超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第四十四話 わたしのおかげでとんとん拍子

 ネプギアと一緒に、もう一つの次元へ飛んだら、そこは(低)空。そこからは滅茶苦茶回って転がり落ちるし、ボロボロになるし、やっと止まった場所はどこか分からない林の中。街を探そうと歩いてみたらモンスターに囲まれるし、いざこっちの次元での初戦闘…と思ったら飛び込んできた二人の女神に助けられるし、もうこの時点でしっちゃかめっちゃか。散々酷い目に遭って、いきなり出会いも経験しちゃって、既にお腹一杯レベルだけど、ここまでで一番衝撃的だったのは何かって言えば、それはまぁ……ボディーぶち込まれた、重く喰い込むような一撃だよねぇ…ぐふっ……。

 

「お、おぉぉ……!」

「ちょっ…ど、どなたか知りませんが、いきなり何するんですか!?」

「え、あれ?何か反応が違う…?」

「いや、反応が違う…?…じゃないから…嬉しいのは分かるけど、喜びをタックルで表現するのは止めようねピーシェ……」

「うっ……べ、別に喜んでないし!ぴぃはねぷてぬが喜ぶと思って、昔の挨拶をやってみようと思っただけだもーん!」

「挨拶感覚だったとしたらそれは最早辻斬りよ…」

 

 身体がくの字に曲がる程の、反射的に地面を踏み締めてなかったら吹っ飛んでた可能性が高いヘビーなタックルをわたしにしてきた女の子…ピーシェ?…は、きょとんとした後何やらツンとした顔で指摘に反論。一方、その指摘をしたもう一人は、半眼で突っ込んで額に軽く手を当てる。…え、ピーシェって子はともかく…こっちの人も、わたしの受けた大ダメージについては触れないの…?

 

「…けど、ネプギアも今の発言は酷くないかしら?幾ら久し振りとはいえ、どなたか知りませんがなんて……」

「へっ?あ、あの…もしわたしが忘れているのなら、申し訳ないですけど…わたし達って、お会いした事ありましたっけ…?」

「え?…いや、貴女…ネプギア、よね…?」

「は、はい…ネプギア、ですけど……」

 

…と思っていたら、もう一人の人も何だかおかしな事を言い出す。わたしやネプギアは女神だから、名前を知られている事はまぁそんなにおかしくないけど…この二人の言動は、どう考えても初対面の相手にするものじゃない。女神は基本個性的だけど、非常識な女神はいない……筈。でもそうなると、ここまでのやり取りはやっぱりおかしい訳で……って、ん?

 

(…待った…確かさっき、この子はわたしを『ねぷてぬ』って言ったよね…?)

 

 お互い「え?」ってなってる空気の中、フル稼働するわたしの頭。…うん、確かにこの子はわたしをねぷてぬって言ってたよね…この子の名前はピーシェで、わたしをねぷてぬって呼んできて、でもわたしはこの子を知らない…。この子はぱっと見、わたしより背が高くて…わたしと会うのは久し振りで…ここは別の次元…って、事は…まさか……!

 

「こ、これって…まさかのコラボストーリー!?」

「いやそれは違うと思うよ!?」

「でもそうとしか思えない状況だよ!?むしろそれなら辻褄が合うってレベルの状況だよ!?『コラボエピソード 信じて頑張る物語』とかじゃないの!?」

「だからそれは違うって!ほら、今回のタイトルは普通に『第四十四話』ってなってるでしょ!?というかそもそも、既存キャラだけでコラボに向かうと思う!?」

「で、でももう一人の方もオリキャラ……」

「すとーっぷっ!もうそろそろ止めようお姉ちゃん!なんで知ってるんだってなるから!メタ発言とかじゃカバーし切れないレベルになっちゃうからぁっ!」

 

 鬼気迫る様子のネプギアに両肩を掴まれ、流石にそこでストップするわたし。お、おおぅ…まさかギャグパート且つメカネタ以外でネプギアに気圧される日が来るなんて…まぁ、わたしも良識ないメタ発言に踏み込んじゃった気はするけど……。

 

「頑張る?頑張るって…ぴぃが?」

「だから駄目ですってぇっ!特に貴女が言っちゃ駄目なんですよぉぉっ!」

「わっ…ね、ねぷぎあが壊れた…?」

「うん、追い討ちかけたのはピーシェだからね…。…ネプギア、大丈夫…?」

「はぁ…はぁ…だ、大丈夫じゃないです……」

「そ、そうよね…これ以上続くようならここからはわたしが突っ込むから、ネプギアは休んで…」

 

 わたしはタックルで物理的に、ネプギアはエグいメタ発言で体力&精神的に大ダメージを受けて(こっちはほぼわたしのせいだけど…)、早くも疲労困憊なわたし達二人。…けど、うーん…そういう事じゃないなら、ほんとになんだろ…?まさかわたし達の記憶の一部が封印されてるとかではないと思うし……あ。

 

「…えーっと、あのさ…変に思うかもしれないけど、一つお願いしてもいい?」

「お願い?いいけど、どんな?」

「わたし達の住んでる次元はどこか、言ってもらえる?」

 

 そこでふと思い付いた、今度は100%真面目な可能性。それを確かめるべくわたしが訊くと、訊き返してきた女の子とピーシェは顔を見合わせ…それから言う。

 

「どこって…超次元でしょ?」

「あー…やっぱりかぁ……」

 

 何故そんな事を…とばかりに女の子が発した回答。それはやっぱり、わたしの思った通りの()()()()回答で……その答えを聞いたわたしは、確信した。この次元にはわたし達よりも前に、超次元って次元のわたしやネプギアが来てたんだって。

 

「…ねぷてぬ?」

「えっとね、凄く言い辛いんだけど…それ、人違いならぬ女神違い…それも、ねぷ違いだと思う……」

『へ?』

「…信次元、って言うんだ。わたしとネプギアの、住んでる次元は…」

 

 頬を掻きながら、ちょっと気不味い気持ちで言うわたし。勿論わたしが悪い訳じゃないんだけど…やっぱり、申し訳ないなって気持ちになっちゃう。だって二人からすれば、久し振りに会えたと思った相手が、まさかのねぷ違いだったんだもん。

 で、それを聞いた二人はといえば、まずは「何言ってんの…?」って感じの顔に。それから女の子の方は意味が分かったみたいな表情へと変わっていったけど、ピーシェの方は段々顔が青ざめていく。

 

「…ね、ねぇ…って事は、つまり…このねぷてぬとねぷぎあは、ぴぃが知ってる二人とは違うの…?」

「そのようね…表情からして、嘘を吐いてるようには見えないし……」

「…じゃあ、ぴぃ…初対面の人に、一撃かましちゃったって事……?」

「…そう、なるわね……」

 

 やってしまった。そう言わんばかりの顔で、ピーシェは隣にいる女の子とやり取りを交わす。その間も彼女の顔はどんどん青くなっていって、そして……

 

「…う、うぅ……紛らわしい事するねぷてぬが悪いんだもんっ!」

「えぇぇぇぇッ!?まさかの逆ギレ!?」

「…ピーシェ、わたしも気付かなかったから偉そうな事は言えないけど…幾ら何でも、それは身勝手が過ぎるんじゃない?……貴女も、そうは思ってるんでしょ?」

「うっ…だって……」

 

 何故か初対面の相手にボディーへ一撃ぶち込まれた挙句、無茶苦茶な糾弾までされるわたしだった。……でも、その後ピーシェ、ぼそっと「…ごめんなさい」って言ってたんだよね。さてはこの子、ちょっと素直じゃないだけでほんとは良い子のパターンだな〜?

 

「…こほん。じゃあ、確認させてもらうけど…ネプテューヌもネプギアも、わたし達が思っていたのとは違う次元からここに来た。だから、わたし達の事は知らない…って事で、合ってる?」

「あ…はい。そうです」

「なら……貴女達は、どうしてここに?」

「それは…って待った。ここってさ、もう安全な場所なの?木で視界が遮られるし、出来れば移動したいかな…後、わたし達転がりまくってそこそこ擦り傷しちゃってるし……」

「…確かに、ネプテューヌの言う事は尤もね。それじゃあ一先ず、教会まで移動しましょうか」

 

 ここまで災難続きだったけど、飛んでからすぐに女神二人…それも別次元のわたしとネプギアのおかげで最初から友好的な人達と出会えたのは、間違いなく僥倖。この二人から協力を得られるなら心強いし、この次元にとっても無関係な話じゃないんだから、どうして来たのかも元々話すつもりだった。詰まる所、今わたし達はかなりテンポ良く話を進められている訳で……これで教会までストレートに行けるなら、さっきのボディーも許せちゃうような気がしてくるよねっ。

 という訳で、反転した女の子の後を付いていこうとするわたし達。でも一歩踏み出したところで、くるりと女の子はわたし達の方へ向き直る。

 

「…っと、その前に…自己紹介してもいいかしら?わたし達は二人の事を知っているけど、二人はまだわたし達が女神って事しか知らないでしょ?」

「そうですね…はい。もし宜しければ、自己紹介をお願いします」

「勿論。ピーシェもいいわよね?」

「…ピーシェ。女神としての名前はイエローハート。今は色々あって、プラネテューヌで活動してる。……これでいい?」

「うん、宜しくねピーシェ。…いや…ピーシェじゃなくて、ピー子かな!うん、こっちの方がいいよね!宜しく、ピー子っ!」

「……っ…!…ま、まぁ…宜しく……」

 

 にこりと笑みを浮かべた女の子に求められたピーシェ…ううんピー子は、ちょっとだけ躊躇うような顔をした後、わたし達へ向けてぶっきらぼうに自己紹介。だけどわたしがぴー子って呼んだら、一瞬驚いたような顔をした後目を逸らしちゃったけど……頬を掻いてるピー子の顔は、満更でもなさそうにちょっぴり赤くなっていた。

 そして次は女の子の番。わたし達が視線を向けると、女の子はこほんと一つ咳払いして、一歩わたし達の方に出て……

 

「…わたしはレジストハート、セイツ。人の、女神の、皆の味方。二人共…ううん、可憐な二人のお嬢さん。教会で話が終わった後は……わたしとデート、してくれるかしら?」

『…………え"…?』

 

 どういう訳かわたし達は、姉妹揃ってさっき出会ったばかりの女の子にデートを申し込まれてしまうのだった…。

 

 

 

 

 ピー子とセイツ。二人に連れられてわたし達が辿り着いたのは、よく栄えた大きな街。その街が見えてきた瞬間、わたし達は安心した。理由は…流石に言うまでもないよね。

 その街の中には、気になる建物も、入ってみたいお店も盛り沢山。これは女神として視察しなきゃ!…と思ったわたしだけど、流石に今はこっちでの活動の足場固めを優先するべきだし、擦り傷もヒリヒリしてきちゃったから、取り敢えずそれは後回し。という訳で……なんともう教会到着だよっ!いやー、展開が早いと楽だね!

 

「さ、二人はここで待ってて。ピーシェ、二人の手当てをお願い出来る?」

「え、ぴぃが?」

「別にピーシェがイストワールを呼んできてくれても構わないわよ?どっちにする?」

「…それなら、いすとわるはぴぃが……」

「いえ、その必要はありませんよ(^ ^)」

 

 案内されたのは、教会内の応接室。噂をすれば影がさすとばかりに、セイツが開いて手をかけたままの出入り口から入ってきたのはこの次元のいーすん。

 

「おー!こっちの次元のいーすんもやっぱりちっちゃいんだね!」

「…あ、信次元のいーすんさんとほぼ同じ背丈…いーすんさんの背丈は、次元ごとでまちまち…って訳でもないのかな…?」

「…確かに、ネプテューヌさんとネプギアさんですね…外見は勿論、性格も……(。-_-。)」

「でしょう?わたし達も言われるまで気付かなかったし、ピーシェなんて昔の調子で思いっ切り……」

「わっ、ちょっ!?それは言わないでよせーつ!」

「あぁ…何があったか、今のでわかりました……( ̄▽ ̄;)」

 

 ボディーアタック事件を暴露されかけて、途端にわたわたと慌てるピー子。でも止めるのが遅かったみたいで…いーすんは、見るからに苦笑していた。…あぁ、今ので分かっちゃう位、超次元のわたしってアレを何度もされてたんだ…大丈夫かな、超次元のわたし…虐められてたとかじゃないかな……。

 

「むぅぅ…いいもん、ぴぃは救急箱持ってくるし!」

「あ…っと、ピーシェさん…手当ての道具でしたら、ここに……」

「えっ……?」

「だって。取りに行かなくてもよさそうね、ピーシェ」

「……ふ、ふんっ」

 

 そこからぴー子はエスケープしようとしてたけど、ネプギアがおずおずと手当ての道具を出した事により離脱失敗。しかもセイツに優しい笑みを浮かべられていて…うん、間違いないね。この子、絶対実は良い子だよ。

 

「…こほん。では…早速ですが、本題に入りましょうか。ネプテューヌさん、ネプギアさん。あなた達は、どうしてここ…神次元ゲイムギョウ界へといらっしゃったのですか?(・・?)」

 

 なんて、愉快な話をするのはここまで。ここに来るまでの道中でセイツから連絡を受けていたいーすんが話を切り出して、わたし達も皆真面目な顔に。

 わたし達はピー子とセイツから手当てを受けながら、二人で信次元の状況とここに来た目的を三人へと伝える。その最中、皆で話した罠の可能性が頭をふっと過ったけど…いーすん達が信次元に現れたうずめの仲間なら状況はそもそも知ってるだろうし、目的だって分かってる筈。それに、根拠はないけど…ピー子だけじゃなく、二人も多分悪い人じゃないもんね。だったら、取り敢えずは信じて信頼関係を作らなくちゃ。

 

「…なので、黄金の塔を見つけ出して破壊するのが、わたし達の目的です」

「そういう事だったの…イストワール」

「はい。お二人の…いえ、信次元の事情はわかりました。そして…わたし達は、それを信じようと思います(´・∀・`)」

 

 こくり、といーすんの言葉に頷く二人。それに対して、わたし達はちょっとびっくり。だって、まさか最初の返答が「それを信じる」って言葉になるとは流石に思ってなかったもん。

 

「え…い、いいんですか?…そんな、あっさりと……」

「お二人が嘘を吐いているようには見えませんからね。それに…いえ、むしろこちらが主な理由とも言えますが……こちらの次元でも、少し前から異常が発生しているんです(・ω・)」

 

 真剣な表情を浮かべたいーすんの言葉で、わたし達は再び驚愕。

 今のはつまり、原因とか現象とか…とにかく何かしら、わたし達が今話した内容とこっちで起きてる事とに関連性を感じた…って事なんだと思う。でもここに来るまで、わたし達は異常なんて感じなかった。街の人達は皆普通に生活してたし、街の様子もわたし達の目には『正常』に映っていたから。

 

「その異常について…教えてもらっても、いいですか?」

「勿論です。現在、この神次元において明確な問題を発生させている異常は二つ。一つは、次元間の繋がりが不安定になっている事です(´-ω-`)」

『次元間の、繋がり…?』

 

 きょとん、と顔を見合わせ軽く首を傾げるわたし達。いや勿論、言葉の意味は分かるけど…不安定……?

 

「これまでは出来ていた事が、うまく出来なくなっているんです。次元間移動は勿論の事、別次元のわたしへ向けた通信も、まるで電波障害が起こっているかのように安定しておらず…(¬_¬)」

「電波障害…あっ!じゃあもしかして、こっちにノイズが激しい通信が入ってきたのって……」

「それは…半分正解、ですね。…あ、いえ…もしかすると、その通りなのかもしれませんが…わたしは異常によって別次元のわたしを正確に認識する事が出来ず、それによってそちらのわたしを超次元のわたしと誤認してしまった結果、超次元のわたしへ向けた、ピンポイントの通信をかけようとしてしまったのが直接の原因なのではないかと思ってます(´ω`)」

『……?』

「え、っと…それはラジオに例えるなら、チャンネルが微妙にずれた状態で繋がってしまった為に、ノイズ混じりの放送が聞こえてきた…みたいな感じでしょうか…?」

「流石はネプギアさんですね。大体そんな感じです(о´∀`о)」

『おぉー…!』

 

 分かるような分からないような。ややこしくはないけどちょっと難しい説明に、わたし(とピー子)はまた首を傾げて…でもネプギアの例えを聞いた瞬間、ぱっと理解が出来て気分もすっきり。思わず感嘆の声を漏らすと、なんとこっちもピー子と被って……でもピー子の方を見たら、ピー子はぷいっと横を向いちゃった。…恥ずかしかったのかな?

 

「…イストワール。その話でいうと、その信次元…の、イストワールと連絡を取るのは……」

「そうですね…通信が上手くいかなかったのは、今言った通り半端にしか合致しない送信をしていたからですし、次元間の距離が近づいている事と、その信次元の女神であるお二人がここにいる事とを踏まえれば……恐らく、出来ると思いますd(^_^o)」

「ほんと?やたっ、それなら交信手段の確立は速攻で何とかなりそうだね!」

「だね。いーすんさん、宜しくお願いします」

「わかりました。…では、説明に戻りましょうか( ・∇・)」

 

 またまたわたし達にとってはありがたい展開に、わたしはちっちゃくガッツポーズ。いやぁ、ほんととんとん拍子に進んでくれるよね。こんなに上手く進むと……やっぱりちょっと、心配になっちゃうな…うずめ達、苦労してるよね…。…っていけないいけない、今はもう一つの異常をちゃんと聞いておかなきゃ。

 

「もう一つの異常は、一部のモンスターが凶暴化している事です。今のところ、凶暴化したモンスターが大きな被害を引き起こすという事には至っていませんが…わたし達はそのような個体を、猛争モンスターと呼んでいます( ̄^ ̄)」

「猛争モンスター…それって、汚染モンスターとは違うの?」

「違うわ。差異は幾つかあるけど、一番の違いは猛争モンスター同士で群れを組んだりもする事ね」

「群れ、ですか…それは厄介ですね…。群れを作れるって事は、統率する個体やそれに沿って動く頭があるって事ですし…」

「そういう事。でも逆に言えば汚染モンスターよりは動きを推測するも出来るし、同一種の個体としては汚染モンスターの方が厄介だとも思うわ」

 

 説明を引き継いだセイツの言葉に、わたしは考えながらうんうんと頷く。

 ちゃんと連携出来るなら、複数の個体を同時に相手するのは、同じ数の相手を一体ずつ相手するよりずっと大変。でも汚染モンスターが危険である理由の一つは、本能的に動く割に時々予想だにしない動きをする…つまり、想定外が起こりやすいって事だから、群れを作れる程度に頭が動いているならきっとその『想定外』は少ない筈。だって、どの個体も時々統率から外れた動きをするんじゃ、モンスターの群れは成立しないもんね。

 

「繋がりの不安定化と、猛争モンスター。これが現在神次元の抱えてる問題であり……」

「これとそっちの問題とが関係してるなら、どっちも同じ人物や組織が元凶なら…わたし達は、二人に…信次元に協力する事を惜しまない。そうでしょ?イストワール、ピーシェ」

「ふふっ。その通りですよ、セイツさん(⌒▽⌒)」

「…うん。ぴぃも、ぴぃの次元が悪くなっていくのは嫌だから。それに……」

「…それに?」

「…な、何でもない。それより、のわる達は?」

「あ…そうですね、そろそろ到着してもよい頃合いだとは思いますが……(´・ω・)」

 

 にこりと笑うセイツといーすんに、真剣な表情を浮かべるピー子。それからピー子は何かを言いかけたけど…それより気になるのは「のわる」って単語。のわる、のわるって……

 

「失礼するわ」

「あーっ!のわるって、やっぱりノワールの事だったんだね!…という事は、達って部分は……」

「…相変わらず元気一杯ね、ネプテューヌは……」

「お久し振り…では、ないのでしたっけ?」

 

 開いた扉から入ってきたのは、わたしにとって見慣れた…というか、こっちに来る直前にも見た女神三人。服装は違うけど……うん、間違いない。ノワールと、ブランと、ベールじゃん!

 

「うん、三人にはもう話したけど、わたしは皆の知ってるわたしとは違う次元から来たわたしなんだ!つまり、別ネプだよ!そしてこっちは別ギア!」

「べ、別ギア…?…え、と……初めまして。皆さんはご存知との事ですが…信次元の女神の一人、パープルシスター・ネプギアです」

「…信次元?…の貴女達も、やっぱりネプギアの方がしっかりしてるのね……」

「うん…ぴぃも思った。ねぷてぬの方が、妹っぽいって」

「ちょっと、またそのネタなの!?そのネタ少し前にもやったし、何なら末っ子扱いまでされたんだからね!?」

「え、それを今来たわたし達に言う…?」

「違うよっ!これは『数話前』にもって話!」

「さも当然のようにメタ発言をする辺り、確かにネプテューヌですわね……」

 

 いーすんもだけど、こっちの三人も見た目だけじゃなく中身もわたしの知っての通り。それが何だか嬉しくて、ついついおふざけに入っちゃうわたし。まぁ予想通り、その結果皆からは半眼で見られだけど……うんうん、もうここまで含めてお決まりのパターンって感じあるよねっ。

 

「…で、今は何の話をしていた訳?」

「あぁ、それは……」

 

 その後、訊いてきたノワールに答える形でセイツがここまでの話を簡単に説明。話している最中、ノワールとブランは普通に聞いていたけど、ベールは時々妙に温かい目でネプギアを見ていて……うん、こっちのベールも姉として気を付けておく必要がありそうだね…。

 

「…ふぅん。それで、ネプテューヌ達との協力を約束したのね」

「そういう事よ、ブラン。何か質問はある?」

「質問、というか……それは神次元全体に関わる事なんだから、貴女達だけで約束するんじゃないわよ…まぁ大方、セイツが率先して信用しちゃったんでしょうけど」

 

 説明終了後、軽く頭を押さえながらノワールがセイツに一つ指摘。それにベールもブランも頷いていて、ピー子といーすんも「しまった、それはその通りだ…」って顔をしていたけど、当のセイツはむしろ小さく微笑んでいる。

 

「それは、二人を信用するのが早過ぎるって事?でもそれなら心配ないわ。…皆だって分かるでしょ?ネプテューヌとネプギアの…二人の心の中には、強い輝きがあるって事を。こんなに良い輝きのある二人が、信用ならない訳ないじゃない」

「いや、貴女……相手が極悪人の場合でも、強い思いや感情を秘めてる場合、同じ評価をするじゃない……」

「うっ…だ、だって…素敵じゃない、そういう人って……」

「…まぁ、根拠も無しに疑っていては何も始まりませんし…一先ずは信じるのも良いのではなくて?」

『ベール(さん)……』

「…本音は?」

「ここで信じる旨を伝える事で、ネプギアちゃんから好意を…って失礼な!わたくしにそんな下心はありませんわよ!?」

『…………』

 

 嬉しい事を言ってくれた…と思いきやセイツはノワールに返されて言葉に詰まってるし、ベールも信じてくれた…と思ったらブランに「本音は?」と訊かれて自爆してるしで、一気に流れはぐたぐたな状態に。

 でも、ノワールの指摘はその通りだと思う。わたし達は皆の知ってるわたし達じゃない…つまりは初対面な訳だし、こっちはどうか知らないけど信次元じゃマジェコンヌが女神の偽物を作り出した事だってあるんだから、最初から何でもかんでも話すんじゃないって思うのは当然の事。

 そう。セイツ達にしたって、わたし達への信用はきっと『超次元のわたしとネプギア』ありきの信用。だったら、わたし達のする事は……一つ。

 

「よーし、それじゃあ皆!繋がりの不安定化…は、ちょっと何が出来るか分からないけど…その猛争モンスターへの対処は、わたし達も協力するよっ!」

「え…ねぷてぬ達も……?」

「うん!だってわたし達は、これから協力してもらうんだもん。だったらわたし達だって皆に協力するのが筋ってものだよ。だよね?ネプギア」

「そうだね、お姉ちゃん。…いきなり来て、勝手だとは思いますが…わたし達にも、協力させて下さい。この次元の平和を、守る事に」

 

 わたしはにこっと笑って、ネプギアはしっかりと頭を下げて、わたし達は二人で言う。協力してもらうんじゃなくて、協力し合おうって。…信用は、信じようって気持ちは、繋がりの中で紡いでいくものだもんね。

 

「…ねぷてぬ、ねふぎあ……」

「…ふふっ、ほらね?二人共、とっても強くて優しい思いを持ってるでしょ?」

「貴女ねぇ……別に、私だってそれを疑ってはいないわよ…それに、少なくとも貴女達が信用出来るって感じたのは事実でしょうし…」

「…こうもはっきり言われては、女神として断る事も出来ませんわね。ブランはどうしでして?」

「…二人は、これから行動で信用を得ようとしてるんでしょう?何も、それすら拒否するつもりは初めからないわ」

「…って事は……」

「えぇ。お二人共…ご協力、よろしくお願いしますね( ^∀^)」

 

 素直じゃないけど優しいノワールに、穏やかで優しいベールに、クールで優しいブラン。信次元と同じ、わたしが知っているのと同じ優しさを、こっちの三人も持っていて……いーすんの締めで、わたし達はお互い協力する事が決定。

 こっちに来てから今に至るまで、まだ一日も経ってないのに驚く事続き。でもここまでで信用出来る人達に会えて、早速交信の目処も立って、たった今協力し合う約束も出来た。これはほんと、運が良かったって結果だけど…結果は結果、得られたものは得られたもの。だから…新しい次元でも、ラッキーマンならぬラッキーヴィーナスネプテューヌは、いつも通りに頑張っちゃうよーっ!

 

 

 

 

「…ところでお二人共、その怪我はもしや……」

「あ、うん。こっちに来ると同時に空へ投げ出されちゃってさ〜」

「へぇ。…珍しいことがあるものね。そうやってきた人が、ノワールの上に落ちないなんて」

「な、なんでそれが珍しい事になるのよ!もうあんな思いはごめんだっての…!」

「ほほーぅ、ノワールにはそんな要素が…それじゃあ、お約束大好きなわたしとしてはノルマクリアしなきゃだよねっ!行くよノワール、とりゃー!」

「はぁぁ!?な、なんで飛び上がってんのよネプテューヌ!ちょっ、こっち来ないで……のわぁああああああああっ!?」




今回のパロディ解説

・『〜〜信じて頑張る物語』、「頑張る?頑張るって…ぴぃが?」
ハーメルンで連載中の作品、『大人ピーシェが頑張る話。(エクソダスさん作)』のパロディ。まさか、一ヶ月弱の差で先を越されるとは…ほんと驚きました……。

・ラッキーマン
とっても!ラッキーマンの主人公(追手内洋一)の事。シリーズ内では幸運だけが取り柄、なんてフレーズ(スキル)があったりしますし、ネプテューヌは幸運キャラですよね。

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