超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

84 / 234
第五十二話 明日からも

 二人の行った神次元は、信次元と同じ位に文明が栄えていて、万全とも言える協力体制も築けている。とはいえお互い何があるかは分からないし、一日で事態が急変する事も十分にあり得る。

 だから毎日、私達は夜に連絡を取り合う事になっている。所謂定時連絡というやつで、何もなければその日あった事を軽く話してそれで終了。何かあったら…まあ恐らく、事の詳細を話して、互いにどうするか話し合う…と思う。

…なんて、断言じゃない表現をしている事からも分かる通り、これまでその「何かあったら」という状況にはなっていない。よく言えば平穏無事、悪く言えば目立った進展もない日が今のところ続いていて……だけど今日は、少し違った。

 

「紹介するね、イリゼ!この子が前に言ったセイツ!セイツもこの子がイリゼだよ!」

 

 いつものように神次元との交信を開始すると、ネプテューヌ、ネプギア、神次元のイストワールさんの他に、もう一人の人物が映し出された。

 開口一番、その人の事を口にするネプテューヌ。紹介されたセイツという名前で、私は思い出す…というか、気付く。そっか、この子がセイツさんなんだって。

 

「あ、えぇと…初めまして、セイツさん。私の事は……」

「え、えぇ。ネプテューヌから聞いているわ。…に、しても……」

「…………」

「……似てる、わね…」

「…だよね……」

 

 次元越しに見つめ合う私達二人。今、彼女…セイツが言った通り、私とセイツは似ている。髪の色とか、容姿とかもそうだけど……雰囲気が、在り方が、どこか似ているような気がする。初対面で、出会ってまだ数分も経っていない相手に何を言ってるんだって話だけど……少なくとも私はそう感じたし、セイツも多分同じように感じたんだと思う。気付けばいきなりさん付けを止めているのも、その証左。

 

「おぉっ!これは早くも、何かが通じ合ってる雰囲気だったり!?」

「…ふふっ、そうね…まだわたし、イリゼっていう女神がいる程度の事しか知らないのに…なんだか凄く、彼女とは仲良くなれそうな気がしているわ…」

「あ、わ、私も…!私に関しては、見た目と女神だって事しか知らないのに…な、なんでだろう…?」

「さぁ?でもきっと、この思いには意味があるのよ。きっとそうだわ…!」

 

 正直、本当に何故かは分からない。分からないけど、この思いは確か。そんな気持ちを表すように、私とセイツは興奮の面持ちで言葉を掛け合う。

 あぁ、ほんと…彼女と話していると、心の中から何かが湧き上がる。私の話に興味を持ってくれると嬉しくて、逆にセイツの話はもっと聞いてみたくて、話す中でセイツが笑ってくれると幸せな気分になって…これは、この気持ちは…まさか……

 

『……恋!?』

『恋!?えぇぇぇぇッ!?』

 

 思わず口を衝いて出た言葉で、聞いていた両次元の四人は驚愕。でもそれよりまず私が感じたのは…あ、こんな事まで気持ちが通じるんだ!…っていう驚きと嬉しさ。

 

「こ、恋って…ちょっ、イリゼ本気!?イリゼってそんな速攻浮ついた気持ちになっちゃう子だったの!?」

「そ、そうですよイリゼさん!仲良くするのは良い事ですが、あまりにも性急過ぎではありませんか!?Σ(゚д゚lll)」

「え、そ、そこまで…?べ、別に本気で恋しちゃった訳じゃないよ…?だよね?セイツ」

「そうそう、今のは冗談よ。まあでも、コスト軽減されちゃいそうな位、イリゼにシンパシーを感じてるのは事実だけどね」

 

 とは言っても、流石にここまで激しく反応されると私も否定せざるを得ない。多少驚かす位ならともかく、本気で動揺させちゃうのは私としても不本意だから。…でも、ネプテューヌだけじゃなく、イストワールさんまでこんな事言ってくれるなんて…ふふふっ、今日は凄く良い日かも…♪

 

「はー、びっくりした…というか、こんなにも早く打ち解けるなんて、想像もしてなかったよ。ねー、ネプギア」

「……うん、そうだね」

「……?ネプギアさん、どうかしました?そういえば、ここまでほとんど話していませんが…(´・ω・`)」

 

 そんな中、神次元のイストワールさんが何やら気になる言葉を口に。

 言われてみれば確かに、今日のネプギアは口数が少ない。それだけならまぁ、私達に気を遣ってる…とも考えられるけど、改めて見たネプギアの顔に浮かんでいたのは、そこはかとなく深刻そうな表情。

 

「いえ、気にしないで下さい…下らない事なので……」

「下らないって…ネプギア、何か悩みがあるの?それとも、やっぱりぷるるんの事が気になる?」

「ううん、そうじゃなくて……」

「…ネプギア、何かあるなら聞くよ?私達にはどうにも出来ない事かもしれないけど…それでも、話すだけでも少しは気が楽になるかもしれないでしょ?」

「……じゃあ、お姉ちゃん。イリゼさん。聞いたら、本気で受け止めてくれますか?」

『勿論』

 

 私とネプテューヌの言葉を受けて、真面目な顔に変わるネプギア。当然私達は、その言葉に即答と首肯の二つで返す。ネプギアが何か抱えているなら、そんなの見過ごすなんて出来ないから。

 そんな思いが伝わったかのように、ネプギアは一度目を閉じる。そして、ゆっくりと閉じた目を開き…ネプギアは、言う。

 

「わたし、思うんです…ずっと、気になってたんです…やっぱり、わたし……こっちに来てから、主人公としてのポジションを、殆どお姉ちゃんに取られちゃってるって…」

『…………えっ?』

 

 声も表情も真剣に、冗談の気配なんて一切無しにネプギアは言い切った。

 だけど、ネプギアが真剣なんだって事は伝わってるけど…あんまりにも斜め上の話過ぎて、私達は全員一瞬固まってしまう。…え、いや…深刻そうな表情の理由って、そんなこ……

 

「ほらやっぱり…いいですよね、イリゼさんは信次元パートとなればほぼ確実に視点担当になるんですから…その上で、向こうの次元でも普通に主人公やれていたんですから……」

「あ、ご、ごめんねネプギア!地の文で軽んじちゃってほんとごめんね!そ、その…ほら、今後物凄い活躍をするかもしれないでしょ?で、今は溜めの期間とか……」

「…本気でそう思っていますか?」

「……ごめんなさい、咄嗟に思い付いた事を言っただけです…」

 

 心も地の文も完全に読まれて、私は速攻撃沈。一方のネプギアはどんよりした空気を発していて、最近じゃ見る事も滅多になくなったネガティブモードに。うぅ、慰めるどころか追い打ちかけちゃった…ほんとごめん、ネプギア……。

 

「えぇ、と…ど、どうしよ皆…ここまでなんて声をかければいいのか分からない事、初めてだよ……」

「取り敢えず、それをネプギアに聞こえる声で言うのはどうなのかしら……」

「あ……えと、その…あれだよ!ネプギア、自分の可能性を自分から閉ざすのは一番いけない事だよっ!」

「え…?か、可能性…?」

 

 いつもネプギアに親身なネプテューヌでも、流石にこの件に関しては良い言葉が思い浮かばない様子。しかもネプテューヌはネプテューヌで軽く自爆していて、完全に言葉に詰まり…けれどそこから、意外な切り口で話し出す。

 

「そうだよ!ネプギア、もしやこんな事思ってない?わたしやイリゼと比較したら、自分は主人公に向いてない…とか」

「そ、それは……」

「そんなんじゃ駄目だよ!最初から後ろ向きで、どうせわたしなんて…って考えじゃ、そりゃ主人公もやれないって!だってこれ、Originsシリーズだよ!?毎回ギャグとか他愛ない話とか入れるせいで、一向に平均文字数が減らないどころか更に増加の一途を辿ってるような作品なんだよ!?」

「え、お、お姉ちゃん?なんか変な話になってない?後そういうのはメタ発言の中でもかなり滑り易いネタな気が……」

「それでもやるのが主人公だよ!一番大切なのは、技術でも向き不向きでもなく、この多少不必要な位に明るさを重視してる作品を引っ張ろうっていう…“心”だろうがッ!」

「……──ッッ!」

 

 メタ発言にパロディネタと、らしさ全開で何やらぶっ飛んだ事を言いまくるネプテューヌ。もう完全に私達は置いてけぼりで、四人揃って「何を言ってるの…?」って感じだったけど……強く鋭く言い放たれたネプギアは、雷にでも打たれたかのような表情に。…あ、何か嫌な予感が……。

 

「お、お姉ちゃん…そっか、そうだよね…主人公としての自分を掴み取るのは、誰でもない自分自身…そういう事だよね……!」

「そう、そうだよネプギア…!だったらもう、やる事も分かるよね…!」

「うん…っ!」

 

 顔を見合わせ、姉妹というか師匠と弟子みたいな雰囲気になりながら二人は大きく頷き合う。二人は自分達の世界へ完全に浸かっちゃってるらしく、最早私達がいる事を覚えているかどうかも怪しいところ。

 そして、何かネプテューヌと同じ類いの目をしたネプギアが視線を明後日の方向へ。…う、うん!まだまだこの流れは続きそうだし、ちょっと私はお茶でも淹れてこようかなっ!イストワールさんも喉乾いてるかもしれないし、ここはじっくり時間をかけて……

 

「運命なーんてー言い訳にしかー過ぎーなーい──」

「やっぱりかぁぁぁぁああああああいッ!!ネプギアも!?ネプギアもなの!?」

 

 私は突っ込んだ。それはもう突っ込んだ。何故って?…そんなの……二回目なんだから尚更説明するまでもないでしょうッ!?

 

「だ、だって…イメージすれば、現実に……」

「しれっと歌を続けようとするの止めてくれる!?」

「でもほらイリゼ、原作の順番的には今『G』の辺りでしょ?」

「だから何だって言うの!?確かにおあつらえ向きのパロディだとは思うよ!?思うけど、さっきから二人は暴走し過ぎなんだよぉおおおおぉぉぉぉぉぉッ!!」

 

 頭を抱え、半ば仰け反りながら私は絶叫。前の開始早々&地の文ジャックを利用した歌パロもそうだったけど、今回の意味分からないやり取りに見せかけた前振りからの歌パロとか、もうネタとしてえぐ過ぎる。最早これはフルスイングどころか、振ったバットが物凄い勢いで突っ込んできたようなものだよッ!

 

「はぁ…はぁ…やっぱり、さっさと離脱するべきだった……」

『お、お疲れ様ですイリゼさん…(~_~;)」

「苦労してるのね、貴女も……」

 

 完全に体力持ってかれた私が息を上げつつ膝に手を突いていると、隣と神次元からそれぞれ労いの言葉が私の下へ。…あぁ、今はほんとにお茶飲みたい……。

 

「えー…こほん。確認ですが、本日もそちらは大丈夫なのですね?(・ω・`)」

「あ、うん。…実を言うと、何とかしてあげたい事が一つあるけど…それは、わたし達の目的とは直接関係しない事だからね。だからそれは、わたし達だけで何とかするよ」

「…それは、ぷるるん…って人の事?」

「え?どうしてぷるるんの事…ってあぁ、そういえばさっきわたしが名前言ったんだったね。…うん、別次元のわたしやネプギアが何かするのは、お節介なんだろうけど…それでも、出来る事があるならしてあげたいもん」

「ネプテューヌ…はぅ……」

「…え、セイツ……?」

「……はっ!?あ、な、何でもないわイリゼ。えぇ大丈夫、いつでも変わらないネプテューヌの思いの温かさに、ちょっと心を打たれてただけだから」

「あ、そ、そう……」

 

 一転して真面目…というかネプテューヌの良さが引き出される話になったところで、何やらセイツは頬を赤らめ自分の肩を抱き締める。何をしてるんだろうと思って呼び掛ければ、我に返った様子のセイツの返答はこんな感じで……今の、ちょっとってレベルじゃなかったよね…?

 

「あはは…イリゼさん、いーすんさん。信次元も、異常は無いですか?」

「…それは…うん、こっちも今すぐ伝えるべき事はないかな。全く何もない訳じゃないけど、あった事全部を伝えてたらお互いキリがないしさ」

「ですね。では、引き続き信次元の事は宜しくお願いします」

「そっちもね。…もう元気になった?」

「それはもう。…あの、すみません…さっきはちょっとふざけ過ぎちゃって……」

「そう思うなら、ああいうボケは今後控えてほしいかな……」

 

 申し訳なさそうに言ってくるネプギアに私ががっくりと肩を落としながら言葉を返すと、ネプテューヌ達から零れる笑い。私としては、ほんとに笑い事じゃなかったんだけど…こういう空気感は嫌いじゃないから、全くもう…と呟きながら肩を竦める。

 

「じゃ、今日の交信はこれでお終いかな。よーし皆、明日も頑張ろーね!」

「えぇ。それじゃイリゼ、また話しましょ」

「うん。またねセイツ」

 

 そうして本日も交信終了。毎日の事ではあるけど、今日も二人の元気な姿が見れたし、何よりセイツと出会う事が出来た。今になってもやっぱり、どうしてこんなにすぐ心が通じたのかは分からないけど…理由なんか分からなくたって、心の中にあるこの嬉しさは変わらない。今日、出会えて良かった。話せて良かったっていう、この気持ちは。

 

「……イリゼさん。あの事は、言わない事にしたんですね(。-_-。)」

 

 交信を終えてから数秒後。イストワールさんが、ぽつりと私に声をかけてくる。それに私は、こくりと首肯。

 

「…はい。今分かっている事を話しても、悪戯に不安を煽るだけですから」

 

 それは、今日偶々私達の耳に入った話。今、この信次元で起きている異常について考察している…それも、陰謀論めいた論調で現体制への不信感を駆り立てるような、あるサイトの事。

 当然、それは違法行為じゃない。私達にとって不利益な考察をしているというだけで取り締まるつもりは流石にないけど、皆がまだ不安な状況の中で、混乱を招くような事をネット上に流されるのを私達は快く思っていない。

 様子見するか、注意をするか、それとも強制指導案件とするか。…それもまだ決まっていないから、そのサイトによる影響も現状じゃ調査が進んでいないから、私は二人に話さなかった。

 

(…あの考察だって、どんな意図で書かれたものなのかはまだ分からない。だからまずは調べなきゃ。表面だけで判断しちゃったら、真実は見えなくなるもんね)

 

 そう、私には分からない。あの考察の真意も、どれ程の影響を及ぼすかも、ここで話さなかったのが吉と出るか凶と出るかという事すらも。

 でもどうするかは決めなきゃいけない。だから必要なのは、後悔しない、自信を持てる選択をする事。…そうだよね、皆。

 

 

 

 

 こっちの皆さんは信次元と同じく優しいし、生活する上での苦労もこれと言ってないし、毎日不安なく過ごせる環境だって思ってる。

 けれどやっぱり、一番安心するのは信次元との交信の時間。次元越しでも、自分の居場所と繋がっている事を実感出来るこの時間は、心が自然に落ち着いていく。…ま、まぁ…今日はちょっと、落ち着くどころか暴走しちゃったけど……。

 

「…って、あ、あれ!?もしかして今、わたし……!」

「…ね?信次元の女神は、自分を信じなくっちゃ」

 

 はっとして地の文を確認するわたし。わ、わっ…わたしだ、今はわたし視点だ…!本当にお姉ちゃんの言う通り、わたしの心の問題だったんだ…!……あ、かなりメタい話ですみません!ここでメタいって言ったら余計メタフィクション的になっちゃうって事も分かってます!でもその…この喜びは、温かく見守ってほしいと思うネプギアです!

 

「〜〜♪」

「おー、なんか勢い余って主人公っていうか、わたしっぽくなってるけど…ネプギアが嬉しそうだしまぁいっか」

 

 嬉しさでつい脚をぱたぱたさせていると、お姉ちゃんがベットでくつろぎながらそんな言葉を口にする。

 今わたし達がいるのは、教会でお客が泊まる時に使う部屋。ここがわたし達の寝室になっていて、わたしが座っているのもお姉ちゃんとは別のベットの上。

 

「あーでもさ、一応ネプギアもちょこちょこ視点担当やってたよね。二話前とか」

「それはそうだけど、やっぱりメインはお姉ちゃんだったじゃん…」

「そりゃ、原作シリーズの顔ですからっ!…って、なんか今回のわたしメタ発言してばっかりだね…もう今話も終盤寄りだけど、流石にそろそろ自重しようかな…」

「いや、まぁ…そうだね、わたしも自重しよっと……」

 

 お姉ちゃんと二人、顔を見合わせて苦笑い。それから数秒後、わたしはある事をお姉ちゃんと話そうと思って、ベットの上で佇まいを正す。

 何をと言えば、それは勿論今日聞いた事、触れた事。お姉ちゃんも言っていたけど、わたしも何かお手伝い出来る事があるならそれをしたくて……

 

「ネプテューヌ、ネプギア、いる?」

「いるよー」

 

 そこで聞こえたのはノックの音と、それに続くセイツさんの声。わたしが立ち上がって開けに行くと、廊下にはピーシェさんもいた。

 

「どうかしましたか?」

「うん。その…せーつから聞いたよ。ねぷてぬ達が、ぷるるとの力になってくれるって」

「それはそうだよ。同じプラネテューヌの女神として見過ごせないし……そうじゃなくても、あんなに辛そうにしてる子を、放っておくなんて出来ないもん」

 

 入ってきたピーシェさんの言葉に、お姉ちゃんは首肯。わたしも同じように頷いて、ピーシェさんに視線を返す。

 あの話の後、皆さんと一緒にわたし達もプルルートさんの部屋…正確には、実質的なプルルートさんの部屋になっている場所へと行った。

 でも入らなかった。入れなかった。プルルートさんが鍵を開けてくれなくて…何度も何度もわたしに謝る声が、あまりにも切ないものだったから。勿論、セイツさん達の説明も心に残るものだったけど…その説明が一切なくてもプルルートさんの抱えているものの重さがはっきりと分かる位、扉越しの声はわたしの心にずしりと重くのしかかっていた。

 

「…ねぷぎあも、いいの?ねぷぎあは……」

「いいんです。プルルートさんだって辛い事は分かりましたし…やられた事への文句も、まだちゃんと言えてませんからね」

「…ふふっ。強いね、ねぷぎあは」

「そ、そうですか?えと、それは…光栄です…」

 

 正面から目を見て褒められて、ちょっと照れ臭くなっちゃったわたし。それを見たピーシェさんは、少し愉快そうな顔をして、でもそこにはどこか物足りなさそうな雰囲気もあって……何だろう…?

 

「なら…やっぱり、やるなら今よね」

「だね。違う次元だけど、ねぷてぬとねぷぎあがいるのは大きいし」

「え、なになに?何の話?」

「プルルートに、前へ進んでもらう為の作戦よ。作戦って程かっちりした計画がある訳じゃないけどね」

 

 わたし達が改めて協力する事を示した事で、ピーシェさん達は頷き合う。…前へ進んでもらう為の、作戦……。

 

「…具体的には、何をするんですか?」

「ブランが言うにはね、女神としての性格は結局受け入れるしかなくて、受け入れるのが一番らしいのよ。認めて、それも自分なんだって受け入れて、その上で元々の自分の性格も守り抜く。強い意志で、受け入れながらも元々の自分の在り方を貫く。…それがプルルートも出来れば、きっと前に進める筈だから」

「…それ、ぷるるんは知ってるの?」

「えぇ、大分前に話した事だもの。でもやっぱり、抵抗があるんだと思うわ。プルルートの場合は、女神としての性格が性格だから……」

「…でもきっと、何とかなるよ。ううん、何とかしなくちゃ。あのイベントの事もあるし…ぷるるとは、ずっとずっと頑張ってるんだもん。それなのに、ぴぃ達が二の足を踏むのは……」

 

 そこで言葉を切って、ピーシェさんは視線をセイツさんの方へ。その目にセイツさんは首肯して、二人の目はまたわたし達へ向かう。

 ピーシェさんの言葉から感じるのは、プルルートさんへの深い愛。そんな思いを目にしたら、わたし達だって思う。その気持ちを、全力で応援したいって。

 

「そっか……因みに、あのイベント…って言うのは?」

「四ヶ国合同で行う…うーん、平たく言えば表彰式?あの二人が来てたのも、それ絡みだし」

「あぁ、そこにプルルートさんが参加しない訳にはいかない、そのイベントでは長時間女神化している必要がある…って事ですね」

「う、うん。…ねぇねぷぎあ。信次元って……」

「あ、こらピー子!またネプギアの方が本当は姉なんじゃ、とか言おうとしたね!?それ言ったらわたし怒るよ!ピー子の事、パー子って呼ぶじゃうよ!?」

「ぴぃ林家じゃないんだけど!?」

 

 合点が言ったわたしの言葉が切っ掛けで、お姉ちゃんのボケが炸裂。確かに字面は似ているけれど全くの別人な訳で、それを言われたピーシェさんは憤慨して突っ込む。そこから二人は喧嘩…って程じゃないけど、言い争いになって……あれ?そういえば、セイツさんが静かな気が……。

 

「……セイツさん?」

「ネプテューヌとネプギアの温かな思いに、ピーシェの真っ直ぐな思い…あぁもう、ほんとなんで皆そんな素敵な思いがすぐに出てくるのかしら……」

(…ブレないなぁ、この人も……)

 

 案の定ときめいていたセイツさんを半眼で数秒見て、わたしはお姉ちゃんとピーシェさんの論争を仲裁。…セイツさん、いつもこうなのかな…それとも、人間関係絡みの話が多いからこうなってるだけなのかな……。

 

「むー、わたしだってしっかりしてるとこあるんだからね?」

「じゃあ、例えば?」

「だ、例えば?え、えーっと…うーんと……」

「…………」

「……あっ、そうだ!そういえばネプギア、あの森でマジェコンヌを見かけたって言ってたけど、それって…ここに来てたマジェコンヌじゃない?ほら、農業やってるなら森に来てても不自然じゃないし」

「あー…!」

 

 瓢箪から駒…とは少し違うのかもしれないけど、意外な流れから意外な話へと発展し、わたしも思わず声を上げる。

 お姉ちゃんの言う通り、現実的に考えればその可能性が一番高い。だって実際に、この次元にはマジェコンヌさんがいるんだから。そしてそういう事なら、懸念要素は一個消える。

 そう思って、ほっと胸を撫で下ろそうとしたわたし。けれどそこで、ピーシェさんが小首を傾げる。

 

「え、どういう事?まじぇこんぬって…ぴぃが教会に戻るより先に来てたって話だよ?」

『え?』

 

 ピーシェさんの異論によって、安心しかけていた思いが硬直。当然、わたしが見かけたのと、ピーシェさんが戻ったのじゃ後者の方が後だから、順序的にはそれでも成り立つけど……その場合、物凄い速度で移動しなきゃ時間的には辻褄が合わない。合わないし、教会に来る事自体が乗り気じゃなかった様子のマジェコンヌさんが、わざわざそんな速度を出してまで行くかといえば……それをするとは、思えない。

 

「…何か、あったの?」

「…はい。わたしの見間違いという可能性もありますが…もしかするとこの神次元に、別次元の…或いは、偽者のマジェコンヌさんがいるかもしれません」

「…そっか。なら、それも注意しておかなきゃだね。偽者なら、何をするか分からないし…そうじゃなくても、まじぇこんぬが偽者の存在を知ったら放っておく訳がないもん」

「あー、確かに。マジェコンヌなら、偽者がいるって知った瞬間キレそうだよね…」

 

 容易に浮かぶ「偽者の存在を知ってキレるマジェコンヌさん」の姿に、つい苦笑いをしてしまうわたし達。…と、この想像には苦笑をしちゃっているけれど、もしもそのマジェコンヌさんが、何かを企んでるなら…例えばそれこそ、うずめさんにやられた時に何らかの手段で逃げて、今ここにいるんだとしたら、絶対見過ごす訳にはいかない。

 塔の事。プルルートさんの事。謎のマジェコンヌさんの事。成すべき事、成したい事は色々あるけど、どれも順序なんてなしに重要な事で、わたしはそのどれ一つだって取り零すようなことをするつもりはない。そしてその思いは、きっとお姉ちゃん達も同じ。

 

「…こほん。じゃあ…これまで通り、頑張るわよピーシェ。明日からも色々頼むわね、ネプテューヌ、ネプギア」

「うん!」

「はい!」

「ふふーん、かれこれ二度も物語をハッピーエンドに持っていって、色んな人の心の支えにもなったこのわたしに、どーんと任せてくれちゃっていいからねっ!」

 

 咳払いで少し空気を引き締め、右の拳を胸の前に掲げたセイツさんの言葉に、わたしとピーシェさんは力強く同意。お姉ちゃんはいつも通りの調子でセイツさんの右手を掴んで、元気いっぱいにぶんぶんと振る。

 これが、わたし達の意思。信次元だって、神次元だって変わらない、女神の信念。そうして意思を確認し合ったわたし達は、明日に向けて思いを重ね合わせるのだっ……

 

「──ふぇっ!?」

『……へ?』

 

 次の瞬間、妙に可愛らしい声が聞こえた。え、何?誰の声?…そう思って見回すと……真っ赤になったセイツさんの顔が、わたしの視界に飛び込んでくる。

 

「え、せ、セイツ…?どうかした…?」

「あぅ、あぅあぅあぅあぅ…!そ、そんなっ…そんな急に、手を握ってくるなんて…!し、しかも…両手……っ!」

「…い、嫌だった……?」

「う、ううんっ!嫌じゃない!嫌じゃないの…!で、でもその…あの……あぅぅ……」

『セイツ(さん)!?』

 

 表情の急変したセイツさんに驚いて、覗き込むように訊くお姉ちゃん。けどセイツさんは落ち着くどころか余計に真っ赤に、最早頬なんて林檎みたいに赤くなって、言葉も何故かしどろもどろに。

 そこから更にお姉ちゃんが声をかけると、セイツさんはぶんぶんと首を横に振った後、ぺたんとその場に座り込んで……一人冷静だったピーシェさんが、呆れ混じりにぼそりと言う。

 

「あぁ……気を付けて、ねぷてぬ。せーつ、自分からはアプローチしたりスキンシップ取ってきたりする癖に、逆に受け手に回ると超弱いから。こういう事への防御力ゼロだから…」

『え、えぇーー……』

 

──セイツさんは、感情の察知と攻め手に極振り。…そんな何とも言えない事を、ぬるっと知ってしまうわたしとお姉ちゃんだった。




今回のパロディ解説

・「〜〜“心”だろうがッ!」
ONE PIECEに登場するキャラの一人、サンジの名台詞の一つのパロディ。荒っぽい口調になるネプテューヌというのも、また可愛らしい気がしますね。

・「運命なーんて〜〜なーい──」
カードファイト!!ヴァンガードGのOPの一つ、BREAK IT!のフレーズの一つのパロディ。これもOE執筆前からずっと温めていたパロディネタの一つなのです。

・パー子
タレントや落語家を務める林家パー子こと、佐藤純子さんの事。ピー子と打とうとすると、毎回パー子が予測変換の上位にくるんですよね。…気を付けないとです……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。