超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第三話 貫く思いと新たな旅立ち

「お姉ちゃん、ドライバー貰える?」

「OK、何が良い?ダブルアーム?ツームストン?それともダークネス?」

「じゃあ、ゴッチ式で……」

「よーし…ってあれ!?突っ込みは!?わたしにやれと!?」

 

 プラネタワー……じゃなくて、プラネテューヌのとある研究施設。色んなパーツとかコードとかが転がっている部屋の中で、わたしとネプギアは作業をしていた。…作業だよ?プロレスはしてないよ?

 

「あ……ごめんねお姉ちゃん。組み立てるのに集中してて…」

「う、うん…そうだね、今のはボケるタイミングを間違えたわたしのミスだね…まさかゴッチ式で返されるとは思わなかったけど……」

 

 一拍置いて…っていうか、わたしの突っ込みで初めてボケに気付いた様子のネプギアは、視線を機材からわたしの方へ。…言ってから気付いたけど、「ゴッチ式で返されると〜」じゃ、技返されたみたいになっちゃうね…。

 

「えぇと、ドライバーはこれで良い?」

「うん、ありがとね。それと銅線も持ってきてもらえる?」

「任せて〜、ついでに導火線も持ってこよっか?」

「い、要らないよ…ここは火気厳禁だからね…?」

 

 リベンジの小ボケを挟みつつ、わたしは銅線を取りに近くの道具箱へ。ええっと、銅線の入ってるのは…これだね。

 

「他に何かする事ある?」

「うーん…今は大丈夫かな」

「そっか、じゃあ……」

 

 銅線を渡したわたしは、一度部屋を出て給湯室へ。そうして数分後、わたしは二人分の緑茶とマカロン、それにウェットティッシュをお盆に載せて戻ってくる。

 

「ネプギアー、ちょっと休憩したらどう?もう結構な時間やってるしさ」

「え?…あ、ほんとだ……」

「ほんとだ、って……」

 

 本当に気付いてなかった様子のネプギアに、わたしは思わず呆れ笑い。…ネプギアのメカ好きはもう十分に知ってるし、ネプギア頼りの状況でこうやって集中してもらえてるのは、ほんとにありがたいけど…イリゼじゃないけど、こういうとこはネプギアもしっかりしてるようでしっかりしてないよね……。

 

「…わたし、まだ大丈夫だよ?」

「でも、時々リフレッシュした方が効率良いでしょ?」

「え、と……わたし的には、結構楽しいっていうか、趣味の延長でやれてる面もあるんだけど……」

「あっ……」

「……け、けどうん。折角お姉ちゃんが用意してくれたんだし、後にしたらお茶冷めちゃうもんね!ちょ、ちょっと休憩しようかな!」

 

 メカ好きって分かってたのに、だからネプギアにとってこれは単なる作業じゃないって事は失念していたわたし。でもなんだかよく分からないけど、ネプギアは休憩する事に決めてくれた。…気を遣われたような気もするけど…気のせいだよね、うん。

 

「はふぅ……」

「ごめんね。おやつ用にマカロンを持ってきたんだけど、マカロンに合いそうな飲み物は給湯室になくて…」

「ううん、気にしないで。っていうか、そんなに悪くないよ?」

「ほんと?…あ、ほんとだ……」

 

 広げたシートにぺたんと座って、わたし達はおやつ休憩。ネプギアは慌ただしく食べてすぐに作業再開…なんて事はなくて、ちゃんと休んでくれている。

 ネプギアが今作っている…というか、使える状態にしようとしているのは、次元移動補助装置。いーすんが別次元に繋がるゲートを作るサポートをしてくれる機材で、これが完成しなきゃ次元衝突の回避は出来ない……とまでは言わないけど、これ無しだとゲートの安定性もいーすん負荷も全然違うから、やっぱりなくちゃ困っちゃう。

 そんな機材の準備をわたしは今手伝っていて、他の皆は一先ずの救助をした国民をもっと安全な場所に移動させたり、何か別の異変も起きていないか調査中。

 

「…後、どれ位で完成しそう?」

「もうすぐだよ。明後日…ううん、頑張れば明日の夜には出来るかな」

「おぉー!さっすがネプギア、頼りになるぅ!」

「ふふっ。偶々わたしがちょっと得意な事が、今役に立ってるだけだよ」

「しかも謙虚…!気弱なゴブリン達を助けた王国軍並みに謙虚だね!」

「ま、また意外なところから例えてくるね…」

 

 こんな感じに謙遜してるけど、ネプギアは本当に凄い。技術もそうだけど、わたし達は簡単な手伝いしか出来ない中でネプギアは連日頑張ってくれてるし、文句も弱音も一切吐いていない。勿論、そんな事言っていられる状況じゃないって事もあるけど…わたしは本気で、そんなネプギアを誇らしく思ってる。思ってるし……だからこそ、そろそろわたしはこの話を切り出さなきゃいけない。

 

「…それでさ、ネプギア。……どうしたいかは、決まった?」

「……っ…」

 

──その瞬間、ネプギアの表情から柔らかさが消える。穏やかだった笑みが、途端に固くなる。

 

「…まだ、決まってない?」

「それは、その……」

 

 止めたいな、と思った。折角楽しい雰囲気だったのに、それが台無しになっちゃったんだから。……でも、面倒な事はすぐ後回しにするわたしだって、本当に後回しにしちゃいけない事の区別位は、ちゃんとつく。

 

「…………」

「…言わなきゃ、駄目…?……だよ、ね…」

 

 わたしが見つめる中、ネプギアはわたしに訊いて……それからすぐに言い直す。…分かっている、というように。

 

「…やっぱり、わたし嫌だよ…不安なのもあるし、例えお姉ちゃんが無事でも、行った先で帰ってくる手段を得られる確証はないし……」

「…それも踏まえて、機材を作ってるんでしょ?」

「そうだけど…それでも、上手くいくかは向こうの次元次第だし……けど、それがわたしの我が儘だって事も、選択として正しいのは送り出す事だって事も、分かってて…お姉ちゃんとイリゼさんなら大丈夫だよ、って思う自分もいて…分かってるし、そんな自分もいるんだけど……」

「…頭で理解してる事を、自分の決定にする為の後一歩が足りない?」

 

 途切れた言葉をわたしが引き継ぐと、ネプギアは小さく頷く。頷いて、そのまま今度は小さく俯く。

 ネプギアらしいな、と思った。わたしよりもずっと普通の考え方で、けど前向きさもあって、ちょっと自信無さげで……ほんとに、ネプギアって感じの言葉。

 それがいいかどうかは分かんない。だって性格なんて、良い言い方も悪い言い方も出来るんだもん。でも……

 

「…ネプギア、ちょっと立って、女神化してくれる?」

「女神化…?…いい、けど……」

 

 釈然としない顔をしながらも、立ち上がるネプギア。それに応じるようにわたしも立って、女神化して……ネプギアに、真正面から向かい合う。

 

「…貴女は、わたしの妹よ。妹で、家族の、ネプギアよ」

「う、うん……」

「けど……同時に貴女は、女神候補生よ。国の統治を担う一人で、わたしの仲間の、パープルシスターよ。…その意味は、分かる?」

 

 ネプギアへと身体ごと向き直ったわたしは、ネプギアに言う。絶対に帰ってくるよとか、ネプギアの思いだって間違ってないよとか、そういう言葉もかける事は出来たけど……今かけるべき言葉はそうじゃないって、わたしは感じた。

 

「……国の為に、国民の為に…それを考えられなきゃ、駄目だって事…?」

「そうね、それもあるわ」

「…自分で決めて、自分でこうするんだって言えるようになりなさいって事…?」

「それも間違ってはいないわね」

「…どっちも、違うの?だったら、それは……」

「──貴女には、パープルシスターであるネプギアには、正しいとか間違いだとか、良いとか悪いとか関係なしに、自分の思いを貫いていい権限が、立場があるって事よ」

 

 困惑するネプギアに、わたしははっきりと言い切る。妹としてのネプギアじゃなくて、女神としてのパープルシスターに向けて。

 誇張じゃない。本当に女神にはそれだけの権限があるし、それはネプギアだって知らない訳はない。でも勿論、これは言葉通りの意味もあるけど…それだけじゃない。

 

「昔の、前のネプギアだったら、その権利はあってもわたしはこんな事を言えなかったわ。だって、権利には責任が付くものだし、自由にしていいって言われても、それを負荷に感じるんじゃないかって、わたしは思っていたもの」

「…………」

「けど、今のネプギアは違うわ。貴女はもう立派な女神で、前も言ったように、わたしは貴女を『仲間』としても見ているわ。だから、ネプギアがわたし達と一緒に行きたいって、強く思っているなら周りに遠慮する必要なんてないし……パープルハートとして、わたしは貴女の選択に賛同する。勿論、どんな思いでも肯定してあげるって訳じゃないし、皆から賛同を得られるかどうかは別の話だけど…貴女は貴女の思いを貫いていいのよ、ネプギア」

 

 正しいか否かは二の次の事、いや…わたし達女神が決める事。今のネプギアがこうしようと思う事があるのなら、その通りにすれば良いだけの事。ネプギアとしてしたい事を貫くか、パープルシスターとしてしたい事を貫くか、或いはその両方で貫くか……どの選択をするかは分からないけど、きっとネプギアなら大丈夫。…そう思わせてくれるだけの事を、ネプギアは積み重ねてきたんだから。

 

「…わたしは、わたしの思いを……」

「えぇ。さて……もうちょっと休憩したら再開だよ!あ、因みにネプギア肩凝ってたりする?今なら特別に、お姉ちゃんが揉んであげるよ〜?」

「か、肩?…うーん…じゃあ、お願いしよっかな。凝ってるかどうかは分からないけど」

「任せて!よぉし、揉むぞー!揉んで揉んで揉みまくって、揉み返しが起こる位にしちゃうからねー!」

「それは困るよ!?ほ、程々にお願いね…?」

 

 伝えるべき事を伝えたわたしは、女神化を解いてさっきまでの雰囲気を復活させる。丁度良いタイミングだからって事で切り出したけど、やっぱり休憩中はリラックス出来なきゃ意味ないからね。

 という訳でわたしはネプギアの肩を揉んで、それから作業を再開。休憩のおかげか、それともネプギアの中で何かが決まったからなのかは分からないけど、再開後のネプギアは絶好調で、作業がどんどん進んでいく。

 わたしは、どうする気かは聞かなかった。けど、ネプギアの顔を見たら、その必要はないなと思った。そう思わせてくれる表情を、ネプギアはしていて……翌日の夜、言葉通りにネプギアは機材を完成させるのだった。

 

 

 

 

 準備が完了するまでの間、私はベールと共にリーンボックスで活動していた。皆が眠り続けている、静かな信次元はまるで違う次元のようで、ずっと違和感があった。

 けれどそれでも、信次元は信次元。私の住まう、私達の次元。今から、その信次元から遠く離れた未知の次元へ向かうとなれば…やっぱり、緊張する。

 

「お二人共、お願いします」

「がんばって、ね…!」

「こっちはまかせてよね、イリゼちゃん、ネプテューヌちゃん!」

「あ、う、うん…結局ちゃん付けは確定しちゃったんだね……」

 

 私達がいるのは、連日ネプギアが作業していた研究施設。その一角に、イストワールさんのゲート形成をサポートする機材が用意されていて、後はもう実際に開くだけの状態。

 

「うぅ、いざ行くってなると流石に緊張するなぁ…」

「あ、ネプテューヌも緊張するんだ…」

「するよー、だって初めての次元移動だし、わたし公用語以外じゃのりピー語位しか話せないし…」

「いや、それは色々違うでしょ…後なんでのりピー語は話せるのよ……」

 

 緊張しているという割には平常運転なネプテューヌに、ノワールが半眼で突っ込む。…でも多分、ネプテューヌが言ってる事は嘘じゃない。……あ、嘘じゃないって緊張の部分だよ?だって、今回はこれまでと違って意識的に向かうとはいえ…もう何度も別次元に行ってる私だって、緊張してるんだから。

 

「…イリゼ、色々と大変にはなると思いますけど、頑張るんですのよ?」

「気苦労が絶えないと思うけど、決して無理はしないようにね?」

「ちょっとー、何だかわたしを軽くdisってる気がするぞー?」

「うん、二人共ありがとね。…イストワールさん、今回もライヌちゃんの事をお願いします」

「ちょっとー!?disる上にスルーとか酷いよ!?わたしだって緊張してるんだから、少しは優しくしてよね!?」

「なぁに、それだけ言えるのなら大丈夫さ、ネプテューヌ」

「そういうフォローは嬉しくないよ!?っていうか、自然にわたし弄りに参加するとか、OAの頃からは思えない程馴染んできたよねマジェコンヌも!」

 

……うん、まぁ完全にいつもの私達な訳だけど、本当に緊張はしています。嘘じゃないです。

 

「…こほん。お二人共、準備は宜しいですね?」

「はい、大丈夫です」

「わたしは弄られてちょっとむむぅ、って気分だけど…まぁだいじょーぶだよ」

「では……」

 

 一度やり取りが途切れたところで、イストワールさんは私達に問う。それに私達が答えると…その視線は、ネプギアの方へ。

 あれから何度か、ネプギアに声をかける事も考えた。でもそれはしなかった。だって、わたしに任せてって、ネプテューヌが言っていたから。だから私も、皆も何も言わず……結論を待った。そして、私達が見つめる中……ネプギアは、言う。

 

「…イリゼさん。これを要件に合う設備に組み込めば、こちらとの繋がりを確立出来る筈です。手順は中の紙を見てくれれば分かると思います。勿論、想定通りならですが……その場合でも、こちら単体で繋げる手段は準備し続けますから、心配しないで下さい」

「ネプギア……」

「うん。…わたしは…わたしが、守るよ。お姉ちゃんとイリゼさんの帰ってくる…わたしとお姉ちゃんの、プラネテューヌを」

 

 言葉と共に渡される、大きなケース。私とネプテューヌが戻ってくる為に必要な、大事な機材。

 それは、ずしりと重かった。ケースそのものも重いし……言葉もまた、その中に込められた思いもまた、重みがあった。ただの少女じゃない、女神の一人としての…重く、けれど背負い甲斐のある重みが。

 

「そっ、か…なら、こっちは任せたよ、パープルシスター」

「向こうはお願いね、パープルハート」

 

 それから二人は向き合って、言葉を交わしてうなずき合う。お互い多くは語らなかったけど……その必要はないんだと、二人の間では通じ合っているんだと、そう感じられるやり取りだった。

 

「…わたしとお姉ちゃんのプラネテューヌ、か…ネプギアの二番煎じみたいになっちゃうけど、何があろうと信次元の事は私達で乗り切るわ。だから、こっちの事は気にせず二人は自分達のやるべき事に全力を尽くして頂戴」

「うん。皆こそ、心配しないで待っててよね。次に会う時は、ふふん、どーだ!って感じの成果を用意しておくからさ!」

 

 一歩前に出たノワールの言葉を私とネプテューヌは受け取って、にっこり笑顔でネプテューヌが返す。ノワールとベール、ブランがまず頷いて、それから皆も頷いて……私達は、イストワールさんの方を向く。

 

「…それじゃ、いーすん…お願いね」

「分かりました。…これより、次元を超える為のゲートを開きます」

 

 イストワールさんは本と共に仕上げの完了した機材の上部へと降り立ち、両手を前に。すると十数秒後、前の時と同じように空間の一部が歪み始めて、段々と歪みはうねりに、先の見えない渦の様な『扉』へと変わっていく。

 

「…………」

『…………』

「……出来、ました…あまり長くは維持出来ませんが、このゲートの先が別の次元と繋がっている事は間違いありません」

「……じゃあ、行こっかイリゼ」

「そうだね。…皆、行ってきます」

 

 完成した扉へ向かって、私達は歩き出す。ここを潜ってしまえば、暫くは戻って来られない。だけどきっと大丈夫。確たる証拠がある訳じゃないけど…私はそう思えていた。

 そうして数歩進み、後一歩となった時…不意にイストワールさんが私に言う。

 

「……いつものように、お帰りをお待ちしていますね、イリゼさん」

「…はい。いつものように、ちゃんと帰ってきますね、イストワールさん」

 

 思い返せば、私は元気に帰ってきた事もあれば、意識不明の状態で帰還した事もある。でも、当たり前と言えば当たり前だけど、毎回必ず、私はここへと帰ってきた。だからこれは、約束じゃなくて挨拶。ネプテューヌとネプギアがしたのと同じ、姉妹のやり取り。

 不安がないと言えば嘘になる。何も気負っていないかと言われれば、素直に首肯は出来ないと思う。でもそんなのは、これまでだって同じ事で、そんな中でも私達は大切なものを守って、大事なものを取り戻して、平和と笑顔の日々を創ってきた。だから、戻って来られるかどうかと同じように……これもきっと大丈夫。私はそう信じているし、信じているのは皆も一緒で……そして私とネプテューヌは、未知の次元へと飛び立った。

 

 

 

 

 お姉ちゃんとネプテューヌさんがゲートの中へ、ゲートの先へと消えた数秒後、イストワールさんがゲートを閉じた。溶けるようにゲートが消える中、横からわたしへとかけられる声。

 

「…良かったの?ネプギアは、着いていかなくて」

 

 その声は、ユニちゃんのもの。振り返ると、ロムちゃんやラムちゃんもわたしを見つめてて……なんだかちょっと、恥ずかしくなった。わたしって、そんなにお姉ちゃんにべったりな妹に見えてたのかな…って。

 

「いいの、これで。これがわたしの気持ちだから」

「…でも、着いていきたい気持ちだってあったんでしょ?」

「それは、ね。…でも、思ったんだ。ここで着いていったら、あの時と…まだ自分達の強さもよく知らないまま着いていっちゃった、あの時と同じだって」

 

 一昨日、お姉ちゃんと話をして、それからまた考えて、思い出したのはあの時の事。

 あの時わたし達が着いていかなかったら、もしかしたら何かが変わっていたかもしれない。そんな事を想像した時、わたしは思った。今のわたしと前のわたし、お姉ちゃんはもう違うって言ってくれてるけど…わたし自身が、もっとそれを自覚したいと。今のわたしはこうなんだって、わたし自身に証明したいと。

 

「…だからね、これはわたしの挑戦なの。お姉ちゃんの隣に立てるだけじゃなくて、わたし一人でも出来るんだって。お姉ちゃんの妹じゃなくて、一人の女神として、国を守る事が出来るんだって。それが出来れば、また一歩憧れに近付けると思うし…いつかわたしが守護女神になる時、一人で出来なきゃ国民の皆も、信次元の人達も守れないもん」

 

…これが、今のわたしの意思。今のわたしが、貫きたい思い。胸を張って言える、これが正しい事なんだって言い切れる、わたしの決定。

 実を言うと、ちょっとこの思いには自信があった。胸を張れると思っていた。でも……

 

「ふぅん、立派な思いじゃない。でも……」

「いっこ、まちがってる…(ぷくー)」

「うんうん、ひっどーいまちがいをしてるわよね」

「え?え?な、何か間違ってたの?い、一体どこが……」

 

 言い終わって皆を見たら、ユニちゃんは呆れ顔で、ロムちゃんはちょっと頬を膨らませてて(可愛い)、ラムちゃんはつーんとした顔をしていて(こっちも可愛い)、まさか間違ってるなんて言われると思ってなかったわたしは思わずあたふたとしてしまう。もうこの時点で「女神が決めた事は、貫いて良い事だ」っていうお姉ちゃんからの言葉からブレちゃってるんだけど、まだその領域に踏み出したばかりのわたしじゃ動じないのは無理だった。そして、わたしは何が悪かったのかと考える中……

 

『……ネプギア(ちゃん)は一人じゃないでしょ?』

「あ……」

 

──三人から揃ってかけられた、その言葉。大事な友達で、大事な仲間の三人からの、わたしに対して向けられた言葉。それを聞いて、わたしは……やっぱりまだまだだな、って思った。…そうだよね。いつまでもお姉ちゃんありきなんかじゃいられないし、一人で頑張らなきゃいけない時はあるけど……わたしは一人なんかじゃ、ないんだもん。

 

「…ありがとね、三人共。じゃあ、これから極力わたしと、イストワールさんでプラネテューヌの事は何とかするけど、どうしても無理だって時は…力を、貸してくれる?」

 

 ちょっとだけ自嘲して、でも嬉しい気持ちもあって、その思いを胸に抱きながらわたしは三人にお願いする。もしもの時は、頼っても良いかなって。

 それに返ってきたのは、力強く頷いてくれた三人の首肯。少しだけ視線を動かしてみれば、いーすんさんにノワールさん、ベールさんにブランさん、マジェコンヌさんも微笑んでいて……なんだかそれだけで、何とかなるような気がしてきた。…勿論、油断なんかは出来ないし、逆に皆が困った時には、わたしが力を貸しに行くつもりなんだけどね。

 

「えっと、それじゃあ皆さん。信次元の方は、まだ全然進んでいませんけど…これから、頑張っていきましょう!」

「…早速、自分のアイデンティティを発揮してきたわね?」

「うっ…やっぱりバレちゃいますよね、てへへ……」

「ふふっ、わたくしは構いませんわよ。一緒に頑張りましょうね、ネプギアちゃん」

「なんか含みのある言い方ね…ま、ユニだけじゃなく私も何かあれば手を貸すから、無理せず頼りなさい。全部の国がちゃんとあって、それで初めて信次元だもの」

「私も微力ながら力を貸そう。信次元を守りたい気持ちは、私とて同じだからな」

 

 頼もしい四人からの言葉も受けて、わたしは気持ちを引き締める。無茶はしないけど、無理な時は頼ろうと思うけど……全力は、絶対に尽くす。それもまた、わたしの貫きたい…ううん、貫くべき思いだから。

 そうしてお姉ちゃんとイリゼさんが別次元へ向かったように、わたし達も次の行動を開始する。お姉ちゃん達とは、遠く離れてしまったけど…わたしは確信している。わたしとお姉ちゃんは、わたし達と二人とは、皆の思いは……一緒だって。

 

 

 

 

 次元を超える扉を潜った時、私は『飛び立った』という表現をした。それはまぁ、少し上を見てもらえれば分かるよね。…こほん。

 そんな表現をした私だけど、別にこれは比喩だとか、心の動きによるものとかじゃない。そういう、素敵なものじゃなくて……

 

「ねぷぅぅぅぅううううううッ!!?」

「落ちてるぅぅぅぅううううッ!!?」

 

──本当に、転移した先は空中だった。気付いたら飛んでる状態だった。まさかのフライハイだった。……正しくは、飛んでるじゃなくて落ちてるだけど。

 

「嘘ぉぉぉぉッ!?なんで!?何故に!?まさかのいーすん黒幕説!?」

「ちがっ、違うと思うよ!?イストワールさんはそんな事しないって!」

「じゃあなんなのさこれはぁぁぁぁぁぁッ!」

「そんなの知らないよぉぉぉぉぉぉッ!」

 

 凄い勢いで落下しながら叫ぶ私達。悲鳴混じりの叫びが、口にした側から空へと駆け抜け消えていく。私達が転移したのは、かなり上空の方らしい。

 

「…って、あ、そ、そうだ!こんな慌てなくても、女神化すれば一発じゃん!」

「あ、そうだった!もー、脅かさないでよイリゼ〜」

「いや脅かした訳じゃないけどね…後あんまりまったり出来る状態でもないけどね!さっさと女神化しないと地面に直撃するけどね!」

 

 そう、今更言うまでもない事だけど、私達女神は飛べる。あまりにも衝撃的な状況だったから、テンパりが先行しちゃったけど、女神化すれば良いだけの事。それを思い出した私達は落ち着きを取り戻し…まぁゆっくりしていられない事には変わりないけど…小さく息を吐く。そうしていつもの調子で、女神化。

 力を解放し、身体を女神本来のものへと戻し、装備であるプロセッサユニットを展開。そして……

 

『…ふぅ、一時はどうなるかと思っ──』

 

 

 

 

どぉぉぉぉぉぉおおおおんっっ!!

 

 

 

 

「…………」

「…………」

 

 激しく陥没した地面。激しい音と共に消える、私達二人。数十秒後、砂煙が少しずつ消えていく中……私達は、現れた。──地面に生まれた、二つの穴から。

 

((間に合わなかった……))

 

 よろよろと、穴の縁に手をかけて出てくる私達二人。一応言っておくけど、女神化自体は間に合った。そっちは間に合ったんだけど……女神化した次の瞬間には、地面に激突していた。

 

「うぅ…酷い目に遭った…。…ネプテューヌ、無事……?」

「え、えぇ無事よ…まさか、こんな馬鹿馬鹿しい事になるなんてね…」

「うん、ほんと馬鹿馬鹿しい……」

 

 穴から出た後、私達は安否を確認。それから、不幸な出来事を嘆きつつ何の気なしに穴を見て……

 

「…………」

「…………」

「…は、恥ずかしいわね……」

「う、うん……」

 

……あんまりにも綺麗に空いた人型の穴×2が間抜け過ぎて、どうしようもなく恥ずかしくなるのだった。

 

「…あの時は刺さって、今度はめり込むのね、わたし……」

「あの時……?」

「…覚えてないの?…って、そっか…あれはOAプロローグよりも前の出来事だものね…」

 

…何やらネプテューヌはメタ発言をしてるけど、まぁそれはそれとして…わたし達は、プロセッサに付いた砂を払う。それと同時に、プロセッサの状態や怪我を見て……気付く。

 

「…確かに、シェアエナジーの配給が極端に減ってるわね……」

「本来別次元じゃ減るどころか完全に断たれるから、配給があるだけマシだけどね…この事は念頭に置いておかないと…」

 

 一目で分かる、肌とプロセッサに付いた無数の傷。プロセッサなんかぼろぼろで、状態としては激戦の後レベル。普通ならぼろぼろどころか即死、というのは女神だからで片付くとして……これは見過ごせない事だった。

 とはいえ、女神化出来るだけありがたい…っていうのもまた事実。今回はこちらの次元と信次元とが、物理的にじゃなく概念的に『近付いて』いるかららしいけど…。

 

「痛た…イリゼ、手当てしてもらえる?」

「いいよ。でも取り敢えずは落ち着ける場所を探そっか。どうもここは……ゆっくり出来そうにない感じだし」

 

 とまぁ、転移直後のハプニングはこれでお終い。私もネプテューヌも女神化を解いて、次の事を考えて……そこで、発見した。さっきの音を聞きつけたのか、こちらに敵意を向けながら近付いてくる、ぱっと見の印象は悪魔か化け物って感じのモンスターを。

 

「…うーん…ボスモンスター、或いはラスボスの形態変化の一つって言われても納得出来る外見だね…どうするイリゼ?こっちのモンスターは信次元での戦いがお遊びに思える程強くて、為す術なく蹂躙される……とかになったら」

「フラグになったら困るからそういう事は言わないでよ……それに他のモンスターはどうなのか知らないけど、少なくともあのモンスターに関しては、要らぬ心配じゃない?」

「まぁ、それもそっか。じゃあ、こっちの次元における初戦闘は、幸先良く……」

 

 どんどん近付いてくるモンスターを前に、私達は普通に会話を続行。本当に見た目は強そうで、サイズも大型モンスター級で、犯罪神の生み出した精鋭モンスター…と言われても違和感はない。

 けどそれは、あくまで外見の話。見た目と強さはイコールじゃないし、私達は一目見て、向けられた敵意を認識した時点で感じ取っていた。私達とモンスターとの間にある、圧倒的な実力差を。

 そのまま突っ込んでくるモンスター。やっぱり狙いは私達なんだと分かった私とネプテューヌは、小さく頷いて、ぐっと脚に力を込めて……

 

『──せぇいッ!』

 

 地を蹴ると同時に、ネプテューヌは右から、私は左から飛び蹴りを叩き込んだ。私達二人の蹴りは、平行になるようにモンスターの胴体を捉えて喰い込んで……その巨体を、吹き飛ばす。

 呻き声を上げながら吹き飛んだモンスターは、倒壊した建物の方へ。予想通りにモンスターは立て直す事も出来ず、建物に直撃し、その衝撃で倒壊していた建物は更に倒壊。瓦礫に押し潰されたモンスターの姿は見えなくなり……たった一手で、戦闘は終了した。

 

「…さって、それじゃあ冒険開始だよ、イリゼっ!」

「だね。…よし、頑張ろう」

 

 右手を空へと突き上げるネプテューヌと、肩より少し低い位置で握る私。

 立て続けにハプニングがあった。でもそれを私達は切り抜けた。これからは何があるか分からないし、今みたいに何とかなるとも限らないけど…何にせよ、何であろうと……私達の、信次元を救う為の新たな旅は、もう既に始まっているのだった。

 




今回のパロディ解説

・ダークネス
タイガーマスクWにおける、タイガー・ザ・ダーク(藤井タクマ)の技の一つの事。冒頭からプロレスネタとなりましたが、皆さんお分かり頂けたでしょうか。

・「〜〜気弱な〜〜王国軍〜〜」
千年戦争アイギスに登場するモンスター及び、プレイヤー陣営となる王国軍の事。ネプギア、ケンキョ!……ある意味こっちも伝わる人は少ないのかもしれません。

・のりピー語
女優及び歌手である、酒井法子さんの嘗て使っていた言葉の事。現実の時代と照らし合わせた場合、案外今話で向かった次元ではのりピー語が上手く通じる…かも?ですね。
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