超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第十八話 盛り上がる夜と勝負の明日

「ぱーっといこうよ、イリゼ!」

「ぱーっといこうぜ、いりっち!」

 

 朝シャワーを浴びて、モンスターの強襲を受けて、ウィード君に恥ずかしい姿を見られて、電波塔まで辿り着いて、ミラクルな幸運で修復作業を終わらせて、戻ってからも補強に使える資材を収集して、うずめの実用性に難のある隠し球を見て……いや多っ!改めて振り返ってみると、今日あった事のボリューム多過ぎない!?濃密過ぎない!?……こほん。

 とにかく、自分でもつい突っ込んでしまう程色々あった今日という日。そんな今日もやっと夜を迎え、お料理担当が板につきつつある私が、今日は何を作ろうかな…と決して豊富ではない食材から考えようとしていたその時、二人から声をかけられた。…何とも意味の分からない、謎の提案を。

 

「…ぱーっと?」

「うん、ぱーっと」

「……ぱー」

「ちょき〜」

「わー、負けた〜」

「やったー!…って、そのパーじゃないよ!」

 

 ずいっ、と前のめりに言ってくる二人に対し、取り敢えず私は右手を開いて出してみる。するとネプテューヌは人差し指と中指を立ててきたから、私はルールに則って敗北を認め、ネプテューヌは喜び、事が済んだとばかりに私は料理へ……戻ろうとしたけど、止められた。…むぅ……。

 

「ぱーっとって、豪勢な料理にしようって事?」

「おう!…って、分かってたならなんでふざけたんだよいりっち…」

「いや、だって…食材は豊富じゃないんだよ?出来る限り節約しなきゃいけないんだよ?なのに豪勢って……」

「そりゃそうだが…ってか、いりっちもねぷっちも信次元じゃ食事にゃ困ってないんだよな?」

「うん。わたしは勿論、イリゼだって普通の人が見たら引く程資産がある筈だからね」

「…なのに、こんなしっかりしてるのか……」

「あはは…まぁ、散財は控えてるからね。だってお金をじゃぶじゃぶ使うような生活してたら、毎日頑張ってる国民の皆の気持ちが分からなくなっちゃうもん!」

「おぉ、流石だぜねぷっち!やっぱ国の運営をしてる女神は言う事が違うな!」

「ふっふーん!わたしは庶民派女神なのさー!」

 

 半眼で返した私の発言から発展して、胸を張り出すネプテューヌと、そのネプテューヌへ敬意の視線を送るうずめ。……いや、散財を控えるのは各国の先代もしていた事で、しかもネプテューヌは『お小遣い』と呼べそうな範囲のお金なら割と衝動買いですぐ使っちゃうよね…と思ったけど、まぁここはぐっと堪えて言わないでおく。だってそれ言ったら、余計話逸れていくし。

 

「…じゃ、その庶民派女神のネプテューヌなら、ここは贅沢を言えるような環境じゃないって事は分かるよね?」

「うっ…でも、偶にはいいじゃん!ぶーぶー!」

「ぶーぶーって…うずめもそうなの?」

「お、俺はそんな事言わないぞ?…でも、今日は大きく進歩した訳だし、問題なきゃ明日二人は信次元の仲間と話せる訳だろ?だったらそれ等の祝いとして、ちょっと位贅沢してもバチは当たらないんじゃないか?」

「祝い…?…まぁ確かに、大きな進歩をした事は事実だけど……」

 

 女神はバチを当てる側じゃ…?…というのはさておき、今のうずめは完全にネプテューヌ側の様子。勢いとゴネに定評のあるネプテューヌと、ノった時の熱量に長けるうずめの二人が相手となると、説き伏せるのは少し厄介。

 とはいえ、『食糧に余裕がある訳じゃない』という私の主張は揺らぐ訳がないし、落ち着いて話せばネプテューヌは難しくてもうずめの方は説得するのも不可能じゃない筈。…と、思っていたんだけど……

 

「いいんじゃないかい?ねぷっち」

「え、海男さん…?それに、ウィード君も……」

 

 そこで聞こえてきたのは、二人に賛同する海男さんの声。海男さんはウィード君と一緒に来て、穏やかな笑みを浮かべている。

 

「潤沢な食糧がある訳じゃないのは事実だ。けれど、明日の食事にも困る程切羽詰まっている訳でもない。それに君達は連日頑張っているんだから、時折の贅沢なら許されて然るべきだとオレは思うよ?」

「海男さんまで……って事は、もしや…」

「あ、いや…俺はどっちでもいいかな〜…」

「…って事は、ウィードを抜いても三対一だな!」

「ほらほらイリゼ〜、自分へのご褒美だと思って…ね?」

「…とはいえ、料理をするのはいりっちだ。オレ達は作ってもらう側なんだから、いりっちの意見を蔑ろにするのも違うだろう。手伝いも殆どしていないオレやねぷっちは特にね」

 

 二人の肩を持ちつつも、海男さんは多数決で私の意見が潰される事がないよう配慮した発言をしてくれる。

 そんな海男さんの登場は、嬉しいような嬉しくないような。だって発言そのものは嬉しかったけど、海男さんが二人の側に付くとなると、逆に私が説得されてしまう可能性も大いに増してしまうから。

 

「イリゼ〜、いいでしょー…?」

「いりっち、頼む…!」

 

 上目遣いで見つめてくるネプテューヌと、目を瞑って両手を合わせてくるうずめの、ダブルアタック。それはどっちも私の心を揺さぶってくる精神攻撃(お願い)で、そういうのに私はほんと弱い。む、むむ…むむむむ……

 

「……はぁ…そこまで言うなら、作るけど…あくまで仕方なく、仕方なくだよ?」

「やったーっ!ありがとイリゼーっ!」

「よっしゃ!やっぱ持つべきものは友だよな!」

「……元気だなぁ、二人は…」

「頼もしい限りじゃないか、うぃどっち」

 

……という訳で、今日の夕飯は豪勢にいく事になった。…ほんとに仕方なくだよ?このまま押し切られるよりは、こっちから譲歩したみたいにした方が私としても印象がいいからであって、友達に言われると弱いからなぁ…とか、友達のやりたい事はなるべくやらせてやりたいからとかじゃないんだからね!?

 

「そうと決まったら料理決めだぜ!俺は肉料理がいいなー!」

「わたしはね、わたしはね、プリン!プリンが食べたい!」

「おおぅ、凄くイメージ通りだな二人共…でも、肉料理か……」

「ウィードだって、偶には肉をがっつり食べたいだろ?」

「…そりゃまぁ、俺も男だしな」

 

 私が折れた事で、きゃっきゃと二人は食べたいものを主張する。…子連れでファミレスに行く時って、こんな感じなのかなぁ…。

 

「しかし、プリンか…確かねぷっちはプリンアメを食べていたね。あれは見たところ普通のプリンのようだったが…」

「そう!あれはカスタードプリン味!カラメルソースのかかった、ひんやり冷たいカスタードプリンのほろ苦い甘さを見事に再現した一品なんだよね!」

「カスタードプリンかぁ…けど、抹茶プリンやチョコレートプリンもめっちゃいいよねぇ!……じゃなくて、いいよな〜!」

 

 好きの気持ちを前面に押し出したネプテューヌにつられて、うずめはゆるふわモード発動。…と思いきや、今回はすぐに気付いた様子で即座に修正。

 

「そう言われると俺も食べたくなるなぁ…けどプリンはデザートだろ?まさかプリンをオカズに白米食べる…みたいな事はしてないよな…?」

「いやいや流石にそれはしてないよ…。でさ、肉料理の方は何がいいの?」

「そうだなぁ…取り敢えず肉とは言ったが、肉料理も色々あるんだよな……」

「となれば、やっぱ揚げ物じゃないか?唐揚げにトンカツ、牛肉コロッケにとり天と、揚げ物も幅は広いけどさ」

「その中だったらトンカツ…いや、カツ丼なんてどうだ?くーっ、夢が広がるなぁ…!」

 

 次第に中立だったウィード君も積極的になって、どんどん盛り上がる晩ご飯トーク。…でも私には、言わなきゃいけない事がある。それが水を差す事になろうとも…料理をする者として、伝えなくてはならない事が。

 

「……えーっと、盛り上がってるところ悪いんだけど…カツ丼とプリンを作れる食材が、あると思う?」

『あ……』

 

 その瞬間、私の方を見たまま固まる三人。海男さんは、「まぁ、それは避けられない現実だからね…」と、理解してくれてるような顔をしてるけど……し、仕方ないじゃん!無いものは無いんだから!

 

「そ、そっか…その問題があったね…」

「うん。カツ丼とプリンを食べたいって言うなら頑張るけど、食材は頑張っても私生み出せないよ?」

「…卵と牛乳はなんとかなったりしない?」

「ぶ……っ!?」

「ちょぉっ!?な、何言ってんのネプテューヌ!?しかも今男の子もいるんだよ!?」

「あっ!?それはごめんね!ほんとにごめんっ!」

「ごめんじゃないんだけど!?うぃ、ウィード君も想像しないでよね!?」

「お、おおぅ分かってる!ちょっと壁にあるヒビの数数えるから安心しろ!」

 

 ネプテューヌの不用意な発言にウィード君は吹き出し、私は赤面。慌ててネプテューヌも謝ってはくるけど、時既に遅し。うぅぅ、辱められた…よりにもよってネプテューヌから、男の子がいる前で……。

 

「…ネプテューヌ、サイテー……」

「今のは俺もどうかと思うぞ、ねぷっち」

「うぅ、ごめんなさい……」

「……で、どうする気…?」

「え、えと…フェイク料理的な感じで、別の食材での再現とかって出来ない?」

「おぉ!いりっち裕三の…的な?」

「いや、私そこまで料理への造詣は深くないよ…」

 

 暫く半眼でネプテューヌを睨んだ後、心の中で探索しながら軌道修正。

 で、フェイク料理を提案されるけど…私は首を横に振る。二人からは何か過剰な期待を受けてるみたいだけど…私はあくまで趣味レベル。それを生業に出来る領域ではないんだよね…。

 

「…こほん。となると、どっかで足りない食材を調達しなきゃならないって事か」

「そうなるね。…けど、足りていないのはどれも簡単には手に入らない食材だ。今から探して見つかるかどうか…」

「むむむ…熱帯地域で牛丼の食材を現地調達しちゃった流星ヒーローみたいに、案外手近な所で見つかったりしないかな?」

「流石にそれは……」

「…いや、あるかもしれねぇぞ?」

 

 ヒビ数えから復帰したウィード君の言う通り、作るなら調達するしかない。でも見つかる当てなんてないし、私は無理だろうなぁ…と思っていたけど、それを遮り可能性を口にするうずめ。

 

「…そうなの?」

「だってよ、廃墟状態とはいえここは街中だぜ?なのに探しもしないで無いって決め付けるのは、早計だと思わないか?」

「そ、それはそうだけど…(え、何この状況にそぐわないシリアスな台詞は……)」

「うずめ…うん、やっぱりうずめなら分かってくれると思ってたよ!意外と隣のビルの冷凍庫にお肉が入ってるかもしれないもんね!」

「そういう事だぜねぷっち!もしかしたらここから見えるあの草むらに、産みたて卵が落ちてるかもしれないしな!」

 

 根拠もないのに再び盛り上がるネプテューヌとうずめ。確かに無いって決め付けるのは良くないけど…二人はどんだけカツ丼とプリン食べたいの……?

 

「あっちにあるかもしれない、そっちにあるかもしれない、ひょっとするとこのビルの中に隠れてるのかも!」

「探さなきゃ可能性はゼロだが、探せば…探し続けている限りは、可能性はゼロじゃない!」

「いいねいいね!期待が膨らむよね!」

「でしょ〜?…あっ、ひよこ虫達が見つけてきてくれるって事もあるかも〜!それで食材が一気に集まって〜、美味しい料理が出来上がって、最後は皆でプリパするとかどうかな〜?」

「ポピパ?」

「ううん、プリンパーティー、略してプリパだよねぷっち〜」

「おぉー!ねぷ子的には、それすっごく賛成かも〜!」

 

 どんどん活発となるハイテンショントーク。折角さっき踏み留まったのにうずめはまたゆるふわモードに突入するし、何故かつられてネプテューヌまで「ねぷ子的には〜」とか言い出すし、最早ゆるふわの皮を被ったカオス状態。当然この状態で収拾がつく訳もないから、私は仕方なく二人に近付き……

 

「……ごほんっ!」

『……!?』

「…気持ちは分かったから、探そっか」

 

 かなり強めの咳払いで、二人を正気に戻させた。…これ、止めなきゃずーっと話してたパターンだよ…。

 

「……そ、そうだなうん。よーし、行くぞねぷっち!」

「おー!それじゃあまずは、このビルの中を再捜索──」

 

 とまぁ横道に逸れちゃったけど、やっと話は行動のターンへ。正直私はまだ無いんじゃないかなぁと思ってるけど、多分ここまでくるともう二人は探すまでは納得しない。それに無いとは思うけど、ほんとに見つかれば儲けものだし、少し位はいいかな…と私も部屋の出入り口に向かおうとして……

 

「皆さーん!食料を探してたら、皆さんが食べられそうなものを見つけたのですー!」

『え?』

 

──数匹のひよこ虫が、入ってきた。頭に卵だとか肉だとか……カツ丼とプリンを作るのに必要な、そしてこの場にはなかった食材を載せて。

 

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…え、っと…ど、どうしたですか……?」

『…………』

 

 

『…わぁお……』

 

 完全に言葉を失う私達と、きょとんとしているひよこ虫達。そして、その数分後……私は皆の期待通り、カツ丼とプリンを作るのだった。…うん、皆カツ丼を喜んでくれたよ?プリパもやったよ?それはもう盛り上がったよ?…けど、けどさ……

 

 

……今日はハプニング含め、ほんとに色々と起こり過ぎじゃない!?

 

 

 

 

 翌日、再び電波塔へと訪れた私達の作業は、全て滞りなく進んだ。補強は済んだし、機材も全部取り付けられたし、電気も問題なく通っている。だから後は……持ってきた端末から操作して、信次元への交信を図るだけ。

 

「しっかしほんと、こんなスムーズに準備が完了するなんてな」

「あぁ。けれどここには女神がこんなにもいるんだ。ある意味当然と言えば当然なのかもしれないよ?」

「女神がこんなにも…確かに、人である俺の方が少数派だもんなぁ……」

 

 今更焦る事もない、という事で、今は昼食中。……パーティーにおいて、女神が多数派になる事はこれまでもあったんだけど…まぁそれはまた状況が違うもんね。

 

「にしても、ほんとにいりっちは気が効く…っていうか、嬉しい事をしてくれるよなっ!」

「全くだぜ。まさか昨日の段階でカツを少し残しておいて、今日のカツサンドにしてくれるなんて…」

「ふふっ、一度に全部使っちゃうのは勿体ないなぁと思っただけだよ。でも、喜んでくれたなら私も嬉しいかな」

 

 ちょっと趣向を変えて、今日はレジャーシートを敷いて外でお昼。どこを向いても荒廃した景色が広がってるだけだから、目で楽しむには少し…いやかなり向かない場所だけど、それでもピクニックっぽく食べれば楽しいもの。加えて作ったカツサンドも好評で、私的には結構満足。

 

「うんうん。でもやっぱり、しょっぱいものの後は甘いものが…甘くてぷるんとしたものが食べたくなるよね!ねっ!」

「…プリン、食べたいの?」

「うんっ!ある!?プリンあるっ!?」

「…ネプテューヌ、プリンはカツサンドよりずっと崩れ易いんだよ?それを持って来られると思う?」

「うっ……そう、だよね…プリンは昨日だけの、一夜の夢……」

「……なーんて、ね。昨日牛乳が入ってた瓶を利用した、瓶プリンがあるよ。はいどうぞ」

「ふぉぉーっ!び、瓶プリン…瓶プリンなんて…うぅ、イリゼっ!イリゼイリゼイリゼ〜っ!」

「わわっ!?ちょっ、瓶落としちゃうって!」

 

 どこぞの溢れる興味の軍人少女さん並みに一部の言葉を繰り返しながらプリンを求めてきたネプテューヌは、私が否定的な言葉を返した瞬間見るからにしょぼくれ返って肩を落とす。…でも、そこで私が瓶に入った牛乳を出すと、途端に目を輝かせて……私の方へと飛び込んできた。

 

「大好きっ!イリゼ大好き〜♪」

「も、もう…プリン一つでそこまで喜んじゃ、軽い女神に見られちゃうよ…?」

「……ウィード。これといいカツサンドといい、イリゼのお母さん力は凄いよな…」

「確かにお母さんってか、新妻感が…な……」

「…あ、実はプリンの方はもう殆ど材料がなくて、皆の分はないんだけど…我慢してくれる?代わりにカツサンドは皆の分をちょっと多くしたから、さ」

「おー、大丈夫だぞー」

「俺も全然構わないぞー」

「……?」

 

 両手でホールドしたまますりすりしてくるネプテューヌに言葉を返した後、皆にもプリンに関して伝える私。するとうずめとウィード君は何やら話していて……妙に穏やかそうな顔で、私に言葉を返してきた。…なんだろう、ネプテューヌの子供っぽさにほっこりしてるとかかな…。

 

「ん〜♪中身は昨日と同じプリンだけど、瓶に入ってる分高級感があって素敵だよぉ〜♪」

「本当に幸せそうだな、ねぷっち。…因みに、今日の目的の事は……」

「勿論覚えてるよ?…そうだ、残りは交信を終えてから食べよっと」

 

 うずめからちょっと疑われたネプテューヌは、ぱこん、とプラスチックの蓋を嵌め直す。普段プリンを残す事なんてないネプテューヌが蓋をする辺り、本当にネプテューヌも皆と話せるのが楽しみなんだと思う。…まぁ、プリン用じゃないビンに入れた結果、口が小さくてちょっとずつしか食べられないから、焦れったくなって後に回したって可能性もちょっとだけあるけど…。

 

「ねぷっち、いりっち、何かオレ達がやる事はあるかい?」

「うーん…何かあったっけ?」

「ないと思いますよ。…やる事というか、うっかりコードに足引っ掛けて端子を壊しちゃう…みたいな、やってほしくない事はありますが……」

「俺達だってそこまで馬鹿じゃねぇよ…」

「だ、だよね…ごめん……」

 

 何か言っておくべき事があったかなぁ…と思考を巡らし取り敢えず思い付いた事を言ってみたら、うずめに半眼で突っ込まれてしまった。…ち、違うよ?ほんと取り敢えず言ってみただけで、そういうミスする人達だと思ってる訳じゃないよ?…それにほら、日常生活じゃコードに足引っ掛けちゃう事って、意外とあるものだし……。

 

「ともかく、まずはあの部屋まで行こっか。じゃなきゃ始まらないし」

「そうだね!それじゃあレッツゴー!」

 

 昼食セットとレジャーシートを片付け、立ち上がる私。右手を突き上げ、真っ先に歩き出すネプテューヌ。そうして私達は、破壊した結果手動となってしまった扉(現在は中で見つけたロッカーが蓋代わり)へと向かい……

 

「ほぅ。やはりその施設、何かに利用しているのだな」

『……──ッ!?』

 

 その瞬間、背後から一つの声が投げかけられた。一瞬で意識が戦闘時のそれに切り替わる、警戒すべき相手の声が。

 

「テメェ…ッ!」

「マジョコンヌ!」

「マジェコンヌだ!魔女の様な格好だという自覚はあるが、微妙に違うわ小娘がッ!」

 

 頭でどうこう考える前に、私達は振り返りつつ臨戦態勢でそれぞれ構える。相変わらずネプテューヌはきちんと名前を呼んでないけど、気を抜いている訳じゃない。

 

「……えと、誰だ…?あの奇抜な格好の女性は…」

「あいつはマジェコンヌ。俺達とこの次元を潰そうとしている、紫ババァだ」

「…人、なのか……?」

「分からねぇ、けど『普通の』人ではないだろうな…」

 

 この中で唯一マジェコンヌを知らないウィード君が、自身を庇うように斜め前へと出ているうずめへと訊く。対するマジェコンヌもウィード君には気付いているみたいで、ふっと彼を一瞥していた。

 

「…一応訊いておこうか。なにが目的だ、マジェコンヌ」

「なに、ここを通りかかったら美味しそうな匂いがしてな。気になって立ち寄ってみただけだ」

『へ……?』

「…などと言う訳がなかろう?まあ尤も、食事を貢ぎたいと言うのであれば貰ってやらない事もないが」

「ふーんだ!アヅ工ユシスにあげるご飯なんてないし、イリゼのご飯はわたし達のものだもんねーっ!」

「う、うん?貴様は何を言って…って、全部似た字に変えたな!?ぐっ、無駄に手の込んだ言い間違いをしおって…ッ!」

 

 煽ってくるマジェコンヌに対し、ネプテューヌは口頭じゃ何を言ってるのか分かり辛い名前弄りで応戦。ほんとに何故こうもぽんぽん弄りのネタが浮かんでくるのかは謎だけど、精神攻撃としては確かに効いている。

 けどそれも、考えてみれば当然の事。このマジェコンヌがネプテューヌと言葉を交わすのはまだ二度目だけど、ネプテューヌはもう幾度となく『マジェコンヌ』と言葉を交わしているんだから。

 

「…結局目的は何?戦うつもりじゃないのなら、私達も話を聞く位はするけど、そうじゃないなら……」

「まぁ落ち着け。何も私は、貴様等と戦おうとは思っていない」

「…戦おうとは思っていない?じゃあ……」

「あぁ。戦うのは私ではなく……こいつだ」

『……!』

 

 一切の油断をせず私が睨め付けると、わざとらしく肩を竦めるマジェコンヌ。それが本心なのか、それとも嘘なのかが分からず、更に私が追求すると、マジェコンヌはにやりと笑い……右手を上げる。そして次の瞬間、その動きに呼応するように空が歪み……黒い光が、現れる。

 

「これは……」

「おいでなすったって訳か…!」

 

 ウィード君が呟き、うずめが覇気の籠った声を漏らす。…飛来する光が示すものは、ただ一つ。

 

「……■、■■■■■■■■ーーッッ!!」

 

 降り立つ光。舞い上がる砂塵と激しい風。それが収まった時、そこに立っているのは黒の巨人。街を、次元を破壊する……巨大な脅威。

 

「さぁ、好きに選ぶがいい。負け犬のように尻尾を巻いて逃げるか、助けて下さいと命乞いをするか、それとも立ち向かって粉微塵に吹き飛ばされるかをな」

 

 浮かび上がり、私達の前から離れていくマジェコンヌは言う。勝利は我が物だと言わんばかりに。私達の生殺与奪も、未来も自らの手の内にあるとばかりに。

 提示された選択肢は三つ。逃げるか、命乞いをするか、玉砕するかの三択。…けれど私達は、そんな選択肢…何一つだって選ばない。選ぶ訳がない。

 

「はっ、上等じゃねーか。やれるもんならやってみやがれ。やれるもんなら…なッ!」

 

 一層の覇気が籠った言葉を放ち、右を振り抜くうずめ。その手に輝くのは、シェアクリスタル。

 

「…愚かな選択をするものだ。ダークメガミに勝てるなどと思っているとは……」

「…なら、こっちからも言わせてもらうわ。わたし達女神に、勝てるとでも思ってるのかしら?」

「確かに巨人…ダークメガミとやらは脅威だ。だが、私達が選んだのは、貴様の提示した選択肢ではない。私達自身が生み出し選ぶ、第四の選択肢だ」

 

 女神オレンジハートとなったうずめに続き、私とネプテューヌも女神化。女神三人で並び立ち、真正面から正対する。メガミの名を持ちながらも人に、次元に仇なす黒の巨人と。

 そう、私達は選ぶ。提示された選択肢じゃない、私達が望む、私達が選ぶ選択肢を。ダークメガミを打ち倒し、勝利するという選択肢を。それが、私達のしたい事であり……それが、人と次元を守る『女神』だから。




今回のパロディ解説

・いりっち裕三
タレントや歌手を務める、グッチ裕三こと高田豊さんの事。グッチといりっちを掛けてみました。……と、自ら説明するのは少し恥ずかしいですね…。

・ポピパ
バンドリシリーズに登場するバンドの一つ、ポッピンパーティーの事。プリパとポピパ。文字の見た目だけじゃなく母音も二文字同じ(パは当然として)なんですよね。

・どこぞの溢れる興味の軍人少女さん
アンジュヴィエルジュに登場するキャラの一人、エルゼ・ツァールトの事。彼女は即座に繰り返す口調なので、厳密には少し違いますね。
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