超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
皆にとって因縁の敵…マジェコンヌの本気らしき姿と戦いになって、戦いの中で咄嗟に俺は飛び出した。その結果腹を貫かれて、死んだ……と思いきや、生きていた。更にまさかの無傷だった。
これだけでも、この時点でも超展開。けど超展開はそれだけで終わらず、どういう訳かネプテューヌより大きいネプテューヌが天井を突き破って落ちてきた。ぶっちゃけ俺本当は死んでいて、これは死の間際か死後に見てる夢なんじゃないか…とマジで思った位には、びっくり過ぎる展開だった。
ただまぁ、これは夢じゃないらしい。まだ夢が続いてるだけかもしれないが…ここは夢じゃないと信じたい。
「ふへぇ〜、やっと出られた〜。途中のイベントが大ボリュームだったからか、実時間以上洞窟内にいた気分だよ〜」
「だよね〜。はふぅ、やっぱり外の空気は美味しいな〜」
「うんうん…って、おっきいわたしはそんなに長い間いなかったでしょーがっ!」
「てへっ、バレたか〜!」
「…………」
「…………」
『あははははははははっ!』
漫才みたいなやり取りをした後、顔を見合わせて大笑いするネプテューヌ二人。…驚かないで聞いてほしい。さっきからこの二人、ずっとこの調子なのである。……こほん。
小さいネプテューヌの発言からも分かる通り、俺達は漸く洞窟を出た。…が、出たらすぐ拠点…という訳ではないらしく、広がっているのは豊かな森。
「…こんなに自然があるって事は……」
「あぁ、ここ周辺には結構シェアクリスタルが落ちてるんだ。つっても見つからないのに豊かな範囲も多いから、落ちてる…ってか埋まってたり隠れてたりするやつが多いんだろうな」
「……?」
「あ…そうか、ウィードは知らなかったな。まだちょっと距離あるし、歩きながら説明してやるよ」
「それ、わたしも聞いていいですか?お姉ちゃん達からは、軽くしか聞いていないので…」
という訳で、俺とネプギアはうずめから説明を聞きつつ歩みを進める。その途中で海男から連絡が来て、無事到着したと聞いた俺達は一安心。案外時間かかったんだなぁ…と思ったが、考えてみれば向こうに戦える面子はいないんだから、こっちより慎重に進んでいたとしても何らおかしな事はない。
「それにしてもさー、同じわたしなのにスタイルが全然違うって不思議だよね。もしかして、おっきいわたしは刀剣じゃなくて槍を使ってたり?」
「気持ちは分かるけど、わたしも刀剣使いだよ?それにむしろ女神なのはちっちゃいわたしの方だしさ」
「あー、それもそっか。…でも、いいなぁ…おっきな胸にむっちりの脚…正直ちょっとジェラシーだよ……」
「えー、脚はともかく胸は困る事もあるんだよ?だって激しく動くと凄い揺れて大変──」
「うん、それ以上言ったらわたしでも殴るよ?」
「あ、ごめんなさい……でも、ほら…ちっちゃいわたしだって、女神化したらスタイル抜群の美人になるでしょ…?」
「それはそれ、これはこれだよ…どっちもわたしなんだから……」
一方のダブルネプテューヌは、何やらちょっとナイーブな話に。重要度はどう考えてもうずめの説明の方だが…自然と俺の意識はそっちの方へ。…スタイルかぁ…確かに大きいネプテューヌは、ぱっと見でわかる良さだよなぁ…それに服装が良いよな、服装が。うずめのちらりと見える臍とか、ネプテューヌネプギアの素敵な絶対領域とか、イリゼの健康的な肩と腋もいいんだが、やっぱり…うん、ほんと…パーカーじゃ隠れきれない胸とか、大胆に露出した脚とか……あ、いやでも大胆な脚って言うと、イリゼも中々……
「ふんッ!」
「う……ッ!…う、うずめ…何を……」
「セクハラだ馬鹿。なんて目でねぷっち達を見てやがんだ」
「…すまん、反省する……」
ごすッ!…と脇腹に刺さった肘鉄の痛みに呻く俺。だが今のは完全に俺が悪いってか非難されて当然の行為なので、素直に俺は反省する。
「ったく…皆、そろそろ着くぞー」
「はーい。あ、おっきいわたしは心の準備をしておいた方がいいよ?きっと驚くからね」
「え、まだ驚くような事があるの?」
そんなこんなで歩く事十分弱。草木がまばらになってきたところでうずめが俺達に声を掛け、そして…俺達は、目的地である拠点へと到着する。
『おぉー……!』
視界が開けた瞬間、驚きの声を上げるうずめ以外の俺達四人。一言で言うなら、この拠点はキャンプだった。それも結構な規模で、長期の生活も普通に出来そうな位の。
「どうだ?俺の…いや、俺達皆の本拠点は」
「いやぁ、これは凄いの一言だよ!わたしも旅の中でキャンプした事はあるけど、こんなに本格的なのはした事ないもん!」
「うんうん。廃ビルを使った拠点も秘密基地みたいで素敵だったけど、こっちも好奇心を刺激されるよね」
「しかも机と椅子があったり、焚き火用の場所も作ってあったり、しっかりしてるのがまた良いよね。次元の旅人たるわたし的にも、これは評価高いよ〜!」
皆も同じように感じたらしく、全員揃って目を輝かせる。で、そうしている内に先に到着していた海男達がやってきて……
「お疲れ様、皆。君達のおかげで、全員無事に到着して……って、うん…?…ねぷっちが、二人……?」
「……!?しゃ、喋る人面魚!?しかも真顔でイケメンボイス!?あははははは!真顔でおっかしーのー!」
戦闘の海男を見るや否や、大きいネプテューヌは爆笑してた。その後皆…喋るモンスター達を見て再び驚いていたものの、すぐに「女神のわたしとか人面魚とかもいるんだから、喋れて友好的なモンスターがいてもおかしくないよね」と納得していた。…言われてみれば確かに、自分じゃない自分や個性の塊である海男を先に見てたら、インパクトも薄れるよな。
「……!…もしや…ねぷっちのお姉さん、かい?」
「いやいやまさか。こっちのわたしもわたしだよ?」
「外見だけだと、大きいねぷっちが長女、ぎあっちが次女、小さいねぷっちが三女…って感じだけどな」
『あー』
「あーって何!?ネプギアまであー、は酷くない!?」
確かに確かに、と俺達が頷いていると、小さいネプテューヌはぷんすかしながら猛抗議。でも実際外見だけならほんとうずめの言う通りで、俺はネプギアが妹だと分かった瞬間の事を思い出す。
「んもう…大事なのは外見じゃなくて中身だよ、中身」
「…中身で言うなら、ネプギアが一番大人だよな…?」
「だよな…」
「むむ?何か言った?」
「何でもないぞー。…けど、大きい方のネプテューヌは一体何者なんだ?まさか、ネプテューヌの元いた次元じゃ次元を超えるのが普通の事で、誰でもやってる…とかじゃないよな…?」
「あー、それはね…」
「待った。それはわたしも気になるけど…それより先に海男、一つお願いがあるの」
俺からの疑問に答えてくれようとした大きいネプテューヌを遮ったのは、何やら真面目な顔の小さいネプテューヌ。何だろうと思って俺が見ていると、小さい方のネプテューヌは言う。俺の身体に何もないか、一度診てほしい、と。
「…何故に?」
「何故にって…君、さっき死にかけてたんだよ?あれ間違いなく、女神でも死んじゃうかもしれないレベルだったんだよ?」
「や、それはそうだが…今はもう何ともないし…(あ、死んじゃう『かも』なのか……)」
「いいえウィードさん。身体が元通りになったのは、自分でも何故か分からないんですよね?…だったら、ちゃんと診てもらわなくちゃ駄目です」
「…絶対か?」
『絶対(だよ・です)』
真剣な、真っ直ぐ俺を見つめる瞳で二人は言葉を重ねる。なるべく、じゃなくて必ずそうしてほしいという、穏やかながらもはっきりとした意思を込めて。
言ってる事は分かる。その通りだ。俺自身、なんで生きてるのか分からないんだから。…けど、頭からつま先まで何の違和感もないのに、怪我人みたいな扱いされるのはなぁ……。
「…嫌?」
「嫌、って訳じゃないんだが…ほんと、俺的には何ともないし……」
「…まぁ、その気持ちは分かるよ。皆心配し過ぎだー、って気持ちはね。…けど、これわたしが偉そうに言える事じゃないけど…自分がしたいと思った事で心配をかけたなら、安心してもらえるように努める責任があるって、わたしは思うよ」
「…………」
「…なんて、やっぱりわたしらしくない事言っちゃったね。でもとにかく……」
「いや、ネプテューヌの言う通りだ。ごめん、皆。…海男、頼んでもいいか?」
「勿論さ。じゃあ、あそこのテントの中に行こうか」
そんな、個人的な理由で渋っていた俺に向けて、ネプテューヌは言った。経験則なんだろうな、と感じさせる表情と声で。
自分がしたいと思った事で心配をかけたなら。…あぁ、そうだ。確かにそうだ。俺は頼まれたからじゃなく、自らの意思で飛び出して、結果皆に心配をかけた。これ以上ない程不安にさせた。なのに、その事に対して安心してもらえるような事を何もしないのは……駄目、だよな。
そう思って、俺は動き出した海男の後を追う。これで少しでも安心してほしいなと思いながら……って、ん?そういや……
「…なんで海男なんだ?海男、医学の知識あるのか?」
「……君、男の子だよね?わたし達、女の子だよね?」
「あっ……そ、そっか…だよな…」
……なんて阿呆なやり取りをした後、俺はテント内に入るのだった。
*
何故か渋っていたウィードは、ねぷっちの言葉で診てもらう事を了承してくれた。俺だって診てもらうように言ってる二人側だったし、聞き入れてくれた事は安心したが……ねぷっちの言葉は、俺にとっても考えさせるものだった。「俺がしたいようにしてるだけだから、気にすんな」。…これまで俺はそう言ってきたが、だからこそ…俺がしたいようにしてるからこそ、結果だけじゃなくて周りに思わせた事、抱かせた不安や心配も、きちんと責任を持つべきだって。
それはきっと、ねぷっちも国の運営や戦いの中で、仲間や国民と接する中で、気付いて分かった事なんだろう。同時にそれは、普段はおちゃらけてても心の中ではちゃんと女神としての思いを忘れていない…って事の証明でもあると、俺は思った。だから、ほんとねぷっちは凄いなぁ…なんて思っていたところで、俺はぎあっちに声をかけられる。
「…あの、うずめさん。少しお時間、いいですか?」
呼ばれてくるりと振り返ると、ぎあっちが浮かべているのは真剣な顔。それだけで俺は大切な事なんだろうと理解し、すぐにこくりと首肯する。
「……あ、おっきいわたし。ちょっと皆の事教えてあげるよ。まだ皆の事、名前と基本のテンションの高さ位しか知らないでしょ?」
「あ、いいの?じゃあお願いしよっかな」
すると今のやり取りを聞いていたのか、小さいねぷっちは大きいねぷっちを誘い、大きいねぷっちもすぐに乗って、席を外してもいい雰囲気を作ってくれる。…ありがとな、二人共。
「…で、具体的には何なんだ?」
「それは……えと、場所を変えても…?」
「そりゃ勿論」
俺が肯定を返すと、ぎあっちは森の方へ。口振りからして、最初からそっちに用がある…って訳じゃなく、用事ってのはここでは出来ない事or話せないような事らしい。…けど、そうなるとなんだろうな…皆に向けてじゃないって事は個人的な話だろうし、わざわざ邪魔が入らないような場所でなんて……
(……!…ま、まさかぎあっち…俺を始末しようとしてるのか……!?)
その瞬間、思い出すのは俺に武器を向けてきた時のぎあっちの顔。あの時は、何とか矛を収めてくれたが…同時に信用出来るかどうかは、これから見極めるとも言っていた。…真剣な顔で、わざわざ俺だけを呼んで、邪魔の入らない場所を選ぶなんて……もしや、本当に……。
「……っ!」
森に入ってある程度進んだところで、ぴたっとぎあっちは脚を止める。それだけでも、びくりと反応してしまう俺。
分かってる。確たる根拠もないのに、ぎあっちの事を疑うのは。でも…でも、分かってほしい。だって、物的証拠とか言質はなくても、状況的には完全にそうだもん!ちょっと裏来いパターンだもん!う、うずめ倒されちゃうの!?ぎあっちと戦わなくちゃいけないの!?う、うぅぅ…どうしよぉぉ……。
(…い、いや落ち着けうずめ…じゃなくて俺!もしそうなら、信じてもらえるように最後まで出来る事を尽くすだけだろ!頑張れ俺!)
…なんて不安になっていた俺だが、はっと気付いて自分自分を鼓舞。振り向いたぎあっちと目を合わせつつ、ぎゅっと拳を握り締める。
そうだ、ぎあっちがどう思っていようと、俺がぎあっちを仲間だって思ってる事は変わらねぇ。だったら、怖気付く必要なんかこれっぽっちも……
「…うずめさん……」
「お、おぅ……」
「……これまでずっと疑っていて、すみませんでしたっ!」
「…………へっ…?」
ばっ、と勢いよく頭を下げるぎあっち。それを見た俺は……一瞬、意味が分からなかった。えっ?うぇ?す、すみませんでしたって…じゃあ、俺を始末しようとしてたんじゃ…ない、のか……?
「…わたし、ずっとうずめさんを疑いの目で見てました…お姉ちゃん達を、騙してるんじゃないかって…。でもうずめさん、貴女は……」
「…うぅ……」
「……って…う、うずめさん…?」
勘違いだった。始末しようとしてるどころか、その逆だった。完璧なまでに、俺の早とちりだった。……そう気付いた俺は、恥ずかしさから思わずしゃがんで両手で顔を覆っていた。恥ずかし過ぎて、顔が滅茶苦茶熱かった。
「…だ、大丈夫…ですか…?」
「待って…ちょっとだけ待って……」
「あ、は、はい……」
心配そうに覗き込もうとするぎあっちを手で止めて、心を落ち着ける事数分。自爆の恥ずかしさから何とか俺は立ち直って、改めてぎあっちの方を向く。
「こ、こほん。…つまり、ぎあっちは…それを伝える為に、俺を呼んだのか?」
「…はい。ちゃんと、伝えておかなくちゃいけないって思いましたから」
「そっか。…でも、それなら別に二人きりになる必要はなかったんじゃ…?」
「え、と…それは、その…こんなに良い人のうずめさんを疑ってたんだって思うと、情けないっていうか恥ずかしい気持ちになってしまって……」
「あ、あぁ…分かる。実際とは真逆の想像しちゃうと、凄ぇ恥ずかしいよな…」
つんつん、と両手の人差し指の先を突き合わせながら言うぎあっちを見て、俺はうんうんと何度も頷く。…ほんと、分かるぜぎあっち……。
「…けど、いいのか?いや、勿論俺としては嬉しいが…まだ、あれからそこまで日が経った訳でもないだろ?」
「大丈夫です。確かに日数はそうですが、むしろその短い間でもうずめさんの良いところ、優しいところを幾つも見つけられましたし……何より、仲間の事を思って泣ける人が、あんな事をする訳がありませんから」
「う……さ、さっきのあれが決め手になったのか…それは正直恥ずいな……」
「あ、あはは…でもほんと、あれは気が動転しちゃいますよね…わたし、戦闘中じゃなかったらウィードさんが無事だって分かった時、その場で座り込んじゃってたと思います……」
「だよなぁ…ったく、ほんと心配させやがって……」
ぎあっちと二人、全くもう…と苦笑いを浮かべ合う。マジでウィードは反省するべきだよな、うん。
……ってのは、ともかくとして…俺は本当に嬉しかった。ぎあっちが信じてくれるのも、俺を良い奴だって思ってくれるのも。しかも、この短い間で最悪の印象からそこまで考え直してくれるんだから…やっぱ、ぎあっちはねぷっちの妹なんだな。
「まぁ、とにかく…そういう事なら、これからも宜しく頼むぜ、ぎあっち」
「…はい。こちらこそ、宜しくお願いしますね」
にっと笑って、右手の拳を前に出す俺。それを見たぎあっちは、一瞬きょとんとした後ふふっと笑い……こつん、と俺達は拳を突き合わせるのだった。
*
「よう、悪いところは何もなかったか?」
海男に診てもらい、少なくとも外的な傷や異常はないと分かった俺がテントを出ようとすると、海男と入れ替わる形でうずめがやってきた。
「おう、本当に攻撃を受けたのかって確認を受ける程、どこにも異常はなかったぞ」
「なら良かった。…いや、良かった…で、いいのか…?」
「それは…まぁ、正直俺もなんとも言えないな……」
うーん、と首を傾げるうずめに対し、俺も後頭部を掻きつつ曖昧な言葉で答えを返す。
生きてて良かった。それは間違いない、だってまだ俺はやれてない事が沢山あるんだから。けど…なんだかよく分からないが生きていて、攻撃を受けた痕もないってのは……ぶっちゃけ、不気味でもある。
「…うずめ、皆はほんとに何もしてないのか?実は誰かが何かをしていたとか、偶然蘇生アイテム的なのが俺の上に落っこちてきたとか、そういう事は……」
「ないな。俺とぎあっちは何もしてない…ってかどうにも出来なかったし、ねぷっちに至っては『ひょっとして過去に精霊の力を封印してたり、
「そ、そうか…多分俺にそんな過去や力はないと思うぞ……」
試しに訊いてみただけとはいえ、返ってきたのは中々にアレな答え。…うずめといいネプテューヌといい、俺を何者だと思ってんの…?……いや、それは俺自身知らねぇけど…。
「…ほんとに、何ともないんだな?本当は酷い状態で、でも心配かけまいと隠してる…とかなら、本気で怒るぞ?」
「大丈夫だって。…何なら見るか?」
「み、見るかって…おいウィード、まさか俺を……」
「いや違う違う!ちゃんとうずめが異性だって事は分かってるって!」
ぶんぶんと手を振って否定する俺。…今のはさっきのセクハラと違って、俺そんなに悪くないと思う。もっといい言葉を選んでりゃ、こういう誤解も産まずに済んだのかもしれないが。
「全く…ほんとにお前は迂闊なんだよ。自分がしたのは自殺行為だって分かってるのか?」
「うっ…わ、分かってるよ。後悔はしてないが反省はしてるし…次は、もっと上手くやろうと思ってる」
「次はって…馬鹿お前!もう次はやらなくていいんだよ!そりゃ、助けられたのは事実だが…だからってウィードがまた無茶する必要はねぇ!」
「そ…そんな強く言わなくたっていいだろ…今はまだ弱いけど、訓練だってしてるんだから……」
今日は上手くいかなかった…というより、ああする他に手段がなかった。だから次は、次こそは…そんな思いで言葉を返した俺だったが、それが逆にうずめの怒りを買ってしまう。
腕を振るって、俺の言葉を強く否定してくるうずめ。その剣幕に俺は気圧されてしまったが…首肯は出来ない。だって俺は、あれが最悪なやり方だったとは思っていても、間違った事をしたとは思っていないんだから。…思いたく、ないんだから。
「訓練でどうにかなるもんじゃねぇよ!百歩譲って、ババァの攻撃を防ぎ切るだけの才能がウィードに眠ってたとしても、それが一日二日で開花する訳ねぇだろ!」
「……っ…なんだよ、それ…訓練に誘っておいて、そんな言い方はないだろ…」
「俺が訓練の相手をしてるのは、ウィードが自分を守れるようにする為だ!俺はウィードに万が一の事があったら、って考えて言ってんだよ!誰かの為に、自分から危険な事をする為に相手をしてる訳じゃねぇし、ましてやそれでまたウィードが……」
だけどその思いは、うずめに伝わっていない。伝わらないどころか、余計にうずめを怒らせてしまう。
怒りはなかった。でも、悲しかった。確かにあんな事になっちまったが、そこまで俺は弱い、守らなきゃいけない相手だって思われてるのかって。けど……俺は気付く。強い口調で、怒鳴るように言っているうずめの瞳から零れ落ちる、一筋の涙に。
「……うずめ…」
「何だよ、俺は……ッ!…ぁ……」
俺が気付いた数秒後、うずめもはっとした顔になって頬に触れる。頬に触れ、涙に濡れた指先を見て……
「……っ…後ろ、向け…ウィード……」
次の瞬間、表情の揺らいだうずめが言った。後ろを向け、って。…そう言われて、わざわざ理由を訊くような俺じゃない。記憶がなくたって、その意味は…訊くのがどれだけ野暮かって事位は、分かってる。
だから俺は、何も言わずに背を向ける。背を向け、次のうずめの言葉を待って……俺の背中に、ぼふりと小さな衝撃が走った。それはきっと…うずめの拳。
「…怖、かったんだよ…辛かったんだよ…ウィードが死んじまったらって思ったら…ウィードが、俺の手の届かない場所に行っちまうのが…俺は、本当に本当に…嫌、だったんだよ……」
「…………」
「…頼む、頼むから…もう、あんな事はしないでくれ…俺ももっと強くなるから…ウィードが安心出来る位、強くなるから…だから……」
それまでとは全く違う、怯えたようなうずめの声。さっき零した涙も感じさせる、切ない声音。
そう言われて、そこまで言われて…やっと分かった。俺がどれだけうずめに…いいや、皆に心配をかけていたのかが。どれだけ皆が、うずめが俺の事を思ってくれているのかが。…俺は、馬鹿だな…馬鹿で、幸せ者だ……。
「…ごめん、うずめ…うずめに、悲しい思いをさせて……」
「…俺こそ、ごめん…ウィードが、本気で俺を守ってくれようとしてた事は分かってたんだ…なのに、あんな喧嘩腰で言っちまって……」
「……俺、約束するよ。もうあんな真似はしない。皆に辛い思いをさせるような事は絶対にしない」
謝って、謝られて、一瞬俺達は互いに黙る。背中と拳で、触れた身体を通して気持ちと気持ちを届け合って……それから、一泊を置いて俺は言う。
「…次にするのは、俺がもっと強くなってからだ。皆を悲しませるんじゃなくて、安心させて…笑顔にさせる事が出来るようになってからだ。…だからさ…それまで、お互い頑張ろうぜ、うずめ」
「……おう…っ!」
俺は言った。もうしないと。でも皆の役に立ちたい、皆を助けたいって気持ちも、俺にとっては譲れない大切な思いで…だから宣言した。今は無理でも、いつかはって。必ず、そうなるって。
そして、俺は振り返る。もしかしたら、まだ振り向くなって言われるかもしれないと思ったが…最後はちゃんと、うずめの目を見て言いたかったから。そうして振り向いた結果、やっぱりうずめは驚いて……だけど俺の言葉に頷き、にっと笑ってくれるのだった。
今回のパロディ解説
・「〜〜刀剣じゃなくて槍をつかってたり?」「〜〜女神なのは〜〜」
Fateシリーズに登場するキャラの一人、アルトリア・ペンドラゴン(ランサー)の事。今後はネプテューヌオルタや水着ネプテューヌも…あ、水着はOIでもう出てましたね。
・「〜〜過去に精霊の力を封印してたり〜〜」
デート・ア・ライブの主人公、五河士道の事。特に治癒の力の事ですね。当然ウィードの身体に青い炎が灯っていたりはしないので、これではないですよ。
・「〜〜
とあるシリーズに登場するキャラの一人、垣根提督の事。より正確に言えば、新約でのです。…格好良い能力ですよね。ついパロディしたくなるものです。