超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
まだまだ決して多いとは言えない、でも確かに日々、少しずつ目を覚ましていく信次元の人達。社会活動の完全復活にはまだ程遠い、けれどその芽位は出てきたんじゃないかと思える今日この頃。
その段階へ進んだ事で、私達女神のやるべき事は一つ増えた。それは……目を覚ました人がどうすればいいか分かるよう、見つけ次第伝える事。
「一人で大丈夫ですか?お手伝いが必要でしたら、私が手を貸しますが……」
「い、いえ!多少時間はかかると思いますが、一人で大丈夫です!というか、女神様の手を煩わせるなど…!」
「で、ですよね…何かありましたら、こちらにご連絡を。そして出来る限り、移動には大通りを利用するようにして下さい」
どうしたらいいか分からない。そんな様子で彷徨っていた女性を見つけた私は、現状とこれからどうすればいいかを説明し、用意しておいた書類を女性に渡す。
電光掲示板や電子看板、インターネット上でも同様の説明をしているとはいえ、目が覚めたら誰も彼もが昏睡していて、社会が機能していない…なんて状態じゃ、誰もが落ち着いて情報収集出来る訳じゃない。だからこれは、必要な活動。折角目を覚ましてくれたのに、どうすればいいか分からず絶望するなんて、そんなのあんまりだから。
「イリゼ様ー!」
「あ…皆、そっちはどうだった?」
「我々も一名発見し、保護しました!」
「保護…?」
「はい、男の子です」
「そっか…良かった……」
女性と別れた数分後。声のした方向に振り向くと、呼んでいたのは私を信仰してくれている数人の人達。彼等は私に、私達に協力する事を申し出てくれて、今はこうして目を覚ました人の捜索と案内をしてくれている。…つまり、私と同じ行動をしてくれている真っ最中。
安全とは限らない。この状況に、皆不安や心配だってある筈。でも彼等は言ってくれた。私の力になりたいと。犯罪組織のようにまた、協力したいと。
嬉しかった。信仰してくれている人達の言葉は、いつだって私の心に元気をくれる。それにこれは地道な活動だから、人手が増えるのはありがたい事。だからパーティーメンバーの皆と同様、絶対に複数人で活動する事、活動前後で私やイストワールさん達に一言言うのを欠かさない事を約束に、手伝ってもらう事にした。
「今は家から色々持っていきたい物があるみたいで、隊長達が付き添っています。はは、こんな中で生活に必須という訳でもない物を取りに行くなんて、子供は逞しいですよね」
「ふふっ、確かに。でも、大切だよ?異常事態の中でも、日常を忘れまいって気持ちは」
そう言って私は、皆と軽く肩を竦め合う。状況に合わせた考えや行動は大事だけど、気を張り詰め続けるのは誰だって苦しい事。だから私はそれを悪いと思わないし…むしろ、その子の状態に安心した。
それから二言三言言葉を交わしたところで、私は一度プラネタワーへ戻るべく飛び上がろうとする。でもその前に言いたかった事があるみたいで、信仰者さん達の一人が私を呼び止める。
「あ、あの。…一つ、訊いてもいいですか…?」
「うん、何?」
「噂、ですよ?なので根も葉もない事なのかもしれないんですけど…この事態の原因には、女神様も関わっているって…本当ですか…?」
「……!…それを、噂で聞いたの…?」
「は、はい。それで……あ…い、いややっぱりいいです!イリゼ様が原因な訳ないですし、イリゼ様が信頼する女神方もまた、こんな事を起こす訳がないですもんね!あはは、何しょうもない事訊いてんだろわたし……」
一瞬どきりとするような、その人の問い。けど私が訊き返すと、すぐにその人は首を強く横に振って、申し訳なさそうに頭を掻く。…だけど…うん、そうだよね…皆だって、ずっと不安なんだよね…。だったら……
「…ごめんね。私達もまだ、全てが分かってる訳じゃないから真相については話せないけど…何があっても、皆の事は私が守るよ。だって皆は、私の大切な人達だから」
『イリゼ様……』
まずは真剣な顔を、それから安心してほしいって思いを込めた微笑みを浮かべて、私は言う。私の思いを。何があろうと変わらない、私の意思を。
そんな私の言葉に、皆は頷いてくれた。頷いて、私に笑みを返してくれた。…ありがとね、皆。
(……けど…)
プラネタワーへと戻る帰路、頭の中を占めるのはとある不安。皆に大丈夫だよって感じの事を言っておいてアレだけど…彼女の言う「噂」を聞いて、私の中の懸念要素は強まっている。
そして、皆に先んじて戻るのもそれ関連の事が理由。先の会話で懸念が強まった私は一直線にプラネタワーへ戻り、目的の部屋へと小走りで……
「…っとと、いけないいけない……」
……移動すると「女神様が急いでる=また何か大きな異常が…?」…と中にいる人達を不安にさせてしまうから、平然を装うべく歩いて移動。そうして私が向かったのは、諜報部室。
「アイエフ、調査結果はどんな感じ…って、あれ?」
「あ、お帰りイリゼ」
「う、うんただいま…」
入った瞬間、私にかけられたのはお帰りの言葉。その声を発したのは、黄色い髪に快活そうな表情をした女の子。…う、うん?ここは諜報部室…間違いなく諜報部室……なら、どうしてここにビーシャが…?
「それはですね、別の理由で来ていて、今は意見を貰っていたところなんですよ」
「そ、そうなの…コンパももう普通に地の文を読むようになっちゃったね……」
いとも平然と行われるメタ行為に、何とも言えない気持ちとなる私。…いや、まぁ…メタもパロもしまくりな女神の一人である私が言える事じゃないけど…。
「…こほん。で、結果の方は?」
「それが…まぁ、見てもらった方が早いわね」
話を戻すべく改めて訊くと、アイエフは作業用の端末を持って私の方へ。
そこに表示されているのは、とあるニュース記事と掲載元のリンク。内容は……例のサイトの、陰謀論めいた話の紹介。
毎日のように更新され、しかも決して的外れではない内容で不安を煽るこのサイトは、何かおかしい。更新頻度はまだしも、毎回一般に開示されていない情報を掠めるような内容をしているなんて、普通はあり得ない。そう思ったから、私達はこのサイトを調べる事に決めて、頼んでおいたんだけど……
「…う、うん?」
操作を始めてから数分。まだたった数分なのに、もう明らかなおかしさを私は感じ始める。
ついさっきリンク元から飛んで、全文が読めるサイトが表示された。でもこれは違う。私が前に見たサイトとは違って、しかも調べていくとまたリンクが貼ってあって、それを押すと更に別のサイトへ飛んでしまう。
続けて元のニュース記事に戻ってもう一度押すと、今度は同じリンクから飛んだ筈なのに表示されたのはこれまた別のサイト。押す度に変わるし、それぞれのサイトにあるリンクを辿った場合もランダムに飛ばされるし、履歴を見てみれば表示させた回数と履歴の数が合っていないし……こんなの、普通起こる事じゃない。
「…これは…色んなサイトを用意して、細工も仕込んで閲覧数を稼ごうっていう……?」
「かもしれないわね。でも多分、そんな小細工レベルの話じゃないのよ」
「…どういう事?」
「…どれだけ調べても、大元のサイトが見つからないんですよ。それに…このリンク、押す度にサイトが自動成形されている可能性が高いです」
「え……?」
私の問いに答えてくれたのは、アイエフと共に調べてくれていた、サイバー関連に長けた諜報員さんの一人。一方の私は、そこまで詳しい訳じゃないけど…そんな私でも、それが電脳上における『異常』だって事位は分かる。
「…解析は、出来ていますか?」
「現在も行ってはいます。ただ、あまりご期待には添えないかもしれません…」
「そうですか…いえ、大丈夫です。出来る範囲で、このサイト関連の情報を集めておいて下さい」
そう言って、私は三人にアイコンタクト。三人からの頷きを得た私は廊下に出て、コンパ達も同じく廊下に来てくれる。
「…これさ、皆はどう思う?どこかの天才プログラマーの悪ふざけか、この状況を利用して何者かが現体制を揺らがせようとしているのか、或いは……」
周りに誰もいない事を確認した私は、振り向いた後頷きながら皆に問う。どう考えたってこの話、一人で考えて答えが出せるようなものじゃない。
「んーと…その何者か、って言うのは?」
「それも考えなきゃいけないところかな。まず初めに思い付くのは、犯罪組織の残党だけど……」
「少なくとも、かなり高度な…それこそ並外れたプログラミング技術があるとか、異能力とかでもなければ出来ない事は確かね。今はまだ多くの人が眠ったままだし、それ…っていうか、前者に該当しそうな人物を探し出してみる?」
「出来そうなら、お願い。でも今進めてる事を優先して」
アイエフの言葉に頷きつつも、私は一言付け加える。確かに昏睡したままの人を除外出来る今は普段に比べて探す難易度が格段に低くて、ありがたい事に毎日目覚める人がいる以上、やるんだったら今すぐ最優先で行うのがベスト。
でも、これがプログラミング技術によるものだって確証はないし、必ず目を覚ましている人の中にいるとも限らなければ、目を覚ました後身を潜めている人が行っているという可能性もゼロじゃない。つまり、空振りに終わる事も十分あり得る訳で…人々の生命や次元の存続に直結する問題じゃない以上、これを最優先にする訳にはいかないというのが私の判断。
「…イリゼちゃん。或いは、の先は……」
「うん。これもこっちに現れたうずめの仕業かもしれないって事は、頭に留めておかなきゃいけないと思う。…とにかく、あのうずめは色々と未知数だからね…」
ぼかした…訳じゃないけど、正直あのうずめの仕業だって可能性が、現状じゃ一番高いと思う。タイミング的にもそうだし、複数の次元に異常を引き起こさせる程の力があるなら、こういう事が出来たっておかしくはない。…まぁ、そのうずめを直接見た事はないんだけど……。
「未知数、かぁ…格好良い響きだけど、何も分からないのはほんとに困るよね……」
「そこなんだよほんと…歴史の中で何度も顕現している犯罪神は勿論の事、マジェコンヌさんだってイストワールさんが知っていたからこそまだ分かる部分もあったんだけど……(そっか、考えてみれば三人もこっちのうずめは見てないんだった…)」
「仕方ないわよ、分からないものは分からないんだから。それに、最初の旅だってマジェコンヌの事が分かってきたのはかなり後になってからでしょ?」
「言われてみるとそうですね。いーすんさん、いつもいいところで声が聞こえなくなっちゃいましたし…」
『あー……』
苦笑い気味のコンパの言葉に、私とアイエフも思わず苦笑。だからどうだって話じゃないけど、重くなり始めていた空気にとってはありがたい清涼剤。…まぁ、ビーシャはきょとんとしていたけどね。
「まあ、とにかくこの件に関しては皆もアンテナを立てておいて。今はまだ気になる程度だけど、脅威にまで発展する事だってあり得るし」
「うん、じゃあわたしもシーシャ達に伝えておくね!」
「お願いね、ビーシャ。…一応、分かっている範囲でネプテューヌ達にも話しておくべきかな……」
取り敢えずこれが由々しい問題だって共通認識は確認出来たし、本格的に考えるならノワール達も呼んでするべき。だから一旦この話は切って、私達は各々の行動へ。
多分、明日以降も記事は増えると思う。さっき聞いた噂の話も、きっと元はあのサイト。でもだからこそ、私達は慎重且つ考えて動くべき。急いては事を仕損じると言うし…ただ勝てばいい、倒せばいいって問題でもないんだから。
そう、私は自分に言い聞かせるように心の中で呟いて、再びプラネタワーの外へと向かった。
*
皆で一緒に食卓を囲む。集まって、わいわい話しながら、ご飯を食べる。心理学においても交渉や意見交換のテクニックとして使われるそれは、確かにプルルートの鬱屈した気持ちを好転させる第一歩になった…と、思う。
とはいえ、これだけで何とかなる訳はない。これだけで何とかなるなら、わたし達だって苦労はしないし…プルルート自身、ここまで悩んでいたりはしない。だから、わたし達において必要なのは、これを継続する事と…同時に第二の矢を用意し、放つ事。
「ふーむ…多少導線が気になるところもあるけど、そこは実際に組み上げる時の調整で何とかなりそうね。向こうもプロなんだからそれは踏まえてるでしょうし」
「そうですね。…あっ、でもここはもう少し左にずらした方がいいのでは?何かあった時、舞台からの大きな死角があるのとないのとじゃ瞬間的な対応能力に差が出ますし」
「へぇ、見取り図だけでそこまで立体的に想像してたのね。流石、候補生と言えど女神として場馴れしてるだけの事はあるわ」
「い、いえそんな…偶々浮かんだだけですし、ここまではセイツさんの方が色んな観点で考慮していたじゃないですか…」
お好み焼きの日から二日経った今日も、わたしは授与式絡みの作業中。今は設営予定の会場図やタイムスケジュールの確認中で、手の空いているネプギアにも色々と意見を貰っている。…にしても…温和なようで意志の強いネプギアもいいけど、やっぱり普段のネプギアも素敵ね。謙遜しつつも照れる辺りは、素直な心が表れてるし。
「さて、と。一先ず今手元にある分は終わったし、休憩にしましょ。ネプギア、チョコレート食べる?」
「あ、はい。ありがとうございます」
そう言ってわたしは引き出しの一つを開けて、疲れた時や気持ちが沈んだ時用の一口チョコをネプギアの手に。わたしも一つ取って包装を解き、指で摘んで口の中へ。
舌へ乗り、じんわりと広がるミルクチョコの甘み。それにはふぅ…と心の中で吐息を漏らしつつ、視線をある方向へ向けてみると……
「てりゃりゃりゃりゃりゃー!久し振りの擬似16連射で押して押して押しまくるよーっ!」
「……!流石はねぷてぬ…でも、ぴぃだって……っ!」
そこではネプテューヌとピーシェの二人が、凄まじい勢いで書類に判子やらサインやらを記入しまくっていた。……いや、あの技術は判子押しに応用出来ないでしょう…細かい事言えばこの場合連打だし…。
「…ねぇネプギア、どうして二人はあんな白熱してるの…?」
「あー…えっと、何でも勝った方は一日20本限定のスペシャルプリンシェイクを、負けた方は青汁と黒酢と生姜湯を混ぜたシェイクを飲むんだとか……」
「えぇ…何よその健康と引き換えに口の中が壊滅しそうなシェイクは……」
ネプギアからの回答を聞いて、わたしは軽く引きつつ二人に呆れる。ネプテューヌまでやる気に満ちている辺り、何かあるんだろうなとは思ったけど、まさかこんな事とは…。…ピーシェも好きよね、ネプテューヌに張り合うの……。
「せいせいせいっ、せっせっせいやーっ!よし終わったーっ!」
「ぴぃもっ、これでっ、お終いっ!」
呆れ顔と苦笑いでわたし達が見つめる事数分。既に結構減っていた、初めは山の様にあった書類を全て捌き切り、ネプテューヌとピーシェはほぼ同時にフィニッシュ。片方なんかネタを始める感じの掛け声になってたけど…まあ偶然か、思い付いたから言いたかっただけかでしょうね。
「ふふーん、今のわたしの方が早かったね!」
「む、ねぷてぬは最後の一枚に判子を押した瞬間言ったでしょ?でもぴぃは押して、書類を移動させてから言ったもん。だから早いのはぴぃの方だよ?」
「いやいや移動させたタイミングだってわたしの方がコンマ一秒早かったって。ネプギアもそう思うよね?」
「え?…ええっと…わたしそこまでしっかりとは見てなかったから、それについては何とも……」
「ならねぷてぬ、出来で決めようよ。どっちが早いかだけじゃなくて、どっちがより綺麗に押してたり書いたりしてるかも判断基準にするって言ったでしょ?」
「あ、言ったね?ピー子今自分で言ったんだから、わたしの方が上手でもやっぱなしは通用しないからね?」
「その言葉、そっくりそのまま返すよねぷてぬ。じゃあねぷぎあ、せーつ、どっちが上手か判断してくれる?」
一歩足りとも引く様子はない二人。負けた場合の事があるから当然といえば当然だけど、わたしとしては呆れの感情が止まらない。そして判断を求められた事で、流石にネプギアももう呆れていると思う。だって……
「いや、判断も何も…二人共、どっちが自分のやったやつか分かる……?」
『え?……あ…』
あんまりにも雑に片付いた書類を退かしていった結果、向かい合っていた二人の書類は大いに混ざってしまっているんだから。
「……ど、どうする…?ピー子…」
「どうする、って…これじゃ、どうしようもなくない…?」
「…ぷっ。なら、二つのシェイクを混ぜて、それを二人で飲めばいいじゃない」
『なにその地獄!?』
何とも二人らしい結末と、思い付いた言葉で自分自ら笑ってしまうわたし。二人としては当然、堪ったものじゃないんだろうけど…判別不能にしたのは二人だもの、仕方ないわよね。
「むむぅ…仕方ないからわたしはスペシャルプリンシェイクの中身、ピー子は蓋とストローとカップを貰うって事にしよっか……」
「うん…って、それぴぃがゴミ渡されるだけじゃん!ねぷてぬ勝った場合以上に得してるじゃん!」
「駄目だよピー子、一括りにゴミにするんじゃなくて、ちゃんとリサイクル出来る物は分別しなきゃ」
「あ、そ、そうだね…じゃなくて!そういう問題じゃないから!」
「はいはい。じゃ、二人も終わったみたいだし…朝言った話を、そろそろしてもいいかしら?」
しれっとふざけるネプテューヌと軽く翻弄されるピーシェをまた少し眺めた後、わたしは表情を引き締め三人に問う。
それは、プルルートに関する話。三人共ちゃんと覚えていてくれたみたいで、三人揃ってこくりと首肯。だからわたしは続けて事前に連絡しておいたノワール達にもTV電話を繋ぎ、全員揃ったところでこほんと咳払い。
「まずは皆、仕事中に悪いわね」
「問題ないわ。プルルートの事なら、わたし達も参加しない訳にはいかないもの」
「ありがと、じゃあ早速本題だけど…わたしは、プルルートとデートしようと思うわ」
『へ?』
元からいた三人に、すぐ来てくれたコンパとアイエフに、それぞれの国にいる三人。計八人を前に、わたしははっきりと言う。わたしの考える、第二の矢を。
「え、えぇと…セイツ、そのデートというのは、貴女のよく言う……」
「えぇ。そのデートよ」
「あ、あはは…そうですよね…分かっていても、やっぱりちょっとびっくりしちゃうです…」
「いつも急だものね…で、なんでまたデートなのよ」
訊き返すベール、胸を撫で下ろすコンパ、それに理由を訊こうとするアイエフの反応は、どれもご尤も。だからわたしは一つ頷いて、話を続ける。
「当然の話だけど、授与式は多くの人が見に来るし、そもそも人と接する事は女神にとって必要不可欠な事。でも、今の食事だけじゃ、限られた人との交流しか生まれないでしょう?」
「あぁ…外に出る事で、不特定多数の人と接する機会を作ろうって事ね。その上で、何があればすぐフォローが出来るよう、デート…というか、二人でのお出掛けって形にしようって事ね」
「そういう事。それにプルルートだって、自国民と触れ合う事で心が安らぐかもしれないでしょう?だから、どうかしら皆」
我が意を得たり。ノワールが言いたい事をちゃんと言ってくれたから補足だけして、わたしは皆に問いかける。すると概ね皆は頷いてくれて…でもその中で、ブランがすっと手を挙げる。
「一つ、いいかしらセイツ」
「勿論。何かしらブラン」
「貴女の考えはいいと思うわ。でもそういう話なら、貴女より付き合いの長いわたしの方が適任なんじゃないかしら」
「ちょっ…それを言うなら付き合いは私の方が長いっての」
「そうね、でもわたしが今訊いているのはセイツよ。どう?」
やはりというか、ブランの発言は「わたしが行く」と言うもの。でもそれは想定済みだったから、わたしはすぐにその問いへ回答。
「そうはいかないわ。わたしは皆に、逐次サポートを頼みたいと思ってるの。そしてこの件において、プルルートと同じ苦しみを経験してきたブランには、常に余裕を持って判断出来るようサポートに回ってほしいのよ」
「それは…確かに、一理ある…わね……」
「えぇそうね、私もそう思うわ。でもそれなら、私だったら問題ないわよね?」
「ノワールも駄目よ。ノワールは……司令官役をやってもらいたいもの」
「なんで!?な、なんで急に司令官なんて出てくるのよ!?…いや分かるけど、何を言いたいかは分かるけども…!」
続くノワールからの言葉にも対処して、取り敢えず二人からの理解を得たわたし。…ふふっ、悪いわね二人共…でもわたしとしても、デートに一家言あるわたしだからこそ…このポジションは、譲れないのよ。
「他の皆は?全員、意見とか指摘とかはない?」
「ふむ…いえ、大丈夫ですわ。詰まる所、やる事自体は単なるお出掛けなのでしょう?」
「そうよ。大仰な事より『普段』や『普通』を取り戻す事が大切だって、前に皆で決めた訳だし」
そうして全員からの了解を得たわたしは、早速具体的な……皆にしてもらいたいサポートの件を説明。それも皆に理解してもらって、この作戦の実行が決定する。そして……
「……よし、っと」
翌日。善は急げの考えで早速実行する事となり、わたしがいるのはプルルートの使う部屋の前。今日一日のプランを頭の中で確認して、わたしは耳にインカムを嵌める。
「…じゃあ、頼むわ皆」
「任せてっ!でも折角なら、空中艦の中からサポートしたかったよね〜」
「こんな事に空中艦まで引っ張ってこれる訳ないでしょうが…こっちも準備完了よ、セイツ」
予想通り気乗りしているネプテューヌと、なんだかんだでノリノリなノワール司令からの返答を受けて、わたしは部屋の扉と正対する。
三日前からの食事と違って、外に出て多くの人と触れるというのは、きっとプルルートにとって桁違いの普段。依頼という理由もないから、多分最初は嫌がると思う。でも…嫌がりそうだからって何もしなかったら、何も進めない。進めないままなんて、誰も望んでない。だから……
「──さぁ、皆…わたし達のデー……」
「よーっし!じゃあ皆、頑張ろーっ!」
「…いや、言わせてよネプテューヌ……」
……格好良く決めようと思ったのに、最初の一歩目から躓いてしまうわたしだった。…は、はは……。
今回のパロディ解説
・ここは諜報部室〜〜ビーシャが…?
なんでここに先生が!?における、代名詞的なフレーズのパロディ。でも言う程偶然が重なってはいませんね。だって元々ビーシャは呼ばれていた訳ですし。
・いとも平然と行われるメタ行為
ジョジョシリーズに登場するスタンドの一つ、D4Cのパロディ。もうOriginsシリーズにおけるメタ発言は普通を通り越して無いと逆におかしいレベルですからね!
・擬似16連射
プロゲーマーでありゲーム業界の関係者である、高橋名人こと高橋利幸さんの代名詞のパロディ。覚えていますか?このパロディネタ、OIでも一度やっているんですよ。
・「〜〜せっせっせいやーっ!〜〜」
お笑いコンビ、霜降り明星のせいやこと石川晟也さんの持ちネタの一つ(の一部)のパロディ。でもここ、「せいせいせい」からレイザーラモンHGさんのネタもいけますよね。
・「──さぁ、皆…わたし達のでー……」
デート・ア・ライブにおける、代名詞的なフレーズの一つのパロディ。というか、司令官やら空中艦やらと、デート云々の話はまるっとこの作品のパロディとも言えますね。