超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
お姉ちゃん達は信次元の危機を救う為に、一つ目の別次元へと向かった。すぐには戻れない、連絡も出来ない遠い場所へ、たった二人で。
それを、わたし達は見送った。でも、お姉ちゃん達の帰還をただ待ってるつもりなんてない。信次元にいるわたし達にもやれる事はあるし、やらなきゃいけない事も、やりたい事もあるんだから。
「あの、まずはどうしましょう?生活圏内の安全の再確認をしますか?信次元の中にも手掛かりがないか探しますか?或いはどこまで出来るか分かりませんが、二つの次元のスキャンを……」
「待った待った、やる気があるのは結構だけど、前のめりになっても躓くだけよ?」
くるり、と皆さんの方を振り返ったわたしは、やれる事を思い付いた順に提案。けれど三つ目を途中まで言ったところで、ノワールさんに窘められる。
「だよね、お姉ちゃん。アタシ達は今ここにいる面子しか動けないんだから、やるんだったら一つ一つ考えてやらないと」
「うっ……そ、それはそうだね…」
「やる気があるのは良い事だと思いますけれどね。しかし、前のめり云々をノワールが言うとは…」
「べ、別にいいじゃない。…で、どうする?優先順位を考えるなら、国民の安全が最優先だけど…」
「それについては、最低限安全な場所への移動はさせられているのよね。もっと安全な、と言い出すとキリがないし…」
「であれば、一先ず今後の行動計画を立てるのはどうだろうか。今はこうして集まっているが、ネプギアとイストワール以外は連日プラネテューヌにいる訳にもいかないだろう?」
ノワールさんへ同意するユニちゃんから始まって、続く会話の中で提案をしたのはマジェコンヌさん。その提案に、わたし達は次々と頷く。
「…そうですね。集まっている今の間に、決められる事は決めておきましょう
( ̄^ ̄)」
「はーい。でも、こーどーけーかくってどうやって決めるの?」
「よていひょう、みたいなかんじ…?」
「そうよ。今日は何をするか、明日は何で、その次は何か…って言うのを、最終的な目的に向けて組んでいくの。最終的な目的は分かる?」
「えっと……」
「あっ、わたし知ってるわ!いつもさいごに付く、『あとがき』ってところまでがんばることよね!」
『ラム(ちゃん)!?』
「あれ?ちがった?」
いつものように質問をするロムちゃんとラムちゃんへ、ブランさんが『自分で考える』という部分も入れて解説。最終的な目的は何か、というのはわたしにとっても考えさせられるもので、それを即座に組み込めるブランさんは凄いなぁ…と思ったんだけど、それに対するラムちゃんの解答はまさかのもの。あ、あとがきって…ラムちゃんがこんながっつりとしたメタ発言を…!?……いや、思い返せば前にもしてた事はあったけども…!
「な、何を言っているのラム…!?」
「そうだよ、ラムちゃん…!そういうのは、わかってても言っちゃめっ…!(あたふた)」
「ロムまで…!?最近波長が合うからかネプテューヌと遊ぶ事のあった二人だけど…知らぬ間にネプテューヌに毒されていたって言うの…!?」
「す、すみませんブランさん!そんな事はないって言いたいところですけど、多分可能性としてはお姉ちゃんの影響が一番大きいと思います!ほんとお姉ちゃんがごめんなさい!」
「……いや、いいのよネプギア…メタ視点が育ち易い環境って意味じゃこのパーティー自体にも問題はあるし、仮にネプテューヌのせいだったとしても、それは貴女が責任を感じるような事じゃないもの…」
「…ネプテューヌのせいかもしれない、という点は微塵も否定しませんのねネプギアちゃん……」
「…メタ発言の原因として真っ先に挙げられたり、それを妹が謝ったり…ネプテューヌって、ほんと何なのかしらね……」
続けてびっくり発言を放った二人によって、話は思いっ切り脱線。なんかノワールさんも言ってたけど…わたしのお姉ちゃんって、色んな意味で何者なんだろう……何者も何も、わたしのお姉ちゃんだけど…。
「あのー…皆さん、お気持ちは分かりますが、行動計画を……(ーー;)」
「あ…そ、そうね。取り乱した事を謝るわ…」
「ねーねー、じゃあさいしゅーてきな目的って何がせーかいなの?」
「そりゃ、次元同士の衝突を回避して、信次元の中で起きてる異常も解決する事に決まってるでしょ」
「つまりは、平和を取り戻すという事だな。この言い方だと抽象的ではあるが」
「平和を…じゃあ、いつもどおり…?(きょとん)」
「そう…だね。その為にやる事は違うけど…その方が分かり易くていいんじゃないかな?」
その脱線から引き戻してくれたのはイストワールさんで、不思議そうにしているロムちゃんへとわたしが答える。
そう。いつも通りというか、いつだってわたし達の目的は同じ。平和にする事、平和を維持する事、その中で皆が幸せに暮らせるようにする事…それが女神の務めで、そういう意味では考えるまでもないような事。…忘れちゃいけない事でもあるから、確認をするのは大切だけどね。
「では次は、そこに向けて何からやっていくか…先程ノワールの言った、優先順位にも通じる部分ですけど……」
「それで言うと、スキャン云々は後でも良いと思うわ。いや勿論、同時進行で進められるならそれが一番だけど、まずは信次元内の問題に当たらないと」
「遠くに手を出すなら、足場を固めてから…という事ね。わたしも同感よ」
「そうですね。イリゼさんとネプテューヌさんがいつ戻ってきても大丈夫なように、わたしも信次元内の事から進めるのが良いと思います(´∀`)」
「じゃあ、今も眠っている人達の移動は……」
「…それは、日々の余力で行うのが賢明だと思うぞ。先にブランが言った通り、これに関しては終わりの見えない作業となる。女神として、国民の安全を後回しにするのは気が引けるだろうが…合理的、総合的に言えば他の事の解決を優先した方が良いだろう」
この中で唯一の人間、マジェコンヌさんからの意見。マジェコンヌさんは、わたし達に気を遣ってる…というか、気を遣った上で『わたし達には言い辛い、考え辛い』事を言ってくれたんだと思うけど……わたしとしては、素直に「それもそうだよね」と受け止める事が出来るから。
効率的に進める上で、手間や時間のかかるものは後に回した方がいい。いや勿論、やらずに終わらせようとするのは駄目だけど…手早く終わるものを先に済ませておけば、手間のかかるものに当たった時に『あれとあれはもう終わってるんだから』っていう安心感に繋がるし、逆だと『まだあれもこれも残ってる』っていう焦りに繋がっちゃうから。そういう事は雑務でもよくあるし、ここまでやればお終い…って部分が曖昧なものならそれは尚更の事。
それに、これもブランさんが言ってたけど、最低限の安全は確保してある。昏睡状態についても、暫くは生命に問題はないって事だから…マジェコンヌさんの意見に、わたしは納得していた。そしてそれは、皆も同じ。
「となると…真っ先にやるべきは、原因の究明の方…ですよね」
「わたくしもそう思いますわ、ユニちゃん。人為的なものなのか、自然発生なのか、どうすれば対処が出来るのか…考える事、調べる事は多いですけど、これが進めば人々の意識を取り戻す事にも繋がりますもの」
「げーいんのきゅーめー…それならわたしたちもできるよね、ロムちゃん!」
「うん…!」
「二人が?…いや、馬鹿にする気はないけど…その自信はどっからくる訳…?」
「ふふーん、知らないのねユニ!わたしたちは前に、じけんのおきるばしょをすいりで当てたことがあるんだから!」
「ネプギアちゃんとね、三人ですいりしたの(きりっ)」
「あ、あー…そういえばそんな事もあったね……」
二人が言っているのは、お姉ちゃん達を助け出す少し前にあった、ルウィーでの連続盗難事件の事。あれはそこそこ偶然にも助けられた事なんだけど…わざわざ気分良さそうにしてる二人に横槍を入れるような事はしない。別に嘘吐いてる訳でもないしね。
とまぁそんな感じで、目的へ向けて先ずやる行動が決定。そこからより細かい計画を決めていって、やる事に対する現実味が増していく。
「うん、まぁ一先ずはこんな感じでいいんじゃない?不測の事態がいつ起きてもおかしくない状況だし、がっちり決め過ぎても…ね」
「じゃ、早速行動開始だね。何をするにしても、取り敢えずは情報収集を……」
「いえ、その前に一つ。わたしから皆さんに、極力聞いて頂きたいご提案があるのです(´-ω-`)」
ある程度決まったところで、ノワールさんが話を締める。けれどわたし達もそれに頷いて、さぁ行動を…となったところで、イストワールさんが待ったをかける。
『てーあん…?』
「はい。皆さん、この後は各国に戻りますよね?」
「そうね。この人数じゃ大雑把な情報収集しか出来ないし、だったら各国に分かれた方がまだ情報は集まる筈だもの。…それに、やっぱり女神としては、この状況で自国をあまり空けてはおきたくないし……」
「だと思いました。では皆さん、各国に戻りましたら……今日は、ゆっくりと休んでほしいのです」
『へ……?』
ブランさんの言葉にこくり、とゆっくり頷いたイストワールさんは、それから言った。わたし達に、休んでほしい…と。
その予想外な言葉に、わたし達は揃って驚く。でも、イストワールさんの声音は至って真面目。
「…イストワール、それはどういう事でして?あぁ勿論、意味ではなく理由ですわよ?」
「当然その説明はします。…と言っても、理由は単純ですけどね。次元の異常が起きて以降、皆さんが殆どまともな休眠を取っていないからですよ(´・ω・)」
休眠を取っていない。それは全くの事実で、否定する部分なんて微塵もない。でもすぐに、ノワールさんが言葉を返す。
「いや、それは仕方ない事でしょ。今は何にしたって私達だけでやるしかないし、一刻を争う状況ではないとはいえ、のんびりなんてしていられないもの」
「そうね。今はやれる時に、やれる限りの事をするべきだと思うわ」
「確かにそれはその通りです。今信次元で起きている事は、この長い歴史の中でもトップクラスの非常事態。…ですが皆さん、気付いていませんか?自分達の髪型が、普段よりも乱れている事に(・ω・)」
『え…?』
見回しながら発されたイストワールさんの言葉に、目を丸くして顔を見合わせるわたし達。わたしは元々ちょっと癖っ毛(お姉ちゃんも外に跳ねてるし、姉妹なだけあって髪質も近いのかも)だから、普段から少し跳ねてるんだけど……いつもは綺麗に整ってるユニちゃんやノワールさん、ベールさんやブランさんもよく見れば毛先が乱れてたり、後頭部に跳ねが出来ていた。そしてわたし達は、今まで全然その事に気付いていなかった。
「…その乱れ、決して身嗜みなど気にしている場合ではない…と考えて放置した訳ではありませんよね?それならば、そもそも整えていない筈ですし(・ω・`)」
「…いや、でも…普段はともかく、今は髪の乱れ位問題は……」
「いいえユニさん、わたしが問題にしているのは…皆さんの心が、髪の乱れにも気付かない程疲弊している事です。…分かっていますよね?身体的な事はシェアエナジーで賄えても、精神の疲弊はきちんと休まなくては癒されない事は(´ー`)」
全くもってその通り。心の疲労はシェアエナジーじゃ補えないし、最低限は休んでるつもりだったけど…普段は意識せずともやれてる事が出来てなくて、しかもそれに気付けない程調子が狂っているのが、今のわたし達。
「気持ちは分かります。皆さんの言う事も一理あります。ですがせめて、今日位は休んで下さい。…でなければ、今後万が一の事があった時、全力で対応に当たらなくてはならない事が起きた時……」
「…抱えたままの心的疲労が、致命的な失敗に繋がりかねない…そういう事ですのね?」
「はい。そうでなくともこの事態への対応が皆さん頼りな以上、いつ無理が祟って…という事が起きてもおかしくありませんから。ですから不安は少しでも減らしておきたいんです( ˘ω˘ )」
イストワールさんの言う「休んで」という意見は、先の事を考えた上での言葉。だからこそ説得力があるし…わたし達は、もう一度顔を見合わせる。そして……
「…そうね。イストワール、貴女の言う通りよ。わたしも二人も、今日はきちんと休むとするわ」
「きちんと休む…。…なんか、ふしぎなことばだね」
「うん。休むって、きちんとやることなのかな…?」
「はは…まぁ何かあれば、その時は出来る範囲で私が対応するさ」
「マジェコンヌさん。きちんと休んでほしいというのは、貴女含めてですよ?かなり皆さん寄りとはいえ、貴女は人間なんですから( ̄ー ̄)」
「う…目敏いな、イストワールは……」
「当然です。何せ世界の記録者ですからね( ̄▽ ̄)」
にこー、と全然怖くはない、けど圧というか重みのある笑みを浮かべられて、流石のマジェコンヌさんもたじたじに。当然わたし達だって言い返せる訳がなくて、というか筋が通っているのはイストワールさんの方だから、全員首肯で今日の夜はちゃんと寝る事に決定。
そうして計画が決まった事で、皆はそれぞれ自分の国へ戻り、マジェコンヌさんはリーンボックスへ。これで、プラネテューヌはわたしとイストワールさんだけになっちゃったけど…皆とは連絡が取れるし、同じ二人でもお姉ちゃんとイリゼさんの方がずっと不安は大きい筈。だから弱音なんて吐いていられないよね、と胸の前で右手を握って、わたしに出来る事をやり始める。
*
「ふぁ、ぁ…もうちょっと、やっておこうかな……」
わたし達がまずやる事は、信次元で起こった異常の原因究明と解決に向けた情報収集。犯罪組織の時とは違う、『何がどうしてこうなったのか』が全く見えてこない事態だけど、信次元全体にこれだけの影響を及ぼす程のものを、証拠一つ残さず行うなんて出来ない筈。だからその証拠や手掛かりを見つけ出すのが、最初の行動。
でもわたしには、もう一つ重要な役目がある。わたしにしか出来ない、全力を注ぎたいって思える役目が……
「ネープーギーアーさーんー!( *`ω´)」
「ひゃわぁっ!?い、いーすんさん!?」
突如わたしを背後から襲った、愛らしい…でも怒りと威圧感を孕んだ声。その声にわたしは驚き……思わず持っていたネジの小箱をひっくり返してしまう。
「あぁっ!?ね、ネジが床一面に!」
「あ、それはすみません!…って、誤魔化されませんよネプギアさん!o(`ω´ )o」
「べ、別に誤魔化そうとした訳じゃないんですー!あわわわ……!」
ぶちまけてしまったネジと、見るからに怒り心頭ないーすんさんの両方の対応に追われて慌てるわたし。急いで転がるネジを拾っていると、その間いーすんさんは本の上で腕を組んでいて……あ、どうしよう…これほんとに怒ってる時のいーすんさんだよ…。
「…全て拾えましたか?( ̄  ̄)」
「あ、は、はい…多分、全部拾えたと思います…もしかしたら、床と物の隙間に幾つか入っちゃったかもしれませんけど……」
「ならそれは後で、わたしが確認します
(。-_-。)」
「お、お願いします……」
手乗りサイズのいーすんさんにとって、狭い所の物を探したり取ったりするのはお手の物。そんないーすんさんにはこういう時、いつもお世話になってるしありがたいんだけど…今だけは全然ありがたくない…!怒ってる人に取ってもらうなんて、精神的に悪過ぎるよぉぉ……!
「…ネプギアさん。わたしがどうして怒っているか分かりますか?(−_− )」
「え、と…それは……」
「…………」
「…ごめんなさい、分からないです……」
わたしの目線と同じ高さにまで移動して、いーすんさんは正面から訊いてくる。何故怒っているのかは、ネジを拾ってる時点で考えていたけど……全く分からない。だから、ちょっと俯きつつ正直に答えると…いーすんさんは、はぁ…と深い溜め息を吐く。
「…ふざけて有耶無耶にしようとしない辺りが、ネプテューヌさんとは違いますね…それにどうやら、本当に気付いていないようですし…ε-(;-ω-`A)」
「うっ…その……」
「…時間ですよ、時間(ー ー;)」
「時間…?…あっ……」
怒りから呆れに変わっていくいーすんさんに言われて、わたしは壁掛けの時計を見る。…で、そこで初めて気付いた。わたしが作業をしている内に、時間は夜遅くとなってしまっていた事に。
「…これで、分かりましたね?(-_-)」
「は、はい…言ったばかりの事を早速忘れていたから、ですよね……」
無言でいーすんさんに頷かれ、わたしは思う。これは怒るよね…って。真っ当な事を言って、それにわたしは頷いていたのに、早速それを破ってしまったんだから。…けど……
「…いや、でも…わたしにとって機械組み立てたり改造したりするのは趣味の一環でもありますし、リフレッシュにもなっているって事で今日は大目に……」
「…これまで滅多にそんな事はありませんでしたが、今日はお説教をしなければいけないかもしれませんね。二千文字程これに費やしてもいいんですよ?(。-∀-)」
「そ、そんなのび助さんみたいな事は勘弁して下さい…けど、ほんとにこれは嘘じゃないんですよ?時間を忘れちゃったのも、熱中しちゃったからですし」
「ですが……」
「…それに、わたしがやらなきゃ、頑張らなきゃ…って気持ちでやってるんじゃないんです。そうじゃなくて、頑張りたいなって気持ちなんです。わたしが頑張る事でお姉ちゃん達の助けになれるのなら、助力に繋がるのならって思うと、やる気が湧いてくるんです」
冗談にも本気にも聞こえる声に、一度はたじろぐわたしだけど…すぐに、わたしの抱いている気持ちを伝える。
もう一つの役目。それは、お姉ちゃん達との通信を図る事。何らかの事情でお姉ちゃん達が交信の準備が出来なくなっちゃっても大丈夫なように、出来る限りの手を打つ事。その為の機械を今わたしは作っていて、わたしを熱中させたのは、この気持ちと元々の「好き」っていう気持ちの二つ。
いーすんさんの意見は分かってる。でもわたしはこれを負担だなんて思ってないし、むしろ心にはプラスになっているような気すらする。だから、正直もう少し続けたいなって気持ちがあって……けれどわたしの思いを聞いたいーすんさんは、また溜め息を吐いた。…今度は、さっきよりも優しさの籠った溜め息を。
「駄目ですよ、ネプギアさん。だとしても、わたしはネプギアさんに、休みなさいと言わせてもらいます(´ω`)」
「…どうして、ですか?」
「ネプギアさんの為であり、ネプテューヌさんの為でもあります。…ネプギアさん、もし仮にそれで上手くいったとして、お二人と通信出来たとして…その時通信越しに見るネプギアさんの顔に、通信越しに聞くネプギアさんの声に、蓄積した疲れを感じたとしたら…その時ネプテューヌさんは、喜べると思いますか?」
「……っ…それ、は……」
ふっ…と真面目な顔になって、わたしを見つめるいーすんさん。その言葉に、わたしは詰まる。
碌に休まず作業をし続けて、それで通信が出来るようになったとして、その時お姉ちゃんは喜ぶか。…多分お姉ちゃんなら、喜んでくれる。通信が出来るようになった事もそうだけど、その為にわたしが費やした努力を賞賛するように、きっと喜んでくれる。だけどお姉ちゃんは…優しくて温かいお姉ちゃんは、同時に「ごめんね」って言うと思う。わたし達の為に、無理させちゃってって。
それは、嬉しくない。お姉ちゃんに申し訳ないって気持ちを抱かせる事も、気を遣わせる事もわたしは嫌。だって大変なのはお姉ちゃんやイリゼさんも同じで、だからわたしも頑張ろうって気持ちになっているんだから。
「…休むという事は、安心させるという事でもあるんです。ネプテューヌさんならきっと、ネプギアさんが元気でいてくれる事が、何よりの安心になると思います。ネプギアさん、貴女はどう思いますか?」
「…わたしは……」
「…………」
「……わたしも、そう思います。だって、お姉ちゃんは…いつだってわたしの事を、第一に考えてくれますから」
そうだ。お姉ちゃんはいつも、わたしを大切にしてくれてる。いつもいつも、自分が大変な時でも、わたしを優先してくれる。だったら、わたしは…わたしもわたしを大切にしなきゃ、駄目だよね。わたしは、お姉ちゃんが大切にしてくれてるわたしなんだから。
その思いを乗せて、わたしはいーすんさんに言う。それを聞いたいーすんさんは、にこりと優しく笑ってくれる。
「それでは、今日はもう休んでくれますね?(´・∀・`)」
「はい。片付けをして、それで今日はお終いにします。……けど、流石ですねいーすんさん。わたしよりも、お姉ちゃんの気持ちを分かってるなんて」
「そんな事は、当たり前です( ̄Д ̄)」
「…それも、世界の記録者だから…ですか?」
「いいえ。わたしも、妹を持つ姉ですから
(*´∀`*)」
「あ……」
そう言ってまた笑ういーすんさんの顔は、お姉ちゃんがわたしに笑いかけてくれる時と同じ顔。……それを見て、わたしは思うのだった。…あぁ、やっぱり…『お姉ちゃん』は、凄いな…って。
*
区切りとなったのは、私達がこっちに来た日が終わったところ。心情を一つ一つ話していたらキリがない、って事で起こった事を中心とした話だったけど…その分分かり易くて、私達も聞き易かった。
「……あ、なんだやっぱり今回は、説明という体での回想回なんだね。急に時間が戻ってたからびっくりしちゃったよ」
「…凄いよね、そこまでメタの塊な文章が言えるなんて」
「ふっ、ロムちゃんラムちゃんとは違うのだよ、ロムちゃんラムちゃんとは!まぁ、二人も順調に育ってはいると思うけどね!」
求められてもいないのに思いっ切りメタ発言をぶち込んだネプテューヌは、続けてパロディ発言もかます。これにはもう、私達全員苦笑いを浮かべるしかない。
「けど、そっちは割と静かな感じだったんだね。こっちは初日からしっちゃかめっちゃかだったんだよ?」
「そこはまぁ、状況の違いと言いますか、既に事が進んでいるこちらと、来訪直後のそちらとの差かと…( ̄◇ ̄;)」
「こっちは毎日が濃密だもんね…はは……」
「…でも、派手な事は少なかっただけで、こっちも毎日色々やってるんだよ?」
ネプテューヌの言葉に私が苦笑い続行で同意すると、ネプギアは対抗心を燃やし…たって訳じゃないんだろうけど、「でも」から続く言葉を返す。
そう。私達が信次元にいた時点でも連日不眠不休で動かなきゃいけないような状態だったし、それが急に無くなる訳もない。それに、異常の要因に関係する事も分かったらしいんだから、まだまだ話はこれからって事。ネプテューヌもそれは分かってるみたいで、すぐに「じゃあ、二日目は?」と二人に聞き……信次元側の話は続く。
「…あっ、でもその前に一個だけいい?」
「……?どうしたの、お姉ちゃん」
「うん、これ恐らくだけど……信次元パートが終わるまで、主人公ほぼネプギアで固定だよね!?地の文もかなりの割合を担当するよね!?わたしはこっち来てからあんまりしてないのにズルい!ズルいよネプギアぁっ!」
『え、えぇー……』
今回のパロディ解説
・のび助
ドラえもんシリーズに登場するキャラの一人、野比のび助の事。同時に「いいや、二ページほどやる!」のパロディでもあるのです。気付きましたか?
・「ロムちゃん〜〜ラムちゃんとは!〜〜」
機動戦士ガンダムに登場するキャラの一人、ランバ・ラルの名台詞の一つのパロディ。他にも同系統の台詞はありますが、大元はやはり彼ですよね。