超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第三十七話 探して、進んで

 マジェコンヌを探す為に、今日は一日歩き回った。結論から言うと、マジェコンヌやその手掛かりを見付ける事は出来なかったけど、クロちゃんさんの見落としがないのなら、少なくとも今日わたし達が歩き回った場所の周辺には潜んでいないとの事。それにマジェコンヌは見つけられなかったけど、立ち寄った施設では中々面白い機械を見つける事が出来て……わたしとしては、悪くない成果だったと思う。

 

「あ"ー…疲れた……」

「だよねー……」

 

 拠点の中でわたし達がよく使ってる部屋に入ると、途端にウィードさんと大きいお姉ちゃんが座り込む。勿論、歩いた距離は全員同じだけど…やっぱり人のお二人は、わたし達より疲れてるみたい。

 

「ふへ〜…何か飲み物ある〜…?」

「スポーツドリンクならあるね。飲むかい?」

「あ、それわたしもちょーだい」

 

…と、思っていたけど…お姉ちゃんも大きいお姉ちゃん達側らしい。う、うん…まぁ、疲労って気分的なものもあるもんね。

 なんてわたしが思ってる中、スポーツドリンクを取り出す海男さん。その言葉を受けて、大きいお姉ちゃんは脚を投げ出したまま振り向き……って、あぁっ!?

 

「ちょっ、お、大きいお姉ちゃん!?脚!脚っ!」

「脚?あるよ?」

「そ、そうじゃなくて…!」

「……?……あっ…!」

 

 とんでもない事に気付いたわたしは慌てて声を上げるけど、大きいお姉ちゃんはきょとーんとしたまま。でも事が事だから、わたしは具体的な事を言えなくて……しかも運の悪い事に、わたし達のやり取りを聞いてうずめさんと話していたウィードさんがこちらへと振り向こうとしてしまう。

 けれど間一髪、寸前のところで大きいお姉ちゃんはわたしの言いたい事に気付いて、ばっと脚を閉じてくれる。…あ、危なかったぁぁ…。……え、何が危なかったかですか?それは言えませんよ、大きいお姉ちゃんの沽券に関わる事ですから。

 

「…どうかしたのか?」

「う、ううん。何でもないよー…?」

「そうか…そうだうずめ、さっき見つけた店の事なんだけどさ」

「……ありがとね、ネプギア」

「ううん。でも気を付けてね?」

「あはは…うん、気を付けるよ…」

 

 割座で座り直した大きいお姉ちゃんは、ちょっと恥ずかしそうな表情を浮かべる。それにわたしは苦笑いしながら返答して……あ、今の大きいお姉ちゃんの顔、可愛かったかも…。

 

「ねぇねぇ、一休みしたしそろそろご飯にしない?…あれ?ご飯の前一休みはおかしいかな…?」

「ま、いいんじゃねぇの?よっし、それじゃあ……」

 

 その数秒後、お夕飯の準備に入るわたし達。これまでなら、わたしが作るところだけど…探索中に冷凍ハンバーガー(勿論冷凍状態だったから傷んでない)を見つけたから、今日は電子レンジで温めるだけ。…冷凍食品って、助かるよね。

 

「んっ…おぉー!冷凍ハンバーガーって結構美味しいんだね!予想以上かも!」

「案外パン…えぇと、バンズだっけ?…がそこまでしんなりしてないんだな。…ところでネプテューヌ、さっき冷凍庫前で何か書いてなかったか?」

「あ、うん。一応、『ご請求はプラネテューヌ教会まで』って書いたんだ。こーゆー事にも気を回しておくのが、長期政権には必要だからね!」

「…ネプテューヌってさ、偶にしっかりしてるっていうか、自然と『国の長なんだなぁ…』って思わせる発言するよな」

「ふっふーん。…って、それ褒めてる?遠回しにわたしを馬鹿にしてない?」

「してないしてない。…あ、ポテトも美味いなぁ……」

 

 もぐもぐと食べつつ、お姉ちゃんとウィードさんが話す。一方、逆側に目を向けてみると……

 

「はーいクロちゃん、あーん」

「それはいいからさっさと入れてくれ」

「もー、ちょっとは乗ってよ〜。…はい、どーぞ」

「へいへい……へぇ、確かに美味いな」

「でしょ?あ、飲み物も欲しい?」

「おう、頼む」

 

 まるで餌を上げるみたいに、大きいお姉ちゃんがクロワールさんのページへご飯を入れていた。…って、餌なんて表現をするのは失礼かな?後、ああやって食べ物を入れる事も出来るんだ……。

 

「そうだぎあっち、施設を調べた結果はどうだったんだい?交信に使えそうかい?」

「あ……はい。結果から言うと、交信に使うのは厳しいと思います。重要な設備や装置の損傷が激しかったですし、電波の送受信という点でもあの電波塔には一歩届かないと思うので……」

「そっかぁ…まあ確かに、一発で電波塔に代わる施設が見つかるってのは流石に出来過ぎだもんね。そもそも電波塔だって偶然気味に見つけた訳だし」

「うん…あ、でも収穫はあったんだよ?持ってきた機材のパーツ取りに使えそうな機械は結構あったし、生きてたローカルサーバーから情報も引っ張れたし、何より今じゃレアなある部品があったの!っていうのもね、今のCPUの規格は……」

「あ、うんそうだね!やっぱり機械絡みになるとネプギアは頼りになるなぁー!」

「うぇ?…あ、そ、そう…?そうかな…?…えへへ……」

 

 話し始めたからには、ちゃーんと説明してあげなくっちゃ!順を追って言わないと、理解し切れない部分もあるもんね!

…と思ったわたしだけど、まだ一割も話していない内にお姉ちゃんは慌ただしく言葉を返してくる。うーん…けどこれだけで分かる事なんて……って、まさか…これ、わたしの考えてる事が今の時点で全部お姉ちゃんに伝わったって事?それ位心が通じてるって事?……もー…それは嬉しいけど、ちょっと困るよ〜、お姉ちゃん。こんなに早く終わったら、他の人には伝えられないのに〜…。ほんとに、お姉ちゃんってばわたしの事すぐに分かっちゃうんだから〜♪

 

「……ね、ねぇちっちゃいわたし…いきなりネプギアが変な感じになったんだけど、これは……」

「…こういう一面もあるんだよ、ネプギアは……」

「そ、そうなんだ……」

 

 わたしが困ったお姉ちゃんの事を考えている間に、お姉ちゃんと大きいお姉ちゃんは何かについて会話を交わす。その内容はよく分からなかったけど……って、いけないいけない。わたしの思考、ちょっと脱線しちゃってた…。

 

「…こほん。皆さん、明日はどうしますか?明日は今日の続きから…ですか?」

「俺はそのつもりだぜ。さっさとババァを見つけて倒したいしな」

「そうだね。けれど功を焦ってはいけないよ。窮鼠…いや、鼠と言うには高圧的にも程があるが…ともかく、手負いな以上油断はしないだろうし、出し惜しみもないだろうからね」

「追い詰められた奴は、何をするか分からない…って事か。…だったら、俺は…付いて行かない方が、いいか…?」

「……それは…」

 

 いつものように落ち着いた口調で、わたし達に警鐘の言葉をくれる海男さん。それをわたしは、「そうだよね、気を付けないと」…と、そのまま素直に受け取ったけど…ウィードさんは、少しだけ表情を曇らせてわたし達に訊く。自分は、その場にいない方がいいか…って。

 それが、怖さではなく引け目…また自分が、わたし達へ心配をかけてしまうのではないかという思いから出た言葉だって事は、すぐに分かった。

 うずめさんが、それに返答しかけて止まる。それはきっと、なんて返せばいいか分からないから。わたしも「そんな事はない」って否定すればいいのか、それとも「ウィードさんがそう望むなら」って頷けばいいのか分からなくて……

 

「…んー…まぁ、これまで通りで大丈夫だと思うよ?」

 

 だけどそんな中、お姉ちゃんは何の躊躇いも見せずに言う。普段通りに、いつものように。

 

「……そ、そうか…?」

「だってさ、わたし達と別行動するって事はつまり、何かあった時はウィードくんが一人で何とかしなきゃいけない訳でしょ?さっき君が言った通り何をするか分からないし、だったら別行動する方が危険じゃないかなーってわたしは思うよ。それに…女神が一番力を発揮するのは、何かを守る時だからね」

 

 そう言って、お姉ちゃんはにこりと笑う。気を遣ってとかじゃない、本心からの言葉だった事が一瞬で伝わってくる笑みを。…そ、っか…うん。そうだよね。

 

「…ウィードさん、わたしもお姉ちゃんに賛成です。現状、ここなら安全だって断言出来る場所はありませんし、強いて言えばわたし達と一緒にいるのが一番安全だと思うんです。…って、これを自分自身で言うのはちょっと変かもですけど……」

「ネプギア、そこは自信持っていいんだよ。…ううん、女神なんだから、そこは自信を持って言わなきゃ駄目だよ」

「お姉ちゃん……。…前言撤回です、ウィードさん。もう、あんな事にはさせません。貴方の事は、必ずわたし達が守ります」

 

 つい、軽く苦笑いをしてしまったわたし。でも、真面目な顔をしたお姉ちゃんに指摘されて……わたしは言い直す。今度はちゃんと、断言する。

 

「…だって。わたしは何も言わないよ。だってわたしも女神じゃないからね」

「同じく。オレも守ってもらう側だし、小さいねぷっち達の言葉は筋が通っていると思うよ」

「皆……」

 

 一人一人から言葉を受けて、ウィードさんはゆっくりとわたし達を見回す。そうして最後にウィードさんの視線が向いたのは、うずめさんの方で……

 

「…皆がここまで言ってくれてるんだ。だったら…付いてこない方が、逆に皆に悪いよな?」

「…あぁ。ごめん、それと……ありがとな、皆」

「おう。安心しとけ、ウィード。何かあっても、その時は俺が守ってやるからよ」

「…ははっ、ここまで言ってもらえるなんて……逆にちょっと悲しい気持ちになってくるな…俺、女の子に守られまくりじゃん…」

「いやいやウィードくん、こんな可愛い女の子達に囲まれてるんだから、むしろここは喜ぶべきじゃないかなー?あ、でも攻略しようっていうなら色々と覚悟が必要だぞっ!」

 

 にかっと笑ったうずめさんを見て、ウィードさんも笑みを返す……と思いきや、何とも複雑そうな顔に。わたしは女だし女神だから、その感覚は分からないけど……守られてばっかりじゃ嫌、って気持ちは分かるかな…。

 とかわたしが思っていると、何とも反応に困りそうな冗談を言うお姉ちゃん。それがまた発端になって、賑やかな雑談が再開される。…もっと真面目に考えるなら、明日の具体的な行動を話し合ったり、何かあった時の対策も講じておくべきだと思うけど…こういう雰囲気も大切だもんね。だってこれまでもわたし達は、普段のこういう明るさを原動力に、苦難を乗り越えてきたんだから。

 

(…そういえば、皆は元気かな…信次元だって大変だけど……こうして笑顔になれる時間が、あるといいな…)

 

 

 

 

 捜索二日目。小さいネプテューヌ達の目的に加え、元々考えていた街中心部への探索も兼ねて街中を歩き回っている中で、不意に本の中のクロワールが言った。

 

「…あー、やっぱりか」

「やっぱり?」

 

 恐らくは独り言であろうその呟きに、大きいネプテューヌが視線を本へと落としつつ反応。その気になる発言に、俺達もそちらへ視線を移す。

 

「ここまで、若干残滓と同じ力を感じる時があったんだよ。最初は逃げる中でその近くへ一時的に寄ったか何かだろうなと思ってたが……どうも、ある方向へ向かってる時にその傾向が強くなる。…って、言えば分かるか?」

『あぁ……』

『…………』

 

 何となく理解出来た俺が軽く頷きながら声を出すと、やっぱり皆もその説明から察した様子。……だったが、よくよく見たらしれーっと視線を逸らしている者が二名。…うん、まぁキャラ的に二人ならそうだろうなぁって気はしてたが…。

 

…………。

 

……あれ?これって、ある方向へ向かうと傾向が強くなる…つまり、その方向のどこかにマジェコンヌがいる可能性が高い…って、事だよな…?

 

「…で、その方角ってのはどっちなんだ?」

「それは…っと、おいネプテューヌ。ちょっと本を掲げてゆっくり回ってくれ」

「回る?…いいけど、どうして?」

「どうせ俺をここから出す気はねぇんだろ?だったらこうでもしなきゃ方向の指示が出来ねぇからな」

 

 うずめに訊かれて、クロワールが大きいネプテューヌに指示して、それを聞いたネプテューヌが本を開いたままその場でゆっくり回転開始。そして三分の二程回ったところで、再びクロワールが声を上げる。

 

「ストップ、こっちだな。まだ距離は離れてるだろうが…この方向にいる事は間違いねぇ」

 

 間違いないとまで断言するクロワール。口振りからして、かなりの自信もある様子。

 

「この方角…進んだ場合、行き当たるのは街の中心部か……」

「やるねー!流石クロちゃん!よっ、頼りになるよ方位クロちゃん!」

「はっ、この位なんて事…って待て、誰が方位クロちゃんだ!俺は磁石じゃねぇよ!」

「じゃ、記録黒針(クロポース)?」

「もっと違ぇわ!」

「クロゴンレーダーはどう?」

「く、クロゴン…?……あっ…俺は七つ集めると願いを叶えられる玉を探してる訳でもねぇっての!分かり辛いわ!」

 

 大大小で立て続けにボケを放ってきたネプテューヌ二人に対し、クロワールは本の中から全力突っ込み。見ている分には愉快で楽しいが……本人的には大変なんだろうなぁ、クロワール…。

 

「あ、あはは……えと、海男さん。今中心部と言いましたが…そこに何があるかは分かりますか?」

「いや、分からない。…ぎあっち達の国なら、中心部には何があるんだい?」

「プラネテューヌやわたしの知る国なら、教会ですね。…プラネテューヌの場合、教会と言いつつタワーですけど……」

「教会、か…もしこっちも同じなら、中心部には俺の本来の本拠地があるって事か……」

「教会は物理的にだけじゃなくて機能的にも国の中心なので、そこに行けばマジェコンヌ関係無しに色々成果を得られると思いますよ、うずめさん」

「そっか。だったら、目的地の一つに教会を入れるのも悪くないな」

 

 一方こっちは至極真面目な会話を展開中。…これが決して大人数でもない集団の中で共存してるんだから、凄いよな……。

 

「だーっ!ネプテューヌが二人になると面倒臭さは二倍以上だなッ!もう五月蝿いからさっさと歩け!」

「残念!わたし達は、歩く程度じゃちっとも静かにはならないのさっ!」

「だろうな分かってるよ畜生!…どうしてこんな事になったんだ……」

「だ、駄目だよお姉ちゃん、探してくれてる人をそこまでからかっちゃ…。大きいお姉ちゃんも、程々にね?」

『はーい』

「そ、即答しやがった……」

 

 で、うずめ達が真面目なやり取りをしてる間もネプテューヌ二人はからかっていたらしく、最終的にクロワールはげんなりとした声になっていた。…流石にちょっと不憫だ…何かあったら、俺は優しくしてやろう……。

 

「ま、とにかく進もうぜ。クロワール、もっとババァに近付けばより正確な場所が分かったりするのか?」

「あぁ、そりゃな…」

「(ほ、ほんとにテンション下がってるな…)…けど、中心部か…そこに行きゃ、俺も何か分かったりするのかな……」

「そうだなぁ…案外、ウィードも記憶を失う前は結構名の知れた奴だったのかもしれないぜ?」

「え、そう思う?この俺だよ?」

「あー、それもそうか」

「だろ?…って俺から言ったとはいえそれは酷くね!?」

 

 そんなこんなで俺達はまた移動開始。これまでは闇雲に探していた面も強かったが、今は大まかでも向かうべき場所が分かってる分、無駄なく捜索が出来ている…ような気がしている。

 けど逆に言えばそれは、マジェコンヌとの再戦が近付いているって事。今度こそ、俺は見ているだけになると思うが……それでもやっぱり、緊張はする。

 

(…早く見つかった方が、きっと皆としては楽な筈。けど…駄目だな、俺は…見つからなきゃ、今日も戦いにはならないなんて…そんな事考えちまってる……)

 

 例え今日見つけられなかったとしても、いつかは戦う事になる。戦わずに済む可能性は…きっと、限りなく低いと思う。なのに、こう思うのは……無責任だ。俺は戦いもしないのに、そんな事を考えるなんて。

 でも、何故だろうか。また同じ事になるのが怖い…ってのもゼロじゃないが、多分それだけじゃない。皆が傷付くかもしれないのが怖いのか?マジェコンヌとは和解したいと思ってるのか?それとも、何もせずただ見ているだけになるのが嫌なのか?或いは……

 

「……?うぃどっち、どこに行くつもりだい?」

「ん?どこって……あれ?」

 

 なんて考えていた俺は、どうも思考の沼に入ってしまっていたみたいで……気付けば、皆とは違う道に入っていた。というか…俺だけ、角を曲がってしまっていた。

 

「何かありましたか…?」

「い、いや…すまん、ちょっと考え事してて……」

「考え事?次回の特番は何時からだったかなー、とか?」

「そんな日常的な事は考えてねぇよ……」

 

 姉妹からの質問に答えつつ(突っ込みつつ)、小走りで皆に合流する俺。まぁ、当然っちゃ当然だが…皆、怪訝な表情を浮かべている。

 

「まぁ、何でもいいけど気を付けろよ。てか、曲がるべき所を真っ直ぐに行っちまったならともかく、真っ直ぐでいいのにわざわざ曲がるって……」

「ほんとすまん…でもほんと、なんで俺は曲がったんだ…?」

「いや、それを俺達に訊かれても……」

「…あ、もしかしたら、ここはウィードくんが前によく通ってた道とかなんじゃない?だから身体がそれを覚えてて〜…とか」

「……!そ、そうなのか?」

「ほんとにそうかどうかまでは分からないかな…」

「あ…そ、そりゃそうだよな…悪い……」

 

 会話の中で、何気なく出てきた可能性。それに思わず俺は強く反応してしまい、すぐに我に返って三度目の謝罪。

 そう、それはあくまで「かもしれない」ってだけ。何の確証もありはしない。でも…それを言うのなら、何の理由もなく角を曲がるなんて、そっちの方がよりあり得ない事。だったら……本当に、あるかもしれない。今、小さいネプテューヌが言った可能性は。

 

(そうだ。こうして色んな場所を回る事で、俺に繋がる何かが見えてくるかもしれない。…それを忘れちゃ、いけないよな)

 

 記憶ばかりを考えていた俺だが、頭じゃなく身体が覚えてる事だってきっとある。それが切っ掛けになって、記憶が戻っていく事もあり得る。考えてみれば当たり前だが…当たり前でも、期待が持てるなら嬉しいし、それは俺の元気に繋がる。そう、それこそ…さっきの少し沈んでいた気持ちが、すっきり晴れる位には。

 

「……?今度はどうしたんだよウィード、急に笑って……」

「え?あ…これは何でもないぞ、うん。それより、マジェコンヌがずっと同じ場所で隠れてる…とも限らないだろ?だから早く行こうぜ?」

「あ、あぁ…って、元々立ち止まったのはお前が一人だけ別方向に行こうとしたからだろうが……」

「うっ…確かにそうだった……」

 

 そうして俺達はまた進む。マジェコンヌを倒す為、電波塔に変わる施設を探す為、街の探索の為、そして……俺やうずめにとっては、自分の記憶や過去を見つける為にも、中心部へ向かって歩みを進める。

 

 

 

 

 それからまた暫く経った。基本的にはただ進むだけだったが…途中で一つ、大きな発見があった。

 それは、電波塔とは違う…だが、通信施設らしき建物を見つけた事。それを見つけた俺達は、数分程話し合い…一度、二チームに分かれる事となった。

 マジェコンヌの捜索を続けるチームと、施設の状態を確認するチーム。二手に分かれた理由は色々あるが…簡単に言ってしまえば、どちらも優先順位の高い事で、けれどどっちもすぐに終わらせられる事じゃないから。

 

「向こうはどうだろうな?上手く進んでるといいんだが…」

「きっと大丈夫だよ、なんたって女神のわたしと、わたしの妹と言っても過言じゃないネプギアがいるんだからね!」

「いや、多分女神も妹も施設の確認にゃ関係ねぇだろ…」

 

 軽く見回しながら話すうずめの言葉に、大きいネプテューヌが元気良く反応。クロワールからは冷静に突っ込まれていたが、特に気にしていない様子。

…と、今のネプテューヌの発言から分かる通り、施設の確認チームは大きいネプテューヌとネプギアの二人。人数的には偏っているが…電子関係は人数が多くたって仕方ないし、電波塔の時の様に修理が必要になるなら、全員いたってやっぱりすぐには終わらないだろうって事で、二人だけが確認を行う事となった。

 

「出来る事なら、あの施設が使えてほしいものだね。そうすれば、二人も安心出来るだろう」

「だよな。てか、思ったんだが…今日一日で全域探し回るのは無理だよな?」

「そりゃ、無理だろうな」

「だったら、あの施設に最低限の物を運んで、明日からはあそこを仮の拠点にする…ってのはどうだ?今の拠点からはもう結構離れてるし、毎日あそこまで戻るのは時間かかるだろ?」

「ふむ…確かにその通りだね。あの施設は中もそれなりに綺麗だったし、悪くないとオレは思うよ」

「なら、二人と合流してみたらそれも訊いてみようぜ。勝手に決めるのは悪いしさ」

 

 毎日同じ道を長々と歩くのは疲れるから…とかじゃなく、ほんとに効率の事を考えて提案する俺。普段、俺は提案する事なんてほぼないからか……自分の言った事が採用されそうな流れになるのは、ちょっと気持ち良い。

 

「俺には関係ない話だな…っと、そろそろ本気で気を付けろよ。かなり近付いてる感覚がある」

「え、そうなの?…クロちゃん、何気にほんと協力的だね。ほんとに何も企んでない?」

「だから企んでねぇって。前にも言ったが、俺は面白い戦いが見たいんだ。不意打ちされて即全滅、なんてなったら詰まらねぇし…何よりこの本が瓦礫の下敷きにでもなったら、俺のお先は真っ暗だからな」

「そっかそっか。んー、でもそういう答えは好きじゃないし、なんだかんだ言ってわたしや皆の事を大切に思ってるって事にしようかな」

「しようかな、じゃねぇよ!勝手に俺の心情を曲解するんじゃ……」

 

 気を付けろと言いつつも、ほんと何だか気の抜けてしまうやり取りをする二人。でも、俺は分かっている。海男は勿論の事、うずめだってこういう時に油断するような事はしないし、ネプテューヌの方だって、女神のネプテューヌと外見以外そっくりだった事を考えれば、きっと内心じゃきちんと警戒はしている筈。そして何より、この場で一番やられ易いのは俺か海男なんだから、俺は人の心配をするよりまず自分の心配をきっちりとして…なんて、思っていたその時──不意に、全員が揃って言葉を失う。

 

『…………え…?』

 

 一瞬……いや、数秒間の間、硬直していた俺達。その硬直が解けてから、俺は見上げて目を見開く。目を見開いて、唖然とする。

 そこにあったものに、見えた存在に、俺は驚いた。いいや、驚いたなんてものじゃない。それを見た瞬間、訳が分からなかった。理解が出来なかった。何故なら、あり得ないから。普通そんな事、起きる筈がないから。

 けれどそれは見間違いじゃない。確かにそこに、それはある。そう、そこには…俺達の見ている先には……忽然と、巨大な黄金の塔が()()()いた。




今回のパロディ解説

記録黒針(クロポース)
ONE PIECEに登場する道具の一つ、記録指針(ログポース)のパロディ。どうでもいいかとは思いますが、クログポース…でもよかったかなぁ、なんて思いました。

・クロゴンレーダー、「〜〜七つ集めると願いを叶えられる玉〜〜」
DRAGON BALLに登場する道具の一つ、ドラゴンレーダー及びドラゴンボールのパロディ。何やらクロワールが突っ込みポジに…メガミラの影響ですかね……。
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