超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
異常の原因究明の為にプラネテューヌの各地を飛び回って、操作出来る監視カメラの映像を片っ端から確認して、交信を図る為の機械作りも進めて、飛び回る道すがら昏睡したままの人達を少しでも安全性の高い場所に移動させて……お姉ちゃん達が別次元に行った次の日から、始まったのはそんな日々。そこには戦闘の時みたいな激しい緊張感や危険はないし、機械以外はそこまで難しい事でもないけど……楽だとも、思えない。だって、どれもはっきりとした終わりが見えないから。
「…ふ、ぅ……」
自分の執務室にある椅子に深く身体を預けて、吐息を漏らす。今は毎日夜に行う事とした定期連絡を終えたところで、今のところどの国でもこれといった発見はない。
「…さて、と…皆さんから送ってもらったデータ、目を通さないと……」
「その前に、少し休んだらどうですか?(・ω・`)」
「いーすんさん…」
肘掛けを掴んで身体を起こそうとしたところで、いーすんさんから声をかけられる。いーすんさんは本と共に仕事机へ着地したから、下からわたしを見上げる形に。
「…はは、変ですよね。昨日はぐっすり寝て、今日はすっきり目覚めたのに、まともに休んでなかった昨日までより今日の方が疲れを感じているなんて……」
「それは恐らく、これまでは疲労を感じる能力が麻痺していただけなんだと思いますよ(´ω`)」
「いやそんな事は…ない、とも言い切れませんね…」
そんな事あるのかなぁ…と思ったけど、戦闘中は途中からあんまり痛みを感じなくなったりするし、昨日言われた髪型の乱れの件もある。何より毎日無理をしているんだから、何かの感覚が麻痺してたって何にもおかしな事はない。
「毎日ゆっくり休めとは言いませんが、それでも休憩の時間はきちんと取らなくては駄目です。かの賢王も過労死する時は過労死するんですから」
「いやあの人も過労死って訳じゃ…それに身体的な疲労はシェアエナジーでなんとかしてますし…。…というか、そもそも女神って過労死するんですか?」
「それは……どう、なんでしょう。ただ少なくとも、過労死の前例はありませんね…(~_~;)」
「ですよね…けど、それを言うならいーすんさんもちゃんと休んで下さいね?いーすんさんだって、一度体調を崩したんですから」
「…分かっていますよ。また体調を崩すような事があれば、今度こそイリゼさんに怒られてしまいますからね」
雑談…と言うにはちょっと物騒過ぎる会話を交わすわたし達。そこからわたしがいーすんさんにも気を付けるよう言うと、いーすんさんはちょっと頬を緩めて肩を竦める。そしてそれを見たわたしは…つい、笑ってしまう。
「…ふふっ」
「……?どうしました、ネプギアさん(・・?)」
「いえ、いーすんさん今言葉から顔文字が消えてましたよね?昨日もお姉ちゃんの気持ちは分かるって言ってましたし、いーすんさんもイリゼさんの事を凄く大切に思ってるんだなぁ…って」
「う…それは否定しませんが、面と向かって言われると少し恥ずかしいですね……(〃ω〃)」
そう言って照れるいーすんさんは、普段に増して可愛らしい。目上の人(立場云々は別として)に可愛らしい、って言うのはちょっと変だけど…仕方ないよね、ほんとに可愛いんだもん。
「…こほん。ともかくわたしも適度に休息は取りますので、ネプギアさんもお願いしますね?(´・ω・`)」
「大丈夫です、分かってますから。…それに、今の会話でちょっとだけ心も休めたような気がします」
「それならば良かったです。では早速休憩を……」
「あ…でも、データに目を通す事だけは先にやってもいいですか?このままだと、気になっちゃってあんまりリラックス出来そうにないので……」
「ネプギアさん…。わたし、ネプギアさんが残ってくれて、本当に良かったと思っています……(T ^ T)」
「そ、それは…まぁ、はは……」
何とも切実そうないーすんさんの声音に、頬を掻きつつ苦笑い。…お姉ちゃんじゃなく、わたしに残るよう言った真の理由って、まさか……。……なんて、ね。
という訳で、納得してもらったわたしはデータに目を通す。一見なんて事ないけど、もしかしたら何か気付く事があるかもしれない。今の段階じゃ何もなくても、頭の片隅に情報を置いておく事で、今後の発見に繋がるかもしれないって思いながら。
*
それから、数日が経った。この数日で、少しだけど昏睡した人達を更に移動させる事が出来た。
でも、成果と呼べそうなものはこれだけ。情報は殆どない…というか、いつもと変わらないって情報ばっかりだったし、機械の方もまだあんまり進んでいない。…というか、別次元と交信する為の機械なんて機械弄りの範疇を遥かに超えている(お姉ちゃん達に渡した機材だって、特別技術開発部全体で作っていた物だし、理論に関してはいーすんさんや他の科学者さんの協力ありきだし…)から、正直これはどんなに時間をかけても完成しない可能性がある。
けれど、成果があまり上がらない…なんて事は、予想出来ていた。予想は出来ていたけど、情報収集は基本中の基本だから、この数日間で出来る限りの事をした。そして今日、再び皆がプラネタワーに集まっている。
「ネプギア、アンタ根を詰め過ぎたりしてないでしょうね?」
「うっ…ユニちゃんもそれ言うの?いーすんさんにも似たような事言われたし、最初に来たベールさんにも心配されたし、わたしってそんな無理しそうに見える…?」
「しそうって言うか、むりするのがネプギアじゃない」
「うんうん(こくこく)」
「ふ、二人まで……」
当然だよね、って位迷いもせずに頷かれて、わたしはがっくりと項垂れる。…心配されるのは嫌じゃないけど、こうも言われちゃうと…ね……。
「…お互い、今日は身嗜みもきっちりしていますわね」
「そりゃ、あんな指摘をされちゃったら…ね」
「まあ、意識して気を付けるんじゃなくて、乱れるようなコンディションになる事自体を避けなきゃいけないんだけどね」
わたし達の近くでは、守護女神の皆さんも会話中。ブランさんの言う通り、大事なのは表面に出るかどうかじゃなくて、そういう状態にならないようにする事なんだけど…多分、ノワールさん達は大丈夫なんだと思う。だってわたし達『候補生』じゃない、『守護女神』の三人が、指摘までされた自己管理を軽視する訳がないし。
「さて、それでは皆さん集まった訳ですし、考えるとしましょうか。…手掛かりを、見つける為の策を( ̄^ ̄)」
全員が席に着いたところで、いーすんさんが声を上げる。
今日再び集まった理由は、今いーすんさんが言った通り。ただ手掛かりを探すんじゃなく、手掛かりがあるとしたらどこなのか、どうやったら見つけられるかの会議が目的。こうして実際に集まったのは、策が出たら早速それに取り掛かる為。
「あぁ。だが、思っていた以上に有益な情報が出てきていない。今日ここに来るまでに、何か見つけた者は?」
初めに口を開いたのはマジェコンヌさん。見回しながらのマジェコンヌさんの言葉に、全員が首を横に振る。
「ふむ、やはりそうか……」
「まぁ、情報も碌にないのに考える…っていうのも難しいわよね。策って言ったって、現状じゃ『何を探せばいいか分からない』レベルだし」
「けれど、それも想定していた範囲内。一先ずは考える…というか、話し合うだけ話し合ってみませんこと?」
「そーよ、マジェコンヌさんにノワールさん。やってみなきゃわからないでしょ?」
「そ、そうね。…ベールはともかく、まさかラムにまで言われるとは…」
「はは…これは少し恥ずかしいな……」
聞いてたわたし達からしても意外な相手から言葉を返されて、お二人は小さく肩を竦める。一方「ふふーん」と胸を張っていたラムちゃんは、隣のロムちゃんからいい子いい子されていて……二人のこういう光景は、いつ見ても和むなぁ…。
「…では、言い出した身でもありますし、まずはわたくしから宜しくて?」
「はい。お願いします、ベールさん(・ω・`)」
ずっと手を挙げたベールさんを皮切りに、それぞれ思い付いた案を言う。これは自分の案を採用してもらう為のプレゼンじゃなくて、とにかく少しでも良い案を生み出す為のブレストだから、わたしも書記をしつつ色々な意見を言ってみる。
その甲斐あって、案は沢山出てきた。本来の目的とは別だけど、「あ、そういう考え方もあるのか…」と、勉強になる部分もあった。でも……
(うぅ、ん…これは……)
一頻りアイデアが出尽くし、静かになったところで書いた(モニターに映し出す為打ち込んだ)案を見返してみたわたしは、正直思ってしまった。…どれも、あんまり期待は出来ないかもって。
「取り敢えず、意見は出ましたけど…」
「出ただけ、って感じね…」
そう感じたのはわたしだけじゃないみたいで、ユニちゃんとブランさんも浮かない顔を浮かべている。…こういう時、色んな分野の専門家さんがいれば、また違ったと思うけど…それが出来ないからこうなってる訳だし……。
「となるとやはり……」
「えぇ。ギョウカイ墓場の探索が、最も現実的な案ですわね」
だけど、期待の持てる案が一つもない訳じゃない。元々あった案ではあるけど、その一つが今ベールさんの言ったギョウカイ墓場探索で、時点が天界の探索。どっちもここまで確認していない場所だし、特殊な性質の場所(天界は場所っていうか世界だけど)でもあるから、そこに異常の発生原因が隠してあってもおかしくない。
ただでも、それはあくまで「確認してないから、あるかもしれない」ってだけで、根拠や考察あってのものじゃない。だから、何も見つからない可能性も…低くはない。
「じゃ、どうする?もう少しここで頭を捻ってみるか、それとも試しに行ってみるか」
「他の場所なら、気分転換を兼ねて一度行くって事もありですけど…気分転換感覚で行ける場所ではないですよね……」
幾ら何でもギョウカイ墓場は軽い気持ちで行ける場所じゃないから、行くなら準備もしなきゃいけない。場合によっては、墓場の探索で今日一日が終わる事も……ううん、それどころか一日じゃ終わらない事も十分あり得る。つまり…ここの判断も、ちゃんと考えてしなきゃ駄目って事。
「あぅ…考えること、ばっかり……」
「もー、なんでこんなにうまくすすまないのよ!次はこっち!…って目印が出てきてくれればいいのに〜…」
「最初の殊勝さはどこに行ったのラム…。残念だけど、今はとにかく考えて探すしかないわ。レベルがファイブな会社のゲームと違って、現実じゃ向かうべき場所への矢印なんて…………あ」
『……?』
と、そこで遂に気力が切れてしまったのか、ここまで何とか着いてきた(ちょっとだけど意見出していた)ロムちゃんとラムちゃんがべたーんと机に突っ伏してしまう。それを見たブランさんは、呆れつつラムちゃんの発言に言葉を返して……言い切る直前、不意に「あ」と声を上げた。…まるで、何かに気付いたかのように。
「…どうかしたのか?」
「……ひょっとしたら、あくまでひょっとしたらだけど…わたし、凄く単純な事に気付いてしまったかもしれないわ…」
かのように、じゃなくて、本当にブランさんは何か重大な発見をした様子。その言葉にわたし達は注目し、全員の視線を受けながらブランさんは言う。
「確認だけど…皆、異常が起きた時に広がっていった『歪み』の事は覚えてる?」
「ほぇ?うん…」
「あれが信次元に異常を広げた…というか、広がっていく異常が可視化されたものが、あの歪みだってわたしは思ってるんだけど…これは共通認識として扱っても大丈夫?」
「えぇ、大丈夫ですわ」
「だったら……皆の見た、感じた歪みの『来た方向』を纏め上げれば、発生源が分かるんじゃない…?」
『あ……』
確認という体で、二度の溜めを作った上でブランさんの言った、一つの可能性。それを聞いたわたし達は、揃ってブランさんが気付いた時と同じ言葉を口にしていた。だって…それは本当に、びっくりする程単純な事だったんだから。
「そ、っか…そう、ですよね…!あの歪みが全然関係ない所から広がったなんてそれこそおかしいですし、あり得ます!あり得ますよそれは!」
「しかも都合良く、あの時は皆それぞれの国に居たものね。四大陸の外でもある程度の方向は分かるし、もし四大陸の内のどこかなら……」
「全員の認識を束ねる事で、方向どころか地域の特定すら可能となるかもしれませんね…(`・ω・´)」
興奮気味のわたしや更に思案を進める皆さんの言葉を受けて、ふっ…とブランさんは笑う。そして、一気に期待を膨らませたわたし達は、早速歪みが来た方向を思い出す。
「え、えっと…こっち…じゃなくて…あ、あれ…?」
「お、おねえちゃん…おへやちがうから、わかんない…(おろおろ)」
「あぁ、確かに二人には少し難しいわね…ちょっと待って」
『おえかき…?』
「見取り図を書いているのよ。……出来た。二人共、あの時は部屋の中のどこにいて、どっちを向いてた?」
歪みの方角を思い出したところでわたしはコンピューター上で地図を開き、そこにあの時わたしがいた場所と、認識している方向を表示。その間にブランさんは見取り図を書き、それでロムちゃんラムちゃんに質問をしつつ方向を割り出す。そうして最後に、女神全員分の情報を打ち込んだ事で……わたし達は、息を呑む。
「……見えてきたな…」
モニターを見てぽつりと呟くマジェコンヌさん。そこには、マジェコンヌさんといーすんさんを除く七人分の情報が映し出されていて……その七つの「こっちから来た」という大体のラインは、ある地域にて集中していた。
「…どう、しますか?」
「ここであれば、取り敢えず行ってみる…が可能ですわね。警戒は必須ですけれど」
そこは、プラネテューヌの辺境の地。モンスターが生息している事以外は、これと言って特筆する事もない……強いて言うにしても、あの日わたしとお姉ちゃんが向かった場所とはそこそこ近いって程度の地域。
「よーし、じゃあ行ってみよー!」
「みよー…!(ぐっ)」
「だ、駄目だよ勢いで行こうとしちゃ…全員で行きますか?それとも……」
「まぁ、ここは二人か三人で行くのが無難でしょ。異常の発生源じゃなくて罠が仕掛けられてる可能性もあるし、発生源だったとしても防衛設備があるかもしれない。或いは私達が離れてる間に事態が急変…なんて事もあり得るんだから、調査に人員を割き過ぎるのは愚策だと思うわ」
「…え、と…うん!わたしもそーゆーことが言いたかったのよね!」
「ふぇっ!?そ、そうだったの…?…わたし、ぜんぜんそんなこと…気づいて、なかった…(しゅん)」
「わぁぁ!?ち、ちがうのロムちゃん!えっとえっと……うぅ、こっち来て……」
ノワールさんの冷静な判断を聞いて、見栄を張ったラムちゃんが同調。でも無垢なロムちゃんは「思考の面でラムちゃんに置いてかれた」と思ったのか落ち込んで、それにラムちゃんは大慌て。けど見栄を張った手前簡単には覆せないと思ったのか、暫く悩んで……それから部屋の隅にロムちゃんを呼んで、耳打ちで何かを伝えていた。…で、数秒後、ほっとしたようなロムちゃんと、焦ったぁ…って感じのラムちゃんが戻ってくる。
「……ごめんね、ほんとはわたしも気付いてなかったの。だから、わたしもロムちゃんと一緒だよ。…ってとこかしらね」
「あはは…うん、大体そんな感じだと思う…」
戻ってくる二人を見ながら、ユニちゃんが小声でそんな事を言ってくる。…わたしもロムちゃんみたいな反応したら、お姉ちゃんもラムちゃんみたいな事するのかなぁ…。
「こほん。それでは、誰が向かうかですが……(´-ω-`)」
その後、わたし達は調査に向かうメンバーを選抜。最初の基準は『万が一の事があったら』で、その要件からお姉ちゃんが不在のわたしと、妹のいないベールさんが外れて、最終的には強行突破に長けるブランさんと、この中で一番「距離を開けての攻撃」を得意とするユニちゃんが、浮かび上がった地域への調査に行く事となった。
「宜しくね、ユニ」
「はい。援護は任せて下さい。…って言っても、戦闘になるかどうかは分かりませんけど…」
「そうね。身構えるのも大事だけど、柔軟な対応が出来るような心構えもしておいた方がいいと思うわ」
早速準備に取り掛かる二人。でもわたし達だって二人の調査結果をただぼーっと待つ訳じゃないし、その間にやれる事はある。何より、これは考えたくない事だけど……備えておかなくちゃいけない。ユニちゃんとブランさんが、戻ってこない場合の事も。
「…………」
「…ちょっと、何固い顔してるのよ。まさか、アタシやブランさんが戻ってこなかったら…なんて事考えてるの?」
「うぇっ!?…も、もしや顔に出てた…?」
「この流れで固い顔してたら、誰だって想像つくわよ…」
そこで不意に軽く叩かれる肩。驚いて振り向くとそれはユニちゃんで、半ば呆れてるような表情をわたしに向けている。…うぅ、少なくとも固い顔はしてたんだ……。
「安心しなさいっての。万が一の事があっても距離が開いていれば離脱もし易い、って事でアタシは選ばれたんだし、ブランさんが防ぐ事に関してはお姉ちゃん達の中でも随一だって事はアンタもよく知ってるでしょ?」
「そ、それは知ってるし分かってるけど……って、あ、いや違うよ?そもそも心配してるとか不安とかじゃなくて、でも万が一の事は考える必要が…とか思ってたら、自然と顔が固くなっちゃっただけで……」
「はいはい、ならそういう事にしておいてあげるわ。…けど、まぁ……」
「……?」
「……ほんとに万が一の事があったら、ネプギアやお姉ちゃん達が来てくれるって信じて何とか持ち堪えるから。だから、本当に…本当にあくまで万が一、の場合だけど……その時は、頼むわよ?」
「……!も、勿論だよ!任せてユニちゃん!」
片目を閉じ、万が一って部分を強調しながら言ったユニちゃん。その言葉を、最後の「頼む」を聞いた瞬間、わたしは胸の中がぐっとなって、ユニちゃんの手を握りながら強く首肯。そしてわたしは、思うのだった。そうだよね。もし万が一の事があったら……その時は、わたし達が助けに行けばいいだけなんだから、って。
……因みに、これがユニちゃんからの気遣いの言葉だったって事に気付いたのは、それから数分位してからの事。うぅ、対等の友達にこんな気を遣わせちゃって、しかもそれにすぐ気付けないなんて…まだまだだなぁ、わたし……。
*
観測用の機材を受け取り、方向の再確認も済ませたわたしとユニは、教会の敷地内から飛び立った。向かう先は……勿論、浮かび上がった辺境の地域。
「そろそろ、例の地点に差し掛かるな」
「…はい」
進路上は勿論、周囲にも気を配りながら、わたし達は飛行中。ここまでは何も起こらず、まだ何も見えてきていないが…何か起こるとすれば、それはここから。
そこでふと、ユニの声音の変化を感じてわたしは首を回す。…緊張で固くなってる、って程じゃないみたいだが……。
「…ユニ、さっきも少し言ったが…わたし達の目的は戦う事じゃねぇし、戦う必要もねぇ。とにかく行ってみて、何かがあるかどうかの確認をする。それだけなんだからな」
「分かってます。仮に何かがあったとしても、観測器を設置するだけで、どうこうしようとしたりはしない…ですよね?」
「あぁ。流石にロムやラムと違って、ユニだと話が進み易いな」
「そ、それはまぁ…二人に比べれば、大人ですし……」
行う事の確認をした後、軽く肩を竦めて苦笑をすると、ユニも同じく肩を竦める。…まぁ、やるべき事は分かってるし、今のに肩を竦めて返せるなら、取り敢えずは大丈夫か。…ロムとラムも、成長する中で落ち着いてユニやネプギアのようになるのかね……って、余計な事を考えてる場合じゃねぇ。
「…じゃ、そろそろ距離開けとくぞ」
「あ、はい…!」
頭を振って意識を切り替えたわたしは、一言伝えてから加速。
距離を開けておくのは、予め前衛後衛に分かれる為。即座に戦闘に移れる状態を作っておくのが目的で……何か起こった時、わたし達が纏めてやられる事を回避する為でもある。
「…………」
「…………」
そこからは会話を交わす事もなく、神経を張り詰めて飛ぶわたし達。そうして遂に、『何かあるかもしれない』という地域に到達し……わたし達は、一度止まる。止まって、見回し…口を開く。
「…何も、ねぇな……」
「見る限り、至って普通…ですね…」
ぐるりと一周見回してみるが、広がっているのは普通の景色。空から見下ろす形だから、遮蔽物で見えていないだけって事もない。
(外れだった、って事か…?…いや、まだそう考えるのは早ぇな。地下にあるのかもしれねぇし、あの日から今日までで原因が移動したのかもしれねぇ。…問題は、それをどうやって確かめるかだが……)
得物のスコープを覗いているユニからも、何かあったという声はない。この場合…ってか何もない場合、それでも下手な事はせず帰還するって事になってはいるが……本当に何もないのか、そうじゃないのかはぱっと見だけじゃ分からない。だが後者の場合、下手な事は避けるべきだというジレンマが付き纏う。
「……少しずつ前進するぞ。ユニ、警戒は怠るなよ?」
「分かってます。…観測器の設置はどうしますか?観測器…っていうかただのカメラですけど、これなら広域を見られますし…」
「そうだな…よし。わたしはこのままゆっくり進む。ユニはわたしを追い抜かないようにしつつ、降下して観測器の設置を……」
安全を第一に考えるべきだが、安全を確保するのと安全に拘って何もしないのとは全く違う。そして、その場その場で最良の選択を考え判断するのが、指導者ってもの。その考えでわたしは指示を飛ばし、前進を始める。というか、指示をしながら進み始め……その判断をした、直後だった。
「な……ッ!?」
「…ブラン、さん……?」
よく分からない、分からないが何かの膜を通ったような感覚。それを感じた次の瞬間、わたしの視界の中にあるものが現れ……愕然とした。まさか、そんなものがあるなんて。まさか、今までそれに気付かなかったなんて、と。
「…どういう事だよ、こりゃ…どこぞの帝国の揚陸城が降下してきましたってか……?」
「え…?どういう事…って、何がですか…?」
「は…?どうもこうも、あれ以外のものなんざねぇだろ…?」
「へ?え?…何を、言ってるんですか…?」
「それは、こっちの台詞……って、待て…待てよ…?」
わたしは愕然として立ち止まる一方、ユニは降下を継続中。それどころか不可解そうな声を発していて、わたしはそれが不安になる。ユニは気付いていないのか。あんなものが、見えていないのか。だとしたら、それは何故だと。
…が、そこでわたしはわたしとユニとの距離に気付く。…もしや……。
「…ユニ、わたしの隣にまで来てくれるか?」
「あ、はい…それはいいですけ、ど……」
視界の端に『それ』を捉えたまま、わたしは下方のユニを呼ぶ。それを受けたユニは急上昇をかけ、数秒の内にわたしの側へ。その間、ユニは不思議そうな顔をしていたが……わたしの側まで来たところで、その表情も豹変する。
「え……?」
さっきのわたしと同じように声を上げ、目を見開くユニ。その反応は、やはりわたしの感覚がおかしくなっていた訳じゃないんだという何よりの証左。
その確信を得た事で、わたしはそれに向き直る。わたしとユニが、見据える先。そこにあったのは、ついさっきまで何もないように見えていたその空間には──巨大な黄金の塔が、悠然と聳え立っていた。
今回のパロディ解説
・かの賢王
Fateシリーズに登場するキャラの一人、ギルガメッシュ(キャスター)の事。目が覚めたら冥界ならぬ別次元にいた、であればイリゼが時々経験していますね。
・レベルがファイブな会社
株式会社レベルファイブの事。次に向かうべき場所(ストーリーにおける次の目的地)が矢印で表示されるのは、この会社で作られる作品でよく出るシステムですね。
・どこぞの帝国の揚陸城
アルドノア・ゼロに登場する国家、ヴァース帝国及びその軍が有する兵器(拠点)の事。因みに黄金の塔ですが…はい。原作要素だけど原作の展開じゃないパターンの一つです。
突然ですが、イリゼイラスト化計画第二弾として、オリジンハートのイラストを描いてみました!……所謂ラフ絵ですけどね!だから色とか全然分からないイラストですけどね!
…こほん。ともかくこれまで同様OAの人物紹介Ⅰに載せましたので、もし宜しければ見てみて下さい。そして、「あー、オリジンハートってこんな外見なんだ(主にプロセッサ)」とでも思って頂けたら幸いです。