超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第十二話 目的への前進

 ひゃっほーい!どうやら前回わたしが叫んだ悲痛な叫びが届いたようで、今回はわたし視点があるんだよっ!やっぱり世の中言ってみるもんだよねっ!…え、もう始まってるの?そうなの?…こほん。じゃあ、第十二話をどうぞっ!

 

「マジェコンヌは仲間で、でも前は敵で、さらにその前は女神の味方で、昨日会った奴とは別人…う、うぅん……?」

「まず昨日遭遇したマジェコンヌと、君達の知るマジェコンヌは別次元の同一人物。そして君達の次元の彼女は元々女神の味方であり、一度は負のシェアによって闇堕ちしたものの、現在は君達の仲間になってくれている…そういう事かな?」

 

 この次元のマシェゴンヌと戦って、でっかいシェアクリスタルも見つけて、更には記憶喪失の男の子…ウィード君と出会った日の翌日。今日もイリゼが作ってくれた朝食を食べながら、わたし達はマジェコンヌ(あ、こっちは信次元の方ね)の説明をしていた。

 

「そうそうそういう事!やっぱり海男は頭の回転早いよね!」

「む…ま、まぁ俺も分かってたけどな!」

『…ソウダネー』

「全員揃って棒読み!?うぅ、ちょっと見栄張ってみただけなのに……」

 

 分かり易く嘘を吐くうずめに同意してみたら、なんと全員棒読みというちょっとしたミラクルが発生。そしてそれで軽くしょげちゃううずめ。

 

「ま、まぁ元気出してうずめ。今日も張り切っていくんでしょ?」

「そ、そうだったな…こほん。今日の予定は二つ。一つは昨日考えた通りにシェアクリスタルを配置して、あそこの環境を守る事。で、もう一つは……」

「前々から、調査してみたい地域があってね。これまではまともに戦えるのがうずめ一人だったから、手が出せなかったが…二人に協力してもらって、今日はまずその近くまで偵察に行きたいと思う」

 

 でもしょげた気持ちよりやらなきゃいけない事への気持ちが強いみたいで、すぐにうずめの調子は復活。偉いなぁ、うずめは。わたしだったらむしろ、しょげたのを理由に休もうとしちゃうもんね!

 

「ネプテューヌネプテューヌ、平時ならともかくこういう場所でそういう事考えてると、シンプルに好感度落ちるよ?」

「じょ、冗談だよイリゼ…雑務だったら休むけど、こういう時は面倒臭がる訳ないじゃん…」

「いや、女神なんだから雑務もやらなきゃ駄目だけどね…」

 

 うっかり失言ならぬ失地の文をしちゃった結果、イリゼから注意を受けちゃったわたし。むむぅ、油断ならないなぁ…。

 

「まあ、そういう訳で今日も結構動き回る事になるんだ。特に偵察の方は戦闘になる可能性も高いが…二人共、いいか?」

「もっちろん!」

「私も勿論いいよ」

「ありがとう、二人共。その代わり…という訳じゃないが、向かうのはここよりも街の中心に近い区域なんだ。そしてその区域の中には…ここから見える、あの電波塔も入っている」

「……!…じゃあ、尚更頑張らなきゃだね」

 

 少しだけど目を見開いたイリゼの言葉を受けて、わたしは首肯。どうして電波塔が頑張る事に繋がるかって言うと……それが、ネプギアの言っていた『要件に合う施設』だから。…まぁ勿論、正確には要件に合うと『思う』施設だけど…もし見立てが合ってて、ちゃんとネプギアの用意してくれた機材を組み込む事が出来れば、それでわたし達の目的第一段階は達成。信次元との繋がりを確立出来るんだから…そりゃあ、頑張ろうって気持ちにもなるよね。

 

「じゃ、今日も頼むぜ。…後は、ウィードだが…どうする?」

「どうする?…って…それは、着いていくかどうか…って事か?」

「あぁ。安全性を考えりゃ、ここで待ってた方が良いと思うが…色んな物を見る事で、記憶が戻るかもしれねぇからな」

「そっか…なら、一緒に行かせてくれ」

「あいよ。けど、油断はすんなよ?モンスターは勿論、普通の道路だって場所によっちゃ壊れかけてたりするんだからな」

 

 それから話はウィード君がどうするかに移って、ウィード君は着いてくる事を選択。訊いたうずめは勿論の事、記憶探しの旅経験者であるわたしやイリゼも否定しようとは思わなかったから、ウィード君の同行が決定。その後すぐにご飯も食べ終わったわたし達は、出発準備をぱぱっと済ませる。

 

「よーし、それじゃあ今日もレッツゴー!」

「おーっ!」

「へ…!?あ、お、おー…!」

「ウィード君、無理にやらなくても大丈夫だよ?」

「…イリゼ、それは先に言ってほしかった……」

「う、うん…気持ちは分かるけど、それは無理かな……」

 

 拳を突き上げるわたしとうずめに、慌てて上げるウィード君に、肩を竦めるイリゼに、苦笑いをしている海男。この次元でのパーティーは、男の子もお魚もいる今まで以上に多彩なパーティーだけど…色んな子がいた方が面白いもんね。まぁ尤も、一番笑いを提供出来るのはこのわたしだけどさっ!

…とかなんとか考えながら、四人+一匹で出発。女神化して一気に移動…といきたいところだけど、手持ちのシェアクリスタルは減っているからここは我慢。

 

「〜〜♪」

「……?ねぷっち、何食べてんだ?」

「プリンアメだよ?食べる?」

「へぇ、ねぷっちの次元にはそんなものもあるのか。ありがとな」

「ふふーん。何を隠そうこのプリンアメは、わたしが企画したお菓子なんだよっ!」

「…女神、って確か国の長なんだよな…?…国の長が、お菓子を企画……?」

「ふっ…自分の役目は云々、じゃなくて良いと思った事はする。それが、良い女神様ってものなんだよ」

『おぉー……!』

 

 ふっ…と落ち着いた、穏やかな表情で女神の在り方の一つを言うと、うずめとウィード君からの羨望の視線がわたしへ。くぅぅ…!そうそうこれだよこれ!主人公にして守護女神たるこのわたしに向かうべき視線は、こういうのでなくっちゃ!ただのハイテンション面白ロリっ娘じゃないんだよ、わたしは!

 

「……いやプリンアメ作ったのは、国や国民にとっての『良い』じゃなくて、個人的な趣味嗜好だよね…?」

「そーゆー事は言わなくていーの!そんなとこばっかり指摘するから、イリゼは靴下もブーツも短いままなんだよ!?」

「違うわ!こういうファッションなんだから、変な事言わないでよね!?」

 

 徒歩だと時間はかかるけど、代わりにのびのびお喋りが出来る。景色はどこも良くないけど、楽しくお喋りしながらの移動ならそんなに悪くないよね…なんて思いつつ、わたし達は歩みを進めるのだ……ってあれ!?わたし視点もう終わり!?十二話は丸々わたし視点じゃないの!?ぐぬぬ…!そうはいかないよ!この原作シリーズのメイン主人公たるわたしの実力を持ってすれば、強引に視点を続行させる位、させる位ぃぃぃぃ……!

 

 

 

 

 

 

……あっ、やっぱ駄目みたい。ちぇーっ…次こそもっと視点やるもんねー…。

 

 

 

 

 環境維持の為のシェアクリスタル配置は無事完了。昨日と違ってきちんと埋めたり隙間に隠したりしたから、まずマジェコンヌやモンスターに見つかりはしないだろうし、手書きの地図(フリップ再利用)に場所を書き込んでおいたから、回収する際自分達も分からなくなる…という危険もない。そして一つ目の目的を完了させた私達は、もう一つの目的……中心街付近への偵察を開始した。

 

「ここから先は「一方通行だ!」……ねぷっち…」

「ごめんなさい海男さん…うちのネプテューヌがごめんなさい……」

「ほんとにねぷっちはいつも元気だね……こほん。オレ達が知っているのはこの辺りまでで、この先は何があるか分からない。そしていりっち達の目的もあるし、取り敢えずは余力を持って行けるところまで、もし可能ならあの電波塔までを今回の目標にしようと思うんだが…それでいいかな?」

「はい、大丈夫ですよ」

 

 大人の笑みで許してくれた海男さんの提案を、私はすぐに承諾。私達の目的を意識してくれてるのは嬉しいし、万が一に備えて「余力を持って行けるところまで」…と前置きしてくれるのも、人(魚だけど)として信頼が置ける。…柔らかい態度で接してくれるし、頭も回るし、いつも私達皆に気を配ってくれてるし、ほんとに海男さんは信頼出来るというか、年上としてあの人を思い出すなぁ……。

 

「おーいいりっち、早速遅れるなよー?」

「あ、うん分かってるー!」

 

…と思っていたら、数歩分だけど遅れてしまった。危ない危ない、ここではぐれたら合流は困難だし、ほんとに気を付けないと…。

 

「ふーむ…」

「どうだウィード。何か見覚えがあったりするものはあるか?」

「あるような、ないような…。…てか、うずめこそどうなんだ?」

「俺か?…俺もあるような、ないような……」

「だよなぁ…」

「あぁ、全くだぜ…」

 

 で、歩く事数分。建造物を見回すウィード君と、恐らくはそれプラス周辺警戒で見回すうずめが、記憶喪失トークに花を咲かせる。最終的にはうんうんと二人で頷いていたんだけど、それに私達は苦笑い。

 

「ねぷっちといりっちも、嘗てはあんなやり取りをしていたのかい?」

「わたし達?…は、してないよね?」

「してないね。記憶に関して私はもう少し重く捉えてましたし、ネプテューヌはその真逆でしたから」

「そうか…当たり前といえば当たり前だが、記憶喪失も様々なんだね」

 

 二人に対して、非記憶喪失の海男さんと、記憶喪失には一応の決着(?)を付けている私達二人のやり取りはこんな感じ。この後も十分位は、何事もなく進む事が出来たんだけど……

 

「……皆」

「あぁ、どうもさっきから付けてきてる奴がいるな…ここらで一度撃退しておくか」

 

 モンスターの気配を感じていた私が声をかけると、ネプテューヌとうずめがすぐに首肯。今は姿が見えていないけど……間違いなくいる。瓦礫や建物の裏に、一体や二体ではないモンスターが。

 

「じゃあ、どうする?二人が前に出て、一人はウィード君と海男さんの護衛に回るか、それとも迎撃主体で離れず戦うか」

「離れない方がいいんじゃないかな?モンスターがどれ位いるかは分からないしさ」

「だな。さぁて、そんじゃ向こうもお出ましだ」

 

 私とネプテューヌは振り向きながらの抜剣&抜刀を、うずめは左手に右手の拳を当てた後メガホンを手にして戦闘準備を整えると、わらわらと隠れていたモンスターが姿を現す。その数は…ざっと見て十数体。更にまだ隠れている可能性もある。

 

「…来るよ、二人共!」

「うんっ!」

「おうっ!」

 

 こちらをゆっくりと取り囲むと、包囲網が完成した次の瞬間モンスターは私達へ襲いかかってくる。

 我先にと全てのモンスターが来るのではなく、ある程度の距離を保って数体が飛び込んでくるその動きは、群れで狩りをする時のそれ。なら連携にも気を付けなきゃいけないね…と私は心の中で自分に言いつつ、モンスターとの戦闘を開始した。

 

 

 

 

 うずめは俺に、油断すんなよと言った。三人は俺を、守る対象である前提で話していた。

 実際それは、恐らく間違ってない。記憶がないから断言は出来ないが…まぁ多分、俺は変身(女神化…だったかな)も飛行も出来ないだろうし。だから、その三人がそう判断するなら…と思って海男と一緒に三人の後ろに下がっていた。

 けれど同時に、三人が大変そうなら俺も何かしようと思っていた。少なくとも、注意を引き付ける位は出来るだろうって。そして、そういう形で三人を助けられるなら、少し位の危険は…とも思っていたんだが……

 

「せぇいッ!」

「てりゃあッ!」

「ふんッ!」

(…三人共、強ぇ……)

 

 戦闘開始から、数分と経たずに俺は理解した。この戦いにおいて、俺の助力は一切必要ないんだな、と。

 豪快且つ軽快な動きでモンスターを殴り飛ばすうずめに、どこから仕掛けても対応しそうな立ち回りで斬り払うイリゼに、一見無茶苦茶なのに数体纏めて圧倒しているネプテューヌ。全員が全員何倍もいるモンスターに引けを取らないどころか優位に立ち回っていて、完全に俺は茫然自失。おまけに三人共激しく動き回ってるのに、ギリギリ見えそうで見えな……こほん。…とにかく俺の出る幕は、一瞬たりともありそうになかった。

 

「…凄いだろう?彼女達は…いいや、女神というものは」

「…あぁ。女神化…したら、もっと強いんだよな?」

「勿論。女神の姿こそが、彼女達にとっての全力だからね」

 

 つまり、今はまだ力の全てを出してはいないのか。それでも尚、三人はこんなに強いのか。そう思った俺は感服というかなんというか、とにかく守られている立場というより、観客みたいな気持ちになってしまった。

……だがそれは、長くは続かなかった。…というと嘘になる。全くの嘘になってしまう。体感では三人の優勢が、数十分もの間続き…だからこそ、俺も違和感を覚え始める。

 

(……なんだ…?なんでずっと優勢なのに、モンスターの数が減ってないんだ…?)

 

 どうもモンスターは闇雲に攻めてる訳じゃないらしく、無理せず少しずつ仕掛けている…という感じ。それでも一体、また一体と傷を負い、何体ものモンスターが倒されていたが……いいや、何体も倒されているのに、戦いが続いている。まだモンスターは、全滅していない。

 意味が分からなかった。減ってるのに減ってないなんて、明らかにおかしいじゃないかと。けれど俺も、それから注意深く見回し…気付く。減っているのに減っていないんじゃなく……減っているけど、増えてもいるんだと。

 

「……っ…!うずめ!イリゼ!ネプテューヌ!奴等、瓦礫の裏から…!」

「分かってるッ!ちっ、まさかここまでの群れだったとはな…!」

 

 不味いと思って叫んだ俺に返ってきたのは、切羽詰まってる…とまでは言わずとも、余裕の感じられないうずめの言葉。…そう、仕掛けなんて程じゃない単純な理由。モンスターは、三人の想像を遥かに超えるレベルで潜んでいたってだけの話。

 

「どっかで打ち止めになるとは思うけど…ネプテューヌ!ここは一度、女神化して空に……」

「待てイリゼ!この先もどんな奴が出てくるか分からねぇんだ!だから女神化はまだ…ッ!」

「そうも言ってられない状況じゃない!?わたし達だけならともかく、海男達を守るならこのまま戦い続けるのは…!」

 

素早く鋭い動きはそのままに、言葉を交わす三人。空への離脱を押すイリゼとネプテューヌの言葉も、先の事を考えて温存を押すうずめの言葉も俺からすれば一理あって、しかも戦闘中だからか普段よりずっと気迫のある三人のやり取りに、俺は口を出す事が出来ない。……なんて思っていた俺とは逆に、隣の海男は声を上げる。

 

「なら、あの高架橋に向かうのはどうだろうか!本来あそこに上がる為の道は見えないが、どこかから登れる可能性はあるだろう!」

「……!流石だぜ海男!二人はどうだ!?」

「あそこなら…うん、いいよ!」

「じゃあ、突破は任せてっ!」

 

 声を張りつつ、手の様に動くヒレで海男が指し示したのは俺から見て左側。海男からの提案を受け取った三人の動きは早く、牽制で近くのモンスターに距離を取らせたかと思えば即座にネプテューヌは高架橋のある方向へ。それと同時にうずめとイリゼはこちらに真っ直ぐ突っ込んできて……

 

「走るぞウィード!気張れよッ!」

「海男さん、失礼しますっ!」

「うお……ッ!?」

 

 がっ、と手首を掴まれたかと思った次の瞬間、俺はうずめに引っ張られていた。

 何の為に、というのは分かる。この場を乗り切る為、モンスターを振り切る為だ。それ位は、俺だって分かるが……と、突然過ぎる…ッ!

 

「どいたどいたーっ!退かなきゃ刀のサザビー…じゃなくて錆にしちゃうよーッ!」

「転んでも引き摺って行ってやるが、出来るだけ頑張って走れよ…ッ!」

「ひ、引き摺られるのは勘弁…!」

 

 太刀を振り回しながら勢い良く突進してくるネプテューヌには面食らったのか、道を開けるように飛び退くモンスター達。その穴が塞がる前に俺達も駆け抜け、あっという間に包囲網突破。それが碌な説明もせず、瞬時に迎撃から離脱へ切り替えた事で出来た芸当だったんだと俺が気付くのは、突破してから数十秒程経ってからの事。

 とはいえ、まだ今は突破しただけ。後ろからはモンスターの猛追が迫ってきていて、これっぽっちも安心出来ない。

 

「はぁ…はぁ…く……ッ!」

「負けないで!もう少し!最後まで走り抜けてっ!」

「ネプテューヌ!?それはウィード君を応援してるの!?それともネタを仕込んでるだけ!?」

「どっちも!」

(二人とも余裕あっていいなぁ…ッ!)

 

 とにかく一心不乱に走る中、対モンスターの為に後ろに付いたネプテューヌからエールらしき声が飛んでくる。横からはイリゼの突っ込みが聞こえてくる。ふ、二人…ってかうずめもだけど、あんだけ戦った上でまだこれだけ動いたり話したり出来るのか…。羨ましいってか、自分がちょっと情けねぇ……。…って、気落ちするな俺…!今は落ち込んでる場合じゃないし、戦闘の空気に慣れてないから本来の力を発揮出来てないだけの可能性もあるじゃないか…!……多分…!

 

「……あった!皆あそこ!ちょっと危ないけど、あの崩れてるところからなら上まで登れる筈だよッ!」

「あ、あそこって…あんな急なところをか…!?」

「そういうこった。しゃあねぇ、ちゃんと掴まってろよ、ウィード!」

「うぇっ!?ちょっ…えぇぇッ!?」

 

 高架橋が目前に迫った時、海男を片手で抱えたイリゼが剣で指したのは一部が崩れた柱の一つ。だが命綱を付けて、ゆっくりと登るならともかく、俺からすればそこはこの勢いで登れると到底思えないような場所。早い話が、どう考えたって無理な提案。

 分かってる。ゆっくり探してる場合じゃないってのは承知してる。けど無理、これは流石に無理だ。…俺は、そう言おうとした。流石にこれは言わざるを得ないと思った。だが、それを言う間もなく俺は思い切り引っ張られ、バランスを崩し……気付いた時には、うずめに抱えられていた。俗に言う、お姫様抱っこである。

 

「う、うずめ!?うずめさん!?」

「おう!俺は天王星うずめ、この次元を守る女神だ!気を付けないと舌噛むぞッ!」

「いやそういう意味で呼んだんじゃないけどなッ!?」

 

 何してんの!?何のつもりなの!?…そう訊くよりも早く俺を抱えたうずめは跳び、柱の崩れた部分に足をかけた。

 無茶苦茶だ、こんなのすぐに落ちてしまう。…一瞬俺はそう思ったが、うずめは柱を川の飛び石かのように軽々と跳んでいって、どんどん上へと登っていく。

 

(マジで凄ぇ……けどやっぱ無茶苦茶だぁぁッ!怖い怖い抱えられてる側としては超こぇぇぇぇッ!)

 

 うずめはしっかり抱えてくれてるが、やってる事が無茶苦茶過ぎて全然落ち着けない。抱えられ方を無視すれば役得じゃね?…なんて気持ちも、もしうずめが足を滑らせたら…と思うと怖くて全然浮かんでこない。結果俺はビビりながらうずめの指示通りしがみ付いていて……一分もしない内に、高架橋の上へと到着した。

 

「ふぅ……腰が抜けたりしてないか?」

「え、あ……そ、そりゃ当たり前だ。こんなもんで腰が抜けたりなんかしないっての…!」

「へぇ、そりゃ良かった。んじゃ……おらよっと!」

 

 ちょっと意地の悪い笑みを浮かべられて、つい見栄を張ってしまう俺。するとそれも見透かしたようにうずめは笑みを深め…その直後、石ころサイズの瓦礫を幾つか拾って橋下に投擲。それは最後のネプテューヌが登り終えた直後で、同じくイリゼが放った瓦礫と共に、登ろうとしていたモンスターの身体にぶち当たる。

 

「わー、頑張って登ろうとしてる生き物に上から瓦礫ぶつけるなんて、イリゼもうずめも意地悪だなー」

「む……それじゃあうずめ、足止めはネプテューヌに任せてもう少し移動しようか」

「そうだな。任せたぜねぷっち!」

「ちょっ!?じょ、冗談だって二人共!もー、置いてかれたらわたし泣いちゃうよ?」

「逃走時も今も冗談を言えるとは、本当にねぷっちのハートは強靭だね…」

 

 二人の投擲でモンスターが攻めあぐねる中、もう皆は冗談混じりのやり取りを口に。…うん、段々分かってきたよ。皆にとっては、これでもまだ非常事態ってレベルじゃないんだな…。

 

「全くもう…とにかくもう少し移動しようよ。飛べる別働隊がいる可能性もゼロじゃないし、今群れから離れた一部がもっと登り易い柱を見つけちゃうかもしれないし」

「俺もそれに賛成だ。ウィード、もう限界ならまた抱えてやるぞ?」

「だ、だから大丈夫だっての!」

 

 またもや俺をからかってくるうずめに言い返しつつ、大丈夫だと証明するように俺は走り出す。その数秒後、「あれ?こっちでいいの?もし逆だったら俺超恥ずくね?」…と不安になったが、幸い皆も付いてきてくれた…というか、すぐにうずめ達三人に並ばれた(海男はまたイリゼに抱えられていた)。

 そこから最初の数分は急ぎ足で、ある程度距離を稼いでからはジョギング位の速度で移動し続ける事数十分。モンスター達の姿が見えなくなってから暫くしたところで、やっと俺たちは足を止める。

 

「ふぃー……つ、疲れた…」

「お疲れ様、ウィード君。これだけ距離を稼げば、すぐに追い付かれることもないかな」

「だと、いいんだが…てか、女神って…体力も半端ないんだな……」

 

どっかりと座り込む俺に対し、うずめ達は三人共立ったまま。…自分が情けなくなるの、今日で何度目なんだろう……。

 

「ふっふーん、そうです女神は色々凄いんです!どやぁ!」

「擬音を口で言うのかねぷっちは…けどまぁ、俺達だって流石に疲れたぜ?もう暫く全力疾走は勘弁だな…」

「私も…。…あの、海男さん。さっきは苦しかったりしませんでしたか?」

「うん?あぁ、それなら大丈夫だよ。むしろオレが苦しくないよう気遣ってくれている事が伝わってきて、いりっちの優しさを再認識した位さ」

「あ…そ、それはその…ありがとうございます…」

「お、なんだ海男。いりっちを口説いてるのか?」

「ちょっ!?う、うずめ何言ってんの!?」

「むー?駄目だよ海男。イリゼはご覧の通り初心なんだから、勘違いさせるような事言っちゃ」

「ネプテューヌまで!?や、止めてよもうっ!」

 

 流石に疲れたとは言うものの、三人に賑やかなやり取りが出来るだけの余裕がある事は事実。それを見ていると、ほんとに凄いような自分が情けないようなって気分になってくるが……それと同時に、眺めていると少しずつ元気も湧いてくる。

 それが女神の力なのか、本当に楽しそうだからなのか、それとも和むやり取りだからかは分からないけれど…自分の意思で着いてきたんだ。だから弱音は吐いていられないよな、って思わせてくれる。

 

(…そうだ。三人は俺以上の負担がある事をして、その上で俺を気遣ってくれてるんだ。だったら俺も、まだまだ頑張らねぇと……!)

 

 身体は疲れてる。息もまだ整い切ってはいない。でも頑張ろうって気持ちはある。だったら俺は、まだやれる。やれるに決まってるじゃないか。…そう思って、立ち上がるべく膝に手をかけた……その時だった。

 

「……うん?」

「…どうしたんだい?うぃどっち?」

「…あれは、なんだ…?」

「あれ?……って、あれは…!」

 

 不意に空の端に見えた、黒い光。指を差して教えると、振り向いた海男は目を見開く。そして、次の瞬間……

 

「な……ッ!?」

 

──それはまるで黒い流星。空から飛来したそれは、はっきりと見える距離に落下し……先程のモンスターの群れとは段違いのプレッシャーを放つ、黒の巨人が現れた。




今回のパロディ解説

・「ここから先は「一方通行だ!」〜〜」
とあるシリーズの主人公の一人、一方通行(アクセラレータ)の代名詞的な台詞のパロディ。ですがネプテューヌですし、元気一杯に言ってそうですね。

・サザビー
機動戦士ガンダム 逆襲のシャアに登場するMSの事。刀のサザビー…全然意味が分かりませんね。νガンダムならまだ刀っぽいビームサーベルを装備していますが。

・「負けないで〜〜抜けてっ!」
ZARDさんの曲、負けないでのフレーズの一部のパロディ。どんな時でも冗談を言うのは忘れない。それがネプテューヌですよね。
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