超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
拠点を襲ってきたモンスター群の殲滅は、うずめ達三人の活躍で無事成功。人&モンスター的被害は一切出す事なく、事無きを得られた。
とはいえ、拠点である廃ビルの一階は被害甚大。加えて見つかってしまった以上、これといって防衛設備のないこの拠点に留まる事は出来ない…という事で、近くにある別の拠点へ移動する事が決定した。そして今は、その拠点へと移行中。
「ういしょ、っと。これで取り敢えず完了、か?」
「そうだね。ありがとううぃどっち。やはり細かい作業は、人がいてくれると助かるよ」
保存食の入った箱を積み上げたところで、海男から受けたのは感謝の言葉。移動自体はもう終わっていて、後は持ってきた物を配置し終えれば拠点の移行も完了する。…因みに、細かい作業とはこの積み上げ。確かに海男やスライヌ、ひよこ虫達に『敷き詰めて積む』のは大変そうな行為に見える。
「これ位お安い御用だ。…けど、いいのか?まだ結構設備を前の拠点に残したままだが……」
「あぁ、いいんだ。あの拠点は暫くは使えないが、別に廃棄する訳じゃないからね。それにあそこ周辺で大きな戦いが起きた場合、あの拠点は前線基地としてうずめ達が使う事も十分あり得る。ならばその時、休憩出来る程度の物は残っていなければ困るだろう?」
「それもそうか…確かにうずめ達なら、仮に入ってこられても難なく撃退出来るもんな」
「そういう事さ。…っと、噂をすれば…だね」
海男が俺の問いに答えてくれたところで、不在だったうずめ達が帰ってくる。
移動時うずめは俺達の護衛、ネプテューヌとイリゼは例の巨大シェアクリスタルの運搬を行い、到着後は三人で周辺の安全確認に出ていた。その三人が普通に帰ってきたという事はつまり、この周辺でこれといった脅威は見当たらなかったという証明で、帰ってきた途端に皆はほっとした表情を浮かべたが……
「…うっ……」
目が合うなりうずめ達からジト目の視線を向けられて、俺は思わず目を逸らしてしまう。ジト目で見られている理由は……まぁ、言うまでもない。
「…海男、こっちは済んだか?」
「ご覧の通り、スムーズに進んだよ。うぃどっちのおかげでね」
「い、いやだから俺は…」
「謙遜する事はないさ。オレ達だけだったら、もっと手間取っていた。…これは事実だよ、うぃどっち」
「…そうかい、ご苦労さん」
「あ、お、おう……」
俺から視線を外すうずめ。ネプテューヌとイリゼも、気不味そうに俺から視線を逸らしている。そしてそんな俺を気遣ってくれたのか、海男が俺のイメージアップを図ってくれた。……が、うずめは俺をちらりと見ただけで、声音は昨日までよりも低い。
「…………」
「…………」
広がっていく、重い空気。気不味そうにしている二人は勿論の事、うずめもよく見れば俺に怒りや不愉快さを抱いているような表情じゃなくて、けれどやっちまった…というか、起きてしまった事は起きてしまった事な以上、気持ちの部分はどうしようもない。勿論意識が戻った後俺は謝ったが、謝りゃいいってものでもなくて……
「…あ、あのっ!皆さん、ウィードさんの事…怒らないで、あげて下さい……」
「…お前……」
そんな中、不意に俺達の間へ飛び出してきたのは一体のスライヌ。モンスター達も顔付きや体格はそれぞれ違うとはいえ、正直ぱっと見で誰が誰かを判別出来る程、俺はまだ皆の事を知っていない。…けど、今出てきたスライヌが誰かは分かる。何故なら、彼は…さっき俺が助けたスライヌだから。
「ウィードさんがいなかったら、ぼくはきっと、あの時食べられてました。ウィードさんが助けてくれたから、ぼくはまだ生きてるんです。だから……」
「……別に、怒ろうとしてる訳じゃねぇよ。ただ……」
「ただ…?」
「…ただ……」
「ただ……?」
三人の前に立ち、見上げながら彼は言う。彼の言葉を受けたうずめは、また目を逸らしてぼそりと返す。それから言い淀んだうずめと、じっと見つめる彼との時間が数秒続いて……うずめは大きく、溜め息を零す。
「……はぁ…そうだな、その通りだ。ウィードがわざとやった訳じゃねぇってのは分かってるし、非…っつーか、俺達が普通に服を着て来たら、ああはならなかった。…で、もしウィードが駆け付けてなかったら、俺達が服を着てから来たらの可能性を考えりゃ……あれは不幸な事故だった。…それ以上でも、それ以下でもないんだよな」
「うずめさん……!」
「…って訳で、どうだよ?二人共」
「あはは、うずめがいいならわたしもそれでいいよ。確かにちょっと恥ずかしいっていうか、まさかわたしのあられもない姿を見られちゃうとはって思いもあるけど……一応わたし達は、うずめに比べればまだマシだったからね」
「だね。…でもウィード君、あの時の事は極力思い出さないでよ?…ば、バスタオル巻いてたとしても、恥ずかしいんだから……」
「そ、それは勿論だ!あの瞬間の事は俺の記憶と心の中で厳重に仕舞っておく事を約束する!」
「だったら…って待てやウィード!テメェ、何大事なものとして保管しようとしてんだ馬鹿!そういう事じゃねぇからな!?」
片手を腰に置いて、理解を…納得を示してくれるうずめ。恥ずかしいんだ、という事を口にしつつも、あの事を飲み込み許してくれると言ってくれる二人。…彼の言葉で、一気に変わった。見た側でも、見られた側でもない、スライヌの言葉で。
いや、違う。三人共、さっきうずめが言った通り、もう怒ってはいなかったんだ。ただ事が事だから、「ごめんね」「いいよ」の簡単なやり取りじゃ処理し切れないもやもやがあって…それをスライヌの言葉が、三人が「これなら仕方ないよね」…と自分自身を納得させられるだけの力となって、押し流してくれた……んじゃないかと、俺は思う。つまり、何が言いたいかっていうと……俺は彼に、感謝しかないって事。
「…助かったよ、ありがとう」
「そんな、ぼくは助けられたって事を言っただけですよ!ウィードさんがしてくれた事に比べれば、小さな事ですし…」
「なら、これはあれだね。情けは人の為ならず、回り回ってお咎めなし…ってやつだよ!」
「…ネプテューヌ…それ己が為、だからね?確かにウィード君はお咎めなしになったけど」
「え…いや俺、あの瞬間ぶん殴られて……」
「うっ…それは、その…悪かったな……」
「…なんて、な。あれは状況的に無理もないし、俺は何とも思ってねぇよ。…てか、あれがなきゃ俺もいつまで見てたか分からないし……」
『え?』
「あっ……こ、こほん!とにかく俺も皆も無事で良かった!けど危ない事をするなら、少し位は鍛えないとって俺は痛感した!って訳で、ちょっと走り込んでくる!」
「あっ、おい待てウィード!やっぱお前そこに直れ!待てやこらぁッ!」
うっかりしてしまった失言にヤバいと思った俺は、即刻逃走。今度は怒りを乗せてきたうずめの声が聞こえてくるが、この状況で立ち止まるような奴はいない。だってさっきは一撃KOされたんだもん!あんなの日に二度も喰らって堪るか!
……なんて感じにドタバタとなってしまったが、拠点の移行は何事もなく完了し、うずめ達との気不味い空気も払拭する事が出来た。モンスターの襲撃にしてもハプニングにしても、起こらないのが一番だが……こうしてまた賑やかに話せるのなら、良かった良かったで済ます事も出来るよな…なんて思う俺だった。……ん?厳重に仕舞う云々の真意?…そりゃあ勿論、ねぇ…?
*
拠点の移行完了後、再び私達は街の中心に近い区域への突入を開始した。メンバーは昨日と同じ四人と一匹で、目的地も昨日と同じ電波塔。
「……!確かに、このまま進めば……」
「だろう?我ながら、この高架橋を選んだのは賢い選択だったと思うよ」
昨日巨人が襲来した時立っていた位置(私とネプテューヌが落下した跡があるからよく分かる)の辺りまで来たところで、ある事に気付いた私は声を上げる。
ある事というのは、この高架橋が架かっている先。昨日はそれどころじゃなかったから、海男さん以外気付いてなかったけど……どうやら高架橋は、目的地である電波塔付近にも通っている。つまり、咄嗟に選んだこの高架橋は、目的地への近道でもあったって事。
「この高さなら登ってこられないモンスターもいると思うし、正にわたし達の為にあるって感じの高架橋だね!うんうん、誰か知らないけどこれを造るように指示した人には親近感が湧いてくるよ!」
「誰か知らないけどって…でもまぁ、何となく分からないでもない気がするな」
「でしょー?って訳でこの高架橋にはねぷねぷ橋って付けたいんだけど、いいかな!?」
普段は単純な思考をしているネプテューヌは、近道が見つかったという事で今はご機嫌の真っ最中。そして「いやそれは好きにすればいいと思うけど…」みたいな感じに私達が返した事で、この高架橋にねぷねぷ橋という名前が付く。…この名前だとネプテューヌが造るように指示したみたいになるけど、それについてはどう思ってるんだろう…。
「けどほんとに、この高架橋は助かるな。見晴らしも効くから奇襲もされ辛いだろうし」
『ソウデスネ-』
「……いやほんと、反省してるっす…反省しきりなんで、ご機嫌を直して下さいませんでしょうか…」
「はぁ…そりゃー男の子なんだから仕方ない部分もあるんだろうけどさ、君とわたし達は異性なの。それを分かっておいてくれないと、慈愛の女神ネプティスと呼ばれるこのわたしでも許してあげないからね?」
「はい…肝に命じます…」
棒読みの返答に落ち込むウィード君に対し、ネタを交えつつもちゃんと注意をするネプテューヌ。基本おちゃらけてるネプテューヌだからこそ注意も刺さったみたいで、ウィード君は一層反省をしている様子。…うーん…こうなると言う必要もなさそうだけど、私も一言位は言っておこうかな。…よし。
「全くもう…いい?さっき言った通り、バスタオル一枚なんて私達からすれば嘗てない羞恥……」
『……(イリゼ・いりっち)?』
「……じゃなかった…男の人にもっと恥ずかしい目に遭わされた事あったんだった…」
『えぇー……』
……なんて思ったのが運の尽き。墓穴を掘った私は、恥ずかしい事思い出すわ皆から「な、何があったの…?」みたいな目で見られるわ、散々な結果になってしまった。…うぅ、救命上必要だったとはいえ、意識ない時にショーツ一枚の姿にされるなんて私史上最大の辱めだよ……。
「…いりっち、ビスケット食うかい?」
「うん、うずめありがと…」
「イリゼ、辛い事があったら言うんだよ?」
「ネプテューヌもありがと…」
自爆した私へ向けられる優しさは、嬉しいような恥ずかしいような。結局話の流れもウィード君への注意から私への慰めに移っちゃって、結果「ウィード君の件は…まぁ、いっか」みたいな感じになってしまった。
「なんか、悪かったな。俺のせいで変な事思い出させて…」
「ううん、あれは私の自爆だから……」
「いやでも……ん?」
「……?」
「…まさかイリゼ…俺がぐちぐち言われたり、さっきみたいな気不味さがまた生まれたりしないよう、身体を張って流れを変えてくれたのか…?」
「…そういう事に、しておいて……」
「あ…お、おう……」
その後のウィード君の勘違いも、都合良いような、だけど今の私の心境じゃ喜べないような。しかも完全に感情が顔と声に出てたからか、ウィード君も反応に困ってしまい……こういうとこ、ほんと私は駄目だなぁ…と反省しきりの私だった。
*
それから数十分後、遂に私達は電波塔のすぐ近くにまで到達した。
「ここらで降りるとするか。何もないなら飛び降りるしかないが…」
「うずめ、あそこから下の道に降りられるんじゃないか?」
「あ、そうだね。少しだけ回り道になるけど…別に一分一秒を争う訳じゃないし、あっちから降りれば良いんじゃないかな?」
指を差したウィード君の言葉に私は頷いて、私達は高架橋から下の道へ。幸いここまでも、降りてからもモンスターと遭遇する事はなく、電波塔の直下……恐らくは管理施設である建物へと到達。周辺の建造物の中でも群を抜いて高いその電波塔を見上げる私とネプテューヌの心には、自然に緊張感が湧いてくる。
「…取り敢えず、入ってみる…?」
「うん、入ってみよっか…」
私からの返答を受け取って、ネプテューヌは手を正面にある扉へ。そこから横に引っ張るけど……扉はガタガタと鳴ってるだけ。
「…あ、あれ?ガラス戸なのに意外と重い…鍵がかかってるのかな…?」
「ガタガタ抜かしてんじゃねぇよ、って言って一度精神的に優位に立ってみたらどうだ?」
「何故にすち子さん流の方法を提案するの、うずめ…。あ、ほんとに開かない…でもこれ、鍵がかかってるってより、何かが引っかかってるって感じじゃない…?」
「ふむ…レールに何かが引っかかっている、又は錆び付いてしまっているのではないのかな?」
「うーん……じゃ、壊しちゃう?」
二人掛かりでも開かない扉。どうしたものかと考えていると、頬に指を当てたネプテューヌが振り返って一言。それを受けた私達は顔を見合わせ……
「ごめんな、さいッ!」
二度振り抜かれるネプテューヌの太刀。斬撃により二筋の跡が扉に刻まれ、その後ネプテューヌが扉を押した事で斬られた扉の内側が横転。少々…少々?…乱暴な方法だけど、私達は建物への侵入が可能になった。
「綺麗な断面だな…流石ねぷっちだぜ」
「ふふーん、引き斬ってこそ太刀だからね!」
「で、ええっと…ここからはどうするんだ?」
「取り敢えずはメインコンピューターとか、サーバー設備探しかな」
開けられた四角い穴から中に入ると、扉が閉まったままだったからか建物の中は然程荒れていない。加えて小窓から光が入っているから、中の捜索も十分出来そう。その事に私は安心しつつ、ウィード君に答える形でうずめと海男さんにも次に探すべきものを伝える。他にも電源とか電波塔の状態確認とかも必要だけど…まずはシステムの方を確認しないと始まらないよね。
「多分、今上げた設備があるのは奥の部屋……ってネプテューヌ、そこはどう見てもただの小部屋だと思うんだけど?」
「いやいやイリゼ、こういう時は隈なく探すのが基本でしょ?もしかしたら、初来訪時にしか手に入らないアイテムが落ちてるかもしれないよ?」
「確かに…いつの間にか入れなくなってるって事あるよな」
「お、これが分かるって事は君も多少なりともゲームをやってたんだね!これは記憶復活の手掛かりになるかもしれないよ!」
「た、確かに…!やっぱり記憶喪失の先輩は視点が違うぜ…!」
「でしょでしょ?これでもわたし、記憶喪失のままここまで来てる系女神ですからっ!」
意味の分からない盛り上がり方をするネプテューヌとウィード君を半眼で見つつ、建物内を見て回る。ネプテューヌはともかく、ウィード君まで乗るとは…拠点移行のやり取りといい、ウィード君って実はふざけるのも好きなタイプなのかな…。
「…うん?ここは……」
「海男、何か見つけたのか?」
「どうやらここは資料室…というか、倉庫のようだ。直接関係はしないかもしれないけど、一応覚えておいた方が良さそうだね」
そして一方の海男さんは、安定の信頼感。…こういう人(魚だけど)を、真にしっかりしてるって言うのかなぁ…しっかりしてるようでしっかりしてないと言われる私としては、本当に見習いたい。
なんて感じに捜索する事十数分。お腹も空いてきたし、そろそろ休憩してもいいかなぁ…と思い始めたところで、私達はメインフレームのある部屋を発見した。
「イリゼ、ここなら…」
他の部屋や廊下同様、比較的綺麗な状態の部屋内部。電源は入っていないようだけど、ここには大型のコンピューターが幾つも備えられていて……ネプテューヌの言葉にも、緊張が混じる。
それはそうだ。私にとってはもう何度も経験している別次元だけど、ネプテューヌにとっては初めての経験で、ここまではいつ戻れるか、いつ通信出来るようになるかも分からない状態だったんだから。そしてその私だって、「やっと」…と感じてるんだから、ネプテューヌがそれ以上に感じていても何もおかしくはない。
「…よし、じゃあ始めようか。まずは…っと」
「随分と大きいケースだね。オレ達も何か手伝う事はあるかい?」
「そう、ですね…ちょっと待ってもらえますか?私も手探りで進めるようなものなので…」
部屋を軽く見回した私は、普段見慣れているのより大きくて厚い…要はぱっと見古そうに見える据え置きコンピューターの一つの前で、ネプギアに渡されたケースを取り出し床で開く。手順の書かれた紙は…あ、これか。紙っていうか、書類の束だけど…。
「ふむふむ、最初はシステムとこっちでやろうとしてる事に対応出来るかの確認、か…。端末は…これ、だね」
「おぉー!それ、いりっち達の次元で使われている端末か?薄いし見るからにハイテクそうだな!」
「うん、まぁ確かに信次元でも最先端技術には自信のあるプラネテューヌの最新モデルだからね。しかも恐らく内部は改造されて、より高性能になってるだろうし」
「へぇ…あ、ネプテューヌが胸張ってる……」
「はは…最先端技術に反応したんだろうね…」
興味深そうに寄ってくるうずめ&ウィード君と話しつつ、私は手順を読み進める。えっと、有線接続する為のコードがこれで…この逆側にこっちのコンピューターのコネクタに合うコードを嵌めて…ふーむ……。
「これは、違う…これも、合わない…これは……あれ?え、ちょっ…あ、よ、良かった取れた……」
「イリゼー、合うのありそう?無かったらわたしのフードの紐使ってもいいよ?」
「それ端子っぽいデザインなだけでしょ…。……そんな機能ないよね…?」
「…どう、だろうね」
「何その思わせぶりな反応…っていうかどっちにしろサイズが合わないじゃん…。…仕方ない、これを使うか…」
操作用端末の隣には結構な本数のコードが入っていたけど、どれも規格は合っていない。一応、ほんとに一応大きさを測ってみたけど、ネプテューヌのフード紐も非対応。そして残ったコードは…後一つ。
「…いりっち、それは試さないのかい?」
「あ、はい。これは試す必要ないので」
『……?』
「これ、規格を無視して接続出来るオリジナル品らしいです。まぁ、鍵をピッキングで開けるのと同様相手側を痛めてしまうらしいですし、この通りテープか何かで止めないとすぐ抜けてしまうので、他のコードが一切合わない場合のみ使って下さい、って書いてあるんですけどね」
不思議そうにしている皆へ説明するけど、私は書類に書いてある事を話しただけ。一先ずこちら側の準備は済んだから、端末を一度置いて視線をコンピューター本体の方へ。…にしても、ほんとネプギアは凄い物作るなぁ…本人は趣味レベルって言うだろうけど、もう十分どころか十二分に実践レベルだよ…。
(次は、こっちの起動っと。その手順は…まぁ、流石に載ってる訳ないよね)
幾らネプギアでも、ここの次元にあるコンピューターまで予測出来る訳はない…というか、そんなの最早未来予知のレベル。まあでも、起動さえすれば後は端末の方で操作出来るから、使い方が分からなくても問題はない。
「えーっと、電源ボタンは……うん?どこだろ…これ、は違うよね…」
「これじゃないのか?」
「あ、そっか。…ううん?点かない…長押ししても反応なし……?」
「…イリゼ、それ電源コード抜けてないか?」
「え?いやそんな筈…って、あ…こっちが電源コードだったんだ……二人共、よく分かったね」
起動にまごつく私に対し、まずうずめが、続けてウィード君が教えてくれる。そのおかげですぐに分かったけど……
「…言われてみりゃ、そうだな…俺自身、覚えてるなんて気付かなかったが……」
「俺もだぜ。…けど、自分の守護する国の名前も分からねぇのに、コンピューターの点け方なんて覚えててもなぁ……」
「はは、全くだ……」
局地的にも程がある事を覚えていた事に気付いた二人は、揃って呆れ笑いを浮かべていた。
でも、そこで私はある事に気付いた。二人がこれに関する知識を持っているって事は、恐らく二人は私と同じタイプ…即ち時代が変わってしまう程の長期間眠っていた記憶喪失者ではないって事。これ単体にはそれ以上の意味なんてないけど…ちょっと、ほっとした。
「…………」
それから私達は、起動し画面が表示されるのを待機。…けど、一分経っても二分経っても、コンピューターはうんともすんとも言ってくれない。
「点かないね…もしかして、電気自体が来てないのかな?」
「部屋の照明も点かねぇし、そうかもしれないな。どうする?」
「確か、近くに発電施設らしきものがなかったかい?それか、こういう施設ならば予備電源もあると思うが……」
「…いえ、発電施設を見に行きましょう。どっちにしろ、最後には結構な電力が必要になりますから」
ネプテューヌ、うずめ、海男さんの言葉を経て、私は発電施設の確認を提案。それに皆も頷いてくれて、一度私達は建物の外に出る事に。
「電気が来てないって事は、発電施設が停止してるか壊れてるか…って事なのか?」
「うーん、それは見てみないと何とも言えないかな。停止してるだけなら、稼働させるだけで済む…け、ど……」
外に出た私達は、海男さんの言っていた発電施設らしき建物へ。出てすぐに見えたそれは確かに発電施設っぽくて、しかもこっち同様ぱっと見の状態は悪くないから、ウィード君の言う「停止しているだけ」なんじゃないかと私もほんのりと期待を抱く。…だけど……
『…これは……』
それから数秒後、私達は目にした。電波塔施設と、発電施設らしき建物の間に出来ている、かなり深い地割れを。そして……完全に千切れてしまっている、地中の配電線を。
「…マジ、かよ……」
「…問題があったのは、これ…か……」
ぼそりと呟く、うずめと海男さん。それに私は…言葉が出なかった。だってそれは…疑いようなく、間違いなく壊れた状態なんだから。
さっき私は、ネプテューヌの緊張について触れた。その時私自身の事は軽く流しちゃったけど…正直に言えば、楽しみにしていた。やっと通信出来ると、内心安堵もしていた。…けれどそれが、遠退いた。もしかしたら、ここは使えないのかもしれないという状態になってしまった。
まだ絶望するには程遠い。これまでの次元移動に比べれば、色々準備出来て、通信手段も分かっていて、そもそも自己意思で来られている時点で心の余裕が段違い。…それでも、抱いた期待が崩れるのはクるものがあって、私は一度言葉を失ってしまったけど……
「わー、これは酷い状態だね…うん、個人的にダメージの入ったコードはトラウマでもあるし、早めに直さないと……」
「…直さないと、って…ねぷっちは直せるのか…?」
「分かんない!でも、発電施設が潰れてる…とかよりはずっと何とかなりそうでしょ?」
──やっぱりというか何というか、相方としてこの次元へ一緒に来たもう一人は…ネプテューヌは、違った。この状況を、千切れた配電線を前にしても、ポジティブシンキングを失ってはいなかった。
「そりゃ、そうだが…凄いな。これを前にすぐそういう思考が出来るのは…」
「わたしは前向き担当だからね!という訳でクエスト、『配電線を直せ!』が発生だよ!」
「前向き担当だからねって…そう言いつつも、コードから背を向けてる辺り内心ビビってるよね?」
「うっ…い、言わないでよイリゼ〜……」
いつもと変わらない元気一杯さを見せつつも、配電線の千切れた部分が見えないような向きをしているネプテューヌ。そのポジティブさも、明るい態度も、けれど内心ではトラウマが触発される事を恐れている様子も、本当にネプテューヌらしい姿で……私はつい笑ってしまった。そして同時に、思いもした。やっぱりネプテューヌが一緒に来たのは、正解だったって。
「…こほん。それじゃあ改めて…皆、この千切れちゃった配電線、ものの見事に直しちゃうよー!」
右手を突き上げ、ネプテューヌは上がる音頭の声。それに私達も「おー!」と応え……配電線を直す為に、私達は行動を開始するのだった。
……まぁ、ものの見事に配電線を直すって、一体どういう事なのかよく分からないんだけどね。
今回のパロディ解説
・慈愛の女神ネプティス
イナズマイレブンシリーズに登場する化身の一つ、慈愛の女神メティスのパロディ。慈愛に満ちたネプテューヌ……あっ、なんかいいですね!素敵な感じがします。
・「〜〜食うかい?」
まどマギシリーズの登場キャラの一人、佐倉杏子の代名詞的な台詞の一つのパロディ。ビスケットの理由は…比較的保存の効く食べ物だから、ですかね。
・すち子さん
お笑い芸人、すっちーこと須知裕雅さんが吉本新喜劇にて演じるキャラの一人の事。ガタガタ云々〜も新喜劇のネタの一つです。個人的に好きなネタなのです。