超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
現れた謎の存在、空間そのものを破壊する巨人は何を目的に現れたのかも分からないまま、飛び去ってしまった。女の子…うずめの救出と友好的な関係構築を果たした私達と、相手の離脱により戦闘が起きず終いとなったうずめは共に直近の目的が無くなった状態になって……一先ずうずめの案内で、私達はうずめの拠点へ移動する事となった。
「着いたぞ、ここが俺の拠点だ。…と、言っても廃ビルの一室なんだがな」
野ざらしの外よりはマシだろ。…と、軽く肩を竦めながら部屋の中へと入るうずめ。その言葉通り、私達が案内されたのは比較的状態の良いビルの部屋で、ぱっと見中に亀裂もない。
「おぉー!廃ビルを使ってる辺り、如何にも秘密基地って感じで格好良いかも!」
「あはは…でもうん、一見ただの廃ビルの一室だけど、必要最低限の生活設備はあるし、食料も貯蓄されてるし、多少だけど通信端末もあるなんて、確かにちょっと隠れ家っぽいよね。わくわくする感じは否定しないよ」
「何!?お前等、この拠点の格好良さが分かるのか!?」
きらっきらと目を輝かせるネプテューヌに、私は苦笑しつつも同意。でもそれは結果的に格好良くなっただけで、別に狙った訳じゃないんだろうなぁ……と内心思っていた私だけど、なんと私達の言葉にうずめまで目を輝かせ始める。
「うん!浪漫があるよね!」
「そうかそうか、この格好良さが分かるのか…。なら、やっぱり悪い奴等じゃなさそうだなっ」
「あ、思わぬところで信用の補強が…でも私より、ネプテューヌの妹の方がここには興奮するのかも。その子って、姉妹なだけあってネプテューヌと感性近いところあるし」
「へぇ、ねぷっちには妹がいるのか。…そいつもちっちゃいのか?」
「ううん、わたしより色々大きいよ?……ほんと、色々…」
「そ、そうか……」
言ってて悲しくなったのか、途中で落ちる声のトーン。うずめがなんて声をかけるべきか…みたいな顔をする中、私は改めて部屋の中を見回して……部屋の端、積まれた食糧箱の一番上に、それを見つけた。見つけて、しまった。
「…あ、あぁ…ぁ……」
「…うん?どうしたんだいりっち」
「…あれ、は……」
「あれ?…あぁ、これか?いいよな、保存が効くし、腹持ちも良いし、その上味も悪くない──」
「またメイトぉぉぉぉおおおおおおッ!?またメイトがきたぁああああッ!?遂には本編ストーリーにも登場してきたああああああッ!!?」
「うわぁ!?イリゼが発狂したぁ!?」
「ど、どどどどうしたいりっち!?大丈夫か!?」
私が次元移動をした際幾度となく現れたそれに、何度も「食べる物はこれしかないよ?」…と現実を突き付けてきたその存在に、気付けば私は絶叫していた。そして二人からすれば突如絶叫した訳だから、二人からは唖然とした目で見られていた。……嫌いな訳じゃないよ?謎の空間では何度も私の空腹を癒してくれた、むしろ感謝の念すら抱く食べ物だよ?…でも、こんな結構な頻度で現れるとなると怖いよ…取り憑かれてるんじゃないかと思っちゃうよ……。
「うぅ…ごめんね二人共…個人的な事だから、気にしないで……」
「い、いやそれは流石に無理だよ…突然友達が発狂とか、むしろ心配になってしょうがないよ……」
「ほんとに精神異常とかじゃないから安心して…ただちょっと、あれと縁があり過ぎるってだけの事だから……」
「…よく分からないが、深くは訊かないでやろうぜ、ねぷっち……」
「そ、そうだね…人にはそれぞれ事情があるもんね…」
暫し動揺した後、落ち着きを取り戻して謝る私。何か、曲解されている可能性もあるけど…私は何も言わないでおく事にした。…これ、次また次元移動する時も出てくる…とかないよね…?
「あー…こほん。なんか色々逸れちまったが、そろそろ話を戻してもいいか?」
「っと、そういえばそうだったね。うん、だいじょーぶだよ」
咳払いでうずめが話に区切りを付け、投げかけに対してネプテューヌが首肯。私も軽く頬を叩いて、真面目な気持ちに切り替える。
話を戻す、の言葉通り、ここに来るまでに私達はうずめからあの巨人の話を聞いていた。うずめ曰く、あの巨人はいつも予兆なく不意に現れて、意思表示もせず破壊行動を行うらしい。けどその破壊行動も『何をしたい』という明確な意図は感じられなくて、長い間活動する事もあれば、さっきみたいにすぐ飛び去ってしまう事もあるんだとか。
「さっきも言った通り、街や次元の惨状はあいつが元凶だ。あのデカさも厄介だが、ただ物理的に破壊するだけじゃなく、空間を…存在そのものを壊して消滅させちまうから、放っておけばいつか、この次元には何も無くなっちまう。…いや、それどころか…次元すらも壊しちまうかもしれねぇ」
「ちょっと…いや、かなり厄介だよねぇそれ。ゲーム的に言えば、防御貫通且つ回復不能な攻撃持ちって事でしょ?」
「分かり易いけどゲームで例えると途端にチープ感出ちゃうから……っていうかその言い方だと、某二槍持ちランサー感も…」
「イリゼイリゼ、その発言もチープにしちゃってるゾ☆」
「うん、お前等両方もっとちゃんと聞こうな」
普段の調子で返答したら、うずめに注意されてしまった。今のに関しては完全にこっちがアウトだから、ごめんなさいして話を続行。
「…とにかく、この次元を、皆を守る為に何としても俺はあのデカブツを倒さなきゃならねぇ。けど、二人が察した通りあいつは本当に強い。おまけに破壊能力のせいで有利な地形があってもそこで戦えば壊されちまう上、当然住む場所もどんどん潰されるから……正直、まともに戦う事もままならねぇんだ。ぶっちゃけ、逃げるので精一杯だった事も少なくない」
『…………』
「…あ…悪ぃ、暗い雰囲気になっちまったな。確かに俺も皆も毎日大変だけど、辛い事ばっかりじゃないんだ。特に今日は……一緒に戦ってくれる、頼もしい仲間が二人も出来たんだからな」
『うずめ……』
「うん…?……もしや、今のは図々しかったか…?…いや、そうだよな…さっき出会ったばかりで、しかも一方的に俺は勘違いして襲ったんだから……」
呑気に構えてた訳じゃないけど、私もネプテューヌもうずめの置かれた状況に言葉を失ってしまった。話は勿論、その声音からは悲壮な重みが伝わってきたから。
けれど、言葉を失った私達を見て、うずめは肩を竦めた。それから、頬を掻きつつ照れ臭そうに言葉を続けて……最後は勘違い。その様子に、今度は私達が肩を竦める。
「ううん、全然図々しいなんて事はないよ、うずめ。むしろじゃんじゃん頼ってくれて構わないからね!」
「私達も、大事な目的が…果たさなきゃならない事があってここに来たんだけど、それはそれ、これはこれ。…全力で協力させてもらうよ、うずめ」
「二人共……ありがとな。けどそういや、さっきも言ってたけど二人の目て……」
ネプテューヌは自信満々な笑みを、私は微笑みをうずめへと向ける。図々しくも、勘違いでもないんだって。
そう、私達はもううずめに協力すると、話し合いをするまでもなく決めていた。勿論私達には次元の衝突を止めるという絶対の目的があって、それは信次元の存続に関わる、後回しになんて出来ない事だけど…だからって、うずめとこの次元の置かれた状況を知りながら、それを見て見ぬ振りをする理由にはならない。少なくとも…女神は、そんな事をしないし、したくない。
だから私達は、協力すると宣言した。うずめも変に遠慮したりせず素直に受け取ってくれて、廃ビルの中には温かな空気が広がり……くぅぅ、という気の抜けるような音が、不意に鳴った。
「…今のって……」
「う、うぅ……」
「あー、やっぱりうずめのお腹の音だったんだ…あはは……」
目をぱちくりさせながらネプテューヌが小首を傾げると、うずめはお腹を押さえながら赤面。それで理解した私は……思わず苦笑い。
「じゃあさ、丁度良いしご飯にしない?わたしもお腹空いてたんだー」
「…ねぷっち、気を遣ってくれてありがとう……」
「いやいや、お腹空いてたのは事実だよ?イリゼ、確かお弁当用意しておいてくれたんだよね?」
「うん、お弁当っていうかベーグルサンドだけどね」
振り向いたネプテューヌに私は首肯。確かに二度の戦闘(一回目は瞬殺だったけど)に加えそれなりの距離を移動したし、最後に食事を取ってからもそこそこ時間が経っているから、私も空腹を感じてきたところ。という事で、私はベーグルサンド……ではなく、ベーグルと具材をそれぞれ取り出す。
「…ほぇ?サンドは今からするの?」
「そうだよ。小分けの方が保存が効くしね」
「じゃあわたしもやっていい?」
「勿論。…あ、でも野菜入れないで燻製肉だけ挟むとか止めてよ?」
「はーい。あ、うずめ。手を洗うところある?」
小分けにしたのも、具材が燻製中心なのも、パンにベーグルを選んだのも、全て保存を考えての事。勿論保存食もあるし、最悪シェアエナジーで賄うって手段もあるけど…出来る範囲でなら、保存食以外も食べたいもんね。食事は心の癒しにもなるんだから。
それからネプテューヌは水道の場所をうずめから聞いて、軽快にそちらへ。うずめはそれを見送り……
「…うずめは行かないの?」
「え?」
「え?って…いや、一緒に食べようよ」
「…良いのか?」
「良いも何も、私はそのつもりだよ。それに、一人だけ保存食じゃお互い気を遣っちゃうでしょ?」
「…そう、だな…。なら、お言葉に甘えるとするよ」
私はうずめも連れて、手を洗った。…あれ、でも水道は生きてるんだ…浄化装置があって、それで集めた水を生活用水に変えてるとかかな…?
で、数分後。私達はベーグルに具材を挟んで、三人でベーグルサンドを囲んで、食事の挨拶。
「頂きまーす!…んー!やっぱり自分で作ると美味しいよね!」
「作るって…挟んだだけじゃん」
「いーの!料理に大切なのは気持ちなんだから!」
「何をそれっぽい事を…まぁいいけどね。美味しく食べられるのが一番だし」
「はは、ねぷっちは一口目から賑やかだな」
廃ビルなだけあって、部屋の中は決して食事に適した場所じゃない。でもネプテューヌのムードメイクはそれを補って余りある程で、即座に食事は楽しい時間へ。ベーグルサンドはうずめの口にも合ったみたいで、私はほっと一安心。
「…っとそうだ、二人共頬は大丈夫?まだ赤いけど…」
「大丈夫だよ。こっち側で食べるとちょっと痛いけどね」
「これ位擦り傷さ。…いや、諸に当たったのを擦り傷って言うのかは微妙だが」
「そっか。手当てが必要だったら言ってね?」
「…ねぷっち、いりっちって良い奴だな…俺等はモンスターの事完全に忘れて戦ってたのに…」
「でしょ?イリゼはわたし達がモンスターを丸投げしたのに心配してくれる、とっても良い子なんだよ?」
「あぁ……モンスターどころか、いりっちの存在すら忘れてたのにな…」
「うん……戦闘中ほぼ思い出しもしなかったのにね…」
「二人共……って、しみじみしてるように見せかけて私を弄ってない!?」
…なんてやり取りをしながら、私達はベーグルサンドを食べ進める。そうしてまた数分後。それぞれが持つベーグルサンドが小さくなってきたところで、ふとネプテューヌが質問を口に。
「…そういえばうずめ、避難してるっていう皆は大丈夫なの?まさか、そっちも忘れてた…なんて事はないよね?」
「いや、それは流石に忘れたりしねぇよ。…けど実は、俺も今どこに逃げてるかは知らないんだよな」
『え?』
さらりと中々に不味そうな事を言ううずめ。当然それに固まる私達二人。
「だろ?そういう反応になるだろ?はぁ……」
「…え、と…うずめ、どゆ事…?」
「先に逃げる道筋や避難先を言うと、うずめは自分が危機的状況でも無理して来るから…って事で、毎回教えてくれないんだよ…酷いよなぁ……」
「あ、あー…そういう……」
仲間に行き先を伝えず避難なんて…と思ったけど、聞いてみれば一応理由は納得が出来るもの。酷い、っていううずめの気持ちも分かるけど…確かにうずめって第一印象からしてそういう事しそうだから、相手側の気持ちも少しは分かるかも…。
「けどまぁ、皆が無事ならそれが一番だけどな。…さて、そろそろ連絡が来てもおかしくないと思うんだが……」
狙っていたかのように、そこで不意に何かが鳴る。するとそれはうずめが腕に巻いた端末の音らしく、表情を引き締めたうずめが通信に応答。
「俺だ。そっちの避難状況はどうだ?」
「うずめか、無事なようで安心したよ。こちらも無事、避難が完了した」
端末から聞こえてきたのは、落ち着いた男の人の声。邪魔しちゃ悪いと私達が黙る中、うずめと男の人はやり取りを続ける。
「だったら、お互い一安心だな。で、どこに避難したんだ?」
「その事だが…朗報兼悲報だ、うずめ。…例のモンスターの縄張りらしき場所を、発見した」
「……!」
例のモンスター。その言葉を聞いた瞬間、うずめの表情が更に引き締まる。例のモンスターって…さっきの、巨人……?
「…へっ、確かにそいつは朗報だな。…けど、待て…朗報兼悲報って言ったよな?…まさか……」
「あぁ、どうもオレ達は奴の縄張り内に入ってしまったようだ。避難先は奴が入って来られない場所だから、取り敢えずは大丈夫だが……」
「…そういう事か。分かった、だったら奴は俺が討つ。だからお前達は…」
「分かっている。…すまない、君の負担を増やしてしまって」
「気にすんな。奴を倒すチャンスな事には変わらないんだからよ。それに、こっちにも大きな朗報があるしな」
にっ、と端末越しにうずめは笑い、その後場所を聞いて通信を終える。そして、振り返ったうずめに向けて、ネプテューヌが一言。
「ねぇ、今のイケメンボイスの人誰?うずめの仲間?」
興味津々な顔で訊いたネプテューヌと、それにこくこくと頷く私。残念ながら、皆には伝わってないと思うけど…端末から聞こえてきたのは、とにかく渋くて『おじ様』感のある声だった。どうしよう…すっごく会ってみたい……。
「ん?あぁ、そうだ。ちょっと口は五月蝿いがな」
「あの声でお小言言ったりするって事?…わっ、どうしよ聞いてみたい…!」
「ネプテューヌ……正直、私も同意だよ…!」
「なんで楽しそうにしてるんだよ二人は…」
五月蝿い、と言いつつうずめの表情は柔らかく優しげ。それだけでも相手が良い人なんだろうなって事は想像出来るし、うずめの信頼も伝わってくる。
…と、軽い調子でやり取りしていた私達だけど……通信の内容からして、のんびりしていられる状況じゃない。
「…こほん。うずめ、今から聞いた場所に行くんでしょ?…その奴っていうのは、やっぱりさっきの巨人?」
「いや、あいつじゃねぇ。…って言っても、そいつも十分強ぇんだけどな。良いところまでは行くんだが、毎回取り逃がしちまうし、おまけに回復も早いから、ある意味因縁の相手なんだ」
「そっか。じゃ、わたし達も加勢するよ!」
「助かる。もし奴が取り巻きを連れていたら、そいつ等は頼むぜ?」
残りのベーグルサンドを一気に食べて、水で流し込んで、手早く私達は準備を済ませる。さっきの戦闘ではそれなりに消耗したけど…回復力も高いのが女神ってもの。
「よし、それじゃあ行くぜ!遅れるなよ?」
「うずめこそ、ゆっくりしてたら置いてっちゃうよ?」
「いやネプテューヌはどこ行けばいいのか分からないでしょうに…」
部屋から飛び出し、私達は外へ。スピードを出し過ぎない、長距離の移動を考えた走り方で路上を駆けて目的地へ向かう。
そうして移動する事約一時間。もうすぐ到着するといったところで、私達は走りを緩める。
「さて…さっきも言ったが、奴もそれなりに強い。もう縄張りの中かもしれねぇし、油断すんなよ?」
「分かってるって。…んー……」
「…何してんだ?ねぷっち」
「いや、だってモンスターの縄張りでしょ?だから光ってる痕跡があるかな〜って」
「…いりっち…ねぷっちは油断、してない…んだよな…?」
「へ、平常運転ではあるかな…多分大丈夫だよ……多分…」
こんな事を言いつつも、頭と心の片隅ではしっかりと警戒をしている…筈。警戒してると、思いたい。
「っと、そうだ。そのモンスターっていうのは、どんな見た目なの?」
「それはだな……」
「……うずめ?」
「…どうも今日は、タイミングが抜群に良い日みたいだぜ」
「へ?」
これは聞いておかなくては、と思った事を口にすると、うずめは回答しかけて硬直。それからにやりと笑みを浮かべ……まさかと思って振り返ると、そこにいたのはドラゴンっぽさもある四足歩行のモンスター。
「…あいつなんだね」
「そういう事だ。取り巻きは…いねぇみたいだな」
「じゃ、三人で一気にやっちゃう?それとも誰かは避難先に行って、安全確認する…とか……」
『……?』
視認と同時に、私の意識は臨戦態勢へと移行。同じくネプテューヌもここからの行動を口にして……今度はネプテューヌが硬直。うずめと違って、そこからにやりとしたりはせず……代わりに出すのは狼狽えた声。
「…あの、さ…うずめ…。さっき、モンスターに関して回復が早い…って言ってたよね…?」
「あ、あぁ…言ったが……」
「…それってさ…要は、戦う度に手負いじゃなくなってるって事だよね…?」
「…ねぷっち……?」
「…もしかして、もしかしてだよ?もしかしてだけど…それって、回復が早いんじゃなくて……」
『…………』
「……ああいう、事じゃないの…?」
そう言って、ゆっくりとある方向を指差すネプテューヌ。それに誘導されるように、私達もそちらへ視線を向けると……そこにいたのは、うずめが因縁の相手だというモンスターと、同じ見た目をした……同種族のモンスター二体だった。
「…おいおい、マジかよ……」
「三対三…これはちょっと、想定外だね……」
敵意の籠もった唸り声を上げながら、三体のモンスターは私達を包囲する。対して私達は背中を合わせ、三体それぞれに対して警戒。
「俺は毎回、同種の別個体を相手してたって訳か…ちっ、考えてみりゃ一体だけしかいないなんてこっちの勝手な思い込みだが……」
「別に回復能力が高い訳じゃないって事だけは、わたし達にとってありがたい要素なんじゃないかなー…。…で、どうする?一人一体?それとも一回突破して仕切り直す?」
元々きっちり情報収集してから戦おうとしてた訳じゃないけど、単純計算で相手の戦力は想定の三倍なんだから、一旦退く事も当然選択肢に入ってくる。
けれどこれはそもそも、うずめの仲間の安全を確実なものとする為の行動。だからこそ、ネプテューヌはうずめに訊き…うずめは答える。
「二人に退路を塞いでもらって、確実に倒すつもりだったが…こうなっちゃ仕方ねぇよな…。…ねぷっち、いりっち、俺が速攻で一体倒す。だからその間、二体の注意を引き付けていてくれ」
「…速攻で倒せるの?それなりに強いんだよね?」
「強いさ。けどそれはあくまで、切り札を使わなきゃって話だ」
「切り札…?」
「言ったろ?俺は女神だって」
戦闘を選んだうずめに対し、私が訊き、ネプテューヌもある言葉を訊き返す。私達からの問いを受けたうずめは、自信ありげに口角を上げて……私達にとっては馴染み深い、掌に収まるサイズの結晶を取り出した。
「え、うずめそれって…シェアクリスタル…?」
「うん?なんだ、いりっちはこれを知ってるのか。なら、説明も不要だな。さぁて…今回はお互い仲間がいるんだ。これまでの因縁…ここで、決着を付けようじゃねぇかッ!」
高らかに宣言したうずめは、シェアクリスタルを握り締め、内包されたシェアエナジーを解放。その光を、力を身体に取り込んで、光を纏い、輝き……女神化する。
女神だと聞いた時点で、女神の…本来の姿の事も私達は考えていた。けれど、実際に見るのはこれが初めてになる訳で、私もネプテューヌも内心緊張。そして、光が収まった時……うずめのいた場所には、明るい橙色の髪と、空色の瞳を持った、快活そうな女の子が立っていた。
「女神化かんりょー!」
「…え、っと…一応訊くけど、うずめ…だよね…?」
「もっちろん!一緒に頑張ろうね、二人共!」
──きゃぴっ☆……なーんて擬音が出てきそうな雰囲気と声で、女神化の完了を口にする女の子。おずおずとネプテューヌが確認をすると、女の子…女神化したうずめは、にっこりと笑顔を浮かべてそれに回答。…これは、また……
「…わたしも人の事言えないけど、変化凄いね……」
「ね…まあそれはそうとネプテューヌ。うずめは本気で戦う事にした訳だけど…私達は、どうする?」
「…そうだね…この次元の女神が本気で戦うっていうのに、自分達は出し惜しみ…なんて姿は、お互い信仰してくれる人達に見せられないんじゃない?」
「ほぇ…?」
背中越しに、意思を確認し合う私とネプテューヌ。含みのあるやり取りにうずめはきょとんとしていたけど…まだ今は説明しない。だって、先に説明するより…一度姿を見せてからの方が、ずっとスムースに進むから。
「それじゃあ、ネプテューヌ……私達も、本気でいくとしようかッ!」
「だねッ!」
私も短めの啖呵を切って、ネプテューヌは呼応して、私達も女神化。仮の姿である人間状態から、真の姿である女神状態へと……身体を戻す。
「ふぅ…そういえば、今日女神化するのは三度目ね。二回共すぐに解除しちゃったけど」
「え…ええぇぇぇぇぇぇぇっ!?ふ、二人共…その姿は……」
何気ない発言に「あ、確かに…」と思う中、予想通りにうずめは驚愕。そんなうずめに対して、私達は警戒を続行しつつも振り返り……言う。
「伝えるのが遅くなっちゃったわね。わたしはこことは違う次元、信次元の国家プラネテューヌの守護女神、パープルハートよ。そして、こっちは……」
「四大国家の原点たる、オデッセフィアを守護せし原初の女神の複製体、オリジンハートだ。…つまり…私達も女神なんだよ、うずめ」
「ホントなの!?…って、ホントだから女神化出来たんだよね!まさか、二人も女神だったなんて……」
「色々話さなきゃいけない事はあるけど、それよりまずは目の前の問題よ。うずめはさっき、わたし達に注意を引き付けていてくれって言ったけど…三人共女神なら、一人一体の方が効率的だと思わない?」
「うんうん、うずめもそう思う!じゃあ、二人はあっちとそっちをお願いね!」
ぴっ、ぴっ、と二体のモンスターを指差したうずめに頷いて、私達は改めてモンスターと向き直る。初めは格好の獲物を見つけた、とでも言いたげな表情をしていたモンスターだけど、今そこに浮かんでいるのは警戒の形相。
数は同等。私達は包囲されているけど、飛んでしまえば突破は容易。後は、個々の実力差だけど……それは、心配するまでもない。
「それじゃ、イリゼ、うずめ。何度も女神に突っかかってきたあのモンスターに、きっちりと教えてあげましょうか。真の姿を解放した女神が…如何に強いのかって事をッ!」
「応ッ!」
「うんッ!」
大太刀を振るったネプテューヌの言葉に合わせ、私は長剣を、うずめはプロセッサと同じカラーリングのメガホンを構える。そして、三人同時に道路を蹴り……三体のモンスターとの、戦闘を開始した。
今回のパロディ解説
・某二槍持ちランサー
Fateシリーズに登場するキャラクターの一人、ディルムッド・オディナの事。魔力貫通の槍と、呪い持ちの槍…つまりはそういう事ですね。
・光ってる痕跡
モンスターハンターシリーズの一つ、Worldのシステムの一つの事。足跡や落ちた毛、鱗なら良いですか…フンや粘液を採取する女神というのは、少し嫌ですね…。