超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第九話 驚愕の襲来

 シェアクリスタル回収、二日目。スライヌやひよこ虫達の協力を得られた私達は、前日同様朝食を取ってから件の場所へと出向いていた。

 

「よーし、今日は皆頼むぜっ!」

『おーーっ!』

「…あぁ……」

 

 荒地と草木生える地域との境目辺りで振り返ったうずめは、皆に向けて掛け声をかける。それに私もネプテューヌも、皆元気良く答えるけど、一人だけ…もとい、一匹だけはローテンション。

 

「海男、まだ引き摺ってるのかよ…」

「引き摺るさ…昨夜だけならともかく、今日の朝も川魚が出されたとなれば……」

「仕方ねーだろ。魚は腐り易いし、今使ってる拠点の冷凍庫は小さい奴しかねぇんだから」

「分かっている、それは分かっている…だが頭では分かっていても、心で納得出来ないものはあるんだよ、うずめ……」

 

 気落ちしているのは、二食連続で「共食いではないか…」と気にしている海男さん。具体的な事は…言うまでもないよね。

 

「っていうかさー、海男は魚なの?そりゃ、身体は魚だけど……」

「うん?…あぁ、この通りオレは立派な魚さ。むしろ、魚以外に見えるかい?」

「えーっと…それは、まぁ…魚にしか見えない、かな…?」

 

 そこでネプテューヌが口にしたのは、私達がなんとなーく気になっていた事。すると海男さんは、さも当然だと言わんばかりに真顔で言葉を返してきて……ネプテューヌは何とも言えない感じの表情になってしまった。…人面魚だから、魚といえば魚なんだろうけど……何か、釈然としないよね…。…というか、釈然としないと言えば……

 

「…あの、海男さん。私からも一ついいですか…?」

「何だい、いりっち」

「海男さん、共食いを気にしてるみたいですけど……そもそも肉食性の魚は、他の魚を食べるものでは…?」

『あっ……』

 

──その瞬間、凍り付く空気。何かそれは、言ってしまった…とでも評するべき空気で……あ、あれ…?…これ、言っちゃ不味い事だった……?

 

「…よし!気を取り直して始めるぞっ!」

「気を取り直して!?今の気を取り直さなきゃいけないような発言だったの!?」

「そうだな。オレも気持ちを切り替えなくては」

「海男さん!?私の発言で何が!?そこまでの発言でした!?」

「……イリゼ」

「何故に!?何故にネプテューヌは私の肩に手を置いてゆっくりと首を振ってるの!?その『もう止めなよ…』的雰囲気は何なの!?ねぇ!?」

 

 変な雰囲気はあったけど、皆の反応はまさかの「なかった事にする」というもの。しかもテンパる私へネプテューヌが諌めるような素振りを見せてきて……なんかもう、完全に私が何かのタブーに触れてしまったような流れになってしまった。…うぅ、何故…そこまで不味い事は言ってない筈なのに……。

 

「うずめさん、海男さん、僕達はどこから探せばいいですか?」

「そうだね。同じ場所を何度も探してしまわないよう、場所を割り振ろうと思っているが、その前に……」

「やあやあ皆、久し振りぬら〜」

「…っと、来たみたいだね」

 

 私が気にする一方、皆は捜索を開始しようとする。…と、そこで聞こえてきたのは低めの声。誰かと思って振り返ると、そこにはスライヌ達の一団がいた。

 

「あれ?このスライヌも、もしかしてお知り合い?」

「あぁ。こいつも俺の仲間だ。名前はぬらりんって言って、こう見えてもスライヌ族の若旦那なんだぜ?」

「へぇ、確かに名前も仲間になった場合はこれ!…って感じしてるもんね。ほらぬらりん、こっちおいで」

 

 声をかけてきたのは一団の先頭にいたスライヌで、名前はぬらりんというらしい。ぬらりんは他のスライヌより眉毛が太いからかキリッとした表情をしていて、最初私は「あー、若旦那感あるかもなぁ…」と思ったんだけど……

 

「おー、よしよし。可愛い奴め〜」

「ぬらららら〜…この子、意外とテクニシャンぬらぁ〜……」

 

……ネプテューヌに頭や顎を撫でられたぬらりんは、見るからに気持ち良さそうな顔をしていた。…若旦那感が……。

 

「こう見えてわたしは太刀を使いこなす、テクニカル女神だからねー。…イリゼも撫でてみる?」

「え、私も?」

「慣れてるでしょ?」

「…そりゃ、まぁ……」

 

 はい、と両手で持ったぬらりんを渡してくるネプテューヌ。え、本人…もとい本スライヌの意思は?と思ったけど、ぬらりんは「まぁ、構わないぬらよ?」みたいな表情。という訳で撫でてみると……

 

「……ぬらぁ…」

「うおっ!?ぬ、ぬらりんが見た事ない表情を……」

「い、イリゼさんぬらりんさんに何を…!?」

「ええっと…普段の調子で撫でただけだけどね……」

 

 気持ち良さげを超えて、ぬらりんは軽く昇天してしまっていた。…ライヌちゃんも、普段これ位気持ち良く感じてたのかな……。

 

「…で、どうしてお前等がここにいるんだ?」

「……はっ!あ、あぁそれなら、海男から手伝ってほしいと連絡を受けたんだぬら」

「人海戦術なら、頭数は多ければ多い程良いからね。昨夜連絡しておいたんだ」

 

 私が撫でるのを止めた数秒後、我に返ったぬらりんは返答。それに続いて海男さんも、連絡の理由を教えてくれる。

 

「そうだったのか…悪いな、わざわざ来てもらって」

「普段からお世話になっているんだから、これ位お安い御用ぬら。というか、うずめは女神なんだから、もう少しどっしり構えていてもいいと思うぬら〜」

「そう言われてもなぁ…そういうのは、俺の柄じゃないんだよな…」

「分かる分かる。うずめって、わたしと一緒でじっとしていられないタイプだよね」

「はは…まぁそういう事だから、一緒に探そうぜ」

 

 言われた言葉にうずめは苦笑いしているし、ネプテューヌは気にすらしていない様子。

 とはいえ、別に悪いって訳じゃない。勿論、指導者の務めは指揮する事であってそれを放棄するのは駄目だけど、偉そうに指示だけしてる人の言葉は聞きたくないものだし、指導者が一緒に頑張ってくれるというのは、それだけでやる気や信頼に繋がるから。ましてや女神は、信頼が生命にも力にも直結するんだから……そういう意味じゃ、現場に出る事はむしろ正しい行為とすら言える。…まぁ、二人がそこまで考えているかって言えば……二人の為に、言葉を濁させてもらうけど。

 

「ふぁいとだよー皆ー!でも凶暴なモンスターが出てきたら、迷わず逃げてわたし達を呼ぶんだよー?」

『はーい!』

「馴染むのが早いね、ねぷっち」

「わたしも女神だからね!カリスマ性のなせる技なのさっ!」

 

 そんなこんなで、捜索開始。モンスターの皆は幾つかのチームに分かれ、広範囲を一気に探していく。

 

「出来れば今日は、昨日の疑問に答えを出したいよな」

「そうだね。せめてより考察する為の、手掛かり位はほしいものだ」

 

 小さいシェアクリスタルの場合は草に紛れちゃってる事もあるだろうから、集中して探さなきゃいけない。でも黙々と探し続けるのは苦痛な訳で、あまりがっつりではないけれど会話も混じる。……それにしても、昨日の疑問、かぁ…。

 

(…海男さんは女神をシステムというか、世界の一部みたいに言ってたけど…強ち間違ってもいないよね…次元に根付いているのは事実だし、教会のシェアクリスタルの存在を前提にした、ある意味生命活動が自分単体で完結していない生命だし、そもそも思いで生まれて、シェアエナジーさえあれば大概の事は何とかなっちゃう女神って……)

 

 

(……あれ…?)

 

 特にそうしようとした訳じゃないけど、自然に深い思考の中へと入っていった私。入り込んで、沈み込んで……ふと、気付く。

 

「…シェアクリスタル、ありき……?」

「あっ、くりひかるはっけーん!」

「いやなんで記憶が戻ってない頃の某歌姫みたいな言い方を…って、いりっち?何ぼーっとしてんだ?」

「へ?…あ、ごめん…考え事してて……」

 

 ある想像をしてしまった数秒後、うずめに声をかけられて私は我に返る。…しまった、やるべき事忘れてた……。

 

「考え事?わたしのボケをスルーしちゃうなんて、結構重要な事を考えてたの?」

「重要、っていうか……ほら、昨日色々話したでしょ?でさ、ネプテューヌも他の皆も、教会のシェアクリスタルを経由してシェアエナジーを確保してるけど、そのクリスタルは代々使われてる、ずっとあるものだよね?」

「うーんと…うん、そうだね。それがどうかした?」

「うん…だからさ、生まれ方とか加護とか色んな事を考えてった結果、私達女神にとってはあのクリスタルこそが本体で、こうして活動してる私達は端末に過ぎないんじゃ…なんて結論に辿り着いちゃって、ね…あはは……」

「あ、あははって…ちょっ、中々に怖いよそれは…何そのソウルなジェム的発想は……」

 

 思考の海からまだ上がり切っていなかったからか、考えていた事を殆どそのまま口にしてしまった結果、ポジティブの申し子たるネプテューヌすら引かせてしまう事を言ってしまった。うん、やっぱこれ縁起でもないっていうか、悪いタイプの想像だよね!やっちゃったね私!

 

「だ、大丈夫!ちょっと想像しただけだから!それにほら、言霊って考え方も世の中には……」

「それ余計アウトだから!落ち着いてイリゼ!逆だって逆!」

「うわぁ間違えた!?我ながら何故こんな間違え方を!?」

「おーい、五月蝿いぞ二人共ー」

 

 うっかり(?)自分の考えを後押ししてしまったり、うずめに注意されたり。…私が深く考え込んだ状態で人と話すと、大概碌な事にならない事を、こんなところで改めて知る私だった。…しゅん……。

 

「ごめんうずめ…今度こそ真面目に探すね……」

「まぁ、そこまで気にすんな。俺としても、こうして対等に話せる相手がいるのは嬉しいしさ」

「……?どういう事?」

「皆、自分達は守られてる側だ…って感じに、俺に気遣ってる節があるんだよ。しかも女神だからさ、どうしても遠慮のない事を言ってくれる奴が少なくて…」

 

 そう言って軽く頬を掻くうずめ。そこには女神も楽じゃないよなって感じの苦笑いと、だから嬉しいんだっていう照れ笑いが混じっていて……思った。私はうずめと出会えて、うずめにとっての『対等な相手』になれて良かったなって。

 

「そっかぁ…じゃあさじゃあさ、生き残ってる人探しも頑張らなきゃだね!友達は数じゃないけど、少ないより多い方が楽しいもん!」

「生き残ってる人探し、か…だよな。どこかで頑張ってる奴がいるなら助けたいし、そいつと仲良くなれるならなりたいもんな!」

「そうそう!じゃないとぼっち女神予備軍になっちゃうし、ぼっち女神は既に一作目からいるからね!」

(あぁ…ノワールは別次元且つ本人不在でもこのネタで弄られるんだね……)

 

 明るく笑顔でネプテューヌは人探しに言及し、うずめも同じ位明るく首肯。一名思わぬところで流れ弾を喰らっちゃった友達もいるけど、この場の雰囲気はさっきの私の発言を補って余りある程穏やかに。そうしてその雰囲気のまま、捜索は続く…と、思っていたんだけど……その直後、『それ』は起こった。

 

「生き残ってる人って事は、まだ見ぬ相手なんだよな…まだ見ぬ相手かぁ……どんな奴なんだろうなぁ…」

「それを想像するのも楽しくない?」

「だよなだよな!それにどんな相手かだけじゃなく、どういう出会い方をするかも大切だよね!」

「あー分かる分か……ん?…だよね…?」

 

 うきうきのうずめは想像を膨らませていて、ネプテューヌも頷きながらそれに答える。そのやり取りを、私も木の根元を一つ一つ確認しながら聞いていたんだけど……何か今、語尾が変じゃなかった…?

 

「探し回った果てでっていうのもいいけど、やっぱりうずめ的には衝撃的な出会いが素敵だって思うの。お互い出会おうとしていた訳じゃない、でも必然の様な偶然に導かれたって感じでさー!」

「え、あの…うずめ……?」

「それも、最初に気付くのは片方だけなの!思いもよらない事が起こって〜、それが切っ掛けで出会うんだけど気付くのはうずめ達だけで〜、それから触れる事で初めてお互いがお互いの事に気付くみたいな〜♪」

『…………』

「そんな出会い方が出来たら、うずめは超ハッピー……はッ!?」

 

──一体、私達の目の前では何が起こっているのだろうか。意味が分からない、何が何だか分からない時間。ただ一つ言えるのは、うずめが女神化してる時と遜色ない程ゆるふわムード全開になったという事だけで……私達が唖然としていると、暫くしてからうずめは我に返った。…わ、我に返った…で、いいんだよね…?

 

「ぽかーん……」

「…あ、ご、ごほんっ!兎にも角にもまずは目の前の事だ。皆しっかり探してくれてるし、俺等も手を抜かずにやらないとな!」

「いや、え、その…今の、うずめがうずめっぽくなかったのは……」

「手を抜かずにやらないとなッ!」

「えー……まさかの圧力…」

 

 私達の視線に気付いたように、わざとらしく咳払いをし話を戻すうずめ。気になってしょうがない、とばかりにネプテューヌが訊くけど、うずめは有無を言わせない圧力でネプテューヌに迫って……その後も私達は、さっきのゆるふわ状態について何も聞けず終いになってしまうのだった。

 

 

 

 

 捜索開始から数時間。お昼休憩を入れて、午後の捜索が始まってから少しした頃に、それは起こった。…いや、襲来した。

 

「うずめさん!皆さん!大変なのですー!」

「はっ!このわふーが口癖の子みたいな語尾は……エビフライ!」

「エビフライじゃないのです!」

 

 そこそこのサイズのシェアクリスタル一つと、欠片みたいなクリスタルを幾つか見つけたところで、突然聞こえた叫び声。その声の主は、美味しそうなエビフライ!……ではなく、見た目がそれっぽいからという理由でそんな愛称を付けられてしまったひよこ虫。……まぁこの子だけに限らず、ひよこ虫は皆エビフライっぽいんだけど…。…あ、私は言い出してないよ?言われてみればエビフライに見えなくもないかなぁ…位にしか私は思わなかったし。

 

「どうしたエビフライ、もしかして凄いサイズのシェアクリスタルでも見つかったか?」

「だからエビフライじゃないのです!そうじゃなくて、モンスター……モンスター…?」

『モンスター?』

「あ…こ、こほん。モンスターかはよく分からないですけど、とにかく物凄く強い奴が現れて、襲ってきたんです!」

 

 わたわたと慌てているエビフラ…ひよこ虫は、一度表現に迷った後切羽詰まった様子で起こった事を口にする。その瞬間、一気に意識が切り替わる私達。

 

「ちっ、昨日は一度も遭遇しなかったからもしかしたらと思ってたが、やっぱここにも現れるのかよ…!」

「不味いね、その相手にもよるけど他の子達も退避させた方が良いよ」

「だよな。エビフライ、案内頼む!そいつは俺達が相手するから、海男は皆を避難させて……」

「いいや、その必要はない」

『……──ッ!』

 

 相手が未知数なら、最悪の事態を想定した方がいい。その判断の下私はうずめに声をかけ、頷いたうずめも即座に指示を出して駆け出そうとする。……その時だった。私としては聞き覚えのある声と共に、何かが勢い良く飛んできたのは。

 

「わわっ!?…って、これは……」

「ぬ、ぬらぁ……」

 

 飛来したそれを反射的に避けようとして、でも直前で何かに気付いたのかその場に留まりキャッチしたネプテューヌ。よく見ればそれは目を回したスライヌで、私達は理解する。ひよこ虫の言う襲撃者が、今の声の主が、この子を投げつけてきたんだろうと。

 警戒心を強め、臨戦体勢で私達は視線をスライヌが飛んできた先へ。そして私達が待ち構える中、その存在は現れる。

 

「ふん、あまりにも拍子抜けだ。貴様等の仲間なのだから、多少はやるかと思ったが…弱い、弱過ぎる。倒す気にもならんとは、期待外れもいいところだ」

「な……ッ!?あ、貴女は…!」

 

 呆れたような声音でスライヌを…もっと言えばここまでで遭遇したのであろうモンスター達を貶すその存在。そいつが木々の間から完全に姿を見せた時……私は戦慄した。

 その姿に、その格好には見覚えがあった。一見すればスタイルの良い、けれど肌色が悪く、決して趣味が良いとは言えない外見と共に、只者ではない雰囲気を纏ったその女性は正しく……

 

『マジェコンヌ!?』

 

──私達の知る、嘗ての敵であり今は信頼する仲間の一人、マジェコンヌさんその人だった。

 

「ほぅ、お前達は私を知っているのか」

「…知り合いか……?」

 

 上げた言葉にマジェコンヌさんはぴくりと眉を動かし、うずめはちらりとこちらに視線を送ってくる。

 そう、知っているかといえば知っているし、知り合いかと言われれば知り合いで間違いない。でも、これは明らかにおかしい。

 

「どうして、マジェコンヌがここに…?」

「わ、私だって分からないよ…それに、あの姿…」

「……ねぇイリゼ、これってまさか…」

 

 怯えるスライヌを降ろしたネプテューヌと、目の端でマジェコンヌさんを捉えながら言葉を交わす。

 どう見てもここにいるのはマジェコンヌさんだけど、マジェコンヌさんがこっちに来ている訳がないし、彼女がこんな事をする訳がない。百歩譲ってモンスターに対してはともかく、私達にまで敵対の意思を向けるなんて普通じゃない。それに今いるマジェコンヌさんの姿は、犯罪神のシェアに汚染されていた時と酷似していて……だからネプテューヌも私も、思った。うずめと同じように、ここにいるマジェコンヌさんもまた、『別次元の同一人物』なんじゃないかと。

 

「…マジェコンヌさん、念の為訊きますが…ここにいるモンスター達は善良だって知らず、安全確保の為に攻撃した…とかじゃ、ありませんか…?」

「善良?安全確保?ふっ、私がそんな事で仕掛けたと思っているなら、お前の頭は相当緩いのだろうな」

「イリゼにこんな事言うなんて……やっぱり違う人なんだね!いけないんだよマザコンヌ!確かにスライヌの元ネタも戦車とか海賊船からぶっ飛んだりしてるけど、あれは自分の意思でなんだからね!」

 

 でも、もしかしたら。…そんな可能性に一抹の期待を込めて、私は訊いてみたけど…返ってきたのは侮辱の言葉。その言葉で、私は私達の抱いた認識が正しかったのだと確信し……ネプテューヌもまた、随分と久し振りにマジェコンヌを煽る。

 

「な……ッ!?き、貴様今何と言った!」

「イリゼにこんな事言うなんて……やっぱり「いや最初からではない!私への呼び方だ呼び方!」…え?マゾコンブ?」

「何か更に変わって…ってどちらでもいいわ!小娘如きが図に乗って…ッ!」

「…え、と…敵、でいいんだよな…?」

「あ、う、うん…確かにギャグ調のやり取りになってるけど……敵だよ、うずめ。それもかなり強力な、ね」

 

 軽快な煽りに対してマジェコンヌが突っ込んだ結果、剣呑な雰囲気は微妙に崩れる。けど、だからってこのまま愉快なやり取りだけして終わる……なんて筈がなく、困惑するうずめに対して私は警戒を促す。

 

「やっぱりそうか…おいテメェ!突然現れて何の用だ!」

「何の用?このちびといいお前といい、初対面の相手に向けて随分と不躾な態度じゃないか」

「テメェみたいな奴に向ける礼儀なんざ持っちゃいないんでな。だが、言いたくねぇならそれでもいいさ。見たところテメェ一人みたいだし、今回だけは見逃してやってもいいぜ?」

「ふぅん?私を見逃しても良い、と?」

「あぁ。きちんとテメェが襲った奴等全員に謝って、二度とこんな事をしないと約束するならな」

「そうかそうか。ならば……」

 

 マジェコンヌに対して寛容な態度を見せる…と見せかけてうずめは挑発。一方のマジェコンヌは不愉快さを露わにする…と思いきや、どういう訳か一蹴もせず挑発し返す様子もない。

 そんな態度に私達が違和感を覚える中、マジェコンヌはまるでそれに乗ったかのようにその場で反転。そうして一歩歩き出そうとし……次の瞬間、鋭く振り返る。その手に杖の様にも見える槍を顕現させ、斬っ先から電撃を迸らせながら。

 

「……ッ!海男ッ!」

 

 電撃の放たれた先を真っ先に察し、叫ぶうずめ。私も気付いたけど、距離的に間に合わない。そして、海男さんは目を見開きながらも咄嗟に避けようとして、けれど間に合わず……

 

「……そうは、させないわ」

 

……届く寸前、私達の中で最も近かったネプテューヌが女神化状態で割って入り、迫る電撃を受け止めた。

 

「なんだ、受け止められてしまったか」

「テメェ……ッ!」

「はっ、分かり易いなぁ貴様は。…さて、どうする小娘。まだ私を見逃してくれるのか?」

「……そんな訳…ねぇだろうがよッ!」

 

 怒りを露わにするうずめに対し、見下すようにマジェコンヌは言う。そして彼女が、嘲笑うように訊いた瞬間……うずめは女神化。吠えると同時に光に包まれ、間髪入れずに突進する。

 

「ちょっ、うずめ!?…くっ、いくわよイリゼ!」

「うん!海男さん!」

「分かっている。いりっち、ねぷっち、うずめの事は任せた…!」

 

 一人で突っ込んでいってしまったうずめを追う形で、ネプテューヌも突撃。私も海男さんに皆を連れて避難するよう意図を込めた言葉を飛ばし、女神化をして後に続く。

 

「ほにゃーッ!」

「なんだ貴様、怒っている割には随分と気の抜けた声ではないか…ッ!」

 

 一足先に接近したうずめは、右のメガホンと左の拳で次々と攻撃。対してマジェコンヌは性格の変化に驚きつつも槍で捌いて反撃を狙っている。

 そこに私とネプテューヌが強襲。私との挟撃を考えていたようでネプテューヌは少しだけ大きな軌道で、私は小さな軌道でそれぞれ左右に回り込み、二人同時に斬撃を放つ。

 

「おっと、そう簡単に当たる訳がないだろう?」

「……っ…逃がさないよオバサンッ!」

「待ってうずめ!気持ちは分かるけど、これじゃ奴の思う壺よ!」

「分かってるもん!じゃあ二人は見逃す気!?」

「そうじゃなくて、冷静に戦おうって事!マジェコンヌがそこら辺のモンスターよりずっと強い事は、もう分かってるでしょ!?」

「それは……ご、ごめんね二人共…」

「分かってくれたならそれでいいわ。じゃあ、連携して仕掛けるわよッ!」

 

 左右からの同時攻撃は見えていたようで、マジェコンヌは大きく後方へ跳ぶ事で回避。即座にうずめは追おうとしたけど、その肩をネプテューヌが掴み、私と二人で一度うずめを説き伏せる。その結果、追撃のチャンスは失ったけど…うずめが冷静になってくれた方が、私達にとっては大きな利益。そこから私達は頷き合って、三方向から再度攻撃を仕掛けていく。

 

「マジェコンヌ!貴女の目的は何!?」

「私の目的は、貴様等とこの次元に終焉をもたらす事ただ一つだ」

「あーッ!うずめには言わなかった癖に、いりっちには答えてる!ズルいよオバさんッ!」

「黙れ小娘がッ!…名前もまともに呼べなければ礼儀のれの字も知らない貴様等と、対応に差があるのは当然だろう?だが安心するといい、貴様等は全員仲良く始末してやるさ…ッ!」

「誰が始末なんて…って待って。この次元に終焉って…もしや……」

 

 立ち替わり入れ替わりで休む暇を与えず私達は攻め立てる。その最中マジェコンヌが言った言葉にネプテューヌが反応し、それによって私も気付く。次元に終焉って事は、もしや……

 

「…あのデカブツも、オバさんが呼び出しているって事……?」

「そうだ、と言ったら?」

「…………」

「……!駄目だようずめ!これもマジェコンヌの挑発……」

 

 目を見開きながらうずめが口にした言葉に、マジェコンヌは肯定するかのような言葉を返す。その瞬間、うずめは動きが止まり…私は、また頭に血が上ってしまったんじゃないかと不安になった。だけど一度俯いたうずめが顔を上げた時……そこにあったのは、絶好のチャンスと言わんばかりの笑み。

 

「そっか…だったら好都合だよね!だってここでオバさんを倒せば、デカブツももう現れないって事だもん!」

 

 そう言ってまた仕掛けるうずめ。私もネプテューヌもその考えに安心し、同時に心の中で首肯する。確かにその通り、もしマジェコンヌの言う通りなら…マジェコンヌの撃破は、この次元から最大の脅威を取り除く事にも直結する。

 

『はぁぁぁぁッ!』

「おおっと、今のは少々危なかったが……貰ったぁッ!」

 

 更に数度の攻防の後、私とネプテューヌは二人並んで肉薄。長剣と大太刀で正面から挟み込むように袈裟懸けを仕掛け、けれどマジェコンヌさんが真上へ跳躍した事で空振り。そこからマジェコンヌさんはにやりと笑い、私達に向けて拡散する電撃を放つけど……今度はうずめが割って入る。

 

「そうはさせないよーッ!ぐるぐるシールドッ!」

 

 私達の頭上に滑り込んだうずめは、左手に装備した盾を掲げる。その盾の縁からは流動する明るいオレンジ色の膜が展開され、そこに触れた電撃は流されるように周囲の地面へ。

 

「ち……ッ!」

「そんな程度じゃ、うずめの盾は抜けないもんねーッ!」

 

 シェアエナジーの盾を突破しようとマジェコンヌは電撃を持続させるも、その悉くをうずめは流れに乗せて弾いていく。

 その上下で、私達は次なる攻撃の体勢を整え、うずめが解除すると同時に飛び上がろうと構えていた。マジェコンヌは痺れを切らしたように、何か次の手を打とうとしていた。そして砂煙が舞う中、私達全員が戦術をフルスピードで構築し……

 

 

 

 

──次の瞬間、突如地面が崩壊した。一部が、ではなく……私達の周囲全体が、陥没する。

 

『んな……ッ!?』

 

 崩落に巻き込まれ、落ちていく私達。飛べるとはいえ、突然地面が崩れたら驚かない訳がないし、その一瞬でも私達の身体は大きく落下していく。

 けど、それも一瞬の事。地下に叩き付けられる前に私達は翼を広げ、頭上への警戒は維持したまま着地。すぐ飛び上がる事を念頭に入れつつも、周囲の空間をぐるりと見回す。

 

「…まさか、あの電撃で地面が崩れるなんて……」

「それに、地下にこんな空間があったなんてね…って、あれは……」

「え……?」

 

 地面の下に広がっていたのは、予想以上に広い空間。洞窟とでも言うべき場所で、こんな空洞があるなら電撃で崩れたのも頷けるところ。

 だけど次の瞬間…あるものを見つけた瞬間、私はそんな事どうでもいいと思ってしまった。それ程に驚くものがあって、私の視線に気付いたネプテューヌも同じ方向を見て即座に硬直。

 私とネプテューヌが向いた先。私達が絶句させた、あるものの存在。その方向、視線の先には──私達の背丈よりもずっと巨大な、シェアクリスタルの塊が鎮座していた。




今回のパロディ解説

・某歌姫
シャイニング・アークに登場するキャラの一人、パニスの事。くりひかる、という単語が妙に記憶に残ってるんですよね。…このパロネタが分かった方、おります…?

・ソウルなジェム
まどマギシリーズに登場するアイテムの一つ、ソウルジェムの事。各作品の作品情報を見れば分かる通り、私は設定に関してかなり色々考えているのです。

・わふーが口癖の子
リトルバスターズ!のヒロインの一人、能美クドリャフカの事。高い声で「〜〜なのです」となると、私は彼女を連想しますね。です、単体なら勿論コンパも連想しますが。

・スライヌの〜〜ぶっ飛んだり
ドラクエシリーズの一つ、スラもりシリーズの事。より正確に言えば、2と3の事ですね。…戦闘艦からスライヌが撃ち出される展開は流石にありませんよ?
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