超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第六十話 貴女に賭ける

 勘、直感…自分の感覚を頼りに、迷う事なくそれを信じてネプギアの見たというマジェコンヌを探す、信次元のマジェコンヌ。単独で、自分の力だけで、ここまでマジェコンヌを追ってきた。

 けれどそれは、他者への不信から来る行動じゃない。寧ろわたし達を…ネプテューヌやネプギアを信頼しているからこそ、わたし達が他の事へ力を入れられるよう、捜索を一手に引き受けてくれていた。

 えぇ勿論、わたしはまだ彼女の人となりを深く理解出来る程の間柄になっていないわ。でも…お互いまだ表面的な部分しか知らなくても、感じるのよ。二人を信じる、彼女の気持ちが。

 

「ふ〜…お待たせ皆ー」

「お待たせしました」

 

 ほっこりした顔で、ネプテューヌとネプギアが部屋に入ってくる。二人が行っていたのは、ここプラネテューヌ教会の浴場。流石にお風呂上がりだと、二人の髪も跳ねてないわね。

 

「あぁ、では早速…」

「え、もう?というかマジェコンヌはお風呂いいの?」

「私は後で構わない。それより君達が眠くなってしまう前に、明日の事を決めておきたいからな」

「君達?ネプギアやピー子は分かるけど…わたしまで?」

「いや、この中じゃ一番先に寝そうなのはねぷてぬだから…」

 

 すっとぼけるネプテューヌに対し、ピーシェが半眼で見ながら突っ込み。それにわたしとネプギアは苦笑いし、マジェコンヌも僅かにだけど口元を緩める。…彼女、真面目な顔のままさらりと冗談言ったり誰かを弄ったりするのよね。

 

「こほん、では改めて…まずは改めて、私達がこれまでに訪れ、猛争モンスターの形跡があった場所を上げていく」

 

 そう言ってマジェコンヌは立ち上がり、用意しておいたホワイトボードの前へ。そこでマグネットを手に取り、ボードに貼られた地図の上へと次々置いていく。

 

「…こうして見ると、ほんと神次元中を回ったわね…」

「あぁ。君達が運んでくれなければ、こんなに多くは探せなかっただろう」

「わたし達だって、マジェコンヌがいなきゃ闇雲に探すしかなかったからね。持ちつ持たれつだよ、運んだだけに!」

「ふふ、そうだな。さて、次に私ではなく、こちらの私でもない私らしき姿を見たという場所だが……」

 

 続いてマジェコンヌは違う色のマグネットを持ち、それもボード上の地図へ載せていく。

 更に数個のマグネットを置いた後、マジェコンヌはペンで書いた時間を軽く記載。この日付けと時間はもう一人のマジェコンヌ…わたし達のよく知るマジェコンヌにその時どこにいたかを確認したから、そのマジェコンヌと見間違えたって事はないと思う……って、同じ名前の人が三人もいるとややこしいわね…。

 

「…マジェコンヌさんの姿を見たって時間と、専門家の方に分析してもらったその近くの痕跡が作られた時間は、かなり近いものもありますし…やっぱり、彼女が猛争モンスターを放っているんでしょうか……」

「こうなると、元凶でなかったとしても何かしらの関連はあるでしょうね。偶然も三度続けば必然…なんて言うけど、これはもう三度どころの騒ぎじゃないし」

「それも気になるけど…本題は、ここからだよね?」

 

 ホワイトボードからマジェコンヌへと視線を移したピーシェの言葉に、マジェコンヌは首肯。

 そう、ここまでのはただの確認で、得た情報を地図に表示したってだけの事。考えなきゃいけないのは、これを踏まえた上での部分。

 

「…始めに言っておこう。恐らくこれに、法則性は…ルールや明確な手順と呼べるようなものは、存在しない」

「不規則に見せかけている…とかじゃなくて、ですか…?」

「そうだ。と言っても、私の勘に過ぎないがな」

「勘かぁ…でもそもそも捜索自体をマジェコンヌの勘で進めてきたようなものだし、今更気にする事はないんじゃないかな?」

 

 頬に指を当てて言葉を返すネプテューヌに、今度はわたし達がうんうんと首肯。勘であろうと何だろうと、猛争モンスターの形跡っていう成果にこれまで繋げてきたんだもの。だったら勘だとしても、一定の信頼は置けるってものよ。

 

「けど、法則性がないのは厄介だよね…次の場所を探すより、何を目的に動いているかを考えた方がいいのかな……」

「そんな事はないぞ、ピーシェよ。方法ならある」

『え?』

「なに、簡単な事さ。法則性がないのであれば、場所を決めているのは恐らく直感。つまり……」

「…貴女がこの分布図を元に、『自分なら次はどこにするか』を予測…いいえ想像すれば、推測は立てられる…って事ね」

 

 右手の人差し指をぴっと立て、引き継ぐ形でわたしが結論を口にすると、マジェコンヌは我が意を得たりとばかりに首肯。

 法則があるなら、それを見破らないと次の場所の推測は出来ない。でもそうじゃないなら、感覚で決めているのなら、これまでと同じ要領で次の場所を割り出す事は不可能じゃない。その為の『これまで』という情報は、今日まででしっかりと集める事が出来たんだから。

 

「無論、これは私の勘を皆が信じてくれるのならだが……」

「だったら問題ないね!ささっ、想像しちゃってちょーだい!」

 

 にぱっと笑って迷いのない信頼を示すネプテューヌ。その笑顔にマジェコンヌも小さな笑みを返し、それから真面目な顔になってホワイトボードへ向き直る。

 

「…………」

「…そういえば、ロムちゃんラムちゃんと推理した時もこんな感じでやったなぁ…」

「へぇ、そんな事が…。…今更だけどさ、不規則は不規則でも、ダーツ投げて場所決めてるとかだったら……」

「流石にそれはないでしょう…多分……」

 

 ないとは思うけど、そうだったらお手上げね…と、ピーシェに突っ込みつつも一抹の不安に駆られたわたしは、気持ちを切り替えるつもりで視線をマジェコンヌへ。

 無言で、じっとホワイトボードを見つめている彼女は後ろ姿だけでも分かる程綺麗で、本当にあのマジェコンヌと同一人物なのが今でも時々気になってしまう。…まぁ、こっちのマジェコンヌはこっちのマジェコンヌで魅力的なんだけど。穏やかで純粋な悪ならぬ激しくも純粋な悪というか、方向性は悪でもその芯となる意志はわたし達女神にも引けを取らないだけの強さと輝きがあるというか……あぁぁやっぱり今ここにいる彼女の心ももっと知りたいわ…!

 

「…せーつ、またなんか変態的な事考えてない?」

「なぁ……ッ!?な、何故それを…じゃなくて、してないわよそんな事!そもそもこれを変態的と言うのなら、他者への評価全般がそうなるんだけど!?」

「…ぴぃ、具体的な指摘まではしてないんだけど……」

「うぇっ!?」

「わーぉ、まさか思考に耽ると心のガードが甘くなるのまでイリゼと似てるんだ……」

「あ、あはははは…確かにそんな感じはあるかも……」

 

 テンパって言わなくてもいい事まで言ってしまったわたしは、二重に恥ずかしくなって赤面。ネプテューヌとネプギアにも苦笑され、恥ずかしくって仕方がない。うぅぅ、今のは絶対変態的じゃないのにぃぃ…!…って……

 

「…あ…もしや、マジェコンヌ……」

「ああ。私が次の場所を選ぶとしたら…この三ヶ所の内、どれかだな」

 

 気付けばいつのまにか、ペンで地図へと書き加えられた三つの円。今度はマジェコンヌがわたしから続く形で、その円の意味を…自身の推測を、口にした。

 

「三ヶ所…じゃあ、そこに張り込めば…!」

「待ってねぷてぬ。三ヶ所って言っても、正確な場所まで分かる訳じゃないんでしょ?」

「その通りだ。この分布図から推測出来るのはあくまで地域。それ以上はどうにもならない…というより、そもそもこの三ヶ所の地形やそこにある施設の事を私は知らないからな…」

「あ…そっか……」

 

 申し訳なさそうにマジェコンヌが首を横へ振った事で、ネプテューヌは落胆。けれど、地域レベルでも推測出来たのは大きい事。ある程度でも場所が分かっているなら、黄金の塔の時同様多くの人に協力してもらって……そんな対応をわたしが考えていたその時、静かにネプギアが声を上げる。

 

「…ううん、大丈夫だよお姉ちゃん。何とかなると思います、皆さん」

『…(ネプギア・ねぷぎあ)、どういう事(だ)?』

「今日の昼過ぎに、アノネデスさんから連絡があったんです。式典で使うカメラの出来る限りの調整が済んだから、約束通り使っていいって」

『約束…?』

「あぁ、そう言えばそれがあったね!」

 

 自信ありげにネプギアが口にしたのは、ある人物の名前とわたしも聞いている機材の事。最初の説明だけじゃネプテューヌ以外イマイチ意味が分からなかったけど、続けてネプギアは話してくれた。その機材の確認と見学の為に工場へと行った際、そういう約束をしたんだと。

 

「そっか…確かにそのカメラなら違和感を持たれず数を確保出来るものね…確実とまでは言えないけど、それを使えば……」

「うん…可能性は、十分あるよ…!でも、凄いねネプギア…ぴぃが電話してる間に、そんな約束を取り付けるなんて……」

「そんな事ないですよ、これはアノネデスさんから持ちかけてくれた話ですし。…アノネデスさんって、ちょっと掴み所のない感じはありますけど、気の良い人ですよね」

「…あのねですが……」

「気の良い…?」

 

 そう言って穏やかな笑みを浮かべるネプギア。けれどわたしとピーシェは顔を見合わせ、もう一度ネプギアの顔を見やる。…気の良い人って…な、何か騙されてないかしらネプギア…確かに彼…女の掴み所のない、けれど決して嘘じゃない感情の豊かさにはドキドキさせられるものがあるけど…もしかして信次元のネプギアは、わたし達が思ってるよりずっと駆け引きが得意なのかしら…。

 

「……?とにかく、これをフル活用するのはどうでしょう?」

「あ、うん…そうね。流石に前日まで使う訳にはいかないけど…明日一日、使ってみるだけの価値はあると思うわ」

「私も同感だ。何せ相手が私な以上、打てる手は出来る限り打っておきたい」

「じゃあ、決定だね!ピー子もいいでしょ?」

「え?…う、うんまぁ否定する理由はないからね」

 

 何故か先に決定を出されて困惑しつつもピーシェが賛成の意思を示し、全会一致で使う事が決定。続けて機材、それにわたし達自身の配置も決めて、明日の行動を明確にする。

 授与式当日まで、今日入れて後四日。当日前日は勿論、二日前もマジェコンヌ捜索で一日費やす訳にはいかないし、今日も既に夜となっているから、丸一日使えるのは明日だけ。それに、明日マジェコンヌが行動を起こす確証はないから、骨折り損になる可能性も低くない。

 けど、もし上手くいったら?見つける事が出来て、もしも無力化出来たら?或いは、全部勘違いでマジェコンヌは悪人ではなかったのなら?…それを考えたら、確実性がないなんて……やらない理由にはならないわよね。

 

 

 

 

「うぅー…もうあんぱんも牛乳も無くなっちゃった…ピー子、お駄賃上げるから買ってきてー」

「はぁ…そう言うと思って、ねぷてぬの左ポケットに空腹なんて一発で解決出来ちゃう物を入れておいたよ?」

「え?ほんと!?やたっ、ピー子ってば気が効く……って、ぎゃああああああッ!?」

「えぇぇぇぇ!?お、お姉ちゃん!?何があったの!?」

「あぁ、気にしなくていいよねぷぎあ。ねぷてぬ、ぴぃが入れた茄子の匂い付きシールに絶叫してるだけだと思うから」

「え、えぇー……」

 

 インカム越しに聞こえてくる、ネプテューヌの絶叫とネプギアの呆気に取られた感じの声。加えてピーシェのしてやったりとばかりの表情も思い浮かび…隣のマジェコンヌと、呆れ顔で肩を竦め合う。

 

「…うぅ…酷い、酷いよピー子…確かに茄子のシールなんて見たら食欲は無くなるけど…これじゃポケットまで茄子の匂いになっちゃうよぉ……」

「あーはいはい、ごめんねねぷてぬ。右ポケットにはキャラメル入れておいたから、それで許して」

「へ…?…あ、ほんとだ……ぁむ……」

(あ、食べるのね……)

 

 気落ちさせた後の機嫌取り用か、それとも単に悪戯だけ仕掛けておくのは悪いと思ったのかは分からないけど、ピーシェが逆のポケットに入れておいたキャラメルを即食べるネプテューヌ。…茄子シールの方はどうするのかしら……。

 

「…にしても、現れないね。まじぇこんぬも、猛争モンスターも…」

「ですね…あ、また少し暗くなってきましたし、一度ISO感度を変えて見ます。逆に見辛くなっちゃった場合は言って下さいね」

 

 ネプギアの声が聞こえた十数秒後、手元の端末に映し出されている映像が少し明るくなる。

 時刻は夕方。今日は予定通り、早朝から三つのポイントにそれぞれピーシェ、ネプテューヌ、ネプギアが向かって、今も各々の五感とネプギアが操作するカメラでマジェコンヌを待ち構えている真っ最中。

 もちろん、わたしとマジェコンヌものんびりしている訳じゃない。わたし達はマジェコンヌが発見されたら即座に急行出来るよう、三点を結んだ範囲の内側で待機している。マジェコンヌがこの役になったのは移動能力(飛べないマジェコンヌは一人だと急行出来ない)が理由で、わたしは信次元の二人と違って三点全ての場所をある程度理解している事と、女神化した際の精神年齢が理由。

 

「…やはり、私の見立てが甘かったか…?」

「まだ張り込み一日目なんだし、気にする事はないわ。それに、感覚で選ぶ以上甘いも何もないんじゃない?」

「まぁ、それはそうなのだがな…」

「でしょう?それより、また少し休憩したらどう?貴女はわたし達と違って人間なんだから」

「いや、大丈夫さ。それに私は……」

「…マジェコンヌ?」

「…いいや、私は人だな。もはや限りなく人ならざる存在に近付いてはいるが、それでも私は人だ。少なくとも、私はそう思っている。…人としての私を、彼女達が取り戻してくれたのだから」

 

 人間。その言葉に思うところがあったのか、ふと物憂げな表情を浮かべたマジェコンヌ。それからマジェコンヌは一人呟いて…それからわたしに、「すまない。妙な話をしてしまったな」と言った。

 わたしは、彼女も嘗てはネプテューヌ達の敵で、けれどそのネプテューヌ達に救われて今があるという事しか知らない。彼女の言葉の意味を、全ては理解出来ない。でも……あぁやっぱり、わたしは知りたいわ。貴女の事を、もっともっと。

 

「きっとこの三ヶ所のどこかに現れるわよ。少なくともわたし達はそれに賭けるって決めたんだから、提案者が自信を持ってくれなきゃわたし達も困っちゃうわ」

「…ふっ、確かにそうだな。しかし、徹頭徹尾私の勘である判断に賭けるとは、君達も酔狂なものだ」

「ふふっ、それは褒め言葉として受け取っておくわね」

 

 落ち込んでいる様子はない。だから軽い調子で言葉を返すと、マジェコンヌはにやりと笑った。

 そうして、更に経つ事一時間強。未だに件のマジェコンヌは現れない。

 

「…ぷるるとも、まだ仕事してるのかな…」

「かもしれないわね。多少なりともブランクがある分苦労してるみたいだし」

 

 かれこれ半日以上場所を動かず張り込んでいる訳だから、流石にもう殆どのやり取りは雑談になる。…まぁ、ピーシェとネプテューヌ間のやり取りは、割と早い段階から雑談だったり相手をからかったりするものだったけども。

 

(…こうなると、切り上げるタイミングの事も考えなきゃいけないわね…体力は何とかなっても集中力の損耗は無視出来ないし、うっかり見逃しちゃったら今日一日の張り込みが水の泡……)

 

 映像からは目を離さずに、ここからの事を考えるわたし。どこぞの夜は眠らないと細胞が崩壊してしまう種族じゃあるまいし、深夜帯に行動を起こす可能性もある以上、「もう夜だし終わりにしましょ」なんて事は言えない。でも休まなきゃ心的疲労は積み重なる訳で……やっぱりそろそろ、頼んでおいた人達に交代してもらうべきかしら…。

 

「……あれ?」

「…お姉ちゃん、何か見付けたの?」

「…あっ…ごめん皆、ツチノコ的な何かだった……」

「なんだ…もう、ちゃんとしてよねねぷてぬ。……って…」

『ツチノコ……!?』

 

 さらりと出てきたとんでもない発言に、思わずピーシェは(というかわたし達皆)二度見ならぬ二度訊き。「いや違う違う、それっぽい何かが見えただけだから!変な期待持たせちゃったならごめんね!」…という補足(?)で想定外過ぎる大発見ではなかった事が分かり、なぁんだという雰囲気になったんだけど…意図せずとも場をこれだけ引っ掻き回せる辺り、ほんとネプテューヌって凄いわね…。

 

「はは…ほんとごめん……」

「まあ、気にする事はないさ。誰にでも間違いはある。それに今のは良い眠気覚ましにもなった」

「そう?…って、眠気覚まし…?…そういえば、さっきからマジェコンヌが全く喋ってなかったのって……」

「…さて、何の事やら……」

 

 フォローの中に混じった気になる発言を聞き逃さなかったネプテューヌが予想を巡らせると、マジェコンヌは曖昧な笑みを浮かべて返答。そのあからさま…ではないけどはぐらかすような言い方に、わたしはちょっと笑いそうになって……

 

「……ん?…あ、ああぁッ!?」

「ちょっ…ねぷてぬ、今度は何…?」

「い、いた!いたよマジェコンヌ!え、えっとえっと…じゅ、18番!皆、18番のカメラ見て!」

『……っ!』

 

 その瞬間、ネプテューヌが上げた並々ならぬ声。今し方見間違いをしたばかりのネプテューヌだから、最初は「またか…」という思いが強かったけど、今度はマジェコンヌがいたと明言。更にカメラの番号まで口にしたという事で、わたし達もそのカメラの映像へと目を走らせる。

 それと同時に、ネプギアが18番カメラを半自動モードから手動に移行。画面端に映る人影を中央に捉え、拡大し……わたし達は、確信する。ネプテューヌの見つけたその人影は…間違いなく、マジェコンヌであると。

 

「やっぱり貴女の勘を信じて正解だったわね!どこかに行く前に捕まえるわ…ッ!」

「えぇ!行くわよマジェコンヌ!」

 

 聞こえてくるネプテューヌの声が女神化時のものに変わり、続いて聞こえる風切り音。わたしも即座に女神化をし、隣のマジェコンヌを抱き抱える。

 

「多少荒くても構わない、フルスピードで頼む…!」

「分かったわ、ならしっかり掴まってて頂戴…!」

 

 しっかりと抱え、マジェコンヌがわたしの首に腕を回すのを確認したところで、わたしは地を蹴り一気に飛翔。翼を広げ、どんどん加速しながらマジェコンヌが現れたポイントへと突進。

 

「……マジェコンヌ。一応訊くけど、もし戦闘になった場合……」

「容赦無く戦ってくれ。たとえ別次元の自分であったとしても…いや、自分であるならばこそ、悪事を働こうとしているのならそれは許せない」

「了解。皆も聞こえたわね?」

「えぇ、会敵するわ……ッ!」

 

 迷いのない回答を得られた数秒後、ネプテューヌがマジェコンヌへ接触。それから約数分、会話しているような声が聞こえてきて……それを締め括ったのは、地面を砕く電撃の音。…という事は、悪人じゃなかったって線は消えたのね…。

 

(こっちの戦力は五人。わたし含めて女神が四人もいるから、勝ち目はあると思うけど……)

 

 実のところ、わたしはマジェコンヌと直接矛を交えた事は殆どない。でも皆程じゃないにしてもその実力は理解してるつもりだし、もうプルルート達にも連絡を入れておいた。だから最悪時間を稼げば女神八人で戦う事も出来るし、流石にそれなら勝てると思うけども、油断は出来ない。

 そう思いながら、一直線に飛び続けるわたし。かなりの距離を進んだところで、交戦中のネプテューヌが声を上げる。

 

「くっ…猛争モンスターまでは抑えきれないわ…!街の方へ行ったから、誰かそっちに向かって頂戴…!」

「街の方…?なら、ピーシェお願いッ!貴女が一番近い筈よ!」

「うんっ!ぴぃにまかせてッ!」

 

 今の言葉で、マジェコンヌが猛争モンスターを使役していたという線がほぼ確定。これをありがたいと見るか厄介と見るかは…今考える事じゃないわね……!

 

「……ッ!見えた…!」

 

 更にわたしは飛び続け、遂に見える戦闘の光。ネプテューヌが煌めかせる紫の光に、マジェコンヌが放つ電撃に、その光を反射する猛争モンスターのぎらついた眼。十を超えるモンスターとの集中攻撃でネプテューヌは攻めあぐねているみたいだけど…怪我は、ないみたいね…。

 

「…セイツよ。一つ頼めるか?」

「…何かしら?」

「私を、奴の頭上に落としてほしい」

 

 どう仕掛けるか。戦況からそれを考えようとしたところで、マジェコンヌが口にした要望。

 降ろしてほしいではなく、落としてほしい。高速で飛ぶ中でのその要望に、一瞬わたしは訳が分からず…でもすぐに狙いを理解して、ふっと口元に笑みを浮かべる。

 

「…貴女、冷静なのに結構大胆なのね」

「冷静と大胆は、何も両立出来ない事ではないだろう?」

「確かに、ね。いいわ、だったら最高速度で落としてあげる…!」

 

 抱えたマジェコンヌと頷き合い、わたしは下降を始める事で尚も加速。一旦猛争モンスターの事は無視して、眼下のマジェコンヌだけを見据え……ここだと直感が叫んだ瞬間、押し出すようにしてマジェコンヌを落とす。

 

「……ッ!はぁぁぁぁああああッ!」

「……ッ!?な……ッ!?」

 

 投下された弾頭の如く、狙い通りに落ちていくマジェコンヌ。そして衝突の寸前、マジェコンヌは手にした杖に魔力の刃を展開し…驚愕に目を見開く敵のマジェコンヌと、激突する。

 火花を散らす、二人のマジェコンヌが手にした得物。落下の力を加算したマジェコンヌと、両脚で踏ん張るマジェコンヌはぶつかり合い…数秒後、こちらのマジェコンヌは鋭く飛び退く。

 

「…やはり、どこからどう見ても嘗ての私だな……」

「……誰だ、貴様は…」

「誰、か…それは、訊くまでもない事だろう?」

「……っ…まさか…いや、だがそんな筈…そんな、馬鹿な事が…ッ!」

 

 ネプテューヌの近くへと着地し構え直すこちらのマジェコンヌに対し、敵のマジェコンヌはあり得ないものを見るかのような表情を浮かべる。

 そこまでを確認したわたしは、こちらを見上げたネプテューヌとアイコンタクト。その一瞬でわたし達は意思疎通を交わし…わたしも両手に得物を構える。

 

「さぁて…こっちは貴方達の指揮者を取り逃す訳にはいかないの。だから…邪魔は、させないわよッ!」

 

 旋回し、二人と敵のマジェコンヌに最も近い位置にいる一体へと狙いを定め、わたしは再び急降下。迎撃行動を取るよりも早く二振りの刃で一気に斬り裂き、他のモンスターを威圧するが如く両腕を開く。

 

(ここでケリを付けられれば式典当日の安心感がぐっと増す。皆の為にも…確実に、勝つッ!)

 

 こちらを向いて唸りを上げるモンスターに、背後で響く戦いの音色。その両方の音を感じながら、わたしは得物を握り直し…猛争モンスターの掃討を開始した。




今回のパロディ解説

・「〜〜ダーツ投げて場所決める〜〜」
1億人の大質問!?笑ってコラえて!の代名詞的な企画の一つ、ダーツの旅の事。次に向かう場所をダーツで決めるマジェコンヌ…それだと強敵感なくなりますね……。

・ 「〜〜少なくとも、私はそう思っている。〜〜」
デート・ア・ライブの主人公、五河士道及び妹の五河琴里の台詞の一つのパロディ。厳密に言うと、琴里が言った言葉を期せずして士道も言った訳ですね。

・どこぞの夜は眠らないと細胞が崩壊してしまう種族
グレンラガンシリーズに登場する、大半の獣人の事。一部例外もいるので、大半の獣人です。…健康的な制約ですね。健康というか命に直結してる訳ですが。
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