超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed 作:シモツキ
気候は晴れ、気温も良くて、今日は絶好のデート日和。そんな日にデート出来るのがプルルートなんだから、正直それだけでわたしの心はわくわくしている。
無論、デートの目的はただ楽しむ事じゃない。けれど楽しまなくちゃ、楽しめるデートでなくちゃ、プルルートの心も癒せない。そして…片方がデートを目的じゃなくて手段としか思っていないようじゃ、相手も楽しめる訳ないわよね。
「…ほんとに、行くの……?」
「ほんとに行くの。勿論本当に嫌だ、泣く位嫌って言われたら、わたしも無理強いは出来ないけど……」
「そ、そこまでじゃ…ない、けど……」
一先ず部屋から出てもらう事には成功して、一緒に廊下を進んで、今は裏手側に当たる出入り口の一つの前。色んな人と接してもらう事も目的の一つとはいえ、プルルートの負担も考えて今日は人の集まる、人目につく場所は避けるつもりなんだけど…やっぱり、そうすんなりとはいきそうにないわね…。
「今日は仕事じゃなくて遊びよ。別にいつ帰ってもいいんだから、ね?」
「…でも、あたし…ネプギアちゃんの時、みたいに……」
「その時は、ちゃんとわたしが止めるわ。わたしの実力は、ちゃんと知ってるでしょ?」
「…けどセイツちゃん、初めて会った時は……」
「うっ…あ、あの時は例外っていうか、あれを基準に考えないで頂戴…!」
予想外の返しを受けて、調子を崩されてしまうわたし。くっ…微妙にキレがいいのは変わらないわねほんと…!
「と、とにかく何とかするわ!でも不安の方が勝つって言うなら……」
「…ううん…セイツちゃんは、あたしの事を思って誘ってくれたんだもんね…行くよ、あたし…」
「…そう言ってくれて嬉しいわ。じゃあ、行きましょ」
不安を感じているのは間違いない。でもプルルートは、その不安を天秤にかけた上でわたしとのデートを取ってくれた。だからわたしは喜びと感謝を胸に抱いて、出入り口の扉を開く。
「…ふぅ…第二関門も突破ね。ここまでで頓挫しなくて良かったわ」
「けれど、ここまでは前哨戦…いえ、ウォーミングアップのようなものですわ」
「そうね。わたし達が適宜サポートするとはいえ、実際に行動するのはセイツだもの。だから、頼むわよ」
教会から出て、敷地から外へと向かう中、インカムから聞こえてくるのはノワール達の声。三人、それにイストワールは教会内からわたしをサポートしてくれる事になっていて、プルルートに気付かれないようわたしはブランの言葉に首肯する。
そう。ここまでは飛行前の助走みたいなもので、ここからが本番。さぁ、気を引き締めていくわよわたし…!
「…それで、どこに行くつもりなの…?」
「まずはちょっと歩きましょ。何も急ぐ事はないし」
「う、うん…そうだね…」
一応どこへ行くかのプランは何パターンか用意してあるけど、別にそのプランに忠実なデートにする必要はない。という事でプルルートに言葉を返すと、プルルートはしれーっと進路を裏路地の方へ。
「って、こらこらこーら。何人気のない方に行こうとしてるのよ」
「…こういう所にも、面白そうなお店があったりするんだよ…?」
「それはそうね。でもそういう理由じゃないでしょ貴女…」
「うぅ……」
プルルートを裏路地の方から引き戻したわたしは、話のネタになりそうなものを探すべく視線を動かす。…と、そこで聞こえてきたのはノワール達とは別の通信。
「こちらN1、今のところ進路に問題はないよ!」
「え、N1?…じゃあ…こちらN2、Bプランのルートも問題ないです」
「あ、ねぷぎあもやるんだ…えーっと…P1、Cプランのルートは思ってたより少し人が多い、かな」
その通信は、わたし達の進路及び各プランのルートを先行して、常に状況の確認と最新情報の確保をしてくれている三人によるもの。更に言うと、コンパとアイエフの二人はプラン全てが駄目になった際、新たに採用出来そうなプランやルートがないかの実地調査に向かってくれていて…本当に、万全の体制でこの計画は進められている。
「にしても、なんかこれ護衛任務みたいでテンション上がっちゃうよね!誤差無し、とかやっちゃう?」
「いや、もう始まってるから…」
「お、お姉ちゃん…真面目にやらなきゃ駄目だよ…?」
「分かってるって。セイツも何か要望あったら言ってね?出来る限り先回りして準備するからさ」
「…えぇ、何かあればその時は頼むわ」
明らかに楽しんでいるネプテューヌだけど、それでもやっぱり心強い。これにはわたしが心から信頼する皆が協力してくれてるんだもの。それだけでもう失敗する気なんかしないってものよ。
「…セイツちゃん?何か言った?」
「あ、ううん。ちょっと確認してただけよ」
「確認…?」
「それより、どこか行きたい場所ある?今ならわたしがいるから、少しは行き易いでしょ?」
追求される前に話を逸らす事ではぐらかし、同時に何か要望がないか訊く。すると案の定、初めは「別に…」って感じだったプルルートだけど、そのまま見つめていると段々考え込むような顔になって……
「…じゃあ、その…手芸のお店……」
「ふふっ、分かったわ。じゃあ近くの手芸用品店に……」
ぽつり、と行きたい場所を言ってくれた。でもわたしが一番近くの手芸用品店を探そうとすると、プルルートは首を横に振る。……?
「あぁ、行きつけのお店じゃない?」
「…行きつけ?手芸用品店の…?」
「あら、知らなかったの?プルルート、いつもぬいぐるみ作る時には同じお店で材料を買ってるのよ?」
「ぐっ…た、偶々知らなかっただけよ……」
「こんな時まで張り合わないで下さい二人共…(;´д`)」
「…こ、こほん。じゃあ、今からその場所を伝えるわ。距離的には…うん。ピーシェ、先回りして道中と店内の確認してくれる?」
「P1、了解!」
わたしが疑問符を浮かべている内に、教会内で疑問解決。という事でわたしはプルルートに同意し、彼女に案内される形で手芸用品店へ。…っていうか、何気に貴女もノってきてるじゃない、ピーシェ。
そうして歩く事十数分。ピーシェから問題無しの報告を受けたわたしとプルルートは、件のお店へ到着する。
「ここ、って…もしかして、個人経営店?」
「う、うん」
意外にも、辿り着いたお店は教会からそこそこ近い距離。大通りは通らなかったから多少時間はかかったけど、それなら確かに行きつけって事も頷ける。
少し緊張している様子のプルルートと共に、入店するわたし。お店の中の雰囲気は…なんというか、良い意味で着飾っていない感じ。
「…へぇ、針にも色々種類があるのね」
「そうだよ。細かい作業をするんだから、種類がちょっとだったら困っちゃうでしょ…?」
「確かにそれはそうね…ねぇプルルート。この長い針も…って……」
少し興味が湧き、質問をしようとしたわたしだけど、いつの間にやらプルルートは布売り場の方へ。早々に別行動となりかけてしまい、わたしは慌てて後を追おうとしたけど…一つ一つ布を触って、じっと見つめるプルルートの表情は穏やか。
(…今は、そのままにしてあげた方が良さそうね。プルルートの気持ちに水を差すのも嫌だもの)
という事で、わたしは少しだけ離れた場所から見守る事に決定。プルルートは本当に布へ集中していて、ひょっとしたらもう頭の中では新しいぬいぐるみが縫われ始めてるんじゃないのかしら、なんて思っていたんだけど…そこで一つ、予想外の事が起こる。
「あらま、プルルートちゃんじゃない。久し振りねぇ」
「……!…あ、お、お姉さん……」
不意に棚の向こう側、わたしの死角に当たる位置から現れた一人の女性。プルルートへ気さくに話しかけたその女性は、発言とプルルートの反応を見る限り知り合いなんだろうけど…プルルートの表情は、一瞬にして動揺へ変わる。
「私、プルルートちゃんがずっと来ないから心配したのよ?時々TVでは見るから、体調が悪い訳じゃないって事は分かってたけど……」
「そ、それは…その……」
そのプルルートとは対照的に、女性の表情は嬉しそう。でもプルルートの反応を見て変に思ったのか、段々と心配そうな顔になっていき……だからそこで、わたしは隣へ。
「最近は忙しかったり考えなきゃいけない事があったりで、教会を出られない事も多かったのよね?プルルート」
「…あっ…そ、そう…そう、なんだぁ…」
「あぁ、そういう事だったの。確かにプルルートちゃんは女神様だものね。…それでえぇと、貴女は……」
「こんにちは。レジストハート、で分かるかしら?」
「あ…そ、そうだったんですね。失礼しました…」
わたしが出した助け舟に乗るプルルート。立場のおかげで女性はすぐ納得してくれて、一先ず乗り切る事に成功。…わたしには敬語を使う、って事は…見た目的にも、かなり昔からの付き合いなのかしら…。
「気にしないで。で、プルルート。どれか買うの?それとももう少し見る?」
「…え、と…じゃあ、その……」
そう言ってわたしは、女性に見えないようにプルルートへウインク。
もう無理そうならお会計を理由に離れられるし、もう少し話したいなら後者を選んでくれればいい。出来れば後者を選んでほしいけど、無理のない範囲でいるのが一番大事。…まぁ勿論、もう買う物を決めていたのなら、そのまま買ってくれればいいけど…。
なんてわたしが思っていると、プルルートは一瞬躊躇った後にくるりと振り返り、ピンク色の布を手に。そしてもう一度振り返って、言う。
「…これに、しようかな…」
「それね。じゃあ、長さはどの位?」
「えっと……」
(あ…この方、店長さんだったのね……)
そうして数分後、布を買ったプルルートとわたしはお店の外へ。布は店長さんのご厚意で、帰りにまた寄る時まで預かっていてくれる事に。
「はふ、ぅぅ……」
「お疲れ様、プルルート。ちゃんと話せて良かったわね」
「う、うん…良かったぁ……」
「でも、これで満足してちゃ駄目よ?プルルートだって、知り合いとすらここまで緊張するのは不本意でしょ?」
「うぅ…セイツちゃん、厳しい……」
「いやいやいや…ま、それは置いておきましょうか。次はどこに行く?少しは早いけど、ご飯にする?」
何だか過度な人見知りの克服練習みたいなやり取りになっちゃったけど、人との関わりを避けているという意味では似たようなもの。とはいえここで気落ちしてほしくもないし、わたしは再び話をチェンジ。
「ご飯…食べるなら、甘いもの…かな……」
「甘いもの、ね…じゃあ、お好み焼きの時に出たホットケーキでも食べる?」
「ホットケーキ…うん、いいかも…」
こくりと一つ頷いて、ほんのちょっぴり目を輝かせるプルルート。やっぱりあのお店に行って、店長さんと話せた事はプルルートにとってプラスになったのか、さっきから表情も少し柔らかい。…うん、やっぱりプルルートはほんわかした表情の方が合ってるわ。
「んー?そういえばさー、こういう時って選択肢が三つ出てきて、それを皆で選ぶんじゃないの?」
「あのシステムがある訳ないでしょう…ホットケーキなら、暫く前に行ったあそこなんてどう?」
「あぁ、あそこなら大通りにも面していませんし、良いと思いますわよ?」
「確かにそうね。セイツ、お店の場所は覚えてる?」
ノワールからの言葉にわたしは小声で肯定を示し、プルルートへ提案。プルルートもそこが良いと言ってくれたから、わたし達はそのお店へ。勿論ネプテューヌ達が先行してくれたから特に問題が起こる事もなく、わたし達はお店へ入店。
「ここ、メニューは豊富だけどカフェっぽい雰囲気してるのが良いわよね」
「あ、うん…うん……?」
「…プルルート?」
「ねぇ、セイツちゃん…カフェとレストランって、どう違うの…?」
「えっ?…え、えーと…飲み物がメインか、食べ物がメインか…とか……?」
席に座ったところで何気なく話を振ったら、返ってきたのは予想外な質問。まぁ、気になるのは分かるけど…ま、マイペースさも変わらないわねプルルート…(因みに教会にいる四人曰く、両者にはある程度の傾向はあっても明確な区別はないんだとか)。
「そっかぁ…どれにしようかな…」
「どれも美味しそうだから迷っちゃうわよね」
「うーん…ハンバーグ美味しそう…でも、カレーもいいなぁ……」
「……ホットケーキは!?」
「ほぇ?…あっ…わ、忘れてたぁ…」
「えぇー……」
『えぇー……』
まさかのホットケーキ忘れにわたしは勿論、インカム越しに聞いてる皆が揃って唖然。…プルルート…貴女変わらないどころかマイペースさ悪化してない……?
「え、えへへ…じゃあ、チョコクリームホットケーキにしようかな…」
「全くもう…だったらわたしはキャラメルホットケーキにしようかしらね」
兎にも角にもわたし達はメニューから選び、店員さんを呼んで注文。来るまでの間は窓の外を眺めたりこの後どこへ行くかを話したりして時間を潰し、店員さんが運んできてくれたところでわたし達はフォークとナイフを手元に用意。
「ん、美味しそうね。それじゃ…」
『頂きます』
二人で声を合わせて、わたし達は食前の挨拶。鼻をくすぐる甘い匂いに空腹感を覚えながら、ナイフで切ってまずは一口。
「ほわぁ…美味しいねぇ……」
「えぇ。何も付けなくてもほんのり甘いのがまた良いわよね」
ホットケーキの優しい甘さと温かさに、自然と口元に浮かぶ笑み。次はシロップや生クリームと一緒に食べて、さっきよりも濃厚になった甘さでまた微笑む。
視線を上げてみれば、プルルートも頬が緩んでいて、表情からして満足な様子。うんうん、やっぱりここで正解だったわね。
「やっぱり、お好み焼きとは違うね〜…あ、そうだ…セイツちゃん、一口食べる…?」
「いやそれは違うでしょ…って、いいの?」
三度出てきたマイペースと共に、すっと差し出される一切れのパンケーキ。それにわたしが訊き返すと、差し出したままプルルートはこくり。
「…それじゃあ、お言葉に甘えて……あ、む…」
「…どう?」
「…うん。チョコクリームがよく合ってて美味しいわ」
「でしょ〜…?」
身を乗り出して、プルルートのフォークから食べるわたし。勿論感想は嘘じゃなくて、こっちのホットケーキと甲乙付けがたいと思う美味しさ。…さて、プルルートがくれたんだから……
「じゃあ、これはわたしからのお返しよ。あーん」
「あ、ありがと〜……あー、ん…」
ホットケーキを一切れ分切って、クリームも乗せて、わたしもプルルートへフォークを伸ばす。プルルートは少しだけ前に出て、口を開けたまま目を閉じていたから、そこへわたしはホットケーキをすっと挿入。舌に触れたところでぱくりとプルルートは口を閉じて、口内でホットケーキを引き抜きながらちゅぽんと口を離して、また目を閉じてあむあむと咀嚼し……なんというか、わたしのホットケーキを食べるプルルートはシンプルに可愛かった。
「あっ……」
「む、むむ……」
インカムからはノワールとブランのかなり複雑そうな声が聞こえてきたけど…ま、まぁこれは置いておくとして…。
「美味しかった?」
「…キャラメルも、いいかも…」
「でしょう?…でも、まぁ……」
「……?」
「……こうしてお互いにあげるなら、どっちかはケーキとかパフェにすれば良かったわね…」
「あー…あはは……」
わたしのキャラメルもプルルートのチョコクリームも美味しかった。でもやっぱりメイン部分は同じな訳で、味や食感を楽しむって意味じゃ別のメニューを選んだ方が良かった筈。でも今それに気付いても後の祭りな訳で…わたし達は揃って、苦笑いをしてしまうのだった。
(…まあ、けど…プルルートも楽しそうだし、今も苦笑とはいえ笑ってるし、デートとしては悪くなかったかもね)
「んー…セイツちゃん、もう一口…貰っても、いい…?」
「ふふ、勿論よプルルート。今度はもう少しクリーム多めにしてみる?」
「そうする〜…あーん……」
また雛鳥…というにはかなり大人しいけど…の様に口を開けて待つプルルートに微笑みながら、わたしはもう一度プルルートの口に。食べている間のプルルートは普通の、ただののんびりとした女の子で、そこに女神らしさも必死に耐えているような様子もない。
でも、本来女神ってそういうもの。無理してやるものじゃなく、自然な気持ちで、自然と芽生える思いで行動するのが女神の在り方。…今はまだ、これを言ってもプルルートを追い詰めるだけだから言えないけど…それを言える日が、プルルート自身で気付く日が一日でも早く来るように、わたし達も頑張らなくっちゃね。
*
軽食後、わたし達は水族館に行った。何故水族館にしたかと言えば、水族館は基本薄暗いから多少人が多くても注目される事はないだろうし、その上で人が多い場所でそれなりの時間過ごすというのはプルルートの為にもなると思ったから。
その目論見は、結論から言うと概ね成功。前者も後者も予想していた通りになって、尚且つここでもプルルートは楽しんでくれた。…けれど、良い事尽くめだったかって言うとそうでもなくて……
「ふぁ、ぁ……」
……お昼寝好きのプルルートにとって水族館の暗さは丁度良かったのか、出る頃には眠たそうになっていた。
「…えーっと…プルルート、大丈夫…?」
「だいじょ〜ぶ〜……」
「うん、やっぱり眠いのね…」
左手でぬいぐるみを抱え、右手で目を擦るプルルート。服装や持ち物もあってどちらかと言うと寝起き感が凄いけど、っていうか一回お土産売り場でイルカのぬいぐるみと自分が持ってきたぬいぐるみを取り違えかけてたけど、一応まだプルルートは寝ていない。
「(でも、このままって訳にもいかないわね…仕方ない)…皆、どこかで少し休んで行こうと思うんだけど、構わないかしら?」
「いいと思いますよ。眠い時に連れ回すと、不機嫌になってしまうかもしれませんし( ̄▽ ̄)」
「仮に不機嫌にならずとも、睡魔があっては楽しめませんものね。わたくしも賛成致しますわ」
水族館内での通信でプルルートの状態を知っていた皆の意見も、満場一致で休んでというもの。だからすぐに賛成に続いて休める場所、ゆっくり出来る空間の案が挙げられたけど、それをわたしはすぐに否定。
「ね、プルルート。丁度良いし、あそこの公園で少し休む?」
「…いいの…?」
「いいわよ。それに、どこかで寝ちゃってわたしがおんぶする事に…ってなったら大変だもの」
「…じゃ、そうする……」
わたしが指差したのは、水族館近くにある公園。あそこならベンチがあるし、今は人も殆どいないし、当然風通しもいいから休むにはぴったり…ではなくとも悪くない筈。仮に寝ちゃったとしても、わたしが気を付けていればいいんだものね。
「…あー…!ここは〜……」
「……?もしかして、何か思い入れでもあるの?」
「…来た事ない公園だ〜……」
「そ、そう…(本格的に眠くなってるわね、これは…)」
もう眠そうというか寝惚けているプルルートを連れて公園に入ったわたしは、プルルートをベンチに座らせる。
その隣にわたしも座り、ふぅと一息。プルルートの方を見てみれば、もう何割か寝ているのかぽけーっとした顔。
「…プルルート、ここまでは楽しかった?」
「…ん、ぅ〜……」
「あぁ、眠かったらそのまま寝てもいいわよ。何かあれば起こしてあげるから」
「……楽し、かったよぉ…」
とろんとした目と抑揚のない声で答えるプルルート。言葉もあんまりはきはきとはしていないけど、何となく伝わってくる。プルルートは、本当に楽しんでくれてたんだって。
「…セイツ、ちゃんも…楽しかった……?」
「…楽しかったわ。だって久し振りに、色んな事へ心を揺らしたり弾ませたりするプルルートを見られたんだもの」
「そ、っかぁ…ごめんね、セイツちゃん…また、あたし……」
「今はそういう事言わないで。わたしは、ここまでのデートも今の時間も嬉しく感じてるんだから」
「…ぅん……」
うとうととした状態の中でも、プルルートの思考に過っていたのは申し訳ないっていう気持ち。毎日の食事の件に続いてデートに誘ったんだから、教会を出る前と同じようにこれも自分を気遣って…って思考になってしまうのは当然の話。
だけど、今はそういう思いに目を向けてほしくない。今は、わたしと楽しい思いでいてほしい。それがわたしの願いであって、わたしにとっても一番嬉しい事だから。
それを分かってくれたみたいで、プルルートはそれ以上言わなかった。だからわたしは、空を見上げながら小さく呟く。
「…次は、皆で遊びに出掛けたいわよね」
「……出来たら、いいな…」
「…………」
「…あたしも、また…みんな、と……」
ぽふり、と肩に感じる柔らかな感覚。ちらりと見てみれば、遂に限界を迎えたのかプルルートがこちらに寄りかかり、微かな寝息を立て始めていた。
寝入る直前、プルルートは言った。最後まで言い切れてはいなかったけど、また皆と…って確かに言っていた。
それが、プルルートの紛れもない本心。人を、皆を避けるプルルートが、それでも…って抱いている思い。だったら、前に進むって願いはわたし達だけのものじゃない。わたし達とプルルートの、わたし達皆の願いで、だからやっぱりわたし達のしている事は間違いなんかじゃ……
「きゃああぁぁぁぁああああッ!!」
「……──ッ!?」
その瞬間、突如として響き渡る悲鳴。わたしは勿論、プルルートも反射的に立ち上がり、背中合わせでぐるりと見回す。
「セイツちゃん、今のって……」
「間違いなく何かが起こってるわね。事件か事故か、それとも……」
「……!あそこ…!」
はっとした声と共に、プルルートが指差すある方向。そちらに目をやると、そこには路地とそこから逃げるように出ていく数人の姿が。
「……っ!そこの方、何かあったの!?」
「も、モンスターだ!マンホールから急にモンスターが出てきたんだよ!君等も早く逃げるんだ!」
「モンスター…!?」
地面を蹴って逃げる人に駆け寄り声をかけると、返ってきたのは想像もしなかった答え。モンスターって、一体なんで急に…!…って、今は考えている場合じゃないわね…!
「プルルート、わたしが先行するわ!貴女は避難誘導と出来ればもう少し詳しい話を聞いて頂戴!」
「……っ…!あ、あたしが…避難の誘導を…?」
「ここはプラネテューヌよ、わたしより貴女の方が…女神アイリスハートの方が、皆も指示に従ってくれるわ。違う?」
「……そう、だよね…あたしが、やらなきゃ…っ!」
躊躇うプルルートの気持ちは分かる。でも、危機や混乱に陥っている人がいる中で、躊躇うなんて言語道断。そういう意図も込めて声をかけると、プルルートは一瞬目を伏せた後こくりと頷きその場で女神化。飛んでいくプルルートにほっとした後、わたしも路地へ走り出す。
「皆!わたしのいる場所の近くでモンスターが現れたらしいわ!プルルートは避難誘導に行ってる!デートは一旦中止よッ!」
「……!急にモンスターなんて単語が出たと思ったら…私達は距離があってすぐには行けないわ!ネプテューヌ!ネプギア!ピーシェ!」
「分かってる!ピー子、わたし達も避難誘導するよ!ネプギアはセイツの方に行って!」
『うんっ!』
簡潔に状況を伝えて、わたしは両腰に二振りの得物を顕現させつつ路地に突進。まだ事態の全容は分からないけど、一先ずわたしの目的はモンスターの対応と、逃げ遅れた人がいるならその救助。
形としては、デートに水を差されたようなもの。でもわたしはそれを不満に思ってはいないし、そもそももうデートの事は頭にない。今わたしの頭にあるのも、考えなくちゃいけないのも……ここにいる人達の命と安全を守る事、それだけよ…ッ!
今回のパロディ解説
・「〜〜誤差無し〜〜」
BG〜身辺警護人〜における、代名詞的なフレーズの一つのパロディ。実際ネプテューヌ達は護衛任務っぽい事してますよね。やっているのはデートのサポートな訳ですが。
・「〜〜選択肢が三つ出てきて、それを皆で選ぶ〜〜」、「あのシステム〜〜」
デート・ア・ライブにおける、精霊攻略(デート)時の展開及び選択肢を選出するAIの事。そこまでしてしまうと、最早超本格的なラタトスクごっこになってしまいますね。