超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第三十五話 いつもいつでも賑やかパーティー

 無事に皆さんがうずめさんの本拠点に到着して、マジェコンヌへかなりの深手を負わせる事も出来て、その上でお姉ちゃんじゃないお姉ちゃんとの出会いもあって……ウィードさんが死んじゃったと思った時は、どうしようもない無力感と守れなかった自分への自己嫌悪に苛まれたけど、それも結果的には何とかなった。だから、わたし達も不安なく(致命傷が元に戻ったのは気掛かりだったけど…)本拠点に来る事が出来て、さぁ一休みしたし今後の事とか色々話を、という雰囲気になっていたんだけど……

 

『お腹空いたっ!』

 

 お姉ちゃんと大きいネプテューヌさん…同一人物の二人は、揃ってお腹が空いちゃったみたいです。…まぁ、わたしもそろそろ何か食べたいなぁ…とは思ってたけど……。

 

「…二人は、空腹感も共通してるのか…?」

『うーん…そうかもっ!』

「あ、そ、そうなのか…凄いな、色んな意味で……」

 

 怪訝な顔で訊いたウィードさんへ、二人は全く同じタイミングで反応。…同一人物って、ここまで同じになるものなのかな…後空腹感は流石に共通してないんじゃ…。

 

「はは…でも、なんだかんだで昼食も食わずこんな時間になっちまったんだもんな。話なら食事中も出来るし、先に昼飯にするか?…いや、時間的にはもう夕飯だが……」

「オレは構わないよ。皆大変だったろうしね」

「なら早速……と、思ったが…ここの面子が一気に増えたんだよな…それに、折角大きいねぷっちが仲間になったんだし…よし!ここは一つ、森で食料調達してこようぜ」

 

 そう言って、うずめさんは左の掌へ右手の拳をパンとぶつける。当然何を思って食料調達に至ったかはその前の言葉で分かってるから、わたし達は次々と同意。

 

「それじゃあ早速行こうよ!早くしないと、美味しいものが逃げちゃうかもよ?」

「本当にネプテューヌさんはお姉ちゃんと同じ性格をしているんですね。…けど、今はこの拠点に沢山の人…じゃなくてモンスターさんがいる事ですし、ここはわたし達の誰かがここに残って万が一に備えるのもいいんじゃないでしょうか?」

「あ、それもそうだね。じゃあ誰が残る?」

「……えと…じゃあ、言い出しっぺだしわたしが…」

 

 くるりとお姉ちゃんが見回して、それからわたし達も顔を見合わせる。

 すぐに「なら自分が」って言う人がいなかったのは、残るのが嫌だから…じゃなくて、別にどっちでも良い事だから。少なくともわたしは、行っても残ってもいいと思っていて…でもわざわざ時間をかける事でもないし、と提案者として手を挙げる。するとやっぱり皆も思った通りの事を考えていたみたいで、すぐにわたしに決定した。

 

「じゃ、何かあったら頼むぜぎあっち」

「はい、任せて下さい」

「美味しそうなもの一杯取ってきてあげるから、楽しみに待っててね!ケーキとかグラタンとかフォークが浮いてるスパゲッティとか!」

「う、うん…多分料理済みのものはないだろうし、あっても腐ってるんじゃ……って待って!?最後のは食品サンプルだよ!?それはどっちにしろ食べられないよ!?」

 

 という訳で、出発するお姉ちゃん達。わたしは「お姉ちゃんの場合、何かしら凄い物は見つけそうな気もする…」とかなんとか思いながら、ふぅ…とその場に腰を下ろす。…あ、今わたしがいるのはテントの中ですよ?

 

(…待ってる間、どうしよっかな)

 

 万が一に備えて…とは言ったものの、別に何かやる事がある訳じゃない。ここに元からいたモンスターさん達とはもう挨拶したし、どんな食材を取ってきてくれるか分からないから、準備をしておく事も出来ない。ただまぁ、少なくともテントの中にいるんじゃ外で起きた事への反応が遅れちゃうし、取り敢えず外にはいよう。……そう、思った時だった。

 

「おい、おい…!ここから出してくれ…!」

「へ……?」

 

 不意に、どこかから聞こえてきた高い声。聞こえ方からして、外じゃないみたいだけど…テントの中には、わたししかいない。

 

「…空耳?でも、それにしてははっきりしていたような……」

「空耳じゃねぇ…!れっきとした声だ…!」

「反応が返ってきた…!?って、事は…だ、誰かいるんですか…!?」

 

 返答に思わずびくりとしながら見回すわたし。でも、やっぱり人影はないし、隠れられそうな場所もない。…って、事は…まさか光学迷彩か何かを使った敵…!?……あ、でも…それならわざわざ声をかけてなんか来ないだろうし…どういう事…?

 

「こっちだ…!えぇと…取り敢えずまずは声のする方に近付いてくれ…!」

「こ、声のする方…?…こっち、かな……」

「よし、声からして方向は間違ってないな…今度は下だ、下を見て探せば分かる!」

「あ、はい…。…って、あれ…?この流れって…まさか、声を出しているのはめだか師匠…!?」

「違ぇよ!見下げてごらんとは言ってねぇだろうが!」

 

 なんでやり取りをしながら、何か切羽詰まってる様子を感じたわたしがテント内を探す事数十秒。かなり声が近くなったなって思ったところで、わたしが視線を降ろすと…そこにあったのは、前におね…ネプテューヌさんが見せてくれたドリンクと紫のノート。

 

「……ひょっとして…この液体の中に、何か…」

「うげっ、もしやあれが近くに置いてあるのかよ…。まぁいいや、そっちじゃなくてノートとか日記帳っぽい物があるだろ?そっちだそっち…!」

「こっち、ですか?…あ、確かにこれから声が……」

「よし、なら次は…あー、蝶々みたいな模様の付いてるページを開いてくれ。…それと、他のページは割と虫の標本

になってるところが多いから、じっくり見るのはお勧めしないぞ…」

「む、虫の標本…!?…うっ、ほんとだ……」

 

 言われるがままに本を拾って開くと、いきなり目に入ってくる昆虫の標本。適度に目を逸らしつつページを捲るとそこも虫の標本になっていて、わたしは本を閉じたい思いに駆られつつも蝶々の模様を探していく。

 

(…虫の標本が多いけど…他にもメモになってたり、そこそこ長めの文章が書かれてたり、何でも有りな感じだなぁ…。…っていうか…文字の癖も、お姉ちゃんと同じなんだ……)

 

 隣のドリンクと洞窟内で見た時の記憶から、これがネプテューヌさんのノートである事は間違いない。だからちょっと気は引けたけど、わたしはページを捲り続け……遂に蝶々の模様を発見した。

 

「……!ふへぇ、やっと明るくなったぜ…やっぱり姉と違って、基本物事を素直且つ真面目に捉えてくれる分、話が早くて助かるぜ…」

「え、姉…?それって……」

「っと、何でもない。それじゃあ最後だ、その模様を剥がしてくれ」

「…剥がすと、どうなるんですか?」

「俺が解放される」

「はぁ…はい!?解放って…封印、されてるんですか…!?」

「そんな感じだ、だから頼む…!」

「わ、分かりました…!そういう事なら……」

 

 色々不思議だとは思いつつも、同時にファンタジーみたいな展開で面白いとも感じ始めていたわたしは、封印という穏やかじゃない言葉を受け、慌てて模様の端に指を掛けて……その瞬間、ふと止まる。

 

「…待って下さい…そもそも貴女は、何者ですか…?」

「…俺か?俺は…まぁ、妖精みたいなもんだ」

「妖精、ですか…?…その割には、結構荒っぽい口調な気が……」

「それは別にいいだろ。妖精は丁寧か可愛い口調じゃなきゃ駄目なのか?」

「そ、それは確かにそうですね…。…あれ?というか…どうしてネプテューヌさんに頼まなかったんですか?…まさか貴女、本当は悪い妖精で、ネプテューヌさんが封印したとかじゃ……」

「うっ……そ、それはあれだ!あいつには俺の声が聞こえてないんだよ!ほら、人と女神じゃ感覚も違うだろうし、妖精はどっちかっていうと女神側だろ?」

「あー、そういう…。…えと、じゃあいきますよ…?」

「頼む。お前だけが頼りなんだ…!」

 

 疑問を解消出来たわたしは、今度こそ模様に指を掛けて力を込める。勿論変に思う部分もあるから、一応警戒だけはしておくけど…もしずっと前から封印されていて、近くにいたネプテューヌさんには何度呼んでも声が届かなかったんだとしたら、それはきっと凄く辛い筈。…だったら気になる点はあっても、信じてあげるべきだよね。

 わたしの心の中にあるのは、そんな思い。だからわたしは爪を引っ掛け、親指と人指し指で端を摘んで、そして……

 

「ネプギアー、いるー?わたし忘れ物しちゃったんだけど……って、あぁぁッ!?ちょっ、それ剥がしちゃ駄目ぇええええッ!」

「うぇぇっ!?」

 

 次の瞬間、ノック無しで(テントなんだから当たり前だけど)突如入ってきた…というか、戻ってきたネプテューヌさんの声がテント内に響く。

 それにびっくりして、危うく本を落としかけたわたし。び、びっくりしたぁ…。

 

「あ…驚かせちゃってごめんね…。でもネプギア。それは剥がしちゃ駄目」

「え、あ……駄目って、それは…」

「ちっ、後一歩だったんだけどなぁ…」

「やっぱり…クロちゃん、ネプギアを騙して逃げようとしたね?」

「へ?へ?ど、どういう事ですか…?ネプテューヌさん、この声が聞こえてるんですか…?」

 

 真面目な顔で止めるネプテューヌさんは、残念そうな声で舌打ちをする妖精さんに対し、問い詰めるような事を言う。それは、明らかに妖精さんの声が聞こえている反応で……完全にわたしは混乱してしまった。

 

「うん、聞こえてるよ?クロちゃんにはなんて言われたの?」

「えと…自分は妖精で、封印されてて、ネプテューヌさんには自分の声が聞こえてないって……」

「へぇ…クロちゃん、自分が妖精っぽい外見だって自覚はあるんだね」

「うっせ。あーあ…折角監禁生活から解放されると思ったんだけどなぁ…」

「か、監禁生活…!?」

「あぁ、こいつはこう見えてかなりヤバい奴だからな…お前も油断すると標本としてここに閉じ込められるかもしれないぞ」

「ちょっと!?大嘘吐かないでよクロちゃん!ち、違うからね!?クロちゃんをここに入れてるのはクロちゃんが悪さをするからであって、わたしそんなヤバい人じゃないからね!?」

 

 一体どういう事なのか訊きたかったのに、何やらどんどん変な話に。…なんだろう、ネプテューヌさんが来た瞬間にわたしが置いてけぼりになるって…やっぱり、見た目は違っても主人公パワーは持ってるのかな…。

 

「あ、あのー…つまり、このクロちゃんさんというのは…?」

「んーと…わたしも詳しくは分からないんだけど、とにかく次元を股にかけて悪さをする凄く悪い子って覚えておいて。今回みたいな事がまたあったら困るし、お夕飯の時に皆の前でもうちょっとしっかり説明するけどさ」

「おいこら、なんだその雑な説明は」

「え、じゃあ手も足もほっぺもぷにぷにな事とか、寝てる姿はすっごく可愛い事とかも言った方が良かった?」

「良くねぇ!んな事説明すんな!」

 

 漫才みたいな…つまりはわたし達パーティーでよく見る感じのやり取りを経て、わたしから本を受け取ったネプテューヌさんはテントの外へ。それを追ってわたしも出ると、「じゃ、今度こそ行ってくるねー!」とネプテューヌさんは森の方へ駆けていく。

 

「…詰まる所、わたし騙されてたんだよね…でも、何だろう…この悲しい訳じゃない、何とも言えない気持ちは……」

 

 そうしてネプテューヌさんと連れていかれたクロちゃんさんを見送りながら、わたしはぽつりとそんな事を呟くのでした。

 

 

 

 

 森の中で食料を調達し、本拠点に戻ってきてから数十分後。俺達はキャンプ感溢れる木製のテーブルを囲んで、夕食タイムに入っていた。

 

「はふぅ…やっぱりご飯は皆で食べると美味しいよね!」

 

 さっきまでと変わらず二人のネプテューヌは元気だが、特に大きい方のネプテューヌはにっこにこ。本当に楽しそうな顔をしていて、見てるこっちも思わず頬が緩んでしまう。

 

「あれ?おっきいわたしは、あんまり皆でご飯食べないの?」

「旅人っつってたし、いつも違う場所で食事をしてるからとかじゃないか?」

「お、うずめ鋭いね。大体そんな感じだよ」

『大体…?』

「一応、定期的に寄ってる…っていうか戻ってる場所はあって、そこには仲間もいるんだけどね。でもまだあんまり仲良く慣れてなかったり、いつも忙しそうにしてたりで一緒に食べる事は殆どなくて……でも、こんな感じに食事出来たらいいな〜と思ってますっ!」

「そっかぁ…きっと大丈夫だよ、おっきいわたし!何せわたしのコミュ力は、メーター振り切って逆にウザいと思われるレベルなんだからさ!」

「お、お姉ちゃん…逆にウザいと思われるのはアウトなんじゃ……」

 

 ちょっと踏み込んだ話に…なったと思いきや、ダブルネプのポジティブシンキングとネプギアの突っ込みによって、すぐにまた笑いが溢れる。やっぱり、これが女神とその同一人物が成せる、明るい空気感…ってやつなんだろうか。…大きいネプテューヌの発言が最後、何故か宣言っぽくなってた事は本当にただただ謎だが…。

 

「ふふ、ねぷっちが二人になってさらに賑やかになったね。…ところで大きいねぷっち、確認なんだが…君はこの次元の人間ではないんだね?」

「うん、そうだよ〜。わたしは色んな次元を旅してるからね」

「へー。…んん?おっきいわたしは、わたしと初めて会ったんだよね?って事は…え、まさかわたしって、次元全体で見たら割とマイナーな女神なの!?てっきり色んな次元で女神やってると思ってたけど…」

「いや、それはどうだろう。大きいねぷっちが一つの次元に長く滞在した事がないのなら、小さいねぷっちを見る機会がなくてもおかしくはないし、仮に小さいねぷっちが女神を務めている次元に訪れたとしても、時代が違えばやはり出会う事は出来ないからね」

「あ…それにほら、わたし達って公務で人前に出る時は、基本女神の姿でしょ?だから見ていても、お姉ちゃんだとは気付かなかった…って可能性もあるんじゃないかな?」

『あー…それはあるかも…』

 

 そこから話はちょっと真面目な感じに。次元や女神の活動絡みになると俺は何も言えないから、聞き手として想像を巡らせる。

 

「…あ、でもわたしが生まれた次元の女神の中に、ちっちゃいわたしはいなかったかな。確かプラネテューヌ…は、あったと思うけど」

「そうなの?じゃあ、そっちのプラネテューヌの女神って誰?」

「なんとかハートさん」

「…ごめん、それだと全く分からないんだよね…個人としての名前は分からない?」

「えーっと…プルなんとか、って女神だったかな…?」

「プルなんとか?…プルート…?」

「お姉ちゃん、それ違う神…しかもプラネテューヌじゃなくて冥府か海……」

 

 ネプ三人による、トリオ漫才みたいなやり取りは続く。隣を見るとうずめと海男も肩を竦めていて、皆同じ事を考えてるんだなぁと思ったら俺はついつい苦笑。

 

「まぁ、その女神様とも直接会った事はないんだけどね。元の次元より別の次元を旅してる時間の方が、確かもう長いからさ」

「むむ、じゃあおっきいわたしは完全に別次元に行き慣れてるんだね…わたしも真のディメンショントリッパーになる為に、今回だけに限らずもっと次元移動しないと…!」

「燃えてるな、小さいネプテューヌ…。…ところで、夕飯中に次する事の話もするんじゃなかったか?」

「っと、そうだったな。じゃあ……」

「あ、待って!」

 

 何も言えない事に耐えられなくなった…とかではなく、単にこのままだと雑談で夕飯終了になってしまいそうな雰囲気を感じた俺は、気を見計らって声を上げる。するとすぐにうずめが反応して、話はする筈だった本題に……と思ったが、そこで突然テントの方へ走っていく小さいネプテューヌ。続けて大きいネプテューヌも走っていって、何だろうと俺達がテントの方を見つめていると……

 

『第七回、今後のねぷねぷ一行の活動方針を考えよう会inうずうずの家』

 

 またなんだかよく分からない看板を二人で持って出してきた。…もうさ、突っ込みどころがあり過ぎてどこから指摘すれば良いのか分からねぇよ……。

 

「ねぷっち…ぎあっちが夕飯作ってる間に二人してテントに入ってったと思ったら…そんなもの用意してたのか……」

「うん!これはもうパーティー恒例のネタだからね!」

「そ、そうか…因みにうずうずってのは……」

『うずめだよっ!』

 

 それはもう楽しそうに近くの木の枝に引っ掛ける二人を見ながら、なんとも言えない顔で話すうずめ。因みにネプギアはと言えば、「あ、懐かしいなぁ…」みたいな顔をしていて…うん、まぁ…いいや。多分ほんとに恒例のネタなんだろう。

 

(…そういやあの板、食料調達の時小さいネプテューヌが拾ってたやつか……)

「…って訳で、真面目にお話しするよー!」

「そ、その看板を用意しておいて言うか…ほんと小さいネプテューヌって凄いな、色んな意味で……」

「えへへ〜、でしょー?」

 

 という訳で、二人のネプテューヌが席に戻ってきて話スタート。先に言っておくと、この後看板は終了まで特に触れられる事はなかった。

 

「取り敢えず、あんまりここに長居する訳にはいかないな。何せあのシェアクリスタルは廃ビルに隠したままだしよ」

「わたし達の目的は…まぁ、色んな事のついでに少しずつ進めていけばいっか。どっちにしろ地道に探してかなきゃだしさ」

「…マジェコンヌの方はどうするんだ?あれは逃げた…んだよな?」

「ま、そうだな。感覚的に、一日二日で万全の状態に戻るとは思えないが…確かにババァの方も、出来れば回復し切る前に倒しておきたいよな」

 

 これまでとは打って変わって、スムーズ且つ真面目に進む会話。俺は戦う訳じゃないが…やっぱり、一番気掛かりになるのはマジェコンヌの事。

 

「…でも、どうやって探しましょう?マジェコンヌが簡単に追跡出来るような手掛かりを残すとは思えませんし…」

「ふーむ…今回は誘き出す事が出来たが、深手を負っているなら、身を隠す事を最優先にするだろうからね。何とかして探し出すしかないだろう」

『うーん……』

「…なぁ、そいつってのは、さっきネプテューヌ…あぁ、大きい方な。…が標本にした奴と関係があるのか?」

『へ……?』

 

 どうしたものかと俺達が考え込む中、不意に聞こえてきた聞き覚えのない声。ネプギアははっとした顔をしていて、大きいネプテューヌはおもむろに本を取り出したが…俺にはさっぱり分からない。

 

「今の声って…え、誰か裏声でも出した?」

「違ぇよ、とにかく質問に答えろ」

「あ…はい。そうですけど……」

「そうか、だったら俺が探してやってもいいぜ?」

「だ、だから誰!?もしや、久し振りに天の声パターン!?」

 

 探してもいい、と言ってくる謎の声。それは当然、俺達にとってありがたい事だが…そりゃ、誰だか分からない声なんだから素直に喜べる訳がない。

……と、思っていると…そこで一人、全く不思議そうにしていない大きいネプテューヌが口を開く。

 

「えーっとね、さっきネプギアにはちょっと話したけど…これは、この子の声だよ」

 

 そう言って大きいネプテューヌは本を開き、蝶の模様が付いたページを見せてくれる。

 それから、大きいネプテューヌによる説明が開始。それを掻い摘んで表現すると、この声の主はクロちゃんという、色々あってネプテューヌが捕まえた悪い妖精…みたいな存在らしい。

 

「クロちゃんかぁ…じゃ、スキンヘッドだったりするの?」

「するか!そいつは男じゃねぇか!」

「あはは、違うよ。黒いからクロちゃんって言うんだ」

「それも違ぇ!クロニクルのクロだって、何回言ったら分かるんだよお前は!」

 

 二人のネプテューヌによるボケを受けて、結構強めに突っ込むクロちゃんとやら。…この様子じゃ、多分前から大きいネプテューヌに対してよく突っ込んでたんだろうなぁ…。

 

「クロニクル…年代記や編年史か…。…先程標本云々と言っていたが、もしやそれを手掛かりに探す…という事かい?」

「お、中々頭の回転が早いな。そういうこった。次元との繋がりがねぇから本来の力は発揮出来ねぇが、まあ同じ力があるなら探し出すのは無理じゃねぇ」

「さっすがクロちゃん。でも、クロちゃんが自分から協力を口にするなんて珍しいね。今度は何を企んでるの?」

「別に企んでる訳じゃねぇよ。単にお前達が地道に探すのに付き合うより、ぱぱっと案内してド派手に戦う姿を観戦する方がずっと面白そうってだけだ」

「あー、そういう…じゃあ、ちゃんと探してよ?この次元に来た時みたいな悪戯したら、周りに蜘蛛の巣の悪戯描きしちゃうからね?」

「じ、実害はないけど地味に嫌な嫌がらせは止めろ…。…ちゃんと探すっての。じゃなきゃ俺も観戦出来なくなるんだからな」

 

 方法はよく分からないが、クロちゃんはちゃんと探す事が出来るらしい。そして動機は不純だが、大きいネプテューヌの表情からして信用する事も出来る様子。という訳で……大きいネプテューヌ(とクロちゃん)の存在により、なんと簡単に問題が解決してしまった。

 

「よっし、じゃあ明日からの行動はクロちゃんの案内を受けつつ、塔の手掛かり探しだな!へへっ、こんな上手く話が進むとは思わなかったぜ」

「ふふーん、これもわたしの行動とクロちゃんの力…ひいてはそのクロちゃんを捕まえた、やっぱりわたしのおかげって事だよね!皆、褒めてくれてもいいんだよー?」

「よっ、流石わたし!凄いよわたし!」

「でしょでしょー?」

 

 そんなこんなでまた話は雑談に戻り、楽しい雰囲気で夕飯は終了。そうして俺が食器を片付けていると、こんな会話が聞こえてくる。

 

「ねぇねぇうずめ、さっきドラム缶風呂見つけたんだけど、あれって入れる?」

「ん?入れるぞ?」

「ほんと!?じゃあ皆で入ろうよ!」

 

 俺の耳に入ってきたのは、うずめと大きいネプテューヌの声。内容は、ここにあるらしいドラム缶風呂の事で……

 

「皆で?…そりゃ、まぁ別にいいが…っと、待った」

「……?」

「おいウィード、もし前みたいな事があったら…その時は膝も入れるからな」

「へ?前って……あ、あの事か!?いやだからあれはわざとじゃねぇって!や、やらない!やらないから!」

 

 なんとも酷い警告を受ける俺だった。酷ぇ…ほんとに酷ぇ…あれはわざとじゃないし、俺はそんな事考えてなかったのに……。

 

 

 

 

……まぁ、興味がないって言ったらそりゃ嘘になるけどな。だって、男の子だし。

 

 

 

 

「…ふぅ。いい湯だなぁ……」

 

 亀裂が入っている事に目を瞑れば綺麗な夜空に、これまた豊かな自然が溢れる環境。暖かなお湯に身体を付けるわたし達は、全員ハリとツヤがばっちりのお肌を余すところなく晒していて……そう!今回のお話のラストはお風呂…即ちサービスシーンだよっ!

 

「そうですねぇ…こうしてドラム缶風呂に入りながら見る景色も、風情があっていいと思います……」

 

 髪をアップで纏めたネプギアの、ほっこりしたような声。ほんとに久し振りのお風呂は気持ち良くて、景色も良くて、おまけに皆で入ってるんだから、もうこれは楽しくない訳がないよねって言える状況。

 ほんと、ほんとに条件的にはばっちりって感じ。実際わたしとおっきいわたしがほぼ同時に入った時はその通りに感じていたし、今もその条件は何一つ変わってないんだけど……

 

「……風呂に四人で入ってかなり狭い状態になってなきゃ、尚更良いんだけどなぁ…」

 

……こういう問題があるせいで、完璧には楽しめないわたしだった。いや、そりゃそうだよ!どんなに他の条件が良くても、ドラム缶の中に四人で入ってたらぎゅうぎゅうになって楽しめないもん!っていうか身動きもあんまり取れないからねこれ!?

 

「…やっぱり、四人で一緒に入るのには無理があったんじゃ……」

「駄目駄目!やっぱお風呂は皆で入らなきゃ!これ約束だよね?」

「だよね?って…流石にこれはわたしも賛成出来ないよ!?出来ないし…正直ちょっと、喧嘩売られてる気分でもあるんだからね!?」

「えぇ!?な、なんで!?」

「……分からないだろうね、特におっきいわたしには…」

 

 じとー、っと半眼でおっきいわたしを見るわたし。…はぁ…こんなに身体が触れ合う形じゃ、否が応でも意識しちゃうじゃん…何なら皆内側向いてるから、ある部分を比べっこしてるみたいにもなってるし……。

 

「んー…じゃ、ちっちゃいわたし出る?ほら、同じわたしなんだから一人入れば二人共あったかくなるかもよ?」

「ならないよ!そしてそれで言うならわたしよりおっきいわたしが出た方が、よりスペース空くんじゃないかなー!?」

「ま、まぁまぁ落ち着いてお姉ちゃん。ネプテューヌさんも、悪気があった訳じゃないと思うし…」

「むむぅ……」

 

 ネプギアに宥められ、まぁ一先ずわたしは矛を収める。…これなら、女神化して入った方が良かったかなぁ…その場合、いよいよ苦しいレベルで狭くなりそうだけど……。

 

「…あ、それと…ネプテューヌさん、ちょっと変な頼み事ですけど…ネプテューヌさんを、大きいお姉ちゃん…って呼んでもいいですか?」

「ねぷっ!?ネプギア!?」

「お姉ちゃん…?うん、そんなの勿論OKだよっ!むしろ嬉しい位だもん!」

「ねぷぅ!?お、おっきいわたし!?」

 

 と、折角矛を収めたのに、何故だかとんでもない話に。ちょっ、ネプギアがわたし以外をお姉ちゃんと呼ぶだなんて…これは由々しき事態だよ!?…いや、おっきいわたしもわたしだけど!

 

「よかったぁ…」

「よかったぁ…じゃないよ!?ね、ネプギア何を考えてるの!?え、まさか……わたしじゃ満足出来なくなっちゃったの!?」

「へ、変な言い方はしないでよお姉ちゃん!…そうじゃなくて…別次元の同一人物とはいえ、お姉ちゃんを『ネプテューヌさん』って呼ぶのがわたしの中で違和感あっただけだからね…?」

「あ、そ、そっか…ならそれを先に言ってよネプギアぁ……」

「…わたしにとってお姉ちゃんはお姉ちゃん一人だし、それは伝わってるかな、って思ったんだけど……」

「うっ…そ、そう言われると何も言い返せない……」

 

 ちょっと意外な、嬉しいけどそれに気付けなかった事についてはショック…って感じの事を言われて、たじたじ状態になっちゃうわたし。…でも、ほんとに良かったぁ…もしおっきいわたしにネプギアを取られたら、わたしどうするか分からないところだったよ……。

 

「お姉ちゃん、お姉ちゃんかぁ……あ!何ならネプギア、わたしの事をお姉ちゃんで、ちっちゃいわたしを小さいお姉ちゃん、って呼んでもいいんだよ?」

「……!?ちょっとおっきいわたし!?もしやさっきから、ほんとにわたしに喧嘩売ってる!?売ってるなら買うよ!?真のネプテューヌを賭けて、全力で迎え撃つ所存だよ!?」

「お、おい二人共止めろって…何で自分同士で喧嘩する流れになってんだよ……」

「ほーぅ、言うねわたし。そこまで言うなら、わたしだって戦っちゃうよ!世の中じゃ自分に勝てだの、自分から逃げるなだのよく言われてるしね!」

「そ、それは精神的な話であって、実際に戦う訳じゃないと思うよ大きいお姉ちゃん……」

「だったらお風呂出なよわたし!ダンスで勝負だよっ!」

「いいよ、やってやろーじゃん!」

「だから止め……ダンス!?ダンスバトルするのか!?何故に!?そして大きいねぷっちもそれでいいのかよ!」

 

 わーわーきゃーきゃーと、わたし達はお風呂の中で大騒ぎ。まさかこんな展開になるとは思ってなかったけど、時にはヒートアップしちゃうのもわたし達のパーティーらしさ。って訳で…ほんとに勝負だよおっきいわたし!ここでわたしはわたしに勝って、わたしの強さを見せてあげるんだからねっ!

…って言うのが今回のオチだよー!お分かりの通りわたしは本気で怒ってる訳じゃないし、多分何事もなかったように仲良くしてる事間違いなしだから、不安になんてならず次回もお楽しみにー!

 

 

 

 

 

 

「……あ、あれっ?…出られない…?」

「ふふーん、そのおっきな胸が仇になったね!…って、へ…?わたしも、出られない…?」

 

 因みにその直後、ドラム缶風呂から出られない騒動が発生してわたし達全員が慌てたのは……まぁ、所謂余談って奴だよね。その後はちゃんと出られたから、次回も全員ドラム缶に入ったまま…みたいな展開にはならないよ?




今回のパロディ解説

・めだか師匠
お笑いタレント、池乃めだかこと中井昭彦さんの事。今回の話で出たのは、新喜劇でのネタの一つですね。パーティーメンバーで新喜劇…これも面白そうな気がします。

・プルート
ローマ神話やギリシャ神話に登場する神の一人。ある意味これもパロディと言えるでしょう。そして、プルなんとかさんについては…今後をお楽しみに、ですね。

・「〜〜スキンヘッドだったり?」
お笑いトリオ、安田大サーカスの一人、クロちゃんこと黒川明人さんの事。正直、クロちゃんというと彼の事をまず連想します。皆さんも割とそうなのではないでしょうか。
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