超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第四十話 夜明けと共に

 このままじゃこっちが先にガス欠になる。そう判断して、一時撤退を選んだわたし達。どこから集まってきたのか分からないモンスターの大群を何とか振り切って、わたし達が身を潜めたのはかなり頑丈そうな廃ビル。ここは、黄金の塔を挟んで施設から反対側にある場所で…ここなら、仮に見つかっても施設が破壊される事はない…と、思う。

 

「…お姉ちゃん、マジェコンヌの様子はどう?」

「変わらないよ。わたし達を探しながら、ずっと建物から地面からぶっ壊しまくってるって感じ。手当たり次第、って訳でもないみたいだけど……楽しんでるのかもね。街を、世界を圧倒的な力で壊していく事を」

 

 登ってきたネプギアに、上層階で見張りをしていたわたしが言葉を返す。

 恐ろしい程の攻撃力と攻撃範囲。でもそれは分かっていた事。建物を次々とぶっ壊してみたい…って気持ちも、ゲームの中限定だったら分からないでもないし、実際そういう事が出来るゲームだってある。

 でも…破壊能力はともかく、わたしは今のあれを恐ろしいとは思わない。現実なのにって、狂ってる…とも思わない。むしろ……哀れだって、思ってる。今の…今の、マジェコンヌの事を。

 

「…お姉ちゃん?」

「うん?どしたのネプギア」

「いや、その…お姉ちゃん、ちょっと残念そうな顔してたから…」

「え、残念?わたしが…?」

 

 思いもよらぬ事を言われて、目をぱちくりとさせるわたし。…でも……

 

「…いや、そうかもね。わたしにとってマジェコンヌは最初の敵だし、何度もぶつかった相手だし…わたしの記憶喪失も、それからの出会いも旅も全部、ある意味ではマジェコンヌがいたからこそ生まれたものだもん」

「そっ、か…じゃあ、嫌なんだね。今の、あのマジェコンヌが」

「…うん。多分、そうなんだと思う」

 

 ネプギアに言われて、自分でも言って、段々と実感が湧いてくる。わたしは、今のマジェコンヌが嫌なんだって。

 何だかんだ言っても、敵対してた頃のマジェコンヌにも信念や貫きたい思いがあって、だからこそ『敵だけど凄いやつ』ってわたしも皆も感じていて、だけど偶にノリの良い面もあったりして……そういうマジェコンヌだったから、わたしは…そう、マジェコンヌという『敵』に対して、思い入れみたいなものがあった。…だから、こっちのマジェコンヌもわたしの知ってる『敵』だった頃のマジェコンヌそっくりで、ついつい弄っちゃったりもしていたけど……もう、今のマジェコンヌにそれはない。実を言えば、融合する前も何かで違和感を抱いた瞬間があって……今は完全に、違うって思いがわたしにはある。マジェコンヌには、しょうもないなぁ…って感じさせる要素もあったけれど…こんな事で、既に崩壊しかけてる街を蹂躙する事で喜ぶような、そんな虚しくて薄っぺらい存在ではなかったから。

 

「…って、エゴだよこれは…はは……」

「……?お姉ちゃん…?」

「今のは独り言だよ。…そろそろうずめが戻ってくるだろうし、わたし達も下に戻ろっか」

 

 だけどそれは、わたしの勝手な印象と思い。マジェコンヌに確認した訳じゃないし…ましてやこの次元にいるマジェコンヌは、信次元のマジェコンヌとは別人なんだから、これは押し付けもいいところ。それに気付いたわたしは自分に対して軽く呆れつつも、気持ちを切り替えビルの下層へ。…そうだよ、今戦うのは、倒さなきゃいけないのはダークメガミと融合したマジェコンヌなんだから…意識も気持ちも、切り替えなきゃ。

 

「戻ったぞ、皆」

「お帰りうずめ。モンスターはどうだった?」

「まだ近くにはいないが、向こうじゃわらわらしてるぜ。…多分、俺達を探してるんだろうな」

 

 わたし達が一階に降りてから数分後、偵察に出ていたうずめが戻ってくる。おっきいわたしが結果を訊くと、うずめは肩を竦めつつ軽く笑って…それから真剣な表情を浮かべて、言葉を続ける。

 

「…うずめ、モンスターは一方向から来てる…って感じじゃないよね?」

「あぁ、ババァの居る側が一番多いが…他の方向にもそこそこいるな」

「なら、やっぱりマジェコンヌがけしかけたんだろうね…もしかすると、けしかけたんじゃなくて単にマジェコンヌの力に当てられて動いてるだけかもしれないけど……」

 

 次にわたしも質問をして、うずめが偵察に向かう前一度言った事をもう一度口にする。

 何故わたしがそう思ったか。それは、モンスターの出てきたタイミングがあまりにも出来過ぎていて、逃げる最中モンスターの数はどんどん増えていって、しかもマジェコンヌの攻撃を恐れる様子がまるでなかったから。一つ一つなら、別の可能性も色々あるだろうけど…こうも積み重なってくるとなると、マジェコンヌと無関係とは思えない。

 

「マジェコンヌだけなら、勝機はあると思うけど…そこにあれだけのモンスターも加わるとなると、流石に部が悪いよね……」

「うん…飛べるモンスターは勿論だけど、これじゃ地上に降りるだけでも危険だよね。かといってずっと空中にいるんじゃ建物とか地形を使った策は取れないし、万が一地面に落とされたら最悪ファントムペインの少尉さんとその機体みたいになるかもだし……」

「お、恐ろしい事言うねちっちゃいわたし…なら、先にモンスターを何とかする?」

 

 ただでもどちらにせよ、何か作戦や対策を立てておかなきゃ勝てるような状況じゃない。むむぅ…ほんと普段の力が出せないのが、地味に響く…。

 

「それも難しいな…短時間で何とか出来る数じゃねぇし、片付ける前にババァが来ちまえば、両方を同時に相手しなきゃいけなくなる」

「だよねぇ、倒してもどっかから更に来る可能性もあるし…ねぇクロちゃん、何かいい案ない?」

「そうだな、じゃあこんなのはどうだ?まず、お前がモンスターの大群の中に突っ込むんだ」

「うん、それで?」

「で、大の字になって言うんだ。わたしは脂が乗ってて美味しいよー、ってな」

「おー!それならモンスターの注意はわたしに…って、それじゃわたし食べられちゃうよ!?リアルにちっちゃいわたしが言ったみたいになっちゃうんだけど!?」

 

 という訳で作戦会議をしている中、開いた本に向けて全力のノリ突っ込みをぶつけるおっきいわたし。その相手であるクロワールは、それはもう愉快そうに笑い声を上げていて……緊張感ないなぁ…このわたしに緊張感ないって思わせるなんて、二人共相当なものだよ…?…片方別次元のわたしだけど。

 

「全くもー……でも、この状況で打てそうな手って意味じゃ、やっぱりそういう方向になるかなぁ…」

「え……だ、駄目だよ大きいお姉ちゃん!?そんな自分の命を犠牲にするなんて事…!」

「あ、違う違うそういう事じゃないよ。わたしが言いたいのは、誰かがモンスターを引き付けて、その間にマジェコンヌを倒すのが最善…とは言わずとも、一番現実的かなぁって事」

「あ、あぁ…でも確かにそうですね。モンスターが厄介になるのはマジェコンヌと戦闘する上での事であって、マジェコンヌなしなら手間がかかるだけで十分なんとかなると思いますし、そもそもマジェコンヌを倒した時点で逃げ去る個体もいるでしょうから…」

 

 おっきいわたしから早とちりを指摘されたネプギアは、ほっとしたような表情を浮かべて、それから顎に親指と人差し指を当てつつおっきいわたしへ同意。

 実際のところ、わたしもその考えに対しては同意見。作戦って程でもない、単純そのものの案だけど…派手な事はマジェコンヌに見つかるから駄目だし、ゲリラ的に少しずつ削るんじゃあまりにも時間がかかるし、罠を作ってそこへ誘導…っていうのも同じ位かかる。そしてわたし達が離れている時間が長くなれば長くなる程、ウィードくん達や本拠点にいる皆の危険性は上がっていく。となると、すぐに出来る案じゃなきゃいけない訳で……多分、時間をかけても結局はこういう案に収束するだろうね。

 

「でしょ?で、その引き付ける役だけど…これはやっぱわたしかな。だってわたし飛べないし、泳げないし…じゃなくて、あのマジェコンヌ相手じゃ皆と連携するのも厳しいだろうからね」

「んー…まぁ、ねぷっちがそう言うなら止めないが…だったらもう一人は俺だな。俺ならシールド張れるし、ぶっちゃけあの全方位攻撃の対応じゃ二人に劣る……」

「駄目だようずめ。マジェコンヌの相手は皆でやってくれなきゃ」

「は……?い、いやでも……」

「だって、モンスターと違ってマジェコンヌは倒さなきゃいけないんだよ?ならそっちの戦力は削っちゃ駄目だって」

「そりゃそうだが…あの数だぞ?」

「だいじょーぶだって。これでもわたし、長年一人旅をしてきたから生き延びる術はそこそこ知ってるつもりだし、皆が早く倒してくれれば問題ない訳だし……何より最悪の場合、クロちゃんに飛ばしてもらえばいいんだからね」

 

 止めようとするうずめに対して、おっきいわたしはにっと笑う。けど、そこで名前を挙げられたクロワールが突っ込みを入れる。

 

「おいこら、なんで飛ばしてやる前提なんだ。てか、まだ十分に飛べるだけの回復はしてねぇぞ?」

「でもほら、わたしがやられた場合、当然わたしが持ってるこの本も無事じゃ済まないよね?クロちゃんだって、本諸共引き千切られたり切り裂かれたりするのは嫌でしょ?」

「お、お前…だとしても、万全じゃねぇ状態で飛ぶ危険については分かってるよな?次元の狭間に落ちてもいいのか?」

「ふふ、大丈夫だよクロちゃん。わたしは例えどこへ行こうと…クロちゃんと、一緒だからねっ!」

「…えー……」

「本気で嫌そうなトーン出てきた!?がーんっ!」

 

 緊張感のないやり取り、パート2。…これはあれかな…わたしが真面目にやろうとすると、わたしの愉快な部分がおっきいわたしへ流れ出すシステムとかなのかな…。

 

「お前と次元の狭間なんて勘弁だっての…ったく、マジで知らねぇからな?」

「そう言いつつも、いざ本当にそうせざるを得なくなったら何だかんだ頑張ってくれるでしょ?」

「…おい、万が一の事があればお前等が救援に来てくれ。…ほんと、マジで頼む……」

「あ、は、はい…了解しました……」

 

 で、結局クロワール(の心)が折れて、話は解決。うーん…これはあれだね。おっきいわたしじゃなかったら、どっちが悪いのか不安になってきちゃうね。刺激的な戦いが見たいから協力してるみたいだし、ただの善良な子って訳じゃないと思うけど…。

 

(…って、戦いに関しては割とわたしも楽しんじゃってるし、人の事言えないね…はは……)

「…ん?どうしたんだ小さいねぷっち、急に苦笑いなんてして……」

「ううん、何でもないから気にしないで。…おっきいわたし、どう戦うかの策はある?」

「んー…まぁ、あると言えばあるけど、正直あれだけ色んなモンスターが法則なしにいる訳だから、多分途中からは場当たり的になっちゃうかな」

「ま、だよねぇ…じゃあさっきのクロワールじゃないけど、危ないなと思ったらすぐにわたし達呼んでよ?」

「分かってるって。生き延びる上で大切な事、それは頼れるものに片っ端から頼る事だからね!意地張るところは間違えちゃノンノン!」

 

 意地ではなく胸を張って言い切るおっきいわたし。もうずっとおっきいわたしはあの調子だけど…うん、同じわたしだから分かる。これは、本当に大丈夫だって。いざって時は、ちゃんと頼ってくれるって。

 

「よーし、それじゃあモンスターの方は頼んだよっ!」

「よーし、頼まれたっ!」

「うん!…って訳だから、どうかな?真面目な話、今打てる手はこれが一番でしょ?」

「…それは、そうだけど……」

「…まぁ、こういう時のねぷっちは止まらねぇし…実際、その判断もここまで正しかったんだよな……。…よし、分かった!絶対危なくなったら…いや、危なくなる前に俺達を頼れよ?」

「…ですね。大きいお姉ちゃん、約束だよ?」

「ふふん、友達と可愛い妹にそう言われたら尚更危ない事は出来ないね」

「ちょっとー?ネプギアはわ・た・し・の妹だからねー?」

 

 そうして全員の同意を持って、引き付ける役はおっきいわたしに決定。モンスターの数は、やる気でどうにか出来るレベルじゃないけど…今は出来る事で何とかするしかない状況。だったら…いざって時に支えになるのは、やっぱりやる気とか気持ちだよね。

 

「じゃ、早速…と言いたいところだが、どうする?もう少し休むか、それとも様子を見てここだ、ってタイミングを待つか……」

「それなんですけど…夜明けまで待つのはどうですか?わたし達はまだしも、大きいお姉ちゃんは暗い中で多数を相手取るのは危険だと思いますし…わたし達としても、出来る限り条件は良くしておいた方が良いと思うんです」

「夜明けまで、か…ババァからすりゃ、元々サイズ差から精密攻撃は出来ねぇだろうし、だったらこっちまで不利を背負う必要はねぇ…。…確かに、ぎあっちの言う通りだな」

「うんうん。なら、ここからは夜明けまで休もー!ちょっと埃っぽいけど、このビルには仮眠室もあったしさ!」

「あ…それならうずめさん、ビジュアルラジオ…でしたよね?…を、見せてもらっていいですか?」

「……?いいけど、それは…?」

 

 そう言ってうずめさんが出したのは、何かの機械(…アンテナ?)らしきもの。案内してくれようとしていたおっきいわたしも振り向いて、皆の視線がネプギアの方に。

 

「このビルの中にあった物を使って、電波の届く範囲を広げる機材を作ったんです。…まぁ、作ったっていうか、でっち上げたですけど……」

「おー!やるなぎあっち!って事は、海男達と連絡が取れるって事か?」

「はい。あ、でもほんとにでっち上げただけなので、一回使うだけで多分壊れてしまうと思いますし、最悪数秒で駄目になる可能性も……」

「それでも連絡が取れる可能性があるんだから大助かりさ。んじゃ、早速……」

 

 説明を聞いて、避難したウィードくん達との連絡を図るうずめ。それからわたし達は無事繋がった通信で互いの場所と、これからどうするかを話して、改めて二人(一人と一匹)に対して言う。絶対に勝つから、それを信じて見ていてね、って。

 後は、夜明けを待つだけ。そして、夜が明けたら…わたし達で、倒すんだ。ダークメガミと融合した…もう、ただ思いのままに世界を破壊していくだけの…マジェコンヌを。

 

 

 

 

 一緒に降りた大きいネプテューヌと別れた俺達は、その後もとにかく移動し続けた。うずめ達の為に、あの場で俺達が出来る一番の事は、少しでも安全な場所へ移動して、うずめ達の足を引っ張らない事だったから。

 そうして移動を続けた俺達は、塔からマジェコンヌを引き離していくうずめ達とは対照的に、大きく回り道をしながらも塔の方へ。そのまま塔も通り過ぎ…つい数分前、比較的安全そうな建物を発見。そこでうずめ達から連絡が来て……連絡を終えた俺達は、その建物の中へと入る。

 

「ふぅ…ビルが飛んでって以降、うずめ達の姿が見えなくて不安だったが……」

「あぁ。先を見据えた一時撤退だったなら、オレ達としても安心だね」

 

 戦えないし、この状況じゃ探しに行く事もままならない。そんな中において、うずめ達から連絡が来たのは本当に嬉しかった。声に張りがあって、勝つ事を考えて動いてるんだなって事も伝わってきた。…でも……

 

「…安心、か……」

「…うぃどっち?」

「…いや、何でもない。それより海男、今の内に食べられたり、役に立ちそうな物がないか探しておこうぜ?場合によっちゃ、また移動しなくちゃいけないかもしれないしさ」

 

 ふと一瞬浮かんだ思いを心の中に引っ込めて、俺はこの建物の中を一部屋一部屋見て回る。

 身体を休めて、見つけた保存食を頂いて(ネプテューヌに倣ってメモを置いておいた。…金はないから、請求されたらその分働こう…)外での動きをすぐ察知出来るよう窓際に座って。その内、長距離を走ったからか段々眠気がやってきて、暫く俺はうつらうつらと……

 

うつら、うつらと……

 

 

…うつら…うつ、ら…………

 

 

 

 

…って、うぉっ…!?あっぶねぇ…い、いつの間にか寝てた…。

 

(いかんいかん。ここだって絶対襲われないとは限らないんだから、寝てる場合じゃねぇだろ俺…!それに、今だってうずめ達は準備をしてるんだ。寝てるとしても、それは少しでも力を回復して、ちょっとでも良い状態で戦う為の行為なんだ。だったら俺だって…俺なりに何か、出来る事を……)

 

 目を覚まそうとこめかみを叩いて、立ち上がって、ぐるぐると部屋の中を歩き回る俺。おかげで少しだけど目が覚めて…一度思考がリセットされたからか、さっき心の中に引っ込めた思いが、再び頭に浮かんでくる。

 ここに来るまで、俺に出来た最善の行為は『足手纏いにならないよう逃げる事』で、一応それは果たせた…と思う。…なら、これからは?これから俺は、ただ待ってりゃいいのか?夜明けが来たら、後は皆の戦いを見ていればいいのか?

 確かにそれは、望まれた事。俺はちゃんと皆の戦いを見ていようと思う。でも、それだけか?俺が出来るのは…してやれる事は…それだけ、なのか…?

 

「……なぁ、海男」

「…なんだい、うぃどっち」

「この戦闘は…多分、今までで一番厳しい戦いになるよな…」

「…だろうね」

「うずめ達が勝てる保証なんて…ないんだよな…」

「きっと勝てるさ。けど…その通りだよ、うぃどっち。勝てる保証は、どこにもない」

 

 同じ部屋にいて、でもこれまで察してくれていたのか俺が考え事をしている間黙っていてくれた海男へ、俺は声をかける。

 やっぱり海男は察していたみたいで、俺の問いに対する答えはどれも真剣。特に最後の一言は重みもあって…だからこそ、実感する。海男もまた、多くの戦いを経験してきているんだって。

 

「…………」

「…どうしたんだい?うぃどっち」

 

 引き締まる、俺の心。それが表情に出ていたのか、それとも表情関係なしに気付いていたのか、俺が黙った数秒後、海男は俺の目を見て言ってくる。俺は、どうしたいんだって。

 その声の中には、ある響きが籠っていた。ただの問いじゃなくて…協力するよという、海男の優しさと強い意思が。だから俺も、小さく一つ呼吸して……言う。

 

「…危険かもしれない。余計なお世話かもしれない。でも……それでも俺は、やりたい事があるんだ。俺は皆が…誰一人、欠けてほしくないんだ」

 

 これは、自己満足かもしれない。まだやれる事があるんじゃ…って気持ちを解消したいと思っているだけの自分は、いるかもしれない。でも…誰も欠けてほしくないって思いは、絶対に嘘じゃない。それだけは、どんな返答をされようと、言い続けられる自信がある。

 そんな俺の言葉を、思いを聞いた海男は、黙り込んだ。黙って、考えて、それから言った。それは本当に危険だって。少なくとも、うずめ達は俺達にそういう事をしてほしかった訳じゃないって。でも、その言葉は俺を否定するというより、俺の気持ちを確かめているようで……「それでも」って意思を変わらず俺が貫くと、最後に言ってくれた。なら、最大限注意して、全力を尽くして……そして必ず、成功させよう、と。

 話は決まった。覚悟は既に出来ている。だから俺達は頷き合い…走る。うずめ達の為に。皆の勝利の為に。誰も欠ける事なく…皆でまた、一緒に何かをする為に。

 

 

 

 

 崩壊したこの次元でも、夜が明ける瞬間は美しい。どんなにボロボロでも、まだこの次元はちゃんと生きてるんだって、まだ終わってなんかいないんだって、夜明けの光は教えてくれる。

 そんな光を感じながら、わたし達は廃ビルを出る。わたし達の視線の先には、マジェコンヌ。わたし達が見据えているのは……勝利。

 

「…皆、準備はいい?」

「うん!」

「応よ!」

「モンスターの方は任せてねっ!」

 

 わたしも皆もやる気は十分。取れたのは仮眠だったから、万全の状態…ではないけど、この場で出せる最大の状態にはなっているような気がしている。

 

「よし、んじゃ最終確認を…って、程のものでもねぇか。大きいねぷっちがモンスターを引き付けて、その間に俺達がババァをぶっ倒す。…それだけだもんな」

「あはは、だね。…じゃあ、行こっか皆」

 

 笑顔の後に真剣な顔となったおっきいわたしに頷いて、わたし達は全員意識を切り替える。

 まだマジェコンヌは遠いし、モンスターの影もないけど、進めばすぐに戦闘となる。だから、いつそうなってもいいように、臨戦体制でわたし達は歩き出し……と、そのときだった。

 

『……!?』

「ふぇっ!?あ、え……Nギアが鳴ってる…?」

 

 突如鳴り出した、わたしにとっては聞き覚えのある音。それに皆驚いて…すぐにネプギアは手を太腿へ。そこに巻いたホルダーから愛用の端末を取り出すと、やっぱり音源はそのNギアで……画面を確認した瞬間、ネプギアは目を見開く。

 

「…い、いーすんさん!?」

 

 ネプギアが口にしたのはまさかの名前。それにびっくりしたわたしが横から画面を覗き込むと、確かにそこに写っているのはいーすんの姿。え、な、なんで!?

 

「無事繋がったみたいですね。ネプギアさん、通信状態に不備はありませんか?

(´・∀・`)」

「あ、な、ないです…って、そうじゃなくて…!いーすんさん、どうやって連絡を…!?」

「交信用の施設を介して、Nギアに電波を飛ばしたんです( ̄▽ ̄)」

「あぁ、そういう…。……え、でも交信用の機材は電源を落としておいた筈…それは、どうやって…?」

「ウィード君と海男さん。…二人が施設に来て、こっちと繋いでくれたんだよ」

 

 思いもよらない展開にわたし達が混乱する中、いーすんに続いてイリゼも画面の中に現れる。

 で、そのイリゼが口にしたのは、ウィードくんと海男の名前。今の回答で、「どうやって連絡を…?」って部分は解決したけど……今度は別の疑問が浮かび上がる。

 

「繋いでくれたって…なんでそんな事、ウィード達が……」

「それは…っと、その前に…今普通に話せてるって事は、まだ戦いは始まってないんだよね?」

「う、うん…そうだけど……」

「なら良かった。…ネプギア、うずめにNギアを渡してもらえる?」

「へ?…は、はい……」

 

 目をぱちくりとさせながら、言われた通りに渡すネプギア。渡されたうずめは勿論、わたしもおっきいわたしもきょとーん状態。でも…聞こえてくる声から、真剣なんだって事だけは伝わってくる。

 

「…ごめんね、うずめ。私、ウィード君達からこれから行われる戦いの事を聞いたけど…それでもやっぱり、そっちにはいけない。そっちの次元が大変なのは、本当によく分かってるけど…こっちも、大変なのは同じだから」

「…あぁ、分かってるさ。分かってるし…心配すんな。こっちは俺が、俺達が……」

「…だから」

 

 続く言葉へ割り込むように、イリゼの発した「だから」って言葉。その言葉に籠る意思に、信念に一瞬私達全員が口を閉じて…イリゼは、ううん……イリゼ達は、言う。

 

『──遠き次元にて、護るべきものの為単身戦い続けた橙の女神よ。絶望に屈する事なく、膝を突く事なく、希望を胸に燃やし続けた誇り高き女神よ。信次元を護る当代の女神として、勇猛なる貴殿へ最大限の敬意と賞賛を。そして……貴殿の道筋に、誉れ高き勝利と栄光を!』

「……──っ!」

 

 聞こえたのは、イリゼ、ノワール、ベール、ブランの声。三国の守護女神と、原初の女神の複製体による、堂々とした女神の声。その声を聞いた時、その言葉が届いた時、うずめは一瞬驚きとは違う…心の中で何か深いものが響いたような表情を浮かべて……次の瞬間、四人の声に呼応するように、空から一筋の光が駆ける。

 

『……っ!?こ、この光は一体…!?』

 

 降り注いだ一筋の、けれど輝かしい光の柱。わたし達が見つめる中、その光は少しずつ収まっていって……

 

 

 

 

「…ラステイションが女神候補生、ブラックシスター。ルウィーが女神候補生、ホワイトシスター……」

「ここに、さんじょーっ!」

「さんじょう…!(びしりっ)」

 

 光が完全に収まった時、そこにいたのは……信次元にいた筈の、三人の女神候補生だった。

 

「え……ユニちゃん!?ロムちゃん!?ラムちゃん!?」

「……久し振り…って、程でもないかしら?ネプギ……」

「ネプギアちゃん、ひさしふり…っ!」

「元気にしてた?ネプギアっ!」

「あ、ちょっ…最後まで言わせなさいよねっ!」

 

 妙に格好良い、活劇版とうらぶ的登場を果たした三人。当然わたし達は驚いたし、ネプギアはそれに加えて嬉しそうな顔にもなって、ちょっと状況はカオス状態。…っていうか…ズルくない!?三度目でノウハウが蓄積されたからかもしれないけど…わたしとイリゼの時は、思いっ切り地面にめり込んだんだよ!?ネプギアの時も、実は尻餅突いてたんだよ!?なのにユニちゃんは片膝を突いて、ロムちゃんラムちゃんは綺麗に左右に分かれて着地って……ほんとにズルくない!?

 

「あはは、ごめんなさーい。…って、わわっ!?ほんとにおっきいネプテューヌちゃんがいる!」

「すごい…それに、うずめさんも…ほんとに、にてる……」

「お、おぅ…?え、と…ブラックシスターに、ホワイトシスター…?」

「あ…は、はい!三人共、わたしと同じ女神候補生で、わたしの友達なんです!…けど、どうやって…?いーすんさんの負担は……」

「大丈夫よ、具体的な手段は説明が難しいし長くなるからまた後にするけど…負担に関しては、お姉ちゃん達が肩代わりしてくれたから。で、場所は…Nギアの位置情報を利用したのよ」

「そ、そうなんだ…じゃあ、皆が来てくれたのは……」

「えぇ。ウィードさんから話は聞いたわ。…うずめさん、お姉ちゃん…いえ、守護女神に代わり、アタシ達女神候補生が助力します。この戦い…必ず、勝ちましょう!」

 

 にっと勝気な笑みを浮かべて、ユニちゃんは正面からうずめを見やる。それに続くように、ロムちゃんラムちゃんも見て、ネプギアもそれに倣って…わたし達二人も、わたし達全員で、うずめを見つめる。

 もうずっと、うずめは驚いていた。びっくりしていた。わたし達全員に見つめられた時は、完全に言葉を失っていて……でもそれからうずめは嬉しそうに、興奮したように拳を握る。そして……

 

「へっ…ありがとよいりっち、それに皆!最っ高の、頼もしい増援だぜっ!」

「だよねっ!じゃあ、わたしもモンスターの方に回ろうかな!うずめ、ネプギア、ユニちゃんにロムちゃんラムちゃん!マジェコンヌの方は任せたよっ!」

「応ッ!」

『うんっ!』

「はいっ!」

 

 新たに加わった三人と共に、わたし達七人は並び立つ。元々負けるつもりなんかなかったけど…こんなサプライズがあったんだもん、これはもう負ける気すらしないよねっ!さーて、それじゃあ…マジェコンヌ!ここで、わたし達が……倒させてもらうよッ!

 

 

……まぁ、わたしはモンスターの大群の対応に回るんだけどねっ!




今回のパロディ解説

・「〜〜エゴだよこれは〜〜」
機動戦士ガンダム 逆襲のシャアの主人公、アムロ・レイの台詞の一つのパロディ。作中でも語ってますが、やはりネプテューヌにとってマジェコンヌは特別な敵でしょう。

・ファントムペインの少尉さんとその機体
機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZERに登場するキャラの一人、ミューディー・ホルクロフト及びブルデュエルの事。…ああはなりたくないですね……。

・『〜〜こ、この光は一体…!?』
ジョジョシリーズの登場キャラの一人、ディオ・ブランドーの台詞の一つのパロディ。石仮面の光ではありません。シェアエナジーの光です。えぇそうですとも。

・活劇版とうらぶ
刀剣乱舞のアニメの一つ、活劇 刀剣乱舞の事。過去の時代に刀剣男子が召喚される際のシーンを想像して頂けると助かります。あんな感じのつもりなのです。
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