超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第五十話 過去から続く今

 抜けている…というか天然で、女神化すると凄く大人の女性って感じになって、けれどずっと表情の奥に苦しい何かを抱えていたような、こっちのプラネテューヌの女神、プルルートさん。…そのプルルートさんが、わたしの目の前で豹変した。秘めていたものを解放するように、溜め込んでいた何かを纏めて吐き出すように。

 豹変したプルルートさんが向けてきたのは、これまで感じた事のないサディズム。ぞくりとするような、心を掴まれるどころか掌握されるような感覚にまとわりつかれて、言葉で責め立てられて、少しずつ少しずつ、段々と追い詰めるように腕から電流を流されて……だけど、これ以上は言わせられない。わたしだけならまだしも、『信次元の女神』を侮辱するというなら、その腕と言葉を跳ね除けなきゃならない。…そう、思った瞬間だった。静かな怒りを瞳に灯したお姉ちゃんが、わたしからプルルートさんを引き剥がして正対させたのは。

 一触即発…そんな雰囲気に、一瞬なった。けれどその雰囲気はすぐに瓦解した。再びプルルートさんが豹変し…何かに強く怯えた表情で、わたし達の前から飛び去っていってしまったから。

 

「……っ…そう…プルルート、また抑えられなかったのね……」

 

 何が起きたのかも、どうしたらいいかも分からずわたし達が立ち竦む中、慌てた様子で飛び込んで来たのはセイツさん。わたし達を探していたセイツさんとピーシェさんは飛び去って行くプルルートさんの姿を見つけて、ピーシェさんはプルルートさんの方へ、セイツさんは何があったか確かめるべくこっちに来たらしくて……わたし達から事の次第を聞いたセイツさんは、そう言って表情を曇らせる。

 

「抑えられなかった…?…セイツ、どういう事…?」

「それは……話すと長くなるわ。…今すぐ、聞きたい?」

「勿論。…でもそういう言い方をするって事は、出来れば後にしてほしいんでしょ?」

「…察しが良いわね。この話は、女神メモリーを服用した皆がいた方が色々スムーズに進むと思うから。それに……」

「…調査、ですか…?」

 

 引き継ぐ形で言ったわたしに、セイツさんは無言で首肯。わたし達にはここの調査をするって目的があって、しかもセイツさんは知らないだろうけどここにはマジェコンヌさんだっているかもしれないんだから、ここで調査を放り出す訳にはいかない。

 

「でも、二人は気になるでしょ?プルルートは、多分教会に戻ったんだと思うし…二人も行ってくれて構わないわ。ここの調査は、わたしがきっちり行うから」

「…ありがとう、セイツ。けど、大丈夫よ。さっき答えた通り、気にはなるけど…だからって、貴女一人に押し付けるなんて嫌だもの」

「…だよね。わたしも残りますよ、セイツさん」

「二人共…ありがとう、二人の優しさがわたしの心に染み渡るわ……」

 

 気になるけど、誰かに任せられるならわたしもすぐに行きたいけれど、たった一人に全部任せるなんてそんなのわたしだって嫌。だからお姉ちゃんと二人、予定通りに調査する事を伝えると、セイツさんは頬を緩ませ…というか、どこか艶めきすらも感じさせる表情になって……あー…やっぱりセイツさんって、女神化すると性格の一面が先鋭化されるタイプなんだ…。女神は女神化してる時が本来の姿だから、より正確には人の姿になると性格がマイルドになる…って言うべきだけど…。

 

「はぁぁ…沈んだ中からの、二人の何気なくさり気ない優しさ…とっても素敵……♪」

「…セイツ。わたし達、早く調査を済ませてどういう事なのか聞きたいんだけど……」

「あ…そ、そうね。こほん…。…それじゃ、このまま探すとしましょ。勿論周辺警戒は忘れないでね?」

 

 感嘆の溜め息を漏らすセイツさんを半眼で眺める事数秒。お姉ちゃんの冷めた声で我に返ったセイツさんと共に、わたし達は調査を開始する。

 猛争モンスターやマジェコンヌさんに繋がる何かが見つかるとは限らない。けれど探さなきゃ、あるかないかも分かりはしない。だからわたし達は、一度プルルートさんの事は頭の隅にしまい込んで……それから暫く、森の中を探索するのでした。

 

 

 

 

 はー…やっぱりああいうの嫌だなぁ…きっとぷるるんだって事情があったっていうか、何かしらあってのあれだったと思うのに、あんな事言っちゃうなんて…。…でも、仕方ない…っていうか、あそこで見て見ぬ振りしたり、「まぁまぁまぁまぁ……」ってやんわりとその場を収めようとする事も出来ないよね…ネプギアへの、信次元の女神への侮辱を流すなんて、それこそわたしの心が許さないし。けどやっぱり、やるべき事ではあっても気持ち的な後悔はあるというか……って、うぉぉ!?いつの間にか視点がわたしに移ってるじゃん!うっわ、やっちゃったなぁ……。…こほんっ。

 

「ただいまー…っていうのは変かな。微妙にしっくりこない事もないんだけど…」

「同じプラネテューヌだからかもね」

 

 調査を終えたわたし達は、たった今教会に帰還。探索してみた結果、気になるものはなかったし、マジェコンヌの姿もなかったけど、セイツ曰くもう何度もこうして調査をしてきて、でも一度も妙なものは見つけられてないから、成果ゼロでも想定内なんだとか。…あんまり安心出来ないよねぇ、そういう理由だと……。

 

「お帰りなさいませ、女神様。ただ今、お客様がお見えです」

「そうなの?ありがとう、なら行かせてもらうわ」

「ご案内は……」

「大丈夫よ、応接室でしょ?」

 

 声をかけてきた職員さんとセイツが軽く言葉を交わして、一先ずわたし達は応接室へ行く事に。これはあれだね、新キャラ登場の前振りだね。

 

「お姉ちゃん、雑に軽くネタバレするのは止めようよ…」

「いやー、つい。もうノワール達が着いたのかな?」

「連絡したタイミング的にも、流石にもう少し後だと思うわ。…まぁ、ノワールとブランは猛スピードで向かってきてると思うけど…」

 

 そんな会話をしながらわたし達は一度手を洗って、それから初日にも入った応接室へ。さてさてお客様っていうのは誰だろうね。普通に考えたらこっちの次元の人物だし、わたし達が見ても「?」って感じにしかならないと思うけど、物語って基本必要だから描写をする訳だし、そうなるとそのお客かお客の立場か、或いは持ってきた話がストーリーに影響する可能性大だよね。

 って、そんな話をしてても仕方ないし、それよりご対面しちゃおー!それじゃ、応接室の扉オープーン!

 

「失礼するわ」

「あ、お帰りなさいませ。セイツさん、ネプテューヌさん、ネプギアさん(*・ω・)ノ」

「おや、これはこれは……」

「…ネプテューヌ、だと……?」

 

 ノックしてから、まずはセイツが部屋の中に。続けてわたし達も入ると、最初に返ってきたのはいーすんの声。部屋の中にはそのいーすんとピー子、それにマジェコンヌと見知らぬ初老のおじさんがいて……えー?さぁ誰かなと思って来たのに、いたのはお馴染みのマジェコンヌとやけに実写風のおじさんって…これは幾ら何でも拍子抜けが過ぎるって。これじゃあさも大物が出てくるみたいな流れ作ってたわたしまで変な感じに……

 

『って、マジェコンヌ(さん)ぅぅぅぅううううううッ!!?』

「貴様…いきなり現れてなんだその態度はぁああああッ!」

 

 びくぅぅッッ!と殆ど瞬間移動みたいな速度で部屋の端へと飛び退くわたし達二人。その瞬間カッと瞳に怒りを灯らせて、座っていたソファを跳び越えながらわたしへと突進してくるマジェコンヌ。迫り来るマジェコンヌに、向けられる明確な敵意を前にわたしは反射的に女神化をし、迎撃すべく大太刀を…振るうッ!

 

「どぉおおおおぉぉぉぉッ!待て待て待て待てぇぇぇぇええええッ!!」

 

……つもりだったけど、その寸前に女神化したセイツが割り込んできて、わたしは大太刀を振ろうとした姿勢のまま咄嗟に制止。対するマジェコンヌも手にした得物を紙一重のところで止めていて、ふわりとセイツの淡い色合いの髪が宙をなびく。

 

「はぁ……はぁ……ちょっとッ!?な、何しちゃってくれてんのよマジェコンヌッ!?」

「……ちっ、邪魔が入ったか」

「ちっ、邪魔が入ったか…じゃないんだけど!?わたし貴女の実は純粋な闘志と意思の事はいつも惚れ惚れするって思ってるけど、だからってこんなところで発露しないでくれないかしらッ!?」

 

 降りた髪が天を突きそうな位の勢いでキレ出すセイツに、わたしもネプギアも(気付けばネプギアも女神化していた)完全に唖然。でもマジェコンヌの方はといえば、五月蝿そうに手元から得物を消していて……え、えぇ…?これ…どういう事……?

 

「ふん、相変わらず不良並みの喧嘩っ早さだな」

「悪いな。貴様と違って、枯れ木になるつもりはまだないのだ」

「ちょっ…待って頂戴、そっちも何か対立があるの…?原作ユーザーさんならまだしも、わたしや未プレイの方はほぼ置いてけぼりよ…?」

「はぁぁ…説明するから、一度座って頂戴…後、なんでピーシェ達は何もしてくれないのよ…」

「…せーつを信じてたから?」

「ありがと、でも心だけじゃなくて物理的な協力も出来ればしてほしかったわ……」

 

 蚊帳の外感すらある状況の中、酷く疲れた様子のセイツに促されてわたし達は女神化解除&着席。…セイツ、わたしには見えてたけど…実はピー子も動こうとしてたわよ?でも多分、位置的に間に合わないっていうのと、ピー子からはセイツが見えてたから貴女に任せたんじゃないかしら。

 

「はー、びっくりしたぁ…。…で、どうしてここにマジェコンヌがいるの?しかも悪人カラーの」

「悪人カラーだと?はっ、確かに正義を語るつもりなぞないが…随分な物言いじゃないか、駄女神」

「な、なにをー!?駄女神って、OE始まってからのわたしは全然だらけてないんだけど!?むしろ精力的に活動してるもんねーっ!」

「なんで早速煽り合うのよ……お願いだから落ち着いて…」

「…お姉ちゃんがすみません、セイツさん……」

「ありがと、ネプギア…。…こほん。まずはマジェコンヌだけど…大丈夫、彼女とわたし達は敵対していないわ。少なくとも、今はね」

「……ふん」

 

 がっくりと肩を落として更に疲れた顔を浮かべたセイツは、気を取り直すように咳払いをして端的にマジェコンヌの事を話してくれる。

 それを聞いたマジェコンヌは、どこか不服そうに鼻を鳴らす。…少なくとも、今は…って……

 

「…じゃあ、前は……」

「えぇ、プルルートや超次元のネプテューヌ達とは、何度もやり合ったらしいわ。その時期わたしはいなかったから、具体的な事は話せないけど」

「そうなんですか…では、現在は改心を…?」

「抜かせ、我が心が改まる事などあるものか」

「ふっ、だが農業には目覚めたではないか」

『えっ、農業…?』

 

 さらり、と出てきた農業という言葉に、揃って目が点になるわたしとネプギア。マジェコンヌと農業という、凡そ結び付きそうにない要素にわたしは「いやいやいやいや…」と異様に賑やかな青春を送る普通の少年ばりに思ったけど、どうも本当の事な様子。…うっそぉ……。

 

「な、何があったんだろう…実はマジェコンヌさんって、野菜大好きだったのかな……?」

「う、うーん…マジェコンヌは本当は綺麗なお姉さんだったっていう、とびきりのサプライズを一度ぶち込んできた実績あるし、その線もあり得なくはないかも……」

「二人共ー、話を続けてもいいかしら?」

「あ、はい。お願いします」

「なら……」

「いや、ここはわしに言わせてもらおう。…自己紹介は、ビジネスの基本ですからな」

 

 セイツからの声でわたし達が想像を中断すると、今度はおじさんがすくっと立ち上がる。そしてわたし達の前に来て、名刺を取り出して……言う。

 

「私めはアクダイジーン。女神様方とは紆余曲折あり、多大なご迷惑もかけてしまいましたが…僭越ながら現在は、セブンスジーニアのCEOを務めさせて頂いております」

「あ、ご丁寧にどうも。流石にこんな丁寧な自己紹介されたら無下にも出来ないし、名刺はありがたく受け取って……って、え!?今、セブンスジーニアのCEOって言った…?」

「えぇ、その名刺にもある通りです」

「わっ、ほんとだ書いてある……はっ!?」

 

 女神として、礼儀正しく接してきた人に雑な返しをする事は出来ない。そう思ってるからわたしは名刺を両手で受け取って、聞いた言葉を頭の中で反芻して……気付く。自己紹介の中に、かなりビックなワードが入っていた事に。

 勿論それはびっくり。だけどそれ以上にわたしはある事が気になって、ばっと自分の隣に振り向く。すると、そこには……

 

「セブンスジーニアのCEO…重工業にも携わる企業の、トップ……!」

(…やっぱりかぁぁ……)

 

 キラッキラと、それはもうキラッキラと目を輝かせるネプギアがいた。…まぁ、うん…気持ちは分かるけどね…?わたしだって、プリンで有名なお店のオーナーと会えるならテンション上がるし、プリン貰えないかな〜とか思っちゃうし…。

 

「…ネプギアさん…?( ゚д゚)」

「あ、あのっ!わたしはこことは違うプラネテューヌの女神候補生、ネプギアと申します!もし宜しければ、工場や技術開発部の見学をさせて頂けないでしょうかッ!」

「ぬぉっ!?お、落ち着いて下され女神様…!」

「どーどー、一回座ろうかネプギア。気付いてないと思うけど、今『初老のおじさんに女の子が興奮しながら迫ってる』っていう、中々にヤバい光景になってるからね?」

「ふぇっ!?あっ…す、すみませんアクダイジーンさん……」

 

 鼻息荒く近付くネプギアを後ろから捕まえて引き戻すと、我に返ったネプギアは赤面しながらしゅんと謝罪。それをいーすん、ピー子、マジェコンヌの三人は半眼で見ていて……セイツは、なんかときめいていた。こっちはこっちで何か軽く興奮していた。

 

「ふぅ……娘達ならば喜ばしいが、まさか女神からこんな形で迫られる事になろうとは…」

「うん、姉としてわたしも謝罪するよ…それでえーっと、迷惑…っていうのは超次元のわたし達に対して?それともこっちの……」

『プルルートっ!大丈夫!?』

「うわっ!?の、ノワールとブラン!?」

 

 冷や汗を垂らしながらスーツの襟を正すおじさん…じゃなくてアクダイジーンに、わたしは気になった事を一つ質問…しようとしたけど、言い切る直前にバンッ!…と勢い良く扉が開かれて、廊下から女神化したままのノワールとブランが部屋内へ登場。…すっご…今二人同時に扉潜ったよ…?ノールックでお互い触れる事なく入ってきたよ…?

 

「い、いらっしゃい二人共…ぷるるとなら、今は部屋だけど……」

「……っ…そう……」

「…悪ぃ、やっぱりわたし達もこっちに残ってるべきだった……」

「う、ううん。気にしないで…ってのは、無理だと思うけど…のわるもぶらんも、自分の国があるでしょ?…だから悪いのは、二人よりぴぃの方……」

「待ってピーシェ。それを言うなら、わたしだって同じよ。貴女一人が悪いなんて事はないわ…」

 

 ぷるるんの話になった途端、曇りがかったように沈んでいく空気。ノワールとブランは女神化を解いて、こっちの女神四人といーすんは心苦しそうな顔で俯く。…けれどそんな中、意外な人物が声を発した。

 

「…情けないな。相変わらず奴は燻っているのか。曲がりなりにも我が前に幾度となく立った女神が、揃いも揃って陰気な顔を並べるか」

「…揃いも揃って、と呼べる面子ではないがな」

「揚げ足を取るな、尚更不愉快だ」

「…どこへ行くつもりだ?」

「私の話は済んだんだ。ならば、こんな辛気臭い…ネプテューヌすらいる場所に、これ以上留まる理由もない」

 

 機嫌が悪そうに吐き捨てたのはマジェコンヌ。そのままマジェコンヌは立ち上がって、わたしを一瞥してから一人さっさと出ていってしまう。

 

「…すまんな。だが、奴は奴なりの『女神像』があるのだろう。尊敬すべき、ではなく討つべき女神像…であろうがな」

「…意外ね、貴方が肩を持つなんて」

「単なる気紛れに過ぎん。…それに、CEOとしての立場もありますからな」

 

 含みのあるブランからの言葉に、アクダイジーンは特に表情を変えないまま返答。でも相変わらず空気は良くないままで…うーん……あ、そうだ。

 

「ねぇ、ところでさっきのわたしの質問は……」

「あ…そういえばそうでしたね。あの、アクダイジーンさん……(-_-)」

「…構わん。彼女等も女神なら問題はなかろう」

「では…ネプテューヌさん、ネプギアさん。彼は…いえ、マジェコンヌも含む彼等はかつて、七賢人という女神の統治を廃止しようとする組織に所属していたのです( ̄^ ̄)」

「…そして、アクダイジーンはわたしの元部下でもあったわ」

 

 話を変える…って程でもないけど、この空気のままは嫌だなと思ったわたしは、二人の登場で埋もれた話をサルベージ。するといーすんがアクダイジーンから確認を取って…それから言った。彼は、国の…女神の在り方を、根本から否定する活動をしていたんだって。

 加えて、ブランも言う。そのアクダイジーンと、共に国を運営していた頃もあったと。

 

「それは…どうして、そんな事を……?」

「…語るまでもない、我欲の為だ」

「…ねぷてぬ、信次元でそういう思想があったら…どうなる?」

「え?うーん…大昔は女神がいない時代も一時期あったらしいし、前にあったとある犯罪組織も、建前は新たな社会を〜、みたいな感じだったから、あり得ないとは言わないけど……」

「…けど?」

「女神としては、そんなの上手くいく訳ないじゃん…って思うかな」

 

 おずおずと訊いたネプギアへの返答は、なんというか淡白なもの。ピー子から訊かれたわたしは、ちょっと頭を捻って返答。これは、わたしの本心でもあるし…女神としては、信仰されてる統治者としては、国民の皆の為にも「それも有りだよね」とは言えないよね。

 

「でさ、その七賢人の一員がどうして今は国際企業のCEOをやってるの?どっちかが副業?」

「副業というか…表の顔はCEO、裏の顔は七賢人、って感じだったのよ。CEOになったのは、わたしが体良くクビにした後だけど」

「当然ですとも。私めがCEOを務める事が出来ているのは、ブラン様の下で国の運営に携わっていたからに他なりませぬ」

「……アクダイジーン。それは感謝の言葉かしら?それとも……」

「感謝の言葉です。…信じてもらえるとは思っていませんが…今の私があるのは、大臣としての経験あっての事。その時培った知識や経験があったからこそ、企業の長を出来ているというもの。…この言葉に、嘘偽りはありません」

「…………」

 

 ブランを見つめて、真剣な声音で伝えるアクダイジーン。それに何も言わず、背を向けて…でも言い切るまでは、ちゃんとアクダイジーンの目を見ていたブラン。…二人の間に、ルウィーに何があったのかは分からないけど……これは、わたしがどうこう言う話じゃない。これは、神次元のルウィーの話だから。

 

「…え、と…よく、分からないんですが…アクダイジーンさんは、CEOとして今も活動してるんですよね?という事は、七賢人って実際には殆ど活動してないか、悪事は働いてないとか、そういう事なんですか…?」

「まさか。悪事も犯罪行為も色々してきたわよ。アクダイジーンに関しては、ルウィーの乗っ取りすら画策してたし」

「えぇ!?な、なのにCEOをやれているんですか!?」

「…政治をしたのよ。七賢人の…いいえ、セブンスジーニアの生み出す社会的な利益と、七賢人の悪事を明らかにして社会に真実を公表する事を、天秤にかけてね」

「それ、って……」

 

 静かに、少し目を伏せて…でも表情は一切変えないまま、ノワールがネプギアの問いに答えた。それにはブランとセイツといーすんも同じ顔で、ネプギアとピー子が浮かべているのは複雑そうな顔。

 今ノワールが言ったのは、『不都合な真実』を隠して、『都合の良い部分』だけを抽出した…平たく言えば、汚い事。神次元の人達全員へ対する嘘で……有益な要素のある人物は、罪を犯しても裁かれないって前例を闇の中で作る行為。でも……わたしはそれを、理解出来る。だって、そっちの方が社会に良い影響を与えられるなら、罪を償わせるより、その要素で社会をより良く出来るなら、わたしだって好きじゃないけど……同じ判断を、すると思うから。

 

「…悪いわね、ネプテューヌ。貴女の妹に、幻滅させるような事教えちゃって」

「ううん、大丈夫。…ネプギア」

「…うん。何が良くて、何が悪いか…それを決めるのは女神自身で、大切なのはそれに胸を張る事…どんな決定であっても、堂々と人の前に立つ事…そうだよね、お姉ちゃん」

「…ね?うちの妹は強いでしょ?」

 

 そう言って、ネプギアは表情から複雑そうな色を払拭。大丈夫、と言ったわたしだけど…それを見て、少し安心した。

 大切なのは、胸を張る事。堂々としている事。なんであろうと、信仰してくれる皆に「この人に付いてきて良かった」って思えるようにするのが一番大事。だからわたしも…こっちの皆が下した判断に、堂々と理解を示すよ。

 

「…さて、ではわしもそろそろお暇させてもらおう」

「あ、はい。では当日は宜しくお願いしますね(´・ω・`)」

「うむ、こちらこそ宜しく頼む」

 

 それからアクダイジーンは用意されたお茶の残りを飲み干して、ゆっくりと立ち上がる。扉の方へと向かう最中、アクダイジーンはブランの方をちらりと見て…でも何も言わずに、扉の前で軽く頭を下げて部屋から退室。そしてその数秒後……ブランとピー子が、揃って大きな息を吐く。

 

「はぁ……ったく、ほんと調子が狂うっての…」

「はぁぁ……やっぱりぴぃ、政治的な事は苦手…」

「そんな事ありませんよピーシェさん。確かに、お二人やベールさん程ではありませんが…ピーシェさんも、よくやってくれていると思います(^ ^)」

 

 ブランは溜め息だけだったけど、ピー子は座った状態のまま脱力。それで完全に空気も緩んで、ノワール達は暖かい笑みと苦笑いの混じった表情で脱力しているピー子を見つめる。…はふぅ、やっと硬い空気が終わったよ…。

 

「しっかし、まさかあの人がCEOなんてねぇ…折角の創作なんだから、ウェストコットMDみたいに超大物感出すとか瀬良社長みたいに華を作るとか、そういう感じにすればいいのに…」

「ねぷてぬ…それは誰に対する言葉なの…?」

「ふふん、読者の心の代弁だよっ!」

「…あぁ、うん…確かに姉がこれなら、堂々としている事が女神にとって大事な事、って認識になってもおかしくはないわね……」

「でしょでしょ?…あれ?ノワール、今のってわたしを馬鹿にしてる?」

 

 緩くなった雰囲気に乗じてふざけられなかった分のフラストレーションを発散するわたし。ノワールの返しが気になったところだけど、そこでまた(って言ってもさっきはわたし達が入る側だったけど)部屋の扉がノックされて、入ってきたのは少し遅れた登場のベール。むむぅ、またタイミング被った…。

 

「今し方、アクダイジーンとすれ違ったのですが…っと、どうやら少々遅れてしまったようですわね。申し訳ありませんわ」

「問題ないわ、ベール。ベールが遅れたっていうより、二人が速過ぎたってだけだと思うし」

「わたしはプルルートの事を心配しただけよ」

「う…わ、私だってそうよ。プルルートとは、ここにいる誰よりも長い付き合いなんだし…」

「あら、付き合いの長さは今関係ないと思うけど?」

「まあまあ二人共落ち着いて。…それじゃあネプテューヌ、ネプギア。少し遅くなったけど…ちゃんと、説明するよ。プルルートの事を…プルルートに、何があったのかを」

 

 その瞬間、再び部屋の中へと走る緊張。緩かった空気が四散して、皆が真剣な顔に変わる。

 セイツからの言葉を受けて、こくんとゆっくり頷くわたし達。今は、折角緩かった空気が…だなんて思わない。この話は、わたし達が望んで訊こうとしていたものだから。

 

「…結論から言うわね。二人が見た、プルルートの豹変だけど…あれは、アイリスハート……女神としての性格よ。プルルートであってプルルートでない、今もプルルートになりつつある彼女の意識なの」

 

 ぷるるんであって、ぷるるんでない。ちょっと哲学的な…けどきっと、そういう意味じゃないんだろうな…って言葉でセイツは口火を切った。そして……話が、始まる。

 

「女神メモリー。取り込む事で、適性のある人を女神に変える物質だって事は言ったわよね?あれは、間違ってないけど…より正確な表現じゃないわ。より正確に言えば、女神メモリーは……」

 

 

 

 

「──そこに内包された思いに、蓄積された理想に沿って、適性のある人物を……()()()()()のよ。まるで、それが新たな人格であるかのようにね」




今回のパロディ解説

・異様に賑やかな青春を送る普通の少年
リトルバスターズシリーズの主人公、直枝理樹の事。より正確(?)に表現すると、(異様に賑やかな青春を送る)普通の少年、になりますね。

・ウェストコットMD
デート・ア・ライブに登場するキャラの一人、アイザック・ウェストコットの事。彼が七賢人にいたら…なんか凄い(&ヤバい)事になりそうです。特にピーシェ……。

・瀬良社長
お笑いコンビ、アルコ&ピースの一人、平子祐希さんの持ちネタの一つの事。意識高い系のアクダイジーン……一回見てみたいですが、書くのは非常に大変そうです…。
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