超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第六十四話 心と心を隔てる扉

 偽者全員を一点に集め、プルルートさんの蛇腹剣で捕縛した後、一斉攻撃で残りの偽者を一網打尽にする。その為にわたし達は動いて、偽者達を集めていった。

 その中で、包囲がまだ甘かった時点で抜け出したのは、二人残っていた偽者のお姉ちゃんの一人。一番近かったわたしが対応に動くと、お姉ちゃんから指示されたのは、その偽者を引き付けていてほしいというもの。理由は多分、無理にもう一度包囲の中へ入れようとして包囲網が歪むよりも、他の偽者をそのまま倒した後、最後に残ったお姉ちゃんの偽者を倒す方が安全だし確実だから。

 だからわたしは今、お姉ちゃんの偽者と空中で斬り結んている。

 

(…本当に、顔を体格もお姉ちゃんと同じ…似てるなんてレベルじゃない……)

 

 鎬を削る刃越しに見る、お姉ちゃんの顔。それは全くもって本物のお姉ちゃんと同じで、お姉ちゃんなら何となく分かるけど、ピーシェさん達の場合は本当に真偽の判別が付かない。偽者が普通に喋って、皆さんに教えられる事もなかったら、きっとわたしは別次元のわたし達なんじゃないかと思っていた。…でも……

 

「…そんなに甘くないよ、お姉ちゃんは……ッ!」

「……!」

 

 左手を添えたM.P.B.Lで偽者を押し切り、その勢いのままわたしは刺突。それは大太刀の腹でギリギリ晒されるけど、そのままわたしは左ストレート。それも避けられたところでわたしは身体を捻って右脚を振り放ち、偽者の左肘へと蹴りをぶつける。

 お姉ちゃんなら、本物のお姉ちゃんならこうはいかない。一切遠隔攻撃を交えない接近戦でわたしが先に一撃入れられる訳がないし、仮に入ったとしてもそれは陽動。間違いなくそれより重い一撃をすぐに返されている筈で…だけど偽者からは、そんな反撃が飛んでこない。

 ここまで戦ってきて、偽者の戦闘能力は全員殆ど変わらないって事が分かった。だから偽者のわたし自身だけじゃなく、お姉ちゃんでも他の皆さんでも互角以上にわたしは立ち回れているんだけど…それが少し、残念だった。偽者とはいえ、外見はお姉ちゃん達なんだから。

 

(お姉ちゃんは、引き付けていてくれればいいって言ってたけど……)

 

 横からの打撃を受けてふらつく偽者のお姉ちゃんへ、近距離から射撃。下がるお姉ちゃんを追って、わたしは真っ直ぐに突進する。

 正直言って、わたしは一人で倒したいと思ってる。もし偽者がもっと強いなら、或いはわたしがお姉ちゃんの部下なら別だけど…わたしも女神だから。言われた事だけで満足するようじゃ国の長になんてなれないし、出来るかどうかとを自分で決めて、責任持って実行するのも女神には必要な事だと思うから。…昔だったら、きっとこんな事考えもしなかったよね…。

 

「……ッ!やぁああぁぁッ!」

 

 引きながらわたしの首元へと放たれた横薙ぎを紙一重で避け、そこからわたしは空中でタックル。左腕で偽お姉ちゃんの胴をがっちりと掴んで、抵抗されるよりも早く一気にわたしは急降下。反撃の一太刀は何とかM.P.B.Lを背中側に回す事で防いで、続く柄尻での打撃は振り下ろされる直前に偽お姉ちゃんから離れる事で避けて、更にその流れの中でお姉ちゃんを突き飛ばす。

 会場の一角へと落下したお姉ちゃん。ダメージは軽微だと思うけど、落下によって生まれたのは十分な隙。そしてわたしは勝負を決めるべく、その無防備な胴へと狙いを定めて……次の瞬間、女神化が解ける。

 

(な……ッ!?活動、限界…ッ!?)

 

 プロセッサと共に、消滅するM.P.B.L。飛行能力を失ったわたしは、そのまま真下に落下する。

 忘れていた訳じゃない。けれど戦闘開始前からずっと女神化していて、戦闘中も出し惜しみ出来ない状態が続いて、数の不利と唯一の火器持ちという事で射撃の頻度がかなり多くなっていたから……この瞬間、後一歩というところで、遂にシェアエナジーが足りなくなった。別次元なせいで少なくなっている供給が、完全に間に合わなくなってしまった。……っ…不味い…!

 

「……っ…!」

「くっ……けど…それ、でも…ッ!」

 

 偽お姉ちゃんの上に落ちた事で怪我はせずに済んだけど(…柔らかさも同じなんだ…)、立ち上がろうとしたわたしの両手首は、偽お姉ちゃんによって掴まれる。

 本物には劣ると言っても、こっちの姿じゃ流石に偽者の方が上。しかも密着状態から両手首を一度に掴まれてしまったせいで、振り解く事も困難。

 少しずつ押し返しされ、上がっていく偽お姉ちゃんの状態。突き飛ばされる、或いは上下の逆転をされてしまえば、完全に逆転されてしまう。…だけど、このままやられるつもりはない。ううん、このまま云々じゃなくて…そもそもわたしはやられるつもりなんてない。だからわたしは、ギリギリまで引き付け……偽お姉ちゃんが一気に起き上がろうとした瞬間、思い切りヘッドバットを叩き込む。

 

「……っ、ぅ…!後は、これで……ッ!」

 

 頭に響く痛みと引き換えに、緩む拘束。歯を食い縛って気力を保ったわたしは偽お姉ちゃんの腹部を両足で踏み付けながら跳び上がり、流れるように後方宙返り。その頂点、上下逆になったところでビームソードを抜剣し……再び真下へ落ちると同時に、ビームソードを突き立てる。

 

「…………」

 

 片膝を突いての着地と、眉間へ刃を突き立てたのはほぼ同時。胴への衝撃で動きの止まっていた偽お姉ちゃんは目を見開き…消滅。

 危なかった。不測の事態だったとはいえ、さっきのは不幸な事故なんかじゃなくて、普段の調子で戦っちゃいけないのを忘れていたわたしのミス。それを肝に命じておこうと、わたしはゆっくり深呼吸をして……その数秒後、お姉ちゃんの声が聞こえてくる。

 

「お…お疲れ様、ネプギア……」

「あ、お姉ちゃん。そっちは…ってそっか、お姉ちゃんがこっちに来てるって事は……」

「え、えぇ…こっちも偽者の一掃は済んだわ…」

 

 くるりと立ち上がりながら振り返ると、降り立ったお姉ちゃんは何やら凄くぎこちない顔。……?

 

「……ネプギア、その…な、何か不満があったら、溜め込まずにいつでも言うのよ…?」

「う、うん…そうしてるつもりだけど……って、あ!まさか今の見てたの!?違うよ!?これは偽者だからやっただけであって、お姉ちゃんの眉間には刺さないよ!?」

 

 ぎこちない、というか軽く怯えてる様子のお姉ちゃんが不思議だったわたしだけど、その理由に気付いて慌てて弁解。た、確かに形的にはかなり容赦のない倒し方ではあったと思うけど…体裁を気にしていられる状況じゃなかっただけだからね…!?

 

「でも、ビームの剣で顔を一突きって…そういえばわたし、ネプギアからすれば前作主人公……」

「いやその場合頭を刺すのはお姉ちゃんの方で、わたしは対艦刀を使って胴体を貫く事になっちゃうよ!?ど、どっちにしろ違うからね!?」

「あ、そ、そうよね…うん、そう信じるわ……」

「本当だからね…!?…って、あれ…?皆さんは、どこに……?」

 

 まだちょっと不安げなお姉ちゃんに焦ったわたしは、話を切り替えようとして…皆さんがいなくなっている事に気付く。そして、疑問そのままにお姉ちゃんへと聞いた瞬間…お姉ちゃんの、表情が曇る。

 

「…お姉ちゃん?」

「…ノワール達は、状況把握と各種対応でしょうね。ぷるるんは……教会、だと思うわ…」

 

 状況把握と対応。考えてみればそれは当然の事で、プルルートさんが教会に戻ったっていうのも分かる。だって、教会ならまだ混乱しているここよりずっと整理された情報が来ているだろうし。

 でも、そうじゃないっていう事はすぐに分かった。そういう事じゃないって、お姉ちゃんの顔が言っていた。

 そして、一拍置いた後…お姉ちゃんは、言った。偽者を掃討する間際、一体何があったのかを。

 

 

 

 

 空に空いた穴からの攻撃も、わたし達の偽者や猛争モンスターの襲来も、一先ずは止んだ。マジェコンヌもコピリーエースが仲裁に入ってくれたり、今や有名人なせいでどうしても人目を集めてしまう形となった神次元のマジェコンヌが調子を狂わせている間に、何とか身を潜める事が出来たっていう連絡があった。

 民間人の死者、重傷者を出す事なく乗り切れたという意味では、完全勝利と言っても過言じゃない程の成果。でも…わたし達の、空気は重い。

 

「あぁ、うん…うん…そうね、本当に万が一ではあるけど、出来るならそうしておいて頂戴。それとラステイションの女神として、仮にも民間事業である貴方達の協力に謝辞を送るわ」

 

 電話をしながら来たのはノワール。話してる相手は…多分、内容からしてセブンスジーニア。

 

「ノワール、今のって……」

「えぇ、そうよ。例のカメラが避難誘導を手伝うような挙動をしてたって聞いたから、もしやとは思ったけど…まさかあいつまで協力してくれたとはね……」

「そりゃ、アーさん達が奔走してるって時にアタシだけ仲間外れなんて寂しいじゃない。それとノワールちゃんの謝罪は、ばっちり聞かせてもらったわよ」

「んなぁ!?な、なんで貴方に繋がってるのよ!?まさか、ハッキング……!?」

「いや、アーさん同じ部屋にいたから聞こえただけよ?繋がってるのに至っては、ノワールちゃんが切り忘れてただけだし」

「え?…あ……」

 

 ベールからの言葉にノワールが返していると、手に持ったままの端末からは聞いた事のある…っていうか、アノネデスの声が。

 ハッキングでも何でもなく、単にノワールのミスだったなんて、普段なら絶好の弄りチャンス。けど、今はそういう空気じゃないし、わたしもふざけようって気にはなれない。

 

「…こ、こほん。それで、プルルートは……」

 

 通話を切ったノワールの問いに、わたし達は首を横に振る。それを受けたノワールは、「そう…」と呟く。

 今、わたし達がいるのは廊下。ぷるるんがいる部屋の…閉じられた扉の前。耳を澄ませば、聞こえてくる。ぷるるんの、すすり泣く声が。

 

「…折角、上手くいってたのに…ぷるるとも、前向きになってくれてたのに……」

「…やっぱり、あの策がいけなかったんでしょうか…」

「原因の一つではあるわね。けど、武器の特性を利用した策が駄目ならプルルートはまともに戦う事も出来ないし…そもそも、今それを言っても仕方ないわ…」

「…プルルート、私よ。聞こえてるかしら?」

 

 沈んだ表情で拳を握るブランにネプギアとピー子が俯く中、ノワールは扉の前に立ってぷるるんへと語りかける。

 ピー子も、ブランも、そうやってぷるるんに話しかけたけど、結果は同じ。ぷるるんの心にはきっと届いてると思うけど、二人が…皆が伸ばす手を、ぷるるんは取ろうとしてくれなかった。

…ううん、違う。取ろうとしないんじゃなくて…怖いんだ。自分が怖いから、その自分の手で取る事が出来ないんだ。

 

「…ねぷねぷ」

「…こんぱ?それにあいちゃんも…」

「…ねぷねぷなら、ぷるちゃんを…助けて、あげられないですか…?」

 

 不意に、わたしへとかけられる声。振り返ると、それはこんぱとあいちゃんで…瞳に浮かんでいるのは、凄く凄く切なそうな心。

 

「…それは……」

「ねぷ子。あんたは人の心にずけずけ入ってくるどころか、気付いたら中でお茶飲んでるような無茶苦茶女神だけど…その分、誰かの心に寄り添う事が出来るでしょ?少なくとも私はそう思ってるし、それはコンパも同じよ。だから……」

「…うん、そうだね。わたしだってぷるるんに声をかける事は出来るし、ぷるるんがもう一度前を向けるように…今度こそ前に進めるようになってほしいと思ってる」

「だったら……」

「…でも、それでいいの?二人は、沢山の時間を積み上げてきた二人や皆じゃなくて、わたしがぷるるんを助けたとして…それで良かったって、心から思える?」

 

 二人の思いには応えたい。だって別次元だけど、こんぱとあいちゃんは大事な友達なんだから。でも…ううん。だからこそ、わたしは訊いた。それで、いいの?…って。

 友情は、絆は時間で測れるものじゃない。長いとか短いとかは関係ない。…けどやっぱり、積み重ねのある皆の方が、よりぷるるんの事を知っている筈で……もしもわたしなら、わたしが皆の立場なら、きっとこう思う。わたしは、本当の意味でぷるるんの友達にはなれてなかったのかなって。たとえぷるるん本人は、大切な友達だって思ってくれてたとしても…心の奥底で、ちっちゃな棘になって残り続けちゃうと思う。

…こんなの、わたしらしくないかもね。それでも、って目の前の事に全力を尽くすのがいつものわたしじゃないかなぁって、わたし自身も思うもん。だけど…わたしは最初に、決めたから。皆を信じて、わたしは協力するだけだって。手伝うけど、わたしがわたしが…って事はしないって。

 

「…そうね。ごめんねぷ子、そこまで考えてくれてたのね…」

「ねぷねぷは、やっぱりいつもわたし達の事を考えてくれてるんですね…」

「そりゃ、友達だし女神だからね。…でも…流石のわたしも、今は自分の選択が合ってるかどうか、ちょっと不安…かな…」

 

 これで良いような気もする。でも、こんなのわたしじゃないような気もする。けれど皆を…そしてぷるるんを信じるこの気持ちだけは絶対だって思ってるから、わたしはまた扉を見つめる。ぷるるんと色んな事を積み重ねてきた、皆を見つめる。

 

「そんな事ないわよプルルート…!貴女の強さは私が知ってる。ピーシェ達だって、皆が知ってるわ…!プルルート、貴女は弱くなんか……」

「でも、でも…あたしは、結局抑えられなかった…!今日も、前も、いつもいつも…皆が支えてくれても、それでもあたしは……っ!」

「諦めるんじゃないわよ…!貴女、前はもっと前向きっていうか、良い意味で能天気だったじゃない……!」

「……能天気になんて、なれないよ…気付いたら、自分が自分じゃなくなっちゃうのに…なのに、能天気になんて…」

「……それは…」

 

 扉越しに聞こえてくる、悲痛な声。ノワールは必死に声をかけ続けるけど、二人の間にある扉は開かない。

 言葉の一つ一つから、どれだけぷるるんが苦しんでるのかが…あの時の自分へのやるせなさが、伝わってくる。自分自身に裏切られたっていう、皆を裏切ってしまったっていう、胸の張り裂けそうな失意と後悔が。

 

(ぷるるん…違うよ、確かに応えられなかったのかもしれないけど…わたし達は誰も、裏切られたなんて思ってない。…その気持ちは、伝わってるでしょ…?)

 

 ぷるるんの感じてる「裏切ってしまった」って思いは、勘違い。でもそれは、訂正すればそれで解決するような事じゃない。こんぱとあいちゃんに言ったのと同じで、気持ちの問題だから。頭じゃなくて心だから、正しい正しくないの話をしたって意味ないし…心だから、気持ちをぶつけ続ければ、いつかは変わるかもしれない。ぷるるんが皆を思っているなら、きっと変わってくれる。…そう、思っていたのに……

 

『……っ!』

 

 その瞬間、殆ど同時に鳴り出す複数の端末。それはノワール、ベール、ブランの三人の物で、それだけでもう何が起きたのか薄々分かる。

 

「皆さん!(>_<)」

「イストワール?…って事は、やっぱり……」

「…はい。猛争モンスターの第二波です。それも恐らく、先程以上の(。-_-。)」

 

 三人が電話に出る中、飛んでくるいーすん。セイツの言葉に頷いて、いーすんが口にしたのは予想通りの…再びの襲来。

 

「ちっ…まだプルルートは立ち直ってねぇってのに…!」

「…仕方ない、わね…プルルート、無理にとは言わないわ。この件を片付けたらまたすぐ戻ってくるから、貴女はここで待っていて……」

「……いいえ。それでは駄目ですわ」

 

 猛争モンスターの、それもさっきより大規模な第二波。それは女神として無視出来る事じゃなくて、ノワールは一度拳を握り締めてから、力を抜いてぷるるんに言う。また来るから、待っててって。

 けれど、それをベールが止める。静かな声で、凄く真剣な表情で。

 

「…駄目…?…何が、駄目なのよ…」

「ここでプルルートを残していく事ですわ。無論、優先すべきは人々ですけれど…わたくし達が第二波を撃破したとしても、その時彼女がいなければ、皆思う筈ですわ。何故、アイリスハートだけがいないのだろう、と」

「それは…一理、あるわね……」

「女神は指導者であると同時に守護者。最後まで姿が見えなければ、仮に一切の被害を出さず勝利出来たとしても、プラネテューヌの人々には不安や疑念が残ってしまう…そうでしょう?」

「…じゃあ…べるべるは、ぷるるとを無理矢理連れ出せって言うの…?べるべるの言う事は、正しいと思うけど…だからって、それは……」

「えぇ、そんなのはあんまりですわ。…だから、何とかしてプルルートを勇気付けて下さいな。それまでは、何があろうとわたくしが敵を押し留めておきますわ」

 

 わたし達に、特に同じく国の長であるノワールとブランへ自分の考えを示すベール。続けてベールは、辛そうな顔をするピー子にふっと笑いかけて…言う。時間は自分が何とかするから、プルルートの事は任せたって。

 

「お、押し留めるって…ベールさん一人でですか…?(・□・;)

「流石に軍や、それこそコピリーエース達だけに任せる訳にはいかないでしょう?わたくし達は、女神なんですもの」

「……いいの?ベール…」

「あら、ブランが心配してくれるなんて珍しい…というのは置いておいて…これが今のベストですわ。わたくしの出来る、神次元の為にもプルルートの為にもベストな行いですの。だから……」

「…なら、わたしも行きます」

 

 「そうするしかないから」じゃない、「それがベストだから」という思いの選択。前向きな選択だから、ベールの言葉には落ち着きがあって…それに呼応するように、ネプギアが一歩前に出る。

 

「え…ネプギアも……?」

「うん。わたしなら、援護や支援は慣れてるし……また、わたし達の偽者が出るかもしれません。その可能性がゼロではない以上、こちらも女神複数人で動くべき…そうですよね?ベールさん」

「ネプギアちゃん……」

「…じゃあ、わたしが行っても構わないわよね?…正直この状況じゃ、わたしはプルルートに上手く言葉をかけてあげられないもの…」

 

 目を瞬かせるわたしに頷いたネプギアは、先を見据えた『対応力』の観点から、ベールに協力する事を申し出る。更に、セイツも前に出て、ベールとネプギアの隣に立つ。

 

「…悪いわね。わたしだけ、自分の都合を理由にしちゃって……」

「…いえ、ネプギアちゃんもですけれど…貴女が共に来てくれるのなら、心強いですわ」

 

 少しだけ済まなそうな顔をするセイツにベールは首を横に振って、この三人が迎撃へ向かう事に決定。わたしは…一瞬迷ったけど、ここに残る事を選ぶ。何かあっても、ネプギアが行くなら…この三人なら、何とか出来ると思うから。

 

「…ネプテューヌ、妹をお借りしますわよ」

「ちゃーんと返してよ?ネプギアはプライスレスなんだから」

「当然ですわ。ネプギアちゃんを傷付ける輩など、何人たりとも許しませんもの」

 

 出発する間際、すれ違うところでわたしとベールは言葉を交わす。…ブレないなぁ、どこの次元のベールも…まぁ、ブレないからこそ信頼出来るってものだけど。

 そうして、三人は猛争モンスターの迎撃に向かった。神次元の人達を守る為に、ぷるるんが立ち直る時間を作る為に。

 

「…ぷるると、今の聞こえてたでしょ…?べるべるは、ぷるるとを思ってるよ…?プラネテューヌの人達の事もだけど、ぷるるとの事も思ってるから、『これが終わった後』まで考えて先に行ってくれたんだよ…?そんなべるべるが、ぷるるとの事怒ってると思う…?」

「…………」

「ぷるるとも、そうだったよね…?ぴぃがちっちゃい頃、我が儘言ったり、あいえふと喧嘩したり、こんぱの注射器が怖くて逃げたら迷子になっちゃったり、色々ぷるると達を困らせる事したけど、ぷるるとはいつも許してくれたでしょ…?もう、仕方ないなぁ…って、駄目だよぉって、時には叱る事もあったけど、最後には笑ってくれたでしょ…?…怒らないよ、何回だって付き合うよ…だってぴぃは、そんなぷるるとに育ててもらったんだもん……」

「そうよ…プルルート、これまで頑張ってたじゃない…いつもはぽわぽわしてるけど、ねぷ子と同じでここぞという時は頼りになるのがプルルートでしょ…?…諦めないでよ、プルルート……」

「ぷるちゃん、わたしもっともっとお喋りしたいです。前みたいに、遊んだりもしたいです。…ぷるちゃんは、違うですか…?わたし達とは、もう一緒にいたくないんですか…?」

「……っ…違う、けど…分かってる、けど…」

 

 扉の前で、ぷるるんへと思いを届ける。ピー子、あいちゃん、こんぱの三人が…ぷるるんや超次元のわたし達に育てられた三人が、扉の向こうのぷるるんに向かって必死に手を伸ばす。

 分かる。ぷるるんが、どれだけの優しさで三人を育ててきたのかって事が。だから辛い。だから切ない。見てるだけで、聞いてるだけで、胸が苦しくなってくる。

 

「…無理なんて事ないわ。わたしだって、もう昔の…女神じゃなかった頃のわたしじゃないけど、自分を失った訳じゃない。皆が支えてくれてるから、今の自分を肯定出来てる。…大丈夫よプルルート。貴女にだって、きっとその日が来る。その為に、わたし達が協力する」

「…違う…違うよ、ブランちゃん…あたしと、ブランちゃんは……」

「分かってるわ。わたしより辛いって事は分かってる。だけどわたしがついてるわ。ピーシェ達だって、ネプテューヌ達だって…ちょっと癪だけど、ノワールだってついてる。プルルート一人じゃどうしようもなくても、わたし達なら…わたし達皆なら……」

「そう、じゃない…そうじゃ、ないよぉ……っ!」

 

 その後ろから、ブランも手を差し伸べる。強く手を伸ばすんじゃなくて、ぷるるんが伸ばしてくれればいつでもその手を握るって優しさを込めて、心を込めて。

 だけど…ううん、だからこそ…そんな皆の優しさが、思いがきっとぷるるんの心に響いたからこそ……初めてはっきりと、明確にぷるるんは否定した。そうじゃ、ないんだって。

 

「そうじゃない…?…足りないの…?わたし達だけじゃ、頼りない……?」

「違うよ…そんな事ない、皆は頼りなくなんてない…!凄く凄く優しくて、こんなあたしを支えてくれて、まだ信じてくれてて…足りない訳ないよ、十分過ぎる位にあたしは貰ってるよ……っ!」

「な、ならどうして……」

「あたしが…あたしが、嫌なの…っ!もう、無理だよ…出来る訳ないよ…あんなに協力してくれてたのに、後一歩だったのに…あそこまできて虐めたくなったあたしに、出来る訳ない……っ!」

 

 声と共に聞こえてくる、乾いた音。何かを叩いた音。やり切れない思いを、何かにぶつける音。

 ぷるるんは続ける。悲しみを、後悔を、絶望を言葉に乗せて、思いを紡ぐ。

 

「あたしはもう、皆の知ってるあたしじゃない…!皆と楽しく過ごせてたあたしはもういないの…!さっきのだって、本当は…本当は…何度も何度も思ってるの…!皆を虐めたいって、苦しむ姿を見てみたいって、何度も何度も思って…そんな自分が嫌で、必死に思わないようにして…それでも気付けばそう思っちゃってるの…!皆を虐めたくて、虐めたくて、虐めたくて虐めたくて虐めたくて虐めたくて仕方ないのっ!」

「…ぷる、るん……」

「でも…っ!だけど、だけど……っ!そんな事したら、虐めちゃったら、そんなあたしが皆と一緒にいたら…いつかは皆、あたしを怖がるようになっちゃう…っ!あの子みたいにっ、あの人達みたいにっ、あたしを怖がって…あたしの側から、離れていっちゃう…!皆が、あたしの友達じゃなくなっちゃう…!やだよ、そんなのやだよぉ…!ノワールちゃんも、ねぷちゃんも、ブランちゃんも、ベールさんも、ねぷぎあちゃんも、いーすんもぴーしぇちゃんもこんぱちゃんもあいえふちゃんもっ、皆々、大好きだから…あたしの事、嫌いになってほしくないんだよぉぉ……っ!」

 

 思いを、心を全て吐き出すぷるるん。涙声はどんどん潤んでいって、最後の一言を…嫌いになってほしくないという思いを吐露したその後は、嗚咽だけが静かに響く。哀しみだけが、溢れて零れる。

 

(……っ…!違うよ、違うよぷるるん…!そんなの違う、そんな事ない…っ!だって、だって……っ!)

 

 でも、違う。そんなのは違う。それが真実で、これから先にある未来だなんて認めない。待っているのがそんな明日なんかでたまるもんか。…そう、わたしは思った。わたしと皆の立場だとか、自分のするべき事だとか、そんなのはかなぐり捨てて、わたしも手を伸ばそうとした。扉の前に走って、わたしの思いを言葉にしようとして……

 

 

 

 

 

 

『……ふざ…っけんなぁああああああああッ!!』

 

 

 

 

──その瞬間だった。ノワールとピー子の二人が吠えるような怒号を上げて、ノワールは蹴りで、ピー子は殴打で……わたし達とぷるるんを隔てる扉を、容赦なくぶち破ったのは。




今回のパロディ解説

・(〜〜活動、限界…ッ!?)
デート・ア・ライブのヒロインの一人、鳶一折紙の台詞の一つのパロディ。台詞というか、一部のシーンのパロディですね。流石に鼻血が出たりはしていませんが。

・「いやその場合〜〜なっちゃうよ!?〜〜」
機動戦士ガンダムSEED destiny第三十四話における、シンとキラの戦いの事。原作ユーザーさんは知っていると思いますが、ネプギアの武器には実際対艦刀あるんですよね。
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