超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第十七話 胸の中にあったもの

 千切れた配電線の代わりとなるコードと、それを直す方法の書かれた書類。その二つがたった数時間足らずで見つかるという幸運に恵まれた俺達は、早速修理……というか、配電線の交換を行った。

 

「ネプテューヌー、次の部品取ってー」

「これだねー!ほいっ!」

「ちょおっ!?大切な部品なんだから投げないでよ!?」

 

 交換作業を無事終え、電力も無事復旧。コンピューターも電源が入った事で使えるかどうかの確認が出来、作業は次の段階に移行した。

 ネプテューヌとイリゼは、現在電波塔へ部品を取り付け中。電波塔を命綱も無しにジャングルジム位の感覚で動き回る…というか最早跳び回っている二人は、もう凄いとしか言いようがない。後見てると心臓に悪い。

 

「おーい、何サボってんだウィード」

「あ、悪い」

「ったく…ってまさか、下から二人の下着覗いてたんじゃねぇだろうな!?」

「なっ!?ち、違うわ!てかあの高さじゃ俺見えねぇし!」

「あ、そうか…人だと見えないんだな…。…って待て、じゃあ視力次第じゃ見てたのか…?」

 

 一方俺達は、上方に比べて損傷の大きい下部を確認中。損傷が大きいと言っても、すぐに倒れるような状態じゃないが…それでも万が一倒れてしまえば、折角の修理が無駄になるし、今取り付けている部品が壊れてしまえば取り返しが付かなくなる。という訳で俺達は確認をし、不味そうな場所をピックアップしてるって訳だ。

 

「さーて、何の事やら…。…で、確認の後はどうするんだ?まさか、挙げた場所には倒れないよう祈りを込めておく…とかじゃないよな?」

「な訳あるか。鉄板貼ったり添え鉄骨したりして補強するんだよ」

「…そんな雑な補強で大丈夫なのか…?」

「やらないよりはマシだろ?てか鉄板舐めんなよ?船首が羊の船はこれで結構直してたりするんだぞ?」

 

 ここらで一番高いこの電波塔の補強が、そんな初歩的なものでいいのだろうか。…と思った俺だが、確かに放置するよりはマシ。少なくとも、祈るだけよりはずっと効果があると思う。

 

「…にしてもほんと、女神は凄いよな…俺が二人と同じ事してたら、多分今に至るまでに十回は死んでるわ」

「…やっぱ、そう見えるか?」

「そりゃ勿論。…うずめはそうは思ってないのか?」

「そうは思ってないってか、俺にとっちゃお前が初めて見る『人』だからな。ねぷっちといりっちは同じ女神だし、海男達から普通の人について聞く事はあっても、実感としての普通の人はお前と出会うまで知らなかったんだ」

「そっか…それなら、そうだよな……」

 

 なんて事ないように言ううずめだが、俺はその言葉ではっとする。

 俺は、女神の凄さが分かる。何故なら、俺自身が比較対象になるから。だがうずめは知らなかったんだ。自分と同じ存在である二人や、人とは全く違う海男達しか知らなかったから……数日前まで、『普通の人』と出会った事すらなかったから。

 

「…………」

「…ん?何だよ、急に重いっつーか神妙な顔して」

「あ、いや…うずめって、性格からは思えない程尋常じゃない日々を送ってたんだな、って…」

「……それ、街並みや拠点が廃ビルだって時点で気付かなかったのか…?」

「そ、そういう事じゃねぇよ。もっと人間関係っつーか…いや、人以外も沢山いるんだが…繋がりの面で……」

「あぁ、そういう……」

 

 明るい奴は明るい人生を送ってきた…とは限らないし、逆もまた然り。そんな事は分かっていたが、いざ考えてみると…やっぱり、うずめの日々はその性格と相反するものだったんだな、と思えてしまう。更に言えば、ネプテュー達もつい最近来たばかりなんだから、それまでうずめはある意味、『皆とは一人だけ違う存在』だった筈なんだ。…そう考えると、どうしても俺は軽く流せない。恐らくは『同情』のような、そんな気持ちを抱いてしまう。…けれどうずめは、肩を竦めて言った。

 

「別に、そんなの気にする事じゃねぇよ。てか、俺は気にしてねぇしな」

「気にしてないって…そんな呑気な……」

「呑気も何も、現にそうなんだから仕方ねぇだろ。…少なくとも俺は、大変でも海男達との日々を不幸だなんて思ってねぇし、良かったって思える事も沢山ある。それに…今はねぷっちがいて、いりっちがいて…お前も、いるんだからな」

「うずめ……」

 

 決して重くはなく、けど気持ちの籠ったうずめの言葉。それは気を遣わせないようにする為の嘘なんかじゃなく、純粋な本心なんだと、聞いた瞬間に俺は分かった。そして……素でそういう事を思えるからこそ、こんな世界でもうずめは明るくいられるんだという事も。

 

「……ははっ」

「…なんだよ、今度は急に笑って」

「いや、ほんとうずめは格好良いよな」

「……!い、今ので格好良いと思ったのか!?」

「おう。言葉ってか精神がって事だけどな」

 

 うずめの在りようを示す上で、この表現が適切なのかは分からない。だが俺は、前に話した時と同じように『格好良い』と思った。ほんと、戦いじゃなくても女神は凄い姿を見せてくれるんだな、って。

 

「そっかぁ、精神の格好良さか…見る目あるじゃねぇか、ウィード!」

「そうか?…でも俺としちゃ、ちょっと羨ましくもある、かな…うずめ達の、強さや凄さは……」

 

 目を輝かせ、さぞ嬉しそうに喜ぶうずめ。見せてくれた笑みは、それはもう素敵なものだったが…反面、少しだけ悲しさもあった。卑屈な考え方だってのは、分かってるが……身も心も強いうずめ達と違って、俺は普通なんだから。よく言えば羨ましい、悪く言えば…狡いなんて感情がほんの少しだけど俺の中にはあった。…だけど、

 

「…俺は、お前だって凄いと思うぜ?ウィード」

「……俺が?」

「あぁ。だってウィードも、身を挺して仲間を守ったじゃねぇか。自分の危険も顧みずにさ」

「身を挺して……って、朝の事か…?」

 

 うずめは言う。俺も凄い、と。俺が思いもしなかった事を、至極真面目そうな顔で。

 それは恐らく、朝…俺がスライヌを助けた時の事。これかと思って俺が口にすると、うずめは真面目な顔をしたまま首肯する。

 

「…あれは…別に、凄くも何ともねぇよ。俺は一発当てるのが精一杯で、後はずっと逃げ回ってたんだぜ?しかも結局、うずめ達に助けられたんだしさ…」

「そういう事じゃねぇよ、ウィード。…俺には、力がある。そこらのモンスターなら複数が相手でも返り討ちに出来るし、女神化っていう切り札もある。あくまで自分が生き残るだけなら、デカブツが出てきても何とかなる。…けど、ウィード…お前は違うだろ?お前は力があるから、勝ってきた経験があるから戦ったんじゃなくて、そういう事が一切なくても尚戦おうと、守ろうとしたんだろ?」

「…それは、そう…だが……」

「だったらやっぱ凄ぇよ。戦えるから戦うのと、戦えねぇかもしれないのに、それでも戦うのとじゃ……後者の方が、ずっと凄ぇに決まってんじゃねぇか」

「……っ…!」

 

 まさか、そんな事を言われるなんて。俺からすれば、とんだ赤っ恥だと思っていた事を、『凄い』と言ってくれるなんて。…それは、意外で、予想外で……嬉しかった。だって、そうだろ?凄いと思っている相手が、お前だって凄いって、ずっと凄いって言ってくれたんだから。

 

「…本当に、そう思ってくれてるのか…?」

「ったりめーだ。それとも今のを即興の嘘で言えると思うか?」

「…そ、っか…うずめ、そんな事を思っててくれたんだな…」

「まぁ、な。…あ、けどだからって調子に乗んなよ?確かにお前の行動は凄いが、俺達がいなきゃどうなってたか分からねぇんだからな?」

「うっ…そうだな、それはほんとに気を付ける…」

 

 嬉しさと、上手く言葉に出来ない熱い思いがこみ上げてきて、俺は胸が一杯になる。もし一人だったら、「よっしゃ…!」とガッツポーズを取りたいような熱が、溢れ出してくる。

 けれどそんな俺の内面を見透かしたように、うずめは少し厳しい目をして俺に指摘。俺の心は浮かれつつあったが、その言葉で一度クールダウン。…そうだよな…朝やられずに済んだのは、うずめ達がいたからなんだ。それは絶対忘れちゃいけねぇ。

 

「よし、それじゃあ後は訓練あるのみだな、ウィード!」

「…訓練?あ、それも朝俺が言った……」

「強くなるには力を付けるしかねぇからな。何なら訓練の相手してやってもいいぜ?」

「え……いやでも、流石にメガホンを武器にする才能は…」

「別に同じ戦い方しろとは言わねぇよ…けど、ウィードは何の武器が合うんだろうな…」

 

 そこで一度話が閉じ、後は訓練だな…とうずめは言う。実際俺もそれは考えていて、うずめが相手をしてくれるならありがたい。…けど、俺の武器か…流石に素手じゃ心許ないし、鉄筋…じゃなくてまともな武器が欲しいよな…うーん……。

 

「……やっぱ剣かなぁ…いや、遠近両用の銃剣も格好良いよな…」

「コマとかヨーヨーとかトレーディングカードとかはどうだ?」

「何で全部ホビーなんだよ!?俺は少年誌のキャラか!」

「ウィード、コマとヨーヨーはどっちかっつーと児童向け雑誌だぞ?」

「いやそんな細かい指摘なんていらんわ!むしろ突っ込むべきは少年誌じゃなくてネット小説……」

 

 

「……君達は何をしているんだい?」

『あっ……』

 

 何故か急にボケだしたうずめに突っ込む中、突如横の方からかけられた声。それに反応した俺達が振り向くと、そこにいたのは呆れ顔でこっちを見ている海男。そして俺達は、随分と長く話していた事、当初の目的を完全に忘れてしまっていた事に、漸く気付くのだった。……因みに聞いたところによると、ネプテューヌ達の友達の中には、コマやヨーヨーを武器にする人がいるんだとか。…世の中って、広いもんだな…。

 

 

 

 

 ネプギアの用意してくれた端末で電波塔が使える事が確認でき、塔への機材も設置完了。後は各種確認と一部の補強を終えれば信次元への交信が出来る、という段階にまで作業を進めて、私達は拠点へ帰還した。

 

「こんだけありゃ、残りの補強も明日の午前中には済みそうだな」

「いやぁ、補強用の資材に事欠かないのはありがたいね」

「まぁ、資材取りに使える倒れた建物や壊れた重機は幾らでもあるもんね…」

 

 拠点で何もなかった事を確認した後、散歩感覚で資材を取ってきた私達。…うん、そうだよ?引っこ抜いたり引っぺがしたりもしたよ?

 

「とにかく良かったぜ。これで通信出来るようになりゃ、ねぷっち達の最終目的へは大きく近付くし、帰る事だって出来るようになるんだろ?」

「うん。…あ、でもまだ帰らないよ?通信確立は中間目標だし、こっちの目的済ませたらはいばいばい、なんてするつもりはないからね!」

「そうだよ。それに私達は協力関係なんだから、さ」

「へへっ、分かってるよ。あんまり二人に悪いって言ってたら、俺が偏屈な奴みたいになっちまうしな」

 

 拠点の外に資材を置いて、私達は一息。うずめの言う事はその通りだけど、そうするかどうかはまた別の事。勿論、信次元がとんでもない事になってる…とかなら一旦帰らなくちゃいけないけど、この次元の危機を知っていながらほっぽり出すようなつもりはない。…って、いうか……

 

「…そうだ…まだあの巨人の件も、マジェコンヌの件もこれっぽっちも解決してないじゃん…。…うずめ、確認なんだけど、うずめの知る中で巨人やマジェコンヌに対抗出来るのは……」

「俺達だけだな、残念ながら」

「そっかぁ…うーん、マジェコーンはともかく、あのデカブツは何か策を立てておかないと不味いよね。うずめは女神化状態に時間制限があるし、わたしとイリゼもこっちじゃ普段の力を出せないし」

 

 そこでふと思い出したのは、この次元を壊そうとする二つの存在の事。どちらも無視出来るような脅威じゃないし、うずめ一人が倒すなんて無茶もいいところ。特に巨人の方は、三人でも勝算がどれだけあるか分からないんだから。

 

「策、かぁ…俺も考えちゃいるんだが、どれも上手くいきそうにないんだよな……」

「…という事は、策自体は幾つか考えた事あるんだね。…って、それは当たり前か…」

「まぁな。例えば一つは、峡谷みたいな場所に誘い込んでから崖を崩してぶっ潰すって作戦だが……」

「おー!鉄の華の組織がやりそうな策だね!…これは駄目なの?」

「駄目ってか、現実的じゃないんだよ。奴はいつどこに現れるか分からねぇし、明確な行動原理も不明だから誘い込むにも…って感じでな」

 

 うずめはちょっと直情的な面もあるけど、冷静な時はきちんと頭が回るし、機転も結構効くタイプだと思う。だから作戦を考えた事がない…なんて訳ないよねと私が思っていると、やっぱり幾つかは考えた事がある様子。

 

「で、もうちょっと現実的な策として、奴が現れたら気付かれないようギリギリの距離まで女神化せずに近付いて、女神化と同時に重い一撃を叩き込んでやる…ってのも考えた」

「それは悪くなさそうだけど…何が駄目だったの?」

「地上は奴の破壊行為でひっきりなしにビルが倒れてきたり瓦礫が吹っ飛んできたりするから、こっちの姿じゃ即攻撃を当てられる距離にまで近付けないんだよ。砂煙で視界も効かなくなるし、ぶっちゃけスリル満点の自殺をするようなもんだ」

「あ…そっか、その問題があったね……」

 

 二つ目の策の問題点は、『女神状態+空中』に比べて、『人間状態+地上』じゃ制限も障害も多過ぎるというもの。私が訊いている間、ネプテューヌは頭の中でシミュレーションしてたのか頬に指を当てて目を瞑っていて……その数秒後、「駄目だ〜…」とか言ってがっくり肩を落としていた。

 

「いざ考えてみると、難しいものだね…せめてシェアエナジーの問題さえなんとかなれば、主人公パワーと女神の技能フル活用で押し切るって事も出来そうなのに……」

「それも改良を色々試してみてるんだけど、どれも成功しないんだよな……」

「そっかぁ……うん?それってうずめ、どれの事?」

「どれって……あぁそうか。そういやねぷっちといりっちは知らないんだったな。…ってか、具体的に知ってるのは海男だけだったか…?」

『……?』

 

 肩を落としたままのネプテューヌに反応し、何やら気になる事を口にするうずめ。更にそこからぶつぶつと一人で言い出して、私達二人はきょとーん状態。

 

「…っと、悪ぃ。実は俺には隠し球…っつーか、女神の姿の時だけ使える技があってな。……てかもしや、二人も使えるんじゃないのか?」

「えっと…ごめんねうずめ。その『技』ってのが具体的に何を指しているのかが分からないと、私としては何とも言えないかな…」

「だ、だよな…すまん。…じゃ、折角話題に出たんだし見せてやるぜ。仮に使えないにしろ、俺より色々詳しい二人からアドバイスが貰えたらありがたいしな」

 

 そう言ってうずめは小さなシェアクリスタルを手に。今使っちゃっていいの?…と訊くと、アドバイスが貰えれば十分元は取れるとの事。…つまり、私達が何も言えなければ無駄になる&うずめは期待をしているって訳で…うぅ、ちょっとプレッシャーかも……。

 

「…何が出てくるかな?瞬閃轟爆破かな?」

「そんなギャグパートの一ネタかと思いきや後々大技として再登場を果たしたあれみたいなのは出てこないと思うけど……」

 

 多分それなら巨人の撃破も出来そうだなぁ…とか思いつつ待っていると、うずめは女神化して左手を掲げる。そして……

 

「よーし、それじゃあいっくよーっ!シェアリングサークル、てんかーいっ!」

『シェアリングサーク……──!?』

 

 技名らしき声と共に、左腕に装備した盾が展開。そこからシェアエナジーの光が周囲に放たれ……次の瞬間、私達の周りは溢れんばかりのシェアエナジーに満たされた。

 と、表現するとさらっと流せそうな感じもあるけど、実際はそうじゃない。さらっと流せる訳がない。だって、一瞬で周囲がシェアエナジーに満たされるなんて、あり得ないどころか軽く奇跡の領域なんだから。

 

「えっ、ちょっ…うずめ!?何をやったの!?な、何をやって、どうしてその結果こんな事になるの!?嘘でしょ!?」

 

 そのあまりにも想像を超えた展開に、目を剥き大いにテンパるネプテューヌ。それは私だって同じ事。自分の感覚がおかしくなったのか、或いはうずめが行ったのは幻術で、私達はシェアエナジーが溢れていると誤認させられてるんじゃないか…と本気で考える位には、この状況を私達は飲み込めていなかった。

 

「ふ、ふふーん…凄いでしょ〜…」

「す、凄いなんてレベルじゃないよ!まさかシェアエナジーを精製、それも一度に膨大な量を作り出せるって事!?だったらそれはもう、女神の在り方そのものを変えられる力だよ!?」

「あはは…そこまで言われると、照れちゃう…な〜……」

「これには流石のわたしも圧巻だよ…っていうか、こんな技があるならあのデカブツも楽勝じゃない?策なんて要らないよね?」

「う、うん…これは明らかに、ごり押し出来るね……」

「…と、思う…でしょ……?」

 

 シェアエナジーがあれば何でも出来る…とまでは言えない(と思う)けど、かなり無茶苦茶な事も出来るようになるのが女神。だから膨大な量のシェアエナジーを確保出来るなら、それだけで巨人の打倒が十分に現実的なものとなる。

 けれど、うずめは浮かない顔。というか、さっきからずっとうずめは目を瞑っていて、言葉も普段よりはきはきしていない。

 

『…うずめ?』

「え、っとね…これ、戦闘に使えたら…って思うでしょ…?」

「…使えないの?」

「うん…物凄く集中しなきゃ維持、出来ないから……これを使うと、うずめ…一歩も動けないんだ〜…」

「あ、あー……」

「…そういう理由なのね……」

 

 目をぱちくりさせながら訊いたネプテューヌの言葉に返ってきたのは、何とも驚き…というか、拍子抜けしてしまう言葉。確かにそれなら実用性があるとはとても言えない。だってこれまではうずめ一人しか戦えなかったんだから、どんなに強力な効果を得られても、そのうずめが戦えなくなるんじゃ意味がないから。

 それが分かって、ネプテューヌも私も苦笑い。しかもそこへ、次なる『使えない理由』が飛び込んでくる。

 

「それとね、もう一つ…。…二人共、ちょっと離れてみて…くれる…?」

「え?…いいけど……」

「うずめー、どこまで行けばいいのー?」

「すぐに、分かるよ〜…」

「すぐに分かる?それは距離がって意味?それとももう一つの理由……あ」

 

 うずめに言われて、頭上にクエスチョンマークを浮かべながら私達は移動。すぐに分かる、という曖昧な表現の意味を訊きつつ私は歩いていて……十歩もしないうちに、その理由が分かった。

 ある程度離れた瞬間、突如として感じるシェアエナジーの量が急激に減衰。底の抜けた容器かって位に一気になくなっていて……私もネプテューヌもよーく分かった。使えないもう一つの理由は、効果範囲に大きな難がある事だって。

 

「…ね〜…はふぅ……」

 

 二つの理由が私達に伝わったところで、シェアリングサークルを解除するうずめ。相当疲れたらしく、解除するや否や吐息を漏らす。更にシェアエナジーの消費が激しいのか、そのすぐ後に女神化も解けて……「だろ?」…と私達に視線を向けてきた。…うん、うずめが言いたい事は、よく分かったよ……。

 

「強力だけど使い辛いのを、ロマン砲って言うけど…これはちょっと、使い辛い側の要素が強過ぎるね…そもそも砲じゃないのは置いとくとして……」

「はは、俺自身もそう思ってるよ…。…で、何かこうしたら良くなりそうとか、こういう運用なら実戦でも使えそうとかはあったか?」

 

 頬を掻きながらネプテューヌが感想を伝えると、うずめも肩を竦めつつ同意。そこからうずめは意見を求めてきて、私達は目を見合わせる。…実戦で使うとなると、うーん……

 

「…………」

「…………」

「…やっぱり、ないか……?」

「あ、いや…膨大なシェアエナジーっていうのは間違いなく強力だし、範囲内で遠距離攻撃を放ちまくるっていう使い方をすれば強いと思うよ?…ただ、私もネプテューヌも本領を発揮出来るのは近接戦だから……」

 

 思い付くのは、相手と離れたまま戦える遠距離攻撃に使う事。もしもここにいるのが私達じゃなくてネプギア達女神候補生組なら消費を気にせず大出力攻撃を連射出来るし、特にロムちゃんとラムちゃんなら反撃されても障壁があるから、かなりシェアリングサークルとの相性は良いと思う。

 でも、残念ながらいるのは私とネプテューヌ。ネプテューヌは『状況次第で』遠距離攻撃もするって位だし、私だって精製した武器の射出をメインにするなら普通に仕掛けていった方が間違いなく強い。…だから、うずめには申し訳ないけど……この面子で実用に耐え得る運用方法は、正直すぐには思い付かない。

 

「だよな……はぁ…」

「う…げ、元気出してようずめ!効果自体は強いんだしさ、何度も練習を重ねればきっと動きながらでも維持出来たり、広範囲展開出来るようになるって!」

「…俺、女神化する度シェアクリスタル消費しなきゃいけないのにか?」

「あ…それは……」

 

 落ち込むうずめにネプテューヌがフォローするけど、そこで立ちはだかるのは第三…というか、そもそもの問題。これがある以上、数を重ねる事は出来ないし……どうしよう…。

 

(…それに、落ち着いて考えると…何かちょっと違ったよね……)

 

 さっきは驚きや興奮が先行して気付かなかったけど、改めて考えると、何か根源的な部分でシェアリングサークル内のシェアエナジーは違うような気もしている。けど解除しちゃった今は確認出来ないし、またやってもらうのも悪いし…と、私が一人考えていると……

 

「…もうさ、別の策を考える方がいいんじゃない?シェアリングサークルがなくても、わたし達は強いんだし」

「ま、ぶっちゃけちまうとそうだよな」

「そんな身も蓋もない……って、え?…うずめ、それでいいの…?」

「ん?あぁ、まあな。もし改良出来るならありがたいとは思ってたが…そもそもこれ頼みで倒そうとは考えてなかったしさ」

「そ、そうなんだ…じゃあ、改良案はゆっくり色んな経験しながら考えるでいいんじゃないかな……」

 

 なんか凄くあっさりと、二人は改良する事を諦めていた。しかもうずめ当人が、出来ないならまぁいいか…位に捉えていた。

 という訳で、この話は終わったんだけど…うぅん、どうも釈然としない…。

 

「だよね。じゃあ資材の件も済んだし、今日はもうわたしお休みモードに入るもんねー。うずめ〜、おんぶして〜」

「おんぶって…ったく、ねぷっちは子供だなぁ…」

「ふ、二人共切り替えるの早っ…!…もう……」

 

 そうして引っ付いてきたネプテューヌに呆れつつうずめはおんぶをして、二人は一足先に拠点の中へ。置いていかれてしまった私は、釈然としない気持ちを引き摺りつつも追って中へ。

 とはいえ、今日で信次元との通信は目前にまで近付いた。何か問題が起こらない限り、明日には通信する事が出来る。その事を考えれば、釈然としない気持ちも次第に晴れていくもので……だから私も気持ちを切り替えて、明日の通信へと期待を膨らませるのだった。




今回のパロディ解説

・船首が羊の船
ONE PIECEに登場する船の一つ、ゴーイング・メリー号の事。現パーティーには大工どころか趣味でそれっぽい事する人もいないので、補強もきっと雑になるのでしょう。

・鉄の華の組織
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズに登場する組織の一つ、鉄華団の事。対ハシュマル(MA)戦の事ですね。信次元的にいうと、天使の名を冠する機体はむしろ味方ですが。

・瞬閃轟爆破
デート・ア・ライブの主人公、五河士道の必殺技(?)の事。…えぇ、間違ってませんよ?必殺技ですよ?物凄い強力な技ですとも。
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