超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
X字を描くように、左右から張り出される前腕と爪。微妙にタイミングをずらす事で纏めて防御する事を困難としたその攻撃を、片方は長剣で、もう片方は脚を後ろに跳ね上げる事で弾き返す。
その流れのまま、軸脚で回転をかけて長剣で一太刀。跳び退くモンスターの顔を斬っ先で捉え、浅いながらも傷を付ける。……私達とモンスター三体との戦いは、佳境を迎えていた。
(確かに、最初に戦ったモンスターや、うずめを囲っていたモンスターと比べれば、こいつは段違いに強い。ノンアクティブ級…と見て間違いないね…)
モンスターの猛攻を捌き、隙を突いて少しずつダメージを与えながら、私はモンスターに対する評価を確定させる。
強さ=厄介さ…ではないけど、強さは厄介さに直結する。この強さなら、毎回うずめが取り逃がしてしまっていたのも頷ける事。…でも……
「その力、その速度が限界ならば……女神には届かんッ!」
突進しながら鋭く斬り上げ。対するモンスターはバックステップで避け、カウンターとして私に喰らい付こうとするけど……遅い。私は手首で長剣の角度を変える事により、柄頭をモンスターの頭に向け、そのまま落として叩き込む。
もし反撃なんて考えず、回避に専念していたらこの攻撃は当たらなかった。でも、狙い通りに反撃を狙った結果、この戦いの勝敗は決定的になり……視界の端に移る、うずめとモンスターの戦いも、今正に決着となるところだった。
「これでッ!終わりだよーッ!」
打撃痕が幾つ見えるモンスターは、全体重を乗せてうずめに飛び掛かる。それを見切ったうずめは寸前で飛び、メガホンで叫ぶ事により音波攻撃。真上からの衝撃を受けたモンスターはよろけ、そこに急降下の力を乗せたメガホンの一撃が打ち込まれ、更に着地したうずめは即座に道路へ着いていた頭を蹴り上げ、回転斬りならぬ回転打撃でフィニッシュ。数秒にも満たない間に四連撃を受けたモンスターがどうなるかなんて想像するまでもなく……現に私も最後まで見る事はせず、モンスターへとトドメを刺すべく得物を振るう。
「天舞弐式…椿ッ!」
頭部への強い衝撃でふらつくモンスターへ放つ、流れるような連撃。モンスターの周囲を飛び回り、動き回って余力を残らず削り取る。そして、倒れ込みかけたモンスターの正面へ降り立ち……大上段からの一閃で、この戦いを終わらせた。
「…ふぅ、ネプテューヌもそろそろ……」
「はぁぁぁぁッ!」
「…終わったみたいだね」
小さく息を吐いて振り返ると、そこには大太刀を振り抜きモンスターとすれ違ったネプテューヌの姿。ふっ、と軽く振って大太刀を降ろすと、モンスターはぴくりと震え……そのままその場で崩れ落ちた。
「…わたしが最後だったみたいね。少し手を抜き過ぎたかしら」
「あれ?さっきの気迫は本気に見えたけど?」
「気剣体が一致すれば、自然とそう見えるものよ」
一勝負終えた直後の高揚感もあって、ちょっと意地の悪い質問をしてみた私。するとネプテューヌは涼しい顔して、すぐに答えを返してくる。…まぁ、実際にそうなのかは分からないけど。
ネプテューヌと二人でのやり取りはそれで終了。私達は消えていくモンスターを見ているうずめに近寄ろうとして……聞こえてきたのは、意外な声。
「ほにゃー…。漸くわんわんに勝てたぁー…!」
((わんわん……?))
ゆるふわな声音と共に発されたのは、わんわんという言葉。雰囲気の方は、女神化した時点で分かっていたけど……わ、わんわん?わんわんって…あのモンスターの名前…じゃないよね?…まさか、うずめにはあのモンスターが教養番組に登場するキャラクターに……って、そんな訳ないか…。
「えっと…お、お疲れ様、うずめ」
「うん!いりっち達のおかげで、やっと倒す事が出来たよ。感謝感謝ー♪」
「礼には及ばないわ。わたし達は貴女に協力するって決めていたし…それに、友達は助け合って当然だもの」
「だよね。…あ、そういえばうずめ、うずめの女神としての名前はなんていうの?」
「オレンジハートだよ♪」
きゅぴっ☆と裏ピースと共に、うずめは女神としての…国の守護者、統治者としての名前を口に。……自分で言って思うけど、地の文から受けるイメージが一行目と二行目で違い過ぎる…!…ほんと、ゆるふわ感凄いなぁうずめ…これ多分、「キラッ☆」も本気っていうか、心からやるタイプだよ…。
「それにしても、ほんとに貴女の性格の変化には驚いたわ。…ほんとにわたしも人の事は言えないけど」
「そうだよー、うずめだってねぷっちが大人っぽくなってびっくりだもん。いりっちは……あ」
『……?』
性格の豹変はお互い様。そんな会話を二人が交わし、私にも触れようとしたところで……不意にうずめは「しまった」みたいな顔をして、次の瞬間人の姿に戻ってしまう。確かに戦闘は終了したし、他のモンスターの気配もないけど…直前の表情が気になって、小首を傾げる私達。
「…ちっ、時間切れか……」
「時間切れ?…そういえばうずめ、女神化する時シェアクリスタルも使ってたけど…もしや……」
「待ったイリゼ。それよりまずは、うずめの仲間と合流する方が先決よ。ここが奴等の縄張りだったなら、いなくなった事を察して別の強力なモンスターが来るかもしれないもの」
「そんな倒した直後に来るとは思えないけど……確かにそれはそうだね。うずめ、案内してもらっていい?」
「おう、んじゃまずは……」
至極真っ当なネプテューヌの意見に同意して、私達は移動開始。端末で避難先を聞いたうずめの後に着いて、女神化を解いた私達は歩き出す。
「…ねぇ、ネプテューヌ」
「ん?どったの?」
「さっき、なんで私の言葉を止めたの?」
通信でナビを受けているうずめの数歩後ろを歩きながら、私は小声でネプテューヌに話しかける。
さっきネプテューヌが言った事は正しい。けど、ああもあからさまに遮る程一刻を争う状況かと言えば、そんな事はない。だったら、何か他の理由があるんじゃないかと私は思っていて……その引っかかりは、正しかったらしい。
「あ、それ?それは立ち入った話をするなら、先にわたし達も色々話さなきゃいけない事があるよね、って思っただけだよ」
「そっか…確かにさっきのは、女神としての事情に踏み込む質問だもんね。…珍しいね、ネプテューヌがこういう形での気を遣うなんて」
「ふふん…って、あれ?それちょっとわたしを馬鹿にしてる?」
「してないしてない、むしろ感謝してるよ。ネプテューヌのおかげで、私は無礼を回避出来たんだもん」
「でしょー?それにしても、うずめの仲間ってどんな人達なんだろうね。特にダンディな声のあの人とか!」
ネプテューヌの言う通り、女神である事を私達は隠していたし、他にも秘密にしている事がある。それを隠したまま、一方的に重要かもしれない事を訊くのはアンフェアだ。…つまりそういう事で、私は本当に感謝していた。例えわざとじゃなくても、そういう事はしたくないから。
それから私達はうずめの仲間に関して想像しながら、うずめと歩く事十数分。途中で地下に降り、狭い通路も通って、遂に合流は目前に。
「ねぷっち、いりっち、皆はあの瓦礫の向こう側にいるらしい。えーと、隙間は…っと、あそこから入ったんだな」
「確かにあのサイズなら、さっきのモンスターは入って来られないね。でも下手に登ったら崩れそうだし、うずめの仲間って皆バランス感覚が優れてたりするの?」
「いや、バランス感覚が優れてるってか…単に身軽なだけだな」
「身軽なだけ…?…それだけで全員行けるかなぁ……」
瓦礫と天井の隙間から向こう側へ行く為、気を付けながら登る私達。私達でも気を付ける必要があるんだから、普通の人が登るのはかなり大変だと思うんだけど…ここで嘘を吐くとも思えない。という訳で、疑問を抱きながらも私達は隙間までいって、抜けてからは軽く跳んで向こう側の床に着地し……
「お前等、待たせたな!」
「あ!うずめさん、やっと来た!」
「これでもう安心だね。…あれ?なんか二人、知らない人がいるよ?」
「本当だ、誰だろう…?」
『へ……?』
──私達を待っていたのは、何体ものスライヌと、同じく何体もの虫と魚を合わせて可愛くなるまでデフォルメしたような生き物……即ち、数十体のモンスターだった。
「ちょっ、え、も……モンスター!?」
「な、何!?何この状況!?」
『わぁぁっ!?』
そんな場所に入ってしまったネプテューヌと私は、一瞬硬直し、次の瞬間驚愕の声を上げながら抜剣。すると今度はモンスター達が激しく動揺し、慌てた声をうずめが上げる。
「うわ待て待て!何してんだ二人共!?」
「何してんだはこっちの台詞だよ!?…はっ、まさかうずめ…わたし達を騙してここに誘い込んだの!?」
「なんでそうなるんだよ!?と、とにかく武器を仕舞えって!皆驚いてるだろうが!」
「驚いてるのはこっちだよ!?私達は仲間の所に案内してくれると思ってたのに…!」
「だから……って、ん?……」
『…うずめ……?』
「……もしかして、俺…仲間ってのが、こいつ等の事だって…言って、なかったか…?」
見回せば一応扉はあるとはいえ、そこは閉まっていて、後ろは瓦礫の山というすぐには撤退出来ない場所。そんな場所に案内されて、入ってみたらモンスターだらけなんて、信じる事に重きを置く私やネプテューヌだって一発で騙されたと思うに決まってる。でもそんな中、何か私達が間違った事をしているかのように言ってきたうずめは、途中で何かに気付いたような顔になり、おずおずと質問をしてきて、それに私達がゆっくりと頷くと……
「……これは…あれだな、うん。…ごめん、説明不足だった!」
『え、えぇぇー……』
私達もモンスター達も驚き慌てる事となったこの事態は、うずめのうっかりが原因だった。
「ちょっと、もー…しっかりしてようずめー…」
「すまん…ってか俺、ほんとに言ってなかったっけ…?」
「言ってなかった筈だよ?えーっと、うずめが登場したのは第四話だから…」
「いいいいそんなメタい確認の仕方はしなくていいから!…てかねぷっちのそれ、近未来的だな」
「え、そう?確かに最新モデルだけど…って、そういえば…思い返せば、通信端末とか乗り物とかも……」
「……ねぷっち?」
「あ、ごめん。それよりほんとびっくりだよ。皆っていうのがまさかモンスターだったなんて」
「うんうん。それに…喋ってる、よね…?」
肩を落として、メタ発言して、考え込む顔をして…と、ころころ様子の変わるネプテューヌ。これもこれで気にはなるけど、やっぱり一番はモンスターの事。
「あぁ。すぐには信じられねぇかもしれねぇが、この通り言葉の通じる善良なモンスターが、この国には多く暮らしてるんだ」
「そうだよ、ボク達は悪いスライヌじゃないよ」
「おぉー!ね、ねぇ聞いたイリゼ!?あの有名な台詞のスライヌverが、遂にシリーズ五作目にて実現したよ!」
「う、うん落ち着こうねネプテューヌ…私も内心『おぉっ!』って思ったけど、そんな急に大声出したらまた驚かれ……」
「やっぱり人って、これを言うと凄く興奮するんだね!」
「……てなかった…狙っての発言だったんだ…」
ハイテンションなネプテューヌを見て、例の発言をしたスライヌも目をキラキラさせてご機嫌な顔に。…うちのパーティーメンバーばりにノリが良いなぁ、この子…。
「…あー、こほん。勿論ここまで戦ってきた奴等みたいに危険なモンスターも多いが、こいつ等みたいに友好的なモンスターもいるんだ。だから……」
「仲間として接してくれ、でしょ?だいじょーぶだよ」
「そ、そうか…抵抗とか、不安はないのか…?」
「ないよ。だって私も、普段はライヌちゃんってスライヌと一緒に暮らしてるからね」
「へぇ、そうだったのか。まあ何にせよ、二人が皆を信用してくれたみたいで良かったぜ」
安心した様子のうずめに軽く肩を竦めて、私達はモンスターを…うずめの仲間を軽く見回す。
確かに敵意は感じないし、うずめが来てくれた事を喜ぶその様子は、外見以外は人となんら変わらない。だから私とネプテューヌは大丈夫だろうなって思ったし……仮に襲われたとしても、多分ここにいるモンスターは束になっても私達には敵わない。そういう事もあって、私達は武器を収めるのだった。
「…あれ?ところでうずめ、人は?人はここに避難してないの?」
「……それは…」
若干距離を置きつつも私達へ興味の視線を送ってくるモンスター達に、私はにこりと笑みを見せて…そこでふと気になった事を、何の気なしにうずめに訊く。すると、急にうずめは表情を曇らせて……次の瞬間、ガチャリと奥の扉が開く。
「皆、もううずめは来たかい?」
「こ、この声は……!」
「っと…来たみたいだな。紹介するぜ、あいつが俺と通信をしていた皆のまとめ役、海男だ」
開いていく扉の裏から聞こえる、渋くて特徴的な声。その声に真っ先に反応したのがネプテューヌで、すぐにうずめもその方を紹介。
そうして開き切る扉。そして扉の裏から現れる、海男と呼ばれたその方は……
『え、えええええええーーーーーっ!?』
──ふよふよと浮いている人面魚……それも、真顔の謎の生物だった。
*
まさかの人…もとい、モンスター達と無事に合流出来た私達は、より安全な場所としてさっきの拠点へと帰還した。
「ふぅ、今度こそこれで安心出来るというものだ。うずめ、それにねぷっちといりっち、皆を代表して礼を言わせてくれ」
「う、うん…どう致しまして……」
「私達はうずめに力を貸しただけですから…(どうしよう、まだ慣れない…)」
ライヌちゃん同様首なんてないのに器用に頭を下げる海男さんに対し、私達は軽く困惑しつつも返答。…今まで色んな人と会ってきたけど、こんな衝撃は初めてだよ…。…あ、いや…前言撤回、ヌマンさんとレディさんの時も同じ位驚いたっけ……。
「な?二人はほんとに良い奴等だろ?…で、皆は?」
「彼等は別室で休んでいる。避難に加え、不安な状況が続いて心身共に疲れたのだろう。…勿論、君達の負担の方がずっと大きい事は理解しているが…」
「気にすんなって、俺達は頑丈なんだからさ。…さて、そんじゃ皆もここまで連れてこられた事だし、これでやっと心置きなく休める……」
「…あのさ、うずめ。ちょっと、私達の話…聞いてもらっても、いいかな…?」
仲間の無事を確保し、休める場所に戻ってこられた事で表情も緩んでいるうずめ。そんなうずめの言葉を遮る形で、私はさっきネプテューヌが口にした事を…話すべき事を伝えようと彼女へ切り出す。
「…何か、大切な話なのか?」
「うん。…まずは、謝らせてうずめ。私達は、うずめに隠し事をしていたの。女神って事もそうだけど…それ以外にも、沢山」
ネプテューヌに目配せして、返答としての頷きを受け取る。うずめも私の声音と表情から他愛ない話じゃないんだと察した様子で、私達の方へ向き直る。
そうして、私とネプテューヌは話した。別次元から来た事も、ここに来た目的も、積極的な女神化をしなかった理由も、全部。色々考えた上で秘密にしていたとはいえ、信用してくれているうずめに隠し事をしていたんだって明かすのは、やっぱりちょっと負い目があって…だけどうずめも海男さんも、私達の話を最後まで静かに聞いてくれた。
「…だから、本調子じゃない…っていうか、常に万全の状態じゃないっていうのが、今の私達なの。……秘密にしていた事は、これで全部」
「…そ、っか…信次元…別の街とか国じゃなくて、別次元から二人は来たんだな……」
二人を正面から見たまま話を締め括ると、海男さんは指ならぬヒレを顎に当てていて、うずめは戸惑い混じりの声で呟く。
驚かせたと思う。信じられないって気持ちもあると思う。それに、うずめがこの次元の女神仲間を見つけられたと思っていたなら…私達は、そんな思いを裏切ってしまった事にもなる。だから気不味さと申し訳なさがあって、ネプテューヌも同じ気持ちだったみたいで……
「あ…あのさうずめ、わたし達うずめに悪い事しちゃっ……」
「…二人共、ごめん!二人はそんな大変な目的があってこっちに来たってのに、俺はモンスター退治やら皆の救出やらを手伝わせちまって……」
『え……?』
何かを言いかけたネプテューヌよりも早く、ばっと頭を下げたのはうずめの方だった。まさかそんな事を言われるとは思ってなかった私達は困惑して、数秒言葉に詰まってしまう。
「…でも、考えみりゃそうだよな。普通に生活してりゃ否が応でもデカブツの存在は知るだろうし、二人はシェアクリスタル無しで女神化してたし、おかしい…ってか、何か食い違ってるって点はこれまでに幾つもあったんだ…ほんとに悪い、俺全然気付かなくて……」
「い、いや…ちょっ、待ってようずめ!おかしくない!?この状況、100%謝るべきはわたし達であって、うずめは間違いなく謝られる立場だよ!?」
「…そ、そうなのか……?」
「だろうね。うずめは責任感が強いから自分の非だと思ってしまったのかもしれないが…話を聞く限り、うずめに落ち度があった訳ではないと、オレは思う。…そうだろう?お二人さん」
「そうだようずめ。謝るべきは、秘密にしていた私達だし……だからごめんね。私達の都合で、大切な事を隠していて」
そう言いながら、私達は深々と頭を下げる。隠し事してて、困惑もさせて、その上で謝罪までさせちゃうなんて、こんなのは良くない。友達として、謝ると共にきちんと反省もしなきゃいけない。…そんな思いもあったから、下げた直後にうずめから顔を上げるよう言われても、その後数秒間はきっちり頭を下げ続けた。
「うぅ、止めてくれよそんなに畏まって謝るのは…特にねぷっちにそんな事されたら、ここまでの印象と違い過ぎて混乱しちまう……」
「そ、それはまぁ…うん…。…じゃあ、わたし達の言った事、分かってくれた…っていうか、信じてくれる?」
「それは勿論。…まだ、ちょっと飲み込めないってか、理解し切れてない部分もあるが…俺は二人の言葉を、信じようと思ってる」
「……どうしようネプテューヌ、私申し訳ない気持ちが膨れ上がってきてるよ…」
「だよね…今度は土下座しよっか……」
「だ、だから止めてくれって!えーっと…じゃあアレだ!最初襲っちまった件と、モンスター丸投げにした件、この二つとこれとでチャラって事なら、お互い後腐れはないだろ?」
元々さっぱりした性格の事はこの一日でよく分かっていたけど、ここまですぐ信じてくれるなんて…こんなにも信用してもらえてたなんて思ってなくて、だからこそ申し訳なくてしょうがなくなった私達。そんな私達へ、うずめが提案したのは私も使った事のある手法で……信じる事も含め、周りからしたら私も時々こんな感じに見えるのかな…なんて、この時私はふと思った。
「そういう事なら…でも、ごめんね?気まで遣わせちゃって…」
「と言いつつ謝ってるじゃないかいりっち……」
「あっ…ご、ごめ……じゃなくて、なら…ありがとうね、うずめ。これならいいでしょ?」
「おう、それならな」
「わたしからもありがとね。よーし、それじゃあ次は…えと、なんだっけ?」
「そ、それを俺に訊かれてもな…。…でも、それなら次はこっちだ。さっき言いそびれた事もあるし…確かモンスターを倒した後、いりっちが言いかけてた事にも答えなきゃいけないしな」
ついつい謝ってしまった&更に謝ろうとしてしまった私は、ごめんの代わりにありがとうをうずめへと伝える。そうしてネプテューヌからの感謝も受け取ったうずめは、にっと私達に笑いかけ…軽く呆れた後、真面目な顔で私達を見る。
「まずは確認だ。いりっちがさっき俺に訊きかけたのは、どうしてシェアクリスタルを使って女神化したのか…だよな?」
「…うん。そうだよ」
「だったら、その理由は単純だ。今の俺は、シェアクリスタルを…クリスタルからシェアエナジーを受けなきゃ、女神として活動出来ないんだ」
「クリスタルから受けなきゃ…?…それって…教会からのシェアエナジー供給が、受けられない状態…って事?」
私の頷きを受けて、うずめは私がまだ答えをもらっていない二つの質問の内、先に言った方に回答。それは前置き通り、単純明快な理由だったけど…同時に生まれるのは、それは何故?…という新たな疑問。
クリスタルでなければ出来ない理由として、ネプテューヌは教会を持ち出した。私も同じ事を…より踏み込んで言えば、うずめも実は別次元の女神で、この次元の女神じゃないからなんじゃ…という想像が頭をよぎった。実際私も一度、恐らく別次元故に女神化出来ないって中で、外部からかなり強引にシェアエナジーをねじ込ま……受け取って女神化した事があるから、それと同じなら納得もいく。
教会のシェアクリスタルに不備が生じたとか、供給の為の繋がりが寸断されてるとか、そういう事だろうって考えたのが、私とネプテューヌ。…だけど、うずめからの答えは……私達の想像を、遥かに超えていた。
「…そうだな、それも間違ってない。けど、より正しく言えば、受けられないんじゃなくて『無い』んだ。……俺の知る限り、もうこの次元には…誰も、人はいないからな」
その言葉を聞いた私達は、一瞬意味が分からなかった。要はどういう事だ…って部分じゃなく、言葉そのものが。…人はいない?…いないって…それって、つまりは……
──誰も信仰してくれる人が、いないって事?
『……──ッ!!』
「…ねぷっち、いりっち、大丈夫か……?」
誰も信仰者さんがいない。…そう考えた瞬間、恐ろしくなった。怖くなった。自分の存在が揺らぐような、オリジンハートという私そのものが根幹から否定されたような……思わず自分の肩を抱いてしまう程の、凄まじい恐怖。それは、ネプテューヌも感じていたみたいで…気付いた時、私達をうずめと海男さんが心配そうに見つめていた。
「……っ…あ…ご、ごめんね…大丈夫……」
「本当かい?気分が悪いのなら、水を持ってくるが…」
「ほ、ほんとに大丈夫だよ…?ほーら、元気元気〜!」
「いや、それだとむしろ空元気に見えるぞ…。…じゃあ、辛かったら言ってくれよ?」
私もネプテューヌも何とか笑顔を浮かべて、何とか気持ちを切り替える。…大丈夫、大丈夫…不謹慎だけど、今の想像は私の事じゃないし……
「う、うん。…うずめ、確認だけど…人はいないっていうのは、今のところうずめや海男さん達が出会ってないってだけで、確たる証拠がある訳じゃないんだよね?」
「それはそうだな。俺だって行った事のない場所はあるし……実を言えば、どこかにはまだいるかもしれないって気持ちもある」
「だ、だよね。良かったぁ……もー、駄目だようずめ〜。人が全滅とか、Originsシリーズにあるまじき展開だよ?」
「そ、それを俺に言うなよ…しかもそれに関しては、二人もそういう未来を回避する為にここに来たんだろ?」
「うっ、しまった今のはブーメラン発言だった…」
ほっとしたのか、メタ発言を突っ込んでくるネプテューヌ。それに苦笑いする私だけど、内心凄く安心している。…それ程までに、『まだ出会ってないだけで、いるのかもしれない』という可能性は、私達に安心感を与えてくれた。例え、それが気休めだとしても……可能性があるだけで、私達の中の恐怖は薄れてくれる。
「ねぷっち……だがまあ、気持ちは分かるよ。オレも、皆がいなくなってしまったら…と思うと不安になるからね」
「でしょ?にしてもほんと、海男ってば声と見た目のギャップが凄いよね〜。わたし最初、軍人さん…それもルウィーで近衛隊長とかやってそうな人かなぁとか思ってたんだよ?」
「何そのピンポイントの想像…しかもそれ私から聞いた人の話じゃん……」
「ふむ…確かにその期待には添えないな。だがねぷっち、近衛隊長ではなく……司令官なら、どうかな?」
『あっ……』
ふっ、と不敵な笑みを浮かべて一層渋い声を出す海男。…ネプテューヌは冗談半分で言っただろうに、微妙に掠ってるというびっくりな展開になってしまうのだった。
「はぁ、今日は普段の何倍も色々あった…ふぁぁ……」
それから数十分後。お互い伝えるべき事は伝えた私達は食事にし、雰囲気の変化から交わす言葉も雑談のものに。その頃には私達の恐怖も収まって、穏やかに流れる夜の時間(と言っても、空が空だから変化はあまりないんだけど)。その中で、不意にうずめが零したのは一つの欠伸。
「うずめ、今日はそろそろ休んだらどうだい?さっきも言ったが、今日は君達にとってかなり負担のある一日だったろう?」
「…そう、だな…ねぷっち達はどうする?」
「んー…わたし達も休もっか。こっちじゃシェアで賄う…って訳にもいかないし」
「そうだね。…考えてみれば、ここ暫くはまともに寝てなかったなぁ…」
イストワールさんの仮説を聞いた後も殆ど不眠で活動し続けていたから、ゆっくり寝たのは随分と前の事な気がする。そう考えると何だか眠い…というか、寝たい気持ちが湧いてきて、私の意識は寝ようという方向に。…食事もそうだけど、シェアエナジーで賄えるのは身体の維持であって、食事や睡眠で得られる心の休息までもは確保する事が出来ないんだよね。
「…あー、でもそうだ…ここには毛布しかないんだった…悪い二人共。毛布は全部二人が使っていいから、それを敷き布団の代わりに……」
「それなら大丈夫だようずめ。わたし達も床で寝るから」
「いいのか?普段ちゃんとしてるところで寝てるなら、いきなり床は辛いと思うぞ?」
「大丈夫大丈夫。確かにそれはそうだけど、毛布があるだけで…いや、床でも横になれるだけで…ううん、自由な体勢を取れるだけで、ボロボロの身体で意識を保ち続けなきゃいけないなんて状況じゃないだけでも、わたしにとってはありがたいもん」
どんどん変わるネプテューヌの言葉。その理由が、私は一瞬で分かったけど…分かる訳ないうずめと海男は、次第に表情が変わっていく。
「…え、と…ねぷっち?何やら凄ぇありがたいのハードルが低いってか、基準が普通じゃない気がするんだが……ねぷっちは昔、何かあったのか…?」
「…聞きたい?わたし多分、話してる途中にどんどん顔色悪くなって、下手すると泣き出しちゃうかもしれないけど…聞く?」
「い、いやいい…そういう事なら遠慮しておくよ…」
「うん、そうし…て……ぁ…」
『……ねぷっち…?』
「…ご、ごめん…あはは、これだけでもちょっとメンタルやられちゃった……」
「…ネプテューヌ、大丈夫。大丈夫だよ」
乾いた笑い声を漏らす、ネプテューヌの表情は硬い。そんなネプテューヌの背中をさすると、ほんの少しだけどネプテューヌは震えていた。
「…なぁ、いりっち…ねぷっちは……」
「…うん、どうしても気になるなら私が話すから、取り敢えず今は訊かないであげて。それと私も大丈夫だよ。私も何日も不眠不休で戦ったりした事があるから、それに比べたら床で寝るなんて苦じゃないよ」
「……分かった。ごめんなねぷっち、辛い事を思い出させて」
「ううん、自分で言い出した事だからね…。……うん、イリゼもありがと。イリゼのオリジンハンドのおかげでわたし元気出たよ」
「そっか。…でも駄洒落のキレからして、まだ本調子じゃないね?ちょっとフライングディスクしてあげよっか?」
「い、今から寝ようって時に走り回りたくはないよ…しかもどこでわたしの調子を測ってるのさ……」
再び心配そうな顔をするうずめに私が代わりに答え、ネプテューヌも本調子じゃないながらも多少は回復した様子を見せてくれて、毛布しかない…という現状から発展した話は終了。その後はうずめの持ってきてくれた毛布を受け取って、私達は横になる。
確かに硬い床で寝るのは、普段に比べたら辛い。でも普段に比べたらであって、やっぱりここのところ寝ていなかった私の身体は辛さよりも寝たいという気持ちを優先したらしく、少しずつ瞼が重くなっていく。
次元移動から始まり、驚きも戦闘もとにかく沢山あった一日。でも苦労に見合うだけのものは得られたし、明日も頑張ろうって気持ちも心にはある。だから、総括すれば十分な成果かな…なんて思いつつ、私は眠りに就くのだっ……
「ねぷねぷ、ふっかーつ!」
「うわぁ!?ね、ネプテューヌ急に何!?」
「え?皆を早く安心させようかなって思って、調子が完全に戻った事を宣言したんだけど……駄目だった?」
『いや寝ようとしてる時に大声は(出さないでよ・出すなよ)……』
……びっくりして一回目が覚めちゃったけど、ともかく私達は寝るのだった。…今回は良かれと思って言ったみたいだし、安心した部分もあるから、今日は許してあげようかな…。
今回のパロディ解説
・教養番組に登場するキャラクター
いないいないばあ及び、その番組内に登場するキャラの一人(一匹)、わんわんの事。わんわんをメガホンと打撃で殴り倒すうずめ…そ、想像したくないですね…。
・キラッ☆
中島愛さんの曲の一つ、星間飛行内の代表的なフレーズの事。フレーズは勿論、女神状態のうずめならポーズもばっちり取りそうですね。
・「そうだよ〜〜じゃないよ」
ドラクエシリーズの代表的なモンスターの一体、スライムのこれまた代表的な台詞の一つのパロディ。スライヌなので、加えて「ぬらぬらー!」とか言いそうですね。
・司令官
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズに登場するキャラの一人、イズナリオ・ファリドの事。完全に声優ネタですね。ほんとに海男の声は渋いものです。