超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第五十四話 私も力に

 取り敢えず行ってはいる、お姉ちゃんが各国を飛び回る事によるマジェコンヌさん誘い出し作戦。非効率的でも、取れる策として一番現実的なのがこれな以上、とにかくやり続けるしかない。

 そう思っていた矢先、ある人物が神次元へとやってくる事になった。わたし達には、全く想像もつかなかった理由を持って。

 

「…という訳で、マジェコンヌさんがもし良ければ…って事なんだけど、どうかな?」

 

 今日も定期連絡を行い、お互い良くも悪くも大きな変化や異常はない事を確認し合ったところで、イリゼさんが言った。信次元のマジェコンヌさんが、こっちでのマジェコンヌさん捜索に協力したいんだって。

 

「えー、っと…協力してくれるのはありがたいんだけど…どうして?」

 

 突然の申し出に、わたしもお姉ちゃんも当然困惑。どういう事なのか求めてわたし達が、今日参加している当人…マジェコンヌさんの方を見ると、マジェコンヌさんは小さく頷く。

 

「理由は二つだ。一つ目は単に、今こちらで私が出来る事など殆どないからだな」

「え、あ…それは……」

「そ、そんな事ないですよマジェコンヌさん。生活圏外での活動はやっぱり実力を信頼出来る人でなければ任せられませんし、マジェコンヌさんは経験も豊富ですし…」

「ありがとう、イリゼ。だがそれは、他のパーティーメンバーにも言える事だろう?」

 

 わたしが反応に困る中、首を横に振ってフォローするイリゼさん。でもマジェコンヌさんは軽く肩を竦めて、イリゼさんが言ったフォローを否定。

 

「皆も気を遣わなくていい。私自身、それを負い目に感じている訳ではないのだからな」

「そ、そう…それなら、そもそも『自分に出来る事なんてない』って事自体言わないでほしかったかなー……」

「そ、それはすまない…。…こほん。そして、もう一つの理由だが…例え別次元の存在であろうと、自分が君達にまた迷惑をかけているというのは看過出来ないんだ。それこそ、他人事には思えない…という事さ」

 

 半眼なお姉ちゃんの返しに何も言えなかったマジェコンヌさんは、謝罪の後に咳払いして…二つ目の、恐らくは本命の理由を口にする。

 一つ目の理由は、正直反応に困ってしまった。けれど二つ目の理由は、すとんとすぐに理解出来る。わたしにも、少しだけどその気持ちは分かる。ちょっぴりだけど、わたしも別次元の自分と会った事があって、その時は本当に他人だとは思えなかったから。

 

「…マジェコンヌ、その気持ちは分かるけど…こっちの次元のマジェコンヌも、前の次元のマジェコンヌも、マジェコンヌとは違う人だよ。同一人物でも、別人は別人だし、その別人の行動に責任を感じる事は……」

「あぁ、分かっている。だが今言った通り、感情の面で他人のした事とは思えないんだ。それに、確証は無いが…この件でなら、何かしら私は力になれるような気もしている。一つ目の理由と合わせて言うなら…これこそが、私にしか出来ない事なのではないかと感じているんだ。…傲慢かも、しれないがな」

 

 真剣な顔を浮かべたお姉ちゃんの言葉を、一つ頷いた上で否定して、更にマジェコンヌさんは言う。自分の抱いている、マジェコンヌさんなりの思いを。

 いつも冷静沈着なマジェコンヌさんの言葉に、溢れ出すような熱はない。だけどその言葉の裏に秘められた思いは、本気の意思は静かなままでもよく伝わってきた。だからわたしは…お姉ちゃんの方を向く。

 

「…お姉ちゃん。わたしは、マジェコンヌさんが来る事に賛成だよ。今は、他に有効な方法があるならどんどん試していきたい状況だし…マジェコンヌさんの思いを、無下には出来ないもん」

「ネプギア…。…だよね、うん…ネプギアが言ったから、って訳じゃないけど…わたしもウェルカムだよ、マジェコンヌ!」

「二人共…ありがとう、恩に着る…」

「いやいや、これから手伝いに来てくれる人が恩に着る、はおかしいでしょ。それに、そもそもわたしは反対だなんて一言も言ってないよ?」

 

 まずわたしがお姉ちゃんに伝えて、お姉ちゃんはにっと笑って、わたし達は賛成の意思を表明。それを受けたマジェコンヌさんは、初め硬い表情をしていたけど…お姉ちゃんに突っ込まれると、それもそうだなとばかりにほんのりと苦笑。…今の表情…やっぱりマジェコンヌさんって、美人だなぁ……。

 

「なら、決まりだね。…頑張って下さい、マジェコンヌさん」

「尽力するさ。どこまで出来るかは分からないがな」

「期待してるよ、マジェコンヌ!じゃあ、いーすんといーすん、お願いね!」

「いーすんといーすん、ですか…同一人物なのでそうなって当然ですが、奇妙な言い方ですね…( ̄▽ ̄;)」

「あはは…では、始めましょうか。信次元のわたし(`・ω・´)」

 

 二人のいーすんさんはこくんと頷き合い(こっちは二人共ちっちゃくて可愛いなぁ…)、二人で協力して次元の扉の形成を開始。やっぱり二人でやる方が負担は少ないらしくて、扉はこれまでよりも早く出来上がる。そして……

 

「という訳で、一作目のラスボスであり今やわたし達の頼もしい味方、信次元のマジェコンヌが神次元に参戦だよっ!」

『お、おぉー……』

 

 その十数分後、早速神次元の皆さんにマジェコンヌさんを紹介する事となった。…参戦……?

 

「マジェコンヌだ。宜しく頼む」

「あ、え、えぇ…マジェコンヌ、ですのね…?」

「無論だ。…その反応、やはりこちらの私は嘗ての私の姿をしているのだな…」

「え、えぇ…話には聞いていたけど…ぜ、全然違うわね……」

「よく見ると…というか、パーツ単位では確かにマジェコンヌだなって思うけど…肌の色やメイクだけで、ここまで印象って変わるものなのね……」

 

 何度も目をぱちくりさせているベールさんに、自分達の知るマジェコンヌさんと目の前のマジェコンヌさんを見比べるかのように、何度も見ては目を逸らしてを繰り返しているノワールさんとブランさん。コンパさんとピーシェさんに至っては完全にポカーンとしていて、これにわたし達は苦笑い。

 皆さんが集まっているのは、今日プルルートさんの心を癒す為の会議をしていたから。定期連絡で何もなければ解散しようって事になっていて…うん、そりゃ驚くよね…わたし達が戻ってきたら、ぱっと見全然違う知り合い(元敵)の同一人物が現れたんだもん…。

 

「…えぇと、ねぷ子、ネプギア…その人は……」

「大丈夫ですよ、アイエフさん。さっきお姉ちゃんも言いましたが、マジェコンヌさんは頼もしい、信頼出来る人です」

「ふふっ、君達二人からそう言われるとこそばゆいな」

『あ、あのマジェコンヌが微笑みを…!?』

「……こちらの私も、随分と捻くれた人間なのだな…はは…」

 

 頬を掻き、恥ずかしそうに口元を緩めるマジェコンヌさんを見て、皆一斉に身を乗り出して驚愕。それにはマジェコンヌさんも反応に困ってしまって、乾いた笑い声を零していた。

 

「えー、こほん。皆さんの驚きは分かりますし、わたしもつい先程同じような反応をしていた訳ですが…そろそろ話を進めては?(^_^;)」

「あ、そ、そうだね。ええっと…まじぇこんぬは、ねぷぎあが見たっていうまじぇこんぬを見つける為に来たんだよね?」

「そうですよ。勿論、わたしの見間違いでなければ…ですけど」

「それならそれで安心出来るじゃない。…それで、具体的にはどうやって探し出すつもりなの?」

「…………」

『……?』

 

 ピーシェさんから引き継ぐ形で、セイツさんが一番重要な部分を口に。そういえば、その部分はわたし達も聞いていなかったなって思って、皆さんと一緒にわたしやお姉ちゃんも視線をマジェコンヌさんの方へ。

 一体どういう方法で、別次元の自分を探そうとしているのか。その疑問を持ってわたし達が見つめる中、黙り込むマジェコンヌさん。不思議に思ってそのままわたし達が見ていると……

 

「…あー、実を言うとだな…明確な、はっきりとした策がある訳じゃないんだ」

『……え?』

 

 ほんの少しバツの悪そうな顔をしながら、マジェコンヌさんは言った。マジェコンヌさんらしからぬ、「具体案はない」という回答を。

 

「…ちょ、ちょっと待ったマジェコンヌ!はっきりとした策がある訳じゃないって…まさか、気持ちだけで来たって事!?」

「それも否定は出来ない、な」

「え、えぇー…そういうのはわたしとネプギアの信用に関わるんだけど……」

 

 全く予想していなかった回答に、お姉ちゃんががっくりと肩を落として辟易。でもマジェコンヌさんは真面目な顔になって、ゆっくりと首を横に振る。

 

「話は最後まで聞いてほしい。確かに、断言出来るものを持って来た訳ではないが…探し出せると考えた根拠はある」

「根拠、です…?」

「そう、根拠だ。確認しておきたいのだが…こちらの私は、互いに初見でありながら、それまでお互いの存在すら知らない間柄でありながら、ネプテューヌ…別次元の彼女に因縁めいたものを感じていた、そうなのだな?」

 

 見回しながらマジェコンヌさんが発した言葉に、皆さんは首肯。それを受けたマジェコンヌさんは、言葉を続ける。

 

「ならばそれはつまり、こちらの私は一目惚れとは真逆の何かをネプテューヌに抱いたか、超次元の女神に対して何かあるのか、或いは『別次元からの何か』をこちらの私自身が受けたかのどれかであろう」

「そう、ですわね…一番最初の可能性は、表現が中々アレですけども……」

「その上でまず、二つ目はあり得ない。それは超次元のネプギアには、『一人の女神』として以上の反応をしていないらしい事からも明らかだ。今ここにいるネプテューヌに反応した事に対しては、超次元の彼女が再び来たと勘違いした可能性もあるから置いておこう」

「ふむふむ…なんか推理パートっぽくなってきたね!対外的にはわたしの手柄になるし、眠りのネプテューヌやってもいいよ?」

「そうね。私は賛成するから、早速寝たふりしたらどうかしら?」

「ほんと?よーしじゃあ、ノワールフォロー宜しくねっ!」

 

 推測をマジェコンヌさんが展開する中、ソファに深く座り込んで寝たふりを始めるお姉ちゃん。…あれ…これって……。

 

「……こほん。次に一つ目だが、この場合はどうにもならない上、検証のしようもない。だからこれも置いておくとして……」

「三つ目…これが本命の可能性なのね」

「そういう事さ、ブラン。結論から言えば、私もこちらの私も…各次元の『マジェコンヌ』という存在そのものに、相互に影響し合う性質があるのではないだろうかと、私は思っている」

「相互に影響…つまり、別次元のマジェコンヌとネプテューヌの間に因縁があって、その感情がこっちのマジェコンヌに影響を与えた…って、事…?」

 

 思案顔を浮かべて尋ねるセイツさんに、マジェコンヌさんは真剣な表情のまま首肯。その因縁って、もしかして今ここにいるお姉ちゃんとマジェコンヌさんの因縁かな…それとも、また別の次元の…?

 

「我ながら荒唐無稽な話にも思えるが、私とネプテューヌは確実なものだけでも三つの次元で敵として複数回戦っている。少なくともこの時点で、偶然では片付けられない何かがあってもおかしくはないだろう」

「…確かに、複数の次元でそれぞれ違う立場や経歴でありながら、同じように敵対している…というのは、特別な何かを感じますね(´-ω-`)」

「更に、ある次元では犯罪神の名が、犯罪組織の名がマジェコンヌであり、やはりネプテューヌ達女神と戦ったらしい。…私が存在しない次元ですら、『マジェコンヌ』はネプテューヌの敵なのだ。…私に、影響し合う性質があるのならだが…これだけの事があれば、出会った瞬間こちらの私が敵対心を抱く事は『必然』ではないだろうか」

 

 そこで一度、マジェコンヌさんは口を閉じる。各次元の関係が他の次元にも影響するなんて、普通ならそんな馬鹿なって思うけど…ここまでの例があるなら、ひょっとしたらって思えてくる。それにマジェコンヌさんの落ち着いた口振りも相まって、わたし達は確かに説得力を感じている。

 

「はぅぅ…スケールが大きくて、わたし頭がぐるぐるしてきそうです…ぴーちゃんは理解出来たですか…?」

「え?あっ…そ、それは勿論理解出来てるよ!……多分…」

「はは…こっちのマジェコンヌが因縁を感じたのは、別次元で幾つもの因縁があり、マジェコンヌには次元を超えて影響し合う性質がある為。この推論が…特に後半が合っているのなら、影響し合う『繋がり』が、ねぷ子達の言うマジェコンヌを探し出す力になるかもしれない…そういう事で合ってる?」

「その通りだ。そして、繋がりにおいても一応の根拠はある。ネプギア、ネプテューヌともう一人の彼女は、ほぼ打ち合わせ無しで巧みな連携をこなしていたと言っていたな?」

「あ…はい。ほんとに心が繋がってるんじゃないかと思う位、お姉ちゃんと大きいお姉ちゃんの連携は凄かったです」

『…大きいお姉ちゃん……?』

 

 そう言えば、大きいお姉ちゃんの話はしてなかったっけ…と思いつつ、わたしはあの時の事を思い出す。

 本当に、あの時のお姉ちゃん達はロムちゃんとラムちゃんの連携に追い縋れそうな位だった。しかもそれを、何度も連携を重ねた間柄って訳じゃない二人がやったんだから…そこに同一人物故の繋がり的なものがあったとしても、おかしくはない。むしろそういうものがなきゃ、説明が付かない。…ま、まぁ…超感覚派のお姉ちゃん二人だから、相乗効果が化学変化を起こした…的な可能性もありそうではあるけど…。

 

「これに関しては、別途ネプギアから聞いてもらうとして…以上が、私の推測だ。もしこれを聞いて、信用に値すると思ってくれたのなら…私にも、協力させてほしい」

「…貴女、本当にマジェコンヌとは思えない位謙虚ね…貴女も見習ったら?」

「丁重にお断りするわ。私はこの威風堂々とした在り方が売りの一つだもの」

「ふふ、その点ピーシェちゃんは、きちんと遠慮や謙虚さを身に付けていて偉いですわ」

「う、うん…褒めてくれるのは嬉しいけど、なんで急にぴぃに結び付けるのべるべる……」

 

 締めにすっと頭を下げて、マジェコンヌさんの話は終了。やっぱりギャップの激しさが頭にあるのか、話に対する答えより先に脱線して…あぁ、でも…分かる。皆さんの表情を見れば、どんな回答をする気なのか。

 

「…こほん。それじゃあマジェコンヌ。猛争モンスターの件もあるし、何か企んでいるマジェコンヌがいるなら早急に何とかしたいっていうのがわたし達の本心よ。だから……貴女の力に、期待させてもらうわ」

 

 一つ咳払いをして、マジェコンヌさんの前へ移動したセイツさん。真剣な面持ちで話すセイツさんは、最後に一度言葉を切って、それから皆さんの方を振り向いて……もう一度マジェコンヌさんの顔を見た時、そこに浮かんでいたのは穏やかな笑み。期待させてもらう、その言葉にマジェコンヌさんが力強く頷いて…マジェコンヌさんと皆さんとの協力関係が結ばれた。

 

「けど、焦らないで頂戴ね。何か感じ取れても、勝手の違う次元じゃ探し出すのも大変でしょう?」

「そうだな。ならば、その気持ちに甘えさせてもらうとしよう」

「えぇ。それと、時間がある時でいいから一度デートしましょ」

「ああ、それもありがたく……デート?」

「デート」

「……う、うん…?」

 

 それから流れるように発せられたデートのお誘いに、危うくそのまま乗りかけたマジェコンヌさんはその場で硬直。あからさまに困惑した様子のマジェコンヌさんと、にこにこしたまま見つめているセイツさんとのギャップは凄くて、その二人にわたし達は思わず苦笑い。

 

「セイツ貴女、いつもわざわざデートって言いますのね……」

「ふふっ。だってただ食事とかお出掛けって言うより、デートって言った方が気持ちは揺れるでしょ?」

「今日もせーつは変態だね…あれ?ところでねぷてぬは?」

「あぁ…ネプテューヌ、もう寝たふりは…って……」

 

 セイツさんの発言が所謂「オチ」のようになって、会議としての雰囲気も終了。そんな中ピーシェさんがお姉ちゃんの事を思い出して、ノワールさんが声をかけると……

 

「ねぷぅ…ねぷぅ……」

 

 なんと、お姉ちゃんは寝入っていた。寝たふりをしている内に、本当に眠ってしまっていた。…お、お姉ちゃん……。

 

「…まさかネプテューヌ、ノワールの策に気付かないまま寝ちゃうなんて……」

「ふふ。でも寝顔もそんなところも、やっぱりねぷねぷは可愛いです」

 

 寝たふりのつもりが本当に寝ちゃうという、何とも子供っぽいお姉ちゃんにコンパさんは微笑んで、他の皆さんは苦笑い。

 でも、そんなところもお姉ちゃんの魅力。飾らない、自分自身にどこまでも正直なのが、お姉ちゃんの格好良いところであり可愛いところ。だからわたしも肩を竦めて…くすり、と笑ってしまうのでした。

 

 

……因みにその数十分後、目が覚めたお姉ちゃんが「あれ、よく考えたらこれ…わたしを静かにさせようっていう策略だったんじゃないの!?」…と言っていたんだけど、その時にはわたしとコンパさん以外誰もいなくなっていたのは内緒です。

 

 

 

 

「設置はこれで完了、っと」

「ネプギアちゃん、用意出来まして?」

「あ、はい。出来ました」

 

 頼まれた物の準備を丁度終えたところで、ベールさんからかけられた声。それにわたしは返答して、ゆっくりとテーブルの上を見回す。…よし、抜かりはないね。

 

「悪いわね、こういう事まで手伝ってもらっちゃって…」

「大丈夫ですよ。ブランさん達が働いていて、わたしが眺めてるなんて出来ませんし」

「さっき謙虚云々の話をしたけど…ほんと、ネプギアも謙虚よね」

「うふふ、当然ですわ。だってネプギアちゃんですもの」

「あ、あはは…(こっちは皆さん妹がいないのに、それでもやっぱりベールさんはそういう性格なんだ…)」

 

 ボウルをテーブルに置きながら気遣いと賞賛の言葉をかけてくれる、ブランさんとノワールさん。ベールさんはどこか誇らしげで…こうして話してると、ほんと信次元と変わらないなぁ…。

 

「さてと。特に何もなければ、どっちもそろそろ……」

「お待たせ、皆」

「…………」

 

 全部の準備が終わり、ノワールさんは視線を時計に。と、そこで部屋の扉が開いて、現れたのはピーシェさん達と…プルルートさん。その瞬間、ノワールさん達の間に緊張が走り…でもすぐに、三人共ほっとしたような表情に。

 

「…ちゃんと来てくれたのね、プルルート」

「う、うん…」

「どんな論調で説得したんですの?」

「せーつがね、それはもうウーマン村本さんの如く言葉を並べ立てて……」

「し、してないでしょそんな事!」

「…とろ久保田さんだっけ?」

「だからそんな風には言ってないしその略称は変じゃない!?…どんなに意識しても『普段の無意識』は矯正し切れないものだから、食事位は前みたいに取った方がいいと思うわ、って言っただけよ…」

「…皆が…沢山の人が関わってる表彰式を、あたしのせいで台無しには出来ないから……」

 

 にこりと微笑むブランさんに、プルルートさんはぬいぐるみを抱えながら小さく首肯。それからセイツさんがどう説得したかを口にすると、プルルートさんは思い詰めた表情になって、わたし達も言葉に詰まる。

 プルルートさんが来てくれた。それは喜ばしい事だけど、その言葉通りなら前向きな気持ちで来てくれた訳じゃない。思い詰めている事には変わりない。…それが、わたしにも皆さんの心にも影を差して……

 

「そういう事なら、尚更いつも通り…ううん、いつも以上に楽しくご飯を食べなきゃねっ!」

「…ねぷちゃん…それに、えっと……」

「マジェコンヌだ」

「あぁ……へ?」

 

 その影を一瞬で退場させたのは、元気一杯に入ってきたお姉ちゃんだった。お姉ちゃん、それにいーすんさんはマジェコンヌさんに教会の案内をしに行っていて(お姉ちゃんは案内っていうか付き添いだけど)、初対面となったプルルートさんはマジェコンヌさんを見てぽかんと硬直。その数秒後、説明を聞いたプルルートさんは「え…えぇぇ〜…!?そうなのぉ〜…!?」と、これまでで一番大きい声を出していた。

 

「…まさか、マジェコンヌがプルルートの元気な声を引き出すなんてね……」

「わたしはぷるちゃんの元気な声が聞けただけで嬉しいです。あいちゃんは違うですか?」

「…ま、まぁ…そりゃ、嬉しいかどうかで言えば…嬉しい、けど……」

 

 そんなこんなで全員集合。という訳で、皆さん席に着いて…今日の、遅めのお夕飯の時間が幕を開ける。

 

「……!今だねっ、スキル発動!わたしのお好み焼きを解呪(アンロック)!一枚以上解呪(アンロック)した事により、ノワールのお好み焼きをΩ呪縛(ロック)!」

「ちょっ、何私のやつをコテで押し付けてんのよ!」

「こんなものかしらね…」

「……?ブラン、それは少々薄いのではなくて?横から見るとぺたんとしていますわよ?」

「…喧嘩売ってるの?」

「えぇ!?お、お好み焼きの話ですわよ!?」

「ぷるると、ぴぃの一口食べてみる?」

「あ…う、うん…ありがとう、ピーシェちゃん…」

 

 わいわいがやがやと、テーブルを囲んで皆で談笑。今日のお夕飯はお好み焼きで、これになったのもお夕飯を賑やかな時間にする為。…賑やかっていうか、ちょっとしたバトルが起きそうな雰囲気も散見されるけど…だ、大丈夫だよね、うん。

 

「お好み焼き、か…考えてみれば、食べるのは随分と久方ぶりだな……」

「そうなのですか?まぁでも、好物でないのなら普段から食べる料理でもないですもんね( ̄▽ ̄)」

「ですね。あ、次誰か焼きますか?」

「そ、それじゃあ…あたし、いい…?」

 

 二つあるプレートの内片方が空になった事で、わたしが皆さんに問いかけると、プルルートさんがおずおずと挙手。それにわたし達がこくんと頷くと、プルルートさんはボウルとおたまを持って二つのお好み焼きを製作開始。…一度に二つ、って…もしかしてプルルートさん、案外沢山食べる人…?

 

「にしてもお好み焼きってさー、ホットケーキと色々似てるよね。親戚か何かかな?」

「確かに似てはいるけど…親戚だなんて思うのはねぷてぬだけじゃない?だよねぷるると」

「え…?…言われてみると、似てる…かも…?」

「えぇ…ぷるるんはそこからなの……?」

 

 各々好きなように話してはいるけど、ピーシェさんは積極的にプルルートさんへと話を振っている感じ。でも無理に話を作ってるって雰囲気はなくて、プルルートさんもさっきより心なしかだけど、表情が緩んだようにも見える。

 わたしもお姉ちゃんもマジェコンヌさんも、昔の…気兼ねなく過ごしていた頃のプルルートさんを知らない。だけど、そんなピーシェさんとプルルートさんの姿を見れば想像出来る。きっと昔は、いつも楽しく話していたんだろうな…って。

 

(…思い切った何かをする必要はない。ちょっとずつ、特別でも何でもない事をすればいい。…確かに、その通りですね)

 

 それは、今日の会議で辿り着いた結論。色々考えて、その上で選んだわたし達の選択。今が、これがその第一歩で…その選択は、間違っていない。そう思わせてくれる時間が、今ここにはある。

 

「っとと、少しソースを付け過ぎたかしら…プルルート、そろそろどっちもいいんじゃない?」

「そう、だね…それじゃあ……はい」

「ふぇ?…ぷるると…?」

「いーすんも、はい」

「…プルルートさん…?」

 

 独り言を呟きながらソースを戻したところで、セイツさんが一言。プルルートさんはそれに頷いて、お好み焼きをプレートからお皿へ。…と、こう表現すると至って普通の事だけど…プルルートさんが置いたのは、ピーシェさんといーすんさんのお皿。それに二人も、わたし達もきょとんとする中、プルルートさんはちょっと恥ずかしそうにしながら……言う。

 

「…二人には、いつも一杯お仕事をしてもらってるから…あたしの代わりに、いつも頑張ってくれてるから……」

「ぷるると……」

「プルルートさん……」

 

 申し訳なさ、不甲斐なさ…でもその奥に感謝の気持ちが込められた、プルルートさんの言葉。それに自然とわたし達はプルルートさんを見つめて、ピーシェさんといーすんさんもプルルートさんの名前を呟いて、そして……

 

「…あの、お気持ちは本当に嬉しいのですが…わたし、これを食べ切るには三週間位かかるかもしれません……(;´д`)」

「あっ……」

 

 自分の身体よりずっと大きいお好み焼きを前にして、苦笑い気味に頬を掻くいーすんさん。プルルートさんは完全にサイズの事を失念していたみたいで、あっ…と言ったまま止まってしまう。

 

「…ったく、本当にぼんやりしてるわねプルルートは…それなら、私達も色々やってるんだけど?」

「あ、そ、それは…う、うん…!勿論、ノワールちゃん達のも作るつもりだよっ…?」

「それなら、プルルートの分はわたしに任せて。貴女の為に、ルウィー特製のお好み焼きを用意するわ」

「な……っ!?だ、だったら私だってラステイション特製のお好み焼きを振る舞ってあげるわ!」

「うふふ、でしたらわたくしもプルルートに一枚作ろうかしら」

「そういう事なら…お姉ちゃん!」

「うん!信次元のお好み焼きも作ってあげるね!」

「え、えぇぇ…!?そ、そんなに沢山は食べられないよぉ…!」

 

 何故か張り合う(?)ブランさんとノワールさんに面白がってベールさんが続き、更にわたし達も流れに追従。わたわたと慌てるプルルートさんを他所に、次々お好み焼きを作り始めて、プルルートは更にわたわた。それを見たピーシェさん達は笑いを零し、賑やかだった食卓はもっともっと賑やかに。

 それからもお好み焼きを焼いては食べて、和気藹々のお夕飯は続く。プルルートさんとは勿論だけど、考えてみればこれだけの人数でご飯を食べる事自体こっちに来てからは初めてで……だからこそこのお夕飯は、わたし達も、皆が楽しめる…とっても素敵な時間だった。




今回のパロディ解説

・眠りのネプテューヌ
名探偵コナンに登場するキャラの一人、毛利小五郎の異名のパロディ。言うまでもない事ではありますが…当然、マジェコンヌはネプテューヌの声真似なんてしていません。

・ウーマン村本
お笑いコンビ、ウーマンラッシュアワーの村本大輔さんの事。あんな勢いで言われたら、傷心のプルルートは出てこられなくなってしまいますね…。

・とろ久保田
お笑いコンビ、とろサーモンの久保田かずのぶさんの事。一応言っておきますと、とろ久保田という略称はウーマン村本に合わせた、その場で考えた名前です。

・「わたしの〜〜Ω呪縛(ロック)!」
カードファイト!!ヴァンガードのユニットの一体、創世竜 フラジオレット・メサイアの能力のパロディ。つい入れてしまいましたが…どれだけの人が分かったのでしょう…。
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