部屋に到着。

 いつもみたいにライヌちゃんとるーちゃんが出てきてくれて、愛月もボールからスターを出す。

 

「…お、るーちゃんじゃないか。久し振りだな」

「ちるぅ?…ちる、ちる〜!」

「ぬらら……!?」

「あ、しまったそうだった…グレイブ君、この子の説明をするね」

 

 初めて来た時みたいにまた、イリゼはライヌちゃんの事を説明。

 それが終わるとグレイブはるーちゃんを撫で始めて、愛月はスターを抱っこして、イリスもライヌちゃんをなでなで。

 それを見ているイリゼは、嬉しそうに小さく笑う。

 

 イリス、楽しい。

 皆も、楽しそう。

 ……でも。

 

「…………」

「…イリスちゃん?」

 

 どうしてか、もやもやする。

 楽しいのに、いつもとは何か違う。

 これは、どうして?

 

「イリスちゃん、イリスちゃーん?」

「……あ…愛月、どうかした?」

「それは僕の台詞だよ。さっきからずっと、ぼーっとしてたみたいだったから…」

「ん…大丈夫。イリス元気」

「ぬらー…?」

 

 そう思っていたら、愛月がイリスを呼んでいた。

 ライヌちゃんも、不思議そうにイリスを見ていた。

 

 ん、イリス元気。

 それは、嘘じゃない。

 

「皆、もう少ししたらお風呂入ろうか。グレイブ君の寝巻き…は、愛月君よりワンサイズ上のやつで大丈夫だよね?」

「おう。後、何か食べる物貰っても大丈夫か?」

「食べる物?…あ、そっかグレイブ君は一緒に夕飯食べた訳じゃないもんね。任せて」

 

 それから言われた通り、イリスはイリゼとお風呂に行った。

 お風呂はとても温かで、身体中がぽかぽかした。

 それはとても気分が良くて…イリスは、もやもやの事を忘れていた。

 

 だから、イリスには分からないまま。

 このもやもやの、正体が。

 

 

 

 

 まさか、グレイブまで来るとは思っていなかった。どうやって来たか、はまあ納得の出来るものだったけど…それにしたって、思いっ切り驚く羽目になった僕の気持ちも考えてほしい。…イリゼだって、隠さず教えてくれればいいのに…。

 でも、来てくれた事は嬉しかった。安心した。ここでの日々も楽しいけど、やっぱり…いつ帰れるか、ちゃんと帰れるかどうかも分からないのは、不安だから。きっと大丈夫だとおもってたし、イストワールさんの事も信じてたけれど、心のどこかには心配な気持ちもあったから。

 だけどもう違う。もう、ソルガレオの力で帰る事が出来る。帰る事に…なる。

 

「ふぁ、ぁ……」

「愛月、眠い?」

「んー…ううん。大丈夫だよ」

 

 朝になって、身支度を整えて、これまでと同じように皆で朝ご飯を食べて。予定じゃ今日、イリスちゃんはイリスちゃんの次元とコンタクトを取ってもらう訳だけど…イストワールさんも準備があるって事で、先に昨日グレイブの行っていた、観光に僕やイリスちゃんも付き合う事になった。

 

「はー…出る前にバルコニーから見た時も思ったが、ほんとにプラネテューヌってのは都会だな」

「良くも悪くも新しい技術や物に対して積極的なのがプラネテューヌだからね。ラステイションはもう少し落ち着いた感じで、リーンボックスは新しい部分と歴史的景観を残してる部分が両方あって、ルウィーはほんと、魔法の国…ってイメージになるかな」

「へぇ、愛月は全部行ったのか?」

「いや、ラステイションは行った事ないや。ルウィーも街については、空から見ただけかな」

「あー…それならこの後、一回ラステイションも見に行ってみる?流石に観光までしてたらかなり時間がかかっちゃうから、空から眺める位にして、さ」

 

 グレイブはお店や商品…ってより街並みそのものに興味があったらしくて、一昨日みたいに色々な場所へ寄ったりはせず、今は大通りを中心に歩き回っているところ。

 そんな中でイリゼが言った、一つの提案。それを聞いた僕達は顔を見合わせて…三人同時に頷いた。

 で、それから一時間と少し。グレイブが満足したって事で、プラネテューヌの簡単な観光は終わって……

 

「ひゃっほーぅ!やっぱ女神は速いな!」

「ちょっ、はしゃがないでよグレイブ!揺れる、揺れるからぁ!」

 

 さっき決まった通り、僕達はラステイションという国に向かっていた。これもこれまで通り、女神化したイリゼに運んでもらう形での移動だったんだけど…僕達は三人、対してイリゼの腕は二本という事で、イリゼはグレイブとイリスちゃんを抱え、僕は抱えられているグレイブに更に抱えられるという体勢で飛ぶ事になってしまった。うぅ…確かに安定感はあるよ!?グレイブは力も常識外れだし、僕が抱えるよりよっぽど安全だとも思うよ!?けどさ、けどさぁ……!

 

「…そういやこの格好、クワガノンっぽいよな」

「え?あー、確かに今のグレイブはデンヂムシを抱えてる時のクワガノンっぽい…ってそれ、状況によっては落とすやつじゃん!落とすなよ!?絶対落とすなよ!?」

「あぁ、絶対…だな?」

「そういうノリじゃなぁああああいッ!」

「……イリゼ。愛月とグレイブ、喧嘩をしている?」

「ふふっ、違うよイリスちゃん。これはね、気心の知れた間柄だからこそのやり取りっていうものだよ」

 

 悪い顔して笑うグレイブに対し、僕は本気で猛抗議。命に関わる事なんだから、それはもう全力で抗議。けどグレイブは愉快そうにしてるし、イリゼとイリスちゃんものんびり話してるし…僕だけだよぉ、この状況で真っ当な事言ってるのはぁぁ……!

 

「……?」

「うーんと、ロムちゃんとラムちゃんとか、或いは私とブラン、ベールみたいな、ただ仲が良いだけじゃない、相手を信頼していて、自分も信頼されてるって思えてるからこそ、遠慮なく色々言えるような…って感じで、分かるかな…?」

「…イリゼの説明は、ブランより長くて複雑」

「うっ…ご、ごめん……」

「…でも、いつも丁寧に説明してくれる。だから、嫌いじゃない」

「…そっか。そう言ってもらえると、嬉しいな」

 

 理不尽な状況にむすーっとしていたら、イリゼがイリスちゃんに今のやり取りの事を説明。

 イリゼの説明は長くて複雑だけど、丁寧だから嫌じゃない。それは何の気遣いもない、思った事をそのままに言ったような返答で…でもイリスちゃんらしいし、だからこそ気持ちが伝わるよなぁと、聞いている時僕は思った。…別に気心云々じゃなくて、ただグレイブは意地悪いだけだと思うけどね…!

 

「…ん?あ、イリゼ。もしやラステイションってのは……」

「うん、あれがラステイションの街だよ。プラネテューヌとラステイションは、どっちも科学技術や工業を売りにしてる国だけど…全然印象は違うでしょ?」

「うん…確かにプラネテューヌと比べると、ラステイションは工場が多い感じだね」

「そこは見栄え重視で工場っぽい外見を排してるプラネテューヌと、無駄な事をしないラステイションの差、かな。といっても、ラステイションもラステイションで外観を気にしてない訳じゃなくて、工場らしい外観で統一する事によって、国としての纏まりの強さを表現してる…んだってさ」

 

 空中で止まったイリゼは、ラステイションを眺めながら言う。…詳しいんだな、イリゼは。プラネテューヌの事も、ラステイションの事も。

 

「…さて、どうする?別の方向からも見てみるか、それとも……」

「イリスはここで良い。ここから眺めるのも、悪くない」

「まー、どんな国か気になっただけで、景色を眺めて楽しみたかった訳じゃないしな」

「風情がないなぁ、グレイブは…」

「じゃ、愛月はあるのかよ?」

「いや、ないけど?」

「なんだお前……」

 

 ジト目で見てくるグレイブに対し、僕は涼しい顔でスルー。…うん、ちょっとすっきりした。

 という訳で、僕達は少しの間ラステイションの街を眺める。まだ距離があるから人は勿論建物も一つ一つは見えないけど、それでも特に大きい建物だったり遊園地みたいな場所は見えるし、僕達が見ている間にも空からはロボットが街に向かって飛んでいって……

 

「…って、えぇっ!?ろ、ロボット!?」

「お、かっけぇ……!」

「あぁ、あれはMG…愛月君の言った通り、有人の人型ロボットだね。その内の、ラステイション製の空戦仕様の機体かな」

 

 街へ向けて降下していく数機のロボットは、僕達に気付いたみたいで一度こっちを向くと、僕達…というかイリゼに向かって宙で敬礼。

 本当に、凄いなぁと思う。こうして空を飛ぶロボットが普通にいる事も、それに敬礼されているイリゼも。

 

「…いつか、この世界…信次元も旅してみたいな。ポケモンはいなくても、違う発見が色々ありそうだしさ」

「…うん、同感」

「それなら…その時が来たら、私が二人を招待するよ。今はまだ、招待して旅をさせてあげられる状況じゃないけど…それが出来るように、そんな信次元に戻るように、私も皆も頑張るから」

 

 ゆっくりとラステイションを…いや、信次元を見渡したグレイブの言葉に、僕も頷く。そしてそれを聞いたイリゼは、落ち着いた…でもどこか力強い声で、言う。その時が来たら、その時にまで辿り着いたら、招待してくれる…って。

 なら、僕は応援しよう。その時に向かって頑張るイリゼや、信次元の人達の事を。応援して…楽しみにもしていよう。自分の足で、行ってみたいところを旅する、その日が来るのを。

 

「…よし。それじゃあ帰ろっか。また少しスピード出すけど、大丈夫かな?」

「大丈夫だ、最悪パージがあるしな」

「だからやるなよ!?やったら許さないからな!?」

「…あ、そういやさっきロボット見て思い出したが、パージといえば手足をパージするバージョンもあるよな……」

「いやそれはYF-21じゃん!それこそロボット…それも可変戦闘機だからこその戦法じゃん!女神がやったら大ダメージ確定だからね!?」

「……大丈夫。イリスも帰るのに賛成」

「おおぅ、この流れで普通に言うんだイリスちゃん…」

 

 そんなこんなでラステイションの…何だろう?この場合は眺める?…も終わって、僕達はプラネテューヌへと戻る。

 戻る中で、思う。これでイリスちゃんの次元とのコンタクトも成功したら、それで最後なのかな、って。勿論帰りたいし、帰らなきゃだけど…それでもやっぱり、思うんだ。…寂しいな、って。

 

 

 

 

 プラネテューヌのプチ観光が終わって、ラステイションから戻って、私達はイストワールさんの下に訪れた。もうイストワールさん側で準備が出来ている事は、確認している。

 

「イストワールさん、皆を連れて来ました」

「はい、お待ちしておりました(´・ω・`)」

 

 皆と共に来たのは、別次元との交信や次元の扉を開く際の補助機材がある部屋。言うなれば、別次元との窓口。

 

「まずはご報告を。皆さんが出ている間に、一度交信を試してみました。そして無事、成功しましたd(^_^o)」

「あ、それは良かっ……え、もうコンタクト取ってたんですか?」

「扉を開くのと、ただ交信をするだけとでは、後者の方が楽ですからね。予め、試しておきました( ̄∇ ̄)」

「さ、流石イストワールさん、仕事が早いですね……」

 

 今から交信を試してみて、それが成功したら次元の扉も…という話になるかと思いきや、最初の段階は既にクリアをしているとの事。…いやほんと、助かるし感謝しかないけど…私達が楽しんでる間にやってくれてたと思うと、申し訳ない……。

 

(…と、いうか、それを言うならこれまでもか…お礼に何かお菓子でも作ろうかな……)

「…イストワール。イリス、帰れる?」

「そうですよ、イリスさん。今からあちらへ再度交信をかけるので、繋がり次第扉を開く作業に入りますね(´・∀・`)」

「…そう」

 

 軽く笑いかけるイストワールさんに対し、イリスちゃんは短く返答。こういう余分が一切ない返答は、何ともイリスちゃんらしくて…けどここで私は、「あれ?」…と思った。

 端的な返しは、イリスちゃんらしい。けど、これから自分の居場所に帰れるんだから、ここはもっと喜んでも良い筈で…けれどこれまで通り、或いはこれまで以上に淡白だった。

 もっと言えば、ラステイションを見た辺りから、イリスちゃんは口数そのものも減っている気がする。ここまでの足取りからして、体調が悪いって訳じゃないんだろうけど…うーん……。

 

「んじゃ、俺達はイリスが無事に帰れたら、その後帰る事にするか。上手くいかなかった場合、シャイン…ソルガレオに頑張ってもらって俺達で送り届けるって手もあるしな」

「だ、大丈夫だよ。イストワールさんは、もう何度も扉を開いてるんだから。…ところで、別世界を走って移動するって、どんな感じなの?どんな空間?」

「そうだなぁ…こう、暗色だけど暗いとは違う感じの空間で、それぞれの世界が輪とか球体っぽくなってるというか…トロイメライの、更に奥底への道中的な…?」

「う、うん…さらっとパロディ入れてくる辺り、多分グレイブ君はネプテューヌとも張り合えるよ…って、普通にグレイブ君もネプテューヌ知ってるんだったね」

 

 イストワールさんが交信を試みている間、私達は軽く会話。愛月君はグレイブ君の言葉に肩を竦めていたけど、イリスちゃんはただぼーっと聞いているだけのようで…やっぱり、何かあるんだと思う。だから私は、その事を訊こうとして……

 

「…ねぇ、イリスちゃん。さっきから静かだけど、何か……」

「…皆さん、繋がりました。映像、出ます(`・ω・´)」

 

 けれどそのタイミングで、交信が成立。イストワールさんの声と共に、向こうの次元の映像が…イリスちゃんの次元のイストワールさんが現れる。

 

『…あ、大きい』

「え?…ああ、そちらのわたしと比較して、ですね」

 

 最初に発された声は、イリスちゃん、グレイブ君、愛月君による……外見への感想。それに私とイストワールさんは苦笑いし、向こうのイストワールさんも肩を竦める。内心では、私も「あ、向こうのイストワールさんは大きいんだ」と思ったけど、同じ位の体躯のイストワールさんは過去にも見た事があるから、別に声には出さなかった。

 

「こほん。…初めましてですね、イリスさん。事情は、そちらのわたしから聞かせて頂きました」

「…イリスの事、ミナ達も知っている?」

「えぇ。先程の交信の後、ご連絡をしこちらに……」

「イリスちゃん!イリスちゃんいるの!?」

「イリスちゃん…!(わたわた)」

 

 向こうのイストワールさんの返答へ割って入る形で聞こえたのは、凄く聞き覚えのある二つの声。直後、映像に映ったのは、イストワールさんを押し退けそうな勢いで現れた、ロムちゃんとラムちゃんの姿。

 

「あ…ロム、ラム……」

「い、イリスちゃん…もー、急にいなくなるんだから……」

「心配、したんだよ…?」

「う…二人共、ごめんなさい…」

「全くよ。二人共、大慌てだったんだから…」

「ですが、本当にほっとしました……」

 

 イリスちゃんが謝る中、ブランとミナさんも現れる。皆イリスちゃんの無事な姿が見れた事で安堵の表情を浮かべていて、それを見るイリスちゃんも何となく嬉しそう。

 

「…良かったね、イリスちゃん」

「…うん。ミナ達見ると、ほっとする」

「…貴方達が、イリスの面倒を見てくれていた人ね。保護者として、感謝するわ」

「あ、いえ!僕も似たような状態でしたし、お礼ならイリゼに言ってあげて下さい!」

「俺に至っては、昨晩来たばかりだしなー」

「あはは…私もこれまで色んな次元で、色んな人にお世話になったから。だからこれは、当然の事をしたまでだよ」

 

 感謝の言葉を口にするブランと、頭を下げるミナさんに、私は首を横に振る。

 本当にこれは、お礼を言われるような事じゃない。それこそ私自身、別次元のルウィー(イリスちゃんの次元とは別)でお世話になった事もあるし…この数日間、私も凄く楽しませてもらったんだから。

 

「…さて。それでは扉を開くとしましょうか( ̄^ ̄)」

 

 少し話が落ち着いたところで、イストワールさんが呼び掛ける。それに向こうのイストワールさんも頷いて……私は持ってきていた白い本を、機材の上へ。

 集中する、二人のイストワールさん。皆何となく察したのか、その瞬間を静かに待ち…そうして部屋の空間の一部が、歪み始める。歪み、渦の様に変わっていき……空間の歪みは、次元同士を繋げる扉に。

 

「…出来ました。さぁ、イリスさん。ここを潜れば、向こうの次元に…元居た場所へ、帰れますよ(⌒▽⌒)」

「…………」

 

 完成した事をイストワールさんが伝え、向こうのロムちゃんラムちゃんが表情を輝かせる。

……けれど、いつの間にかイリスちゃんは、浮かない雰囲気に変わっていた。喜ぶでもなく、ほっとするでもなく…何も言わずに、俯いていた。

 

「…イリスちゃん?」

「…もやもや、する……」

「もやもや…?」

「ここが、もやもやする…帰れるのに、もやもやして…きゅって、する……」

「…それ、って……」

 

 そう言って胸に手を当てるイリスちゃん。呼び掛けた私はもやもやの意味が分からなかったけど…それが分かった様子の愛月君は「それって」と言い、言葉を続けた。…もしかして、寂しいの?…って。

 

「寂、しい…」

「うん。僕達は違う場所に帰るし、イリゼはここが自分の次元だから…一緒には帰れないから、だから寂しいのかな…って」

「……うん、そう。イリスは、寂しい…イリスは、知っている。分からないけど、分かる。ここと、イリスのいる場所は…凄く、遠い…イリス、一人じゃ…来られない……」

「イリスちゃん……」

 

 胸に当てた手を握り、イリスちゃんは言葉を漏らす。自分の感情をあまりはっきりとさせないイリスちゃんが、寂しいんだと…次元という、あまりにも遠く離れた場所の私達と別れる事への悲しさを、自分の言葉で静かに紡ぐ。

 ああ、そうだ。忘れていた。もう何度も経験しているから、私は再会を信じられるけど…イリスちゃんからすれば初めての次元移動で、初めての次元間での別れなんだ。それが寂しくない訳が、悲しくない訳がなくて……

 

「…大丈夫だよ、イリス。知ってるだろ?俺や愛月とイリゼは、前にも会った事があるんだって」

「…それは、そう……」

「それに、考えてみろよ。愛月から聞いたが、イリスは何だかよく分からない内に信次元に来たんだろ?よく分からなくても来られるなら、いつかまた、今度は来たいと思って来られる…俺だったら、そう思うよ」

「グレイブ……」

 

……そんなイリスちゃんへ、私より早く声を掛けたのはグレイブ君だった。優しい顔で、イリスちゃんの頭をくしゃくしゃと撫でて、大丈夫だと伝えていた。いつものように自信たっぷりの…頼れるって思わせてくれるその声で。

 

「…グレイブ、撫で方、強い……」

「っと、悪い悪い。ポケモンは慣れてても、小さい子を撫でるのは慣れてなくてな…」

「…グレイブの言う通りだよ、イリスちゃん。それと…僕からイリスちゃんに、プレゼントがあるの」

「プレゼント…?」

 

 手を離し苦笑するグレイブ君と入れ替わる形で、愛月君も言う。言って、それから…ある物を渡す。

 それは、ぬいぐるみだった。それも、ただのぬいぐるみじゃない。イリスちゃんを模した…愛月君の、手作りのぬいぐるみ。

 

「これ…イリス……?」

「そう。昨日、イリゼに材料を用意してもらって作ったんだ。イリスちゃんのぬいぐるみだからいりぐるみ…だとイリゼのと被るし、片仮名で『イリぐるみ』…かな」

「イリぐるみ…イリスに、くれるの…?」

「勿論。僕とイリスちゃんの、出会いと思い出の証だよ」

 

 その言葉と共に、愛月君はにっこりと笑う。優しくて温かい、純粋な思いの籠った笑顔を。

 受け取ったイリスちゃんは、イリぐるみをじっと見つめていた。両手で持って、見つめて…そして、抱き締める。

 

「…嬉しい。ありがとう、愛月。イリス、イリぐるみ…大切にする」

「ふふっ。それじゃあ私からも…って訳じゃないけど、写真撮ろうよ。イストワールさん、少しだけ待ってもらっていいですか?」

 

 穏やかな愛月君の笑顔と、無表情だけど嬉しそうなイリスちゃんを見て私は微笑み、それから写真を撮る事を提案。二人のイストワールさんから頷きを返してもらって、私は携帯端末を取り出す。

 

「あ、それなら僕が撮るよ。えーっと…イリゼ、そこなら綺麗に撮れそうかも」

「確かにそうだね、じゃあお願…ってまたぁ!?そして今度は愛月君!?前はグレイブ君だったよね!?今度は愛月君なの!?愛月君までその無駄に回りくどい自撮りネタやるの!?」

「あははっ。ごめんごめんイリゼ、皆で撮ろ?」

「私は最初から、いっつもそのつもりだからね…!?」

 

 やっぱりどうやっても付いて回るネタなのか、頭を抱えて叫ぶ私。愛月君やグレイブ君からは唖然とされるけど、これは仕方ない。だって、それ位の事なんだから…!

…まぁ、そんな感じのやり取りを経て、私達は四人での写真撮影に。私、イリスちゃん、愛月君、グレイブ君の順に並んで、携帯端末の内カメラでぱしゃりと一枚。撮った後すぐに、私は一度席を外して、プラネタワー内の機材でプリントアウト。その写真を持って、皆の下へと戻ってくる。

 

「お待たせ、イリスちゃん。これ、イリぐるみと一緒に持っていって」

「…うん。イリス、これも大切にする。イリぐるみも、写真も…信次元で知った事全部、大事にする」

 

 右手でイリぐるみを抱えて、左手で写真を持って、こくりと首を縦に振ったイリスちゃん。最後まで、イリスちゃんの表情は変わらず…けど今は、皆が分かっていた。イリスちゃんの、抱く気持ちを。

 

「では、改めて……」

「イリスちゃーん!」

「イリス、ちゃん…!(あせあせ)」

「滑り込みセーフ!主人公としては、もう一度位顔を出しておかないとねっ!」

 

 今度こそイリスちゃんは次元の扉へ……と思いきや、今度は次元ではなく普通に部屋の扉が開き、そこからロムちゃんにラムちゃん、それにネプテューヌが部屋の中へ。

 いや、違う。三人に加えて、ブランやミナさん、ネプギアの姿もそこにはあった。

 

「うぉっ!?な、なんか沢山人きたな…」

「あはは…ちょっととはいえ話もした訳ですし、お見送りに来ちゃいました」

「ふふん、そして映像越しにベール達も登場だよっ!」

「ちょおっ!?ネプテューヌ!?私とユニはほんとに全く面識ないんだけどぉ!?……あ…こ、こほん。ラステイションの守護女神、ブラックハートことノワールよ。えーっと…まあ、次の機会があったら、うちにもいらっしゃい」

「は、はは…イリゼさんのお友達って事なら、歓迎するわね」

「リーンボックスにも是非またいらっしゃいな。…勿論イリスちゃんだけでなく、愛月君や…グレイブ君?…もですわ」

 

 向こうのブラン達が目をぱちくりとさせる中、びしりと出されたネプテューヌの端末から、ベール達が各々挨拶。そしてそれが終わったところで、こっちのブラン達が前に。

 

「イリスちゃん、またね…?」

「今度はもっとたくさんあそぼうねっ!」

「…と、いう事よ。だから遠慮せず…また来るといいわ」

「皆さんと共に…わたしも、お待ちしていますよ」

「ロム、ラム、ブラン、ミナ……」

 

 それは四人からの、最後の挨拶。けどそれは、これで終わりという意味じゃない。またねという、また会おうという…そんな挨拶。

 イリスちゃんは、頷いた。その言葉を受け止めて…抱き締めて。

 

「またね、イリスちゃん。スターだけじゃなくて、今度はもっと色んなポケモンを見せてあげるからね」

「俺もだ、イリス。次の時は、もっと色々な事して遊ぼうぜ?」

「ライヌちゃんやるーちゃんも、待ってるからね。…イリスちゃん、絶対…絶対また会おうね!また信次元でも良いし、今度はイリスちゃんの次元でも良いから…約束、だからね!」

「…うん。イリス、皆大好き。凄く楽しくて、凄く嬉しかった。また会いたい、もっと話して、もっと遊びたい。だから……また、ね」

 

 そうしてイリスちゃんは、次元の扉を潜り…帰っていった。イリスちゃんを待つ、皆の元へ。イリスちゃんの、帰るべき場所へ。

 

「…ありがとうございました、皆さん」

「いえいえ。無事にお返しする事が出来て、何よりです(*^◯^*)」

「…行っちゃった、ね」

「だな。…んじゃ、俺達も…帰るとするか」

 

 見送り、向こうに無事イリスちゃんが戻れた事を確認して、イストワールさんは交信を切る。消えた次元の扉を少しの間、グレイブ君と愛月君は見つめていて…それから、グレイブ君はソルガレオのシャインを呼び出した。…二人も自分達の世界に、帰る為に。

 

「…あ、待って。その前に…イストワールさんも、ありがとうございました!」

「えっ?…これは、わたしのぬいぐるみ…しかも、等身大の…?( ゚д゚)」

「はい!イリぐるみもですけど、これも力作です!」

「そう、でしたか…ふふっ、ありがとうございます。大切にさせてもらいますね(*´꒳`*)」

 

 なんと愛月君はもう一つぬいぐるみ…この場合いすぐるみかな?…を作っていたらしく、それをイストワールさん…はサイズ的に大変だから、近くのテーブルへ。イストワールさんからの感謝の言葉に頷いて……それから二人は、それぞれの視線を私の方へ。

 

「…イリゼも、またね?」

「なんつーか…もうこれで三度目だしな。ここは軽く、また来るよ…って言っておくか?」

「だね、しかも私からすれば、向こうから帰ってすぐに再会した訳だし……あ、でも一つだけいいかな?」

 

 今グレイブ君が言った通り、これで三度目な訳だから、ただ信じてるのとは違う…なんというか、ふわっとした感じの「まあ、また会えるよね」…って気持ちが私の中にはある。多分、二人の中にもあるんだと思う。

 でもやっぱり、別れは別れ。こっちからは勿論だけど、シャインだって流石に軽いお出掛け感覚で世界を行き来出来る訳じゃないらしいから、またすぐ会える可能性は低いと思う(私視点で今回すぐだったのはまあ置いとくとして)。だから、だからこそ私は二人を見返して…言う。

 

「さっきの約束、あれは本気だからね。いつか、私から二人を招待する。平和になった時に、招待するから……その時は今回以上に、信次元を楽しんでね?」

『…ああ、勿論だよ、イリゼ!』

 

 私はにっと笑って、二人もにっと笑い返して、そうして二人はシャインの背へ。見送る皆の事を見て、もう一度私を見て……最後まで笑顔で、二人も自分達の世界へと帰っていった。イストワールさんが開いたのとは違う、穴の様な場所を通って。

 二人の姿が見えなくなるまで、その穴が消えてしまうまで、私は見つめていた。見つめ…心の中で、呟いていた。またね、って。今回は出来なかった事も、約束を果たした時には、目一杯やろうね、って。

 

「…はぁ、行っちゃった……」

 

 完全に消え、『三人が来た』から、『三人が来ていた』 へと変わった時、私は言葉と共に吐息を漏らした。

 これまでと違って迎える形だった分、今回は色々と違った。違う事をしたし、違う経験もした。…だけど、心に抱く思いは同じ。楽しかった、沢山の思い出が出来た…だからまた、皆と会うんだって思いは、これまでも今も変わらない。

 

(…私、頑張るからね。皆とまた会う為に…皆とまた、思い出を作る為に)

 

 心の中で、私は送る。皆への、そして自分への宣言を。届くかどうかじゃなくて…ただ伝えたいという思いのままに。

 今撮ったばかりの写真のデータを見て、皆との繋がりに微笑んで、ふっと私は顔を上げる。顔を上げて、窓から見える空を見る。

 信次元のこの空は、別次元や別世界にあるものとは違う空。だけど、ここを皆で飛んだという、同じ思い出ならば私達の心にある。そんな空は、遠く広がるこの空は──いつものように、綺麗だった。




今回のパロディ解説

・「〜〜絶対落とすなよ!?」「あぁ、絶対…だな?」
お笑いトリオ、ダチョウ倶楽部におけるお約束ネタの一つのパロディ。こんな感じのネタは(返しも含めて)、生徒会の一存でもありましたね。

・YF-21
マクロスシリーズに登場する機体の一つの事。手足をパージする事によるハイ・マニューバ・モード…女神がやったらただのグロシーンですね。三人も落ちますし。

・トロイメライ
D_CIDE TRAUMEREIに登場する用語(世界)の一つの事。それこそ現段階での最新話におけるパロディなので、かなり伝わり辛い部分もあったのかな、とは思います。

 今回の話にて、この三作コラボも終了となります。信次元が舞台であり、徹頭徹尾日常回で終わった、これまでとは違う毛色となったコラボ。それ故に悩む部分、難しいと感じる部分もありましたが……えぇはい、楽しかったです。これまでと同じように、今回も凄く楽しかったです!ロザミアさん、愛月 花屋敷さん、ありがとうございました!本当に、やれて良かったです!読者の皆さんも、ここまで読んで下さった事に感謝します!
 そして、次回からは本編に戻ります。中々終わらない本編…はまだまだ暫く終わりませんが、最後までしっかり書き続けるので、次話もお楽しみにっ!
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