超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
ねぷ子は激怒した。だって話聞いてくれないんだもーん!戦闘中にいきなり割って入ってきたら、そりゃ驚くし新手かと思うのも無理はないけど、それと話を聞いてくれないのとは別問題だもん!しかも問答無用でパンチとかメガホンとかで攻めまくってくるってなったら、流石のわたしも堪忍袋の緒が切れるってもんだよ!
という訳でバトルだよバトル!なんでも暴力で解決するのは良くないけど、戦いも場合によっては交渉術の一つになるからね!わたしはやる時はやる女神ですからっ!
「ふんっ!」
「てりゃあっ!」
横振りのメガホンと、わたしの袈裟懸けが衝突。特製木刀とメガホンとが鈍い音を立てて、わたしと女の子の視線がぶつかり合う。
「ちっこい割には、中々パワーがあるんだ…なッ!」
「とーぜん!わたしは可愛いだけの女の子じゃないんだ、よッ!」
女の子は力技で押し切って、体勢の崩れたわたしへ連撃。わたしも即座に立て直して、数回捌いたところで素早く反撃。すると女の子はバックステップで回避して……着地と同時に再び突っ込んできた。
(モンスター群を相手に一歩も引いてなかった時点で分かってはいたけど…この子、やっぱり強い……!)
機敏な動きに、わたしと正面から斬り結べる(お互い打撃武器だけど)パワーに、攻勢から一気に回避へと移れる反射神経。どれを取ってもわたし達のパーティーに即戦力として加入出来るだけの強さがあって、油断したらぼっこぼこにされかねない。…それに、この子って……
「隙有りッ!」
「……っ!戦闘以外の事を考えてる余裕はなさそうだね…ッ!」
思考を遮るように放たれたメガホン攻撃を逸らして、わたしは意識を切り替える。一つ気になる事があるけど、まずは勝つ事が最優先だって。
「さっきのは隙に見せかけたブラフだよッ!ほいなッ!」
「はっ、そうかいッ!」
右脚を後ろに下げつつ、迫ってくる女の子を迎え撃つ形で刺突。それを女の子は半身で避けて、その流れのまま後ろ回し蹴り。反射的にわたしはしゃがむ事で回避し、そこから立ち上がりながらアッパーカット。
「っと、当たらねぇよッ!」
「こっちだってッ!」
当たる直前、女の子がぐっと身体を仰け反らせた事で突き上げた拳は空を切る。お返しとばかりに女の子も左のフックを仕掛けてくるけど、わたしも身体を捻る事で回避。お互い空振りした腕を引っ込めて、次の瞬間には得物を振るって……また、激突。片手で振れるメガホンと、本来両手で振るべき特製木刀とじゃ、わたしの方が不利だけど…そこは両方空振りした直後の姿勢。100%の力なんて込められる訳がなくて、衝突はほぼ互角になる。
「…やっぱ強いな、テメェ……だったらッ!」
わたし達は一度離れて、またすぐ接近。何度かの攻防を繰り広げた後女の子は飛び込むようなタックルをしてきて、それをわたしが避けると次々メガホンを振るってくる。
一気に勝負を決めるみたいな、荒々しい猛攻。でも激しい攻撃は当然その分疲れる訳だから、わたしは無理せず防御に徹してチャンスを伺う。でも、わたしにそうさせる事が女の子の狙いだったみたいで……蹴り上げを交差した腕で防ごうとした瞬間、女の子はわたしの腕を足場に跳んだ。
「貰ったぁッ!」
(投擲…ッ!?でも、その程度……!)
跳び上がった女の子は、フルスイングでわたしへメガホンを投げてくる。それには驚いたけど…それだけでやられるわたしじゃない。わたしと女の子とには、メガホンを叩き落とすのに十分なだけの距離があって、迎撃出来る自信があった。……そう、それだけなら。
「な……ッ!?」
木刀で叩き落とそうと、その姿勢を取ろうとしたわたし。その瞬間、わたしの視界にはあるものが……地面に走る、亀裂が映った。
空にも、建物にも走っている亀裂。謎の光を放つ、明らかに普通じゃない亀裂。わたしが叩き落とす姿勢を取ろうとした場合、その亀裂に踏み込む形になると気付いて……わたしは反射的に、躊躇ってしまった。そしてその一瞬の躊躇いが、わたしから叩き落とす時間を奪う。
(やられた……ッ!)
上手く乗せられた事への悔しさを抱きながらも、わたしはその場で身体と手首をそれぞれ捻って木刀を投げる。これなら踏み込み無しでも出来るし、完全に撃ち落とす事は出来なくても、最低限わたしに当たるコースからは外せるだろうって。わたしも武器を手放す事になっちゃうけど…メガホン直撃よりは、ずっとマシ。
そして狙い通り、投げた木刀はメガホンと衝突。両方弾かれて、メガホンは明後日の方向に飛んでいって……
「そうくると……思ってたぜッ!」
「うぁ……ッ!?」
気付けばわたしの頭上に、急降下からの踵落としが迫っていた。
メガホンはわたしの注意を逸らす為の陽動で、これこそが本命。ギリギリでそう気付いたわたしは何とか腕での防御が間に合ったけど、重い衝撃が腕を走る。
「これも防ぐのかよ…!」
「わっ、とと…ッ!」
そのまま脚を振り下ろしてわたしの防御を崩した女の子は、メガホン無しでもまだまだ脅威。対してわたしは今ので軽く手が痺れてて、とにかく回避をするしかない。
でもやっぱり、やられっ放しは性に合わない。だから何度か避けた後、わたしはタイミングを見計らって腕で攻撃…と見せかけて遠心力を生み出し、さっきのお返しだよとばかりに後ろ回し蹴りを放ち……次の瞬間、わたしの首から上は、女の子の両脚に挟まれていた。
「ふ、フランケンシュタイナ……ぁあッ!?」
ぐわんっ、と引っ張られたかと思えば、わたしは回避を兼ねたバク転からの攻撃で頭から地面に真っ逆さま。わぁ脚すべすべとか、むにむに〜とか、普段のわたしなら冗談半分で言ったりもするけど、今はそんな事を言っていられない。というか、こんな技使ってくるの…!?
(……けど…ッ!)
流石にこれは予想外だったし、もっと疲労してるか手負いだったらノックアウトになっていたかもしれない。
ただそれでも、わたしは歴戦の女神。段々この子の『戦い方』は分かってきたし、一進一退になるのが互角の勝負ってもの。そしてそれを示すように、わたしは頭より一瞬早く両手を地面に付けて……蹴り付ける。
「てッ……えぇいッ!」
「んな…ッ!?カポエイラ……!?」
無理に両手を突き出したものだから、わたしの手にも結構な負荷がかかる。でもこの位…平気だもんね…ッ!
「てりゃりゃりゃりゃりゃーっ!」
「逆立ちでこれだけ動けるのかよ…ッ!?てか、パンツ見えてるぞ!?」
「あっ…見たね!?変態!」
「はぁ!?いや見たも何も自分から……ぅぐッ!」
……たった今、ちょっとした(相手も女の子だからセーフ…?)ハプニングが発生したけど、その結果女の子の防御を綻ばせる事に成功。その緩みを見逃さずにわたしは両脚蹴りを放って、女の子の体勢を大きく崩す。
「これで、終わりだよッ!」
「……ッ!負ける、かよぉッ!」
女の子は強い。実力はほぼ互角。だからもしも長期戦になったら、お互い大怪我をしちゃうかもしれない。…だったら、勝負を決めるなら今しかない。
そう思って、そう判断して、わたしは突き出した両脚の勢いに任せて着地。そこから素早く左回転をかけて、捻りを加えて右ストレート。これで勝負を決めるって思いを込めて、思いっ切り右手を突き出す。
けれどわたしには、誤算があった。まさか、体勢の崩れた女の子が仰け反った状態から踏ん張って、身体を跳ね起こしながらの左ストレートを打ち込んでくるなんて、思ってなかった。わたしの一方的な攻撃になると思っていたこの瞬間は、互いに拳を放ち合う瞬間に変わって──クロスカウンター。
「う"……ッ!」
「ぐ……ッ!」
拳には直撃をさせた感覚。頬には衝撃と重みと痛み。威力自体はちゃんと姿勢を取れて、遠心力と捻りも打撃に乗せられたわたしの方が上で、でもリーチの差からよりしっかり決まったのは女の子の方で、お互い防御の体勢は取れていなくて……結果、わたしと女の子は完全に相打ち。頭が揺れて、よろけながら数歩下がって……歯を食い縛って後ろに跳ぶ。
「……やるじゃん…」
「ったりめーだ…」
決められると思ったチャンスを、わたしは逃してしまった。ほっぺも痛い。でもそれはそれとして……わたしは本当に女の子へ賞賛の念を抱いていた。
わたしと女の子の、視線がぶつかる。女の子もわたしと同じ位のダメージが入ってる筈だけど、その目は全然死んでないし…それは、わたしも同じ事。そう、わたしだって…まだまだ負けないよ…!
「…くそっ、こんなに良い勝負が出来たのは素直に嬉しいが…大誤算だ…!まだ全員避難出来た訳じゃねぇだろうし、別のモンスター共だって残ってるってのに…!」
「…どうせ言っても無駄だとは思うけど…何度も言ってる通り、わたし敵じゃないからね…?」
「ふん、何度言おうが俺は騙されね……」
「…………」
「…………」
『あーーっ!モンスターの事忘れてたぁああああああッ!!』
視線をぶつけ合いながら、言葉を交わしたわたし達。その途中、女の子が何やら気になる事を言って、続けてモンスターの事も触れて……そこで漸く、わたしも女の子もモンスター群の事を思い出した。いやー、うっかり忘れてたよ。激戦になると、周りが見えなくなるものなんだよね〜。…って言ってる場合じゃないよ!?ちょっ、これモンスター群に漁夫の利決められる危険あるじゃん!
「ね、ねぇちょっと!ここは一時休戦して一緒に戦わない!?今の状態でバラバラに戦うのはお互い不味いって!」
「あぁ!?何の話……って、ん?…モンスターが、いない……?」
「へ?そんな馬鹿な……って、ほんとだ…いない…」
「…どういう、事だ……?」
「……あ、まさか…ふふん、さてはこれ、わたし達の壮絶な戦いを見て逃げちゃったパターンだね!」
「いやそんな事……あるか…あぁ、あり得るな!へっ、確かにこの状況、モンスター共がびびって逃げた以外にあり得な……」
わたし達を囲っていた筈のモンスターは、いつの間にかどこにもいない。おっかしいなぁと思って見回すけれど、やっぱりいない。実は周辺にいたモンスターは全て一定時間で消えちゃうタイプ…なーんて事もある訳ないし、となればあり得るのは……そう、わたし達の強さに恐れ慄いたという可能性!そして実際いないんだから、それ以外の可能性はなーし!ふっふっふーん、やっぱり女神のわたしが戦うと有象無象は逃げてっちゃうんだよねー!けどそのわたしと互角のこの子も中々のもの!よーし、一旦ごたごたした事は置いといて二人で勝利宣言でも……
「ほんとにそう思う訳?」
『あっ……』
──気付けば後ろでイリゼが、にこぉぉ…と笑っていました。にっこりした笑顔で、でも額にはでっかい怒りマークを浮かべて、口の端がぴくぴくとしている、いつになく威圧的なイリゼが。
「ねぇ、もう一度訊くね。ほんとに、そう思う訳?」
「…え、っと…その……」
「…あんたが、全部片付けてくれた…と…?」
「それ以外に、あると思う?」
「な、ないかなぁ……」
「うん。じゃあ、言う事あるよね?」
「…………」
「…………」
『……すみませんでした…』
自主的に正座して、揃って謝るわたし達二人。勝利の高揚感とは、かくも儚いものなのか。……状態の悪い道路の固さと共に、わたしと女の子はそんな事を感じるのだった。…ほんと、一人で戦わせちゃってごめんねイリゼ……。
*
取り敢えず粗方のモンスターは撃破して、残りのモンスターも逃げていって、一つ目の問題は何とかなった。もう一つの問題である、ネプテューヌと女の子の戦いも、一度止まったようだから…そして、調子乗んなコラ、とまた荒々しい事を言いたくなるような解釈をしていたものだから、ちゃあんと二人には反省してもらって……やっと、まともに話が出来る状態になった。
「…一応、礼は言っておく。お前等…少なくとも背の高い方は、あいつの手先じゃないんだな?」
「あいつ、と言うのが誰なのかは分かりませんけど…何度もネプテューヌ…あ、こっちの子の事ですよ。…が言ったように、私達に貴女と戦う意思はありません」
「そうそう。後、わたしも手先じゃないよ!むしろわたしは送り込むポジションだからね!」
「送り込むポジションだと…!?テメェ、やっぱり…!」
「ちょっ!?何新たな誤解を生むような事言ってんの!?確かに間違ってはいないけど、もうちょっと言い方選ぼうよ!?」
折角女の子が歩み寄ってくれたのに、ネプテューヌの失言で再び女の子は臨戦態勢に。その後、何とかその誤解は解けたけど…交戦と言い失言といい、ネプテューヌはこの子と友好関係築く気あるんだよね…?
「……信じられねぇな…」
「…ほら、また疑われちゃったじゃん」
「うっ…ごめんなさい…」
「あ、いや、そうじゃない。お前等が敵ならモンスター共を返り討ちにする訳ねぇし、そっちの奴もわざわざ武器を木刀に持ち替えてたしな。油断させる為にしたって、俺を倒す事が目的なら小さい方に手一杯になってるところを狙った方が、よっぽど手っ取り早いし確実だ」
「…という事は……」
「あぁ。お前等が悪い奴等じゃない事は分かった。悪かったな、いきなり攻撃したりして。すまなかった」
ぼそり、と呟いた女の子。それを最初信用に足らない、という意味だと私もネプテューヌも思ったけど違うらしくて、言われてみると確かにさっきの表情は何かを疑問に思ってる…って感じのもので、でもすぐにその表情も声音もさっぱりとした感じの良いものに。
それから遂に、女の子は分かってくれた。私達が、敵ではないと。
「分かってくれたならそれで良いよ!それにわたし達も人に会えて安心したしね!」
「そっか。ところで、あいつの手先じゃないなら、あんた等は一体何者なんだ?中々腕が立つみたいだが…」
「あ、はい。私は……」
「…っと、いや待った。人に何者か尋ねる時は、まず自分からだよな。俺は……」
「天王星うずめ、でしょ?」
『へ?』
ぴっ、と答えようとした私を掌で制して、女の子は自己紹介をしようとする。そして出てきた、天王星うずめという名前。でも、その名前を発したのは、女の子ではなくなんとネプテューヌ。
「な、なんで俺の名前を…?」
「なんでって…やだなーもー。わたしとうずめの仲じゃん!」
「え…ネプテューヌこの子…もというずめさんの事知ってたの?」
「うん。大分イメチェンしてたから最初は気付かなかったけどね」
まさかの展開に私もうずめさんも目を丸くするけど、ネプテューヌが適当言ってるようには見えない…というか、名前が合ってる時点で当てずっぽうとは思えない。…それに、イメチェン……?
「い、いやいや待て待て!俺はお前の事なんか知らねぇぞ!?」
「またまたご冗談を〜」
「何だそのキャラ…ほんとに俺は知らないぞ。誰かと間違えてるんじゃないのか?…いやその場合でも、俺の名前を知ってる事の説明は付かないが……」
「…え、っと…うずめ、それは本気で言ってる…?うっかり敵扱いしちゃって言い出し辛いとかなら、気にしなくても大丈夫だよ…?」
最初は普段の軽い調子で、うずめさんがとぼけてるだけだと思っていた様子のネプテューヌだったけど、真顔で返された事で段々自信なさげな…同時に悲しそうな顔に。対するうずめさんも、ネプテューヌの表情を見てか申し訳なさそうな顔になって、空気自体も沈んでしまい…そこで私はふと気付く。
「あ……もしやネプテューヌが言ってるのって、別次元…というか、信次元のうずめさんなんじゃ…?」
「へ?…あ……」
小声でネプテューヌに耳打ちすると、ネプテューヌははっとした顔になり、それからこっちに顔を向けてくる。この反応からして、多分信次元で会った…というのは間違いない。
「ど、どうしよイリゼ。正直に話した方がいいかな…?」
「それは…誤魔化した方が良いかも。別次元なんて、普通の人にはちんぷんかんぷんどころか私達の頭を疑われる可能性すらあるし、ここはぼかした表現で……」
「…何か分かったのか?」
「あ、う、うん!ごめんね、もしかしたらわたし、うずめの言う通り勘違いしてたのかも!」
「なら、名前はどうして知ってたんだ?」
「え、と…それは、その……」
「…う、噂だよ噂。この辺りに、赤髪で凄く強い人がいるって噂があって、その中で知ったんだよね!」
「そ、そうそれ!赤髪のうずめって呼ばれてるんだよっ!」
「へ、へぇ…そうなのか。凄く強い人がいるって噂されてるなら…それは悪い気しないな…」
小声で話す途中、うずめさんに訊かれて私達は慌てて回答。何やらネプテューヌは某大海賊みたいな通称を生み出してしまったけど……どうやら納得してくれた様子。
「…けど、それを言うならお前達だって強いじゃないか。…えぇと……」
「あ、まだ言ってなかったね。わたしはネプテューヌ!」
「私はイリゼです。ネプテューヌとはとある理由でここに来て…こほん、ここに来たんだ」
「ネプテューヌにイリゼか…じゃあ知ってるみたいだが、改めて言わせてもらうぜ。俺の名前は天王星うずめだ。宜しくな、ねぷっち、いりっち」
「へぇ、やっぱり呼び方も同じなんだ…」
思った以上に時間がかかっちゃったけど、やっと私達はうずめと自己紹介を交わす事に成功。ネプテューヌが小声で呟いていたけど、ネプテューヌの知るうずめさんも同じ呼び方をしていたらしい。
真紅、という言葉が似合う真っ赤な髪に、温かみのある橙色の瞳をした、見るからに活発な女の子、天王星うずめ。でも同じ活発でもネプテューヌとは違って、うずめは所謂男勝り…って感じ。
(いりっち、かぁ…うん、この愛称も素敵かも……)
「それでさうずめ、ちょっと訊きたいんだけど…もしかしてうずめ、誰かを守ってたの?」
「そう、だが……それも噂になってるのか?」
「ううん、これはさっきうずめが『まだ全員避難出来た訳じゃ…』とか言ってたから、そうなのかなーって思っただけ。さっきのモンスター達に襲われたとか?」
「いや、確かにさっきの奴等もそうだが、ただのモンスター共ならまだマシな方だ」
「…って事は、もっと厄介な敵が?」
「敵が?…なんて変な事言うんだな、いりっち。俺達に…いや、次元にとっての最大の脅威って言やぁそんなの……」
殆ど名前を言っただけだけど自己紹介は終わり、ネプテューヌが疑問を口に。その回答に対して今度は私が質問するけど、それにうずめは怪訝そうな表情を浮かべて……次の瞬間、突如空に黒い光が発生した。
「ねぷっ!?こ、今度は何事!?」
「…噂をすれば、だな。どうやら、あいつのお出ましのようだぜ」
「あいつ……?」
凄まじい勢いで飛来してくる黒い光に私達が驚く一方、うずめはにやりと笑みを浮かべる。けどそんな反応をされたって私達には分かる訳ないし、でもあれが何か不味い存在だって事だけは本能的に感じていて、私達が緊張する中その光は地上に落ち……
──黒い光が爆ぜた時、そこには遠くからでも分かる程の禍々しい気配を放つ、一体の巨人がいた。
「な、なななななななな何あのゾディアックブレイザーを放ってきそうなでっかいの!?」
「…うずめが言おうとしたのって、まさか……」
「…あぁ。俺にもあいつの正体が何なのかは分からねぇ。だがな、あいつがこの街を、そしてこの次元をこんな風にした張本人だって事だけは確かだ」
飛来と同時に周囲のビルをなぎ倒したそれの、正確なサイズは分からない。けど、かなり離れていながらも巨人だと分かる時点で、MGや大型モンスターより遥かに大きい事は間違いない。そして、肌で感じるこの気配の通りなら……あんなの、普通の人間が敵う筈がない。
「それって…あいつが、空や地面にある亀裂を作ったって事?」
「その通りだ、ねぷっち。あいつはただ街を破壊するだけじゃない。空や地面も…空間そのものを破壊するんだ」
「じゃあ、あれ等は空間の亀裂…?…って、待った…そんな奴とうずめは戦う気!?」
「そうだ。俺はずっと、あいつと戦ってきたんだ」
唖然とするように訊き返す私。空間そのものを破壊するというのなら、尚更普通の人間が敵うような相手じゃない。…けれど、うずめは首肯する。
「む、無茶苦茶な…確かに放置していいような存在じゃないだろうけど、普通に戦って勝てるような相手じゃないよ!?まさか、メガホン一つで戦う気じゃないよね…?」
「いいや、そのまさかだ。メガホン含め、この身体一つで戦うさ」
「尚更無茶苦茶だよ…!?失礼を承知で言うけど、私の見立てが間違ってなければそれで何とかなるような相手じゃないからね!?」
「はっきり言うねぇイリゼ…でも、わたしも同感かな。あいつが見掛け倒しじゃないなら、今のわたしとほぼ互角だった時点で勝ち目は殆どないと思うよ?」
「今のわたし…?…まぁ、それはいいか…。…分かってるさ、無謀な戦いだって事は。けど、さっきねぷっちに言われた通り、まだ全員が避難したって報告はねぇ。勝てないかもしれねぇが、無茶苦茶だって事は分かってるが……女神として、自分だけ逃げる訳にはいかねぇんだよ」
うずめは強い。けど、その強さはあくまで人間としてはであって、ネプテューヌの言う通り、人間状態のネプテューヌとほぼ互角程度じゃ返り討ちに遭うのが関の山。それを分かっているから、私もネプテューヌも否定したけど…うずめは、譲らない。頑とした態度で、その瞳に強い意志を灯らせて、皆を守るという女神の覚悟を……
『…って、女神!?今、女神って言った!?』
「そういえば、まだ言っていなかったな。まぁ、今はそんな事どうでも良いさ」
「どーでも良くないよ!?女神って事は……いや、でも…」
「…うん、確かに今一番重要なのはそこじゃないね…」
まさかの言葉に驚愕する私とネプテューヌ。今までうずめの事を人間だと思っていた私達だけど、もし本当にうずめが女神だと言うなら、色々話が変わってくる。ネプテューヌが恐らくは信次元で出会ったらしいうずめさんに対しても、かなりの疑問が浮かび上がる。
けど、今はそれより大事な事がある。ここには強大な敵がいて、守りたい者の為に戦おうとする女神もいて、こういう時の女神を説得するのは至難の業で…ならこんな時、私達はどうするべきか。女神である私達にとって、何をするのが正解か。……そんなのは、考えるまでもなく決まってる。
「…はぁ、ハプニングが続くねネプテューヌ……」
「全くだよ…けど、やるべき時があるならそれは今、でしょ?」
「だね。…うずめ、うずめの意思がそれなら…私達も、戦わせてもらうよ」
「私達も…?…無理すんな、さっき会ったばかりの二人にこんな無茶をさせる訳にはいかねぇし、逃げる方がよっぽど賢い選択だ。それに、二人が加わったって戦力差は変わらねぇよ」
「ふふーん、それはどうかな?確かにわたしとイリゼが普通の人間ならその通りだけど、何を隠そうわたし達も……」
肩を竦め合った私達は、私達の意思を…共に戦うという思いを示す。当然さっきまでの私達同様、相手を普通の人間だと思っているうずめは止めるよう言ってくるけど、そこでネプテューヌが正体を……
『……え…?』
──明かそうとした瞬間、巨人は突然飛び上がり、空高くへと飛び去っていってしまった。急に、何の前触れもなく…あっさりと。
意味が分からない。どういう事なのか、さっぱり分からない。けれど、巨人が飛び去り、いなくなってしまった事は事実で……私達が呆然とする中、周囲は何事もなかったかのように静寂に包まれるのだった。
今回のパロディ解説
・ねぷ子は激怒した
メロスは激怒した、の最初の一文であり、代名詞的な文のパロディ。…と、解説を書いていて気付きましたが、話の最初の文…という意味でもパロディになっていますね。
・「あっ…見たね!?変態!」
服やスマホケースにプリントされる、とある文章のパロディ。これをパロディというかどうかは微妙ですね。そして一応言っておきますが、この場面は偶然によるものです。
・赤髪のうずめ
ONE PIECEに登場するキャラの一人、シャンクスの異名のパロディ。かなり自然な流れでパロディが出来たと思います。うずめは四皇ではなく四女神でしょうが。
・ゾディアックブレイザー
カードファイト!!ヴァンガードに登場するユニットの一つ、絶界巨神 ヴァルケリオンの技名の事。今後もあの巨人に関してはヴァンガードパロが出てきたりする予定です。