超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
また、こちらは前提ではありませんが、原作をプレイしている(知っている)とより楽しめる……と思う…部分もあります。
プロローグ 歪んだ未来
──信次元ゲイムギョウ界は、私が目覚めてから二つの脅威を乗り越えてきた。犯罪神の負のシェアエナジーに蝕まれ、次元の破壊を目論んだマジェコンヌさんと、嘗て何度も蘇り、この時代でも再び次元を破滅へと導こうとした、犯罪神の脅威から。
その脅威を退けてきたのは、私達女神と、仲間である多くの人達。時には有志の人や、軍の人とも協力して、次元の平和を、奪われた日常を守ってきた。そしてその中で、多くの絆を紡ぎ、信念を貫き、善意が創り出す未来を描いてきた。時には絶望しかけた事も、追い詰められた事もあったけど……それを乗り越えて、今がある。
これからも、脅威は訪れるだろうと思っていた。今まで以上の悪意が、信次元を終わらせようと襲来する日が、あるかもしれないとは考えていた。けれど、私達の希望が折れない限り、きっと大丈夫だとも思っていた。……でも…それは、その脅威は、全てが違った。規模も、誘おうとした形も、その中で私達が得るものも……何もかもが、違っていた。
けれど、一つだけ言える事がある。世界を変え、人を繋げ、全てを超えるのは……一人一人の、思いなんだ。
*
あの戦い…犯罪神と犯罪組織との戦いが終結して、復興も一定の完了に至って、結構な時間が経った。その間、何があったかは……取り敢えずORを見てね!ORでは描写されてない事も一杯あるんだけどさ!
「出たねシーンを問わずにぶっ込んでくるメタ発言!前話…っていうか便宜的な前作最終話のラストから続いて二話連続だよ!?色んな意味で何を考えてるの!?」
「おぉー!新作一発目の第一声から絶好調だねイリゼ!これは今作も期待が持てちゃうかなー!」
開口一番で突っ込み、しかもメタ発言を注意しつつも自分もメタ発言をしちゃうというお約束を見事に果たしてくれたのは、わたしの友達兼女神兼主人公のイリゼ。その突っ込みに思わずテンションが上がっちゃったのは、美少女女神兼皆の憧れ兼
「ちょっと…OAのプロローグはもっとシンプルだったでしょ…?OPはきっちりシリアスに進めてたでしょ…?なんでここにきてこんなギャグ重視になっちゃうの……」
「三番オチってやつだよ、うん。それにわたしとしては、シリアスで笑いのない展開なんて極力避けたいからね!それよりイリゼってば、メイン三作目にして初のプロローグ通常登場じゃない?やったね!」
「どうでもよ…くはないけど、今はそれよりも色々突っ込みたいんだけど!?ちょっ、ほんとに止めよネプテューヌ!プロローグからこれじゃそういう作品だと思われるよ!?OEはほんとに重要な物語になるんだからね!?」
「あ、圧が凄いよイリゼ…っていうか、イリゼこそわたしに引けを取らないレベルでメタ発言してるけど大丈夫…?」
烈火の如く怒ってくるイリゼに、流石のわたしもちょっと押され気味。…うん、まぁ確かにふざけ過ぎてぐだぐたになっちゃうのは不味いけど……イリゼ、一キャラクターの範疇を超えた発言してない…?代弁みたいになっちゃってるよ…?
「もう……ほらほら早く行った行った。ネプギアが待ってるよ」
「あれ?これ以上ふざけられないように話を進めようとしてる?ふふーん、残念ながらそうはいかな「ほーら、ネプテューヌGO!」わーいっ♪…って、フリスビーで行かせようとしないで!?それこそプロローグでやるような事じゃないよね!?」
思わず投げられたディスクをジャンピングキャッチしてしまったわたしは、卑怯な手に出たイリゼに猛抗議。でもイリゼは行ってきなさいの一点張りで、わたしもわたしで「そろそろちゃんとした方がいいかな」と思ったから、ディスクを返して今いるプラネタワーのフロントの方へ。…建物とか地名の説明なんかは、要らないよね。
「ネプギア、お待たせー」
「あ、うん。…何やってたの、色々と……」
「あはは…安心してネプギア。こっからはちゃんと、程々に真面目な女神様でいくから」
「程々になんだ…」
出入り口の前で合流したのは、わたしの妹兼女神候補生兼主人公のネプギアで、わたし達がこれからしようとしているのはモンスターの討伐。要は、女神のお仕事だね。
という訳でわたし達はプラネタワーを出て、プラネテューヌの生活圏外へ。
「ネプギア、最近調子はどう?困った事があったりとか、無理してたりはしない?」
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。最近も色んな仕事してるけど、皆さんが手伝ってくれるし」
「そっかそっか。いやぁ、ネプギアも女神として成長したよねぇ」
「えへへ。…でも、まだまだ満足はしないよ?早くお姉ちゃんに追い付きたいし、いつかは追い抜きたいんだからね」
「ネプギア…うぅ、平常運転から可愛い妹を持てて、わたしは今日も幸せだよぉ…っ!」
素直で、健気で、頑張り屋さんのネプギアは今日も今日とてすっごく可愛い。はー、ネプギアは人を駄目にするソファならぬ、姉を駄目にする妹だよ…こんなに可愛くて素敵な妹がいるものだから、わたしも日に日に駄目な感じに……
「えっと…お姉ちゃん。責任転嫁は、止めよっか」
「あ…はい、ごめんなさい…」
わたし達の属するパーティーやその周りの人達御用達のスキル、地の文読みで突っ込んでくるネプギア。それ自体はよくある事なんだけど……笑顔にマジトーンというコンボで突っ込まれたものだから、ついわたしは謝ってしまった。…強くなったし、強かにもなったよねネプギア……。
「こ、こほん。まあそういう事なら戦闘も問題なさそうだね。えーっと、討伐依頼が出てるモンスターは……」
「この辺りを縄張りにしてる、って話だったね。もう近くにいたりするのかな…」
気を取り直したところで、わたし達は目的地に到着。わたし達がいるのは平坦な、でも大きな岩がちらほらとある場所で、動き辛い事はないけどその岩が見晴らしを悪くしてるって感じ。まぁまず大丈夫だとは思うけど、一応岩陰が死角になっちゃう事だけは気を付けて…と、思ってたらその岩陰に討伐対象はっけーん!
「ネプギア、あそこ!こういう時は先手必勝、先制攻撃で一気…に……」
「……お姉ちゃん?急に黙るなんてどうかし…た……」
モンスターを見つけたわたしは、太刀を取り出しながらネプギアに提案…しかけて、硬直。ネプギアもわたしの中途半端な言葉に反応…してる最中で硬直。
どうしてわたし達が硬直したかって?ダークサイドな高雄級一番艦さんと目が合ったから?ノンノン、そういう事じゃなくて……
「…なんか、多くない……?」
「う、うん…これは明らかに、群れ…だね……」
…岩陰から出てきたのは、二桁規模のモンスター群だったんだよね…。討伐対象はその先頭にいる一体だけで、後は単なる取り巻きだけど……絶対邪魔される、っていうか群れで反撃してくるって…。
「…どうする?別れるまで待ってみる?」
「うーん、それっていつになるか分からないよね。それに、数はそこそこいるけどどれも普通のモンスターだし、その数も別に何百体とか何千体とかの規模じゃないんだから、普通に戦っても勝てると思うよ。女神化すれば、尚更ね」
「それもそっか。じゃあ……」
わたしが改めて提案して、ネプギアが同意して、それからわたし達は揃って女神化。シェアエナジーの消費を減らせる人の姿から、わたし達本来の姿に戻る。
そして、まだこっちに気付いていないモンスター群を見据えて……ネプギアが先制の一発を放つ。
「お姉ちゃん!」
「えぇ、斬り込むわッ!」
ネプギアの撃ち込んだ射撃は、先頭の討伐対象に直撃。討伐対象はよろめいて、群れには見るからに動揺が広がって…わたしはそこに突進をかける。
「退がるなら貴方達には何もしないわ!…って、言っても伝わらないわよね…ッ!」
攻撃の直前、立て直したモンスターは前脚を振るって、わたしの大太刀とモンスターの爪が激突する。その前脚を弾きつつわたしもバク宙で一度下がると、飛び込んできたのは取り巻きのモンスター。試しに迎撃はせず、回避しながら声をかけてみるけど…効果はなし。
「ネプギア、取り巻きはお願い出来る?」
「任せてッ!」
真正面から突っ込んできた一体を蹴り返して、討伐対象へと再接近。当然取り巻きは邪魔しに来るけど、ネプギアがそれを止めてくれる。
全弾命中…って事はないけど、上手くモンスターをわたしの進路上から退かしてくれるネプギアの射撃。その援護を受けて、わたしは討伐対象に横薙ぎ一閃。
「はぁぁッ!」
四足歩行の肉食獣っぽい討伐対象は中々身軽で、わたしの一撃を跳んで回避。そのまま急降下からの踏み付けを仕掛けてくるけど……わたしはギリギリまで引き付けた上で一歩移動し、前脚と大太刀がすれ違うように斬り上げる。
「グギュルゥゥッ!?」
「大きく跳べる脚力があるだけに、肉もそう柔らかくはないのね…。でも、この程度じゃわたしの刃は止められないわッ!」
斬り裂いた感覚を手で感じながら、身を翻して追撃。討伐対象は悲鳴を上げながら飛び退いて、唸りを上げつつこちらへ威嚇。
このモンスターはここまで二回わたしの攻撃を避けて、尚且つわたしとネプギアの攻撃を一回ずつ受けていながらまだ健在。その時点で普通のモンスターとは格の違う、ギルドから教会に依頼が回された事にも頷けるレベルではあるけど……
(一対一になった時点で、もう勝敗は決しているのよッ!)
鋭い急接近からの上段斬り。その途中で左手を離し、予想通りに爪で防いだ瞬間その付け根へ掌底。その一撃で防御に綻びを作り出し、左手を戻して正面から防御を突き崩す。
開いた懐へ飛び込むようにショルダータックル。よろけたモンスターに二度目の斬り上げを放ち、そこから流れるように連続攻撃を叩き込む。
「このままッ、これでッ!」
連撃の末、決め所だと直感的に感じたわたしは、喰らい付こうとしてきたモンスターの牙を短距離のバックステップで回避。
けれど勿論、これはただの回避じゃない。避け、着地すると同時にその足で地を蹴り、わたしはスライディングの要領でモンスターの下へと潜り込む。そしてモンスターが動くより先に両手を地面に付け、下半身を跳ね上げ、ハンドスプリングの如くモンスターを空へと打ち上げる。
「……って、あら…?」
後は落下に合わせてとどめを刺すだけ。……と、思っていたわたしだけど、意外にも討伐対象は上昇の頂点で身体を捻り、ギロリとこちらを睨み付けてくる。…まだやられない、って訳ね…。
(でも、空に打ち上げられた時点で……)
大太刀を下げる形で構えて、地面を踏み締めるわたし。抵抗の気配はあるけれど、もうこうなった時点で悪足掻きに過ぎない。
そう思って、抵抗するならと警戒の度合いを一つだけ上げて、わたしは飛び上がろうとし……その瞬間、空を下方から斜めに駆ける紫の光が討伐対象を斬り付けた。
「てやぁぁぁぁッ!…って、余計な事しちゃったかな…?」
「いいえ、ナイスアシストよネプギアッ!」
その光芒は、ネプギアの一撃。わたしに意識を集中させていた様子の討伐対象は完全に横槍を入れられた形で、空中という事もあって完全に姿勢のバランスを失う。
わたしを前に、自由の効かない空中で姿勢を崩したらどうなるか。それが、わたしが勝利を確信していた状態ならばどうなるか。……そんなのは簡単、わたしの中であった勝利のイメージが…現実の結果に変わるだけの話よッ!
「散りなさいッ!」
回転しながら落ちてくるモンスターに向けて、飛翔からの斬撃一閃。わたしの大太刀が腹部を捉え、そのまま一気に胴体を両断。一瞬前まで一つだったその身体は、多少の減速と共に二つへ分かれ……地面にぶつかった討伐対象は、小さく一つ呻いて……絶命した。
「討伐完了、っと。後は取り巻きだけど……」
討伐対象が動かなくなった事を確認したわたしは、視線を横へ。そこでは群れのボスを失ったモンスター群が動きを止めていて……次の瞬間、モンスター群は散り散りになって逃げていった。
「あの様子なら、放置しても大丈夫そうだね」
「そうね。ネプギア、わたしが打ち上げたのが見えてたの?」
「うん。丁度わたしも飛んでいたところだったからね」
視線を戻すと、討伐対象も消滅を始めている。それで絶命を再確認したわたし達は地上に降りて、女神化解除。
「ふぅ……これにてお仕事しゅーりょー!お疲れ様、ネプギア!」
「お姉ちゃんこそお疲れ様。でも、討伐依頼は終わったけど、お仕事はまだあるよね?」
「うっ…今回は中々骨のあるモンスターだったし、翌日に疲れを残さない為にも今日はお休みに……」
「…それで、いーすんさんが納得してくれるかな…?」
「うぅっ……」
他にもあるお仕事という現実を突き付けられて、勝利の高揚感から一気に墜落。むむぅ、いつも思ってるけどなんでわたしよりいーすんの方が上みたいになってるのさ!わたし守護女神だよ!?リーンボックスやルウィーは女神の方が上だし、ラステイションだって対等な関係築いてるじゃん!なのに、なのになんでうちだけ……っ!
……まぁ、普段いーすんには仕事で凄く助けてもらってるし、何なら色々任せちゃったりするし、自分から強くは出られない立場にしちゃってるんだけどね。
「はぁ……楽しくお喋りする為に一人でぱぱっと雑務を終わらせちゃう副会長さんがわたしの所にもいたらなぁ……」
「う、うん…その場合確かに書類仕事は全部やってくれそうだけど、その場合お姉ちゃんもわたしもイリゼさんも、全員揃って主人公からヒロインにされちゃいそうな気がするよ…」
「た、確かに…後わたしが副会長って言うと、別の人を連想しちゃうか……」
「それはそんなに気にする事でもないと思うけど…とにかく帰ろうよお姉ちゃん。そろそろ冷蔵庫のプリンもいい感じに冷えてると思うよ?」
「あ、そういえばそうだったね!よーしそれじゃあネプギア、プリンに向かってダッシュだよ!」
ネプギアの言う通り、冷蔵庫では今日のプリンが待機中。それを思い出した事でわたしのテンションも復活して、くるりと身体の向きをチェンジ。そうして今日も無事に『国の守護』という役目を遂行したわたしとネプギアは、プラネタワーに向かって走り出し……
「──いやぁ、見事な戦いぶりだったよ。流石は当代の女神だね」
──その瞬間、背後から拍手と共に声が聞こえた。聞き覚えのない、誰かの声が。
「……!?誰!?」
ばっと振り返るわたしとネプギア。その声に敵意は感じないけど、ここはわたし達以外いない訳で、身体は反射的に警戒する。
そんなわたし達が振り返った先にいたのは、岩の上に立つ、一人の女の子。藍色の髪に、暗い紅色の瞳をした、見慣れない子。右手を顔の斜め下で軽く開いて、左手は右腕に添えて、薄く笑いを浮かべるその姿はまるで……
『……12巻表紙の五河さん…?』
…あんまりにも彷彿としちゃう格好なものだから、思わずわたしもネプギアもそんな事を言ってしまった。
「はは、姿を見ての第一声がそれとはね…うん、驚きだよ」
「あ、す、すみません…」
「いいや、別に気分を害した訳じゃないさ。ほんとに予想外ではあったけど、ね」
そう言って女の子は岩の上からわたし達の前に。わたしもいきなりこれは不味かったかな…と思ったけど、ほんとに女の子は気にしてない感じ。
「あはは…って、あれ?見事な戦いぶりって…もしかして見てたの?」
「あぁ。そこの岩陰からね」
「そうだったんだ…怪我はしてない?」
「心配には及ばないよ。それにしても、本当に良い動きだった。やっぱりプラネテューヌの女神はこうでないと」
何となく深みを感じさせる声音で、女の子は言う。…えっと、これは褒められてる…んだよね…?
「…貴女は、どうしてここに?」
「とある用事でね。君達はクエストかな?」
「そだよ。って言っても、依頼を受けたんじゃなくて依頼されたんだけどね」
「へぇ、という事はギルドからの…君達は信用もされてるんだね」
「もっちろん!…ところで…もしかして貴女、わたし達の名前が分からなかったり?」
ネプギア、わたしと続いて女の子と会話を交わす。けれどその途中で、わたしは一つ違和感を抱いた。どうもこの女の子は、わたし達の名前を呼ぶのを避けているような…っていう違和感を。
……で、どうやらわたしの勘は当たっていたみたいで、女の子は小さく肩を竦めて言う。
「実を言うと、まぁね。姿から女神って事は分かっていたけど」
「やっぱりねー。それにしても、わたし達の女神の姿を見ても分からないなんて、さては貴女もぐりだね!」
「も、もぐりって…えっと、じゃあ…わたしはプラネテューヌの女神候補生、ネプギアです」
「わたしはプラネテューヌの守護女神、ネプテューヌだよ!そう言う貴女のお名前はなーに?」
普段TVに出たり式典に参加したりする時は女神の姿になっているから、こっちの姿じゃ女神だと気付かれない…って事はよくあるけど、そもそも名前を知らないって言われるのは凄くレアなパターン。でもまぁそういう事もあるよね、と思ってわたし達は名前を言って、更にそこで気付く。そういえば、わたし達も女の子の名前を知らないじゃん、って。
という訳で訊いたわたし。すると女の子は、ほんの一瞬だけ考え込んで……
「…オレの名前は天王星うずめさ。宜しく、ねぷっち、ぎあっち」
「……!あ、あだ名…わたしにも、初めてのあだ名が…!こ、こちらこそ宜しくお願いします!」
「あ、そこ気にするんだ…。それにしても、なんかわたしの方は呼び慣れてる感じがするね」
「そうかい?だとしたら、それは恐らく君によく似た友達がいるからだろうね」
女の子…うずめとわたし達は握手して、それから暫くわたし達はうずめの話に付き合った。付き合ったっていうか、質問に答えたって感じだけど……なんだろうね。なーんか、回答に対する返答にも雰囲気にも違和感があるような気が…。
「そうか、犯罪神には女神候補生のぎあっちが……大したものだよ。犯罪神はそれこそ次元の脅威そのものだというのに。けれどその犯罪神を倒したという事は、さっきの戦闘はまだまだ全力には程遠い、って事なんだね」
「ふふーん、わたしの妹はわたしに似て優秀だからね!でもネプギアの独力じゃないよ?勝ったのはわたし達皆だし、もしゲハ……」
「お、お姉ちゃん!」
「…あ…こ、こほん。特別な武器がなかったら、もうちょっと苦戦してたんじゃないかな」
うっかり女神すら時代によっては知らされない武器の名前を言いかけたわたしは、ギリギリでぼかす事に成功。最初の方は言っちゃったけど…うずめは穏やかな顔をしたままだし、これはセーフだよね。
「わたし達皆、か…そうだね、それは良い事だ。誰かが正しい道を示して、皆がそれを信じて同じ道を歩む……そうする事で平和な世界は作れるものだと、オレは信じているよ」
「…重みのある言葉ですね。うずめさんも、何かの組織や集団のリーダーだったりするんですか?」
「さぁ、それはどうだろうね。…さてと、オレから話しかけておいて言うのもどうかとは思うけど、君達はそろそろ帰らなきゃいけないんじゃないのかい?」
「へ?…あっ、そういえばプリンが待ってるんだった!後……まぁ、お仕事も…」
「あ、あはははは…それじゃあ、わたし達は帰りますね。うずめさんも、帰り道はお気を付けて」
「ありがとう、ぎあっち。楽しかったよ、君達との会話は」
「うん、わたしも楽しかったよ!それじゃうずめ、ばいばーい!また会おうね〜!」
思ったよりも話し込んじゃっていたわたしはぶんぶんと手を振って、ネプギアはぺこりと頭を下げて、今度こそプラネタワーに向かう。途中で一回振り返ると、うずめはひらひらと手を振っていて、わたし達を見送ってくれてる感じだった。
「いやぁ、こんなに長く話しちゃうなんてね。これはプリン、キンキンになっちゃってるかなぁ…」
「…………」
「…ネプギア?」
帰り始めて数十秒。わたしはネプギアに声をかけるけど、ネプギアからの返答は無し。どうしたんだろうと思って横を見ると…ネプギアはちょっと、考え込んでいるような表情。
「…あ…うん。…ちょっと、うずめさんに思うところがあって……」
「思うところ?あぁ、確かにオレっ娘は貴重だもんね。ボクっ娘ならパーティーにも教祖にも一人ずついるけどさ」
「そ、そこじゃなくて…こう…なーんか、感じるものがあるっていうか…」
「…それなら、わたしも感じたよ。何とも言えない感じだったから、言わないでおいたけど」
ちらりとネプギアは振り返って(多分うずめがもう見えない距離である事を確認して)、それからわたしに答えてくれる。
何か感じるものがある。それは確かに、わたしも感じていた。けど、ほんとに何とも言えない感じだから、わたしもネプギアもそれ以上の事が出てこない。
「うーん…何だろうね。もしかしたら、何か特殊能力を持ってるとかかもしれないけど…ネプギア、訊いてくる?」
「それは…止めておくよ。ぼんやりし過ぎてて、まだ勘違いかもって気持ちもあるし」
「そっか。じゃあまた会って、それで変な感じが強くなったら、その時は訊いてみよっか」
「そうだね。それよりお姉ちゃん、さっきのは迂闊だよ?」
「あ、あれは…うん、反省してるよ……」
気になるけど、全然分からない。だから一旦は保留にしようって事になって、うずめに関する話は終了。それからわたし達は普通の雑談を交わして、いつも通りに仲良く帰る。…ふ、普通の雑談してるよ?上じゃ注意されてるけど、すぐに普通の雑談に戻ってるって!
そんなこんなで生活圏外での出来事は終了。これもなんて事ない日々の一ページだと思っていたこの時のわたしは、早くプリンを食べたいなぁとか、お仕事をちゃちゃっと終わらせる手段はないかなぁとか、明日は何して遊ぼうかなぁとか、いつも通りにそんな事を考えているのだった。
*
帰路に着いたネプテューヌとネプギアを見送り、見えなくなったところで緩く振っていた手を降ろすうずめ。彼女は小さく息を吐くと、再びその口元に薄く笑みを浮かべる。
「また会おうね、か…。ふふ、オレも二人とまた会うのが楽しみだよ、ねぷっち、ぎあっち」
再会を楽しみにしているような、しかしどこか違和感のあるうずめの言葉。そしてそんな彼女の背に向けて、先程のうずめの如く女性からの声がかかる。
「あっれぇ?私には頼み事をしておいて、貴女は仲良しごっこですかー?」
「…少し、今の彼女達の考え方や在り方が気になっただけさ。悪いね、準備をさせてしまって」
「悪いと思ってんなら、頭位下げたらどうなの?」
「君は頭を下げたところで別の不満を持つだけだろう?」
「それは謝らない理由にはならないと思うんだけど?」
「……まさか、君が正論を言うなんてね…」
振り返ったうずめの背後にいたのは、白縹色とでも言うべき髪に、同じく水色に近い瞳をした長身の女性。それだけで彼女達の関係性が分かる会話を交わすと、女性は馬鹿にするような表情からふっと真面目な顔付きに。
「…とにかく、準備は万端なんだから、さっさと始めて頂戴。どうせここにいるのはあんたと同じ有象無象共だけど、それでも邪魔されるのは面倒臭いし」
「そうだね。まさかとは思うけど、確かに勘付かれて邪魔をされたら予定が狂う。…因みに二人はこっちにいるのかい?」
「さぁ?まあでも、これからやる事をちゃんと理解してんならいないでしょ。片方は馬鹿だから理解出来てない可能性も高いけど」
「そう悪く言わないでほしいな、彼女はオレの友達なんだから。…さて……」
他者を見下す言葉はそのままなものの、真面目に話す彼女に頷き、うずめも真剣そのものな顔に。その上でうずめは、もう一度問う。
「…最終確認だ。全ての準備は整っているんだね?レイ」
「だからそう言ってるでしょ。そっちこそ、トリガーのあんたがヘマすんじゃないわよ?」
「勿論。…それじゃあ、始めようか」
レイ、と呼ばれた女性の返答を受けて、うずめは右手を天に掲げる。
彼女の心に渦巻くのは様々な思い。彼女の脳裏によぎるのは、『計画』を始めてから今に至るまでの数々の記憶。そして、うずめはその全てを飲み込み、右手と共に決意を掲げて……告げる。
「──世界よ、沈黙せよ」
その瞬間、二人の周囲の空間が歪んだ。歪み、湾曲し、それは波となって地に、空に、世界に広がっていく。
何かが壊れる訳ではない。ただ、その波を受けている間は歪む信次元の空間。だが、何かが狂っていく。世界のルールか、揺らぐ事のない筈の法則か、それとも次元を未来へと進める歯車か。そして、それが次元の全土にまで広がり、あるかどうかも分からない次元の果てに変えた時……信次元の在り様そのものが、歪む。
(ねぷっち、ぎあっち…いいや、今の信次元を守る全ての女神よ。今の時代を生きる、全ての人よ。君達が……あの日を境に間違った道を歩み続けた今の信次元が、このまま正すべきか、それとも全てをやり直すべきなのか……まずは暫く、見定めさせてもらうよ)
ゆっくりと手を下ろし、遠くを見つめるような目をするうずめ。その背後で、にやりと悪意に満ちた笑みを浮かべるレイ。そして次の瞬間、信次元の空には本来あり得ない筈の事が起こり──その日信次元に生きる全ての人は、眠りについた。
今回のパロディ解説
・ダークサイドな高雄級一番艦さん
アズールレーンにて敵キャラクターとして登場する、高雄と呼ばれている存在の事。具体的にはつい最近のイベントにおける、瑞鶴視点でのパロディネタですね。
・「〜〜楽しくお喋り〜〜副会長さん」
生徒会の一存シリーズの主人公、杉崎鍵の事。流石にネプテューヌとネプギアをどうこうは言えませんが……イリゼならヒロインにチェンジされちゃうでしょう。
・『……12巻表紙の五河さん…?』
デート・ア・ライブの主人公、五河士道及び12巻表紙の事。ほんとにVⅡRのあのCGは似てるんですよね。おまけにこちらもディザスター感ありますし。
・「──世界よ、沈黙せよ」
カードファイト!!ヴァンガードに登場するユニットの一つ、破壊の竜神 ギーゼのフレーバーテキストの事。今後も重要なシーンで時々ヴァンガードネタは入ってきたりします。