超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第二話 これからへの仮説

 沈むばかりだった、私達の気持ち。やり場のなかった、鬱屈した思い。それを抱えたまま、飲み込む事も出来ずにいた私達の心を叩いてくれたのは、ロムちゃんとラムちゃんで……そこにイストワールさんが現れた。今起こっている事と、解決への道筋の、仮説を持って。

 

「複数の、次元……」

 

 私達を見回して、イストワールさんは言った。今信次元で起きている事態は、これまでの事態とは違うんだと。複数の次元…つまりは、別次元な存在も関わっているんだと。

 

「はい。あくまで暫定的、ですが…少なくとも、二つの次元が関係している事は確かです」

「いーすんさん、それって……あの次元、ですか…?」

 

 半ば無意識的に呟いた私の言葉に、イストワールさんは首肯。それを受けてネプギアが言ったのは、「あの次元」って言葉。

 別次元とは、文字通りの別世界。だから普通は関わる事のない、それどころかその存在を知る事すらない人が殆どなんだろうけど……とある事情…というか事故が切っ掛けで、ちょっぴりだけど皆は一度別次元を覗いた事がある。だから恐らく、ネプギアが言ったのはその次元の事で…けれどイストワールさんは、今度は首を横に降る。

 

「いえ、あの次元ではありません。次元間通信を行った際頂いた情報と、現在観測出来ている二つの次元から得られたデータとは一致しませんし、そもそもあの次元でしたら向こうから接触してきてもいい筈です。あちらには、わたしより次元移動に長けた方がいるのですから」

「じゃあ、それよりも暫く後にイリゼが関わった次元は?そっちに関しては、なんと言われても私達としてはピンとこないでしょうけど…」

「それは何とも言えません。そちらに関しては、わたしも殆ど分かっていないので…」

 

 またイストワールさんは首を横に。ノワールへの返答通り、イストワールさんは私が暫く前に関わった、あの次元を除く五つの次元の事を殆ど知らない。知る訳がない。だって、その五つの次元に住まう人達と関わった私自身も、殆ど知らないんだから。

 

「そう…悪いわね、話を遮っちゃって」

「いえ、大丈夫ですよ。…別次元に関してはとにかく曖昧な部分が多いので、まずは信次元内の異常を…人々の昏睡状態について、分かった事をお伝えします」

『……!』

 

 一度次元の話を区切ったイストワールさんが、続けて言葉を発した瞬間、私含め皆の肩がぴくんと跳ねた。

 この異常事態に関わりのあるらしい次元の事は、勿論気になる。でも昏睡の件は、今も眠り続けている人全ての命に関わる事。女神である私達が、それを後回しになんて出来る訳がない。

 

「い、イストワールさん、何がわかったの…?(どきどき)」

「げーいん?それともおこすほーほー?」

「お、落ち着いて下さいお二人共…。…残念ながら、能動的に起こす方法はまだ分かりません。しかし……昏睡状態の方々の、生命の危機は一先ずないと見てよさそうです」

「……っ!…そっ、か…そうなん、ですね…」

 

 緊張から安堵へ、声音が移り変わりながら呟くユニちゃん。口にはしなかったけど、私も同じ気持ちで……皆も安心したように、固まっていた表情が次々と緩んでいった。…良かったぁぁ……。

 

「…しかし、それはどういう事でして…?わたくし達女神ならともかく、普通人の方々が眠り続ければ……」

「仰る通りです。普通でしたら、栄養補給無しで人が耐えられる期間はそう長くありません。しかし…」

『しかし……?』

「…どうも、昏睡状態の方々は何らかの力により、眠った状態で身体が維持されているようなのです。例えるのなら…さしずめ、封印されているような状態…でしょうか」

 

 生命の危機がないのは、エネルギーの消耗という時間の流れが無くなっているか、極端に遅くなっているから。強く揺すっても誰一人として起きなかったのは、その力によって『昏睡』という状態で固定されてしまっているから。…こういう事なんだろうと、例えを踏まえたイストワールさんの説明で、私は理解する。

 

「なら、その力が無くなれば……」

「えぇ。目を覚ます可能性は、大いにあるでしょう」

 

 首肯をしてくれたイストワールさんの目や声音に、気休めを言っているような雰囲気はない。

 その答えが、どれだけ私達にとって救いになったか。一先ず生命の危機はないってだけでも安心したけど、目を覚ます可能性が大いにあるなら尚嬉しい。だって…私達は女神で、大切な人も沢山いるんだから。

 

「では次に、何故皆さんには影響がなかったのか、ですが……恐らくこれは、シェアの力による昏睡であるからだと思われます」

 

 安堵する私達の様子を見て、少し待ってからイストワールさんは説明を続ける。気持ちの緩んでいた私達も、次なる仮説で気が引き締まる。

 

「シェアの力…犯罪神がもう復活して、破滅への新たな主体として皆を眠らせた…という可能性はあるの?」

「ない、と断言は出来ませんが……ブランさんの言う可能性は、極めて低いと思います。だとすれば、幾ら何でも復活が早過ぎますから」

「…じゃあ、いーすんさんが一人だけ早く目覚めたのは……」

「わたしが皆さんと同じく、シェアエナジーによる存在であるからでしょう。皆さんには影響がなかった事、わたしが真っ先に目を覚ました事……そして何より、情報収集が難航している事から、わたしはこの仮説を立てました」

 

 得られたのは確たる真実ではなく、あくまで結果であり、その結果から導いた事だから、仮説なんだ。…イストワールさんの言葉には、そんなニュアンスが含まれていた。……因みに理由は定かじゃないけど、イストワールさんはシェア絡みの事に関しては、それ以外の事に比べて上手く調べられないらしい。

 

「そして、この仮説が正しいのであれば…教祖のお三方や、コンパさん、アイエフさん達パーティーの方々も、比較的早期に目を覚ますと思います」

「は、本当ですか!?…でも、どうして……?」

「それはですね、まず前提として、シェアエナジーは人に対して影響を与えます。これは説明不要ですね?」

「えぇ。これまでにも何度かその影響は受けていますもの。わたくし達ではなくあいちゃん達が、ですけれど」

 

 今度は私達が、イストワールさんの言葉に首肯。裏天界やギョウカイ墓場での精神汚染だったり、それを防ぐ手段が私達のシェアエナジーによる加護(みたいなもの)だったりと、確かに何度もシェアの影響は目にしている。

 

「とはいえそれは、シェアエナジーそのものの力。対して先に挙げた方々が受けているのは、シェアの担い手たる『女神』の力なのです」

「ふむ…そこまでは了解よ。続けて」

「シェアエナジーの力は、対象を問わず影響するもの。対して女神の力は、ノワールさん達女神の方々と深く付き合い、女神からも『大勢の一人』ではなく『特定の個人』として思われ続けた人に向けて、少しずつ影響を及ぼすもの。それによる効果は幾つかありますが……」

「その一つが、シェアの力による耐性…って事なのね」

 

 言葉を引き継ぐ形で、ブランが説明の結論を口に。…そういえば、ネプテューヌやロムちゃんラムちゃんは、この話についてこられてるのかな…。

 

「仰る通り、その耐性がある分、早く目覚める可能性が高いのです。特に教祖のお三方は代々影響を受け続けているので、遺伝レベルで高い耐性を持っているでしょう」

「そうだったんですね……アタシ、初めて知りました…」

「…そう、でしょうね。…最後の仮説、今信次元に迫るもう一つの危機に関して、説明を続けても宜しいですか?」

「……?…大丈夫、ですけど……」

 

 ほんの一瞬、目線を伏せたイストワールさん。返答するネプギアも、それは気になったみたいだけど…そこについては誰も追求しない。何故なら、それ以上に気になる事が…もう一つの危機という、軽くは流せないワードがイストワールさんの口から発されたから。

 

「では……これは仮説の中で最も確証の低い、勘違いの可能性も十分にある事柄です。ですが、もし勘違いでないのなら……」

『…………』

「…そう遠くない未来、先に挙げた二つの次元と信次元は衝突し……想像も付かない程の被害が、三つの次元に発生するでしょう」

 

 その言葉に、第三の仮説に、私達全員が言葉を失った。それには勿論、驚きや焦燥もある。そんな馬鹿な、とも思った。けど、同時に……少なくとも私は、一瞬「えっ…?」という感情も、抱いた。

 

「衝突って…そもそも次元は概念的なものなんじゃないの?一つになる前の四大陸みたいに、物理的な衝突をするって事なの?」

「いえ、ノワールさんの言う通り、次元とは概念的なものです。なので確かに衝突という表現は適切ではないのですが……何分その概念的な存在同士の話なので、端的に表現するのは難しいのです」

「とにかく、放置していい問題ではない…って事ですよね。じゃあ、その対処方法は……」

 

 具体的な事は言っていないイストワールさんだけど、次元同士の衝突なんだから、本当に想像も付かない被害が出る事はきっと間違いない。そして私達は、信次元内の問題だけでも手一杯どころか手に負えない程の状態だけど、だからって後回しにする事も出来ない。

 だから私は訊いた。どうすれば良いのかを。それを受け、それに答える形で、イストワールさんは言う。

 

「──信次元内、そして二つの次元でその原因となるものを発見、処理する事……ただ、それだけです」

「…という事は、もしや……」

「…遂に…遂に本番で次元移動展開キターーっ!」

「うわぁ!?ネプテューヌ急に何!?」

 

 イストワールさんが告げたのは、真面目そのものな回答。けど私が解釈を口にしようとした瞬間……ネプテューヌが叫んだ。

 

「何って、次元移動展開だよ次元移動展開!イリゼは思わないの?遂に本編でもこれが来たかって!」

「い、いや思わない事もないけど……え、ここまでずっと妙に静かだと思ったら、説明始まってからの第一声がそれ…?」

 

 一人だけ違う声が聞こえてたんじゃないかな、と思う程目をキラッキラとさせたネプテューヌの言葉に、私は困惑。…どうしよう、ほんとにネプテューヌのテンションが分からない…。

 

「状況を見計らっていたのさー!暗いターンはもうお終い、いつものねぷ子さん大復活だよっ!って皆に伝える瞬間をね!…でも予想以上にそれをねじ込む隙がなかったから、わたし空気状態だったという……」

「お、お姉ちゃん…そんな理由で黙ってたんだ…」

「そんなじゃなくて、大事な理由だよ。わたしは…わたし達はもう前を向いて、走り出してるんだよって宣言でもあるんだから、ね」

 

 呆れ気味のネプギアに返すネプテューヌは、少しトーンダウンして私達を見回す。

 そうだ、それはそうだ。ロムちゃんとラムちゃんの思いに触れて、二人の言葉で自分達がどう見えているのか分かって、私達の意識は、心の向き方が変わった。ケーキこそ、作られなかったけど……私達には、喝が入った。だから今の言葉は、まぁ半分はいつものメタ発言だけど…もう半分は、私達に向けた確認でもある。皆もそうだよねっていう、ネプテューヌらしい確認の言葉。

 

「全く、貴女は…それで、結局何が言いたいの?」

「え?んーと…次元移動展開に歓喜しただけだから、特にはないよ?」

「…………」

「あ、おねえちゃんがむひょーじょーになった…」

 

 無表情になってしまったブラン。…多分、訊かなきゃよかった…って思ってるんだろうね……。

 

「こ、こほん。脱線してしまいましたが、ネプテューヌさんの認識は間違っていません。そして、二つの次元に向かうメンバーですが……信次元の状況及び何か起きた際の対応を踏まえれば、二人が最善かと思います」

「どうして、二人…なの……?」

「今言った通りの事が、大人数を送れない理由です。そして、一人でないのは…単に、一人と二人の間には、大きな差があるからですよ」

「確かにそうですわね。別次元に一人では、流石に心細いですもの」

 

 胸を載せるスタイルの腕組みをしながらベールが言った言葉に、私は力強く首肯。…ほんとに、何も分からない場所で一人っていうのは怖いし、心細いんだよね…。

 

「…という訳で、その二人の選出は皆さんに任せたいのですが…」

「あ、それはアタシ達が決めるんですね」

「はい、誰が別次元に行くかは重要な部分ですからね」

「確かにね。じゃあ、まずは一人目だけど……」

 

 同じく気付けば胸を腕に載せてるノワール(私も一応やれるけど…止めておこうかな。流石に三人もやったらネプテューヌとブランが不機嫌になるし)の発言を受けて、皆の視線がすっと動く。で、その視線が集まったのは……私。

 

「……やっぱり?」

「えぇ、イリゼはこの中で唯一別次元での経験を、それも複数回しているんですもの。経験があるというのは、その内容に関わらず意味がありますわ」

「まぁ、そうだよね。皆も同意見?」

「そうね。イリゼとしてはどうなの?」

「うーん…皆が期待してくれてるなら、私は引き受けるよ。私だって女神だし……この中じゃ、一番動き易い立場でもあるからね」

 

 ブランからの問いに私は答えて、それから小さく微笑みを浮かべる。

 動き易い立場というのは、私が国を持たない女神だって事。勿論、私にも信仰してくれる人はいるけど、やっぱり国の有無は…特にこんな状況じゃ、精神的にも責務的にも私と皆じゃ大分違う。けど、それをそのまま口にするのは皆に変な気を遣わせちゃうかもしれないと思ったから、私は当たり障りのない表現と微笑みで問いに答えた。

 

「なら…頼むわね、イリゼ」

「うん、任せて。……で、もう一人は…」

「そこはやっぱりわたしでしょう!うんうん、わたしだよ!」

『…………』

 

 どうする?…という言葉も待たずにネプテューヌは立候補…というか、主張。自分で自分に同意しちゃう離れ業は……なんて言うか、もういっそ鮮やかだった。

 

「…え、と…どうしてネプテューヌさんは、立候補を…?」

「それは勿論、イリゼに負けていられないからだよ!だって現状イリゼは五回も次元移動してるのに、わたしはゼロ回なんだよ!?これじゃディメンジョントリッパーの名前が廃るってものだよ!」

「ほぇ…?…ライブのとき、うたった曲…?(きょとん)」

「そ、それはTHE ANIMATIONのだね…とにかくこの現状をわたしは良しとしないんだよ!…いや、ほんと地味にわたしのアイデンティティにも関わるし…」

「お姉ちゃん…幾ら何でも、そういう理由でってのは流石に……」

「…いえ、ネプギアちゃん。案外、ネプテューヌが行くのはベストな選択かもしれませんわよ?」

 

 女神候補生二人の問いに怒涛のネプテューヌ節で返すネプテューヌ。これには流石のネプギアも呆れて……けれどそこで、ベールが賛同の言葉を口にする。

 

「え…そ、そう…ですか…?」

「そうですわ。勿論、動機がしょうもないのは否定しませんけれど、最悪向かった先で敵視されながら孤軍奮闘する事になる…という事も考えられる以上、精神力は大切ですもの。そしてその点において、ネプテューヌの自身も周りもポジティブに出来る力は、非常に頼もしい存在になると思いますわ」

「確かにね。それに理詰めじゃどうにもならない事が起こるかもしれないし、イリゼの相方って意味でも悪くない人選なんじゃないかしら。…べ、別にネプテューヌを褒める訳じゃないけど…」

「…消去法でも、ネプテューヌというのは妥当ね。妹のいないベールは言わずもがな、わたしもロムラムにルウィーを任せる…というのは少し不安だし、ユニは実力的には大丈夫そうだけど…姉妹揃って、そこは変に気負う悪癖があるでしょう?」

『うっ……』

 

 続いてノワールとブランも賛同。これにはネプテューヌもネプギアも目を丸くしていて、特にネプテューヌなんかは「あ、あれ?これ皆から止められる流れじゃなかったの…?」みたいな表情に。

 けど、三人共的外れな事は言っていない。それぞれ言っているのは尤もな事で、今の状況に合った意見だって私も思う。

 

「…との、事ですが…イリゼさんはどうですか?わたしは、皆さんの推薦があるのでしたらネプテューヌさんでも問題ないと思いますが…」

「私も大丈夫ですよ。ネプテューヌだって本気で私の対抗心だけを理由に立候補した訳じゃない筈ですし、プラネテューヌにはイストワールさんとネプギアもいる訳ですからね」

「分かりました。……それではネプテューヌさん、イリゼさんと共に……」

「ま、待って下さい。…わたしも行っちゃ、駄目…ですか…?」

 

 私から肯定の返答を受け、見回す事で他に意見はないか確認したイストワールさんは、ネプテューヌに向き直る。そうして別次元での活動メンバーが決まりかけて……その寸前、ネプギアが待ったをかけた。

 

「…ネプギアさんも、ですか……?」

「は、はい。わたしも、行きたいんです」

「……どうして、ですか?」

「……不安、なんです…お姉ちゃんも、イリゼさんも強い事はよく分かってますけど…心配する必要はない、って思う気持ちもあるんですけど……それでも、わたしは安全なプラネテューヌで、お姉ちゃんは敵だらけかもしれない場所に行くっていうのは……」

「…それは……」

 

 言葉の通りに不安げな、ネプギアの声音。多分、ネプギアは思い出している。ギョウカイ墓場で、ネプテューヌ達が捕まってしまった事を。

 当然あの時と状況は違う。むしろ『そう簡単には会えない場所』で『離れ離れになる』という二点しか共通していないけど……その二つは、最も重要な共通点で、もしかするとさっきネプテューヌの主張を否定しようとしたのも、その不安があったからかもしれない。それが分かっているから、イストワールさんも一度言葉に詰まって……だけど、再び口を開く。

 

「…残念ながら、それは…ネプギアさんだけは、このメンバーに加える事は出来ません」

「……っ…!?ど、どうしてですか…?」

「ネプギアさんには、次元移動の為の補助装置を……完成間近となっていた例の機材を、使える状態に仕上げて頂かなくてはいけないからです。…これは早急に、それこそ多少の無理をしてでもして頂かなくてはいけない事。そして、その知識があるのは……ネプギアさん、だけですから」

 

 申し訳なさそうに、けれどはっきりとイストワールさんは言う。ネプギアには突貫作業をしてもらわなくちゃいけなくて、その為にはきっと相応の疲労が伴う筈で、だから駄目なんだと。

 機械の開発となると、私達じゃ代わりなんて務まらない。それ故に、私達は何も言えず……ネプギアもまた、理解は出来るけど…と言いたげに小さく俯く。

 

「…頑張ります。迅速に作り上げて、その上で別次元での活動もしっかり出来るようにします。…それじゃ、駄目ですか…?」

「…………」

「…そ、そういう事ならやっぱわたしは止めておくよ。考えてみれば守護女神のわたしが真っ先に国を離れるっていうのも良くないし、ネプギアとイリゼなら安定感のあるコンビに……」

「…そういう意味じゃないでしょ、ネプテューヌ。ネプギアは別次元に行きたいんじゃないんだから」

 

 少し慌てた様子で自分の主張を引っ込めようとしたネプテューヌを、ノワールが止める。なら私が…とも一瞬思ったけど、それも駄目。私が真っ先に選ばれたのは、ネプギア同様私にしかない要素があるからで…だからこそ、安易に私は降りちゃいけない。

 その結果、訪れた沈黙。気不味い空気だけど、一番心苦しく思っているのはきっと、この空気を作ってしまった原因で、且つそれでも思いを曲げられないだけの理由があるネプギア自身で……そんな中、すっとブランがネプギアの前に立つ。

 

「…一つ、いいかしら?」

「…ブランさん…?」

「ネプギア、貴女の気持ちは分かるわ。でも、この状況……こちらに残る事は、貴女にとって大きな意味のある事でもあるのよ?」

「……?それって、どういう……」

「──DB症候群」

「……!?」

 

 ぼそり、とネプギアの耳元でブランが何かを呟く。その瞬間、ネプギアは目を見開いたけど…私達にはいまいち会話が聞こえてこない。

 

「二人と共に行った場合、貴女は強力な相手と競合する事になるわ。貴女よりもその経験が豊富な二人とね。しかも、余程の大所帯にならない限り、複数のパーティーで動く事になる可能性も低い…」

「た、確…かに……」

「けどその一方で、こちらに残った場合はどうかしら?こちらに残った場合、貴女は……」

「……!」

 

 くわっ、と更に目を見開くネプギア。それからネプギアは、周りを…というか私とネプテューヌ以外の七人を見回して、それからネプテューヌの前へ行って手を掴んで……言う。

 

「…お姉ちゃん。無事に帰ってきてくれるって、信じてるからね」

「え、えぇー……」

 

……まさかの、解決だった。あのネプテューヌすら普通に困惑した反応しか出来ないような、全くもって意味の分からない形で解決に至ってしまった。…ブラン、してやったりみたいな顔してるけど、一体どんな方法を……?

 

「…………」

「……え、と…」

「……って、さ、流石にこれじゃ納得はしませんよ!?いやいや、わたしそこまで…それこそお姉ちゃんと天秤にかけてまで主人公ポジションを守りたい訳じゃないですからね!?…み、魅力は感じましたけど……」

「うわっ!?い、いきなり反転しないでよネプギア…っていうか、あー…うん…今のでなんとなーく察せたよ…」

 

 と、思っていたのも数秒の事。はっとしたネプギアがブランに言われたであろう事を否定して、直前の言葉は撤回された。…ネプテューヌ及び皆の呆れ顔付きで。

 

「ま、まぁまぁ落ち着きなさいよネプギア。アタシだって、同じ立場なら素直に送り出せるかどうかは分からないけど…アンタも自分が我が儘を言ってる事は分かってるでしょ?」

「そ、それは…分かってる、けど……」

「だったらこの件は一旦保留でどう?…というか、どうですか?その機材が完成しなくちゃ事が進まないなら、誰が行くかは一刻も早く決めなきゃいけない事…ではないですよね?」

「あ…はい、そうですね。準備もありますし直前で決める訳にはいきませんが、ユニさんの言う通りです」

「…だって。そういう事だから、機材の仕上げをしながら考えなさいよ。人手が必要なら、アタシも手伝ってあげるから」

「ユニちゃん……うん、そう…だよね。…皆さん、もう少し考えさせてもらっても…いい、ですか…?」

 

 前半は呆れ顔のまま、途中からは同じ候補生として、友達として助言を伝えるユニの言葉。それを受けて、ネプギアは私達の方を向き直り……ネプギアの言葉に、私達は頷いた。

 

「じゃ、この件も一旦はお終いだね。いーすん、次は…って、今のが最後なんだっけ?」

「はい。取り敢えず今伝えるべき事は、今ので以上です」

「であれば、ここからは行動再開ですわね」

「では、わたしも検索に戻ります。今は時間が惜しいですから……」

 

 そうしてイストワールさんによる仮説の話は終了。まだ仮説を話しただけで、現実は何も変わってないけど……解決には大きく進んだって、私は思う。先は長くても、大きな一歩は一歩だって。

 それと同時に、そういえばこんなに顔文字を使わないイストワールさんも珍しいなぁ(いや状況が状況だから当然だけど)、なんて思って…………次の瞬間、イストワールさんはがくんと大きくよろめいた。

 

「……っ!」

 

 反射的に床を蹴り、本ごとイストワールさんをキャッチする私。ぱたり、と本の上に落ちたイストワールさんは……顔色が、優れない。

 

「い、いーすん大丈夫…?」

「す、すみません…少しばかり、検索で疲れてしまったのだと思います…」

「少しばかりって…無理しちゃ駄目ですよ、イストワールさん……」

 

 すぐにイストワールさんは起き上がって、すまなそうな表情を浮かべる。その反応を見る限り、本当にただの疲労によるものみたいだけど…だからって、「ならいっか」となる私じゃない。

 

「無理ではありませんよ、イリゼさん…。今は、信次元の存続にも関わる事態なんです。それにネプギアさんにも無理を強いている以上、わたしが楽をするなど……」

「イストワールさん」

 

 さっきブランから指摘されたノワールとユニじゃないけど、明らかに気負いを感じさせるイストワールさんの言葉と表情。でも…いやだからこそ、私はイストワールさんの目を真っ直ぐに見て、語気を強めに言った。

 それに一瞬イストワールさんは、目を逸らそうとした。でも、それを許さない位に私はじっと見て……イストワールさんは、折れる。

 

「……では、少しだけ…仮眠を取らせて、もらいますね…?」

「はい。仮眠と言わず、しっかり休んで下さいね」

 

 善は急げ、と私はイストワールさんをイストワールさんの部屋へと連れて行く。自分で行けるとは言ったけど、それも押し切ってしまう私。何故私が強めに言ったのか、それでイストワールさんが押し切られるのかといえば……それは私にとってイストワールさんは姉の様な存在で、イストワールさんにとって私は妹の様な存在だから。

 

「皆、お待たせ。それで、これから皆は具体的にどうするの?」

「ふむ、イリゼも無事だったんだな」

「あ、はい。マジェコンヌさんもご無事で……って、マジェコンヌさん!?」

 

 それからリビングに戻ってきた私は、私がイストワールさんを連れて行った間に何か話が進んだかな…と思って、早速質問をかけてみる。すると返ってきたのはマジェコンヌさんの声で……それはもうびっくりした。だって…って、これは流石に説明するまでもないよね…。

 

「あぁ。暫く前に目が覚めてな。あまりにも理解を超えた状況に混乱し、一先ずここに来れば何とかなると思って、今は彼女達から説明を受けていたところだ」

「そ、そうなんですか…(そっか、マジェコンヌさんはもう殆ど女神みたいな存在…だから、昏睡からの回復も早いんだ…)」

 

 とにかくびっくりした私だけど、落ち着いて考えてみれば何らおかしい事じゃない。そう理解した私は皆と共に状況を説明し、それが終わったところで口を開いたのはネプテューヌ。

 

「よーし、二人目が目を覚ますっていう幸先の良い事もあったし、こっから頑張っていこうよ皆!へいへいほー!」

『ほー!……あれ…?』

「ふふん、という訳でパロネタ挟んで本日は以上!次回もお楽しみにねっ!」

 

 開いたかと思えば、出てきたのはやっぱりネプテューヌ節。…でも、これが私達らしさであり…そういう明るさこそが、私達の強みの一つ。そう思って私は微笑み……頑張っていこうね、と心の中で同意をするのだった。

 

 

 

 

「……にしても、今回ってほぼ説明だけの回だったね。第二話でそれって、作品として大丈夫なのかな?」

「い、いや……それを言うならそんな発言の方が、余程問題だと思うんだけど…!?」




今回のパロディ解説

・THE ANIMATION
原作シリーズのメディアミックスの一つである、アニメ版の事。更に言えばそのOPであり、前作ORにて取り扱ってたネタの一つでもありますね。

・DB
DRAGON BALLの略称の一つの事。加えて言えば、DB症候群は原作(V/Re3)ネタの一つですね。…本作のネプギアは、DB症候群になんてなりませんよ!

・へいへいほー
歌謡曲、与作のフレーズの一つの事。へいへいほー、と言って拳を突き上げるネプテューヌも、それに乗るロムラムも、とても可愛いと私は思います。
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