超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第三十八話 中心部の真実

 信次元との交信に使えそうな施設を見つけたわたし達。ちょっと話し合って、わたしとネプギアは施設の確認をして、おっきいわたし達は捜索を続ける…って事になったのが、暫く前の事。

 ネプギアの見立てじゃ、電波塔には一歩届かなくても、信次元との交信は何とかなりそうで、しかも施設の状態は電波塔より良いみたい。って事はつまり、電波塔の時よりスムーズに準備が出来るって訳で、これはひょっとしたら「交信?それならもう出来るよ?」…って言って皆をびっくりさせる事が出来るかも、なんて思ってたわたしだけど……

 

『えぇぇぇぇっ!?黄金の塔、見つけた(の・んですか)!?』

 

……まさか、わたし達が逆にびっくりさせられる事になるなんてね…。

 

「お、おう…話は聞いてたから、いつか見つけるかもとは思ってたが…まさか、手がかりなしにいきなり見つかるとは思ってなかったぜ……」

「で、ですよね…それで、どこにあったんですか…!?」

「どこも何も、こっからでも見えるぞ?」

 

 慌ただしく戻ってきた皆の第一声が、黄金の塔の発見報告。それを聞いたわたし達の反応がさっきのあれで、うずめにここからでも見えると言われたわたしとネプギアは、すぐに外へと駆けていく。

 

「えと、皆が行ったのはあっちだから……あれ?」

「…な、無い……?」

「ん?何言ってんだよ、ほらあそこにあるじゃないか」

「えぇ?あの白くて大きな鳥…?」

「あれはイトーヨーカドーの看板…ってそれは建物ですらねぇじゃねぇか!」

 

 ちょっと人様のボケを挟んだわたしだけど…実際うずめの指差す方を見ても、全然黄金の塔は見つからない。というか、黄金どころか塔とかタワーすらない。…ビルはあるけど…幾ら何でも、それを見間違えたなんて事はないよね…。

 

「でも、ほんとに見えないよ…?」

「見えないって、そんな馬鹿な…。ウィードは見えるよな…?」

「あ、あぁ。見えるってか、見えてるってか……」

「……あっ…」

 

 本当にわたしには塔なんて見えないけど、うずめ達はむしろ、「どうしてあれが見えないの?」…って感じの雰囲気。だから、お互い意味が分からなくて……そんな中、不意にネプギアが何かに気付く。

 

「…どうしたんだい、ぎあっち」

「もしかしたら…というか、信次元にあった塔はある程度の距離にまで近付いたところで、急に見えるようになったんです。だから、もしかしたら……」

「…わたし達も、その距離まで行けば見えるようになる、って事?」

「う、うん…同じなら、だけどね…」

「…そういえば、俺達が見つけた時も急に出てきた感じだったな…俺はてっきり、ほんとにあの瞬間現れたんだって思ってたが……」

「…二人には見えないって事と合わせると、ネプギアの言ってる事の方が正しそうだな……」

 

 ネプギアからの説明を受けて、うずめもウィードくんも考え込む。わたしは信次元の方の塔を見てないし、こっちのも見てないから、「そうなんだ…」としか言えないけど…っていうかこれ、実際に確認に行けば分かる事だよね?

 

「ねぇ皆、ちょっとわたしも見てきていい?ネプギアも行って確認すれば、どうなのかはっきりするでしょ?」

「それは、まぁ…。…じゃあ、あの…一度確認してきてもいいですか?」

「うん、構わないよ。このままじゃ気になってもやもやしてしまうだろうしね」

 

 という事で、わたし達は入れ替わるようにうずめ達の言っていた地点へ。基本真っ直ぐ進んでいた筈だからまず迷う事はないだろうし、その地点でおっきいわたし達が待機してる(わたし達へ塔に対して確認を取るまでは、出来る限り警戒しておくべきだから…っておっきいわたしが言ったんだって)って話だから、行けばまあまず分かる筈。で、暫く走って…わたし達は、おっきいわたしを発見する。

 

「あ、おーいおっきいわたし!」

「お、来たねちっちゃいわたし!」

「気になったからねー!で、その塔っていうのはどこ…ってうわぁっ!?」

 

 駆け寄りながら話していた時、突如として視界の中に入ってきた黄金の建造物。そろそろ出てくるかなー、とは思ってたけど……うん、そりゃあまぁいきなり黄金の塔、それも巨大なやつが出てきたら、誰だって驚くよね…。

 

「……っ!…やっぱり、これって……」

「…同じやつ?」

「…うん。感覚的にも、多分同じ物だと思う」

 

 わたしの隣で真剣な顔付きになったネプギアに訊くと、ネプギアはその表情のまますっと首肯。…って、事は…これを、なんとかすれば……

 

「…塔は、普通の物理攻撃で壊せるんだよね?」

「壊せるよ。流石にこのサイズだから、破壊するには少し手間がかかるけど…」

 

 もう一度返ってきた肯定の表現に、わたしの中で熱いものが込み上げてくる。これを壊せば、信次元の平穏な日々を取り戻す事にまた一歩近付くんだって、この一歩は大きいんだって、そんな気持ちが心に募る。

 

「…え、と…お姉ちゃん、もしかして…今から壊すつもり…?」

「へ?あ…ううん、それはまだかな。勿論、早く壊したいけど…これを壊せるような攻撃なんて、マジェコンコンにわたし達がいるって教えるようなものでしょ?」

「それはそうだね…じゃあ、機を見て…って感じ?」

「そんな感じかな。あ、でも…まずは交信出来るようにしようよ。もしかしたら、向こうで塔に関する新たな事実が分かってるかもしれないしさ」

 

 だけど、これを壊せば全部解決する訳じゃない。こっちの次元の問題は壊したって変わらないし、わたし達は二人だけでここまで来た訳でもない。だったら…ここでわたしだけ、周りの事を考えずに自分の目的を進めるなんて出来ないよね。

 

「話は纏まった?」

「うん。蚊帳の外にしちゃってごめんね、おっきいわたし」

「いーよいーよ。わたしは賑やかな時間が好きだけど、だからって真剣な話してる人の邪魔をするのは好きじゃないからね」

「ほーぅ?俺は真面目な話をしようとした時に、お前に茶化された覚えがちょくちょくあるんだが?」

「それはほら、わたしとクロちゃんの仲でしょ?」

「人を取っ捕まえて本に入れてる奴が何言ってんだ…はぁ……」

 

 それからわたしとネプギアは、おっきいわたし(とクロちゃん)と一緒に施設へと戻る。もう離れても、黄金の塔は見えたままで……何気に凄いよね、これ…。

 

 

 

 

「それで、こっちの方はどうなったんだ?」

「あ、はい。まだ途中ですけど、早ければ今日中に、遅くても明日には準備が出来ると思います」

 

 施設に戻って、ここを仮の拠点とする提案に賛成して、わたしとネプギアは物資を廃ビル拠点に取りに行った。どうしてわたしとネプギアなのかは…分かるよね。この中じゃ、制限があるとはいえシェアクリスタル無しで女神化出来るわたし達が、一番素早く且つ、一度で大量の荷物を運べるからね。

 

「早いな…いや、前も中々早く準備出来た訳だけど……」

「確かに、トントン拍子でって感じだったよな。でも、それなら安心したぜ」

「じゃあさ、明日はどうするの?わたし的には、その準備を完了させる事を第一にした方がいいと思うなー」

「それ、ネプテューヌ達の次元が気になるだけだろ。そっちの奴等と会いたいなー、ってよ」

「うっ……そ、そんなのしーらない…」

「言い方でバレバレ…っておい!閉めるなこら!」

 

 ウィードくんとうずめの言葉で、わたしもあの時の中々凄い幸運を思い出す。わたしも結構運は良い方だと思うけど…ウィードくんのあれは、もう神がかってるレベルだったなぁ…。

 

「はは…でも、まず交信出来るようにするのは悪くないと思うよ。その方が、小さいねぷっち達は何かと安心出来るだろうしね」

「そ、そうそうそれ!わたしもそれ言いたかったんだよね!」

「……そこんとこ、小さいねぷっち達はどうなんだ?俺はそれでいいと思うが…」

 

 おっきいわたしの雑な誤魔化しで一度半眼になってから、うずめはわたし達に訊いてくる。それを受けて、顔を見合わせるわたし達二人。うーん……。

 

「…これは、真っ先にやらなきゃいけない事ではないですし、全員での決定を優先しようと思ってましたけど……」

「皆がそう言ってくれるなら…うん。そうさせてもらおっかな」

 

 皆の事を考えるのも大事だけど、皆の気持ちを大切にするのはもっと大事だよね。…そう思って、わたし達は皆の方を向いて頷く。

 

「よしっ、それじゃさっさと準備を済ませちまおうぜ。俺だって、いりっちが元気か気になるしな」

「…もしや、うずめもそっちが本心だったり?」

「ち、違ぇよ!にやにやすんなウィード!」

「悪い悪い。…で、俺達に何か出来る事はあるか?」

「え、っと…それじゃあ電波塔の時もやってくれたみたいですけど、外壁や外の設備の確認をしてもらっていいですか?わたしも最初に一通り見ましたけど、やっぱり見落としがあると不味いので…」

「りょーかい。じゃ、早速行こうぜうずめ」

「おう。何かあったらすぐ呼んでくれよな」

 

 くるりとその場で振り返って、外へと向かう二人。やっぱり一回同じ事をやってるからか、その足取りに淀みはなくて……

 

「あの二人ってさー、仲良いよねぇ」

「あ、おっきいわたしもそう思う?うずめとウィードくんって、一緒に行動する事多いんだよね」

「あぁ、言われてみれば…ふふっ、気が合うんじゃないかな?」

『あー……』

 

 ほんわかした表情を浮かべながらネプギアが言った推測に、わたし達はうんうんと頷く。

 男の子のウィードくんと、男勝りって感じのうずめ。どっちも記憶がなかったり(これはわたしもだけど)、元からこの次元にいたりとわたし達の中でも共通点があるし、だから自然と気も合うんだと思う。実際わたしだって、割と最初からイリゼにはシンパシーを感じてたしね。

 

「あっ、そうだ。わたし、ちょっと尾行しちゃおっかなぁ〜…」

「わー、おっきいわたし悪〜い。…でも、そんな行為も女神のわたしが同行すれば即ち正義!って事でここは一つ……」

「…ねぷっち達、ぎあっちが失望しそうな目をしているよ」

『……!?や、やだなぁ…じょーだんだよじょーだん…あはは……』

「…凄い効き目だな、これは……」

 

 という訳で、わたし達もネプギアの指示の下活動を再開して、交信出来るように準備を進めていく。

 当たり前だけど、普通はこんなの膨大な時間が必要になる事。でも『造る』と『借りて付け加える』の差は本当に大きくて、この施設を造ってくれた人、それに関わった人達全てに感謝の気持ちが湧いてくるわたし。そして、数時間後……大方の準備が、完了する。

 

「出来たぁ…ネプギアー、後は……」

「動作不良がないかの点検、だね。お疲れ様、お姉ちゃん」

「ネプギアぁ、わたしにも言って〜…」

「あはは、大きいお姉ちゃんもお疲れ様」

 

 言われていた最後のパーツを取り付けて、わたしはその場に座り込む。うぅ、疲れたぁ…お夕飯も食べたのに、またお腹も空いちゃったよ……。

 

「こっちも済んだよ。確認してくれるかい?」

「あ、分かりました!すぐ行きますね!」

「…ネプギアは体力あるなぁ……」

「あー、あれは違うよ。ネプギアにとっては、趣味の延長線上にある訳だからね」

「そういえばそうだったね。…そうだ、ちっちゃいわたしもお腹空いてるよね?ここってレンジあったし、お夜食に何か用意しない?」

「いいね、でもこんな時間に食べて大丈夫?わたしは女神だから基本太らないけど…」

「ふふん、わたしもわたしの魅力面に還元されるから大丈夫だよっ!」

「そっかそっか。一発殴っていい?」

「沸点低ぅ!?だからちっちゃいわたしはそっち方面で敏感過ぎない!?」

 

 そうしてネプギアを見送ったわたし達(今のあれ?あはは、冗談半分に決まってるじゃん。…冗談『半分』に、ね)は、持ってきた食料の中からすぐに食べられる物を用意してチン。戻ってきた皆と集まって、お疲れ様のお夜食会。

 

「んじゃ、交信するのは明日にするのか?」

「はい。最終確認で抜け落ちがあって、そのせいでどこかの機材が壊れてしまったら、全部台無しになっちゃいますから」

「そりゃそうだな…なら、今日はもう終わりにするとして…一応、交代で見張りを立てないか?まだ見つけてないとはいえ、ババァとの距離は大分近付いてる訳だしよ」

「そうだね。では、最初はオレが引き受けよう。何かあった時に備えて、君達には少しでも休んでいてもらいたいからね」

「だったら、次は俺だな。万が一の時は皆に頼るしかないし、こういう時はしっかり任せてくれよ?」

「おー、頼もしいね!じゃ、その後は絶賛おねんね中のクロちゃんかな?」

「うぇ…?見張りも何も、この状態でどうしろってんだー…?」

 

 そんなこんなで見張りの話も決定して、わたし達は各々横になる。今日も疲れた分わたしはすぐに寝入っちゃって、見張りの番になるまでぐっすり。おかげで次の日はすっきり起きられて……あ、因みに海男とウィードくん、わたし達の為に長めに見張りしてくれたんだよね。もー、決めた時は皆平等の時間だったのに、こっそり時間伸ばすなんて…憎いぞー、このこの〜!

 

 

 

 

 全ての機材のセッティング及び調整完了。施設内の最終確認も終了済み。その状態になったのが、十数分位前の事で……今、ここと信次元は電波で繋がっていて、交信している。

 

「そっか、そっかぁ……はぁ、何にせよ良かったよ。皆の元気な顔が、無事に見られて」

 

 画面越しに見る、イリゼさんといーすんさんの顔。二人の顔が見えた瞬間、わたしは凄くほっとしていた。…前は、わたしが向こうで、イリゼさんがこっちだったんだよね…別にそんな前の事じゃないのに、あれから随分経った気がするなぁ……。

 

「ははっ、そりゃこっちの台詞だぜ。ったく、あの時はいきなり過ぎて驚いたんだぞ?」

「う……ごめんね、皆…でもほら、画面越しだけど…ちゃんとまた、会えたでしょ?」

「…あぁ、そうだな」

 

 一度バツの悪そうな顔になって、それから温かな表情を浮かべるイリゼさんの言葉を受けて、うずめさんはにっと笑う。海男さんやウィードさんも、再会に微笑んでいて…やっぱり、交信出来るようにするのを最初に済ませて正解だったなって、わたしは思った。

 

「にしても、びっくりしちゃったよ。まさかわたしが知らない間に、こんぱやあいちゃん、別次元組の皆まで目を覚ましてるなんてさー。ネプギアも、こんぱとあいちゃんが目を覚ました事を教えてくれれば良かったのに……」

「ご、ごめんねお姉ちゃん…あの後はバタバタしてたから、つい忘れちゃって……」

「びっくりって話なら、私もだよ。マジェコンヌの件もそうだし、もう塔を見つけちゃった事もだし…何より、女神じゃないネプテューヌがいるなんて……」

「はい。大きいネプテューヌさんの存在は、予想を遥かに超えてきましたね…

(´∀`; )」

 

 そう言ってお二人は、並べた肩を揃って竦める。勿論わたし達だって大きいお姉ちゃんが落ちてきた時は驚いたけど……交信が復活したと思ったら、向こうにいる女神の一人の同一人物が仲間になっていた…なんて状況になったお二人の驚きだって、想像に難くはない。…因みにその大きいお姉ちゃんはといえば、「出来る女は、感動の再会に水を差さないものなんだよ!」と言って、現在わたし達からはちょっと離れた場所にいる。

 

「それで、これからはどうするつもり?」

「えっと、次はマジェコンヌの撃破…というか、捜索の予定です。勿論、塔の事もありますが……」

「いえ、それで良いと思いますよ。破壊が必須とはいえ、こちらの物と同じであれば塔自体に脅威はありませんからね

(・ω・`)」

「ですね。皆、分かってると思うけど功を焦ったり無理したらしちゃ駄目だよ?出来る事なら私もそっちに行きたいけど、今すぐはちょっと厳しいし…」

「分かってるって。こっちじゃそういうのを気を付けようと思わせる事もあったし…って待った。イリゼ、厳しい…ってどういう事?」

 

 心配の言葉と共にイリゼさんの口から発せられた、気になる一言。返答の途中でお姉ちゃんはそれに気付いて、わたしもイリゼさんの顔を見つめる。すると、イリゼさんは一度ちらりといーすんさんの方を見てから、少しだけ神妙な顔で言う。

 

「実はね、私とネプギアが交替したあの後分かった事なんだけど…短期間に何度も次元の扉を開くのは、イストワールさんにとって結構負担が大きいみたいなの」

「すみません…あれ以前から何度か開いてはいましたが、その際は毎回それなりに期間が空いていたので、わたし自身気付いておらず……(><)」

「そっか…でもそれって要は、短期間じゃなきゃいいんだよね?」

「うん。クールタイム…って言うとゲームみたいだけど、期間を開ければ負担を解消しきれるみたいだからね」

「だったら安心だよ。てっきりわたし、そっちで問題があって手が離せない…とかなのかなって思っちゃった。後イリゼイリゼ、わたし達に関してはゲームみたいな表現がむしろ適切なんじゃないかな?」

「そういうメタ発言はしなくていいの…」

 

 厳しいというのが、いーすんさんの身を案じての言葉だと分かって、一安心するわたし達。実はわたしも同じ事思ってたんだけど…姉妹ってこういうところも似るのかな?それとも、こういう事を自然に考えるのは女神だから?

 

「まぁ、とにかくお互い元気で何よりだね。前も結局邪魔されちゃったし、今度こそゆっくり話したいところだけど…」

「分かってる。ゆっくり話すのは、マジェコンヌを倒して安心出来るようになってから…だよね?」

「うん!って訳で一旦切るね。今日も捜索が終わって帰ってきたらもう一回連絡するから、その時はこんぱ達も呼んでおいてほしいなっ!」

 

 そうして信次元との交信は一旦終了。前回みたいな事はなかったから、簡潔にだけどお互い伝えるべき事は伝えられたし、何より安否確認が出来て凄く凄くほっとした。……実を言うと、ほんのちょっぴり信次元が恋しくもなっちゃったけど…だからって、うずめさん達を…この次元の事を放り出すなんて出来ないもん。

 

「よーっし!じゃあ皆、今日も張り切ってマジェカンヌを探すよーっ!」

「おーっ!」

「……二人共、元気が漲ったみたいだね」

『だな』

 

 予定通り、軽く片付けをして意気揚々とわたしとお姉ちゃんは外へと向かう。勿論、やる気と見つかるかどうかは別問題だけど…やる気はあって困るものでもないもんね。

 という事で、お昼まではわたし達から見て塔の手前側を捜索。そして今は、レジャーシートを敷いてのお昼休憩の真っ最中。

 

「いや〜…ビル群の間でピクニックみたいにお昼ご飯を食べるのって、中々シュールな経験だよねぇ…」

『あはは……』

 

 苦笑気味に発せられた大きいお姉ちゃんの発言に、わたし達も揃って苦笑い。別に嫌じゃないけど…確かに凄くシュールかも……。

 

「その点、電波塔はまだ開けた場所だったから、多少は景色も良かったよなぁ…」

「へぇ、そうなの?」

「ん?あ、大きいネプテューヌは電波塔自体知らないんだったな…少なくとも、ビルや街を眺められる場所ではあったんだよ」

「でもそこもいい感じだった訳じゃないし、こうやって食べるならやっぱり景色の良いところとか、自然豊かな場所がいいよね。ほら、シェアクリスタルを探したあそことかさ」

 

 環境は決して良い訳じゃないけど、会話は弾む。わたしはその「あそこ」を知らないけど…すぐに出てきたんだもん、きっと綺麗な場所なんだよね。

 

「そうだな…。…そうだ、だったらババァを倒した後で、勝利パーティーピクニックやろうぜ!取り敢えずババァを倒して、あの塔も何とかすりゃ、目下の危機は去る訳だしよ」

「あ、いいねうずめ!わたしも賛成〜!」

「わたしもわたしも!」

 

 と、そこでうずめさんが手を叩いて、勝ってからのピクニックを提案。すぐにお姉ちゃんと大きいお姉ちゃんが賛成をして、わたしも一瞬「あ、それは素敵かも…」って思いが過る。…でも……

 

「えぇ、っと…勝ってからの事を想像するのは、士気高揚に繋がると思いますが…それってフラグになるんじゃ…?それに、まだ場所は分かってない訳ですし……」

「いや、案外早く見つかるかもしれないぞ?だって今日は、小さいねぷっちもぎあっちもやる気に満ちてるしさ!」

『え……?』

「やる気に満ちてる時って、結構物事も上手くいくだろ?やる気元気いわきとも言うし、今日はいりっちとまた会えたっていう素敵な事もあったし、今は完全にうずめ達に流れがきてると思うの!後々うずめ的には〜、この流れの中には塔も絡んできたりするんじゃないかな〜とも思ってて〜」

「…う、うずめさん……?」

「うん、なぁに?……あ…」

 

 我ながら、今のはちょっと水を差しちゃったかな…と思う事を言ったわたし。でも少し…いやかなりそこから想定外の流れになって、わたしは完全にぽかーん状態。うずめさんは、暫くほんわかしたまま喋り続けて……わたしが呼んだ数秒後、はっとして立ち上がる。

 

「…そ、そういえば気になる施設があったんだよなー!お、俺ちょっと確認してくるから、皆は食事を続けててくれっ!」

「あ、ちょっ、うずめ!?……え、っと…これは…」

「あー…そうだね、おっきいわたしは知らなかったね…」

 

 凄く焦った様子で駆け出すうずめさんに、わたしと同じようにぽかんとしていた大きいお姉ちゃんが声をかけて……それから、わたし達の方を向く。

 それに答えるのは、頬を掻きつつ苦笑いするお姉ちゃん。わたしも一応、洞窟であのモードのうずめさんを見たけど…やっぱり、まだ慣れないなぁ……。

 

「うずめって、そんな一面もあるんだ…急になったからびっくりしたよ……」

「分かります…あ、そういえばお姉ちゃん。洞窟でうずめさんがあのモードになった後、わたし土竜見つけたんだよね。すぐいなくなっちゃったから、見間違いかもしれないけど…これって中々凄い偶然じゃない?」

「え、そうだったの?確かにそれは凄いかも…自分の事話してる!…って、気になっちゃったのかな?」

「はは。……でもそれは、偶然ではないのかもしれないよ」

『え?』

 

 ただの雑談として、わたしが何気なく振った話。だけどお姉ちゃんの言葉の後、海男さんが意味深長な言葉を口に。何だろうと思って振り返ると…海男さんが浮かべているのは、いつも以上の真顔…じゃなくて、真剣な顔。

 

「…偶然ではないのかも、って…海男、どういう事…?」

「言葉通りの意味だよ、小さいねぷっち。…思い出してみてほしい。うずめがああやって妄想をした時…かなりの確率で、それが実現していなかったかい?」

「へ?……言われてみると、実現してる…気もするけど…まさか……」

「あぁ。これはあくまで、オレの推測だが……うずめには、そういう力があるんだと思う。妄想を、現実にするという力がね」

 

 妄想を現実にする。そう、はっきりと言い切った海男さんの言葉に、わたし達は全員が言葉を失う。だって、そんな力があるだなんてこれまで一度も思わなかったし……そんな力が実在する事自体が、信じられないようなレベルだから。

 

「女神の二人に問いたい。…女神は、それが可能だと思うかい?」

「それは……絶対ない、とは言い切れないかな…女神って、奇跡の体現者みたいなところあるし……」

「奇跡の体現者…確かに、俺からすればそう言われても変じゃないと思う位には、皆凄いもんな……」

「で、でもほんとにあるなら、どうしてうずめはそんなチート級の力をこれまで戦いやこの次元の復興に使ってこなかったの?」

「それは恐らく、うずめがこの能力を知らない…無自覚に、偶発的にしか使えないからだろう。それに『こうだったらいい』という旨の発言全てが実現している訳ではない事から考えるに、思いの強さも必要なんじゃないかな」

「…それは、あると思います。強い思いは、強いシェアに…強い力になるものですから」

「…加えて、一概に素晴らしい能力だともオレは思えない。都合の良い妄想だけが実現するならいいが…そうじゃない場合、もし都合の悪い…それこそ、滅亡的な事をうずめが考えてしまって、それすら現実に反映されるとしたら……」

 

 うずめさんの妄想が、破滅へと繋がるかもしれない。…その可能性に、再びわたし達は言葉を失う。明るいお姉ちゃん二人も今は真剣そのものな顔をしていて、わたしも色々な思いや想像が巡る。

 その能力を、恐ろしいとは思わない。だけど、何かあったら…と不安にはなる。特に無自覚という事は、いつどうなるか分からない訳で……だけど海男さんは、わたし達の顔を見回した後ふっと笑う。

 

「…けれど、もうオレはそれを危惧していないよ。前は違ったが……今は、君達が…うずめの心に、希望の炎を燃やしてくれた皆がいるんだからね」

『……っ!海男(さん)……』

「とはいえ、この能力を自覚する事で、うずめが物事に対する懸念を過度に避けてしまうようになるかもしれない。だから、この事は秘密にしてくれるかい?」

 

 ウインクをして、思わず素敵…と思ってしまうような声で、海男さんはそう言う。わたし達にとっては照れ臭い…でももしうずめさんにとってのそういう存在になれているのなら、それは光栄だと思える事を。

 それから続けて海男さんが言った言葉へ、わたし達は次々と頷く。確かに海男さんの言う通り、うずめさんがマイナスの妄想実現を恐れて、歪なポジティブ思考になってしまうのは…嫌だから。

 

「教えてくれてありがとね、海男。…でも、どうして今言ったの?丁度その話になったから?」

「それもあるよ。けど…先程、うずめはまた妄想をしただろう?」

「先程……あっ…!」

 

 軽く首を傾げたお姉ちゃんに対して、また真剣な顔になった海男さんが回答。先程、っていうのは勝利パーティー云々の事で……次の瞬間、わたしは気付く。その妄想には、『案外早く見つかる』という部分も組み込まれている可能性があると。そして……

 

『……!』

 

 うずめさんが戻ってきて、お昼休憩を終わりにして、捜索を再開してから数時間後。ここまで近付いたのなら、いっそ塔の下まで行ってみようって事になって、ある程度近付いたところでクロワールさんが遭遇の可能性を口にして……わたし達は、実感する。海男さんの言った、うずめさんの能力が……本当に、あるんだって事を。

 

「……漸く来たか、女神共」

 

 巨大な黄金の塔の、正面。塔を背にする形で、彼女は…マジェコンヌは、立っていた。

 

「…まさかここにいたとはな、紫ババァ」

「あれが皆の探してる……クロちゃん、もうちょっと早く正確な場所分からなかったの?」

「ふん、あの塔の放つ力が強過ぎて紛れちまってたんだよ。予想外っつーか想定してなかったっつーか…それもこれも、この本に入れられてるのが原因だがよ」

「なんだ?分身でもしたのか小娘よ。…まあいい、最早全て瑣末事なのだからな」

 

 大きいお姉ちゃん達の前に立って、臨戦態勢を取るわたし達。対するマジェコンヌは、まだ回復し切れていないようで、放たれる覇気は前より弱くて……なのに、恐ろしい位落ち着いている。

 

「おいババァ、何だかんだでテメェとは何度も戦ってきたが…これで最後だ」

「ほぅ、気が合うな。私もこれで終わりにしようと思っていたところだ。…貴様等を、塵一つ残らない程に滅殺する事でな」

「そうはいかないよ。わたし達はやられないし…この次元も、やらせない」

「投降しろとは言いません。わたし達は、全力で…貴女を、倒します!」

 

 見下すようなマジェコンヌの視線と、わたし達の視線が激突する。もうわたし達はいつでも戦える、一切の油断も抜かりもない状況で……だけどそんな中、不意にマジェコンヌは笑い出す。

 

「ふ、ふふっ……ハーッハッハッハッハッハ!いいぞ、よく言った女神共!これで温い言葉でも言われようものなら、興醒めもいいところだった!やはり叩き潰すのなら、闘志を燃やしてくれなくては困る!そしてその上で私は貴様等を蹂躙し、這い蹲らせ、命乞いをする貴様等を一人ずつ殺してやろうじゃないかッ!」

「はっ、勝手に言ってろ紫ババァ!テメェにそれが出来るならなッ!」

「あぁ出来るさ!確かに私に残された力は少ないが……私には、あのお方より賜った切り札がある!さぁ、見るがいい女神共ッ!」

(切り札…!?まさか、それが余裕の根源…!?)

 

 啖呵を切ったうずめさんに対抗するように、マジェコンヌは吠え、ばっと右手を空に掲げる。

 その瞬間、呼応するように塔へと浮かび上がる光の線。数秒と経たずに浮かんだ線の内側が外れ、そこから現れたのは……ダークメガミらしき紫の巨人。

 

「……っ…!やっぱり一体じゃなかったんだ…でも、今更一体いたところで…ッ!」

「いいや、この一体で十分さッ!この一体で……貴様等は終わる!終わらせるッ!」

『……!?何を…ッ!』

 

 続けてお姉ちゃんにも鬼気迫る勢いで言葉を返し、その場で飛び上がるマジェコンヌ。マジェコンヌは巨人の胸元まで飛び上がり、勝利を確信したような笑みを浮かべる。そして……

 

「──我が命を喰らい、融合せよッ!終焉のダークメガミ、パープルッ!」

『……──ッ!!』

 

 わたし達の目の前で、マジェコンヌは胸部の開いた巨人の中へ。それはまるで、乗り込むような…ううん、言葉通りに融合するかのような光景で……胸部の装甲が閉じた瞬間、巨人の各部が光り輝き──ダークメガミと一体化したマジェコンヌが、咆哮を上げる。




今回のパロディ解説

・イトーヨーカドー
総合スーパーを運営する企業、イトーヨーカ堂の事。下記のパロディ内に含まれている要素ではありますが…別々に解説した方が良いと思い、こうしました。

・「あれはイトーヨーカドーの看板〜〜」
お笑いコンビ、キングオブコメディのコントの一つ、野鳥内でのネタの一つのパロディ。このネタ、凄く好きなんですよね。かなり記憶に残っているのです。

・「〜〜やる気元気いわき〜〜」
政治家、教育家である井脇ノブ子さんのキャッチフレーズの事。何となく知っていたフレーズなのですが、このような方のキャッチフレーズだと知って驚きました。

・「我が命を喰らい〜〜パープルッ!」
ヴァンガードシリーズのアニメにおける、ゼロスドラゴンへの究極超越時の口上のパロディ。特にダストですね。ギーゼネタからのこのネタ…えぇ、意識していますとも。
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