超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第十六話 苦労する…と思いきや…?

 千切れてしまっている配電線の修理。普通なら業者さん…というか専門家に頼むようなそれが、電波塔に辿り着いた私達の次なる目的となった。

 

「ごちそーさま!よーし、ご飯を食べて元気の充電もかんりょーだよ!」

「おー、ネプテューヌはやる気十分って感じだな」

「でも、食後すぐに動いたらお腹痛くなるかもだし、一服してからにしたいなぁ…」

「おー…一瞬で消えたな、ネプテューヌのやる気…」

 

 一度電波塔下の建物に戻った私達は、休息を兼ねてちょっと遅めの昼食タイム。今日のお昼は、移行した拠点にあった炊飯器で炊いたお米…を使ったおにぎらず。おにぎりじゃなくておにぎらずだよ?

 

「はは…で、具体的にはどうするよ?直すったって、別のコードをただ当てがうだけじゃ駄目だろ?」

「それはそうだね。どこかに予備の配電線があれば、そっちと付け替える事で何とかなりそうだけど…」

「流石に地中を通す配電線の予備はないだろうね。となると、通す電気に耐え得るだけの別のコードを、ただ当てがうんじゃなくきちんと修繕処置をして繋げ直すか、或いは…どこか別の施設の配電線を、盗ってくるかだろう」

「盗るって…いやまぁ秩序も何もって状況だし、現に俺達も拠点と称して建物を不法占拠したり、今も不法侵入してる訳だけどよ……」

「道徳的には、確かにね。でもここがうずめの国で間違いないなら、良いも悪いもうずめ次第じゃないかな。女神あっての法な訳だし」

 

 直すと言っても、配電線はただ千切れている訳じゃない。地割れが直接地面ごと抉られたものなのか、別の要因で起きたものなのかは分からないけど、溝となっている部分の線はごっそりなくなってしまっている。もしかしたら、掘り返す事で出てくるのかもしれないけど…どっちみちそんな状態なら、再利用は絶望的。

 だから兎にも角にも、代わりとなる物を見つけなきゃいけない。それに、仮に代わりとなる物が手に入ったとしても……

 

「…やろうとしてるのって、要は工事みたいな事だよな?皆、それ系の知識は……」

「ないよ」

「ないね」

「ないな」

「残念ながら、ね」

「だよな…俺もだよ…」

 

 ウィード君から投げかけられた私達は、どうしたものか、と全員揃って肩を竦める。

 そう。もう一つの問題は、これに関する知識を誰も持っていない事。それこそネプギアがいれば、まだ何とかなったかもしれないけど…無い物ねだりしても仕方ない。

 代用品探しは、最悪時間をかければ何とかなる。でも、こっちはそういう問題じゃなければ、試しに色々やってみるという訳にもいかなくて、本当にどうしたものかと悩む私。

 

「うーん……ま、取り敢えずはやれる事からやっていこうよ。もしかすると、何かをクリアした時点で修理の知識がある人が現れるかもしれないよ?」

「それねぷっちがさっき言った、ゲームのクエストだったらの話だろ…」

「でも、俺はネプテューヌに賛成だな。意見の出し合いじゃ記憶喪失の俺は殆ど役に立てないだろうし…俺だって、皆は思いもしない形で見つけたんだろ?」

「あ、それもそっか…じゃ、まずはここの中探してみるのはどう?流石に予備はなくても、代用品になりそうなコードはあるかもしれないし」

「そうだね。灯台下暗しならぬ電波塔下暗しにならないよう、近い所から順に探していこうか」

 

 だけどやっぱり、こういう時にうだうだ悩んだりしないのがネプテューヌ。そのネプテューヌが作った流れに私は乗って、具体的な行動を提案。そうして私達は昼食兼休憩を終え、建物内の再捜索を開始する。

 

「そういや確か、ここより先の部屋は行ってなかったよな?ウィード、行ってみようぜ」

「なら、オレはさっきの倉庫に行ってみるとするよ」

 

 メインフレームのある部屋の近くにあった休憩室らしき部屋を出た私達は、各々で捜索先を決定。再集合はこの休憩室でする事にして、私もそこから歩き出す。

 

「イリゼはどこ行くつもりなの?」

「私はあの部屋を少し調べてみるつもり。ネプテューヌは?」

「イリゼと同じとこ〜」

「…つまり、自分じゃ何も思い付かなかったんだね?」

「ノンノン、最初からイリゼに協力するつもりだったんだよ?」

「あ、そう…」

 

 調子の良い事を言うなぁ…と思いつつも、私はネプテューヌと共にメインフレームのある部屋へ。この部屋は結構色んな物があるし、二人で探した方が何かと効率的だろうからね。

 

「…にしても、この次元にある物ってどれも古い…というか、何世代か前っぽい物が中心だよね」

「あ、イリゼもそう思った?でもこの部屋のコンピューターといい、拠点にあった家電といい、何なのかよく分からない物はあんまりないよね」

「うん…となるとやっぱり、ここも信次元…いや、ゲイムギョウ界かそれに近い次元なのかな……」

 

 部屋の中を物色しつつ、私は今いるのがネプテューヌだけという事もあって、さっきから思っていた事を口にする。

 これまでこの次元で見てきた物は、どれも信次元と比べると古さを感じる。でもネプテューヌの言う通り、多くの物は「あぁ、これはあれだよね」…と即座に理解が出来ている。気になるのはこれが、信次元と近い次元だからなのか、同じ『ゲイムギョウ界』なら(まぁ、ゲイムギョウ界って確定した訳じゃないけど)大概そうなのか、ってところなんだけど……次元移動経験はそこそこあっても、文明社会がきちんとある次元へ飛んだ経験は一度しかないから、ここに関しては何とも言えない。

 

(…まぁ、それは調査を進めたり目的達成へ向かう中で自然と分かってくる事…かな。というか、これはとにかく情報を集めていくしかないし)

 

 かなり気になる事ではあるけど、すぐに解明出来ない以上は一旦保留。この事は頭の端に置いとくとして、本来の目的である代用品探しに集中する。

 棚を開けてみたり、機材の裏を覗いてみたり、外しちゃっても大丈夫そうなコードを一つ一つ見てみたり。そうして十数分程経った頃……ガチャガチャという何かを外す音が聞こえてきた。

 

「……?その中も確かめてみるの?」

 

 何だろうと思って見てみれば、それはネプテューヌが私の持ってきたケースを開ける音。…まぁ、その中にも色々入ってるし、確認せずに役立つ物はないって判断するのは早計だとも思うけど……。

 

「そだよ。でもわたしが確かめるのはこっち」

「え、そっち…?」

 

 すっ、とネプテューヌが取り出したのは、さっき私が見ていた書類の束。…駄目だ、これだけじゃ意味が分からない…。

 

「ほら、ネプギアの用意してくれた…説明書、でいいのかな?…って、この通りページが沢山あるでしょ?だからもしかしたら、この状況にも役立つ情報が載ってるかな〜って」

「いやそれは流石に……って、確認せずに判断するのは早計だって考えたばかりじゃん私…」

「ほぇ?なんの事?」

「あ…何でもないよ、こっちの事。じゃあまずは目次の確認だね」

「え、目次なんてあるの?…わっ、ほんとにある…」

 

 私の言葉を受けて一枚目を捲ったネプテューヌは、本当に目次があった事に目を丸くする。

 それはそうだよね。身内向けに作った書類なんだから、最低限分かる書き方(手書きじゃないけど)さえしてくれればそれこそメモ書き程度でも良い訳だし、ネプギアはかなりの突貫作業をしていた訳だし。私だって、目次があるって気付いた時は驚いたよ。

 

「ええっと、こういうのは……最後の索引で見るのが一番だよね。…索引までって、凄いなぁネプギア……」

「うん、全くもって同意だよ…けど何の名前で引く気?」

「取り敢えずコードかなぁ。こ、こ、こ……」

「あった?」

「今作も主人公〜!」

「いや、目敏く身体付きモノマネのチャンスを活かさなくてもいいから…後それ視覚情報あってのネタだから、殆どの読者さんには伝わってないと思うよ?」

「あ、そ、そっか……」

 

 ばっ!…といきなりボケを放ってきたネプテューヌに半眼で突っ込む私。ネプテューヌも伝わらない可能性が高い事にちょっとしょんぼりしつつも、普通に確認を再開する。

 

「……あっ!」

「今度はあった?」

「うん!もしもコードが切れたら、コードが切れて使えない機材があったら、ってところがあったよ!ほら!」

「わっ…ほんとに対処法…っていうか繋ぎ直す方法が書いてある……」

 

 その数秒後、ドンピシャな項目を見つけた様子のネプテューヌが声を上げる。そうして見せてくれたページには、確かに直す時に使える物や直し方、その際の注意なんかがしっかりと記載してあった。

 

「…ネプギア……」

「…次に会ったら、ネプギアの事を一杯褒めてあげないとね」

 

 ネプテューヌと二人、心の中に広がるじんわりとした思いで小さく笑みを浮かべ合う。

 これだけ多くの事柄に備えて、それに対して一つ一つ対処方法を書き示すのに、どれだけ頭を捻ってどれだけ苦労をした事か。…それを考えるだけでも、ネプギアには感謝しかなかった。

 

「これで直し方は何とかなる、かな。結構複雑そうなところもあるけど…」

「ここまで用意してくれたんだから、それ位は私達が頑張らなきゃ。…後は、代用出来そうな物だね」

「んー…根拠はないけどさ、それも何とかなりそうな気がしてきたよ。だってこれを見ても分かる通り、わたし達には幸運の女神候補生がついてるんだもん!」

「あはは、だね」

 

 書類を置いて、私達はもう一つの探し物…というか、先に探していた代用品の捜索を再開。とはいえ流石に代用品の方も速攻で発見…とまではいかず、「使える…か、なぁ…?」…程度のコードが何本か見つかった程度。それにしたって長さはどう見たって足りてないし、これだけじゃどうにもならない。

 

「うーん…そろそろ時間だし、さっきの部屋に戻ろっか」

「そうだね。ねぇねぇどうする?これで代わりになる物も見つかってたら」

「それは勿論嬉しいね」

「じゃあ皆がシャンパンタワーやってたら?」

「皆は何をしてるの!?何故にパーティーを!?」

 

 とか何とか言いながら、私達は書類を持って休憩室へ。すると元々決めた時間より前な上私達がいたのは休憩室から一分もかからない場所だったからか、ここへは私達が一番乗り。…という訳で、皆を待つ間私達は他にも役立つ情報がないかなぁ…と索引に目を通すのだった。……全くもう…それじゃあサタデーナイトフィーバーならぬ、サンデーナイトフィーバーだよ…。

 

 

 

 

 うずめと共に、まだ行っていない区画の探索へと向かったのが数十分程前の事。一通り見て回った後俺達はロッカー室に目星を付け、その部屋の中を漁っていた。

 

「うずめー、何かあったか?」

「うーん…あ、なんか菓子があったぜ。食べるか?」

「…まぁ、なら一つ貰っておく」

 

 ぽい、と投げられたのは小袋に入った一口サイズの煎餅。…見るからにしょっぱそうだなぁ…。

 

「ウィードこそ、なんか使えそうな物は見つけられたか?」

「いや、何にも。ってか、どのロッカーもあんま物入ってないな…」

「だな……」

「…後、盗みに入ってる気分になってきた……」

「そ、それはまぁ…盗みっつーか、勇者とか未来のポシェモンリーグチャンピオンになってる気分になろうぜ…」

 

 ロッカーは空っぽになってる物もそこそこあるし、金品目的じゃないとはいえ私物が置いてある所をごそごそ探るのはあまり気分の良いものじゃない。それでも有用な物が見つかれば、「やっぱやってみるもんだよな」…という気持ちにもなりそうだが、今のところそういう物がある気配もなし。

 

(…けど、地道にやるしかないよな。海男の言った通り、灯台下暗しになるのは御免だし)

 

 そう自分に言い聞かせ、部屋内を隈なく捜索する事十数分。その結果、ある事が判明した。やっぱりこの部屋には……普通の物しか、ない。

 

「空振りかぁ…ねぷっちじゃないが、こういう部屋には何か良いアイテムがありそうな気もしたんだけどなぁ…」

「…だな……」

「…ウィード?何か考え事か?」

 

 ない、と判断したところでうずめはがっかりとばかりに肩を落とす。それに俺が相槌を打つと、その数秒後にうずめは俺の顔を覗いてくる。うずめが浮かべている怪訝な顔つきと、言葉から考えるに……どうも俺は、思考が顔に出ていたらしい。

 

「あぁ、いや…なんつーか…俺は探し物をしていたのかなー、って……」

「……?かなもなにも、してるだろ」

「あ、そういう事じゃないんだ。今じゃなくて…その、ずっと前から俺は何かを探してるような、何かを探さなきゃいけないような気がしてさ…」

 

 隠す事でもないしな…と考えていた事を口にする俺。だが俺自身はっきりしていない思考だからか、イマイチはっきりとした言葉にならない。

 

「何かを探してる、ねぇ…そりゃ、記憶じゃないのか?」

「記憶?…あー…言われてみると、そんな気もする…か、も…?」

「曖昧な表現だな…けど俺はそうだと思うぜ。俺だって、時々『どこかに俺の記憶に繋がるものはないのか…?』って感じで、何となく周りを見回したりするし」

「そうなのか…」

 

 それだ!…って感じはないが、そんな気もするのがうずめの言葉。ましてやうずめも記憶喪失な訳だから、俺はまだ記憶喪失になってから日が浅い(?)が為に上手く言葉に出来ないだけで、実際にはうずめと同じようにただ記憶を探してるだけなんじゃないのか…とも思えてくる。

 ただどっちにしろ、このもやもや感はすぐには消えてくれそうにないんだが…な。

 

「…ま、こういうのはふとした時に分かったりもするもんだよな」

「そんなもんだろ。…さて、次はどこを探したもんか…」

「どこか探してみたい所とかはあるのか?」

「いや、別に」

「だよな〜…」

 

 電波塔オタクでもなければ、その管理施設内で興味のある場所なんてある訳がない。かといって闇雲に探すのは、幾ら何でも非効率。

 

「…あーでも、意外な発見の仕方が出来たら面白いよな。そりゃここにはあるよな、じゃなくてこんなところにあったのか…みたいな感じでさ」

「風が吹けばがIKEAが儲かる的な?」

「なんで家具屋が儲かるんだよ…けどそういう事だ。具体的には、こう…そもそも探す目的でやった訳じゃない行為が切っ掛けになって、そこから連鎖的に…ピタゴラ装置的な何かが起こって……」

 

 そこから話はちょっとズレて、何やらうずめの独り言がスタート。最初はそれを、「急だなぁ…」としか思わなかった俺だが……

 

「…そう、それだ。意外性が大切なんだ。思いもしない形で得られる事の楽しさがあるっていうか、『えー!?こんなところにあったの!?』とか、『じゃあ今までの努力って一体…』みたいな感じになりながらも、でもつい笑っちゃうような、そんな見つけ方が出来たら…すっごく素敵だと思うの!」

「お、おぅ……?」

「それも、ウィードが見つけたら特に素敵だよね!ビックリな形で出会ったウィードが、また新たなびっくりに繋がるなんて、素敵を超えてもう運命的じゃん?勿論すぐに見つかる事が一番だけど、うずめはそういう展開になってほしいな〜♪」

 

 一体どこでスイッチが入ったのか、うずめは段階的に男勝りな女の子からゆるゆるキャピキャピな女の子へと変わっていった。その変貌はなんというか、その変わりようはなんというか…あ、駄目だ…これは不味い……!

 

「…ぷっ、くくっ…くくく……っ!」

「ねぇねぇ、ウィードはどう思……はっ!?」

「く、くふっ…うくく……っ!」

「あっ、ちょっ…こ、これは…その……」

 

 湧き上がってくるある衝動。どうもうずめは本気で言っていたらしいから、『それ』を発してしまうのは気が引けるが……もう喉元まで上がってきてしまっている。しかも正気に戻った(?)うずめは途端に顔を赤くし、わたわたと慌て出すものだから尚悪い。

 

「い…今のはジョークだからな!?お前がもやーっとしてる感じだったから、ちょっと和やかなムードにしてやろうと思っただけだからな!?」

「な、和やかって…じゃあ、さっきのアレがゆるふわな感じになってた事は認めるんだな…?」

「あっ……い、いいや前言撤回だ!てかそりゃ聞き違いだ!うぃ、ウィードは一体何の事を言ってるんだろうなー!」

「ぶふぅっ…!ご、誤魔化しっ…誤魔化し方っ、雑……っ!」

「う、うっせぇ!てか何ぼさっと立ってんだ!他の皆も今は探してるんだから、ふざけてないでさっさと行くぞ!」

「い、いやそれを言うならうずめも…あ、ちょっ、待てって…くふぅ……っ!」

 

 何とも無理矢理な誤魔化しをしたかと思えば、顔を赤くしたままずんずんと歩いていってしまううずめ。置いてかれるのは勘弁…と俺も追うも、どうにもツボというか久し振りに好きなネタを見た後みたいな状態になってしまい、中々込み上げてくるものが抜けてくれない。そして当然、そんな様子を見せればもっとうずめは先に行ってしまう訳で……結果、危うくまたもやうずめを怒らせかけてしまった俺だった。

 

 

 

 

 部屋内の椅子に座って、待つ事数分。本当に色々な事を記載してくれたんだなぁ…と思いつつ索引を見ていると、まず海男さんが、続いてうずめとウィード君も戻ってくる。

 

「おっと、待たせてしまったかな」

「だいじょーぶ、そんなに待ってないもん」

「二人は、何か見つけたのか?」

「ふふっ、大きな進展があったよ」

「お、やるな二人共。俺達もこんなもの見つけたぜ、ほれ」

「あ、わーい!…って、柿ピーにいかり豆に燻製チーズ…?な、何故におとーさんが家飲みで買ってきそうなお菓子が…?」

「さぁ…ここで働いてた誰かがおやつかおつまみ用に買ったんじゃないか?」

 

 机に広げられたおつまみアソート的な小袋の数々を見て、私達と海男さんは何とも言えない表情に。けどまぁ食料…それもそのまま食べられる物は貴重な訳で、決して無駄な発見じゃない。…消費期限が分からないから、積極的に食べようとも思わないけど。

 

「…で、ねぷっち達は具体的に何を見つけたんだい?」

「ふふーん、それはねぇ…これだよ!」

「これ?…って、これはさっきいりっちが見てた書類……おぉっ!?」

 

 百聞は一見にしかず、とばかりに最初から例のページを見せるネプテューヌ。それを皆は覗き込んで…揃って目を見開いた。

 

「マジか…こんな早く、手掛かりどころか答えそのものが見つかるなんて……」

「あぁ…ねぷっち、これを用意した奴は予言者か何かなのか?」

「ううん、わたしの妹だよっ!」

「ねぷっちの妹…さぞねぷっちに似て明るく元気な子なんだろうね」

「うーん…明るいのは間違いないけど、多分想像とは違うと思うよ?基本落ち着いてるし、わたしよりスタイル良いし、突っ込み気質だし」

『え?』

 

 まず直し方が載っていた事に驚いて、次はネプテューヌの語る妹像に驚いた皆は、またもや揃って目を丸くする。…まぁ、確かに姉妹や兄弟って言ったら、ノワールとユニみたいな感じを想像するよね。

…というやり取りを経て、今度は皆のターン。でもうずめとウィード君はそれこそ収穫と言えるのはおつまみ位らしくて、海男さんも発見出来たのは私達と同じようなコードだけ。資料の方は、見る価値のある物もあったらしいけど…今の目的達成に直結する資料は殆ど無かったんだとか。

 

「すまない。完全に見当違いな場所を探してしまって…」

「い、いえそんな。直し方も実質的には私達の成果じゃないですし、まだ探し始めたばかりなんですから…」

「そーそー。それより次はどうする?外出る?」

「…そうだね。気を取り直して他の場所を探してみようか」

 

 それから私達は、一先ずこの建物内の捜索を終わりにして外へと向かう。こんなにも早く直し方が分かった事がイレギュラーなのであって、まだまだ気落ちするような段階じゃない。

 

(…けど、あるとしたらどこだろう…電力会社とか、業者の所にはあると思うけど……)

 

 移動の最中、考えるのは当然配電線がありそうな場所。業者さんにはあるだろうけど、その会社や倉庫を探すのもこの環境下じゃ難しいし、仮に見つかってももう建物諸共潰れてしまっているかもしれない。

 次に思い浮かぶのは、手近な施設や地域から拝借してくるという手段。でもこっちはこっちで外に出てる物は駄目になってる可能性が高いし、地中にある物を掘り返すとなったら女神化必須。結局業者の建物を探すのと同じ位の労力が必要になりそうで…やるとしたら、かなりの時間を費やす心積もりでいかなきゃいけない。…まぁ、それしかないなら虱潰しに探す事だってするけども……。

 

「しっかし、ここまで来てやるのが探し物になるとは…俺、探し物は苦手なんだよな…シェアクリスタル探しと違って、どこにあるのかの推理もしなきゃならねぇし…」

「あー、分かる分かる。必要な物程すぐどっか行っちゃうし、中々見つからないんだよねぇ…」

「まぁ、俺達の場合は必要どころか普通無くす訳がないもんを喪失しちまってる訳だけど、な」

『あ、上手い!』

「…………」

 

……なんて私は真面目に考えているのに、三人といえば呑気な様子。これには海男さんも苦笑いしていて、私としてはなんて言えばいいのやら。

 でも、ちょっと安心感というか…凄いな、って思える事でもある。…記憶を探していた、そしてその記憶が無いと知った時の私は、記憶喪失をこんなにも楽観的には受け止められていなかったから。

 

(…二人の記憶は、どうなるのかな…)

 

 そもそも記憶が無かった私と、取り戻さない事を選んだネプテューヌ。けれど普通…普通?…記憶喪失は、記憶が戻るか戻らないかの二択だろうし、二人がどうなるのかは分からない。私としてはやっぱり、記憶は大切なものなんだから戻った方がいいと思うけど、じゃあ今のネプテューヌが不幸な状態かといえば…そんな事は絶対にない。だから、結局は本人の納得するかどうかの問題になるし……納得出来る形に落ち着いてほしいな、と私は思う。

 

「…で、また外に出た訳だけど…どこから行く?左?右?それとも下?」

「下って…いや、地中に埋まってるやつもあるんだから別に間違っちゃいないのか…」

「はは、ねぷっちの場合は冗談で言ったんだろうけどね」

 

 建物の外に出た私達は、ぐるりと見回す。そこからネプテューヌ、うずめ、海男さんと言葉がリレーし…ウィード君は、おもむろにポケットからお菓子を取り出した。

 

「…それ、さっきうずめが見つけたってやつ?」

「あぁ。実を言うと、あのお昼だけじゃ少し足りなくてな…」

「そうなんだ…じゃあ、次からウィード君の分はもう少し多めにするね」

「おう、頼んだ」

 

 元々ウィード君の分は私達より多いのに、それでも足りないなんて流石男の子。なーんて事を思いながら、さてどこを探したものかと再び考え始めると……

 

「…うん?開かないな…このっ、ふっ…!……あっ」

 

 十数秒後、ウィード君の持つ小袋が豪快に破けると同時に中のお煎餅も吹っ飛んだ。それはもう、綺麗な放物線を描いて。

 

「あらら…やっちゃったねウィード君……」

「おおぅ……って、うおっ…おぉ……?」

 

 偶にやっちゃう悲しいミスに苦笑いの私。ウィード君もこれには少し落ち込んで…と思いきや、すぐに驚き目を丸くする。私も、皆も同じように丸くする。…だって、飛んでいったお煎餅は緩やかな斜面へ縦に落ち、そのまま転がっていったんだから。

 

「わっ、凄い転がってってる…狙ったの?」

「い、いやまさか……あ、川に落ちた」

「あれじゃもう食べられねぇな……って、ん…?」

「…今、鳥が取っていったね…なんという偶然だ……」

 

 ネプテューヌからの問いをウィード君が否定したところで、お煎餅は池ポチャならぬ川ポチャ。しかもある程度流れたところで急降下してきた鳥がそれを咥え、勢いそのままに持ち去ってしまう。

 もうこの時点で、ちょっとしたミラクルレベルの連鎖展開。…けど、このミラクルはまだ終わらない。

 

「……あれ?あの鳥落としちゃったよ?しょっぱ過ぎたのかな?」

「かもしれないね…って、今度は木に落下か…流石にもうここで止まるだろう……」

「…と、思いきや今虫が飛んでったよ!?まさか今のが当たったの!?」

「む、虫?…よくあんな遠い木にいる虫の姿が見えるな……」

 

 鳥がお煎餅を落とし、お煎餅は木の中に落ち、そこから突然虫が飛翔。ウィード君は見えないみたいだし、私も鮮明に見えてる訳じゃないけど、確かに虫っぽい何かはぴゅーんと家から飛んでいく。そして、その虫っぽい何かが降り立ったのは……倒れたトラック。

 

「…あんなところに、トラックあったんだ…気付かなかった……」

「トラック……あ、あれか。…あれに、虫が飛んでったのか…?」

「う、うん…そうだけど……」

「…………」

 

 普通はあり得ないレベルの連鎖反応の末、辿り着いた一台の車両。それをウィード君に伝えると、ウィード君は黙り込んだ後にゆっくりとそちらへ。最初の数歩は徒歩で、そこからは小走りで向かうウィード君の意図が分からず、ただぽつんと見つめる私達。

 そうして数分後。トラックの所まで辿り着いたウィード君は、暫し中を覗き込んだ後にこちらへ帰還。無言で戻ってきたウィード君が浮かべているのは……神妙な顔。

 

「……あった…」

「あった…?…そりゃ、何がだ……?」

 

 自分でも意味が分からない、とばかりの表情をしているウィード君。只ならぬ様子にうずめが訊くと、ウィード君は口を開き、そして……

 

「……配電線っぽい、長いコード…」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 

 

『えぇぇぇぇぇーー……』

 

──この日私達は、普通なら何日とかかるような問題を、数時間足らずで解決してしまうのだった。




今回のパロディ解説

・身体付きモノマネ
お笑いコンビ、プラスマイナスの岩橋良昌さんが行うネタの一つの事。個人的には「金持ち〜」が好きです。…勿論ネプテューヌはこのシーンで脱いでたりはしませんよ?

・勇者
ドラクエシリーズにおける主人公(例外有り)の事。最早語るまでもない、他人の家や施設を漁る行為。でもパロディに使った作品以外もこれって割とありますよね。

・ポシェモンリーグチャンピオン
ポケモンシリーズにおける、ポケモンリーグチャンピオンのパロディ。こちらも語るまでもありません。…ポケモンにするかポシェモンにするかは迷いましたけどね。

・IKEA
家具量販店の事。でもこれ、実際の会話だったら桶屋をIKEAと言っても気付かれないかもしれませんね。誰か試してみてくれるとありがたいです。…なんちゃって。

・ピタゴラ装置
ピタゴラスイッチに登場する、あのからくり装置の事。連鎖的に何かが起こって、最終的に〜…というのは創作の中で時々あるネタですよね。
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