超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
「…で、その後改めて調査をしてみて、うずめさんが言う通り…あの塔が異常を引き起こす『楔』のようなものだって事が分かったの。それに、わたし達女神の接触を感知するセンサー的なものが内蔵されていた事も、ね」
調査結果を最後に言って、ネプギアはさっき聞けなかった話を締め括る。
今、わたし達は施設の中を見回り中。最初は、休憩に使ってる部屋に行く予定だったけど…先に崩れそうな場所がないか確認した方がいいよねって事で、ぐるっと一周する事になった。
「…そ、っか…うずめが、ダークメガミの……」
「…ショック、だよね…」
「うん…」
誰にでも優しいネプギアが姿を見た瞬間に敵意を露わにして、冗談なんて微塵も感じられない声で「うずめが元凶だ」…だなんて言った訳だから、覚悟はしていたけど…やっぱり、あの時仲良く話せたうずめが実は元凶だなんて思うと、わたしだっていつもの元気じゃいられない。
それに、気になる事も沢山ある。このわたしが、愉快さを一切出せない位には。
「…けど、うずめの言った事が真実なら、信次元の状態は良い方向に動き出してる…って事でもあるんだよね?」
「それは…うん。壊した後すぐ皆が目覚めた…って訳じゃなくて、今日の時点じゃまだ殆どの人は昏睡したままだけど、それでも……」
「よし。取り敢えずこっちの方はほぼ問題なさそうだな」
だけど、後ろ向きな思考なんてわたしらしくない。そーゆーのは他の人に任せて、わたしはポジティブシンキングでいかなきゃね!
……って訳じゃないけど、ショックな事があったとしても、前より前に進んでいる事は事実。…前とか事とか色々被ってるけど…わたしは気にしないもーん!
とかなんとか思ってたところで、前にいたうずめがぱんっと軽く手を叩く。そっか、丁度ここで一周だもんね。
「不幸中の幸い、だね。…いや、狙われたのは不運が原因ではない以上、この表現は正しくないか……」
「いやまぁそうだが…細かいなぁ、海男は…」
「はは、自覚はあるよ。けれど細かい事が気になってしまうのが、オレの悪い癖でね」
「あー、知ってるよ。けど、やっぱちっちゃい事は気にするなって位の方が男らしいと俺は思うんだよな。そこんところどーよウィード」
「え、俺?うーん…臨機応変じゃ駄目?」
「えー」
「えーって……」
前でも二人と一匹がわちゃわちゃと会話中。そして隣を見てみれば、まだ慣れてないからかネプギアがなんと言ったらいいのか分からない…って感じの表情に。…ロムちゃんラムちゃんが海男を見たら、どんな反応するかなぁ…面白がるかなぁ……。
「…こほん。で、この後は……」
「取り敢えずぎあっちと自己紹介だな。それもせずに色々話すってのも変だしよ」
「だな。…ところで、さっきから姿が見えないイリゼは……」
「あ…っと、うん。イリゼの事もちゃんと説明するよ」
このやり取りを経て、わたし達は例の部屋へ。うーん、やっぱここはわたしが仕切った方がいいかな。
「こほん、それじゃあ自己紹介を始めよー!でも読者の皆からすれば全員知ってる訳だから、あんまり長いのはNGだよっ!」
「お、おう…そこも気にするんだな、ネプテューヌは……」
「もっちろん!じゃ、最初はネプギアいく?」
「わたし?…えっと、皆さんがいいならわたしも構わないけど……」
特に深い理由はないけど、まずネプギアを指名するわたし。皆からの異論もなかったから、ネプギアはすっと立ち上がる。
「…こほん。わたしはネプギアっていいます。プラネテューヌの女神候補生で…もう気付いているかもしれませんけど、わたしも信次元からやって来ました」
「あ、やっぱそうなんだな。道理でねぷっちと仲が良い訳だぜ」
「女神候補生…と、言うと?」
「言葉通り、女神の候補生って事です。でも、ここで言う女神っていうのは『守護女神』の事で、別に女神じゃない訳じゃないですよ?」
顎にヒレを当てた海男の質問に、ネプギアが回答。…っていうか…女神候補生について訊いたって事は、この次元に女神候補生の制度はないって事なのかな?確かに、信次元でも常に女神候補生がいる訳じゃないらしいし、現にネプギア達が生まれたのもわたしが記憶喪失になった後だけど…。
「候補生、か…。…あのさ、名前と言い見た目と言い、もしやネプギアって……」
「そう!わたしとネプギアは仲良し姉妹なのさっ!」
「お、おぅ…仲良しって自分で言うのな…。でもやっぱそうなんだな。しっかり者の姉って感じあるし」
「そうだね。お姉さんがしっかりしてる分、ねぷっちは弾けている…って事なのかな」
「む…しつれーな。お姉ちゃんはわたしの方だよ?」
『え?』
フェイスウィンドウ表示だとどっちがどっちか分からなくなる事に定評のあるわたしとネプギアだから、似てるって思われたり姉妹だとすぐに見抜かれたりするのは別に驚きじゃないし、それが嫌だと思った事なんて一度もない。…けど、けど…ほんとなんで初対面の人はわたしの方が妹だと思うのかなぁ!もーっ!……まぁ、思い当たる節はあるけども!
「……え、っと…マジ…?」
「そうですよ?お姉ちゃんはお姉ちゃんで、わたしは妹です」
「そ、そういやぎあっち、ねぷっちの事をお姉ちゃんって言ってたな…」
「言ってたなって…わたしの溢れ出るお姉ちゃんオーラが分からないの!?」
『…お姉ちゃんオーラ……?』
「がーん!全員に怪訝な顔をされた!?」
「あ、あはは…大丈夫だよ、お姉ちゃん。わたしはお姉ちゃんの溢れ出るお姉ちゃんオーラ、いつも感じてるからっ!」
「うぅ、ネプギアぁ……」
ぐっ、と両手を胸元で握りながら嬉しい事を言ってくれるネプギアに、思わず涙ぐ…みはしなかったけど、それ位しそうな気持ちになるわたし。目も表情も、わたしを憐れんでじゃなくてほんとに心からそう思ってるって感じだし……あ、不味い。このままいくとわたし、ほんとに一粒位は涙出ちゃうかも…。
「…こ、こほん!とにかくお姉ちゃんはわたし!ここ、テストに出るからね!」
「テストって…まぁ分かったよ。それにネプテューヌも、いざって時は確かに格好良いしな」
「はいっ!普段は可愛くて、いざって時は格好良いのがお姉ちゃんですっ!」
「え?…あ、うん……」
…って状態から抜け出そうとしていたら、今度は何だか変な流れに。…どうしよ、褒められるのは好きだけど…こうも力説されると、それはそれで恥ずかしい……。
「…あー、それじゃあ次はオレ達といこうか。オレは……」
「海男さん、ウィードさん、それに……うずめさん、ですよね」
「へ?どうして俺達の名前を…?」
「ここまでの会話で聞こえてたので…それに、ウィードさんの名前はこっちに来る前にお姉ちゃん達からちょっとだけ聞いたんです」
「あぁ、そういう……」
海男の自己紹介に先んじる形で、ネプギアは皆の名前を口に。うずめの名前を呼ぶ時だけはちょっとだけ表情を曇らせてたり、うずめも呼ばれる前にちょこっとだけ不満そうな顔してたりはしたけど…まだ会ってから数時間も経ってないんだし、これから仲良くなればいいだけだよね。
という訳で、今度はうずめ達が自己紹介。流石に名前だけじゃ情報として少な過ぎるもんね。
「…って感じで、俺は皆に同行するようになったんだ。…その、すまん。あんまり紹介出来る事がなくて……」
「い、いえ!記憶喪失なら仕方ありませんよ!…けどまさか、うずめさんもウィードさんも記憶喪失だったなんて……」
「わたしも記憶喪失で、イリゼも記憶喪失だからね。そういう意味じゃ、記憶喪失じゃない人や女神のメンバーは、ネプギアが初なんだよ?」
「な、何その普通が普通じゃなくなってる空間……」
『はは……』
これ以上ない位ご尤もな発言に、わたし達は揃って苦笑い。二人が記憶喪失だって聞いた時も思ったけど…類は友を呼ぶ、なのかなぁ…。
「さーて、自己紹介も終わったし…今回のお話はこの辺りでお終いにする?」
「えぇぇ!?こ、今回それだけでお終いなの!?まだ普段の半分もいってないのに!?」
「じょーだんだよじょーだん。…じゃ、まずは…イリゼの事から、かな」
真面目な話…の前に一つボケを入れて、イリゼの事を口にする。その瞬間、皆の表情も真剣なものに変わって…その視線を受けながら、わたしは言う。
「…結論から言うね。イリゼは…信次元に戻ったの。ネプギアと、入れ替わりで…ね」
『え……?』
そう言った瞬間、皆揃って目を見開く。それはそうだよね。わたしだってイリゼの話を聞いた時は驚いたもん。
「あ、でも大丈夫!先に言っておくけど、ここでの生活が嫌になったとかじゃないから!」
「そ、そっか…それなら良かったぜ…。…けど、それならどうして……」
「んとね、それもちゃんと話すと長くなるんだけど…マジェ座衛門が襲ってきた時、わたし達はまだお互い重要な事を話せてなかったの。それに、攻撃で信次元との交信も不安定になっちゃって……だから、イリゼは言ったんだ。自分とネプギアが入れ替わる形でそれぞれこっちと信次元に行くのが、今出来る最善手だって」
ほっとした様子のうずめ達に、わたしはネプギアと共に通信を受けた後、何があったのかを説明する。
あの時、わたしを呼び止めたイリゼは言った。こっちでの事は、私が信次元に戻って話すって。だから代わりに、こっちにはネプギアに来てほしいって。私の代わりに、これからの事を頼みたいって。
ネプギアに頼んだのは、勿論あの時ネプギアといーすんしかいなかった…っていうのもあると思うけど、ネプギアなら機材の修理や調整も出来るから…というのも大きな理由。それに、もしかすると…わたしと一緒にいられるように、ってのもあったかもしれない。…まぁ、これはあったとしてもメインの理由ではないと思うけどね。
「…そんな事があったのか…だから、『また会える』だったんだな……」
「うん。わたしと同じように、イリゼは友達とハッピーエンド絡みじゃ神がかったレベルで有言実行してくれるからね!だから、イリゼがまた会えるって言ったんだから、間違いなくまた会えるよ!」
「神がかったも何も、わたし達は女神だよ…?」
「んもう、そこはスルーしてくれればいいの!…だからさうずめ。俺がもっと電波塔を守れてたら…とかは思わなくていいからね?」
「う…俺、そんな顔してたか…?」
「ううん。そういう訳じゃないけど、うずめはこういう事気にしがちっていうか、悪い意味で責任感が強過ぎる節があるからね!」
「そうだね。うずめはあの場で迅速な判断を下し、オレ達が避難出来るよう大立ち回りもしてくれたんだ。もし思ってなかったのなら、聞き流してくれればいいが…オレやうぃどっちも、ねぷっちと同じ考えだよ」
女神として皆を守ろうとする、皆の為に頑張ろうとするうずめはほんとに立派だし、きっとこの次元を復興出来たら良い国を作り出せると思う。でも何でもかんでも「自分のせいで…」って思っちゃうのは、きっと辛いし苦しい事。だからわたしも海男も言って、言われたうずめは「俺、心配されてばっかだな…」と苦笑いして、でもそれは決して暗い表情じゃなかったからわたしは笑顔で……
「……って、違ぁぁぁぁうっ!これはわたしが責任云々を言った直後に、『いや仕事サボろうとしてばっかりのネプテューヌがそれ言う?』って返すパターンだよ!?いや突っ込まなきゃ突っ込まなきゃ!」
「何じゃそりゃ…てか、仕事やってる時のネプテューヌを知らない俺達にそれを言われても……」
「うっ…そ、それは確かに……」
危うくボケを未処理のまま流されそうになって、それを慌てて掘り起こしたわたし。でも皆「そんな事言われても…」って状態で、結局ボケは処理されず終い。む、むむぅ…しまった、信次元絡みの事はネプギアにしか伝わらないし、ネプギアはこういうネタに関して時々流しちゃう傾向があるんだった…。まさか、イリゼがいなくなった事で、突っ込みに問題が発生するなんて…うぅ、誤算だよぉ……。
「…そっか、考えてみればわたしの側にはいつもイリゼやノワール、あいちゃんがいて、剛柔多彩な突っ込みをしてくれてたんだね…。…ぐすっ、みんなぁ……」
「えぇぇ!?突っ込みで!?お姉ちゃんまさかの突っ込みでホームシック!?」
「大切なものは、失って初めて気付く……」
「待て待てねぷっち!それだといりっちが死んだみたいにってないか!?いや違うよな!?単に信次元に戻っただけなんだよなぁ!?」
しょぼくれるわたしの中で蘇るのは、イリゼのいつもフルパワーだった鋭い突っ込み。…ぐすん、ボケは突っ込みとセットなのに…二つで一つなのがボケと突っ込みなのに…これじゃあわたし、どうしていけばいいのさ……っ!
「…なぁ海男。ネプテューヌ、嘆きつつも二人からがっつり突っ込みを引き出してないか…?」
「あぁ…意図しての事なら策士、無自覚なら天賦の才…何れにせよ、大したものだ…」
「やってる事は単なるおふざけなのにな……」
そんな感じで、とにかくイリゼの件と何があったのかの説明は終了。次にネプギアへマザコーンの事とかダークメガミの事を説明して、取り敢えず皆との情報共有を済ませるわたし。わたしとイリゼがこっちに来てからの話は、大まかにしか言ってないけど…それはまた、移動の時とかに話してくれればいいんだって。
「こっちの次元のマジェコンヌさんに、マジェコンヌさんが呼び出していたダークメガミ…マジェコンヌさんも、うずめさんの仲間なのかな…」
「うーん…そこはよく分かんないんだよね。そもそもわたし達の知ってるマジェコンヌは、負のシェアの影響で悪い事してただけで、元々はわたし達…っていうか、女神の味方だった訳だし」
「じゃあ、こっちでも負のシェアの影響を受けて…ってそっか、それもそうとは限らないんだよね…うーん……」
「…ねぷっち、ぎあっち。真面目な話に横槍を入れるようで申し訳ないが…一先ず、今日どうするかを先に決めないかい?見たところ、電波塔もこのまま放置し続けると倒壊する可能性が高いだろうしね」
二人で腕を組んで(勿論わたしの右腕とネプギアの左腕で…とかじゃないよ?)、これまた二人で首を捻って考えるわたし達。でもそこで海男に言われてはっとする。そーだったそーだった、いやぁうっかりしてたよ…。
「そうだね、今日は……えっと、ネプギアは直せるんだっけ?」
「それは状態次第…かな。とにかくもう少ししっかり見てみないと分からないかも。…あ、でも……」
『でも…?』
「…出来れば、他に使えそうな施設や設備がないか、見て回りたいです。設置した機材の修理はともかく、電波塔の修理は建築とか土木の領域ですし…もっと交信に適した施設があるかもしれませんから」
頬に指を当てて考えを話すネプギアに、わたしはふむふむと相槌を打つ。そっか、わたし達にとっては単なる…っていうかよく分からない機械でも、ネプギアならその価値が分かるかもしれないもんね。
「…だったら、機材を回収してここは引き上げるのもいいかもな。俺達の素人修理で長期的に使うってのは不安が残るし、何よりここは紫ババァに知られてるしよ」
「一理あるね。折角直した配電線が少々勿体無い気もするが…目先の損得に囚われた結果、後に大損したりチャンスを見逃してしまうような事は往々にしてあり得る。オレもうずめに賛成するよ」
「俺は皆の考えに任せるよ。他の事ならともかく、こういう話にゃ何も言えないしな」
「下手な考え休むに似たり、だね!」
「おう、そういうこった。…まぁ、他の事もぶっちゃけあんまり言えないが……」
本日二度目の下手な考え(以下略)を放ったわたしは、その流れのまま視線をネプギアへ。ネプギアはわたしの視線を受けると、皆を見回すようにゆっくりと視線を移して…それからこくんと一つ首肯。そうしてわたし達は、ここを去る為の準備を始める。
「えーっと、回収するのは機材と……あっそうだ、コンピューターに繋いだ機械の方も持ってかなきゃだよね」
「なら、そっちは俺達に任せてくれ。電波塔に付けた機材の方は、外す時も何か手順が必要だろ?」
「そう…ですね。設置は誰が…?」
「わたしとイリゼだよ」
「じゃあ、外すのはわたしとお姉ちゃんでやりますね」
こんなやり取りを経て、うずめ達は奥の部屋へ。最初二人と一匹じゃ多いんじゃ…?と思ったけど、よく考えたらそっちはそっちで色々接続したりしてるから、やっぱり必要かもって思って見送るわたし。それに早く済んだなら、こっちも手伝ってもらえばいい訳で……っと、そうだ。
「ネプギア、ちょっと止まって」
「……?どうかしたの?お姉ちゃん」
大切な事を思い出したわたしは、先を行くネプギアを呼び止め、ちょいちょいと、手招き。そうして不思議そうな顔をしたネプギアがわたしの前まで来たところで…ぽふり、とネプギアの頭に右手を置く。
「へ……?」
「ありがとね、ネプギア。わたしとイリゼの為に、あんなに一杯準備してくれて。あれだけのものを用意してくれて。お姉ちゃん、凄く嬉しかったよ」
「…お姉ちゃん……」
「本当は、帰ってから言おうと思ってたんだけど…状況が変わっちゃったからね。だから…これからは一緒に頑張ろうね、ネプギア」
そう言いながら、あの時感じた感謝を込めて、目を丸くするネプギアを撫でる。わたしより背が高くて、わたしより大人っぽくて、でもわたしへ憧れてくれる、可愛い可愛いわたしの妹を。
喜んでくれるかなとか、ネプギアってばちょっとまだ泣き虫のところもあるから、お姉ちゃぁん…って泣いちゃうかなとか、撫でながらわたしは色んな事を考える。でもどんな反応をしても、わたしはお姉ちゃんとして受け止めてあげようとだけは思っていて……だけどネプギアは、振り返る。くるりと、セーラーワンピのスカート部分を可愛くひらりとはためかせて。
「…え、あれ?…ネプギア…?」
「ありがとね、お姉ちゃん。でもあれはお姉ちゃん達じゃなくて、もっと沢山の…信次元の人皆の為でもあって、わたしなりに出来る事をしようって思った結果でもあるの。…そして、その気持ちは今も同じ。だから…早く行こっ、お姉ちゃん。あんまりのんびりしてると、ウィードさん達が片付け終えてこっちに来ちゃうよ」
「あ、ちょっ…待ってよネプギアー!」
肩越しにこっちを見て、そんな事を言うネプギア。その時のネプギアは、見た目云々じゃない部分で大人っぽくて、なのに子供っぽさもあって、だけどやっぱりネプギアって感じで……逆にわたしが目を丸くしている内に、ネプギアは先に行ってしまう。そして、後ろで手を組んだネプギアを追って、わたしも慌ててその後を……
「…って、あれ!?この構図、Re;Birth2のトゥルーエンドのやつじゃない!?☆3のリンクカードにもなったやつじゃない!?えぇ!?な、何故今このシーンが!?」
……とまぁこんな感じに、イリゼが信次元に戻って、代わりにネプギアがやってきた訳だけど、変わらずわたし達パーティーは賑やかなのでした。
*
これまでと同じような、違うような、そもそもこれまでが同じだったのか曖昧な……詰まる所、上手く表現出来ない感覚の中から抜けて、ゆっくりと私は目を開ける。
最初に目に入ってきたのは、見覚えのある空間。首を回してみれば、やっぱり見覚えのある場所で……側にいたのは、私にとって姉同然の存在であるイストワールさん。
「…お帰りなさい、イリゼさん」
「…はい。ただいま戻りました、イストワールさん」
声をかけられて、言葉を返して…そこで漸く、私は安心する。あぁ良かった、今居るのは信次元で、私はちゃんと帰って来られたんだって。
「…賢明な、判断だったと思います」
私の目を見て、イストワールさんは言う。真剣な、でもどこか気遣うような表情で。
それは、私が言った、私とネプギアが入れ替わるという選択の事。その選択は、本来ならもっとじっくり、もっと多くの人で話し合った上で決める事で、特に多くの責任を負う事になるネプギアには、ちゃんと考える時間をあげなきゃいけない事だったけど……私は殆ど、その時間をあげなかった。あげられなかったし、状況的にも強要したようなものだった。…だからだと思う。イストワールさんの表情に、気遣いの雰囲気があったのは。
「…大丈夫ですよ、イストワールさん。…ネプギアには申し訳ないって気持ちもありますし、向こうにいる皆にちゃんと話せなかったのも、心残りではありますが……」
「…………」
「…それでも、あの時のネプギアは頷いてくれましたから。わたしなら大丈夫だって、任せてほしいって。…それに、皆にも言えましたからね。また会える、って」
そう言って、にこりと笑みを浮かべる私。安心させる為の作り笑いじゃなくて、本心からの笑みを見せる。
申し訳なさはある。心残りもある。…当然だ。だってあの時選んだのは、あの時出来た最善手ではあるけれど、満足のいくベストな選択じゃなかったから。
だけどそれでも、私はあの時出来る事をした。それをネプギアも、ネプテューヌもイストワールさんも受け入れてくれた。だったら私は、自信を持たなきゃ。自分が選んだ、皆が協力してくれた、私の選択を。
「…だからイストワールさん。私は頑張ります。これまでと同じように、これまで以上に、今私に出来る事を」
「…ふふっ、本当に気に病んではいないのですね」
「当然です。…あまり、見くびらないで下さいね?」
「見くびってはいませんよ。イリゼさんがお強い方である事は、よく知っていますから(⌒▽⌒)」
強くじゃなく、冗談の意図を込めて私が言うと、イストワールさんは肩を竦め、それから私へと笑ってくれる。それらを受けて、私もにこりと笑みを返す。
そう、私は気に病んでなんかいない。出来る事をしたと思ってるし、これからも出来る事をしようと思ってるし……何より私は信じている。ネプギアを…向こうにいる、皆を。
(…絶対また会えるから。また会うから。だから…頑張ってね、皆)
そうして私は表情を引き締め、部屋を出ようと歩き出す。まずは、信次元の状況確認。勿論イストワールさんに聞いても分かる事だけど、自分で見る事も大切。そう思いながら、私は部屋を出ようとして……
「え?」
「へ?」
「……うぇ…?」
扉が開いた瞬間、鉢合わせる形で私は遭遇した。廊下からここに入って来ようとした、二人の少女に。
一人はふわふわとした印象の、優しそうな女の子。もう一人はキリッとした表情の、クールそうな女の子。一人は明るい飴色の、一人は落ち着いた茶色の髪をしていて……っていうか、要はコンパとアイエフだった。
…………。
………………。
……………………──!?
「えぇぇ!?コンパ!?アイエフ!?」
「い、イリゼちゃん!?あ、あれ!?イリゼちゃんがいるです!?」
「あ、貴女別次元に行ったんじゃなかったの!?」
一瞬の沈黙の後、揃って目を剥く私達三人。そ、そりゃそうだよ!だって二人が目を覚ましたなんて話知らないもん!聞いてないもん!まだ昏睡状態だと思ってたんだもん!
「あ…実はですねイリゼさん。お二人は、今日の朝目を覚ましたのです( ̄▽ ̄)」
「そうだったんですか!?」
後ろからかけられた声で、更に私はびっくり仰天。確かに、そこまで話をする前に強襲をされた訳だから、仕方ない事ではあるんだけど……折角格好良く締められそうだったのに、何とも締まらない展開になってしまう私だった。とほほ…。
……因みに、それからちょっと落ち着いた後の私は、二人が目を覚ましてくれた事で思わず泣きそうになっちゃったんだけど…それは内緒だよ?
*
「…信次元でのダークグリーン、ダークホワイトに続いて、ダークブラックもやられたか…。撃破されるのは想定通りとはいえ…中々早いペースだね…」
何処とも知れぬ空間。そこで、藍色の髪をした少女…うずめは、一人思考に耽っていた。感情の読めない顔で、彼女はほんのりと口角を緩め……そこで、一人の少女が姿を現す。
「たっだいまー!……あれ、何してるの?」
「うん?…やぁ、お帰り。ちょっとした考え事さ」
声からして快活さ溢れる少女が現れた瞬間、うずめの表情はすっと柔らかなものに変わる。相変わらず奥底の読めない表情ではあるものの、少女は特に気にする様子も見せずにうずめの側へ。
「へぇー。わたしはこの通り、たった今旅から帰還したよ!」
「あぁ、知っているよ。今回はどこに行っていたんだい?」
「ふふーん、何を隠そうキノコが沢山生えてる場所だよ!キノコ王国だったのかも!」
「……キノコ、が…?」
「うん!えのきにエリンギ、椎茸に松茸なんかもあったんだよ?ちょっと採ってきたんだけど、食べる?」
「…いや、いいよ。それにしても、キノコが沢山生えてる…ね……」
「……?」
「……そこだけは行かないようにしよう、絶対行かないようにしよう…」
「ほぇ?何か言った?」
一瞬顔を逸らし、ぶつぶつと小声で呟いたうずめ。それに少女はきょとんとしていたが、すぐにうずめは視線を戻し、こほんと一つ咳払いをする。
「…楽しそうで良かったよ。それに、その様子なら…例の次元も、楽しめるんじゃないかな」
「それ、行ってほしいって言ってた次元の事だよね?」
「そうだよ。それにあそこには、大きなサプライズもあるんだ」
「サプライズ?え、何それ何それ?」
「ふふっ、言ってしまったらサプライズじゃなくなってしまうだろう?だから行ってからのお楽しみさ」
「そっかぁ…じゃ、わたしは準備をしておくね」
そう言って少女は、軽やかな足取りで去っていく。その顔には、本当に楽しみそうな感情が浮かんでおり、うずめはそれを穏やかに見送る。そして、彼女の姿が見えなくなってから数秒後、うずめはそれまでの表情に戻り…誰に伝えるでもない声を、漏らすのだった。
「……次の障害は、こちらの次元だよ。まだまだこの程度で躓いてもらっては困るんだから…頑張って、オレの期待に応えてくれよ?」
今回のパロディ解説
・「〜〜細かい事が〜〜悪い癖でね」
相棒シリーズの主人公、杉下右京の代名詞的な台詞の一つのパロディ。海男は原作では紅茶をブレンドしていたりもしますし、割と合うパロディかもしれません。
・「ちっちゃい事は気にするな〜〜」
お笑い芸人、ゆってぃこと藤堂雄太さんのギャグの一つのパロディ。パロった部分は使おうと思えば、かなり日常生活の中でも使えるフレーズですね。
・Re;Birth2
原作シリーズの一つ、超次次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 SISTERS GENERATIONの事。あのCG、ほんとに素敵というか幸せな気持ちになれますよね。
・☆3のリンクカード
メガミラクルフォースに登場するリンクカードの一つ、これからはずっと一緒の事。…でも原作だと、続編の序盤で離れ離れになるので、そう考えると悲しくなりますね。
・キノコ王国
マリオシリーズに登場する国の一つの事。余談ですが、ここはコロコロの読者コーナーにあったキ・ノッコ王子をパロるプランもあったりました。…ほんとに余談ですね。