超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第二十六話 元凶の顕現

 準備をして、ちゃんと休んで、次の日の朝を迎えた。焦らないで、最終確認をして、わたし達はプラネタワーから飛び立った。──黄金の塔の、調査をする為に。

 

「こちらネプギア。ポイントに到着しました」

「了解しましたわ。何か異常はありまして?」

「問題ねぇ。進路上の障害もゼロだ」

 

 待機ポイントに到着したわたしは、今回の陣形において後衛を担当するユニちゃん達にインカムで連絡。返ってきた通信にはブランさんが返答して、実地調査担当のラムちゃん、ノワールさん、ブランさんは塔へと向かう。

 

(…うん、全方位どこにも異常はない)

 

 空から周囲を見回してみるけど、空陸どこもいつも通り。今も殆どの人は眠り続けているのに、環境だけはどこまでも普通で……っていけないいけない。環境を妬んだってしょうがないでしょわたし…。

 

「お姉ちゃん、塔の周囲はどう?」

「そっちも問題ないわね。まだ少し距離があるから、断言までは出来ないけど」

 

 幾ら女神でも無限の視力を持ってる訳じゃないから、塔周辺の情報はラムちゃん達頼み。それはつまり、余程大規模の何かでもない限り、わたし達に異常を察知する術なんてない訳だから、前に出るのとは違う意味で緊張する。

 

「とうちゃーっく!みんな、とうのところに着いたわよ!」

「うん、きこえてるよラムちゃん」

 

 そうしてラムちゃん達が塔の周辺に到着し、その連絡が入ってくる。

 ここまでわたし達が感じていたのは、何か起こるかもしれないって緊張。でもここからは、それにもう一つの緊張が加わる。調査によって、何かが判明するかもしれないっていう緊張が。

 

「…ラム、一応言っておくが、興味本位で触ったりすんなよ?」

「もー、おねえちゃんってばしんぱいしすぎ。わたしだって、今はふざけちゃいけない時だってことくらいわかってるもーん」

「あら、それが分かってるならもうラムはネプテューヌよりしっかりしてる訳ね」

「え、そう?ノワールさんそう思う?えへへ〜」

「…………」

 

 まず行うのは機材の設置。最初に設置した物はどれも外見以上の情報を取得する事が出来なかったけど、今回は調査をするノワールさん達のバイタルチェックも兼ねている。…で、その最中お姉ちゃんがいいように言われてて、わたしはフォローしようと思ったけど……ごめんねお姉ちゃん…普段が普段だから、わたし何も言えなかったよ…。

 

「…しっかし、ほんとビームを反射したり騎士王の斬撃を何度も防ぎそうな位金ピカね。…貴女のところの機体もこれ位光ってなかった?」

「あぁ、十式か?あのコーティング、思った以上に対魔力性能が低かったんだよな…」

「…………(わくわく)」

「…ネプギア、アンタ今話がMG方面に発展する事を期待してるでしょ」

「……!?ゆ、ユニちゃん何故それを!?」

「分かるわよ…しかもロムみたいになってたし……」

「…ネプギアちゃん、まねっこ…?(きょとん)」

「あ、あはは…意識してやったんじゃないんだけどね……」

 

 まさかインカム越しの読心をされて驚くわたし。…べ、別にわたしも皆も気を抜いてる訳じゃないんですよ?……こほん。

 いーすんさんの努力のおかげで、塔の表面部分の素材は今日の朝の時点で判明している。それはやはりというかなんというか、シェアエナジーで作られているらしい。でも、それだけ分かっても仕方ないからこそ…今から、その正体を判明させる為の調査が始まる。

 

「…さて、んじゃあ調査を始めるぞ。ラム、警戒を頼む」

「まかせてっ!」

「皆も、何かあったら適宜対応して頂戴」

 

 設置を終えたノワールさん達の声で、わたし達の気持ちも一層引き締まる。…ここからは、何があるか分からない。想像を絶する真実が明らかになるかもしれないし、逆に全く何も分からないかもしれないし、調査だって順調に進む保証はない。

 けれど、そもそも未来は分からないもの。分からないけど、その未来へ進む為にするのが、行動ってもの。だからやってみなくちゃって思う訳だし、きっとそれは皆も同じ。なら…今更躊躇う事なんてないよね。

…そう思って、そんな思いを持って。わたしは次なる通信を待つ。…ううん、次なる通信を待とうとした……その時だった。

 

「え……?」

「……?何かあったの、ネプギ…え……?」

 

──それに、最初に気付いたのはわたしだった。あまりにも突然過ぎた『それ』にわたしは声を上げて、続けてラムちゃんもわたしと同じ声を発する。

 

『な……っ!?』

「あれは…ノワール、ブラン、そちらの上空に現れたのは何ですの!?」

「わ、分からないわ!でも、これは……!」

 

 ノワールさんとブランさんも唖然とする中、ベールさんからも通信がくる。それはつまり、わたしよりずっと後ろのベールさん達にも、それが見えているって事。

 それが、正確な表現なのかは分からない。けれど、言葉にするなら…それは、『穴』だった。それも、綺麗な円形じゃなく、力技で破ったような歪な穴。そして、その穴から飛来するようにして……二体の巨人が、現れる。

 

「……確認だ、ベール。そっちに同じ現象は起きてねぇな…?」

「え、えぇ…異常無しですわ……」

「だったらこいつ等に全員で当たるぞ。気配からして、こいつ等は恐らく……、……ッ!」

 

 聞こえてくるのはブランさんの、表面的には落ち着いた…けれどその中に強い緊迫感を感じさせる、低い声。

 それだけでも、ブランさんが巨人から感じているのはどんな気配なのかが伝わってくる。だけど、それを聞いたわたし達に困惑する時間や、迷う時間は一切なかった。ブランさんがそう言った次の瞬間……ううん、言い切るよりも早く、インカム越しに激しい爆音が聞こえてきた事で。

 

「わぁぁっ!?」

「……!?ら、ラムちゃんだいじょうぶ…!?」

「けほけほ…だ、だいじょーぶ…!」

「ちっ、やってくれたわね…ッ!」

 

 インカムから聞こえてくる音だけじゃ、何が起こったか分からない。でもわたしには見えていた。二体の巨人が掲げた掌から、大出力のビームが放たれるのを。

 翼を広げ、力を込め、わたしは前進と同時に急加速。向かう先は…勿論、一瞬で戦場へと変わった塔の前。

 

(一体、何が……ッ!)

 

 何が起こったのかは聞こえてるし、見えてもいる。けど何故起こったのか、どうして起こったのかがさっぱり分からない。分からないけど……やるしか、ない…ッ!

 そう思って突進をかけたわたしは、巨人を側面から叩く形でラムちゃん達と合流。少し遅れてユニちゃん達も合流して……わたし達は、出現した二体の巨人の迎撃を開始した。

 

 

 

 

 MGやパンツァーシリーズのものとはスケールの違うビームに、艦船すらも直撃させれば致命傷を与えられるであろう巨大な武器に、全身から次々と放たれるエネルギー刃。…突如現れた二体の巨人は、戦術、或いは戦略級の拠点攻略兵器とでも言うべき存在だった。

 

「ユニちゃん、ラムちゃん、わたしが引き付けるから攻撃お願いッ!」

「うんっ!」

「えぇ、ネプギアの支援は任せたわよロム!」

「うん…!」

 

 M.P.B.Lで光弾を連射しながら、巨人の周囲を飛び回る。もう何十発も光弾を当ててはいるけど、多分ダメージは入ってない。

 

「ネプギアちゃん…!」

「ありがと、ロムちゃん!」

 

 背後まで回ったところで、わたしはM.P.B.Lにエネルギーをチャージ。ロムちゃんが張ってくれた障壁のおかげで回避の必要がなくなったわたしは、一気にシェアエナジーを込めてビームを照射。けれど放ったビームは振り向いた巨人の武器に阻まれ、光の粒子が四散する。

 現れた巨人は二体。その内緑の巨人を守護女神のお三人が、白の巨人をわたし達女神候補生が迎撃中。

 

「はっ、残念だけどそっちは陽動よッ!」

「ぶっとばしてあげるわッ!」

 

 自ら背を向けた巨人の背中へと、ユニちゃんの撃ち込む光芒とラムちゃんが放つ氷塊が飛来。必殺の意思が込められた二人の攻撃は射線上のエネルギー刃を弾いて、唸りを上げながら巨人へ直撃。無防備な背中に同時攻撃を受けた巨人は一瞬ぐらついて…すぐに反転。棒状の武器を振り抜いて、もう一撃放とうとしていた二人を打ち払う。

 

「ちっ、鬱陶しい迎撃ね…ッ!」

「大きい分、的には苦労しませんけど……!」

「普段通りなら、もうちょい強行突破も出来るんだけど…なッ!」

 

 旋回しながらちらりと視線を移してみれば、ノワールさん達も緑の巨人の周りを飛び回っている。わたし達よりも早く、鋭く飛べるノワールさん達は、わたし達以上に巨人を翻弄しているけど…わたし達と違って全員が近接攻撃を主体にしている分、攻撃を当てる事へ苦労しているのが伝わってくる。

 だけど、わたし達だって致命傷は与えられていない。さっきのユニちゃんとラムちゃんの攻撃は、流石にダメージが入ってると思うけれど、巨人の動きに殆ど鈍りは感じられない。それはきっと…まだまだ、巨人には余裕があるって事。

 

「…ユニちゃん、この巨人ってやっぱり……」

「かもしれないわね。けど、今は…!」

「うん、分かってる…!」

 

 一度ユニちゃんと合流して、少しだけ言葉を交わして、すぐに散開。候補生の中じゃ一番ロングレンジでの決定打に欠けるわたしが引き続き囮を行って、少しずつでも着実に攻撃を当てていく。

 タイミングからして、この巨人はわたし達の迎撃の為に出てきたんだと思う。言葉が通じない…というかそもそも喋りすらしないから、断言は出来ないけども、偶々だったとしたらあまりにもタイミングが良過ぎるし……何よりどうも、巨人は塔への攻撃を避けている節があるから。

 

「ねぇ!ちょっと思ったんだけど、これってとうを盾にすればあんぜんなんじゃない!?」

「あっ…たしかに、そうかも…!」

「止めときなさい!もし偶然でも塔に攻撃が当たって、それで塔が崩れたら洒落にならないわよ!」

 

 避けて、牽制して、仕掛けて、離れて。相手はこれまで戦った事のない敵だけど、わたし達は負けていない。国民が…わたし達を信仰してくれる人達が昏睡してしまっているせいで、いつも程の力は出せていないけど、それでもわたし達は真正面から戦えている。

 だけど、それだけじゃ足りない。負けないだけじゃなくて……勝てなきゃ意味がない。突破出来なきゃ、前に進めない。

 

(攻撃は当たってる。なのに動きが変わらないのは、恐らく奥にまで届いてないから。だったら……)

 

 薙ぎ払うように照射された光芒を避けて、身体を捻りながらビームの斬撃。飛ばしたそれでエネルギー刃の発射部位の一つを壊して、わたしは叫ぶ。

 

「皆!一斉攻撃だよッ!」

「だよって…いや言いたい事は分かるけど…ッ!」

「ネプギアってば、きゅーなのよ!」

 

 そう言いながらわたしは狙いは定めて集中砲火。ある程度一発の威力を確保したセミオートで、回避と攻撃を同時に行う。

 確かにラムちゃんの言う通り、皆からすればそれは急過ぎる提案。だけどわたしが信じていた通り、そう言いつつも即座に合わせてくれるって、わたしとユニちゃんの射撃が、ロムちゃんとラムちゃんの魔法が次々と巨人の胴体へ殺到。巨人は結構スピードもあるから避けようとするけど…わたし達の数十倍のサイズを持つ巨人が、殺到する遠距離攻撃を全て避け切れる訳がない。

 だから当たっていく。当たって、弾かれて、それでも射撃と魔法が装甲を叩いて、その内わたしの目には見えてくる。装甲がひしゃげて、歪んで、そこから亀裂が走っていくのを。

 

(いける!これなら……!)

 

 あの巨人が生命なのかロボットなのかは分からないけど、胴体へ諸にわたし達の集中砲火を受ければ確実に大きなダメージは免れない筈。そして動きが鈍れば、そこから一気に畳み掛ける事もきっと出来る。

 だけど、次の瞬間、装甲を完全に破壊するその寸前に、わたし達の攻撃は全て阻まれる。……展開した、巨人の武器によって。

 

『……!?鉄扇…!?』

『てっけんさん…?』

「鉄拳さんじゃなくて鉄扇……うわわっ!?」

 

 棍棒か何かだと思っていたそれは、巨大な扇。まさかそんな武器だったとは思わなかったし、しかも巨人はその鉄扇を投げ付けてくる。

 とはいえ、巨大な武器でも単なる単発投擲に当たるわたし達じゃない。だから回避自体は出来たけど…その投擲によって、後一歩だったチャンスが潰えてしまう。

 

「ネプギアちゃん…次は、どうする…?」

「え、と…もう一度、集中砲火を……」

「多分、もうそれは警戒されてると思うわよ?それでもやる?」

「それは……」

 

 さっき提案した事もあって、それぞれ回避しながらも皆の視線がわたしに集まる。

 ユニちゃんの言う通り、装甲を抜きかけた策を警戒されない訳がない。でも巨人の防御を突破するなら、集中砲火をかけるしかない。だからこそ、さっきのチャンスは絶対落としちゃいけなかったのに……

 

(…いや、ある。確かに、遠距離から安全に攻めるなら集中砲火をかけるしかないけど…わたし達も、もっと一気に攻める事をすれば……)

 

 わたしが視界の端で捉えているのは、今も巨人を翻弄しているお三人の姿。その場その場で瞬時に攻撃するか陽動するかを切り替えて、常に迎撃の範囲に留まる事で逆に巨人のスピードを殺して、何度もすれすれの回避をしながら装甲の隙間を斬りつけていく、ノワールさん達の姿。

 自分達の戦い方が間違ってるとは思わない。得意とする距離も、連携の仕方もノワールさん達とわたし達とは違うんだから、同じ事をすればいいって事でもない。

 でも、参考になる事もある。こうすればきっと…という策が、わたしの中には生まれている。だけどそれは、さっきよりもずっとリスキーな作戦で……

 

 

──だけど、危ないってだけで臆するわたしはもういない。わたし達候補生は…それだけで諦めるような女神じゃない。

 

「…一つ、策があるの。これは、ロムちゃんとラムちゃんにとって危険な策だけど…聞いてくれる?」

「へぇ…はなしてみなさいよ、ネプギア」

「…おしえて、ネプギアちゃん」

 

 インカム越しにかける言葉。返ってくるのは、二人の声。ラムちゃんは勿論、ロムちゃんもその声には静かな落ち着きがあって……だからわたしも、ぼかしたりせず正直に話す。わたしの思い付いた、一気に勝負を決める策を。そして、それを聞き終わった時…最初に口を開いたのはユニちゃん。

 

「二人にとって、って…それ、アンタも十分危険でしょうが。それなら、アタシも……」

「ううん、ユニちゃんは狙撃に集中して。確かに、わたしもちょっと危険だけど…一番難しいのは、ユニちゃんだから」

「…やれるのね?」

「勿論」

「…OK、乗ったわ!」

 

 言うが早いかユニちゃんは一発照射ビームを撃ち込んで、それから大きく後方へ後退。その姿をわたしは見送って、それからロムちゃんとラムちゃんの方へ視線を移す。

 ユニちゃんはわたしも危険だって言ったけど…やっぱり一番危ないのは、二人だと思う。だから、二人が嫌だと思うなら、この作戦は実行しない。わたし達は対等な立場で、巨人は嫌々やって倒せるような相手でもないから。

…でもそれは、要らぬ心配だった。もし二人が嫌ならなんて、考えるまでもない事だった。だって、わたしが目を向けた時…ロムちゃんはこくりと一つ頷いて、ラムは勝気な笑顔でサムズアップして……二人共何も言わず、表情と動きだけで大丈夫だって伝えてくれたんだから。それを見れば、心配する必要はないって、誰だって分かる。

 

(三人共乗ってくれた。わたしの策に賭けてくれた。なら、わたしは…発案者として、一番手として、その思いに応えてみせる…!)

 

 高く上空へと舞い上がって、後方宙返りしながら深呼吸を一つ。翼の先まで意識を行き渡らせて、全身に力を込めて……視界の中心に白の巨人が入った瞬間、わたしは空を蹴るようにして突進開始。

 

「はぁぁぁぁッ!」

 

 ロールをかけながら鋭く降下。向かう先は勿論巨人。光芒は避け、エネルギー刃は斬り払い、猛然と巨人へ向かって突き進む。

 当然、近付けば近付く程迎撃の密度は上がっていく。でも速度は緩めない。ギリギリまで近付いて、ギリギリまで迎撃の中を突き進んで、M.P.B.Lの刃が届く寸前で急旋回。今度は一気に距離を空けて…と見せかけて、再び反転からの接近をかける。

 

「まだ、まだぁ…ッ!」

 

 突っ込んで、退いて、また突っ込んで、また退いて。何度も何度も近付き離れる。攻撃しない一撃離脱を、角度を変えて何度も続ける。ある程度続けた後は巨人の周囲を離れず飛び回る形に切り替えて、隙あらばエネルギー刃の発射部位に光弾を撃ち込む。

 紙一重の機動。すれすれの回避。一瞬遅れれば直撃していたって攻撃が何度もあって、回避し切れず掠ってしまった攻撃もあって、首にも一発当たりかけた。…だけど退けない。下がれない。わたしの目的を、果たす為に。……そんな中で、聞こえた、一つの声。

 

「ふふっ……もう一踏ん張りですわよ、ネプギアちゃん」

 

 その声が聞こえた瞬間、巨人越しにわたしには見えた。圧倒的な速度で迎撃を寄せ付けないベールさんの動きが。縦横無尽としか言いようのない動きで巧みに回避するノワールさんの機動が。一切の無駄がない体捌きで次々と弾くブランさんの挙動が。…わたしにとって憧れの、守護女神の姿が。

 

(……っ…やっぱり、格好良いなぁ…!)

 

 ベールさん達は、わたし達の戦いが見えているのか。わたしの策を見ただけで理解して、だから今わたしに声をかけてくれたのか。…そうだとしたら、本当に…本当に、格好良い。…でも、だからこそ……

 

「わたし、だって……ッ!」

 

 進路の先に迫るエネルギー刃を切り裂いて、攻撃と攻撃の隙間を縫うように飛んで、わたしは巨人に迫り続ける。当てられそうで当てられない…そんな状態を、維持し続ける。技術や速度で劣っていても、守護女神のお三人程華麗には飛べなくても、わたしなりに出来る事があるから。他でもないわたしが、出来るって思ったんだから。そして、遂に……わたしの耳へ、凛々しく頼もしい声が届く。

 

「──ネプギアッ!」

「……っ!」

 

 その声が聞こえた瞬間、わたしは弾かれるように巨人の側から離脱。巨人の方を向きながら後ろに飛んで、エネルギー刃を斬り払う。

 これで、わたしの最初の目的は完遂。周囲を飛び回って、可能な限り発射部位を潰して、巨人の意識を『引き付ける』という狙いを達成。だから……ここからが、わたし達の放つ本体の攻撃。

 

「狩り飛ばしてあげるわッ!」

 

 最初の一撃として放たれる、ユニちゃんの狙撃。空中から電磁投射によって撃ち出された弾頭は凄まじい速度で巨人に飛来し、回避行動すらも許さず頭部へ直撃。次の瞬間弾頭は炸裂して、そのエネルギーで巨人を大きくよろめかせる。

 

「今よネプギアッ!」

「うんッ!」

 

 続けざまに放たれる、高密度の光芒。それ等はそれぞれが別の部位を正確に捉えて、立て直そうとする巨人へ追い打ち。

 それと同時に、わたしも巨人へ再突撃。初撃で視界を奪われた巨人の迎撃はさっきまでよりも甘くて、一気にわたしは胴体へと肉薄。でもわたしが行うのは、攻撃であって攻撃じゃない。

 

「てぇええええぇいッ!」

 

 勢いそのままに突っ込んだわたしは、M.P.B.Lを胸部装甲の隙間に突き刺し、力任せに装甲の一つを引っぺがす。更にそこからわたしは別の装甲に片膝立ちで接触し、左手で端を掴んで隣の装甲を無理矢理剥ぎ取る。

 女神としてはちょっと…いや、かなり荒々しい装甲の破壊。引っぺがした装甲の下から出てきたのは、生物としか思えない筋肉。それに一瞬、わたしは息を呑んだけど……背後に強い力を感じて、わたしはそこから素早く飛び退く。

 

「ロムちゃん!ラムちゃん!後は…ッ!」

「まっかせなさい、ネプギア!」

「まかせて、ネプギアちゃん…!」

 

 離脱したわたしとすれ違う形で、ロムちゃんとラムちゃんが肉薄。すれ違う時点で二人は杖を振り被っていて、その先端に輝くのは膨大な魔力が込められた光。

 そうして二人は斜めに交差させる形で、振り被った杖を装甲の『穴』に。ユニちゃんに姿勢を崩されて、わたしの下がりながらの射撃で迎撃も邪魔された巨人に、二人を追い払う術なんかない。

 

「いくよロムちゃん!せーのっ!」

『ジェネラエクスプロージョンッ!』

 

 二本の杖が振り抜かれると同時に、周囲に広がる強い閃光。そして次の瞬間……割れんばかりの音と共に、直視出来ない程の爆発が巻き起こる。

 ロムちゃんラムちゃんが放ったのは、爆裂魔法。それも恐らくは、高位の爆裂。それをゼロ距離で、しかも装甲のなくなった部位に打ち込まれた巨人の身体は、爆裂と同時に全身から魔力の光が漏れて、超巨大な武器で叩かれたかのように大きく躍動。あっという間に胴体全てが爆裂に飲まれ、装甲が弾け飛び……真っ直ぐ後ろへ、倒れ込む。

 

「どーよッ!」

「どーよ…!(びしっ)」

 

 爆炎と共に倒れる巨人へ向けて、自信満々の声で指差す二人。地響きを立てながら倒れた巨人は、その衝撃からかぴくりと身体を動かして……けれど倒れて以降の巨人の動きは、ほんとにそれだけ。わたし達が警戒する中、爆煙だけが巨人の身体から立ち登り……その身体も、光の粒子となって消え始める。

 

「…倒せた、の……?」

「…恐らく、ね……」

 

 モンスターや犯罪神の消滅にも似た光が空へと昇るのが見え始めたところで、わたしはぽつりと一言呟く。そうして数十秒後、本格的に消え始めたところで…わたし達は、確信した。巨人を、正体不明のこの敵を、何とか倒す事が出来たんだって。

 

「はふぅ、つかれた……」

「しぶとかったわね…って、あ!おねえちゃんたちは!?」

 

 撃破を確信した事でほっと一息のわたし達は、張り詰めていた力も抜く。

…と、そこで声を上げたのはラムちゃん。わたし達も「そうだ…!」と思って、皆揃って視線を横へ。もしまだ戦ってる途中なら、と思っていたけど……わたし達の戦っていた巨人と同じように、緑の巨人も地面に倒れていた。…うつ伏せで、首と身体が別々となった緑の巨人が。

 

「お疲れさん。もう少し早く倒せていりゃ、そっちの手助けにも行けたんだが……」

「い、いえ。…けど、これ…一体どんな、倒し方を…?」

「そりゃ、三人で一気に肉薄して、」

「わたくしが顎を突き上げて、」

「わたしとノワールで首を斬り裂いたんだ」

「……く、くびちょんぱ…(はわわ)」

「え、えげつない倒し方するね、お姉ちゃん達も……」

「いや、装甲引っぺがしてゼロ距離爆破をかけた貴女達も相当エグいでしょ……」

 

 大剣と戦斧で首を刎ねるなんて中々恐ろしい倒し方だと思うけど…言われてみれば確かに、わたし達の倒し方も結構エグい。…でもまあ、仕方ないよね。それ位しなきゃいけない程巨人は強くて、わたし達も普段程の力を出せなかったんだから。

 

(…でも、本当に何だったんだろう……)

 

 兎にも角にも巨人は倒せた。これは喜ばしいし、倒せて良かったとも思ってる。…だけど、結局この巨人が何だったのかは分かってないし、今更調べる術もない。

 これが、塔を調べる中で分かるならいい。でももし分からなかったら…もしもこれが今起きてる異常とは別の存在から仕向けられたもので、こっちにも今後は対応しなきゃならないとしたら…そんな不安がどうしても過る。根拠もなくマイナス思考したって仕方がないとは分かっているけど、その思いの中わたしは消えていく白の巨人、それにレイピアらしき武器を携えた緑の巨人をちらりと見て……

 

 

 

 

 

 

「──お見事。数で有利だったとはいえ、信仰による恩恵がほぼない中で二体同時に完全勝利するとは。少々予想外だよ」

 

──その瞬間、背後の上空から拍手と共に声が聞こえた。…それはまるで、いつかのように。

 

『……っ!?』

「誰!?…って、貴女は……」

 

 振り向いたわたし達の目に飛び込んできたのは…巨人。倒れている二体とは違う、青と黄色が目に付く巨人。

 更には、さっきと同じような穴が一つ。それだけでもやっと倒せたと思っていたわたし達にはどうしようもない程驚きだったけど…そこから更に、わたしは驚く。その巨人の肩に乗った、一人の少女の姿を見て。

 

「…うずめ、さん……?」

「やぁ、ぎあっち。久し振り…って程でもないかな」

 

 わたしと目の合ったその人は、小さく笑ってわたしへ右手を振ってくる。…間違いない。あの人は…あの日お姉ちゃんと一緒に会った、うずめさんだ……。

 

「え…だ、誰よネプギア……」

「えっと…前に一度会った人で……」

「知り合いって事?…って待った、だったらなんでそいつが巨人の肩に…!」

 

 怪訝そうな顔で見てくるユニちゃんに、わたしは戸惑いながら返答。その間、うずめさんはずっと穏やかな笑みを浮かべていて……ユニちゃんがキッと鋭い視線を向けた瞬間、浮かべた笑みを絶やさずに言う。

 

「それは勿論、巨人を…ダークメガミを仕向けたのも、この塔を設置したのも、今信次元に起きている異常も……全て、オレが元凶だからさ」

『……──ッ!?』

 

 驚愕する。戦慄する。状況的には、その可能性も想像出来る範囲ではあったけど……それでも、愕然とする気持ちを抑えられない。…目の前に、これだけの事を引き起こした元凶がいて、しかもそれを自白したんだから。

 戦慄した次の瞬間、わたし達は全員が臨戦態勢に。こんな事をした、こんな酷い事をされた怒りがわたし達の中で膨れ上がり…けれどうずめさんは、仕掛けるより早く両手を挙げる。

 

「おっと、今日は戦うつもりで来たんじゃないんだ。だから武器を納めてくれないかな?」

「誰がテメェの言葉を信じるかよッ!」

「ふむ…それはその通りだね。けど、いいのかい?今戦うのは、君達にとっても得策ではないだろう?」

『……っ…』

 

 一見穏和な、でも底知れない何かを感じさせるうずめさんの言葉に、わたし達は踏み留まる。

 手負い…とまでは言わないけど、今のわたし達は疲労している。加えてうずめさんが従えているあの巨人は、気配からしてさっき倒した二体とは別格。具体的にどれ程強いかは分からないけど……返り討ちになる可能性は、否定出来ない。

 

「…うずめさん…何が、何が目的なんですか…!?どうして、こんな事を……!」

「何故か、ね…それに対しては、一先ず試す為…と言っておこうかな」

「試す…?何をですの……?」

「それはまだ答えられないよ。物語の真相は、後半になってから分かるものだろう?」

「…舐めた事言ってくれるじゃない…私達をおちょくってる訳?」

「まさか。今日君達の前に現れたのはただの挨拶で…でも、そうだね。早速オレの想像を超えた君達への賛辞として、一つ教えてあげるよ。……その塔は、楔だ。それを破壊すれば信次元の異常は緩和されるし、三つの次元全ての楔を破壊すれば、次元同士の衝突もなくなる。…まぁ、壊したからってすぐに全ての人が目覚める訳じゃないけどね」

 

 そう言って、賛辞という名の意図の読めない言葉を送って、うずめさんと巨人は空へと…空いたままの穴へと向かう。反射的にわたし達はその後を追うけど……間違いなく、うずめさんの離脱には間に合わない。

 

「ふふ…君達は最初の障害を突破した。けれどまだ、最初の障害を突破したに過ぎないんだ。…だから、もう暫くは眺めさせてもらうよ。君達の…当代の女神と人々の、間違った選択の先にある未来(いま)の在り方に、一体どれだけの価値があるかを…ね」

 

 去り際に聞こえたのはそんな言葉。その言葉が終わると同時に、巨人の足先が穴を通り……出現していた穴も消滅。より正確に言えば、穴も少し前から消え始めていて、巨人が通り過ぎるのと同時に完全消滅した…って感じなんだけど、今そんな事はどうでもいい。

 突如現れた巨人に、その巨人を従えるうずめさんに、うずめさんの発した幾つもの言葉。それを前に、その現実を前に……その時のわたしは、どうすればいいか分からなかった。




今回のパロディ解説

・ビームを反射したり
機動戦士ガンダムSEED destinyに登場する装甲の一つ、ヤタノカガミの事。あれただ反射してるんじゃなく、電子制御で任意の方向に反射出来るらしいですね。

・騎士王の斬撃を何度も防ぎそう
Fateシリーズに登場するキャラの一人、ギルガメッシュの装備する鎧の事。あの鎧、名前がないんですよね。まぁ、英雄王の宝具は大半が名前設定されてませんが。

・「狩り飛ばしてあげるわッ!」
ダンボール戦機シリーズに登場するキャラの一人、青島カズヤの台詞の一つのパロディ。漫画版におけるただの台詞の一つなので、伝わり辛いかなぁ…とは思います。
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