超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

99 / 234
第六十七話 在るべき姿の証明

 地上から空を裂き、胴で弾ける二つの電撃。一つは私が放ったもの。そして、もう一つは……私でない私、過去の私に酷似しながらも、全く違う経緯と性質を持つ神次元のマジェコンヌのもの。

 

「…何のつもりだ」

 

 一瞬ながらぴたりと止まる、ダークメガミ。顔の向きは変えないまま、視線だけを動かして私は訊く。

 

「ふん、それはこちらの台詞だ。私を相手に、そんな事をする余裕があるとはな」

 

 神次元の私もまた、身体の向きはそのままに声を返す。…尤もそれは、私の質問へ対する回答ではないが。

 

「そちらこそ、私を倒す為に戦っていたのだろう?案外移り気なのだな」

「抜かせ。私の目的は最初から、気に食わん存在をこの手で捻り潰す事だけだ。そして奴は…あの木偶の坊は、貴様以上に気に食わん。我が主の命?我が主の力?…曲がりなりにも私と同じ名を持つ存在がそんな言葉を口にしているなど、それだけで虫唾が走る…ッ!」

 

 吐き捨てるように言いながら、彼女は得物を振るう。その軌道から放たれた魔力の斬撃は広がりながら地上をかけ、こちらへと襲いかかろうとしていた猛争モンスターの鼻面を斬り裂く。

 

「…虫唾が走る、か……」

「なんだ、品がないとでも言うのか?」

「まさか。…やはり、お前もまた私なのだなと思っただけだ」

「……何?」

「同感、という事さ。…破壊と暴虐を尽くしておきながら、なんだあの口振りは。他の小悪党ならいざ知らず、私と同じ声で言われるのは…不愉快だ」

「ほーぅ。不愉快か、確かにお前と私は同感のようだな。…だがどうする、貴様が奴をどうにか出来ると?」

 

 私もまた魔弾を放ち、猛争モンスターを迎撃。彼女と連携している訳ではない…が、周囲の猛争モンスターを互いに吹き飛ばしながら、私は彼女の言葉に答える。彼女が口にした気に食わないという言葉に、同意を示す。

 それを聞いて、にやりと笑みを浮かべる神次元の私。そしてそこに響く…もう一人の、私の声。

 

「随分ト楽シソウデハナイカ。コノ絶望的ナ状況ヲ前ニ、ドウ逃ゲルカノ算段デモ立テテイタノカ?」

「逃げる算段?一体私が、何から逃げると言うのだ?よもや、ただ暴れるだけの貴様からと言うのではあるまいな」

「粋ガルナ、矮小ナル私ヨ。貴様等ト私、ドチラガ優位ニシテヨリ強大デアルカナド、考エルマデモナイ事ダロウ?ハーッハッハッハッハ!」

「…ならば、見せてもらおうじゃないか…ッ!」

 

 攻め込もうとするセイツをエネルギー刃と遠隔操作端末の弾幕で押し返しながら、ダークメガミは私達を見降ろし言う。見上げながらも煽り返していた神次元の私は、奴の高笑いに対して表情で不愉快さを露わにしながら、槍を振るって跳躍。左右に現れた二つの魔弾と共に奴へと真っ直ぐに突進をかける。

 

(別次元の自分ながら短気なものだ…だが、ありがたい…ッ!)

 

 それを見送った私も、ギリギリまで猛争モンスターを引き付けた後に跳躍。だが向かう先はダークメガミや神次元の私ではなく…滞空しているセイツの前。

 

「セイツ、君に頼みがある…ッ!」

「……!何かしら、マジェコンヌ」

「奴は私達で…いいや、私達が相手をする。だからその間、猛争モンスターは君達に任せたい」

 

 今の私に飛行能力はないが、魔法である程度の滞空は出来る。その力を用いて並び立った私は、魔力障壁で攻撃を阻みながら猛争モンスターへの対処を頼み込む。

 

「私達が、ね…。…大丈夫なの?貴女は……」

「策はある。それに…アレが私という存在の品を落とすのを黙って見ていられる程、私は辛抱強くないんだ」

「…ふふっ、そういう事なら止められないわね。いいわ、ならその戦いの邪魔はさせない。だから、貴女の…貴女達の戦いを、掲げる意思を貫く姿を、たっぷりと見せて頂戴ッ!」

 

 この状況で行儀の良い事を言っていても仕方がない。そんな考えの下私の思いを正直に話すと、セイツはふっと口元を緩め…期待に満ちた声と共に、空から地上へ。空の迎撃から、地上の戦いへ。その彼女の背を静かに見送り…再び私は、奴へと向き直る。

 

「さて…やらせてもらおうか…ッ!」

 

 今奴が狙っているのは神次元の私一人。あちらから倒そうとしているのか、私はそもそも眼中にないのかは分からないが…それならば好都合。私は杖を構え、魔力を収束させ……頭部に向けて、光芒を放つ。

 

(ちっ、見えていたか…ッ!)

 

 狙った位置へ、寸分違わず伸びる魔力の光。だが当たる直前ダークメガミは身体を半回転させ、光芒を回避。

 そこからこちらを見やったダークメガミ。動かないその表情が笑ったように見えた瞬間、向けられた掌から反撃の光芒が撃ち出される。

 

「甘ァァイッ!」

「ふん、ヴィブラスラップでも使いそうな言い方だな…ッ!」

 

 叫びと共に返された光芒は回避した私が一瞬前までいた空間を灼き、その絶大な威力を見せ付ける。

 とはいえ、巨体の掌底部から放たれる以上、動ける状態であれば避けるのは難しくない。むしろ厄介なのは……

 

「ソラソラァッ!ドウシタ、モウ攻撃ハ終ワリカァッ!?」

「ちぃぃ……ッ!」

 

 全身から放たれる、夥しい数の刃。周囲を飛び回り、文字通り全方位から光芒を撃ち込む羽根状の端末。それ等は威力こそ掌底部の砲撃に大きく劣るものの、私や彼女の身体を斬り裂き貫くには十分な出力。先の電撃で分かった通り、ダメージを与えるには接近する他ないが…この迎撃を掻い潜り、一撃与えるなどは至難の業。

 次々と押し寄せる迎撃を巧みに避ける神次元の私の動きも相当なもの。だが、ダークメガミの煽りの通り…攻撃からは、遠退いている。

 

(この状況、彼女を囮に私は遠距離からの攻撃を続けるのが定石…だが、奴を相手にそんな立ち回りをするのもまた…気に食わん……ッ!)

 

 空を走るように、突撃を開始。どうせ長くは持たないのだからと滞空の為の魔法を切り、前進しつつも降下する事で端末からの集中砲火を回避。続けて着地の直前に地面へ一発魔弾を撃つ事で砂煙を起こし、その中から大型の魔力弾を撃ち出す。

 

「ナンダァ?マサカ今ノガ攻撃カァッ!?」

「この距離でも駄目か…ならば……ッ!」

 

 直撃するも、装甲に弾かれ四散する魔弾。お返しとばかりに飛来する端末の射撃。跳ぶ事を主体とした移動で避けつつこちらも反撃するが、どれも装甲を貫く事なく消えていく。

 それは、神次元の私も同じ事。彼女も高威力の攻撃であれば可能性もあるのだろうが、それを迎撃が許さない。

 

「はんッ!デカい態度の割に、闇雲に撃つだけとはなッ!」

「貴様等ナドソレダケデ封殺出来ルノダ、格ノ違イを思い知ルガイイッ!」

「……ッ!下からも来るぞ神次元の私ッ!」

「えぇい、そんな事は言われるまでもないッ!」

 

 神次元の私が言う通り、ダークメガミは物量で押してくるだけ。端末を部隊の様に運用する事はなく、有り体に言えば能力のゴリ押し。

 だが、そのゴリ押しが通用する程に、私達と奴には能力の差がある。だからこそ、奴が言う事もまた…現状においては事実。

 

「くッ……一度距離を取れ!このままでは押し切られるのが落ちだッ!」

「私に命令するなッ!下がりたくば一人で下がっていろッ!」

「これはただの提案だッ!それとも今のまま迎撃を跳ね除けられるとでも言うのか!?」

「提案だろうと何だろうと、私はお前の言葉など……」

「貰ッタァアアアアッ!」

『しまっ……』

 

 故に、このままただ仕掛けるだけでは勝ち目は薄い。そして曲がりなりにも意見は一致しているのだから、協力しない理由もない。そう考えた私だったが、神次元の私から返ってくるのは拒絶の言葉。されど彼女とて戦況が分かっていない筈もなく、にも関わらず跳ね除けようとする彼女につい私も意識を強く向けてしまい……次の瞬間、振り下ろされる杖。それは単なる振り下ろし、単なる打撃だが……私達からすれば、塔か何かが凄まじい勢いで落ちてくるようなもの。直撃せずとも、その風圧と衝撃だけで私達は纏めて吹き飛ばされ……皮肉にもそれによって、私も彼女も奴との距離が大きく開く。

 

「ぐ、ぅ……直撃は避けたとはいえ、奴に隙を突かれるとは…」

「…だから言っただろう、一度距離を……」

「くどい。村人Aにでもなったつもりか」

 

 地面を転がった事で巻き上がった砂煙の中で、ゆっくりと立ち上がる。神次元の私の嫌味な返しに、「なんだ、案外ゲームに精通しているのか。…ふっ」とでも言ってやろうと思ったが、この場で彼女を煽るのは得策ではない。

 砂煙越しに、ぼんやりとだがエネルギー刃が見える。だがそれはただ接近を許さない為だけに放っているようで、端末からの攻撃は来ない。それは砂煙で姿の見えないこちらを警戒しているのか、それとも単に慢心しているのか。…だがまあ恐らく、後者だろう。

 

「ウゥン?ナンダ、ドチラカハ潰レタト思ッタガ…ハハハ、鬱陶シク纏ワリ付ク姿モソノシブトサモ、サナガラ下水道ニ住マウ虫ダナ!」

「…その虫を相手に今のところ一発も攻撃を当てられていないのが、貴様だろう?」

「矮小ナ癖ニ逃ゲ足ダケハ速イノガ虫トイウモノ。トナレバヤハリ貴様等ハ虫ケラ同然ノ存在トイウ事デハナイカッ!イヤハヤ、自ラノ言葉デ虫ケラデアル事ヲ証明シテシマッタナァ、ハーッハッハッハ!」

 

 視界が晴れ、互いの姿がはっきりと見えるようになった時、ダークメガミからぶつけられる悪辣な嘲り。熱くはならず、されど溜まりつつある不愉快さを乗せて煽り返してみた私だが、返ってきたのは更に不愉快な、傲岸不遜極まる嘲笑と高笑い。

 嗚呼、なんと高慢な事か。これが私の同一存在かと思うと嫌気が差すが…決して他人事ではない。現に私も嘗て、ネプテューヌ達へ同じような態度を取っていたのだから。嘲り、見下し、悪意をぶつけてきたのだから。

 だがそれでも、それが実力に裏付けされたものだと言うのなら良い。実際神次元の私と私は相容れないだろうが…不快ではない。セイツの言葉を借りるのなら、心の輝き、意思の煌めきとでも言うべきものが、溢れんばかりに彼女にはある。だが、奴は…主とやらから貰った力で粋がるだけの私は……

 

「…ふ、ふふ…ふふふふふ……」

 

 怒りとも違う、静かに沸き立つような感情。それが私の心に増大していく中で、不意に隣から聞こえ始める笑い声。

 それは当然、神次元の私が発するもの。だがその笑い方は、明らかに私らしからぬ、常軌を逸したような声音。

 

「…何ガオカシイ」

「…あぁ…いや何、ここまでくるといっそ哀れだと思ってな。自分のものでもない力に心酔し、自身が強者にでもなったと錯覚する事が…隷属する事に疑問を抱かず、あまつさえそれを堂々と言い放つ自分というものが、まさかここまで哀れなものだったとは……」

「哀レェ?今シ方地ヲ這イ蹲リ、我ニマトモナ傷一ツ付ケル事モ出来ナイ貴様等ガ、我ニ対シテ哀レダト?ハッ、コノ圧倒的ナ、絶対的ナ力ノ差ガ理解出来ナイノナラ……」

「理解出来ていないのは貴様の方だ。…良いだろう、そこまで目が曇っているのなら…見せてやる。私が…次元の破壊者であり、終焉をもたらす者たるマジェコンヌという存在の…真価というものを」

 

 それまでの怒鳴り散らすような様子はなくなり、冷ややかにダークメガミを見やる神次元の私。奴からの煽りには最早付き合いもせず、神次元の私はその沈着たる雰囲気のまま笑い……次の瞬間、彼女の姿は闇色の光に包まれる。

 それはまるで、漆黒の竜巻。闇が吹き込むように収束し、弾け……()()()が、姿を現す。

 

「…ナ、ニ……?」

「…その、姿は……」

 

 獣と人を混ぜたような身体に、プロセッサユニットを思わせる翼。見紛う訳がない、見紛う筈がない。その姿は正しく、女神と表裏の存在にして悪意と絶望の体現者、犯罪神の真なる姿に違いない。

 思い出せば、確かにネプテューヌ達は言っていた。もう一つの次元で戦った私は、異形の化物としての犯罪神に変身したと。そしてもし、それが別次元の私は犯罪神の化身…或いは犯罪神と同様の姿に変身出来る能力の持ち主だという事であれば、彼女の変身にも一応の理解は出来るが……それでも私にとっては、衝撃以外の何物でもなかった。…何せ犯罪神は、私が在るべき姿を、道を違える近因となった存在なのだから。

 

「貴様なぞ、この姿を見せるにも値しないと思っていたが…こうして見せてやったのだ。せめて、散り際位は無様な姿を晒すなよ?」

「…ハッ、何ヲスルカト思エバソンナ変身、コノ最強ニモ等シイ姿ヲ得タ私ノ前デハ焼ケ石ニ水……」

 

 より強く、より濃密となった彼女の威圧感。一見すれば静かで、されど底の見えない深き圧力。だがそれが理解出来ていないのか、それ程までに目が曇っているのか、ダークメガミは余裕綽々の雰囲気を一切崩さず……次の瞬間、爆ぜるような加速で一気に神次元の私は距離を詰める。

 

「ナ……ッ!?」

「はぁああぁぁぁぁッ!」

 

 劇的な変化と油断で一瞬反応が遅れるダークメガミ。その間に神次元の私は右腕を左側へと引き、手にした双刃刀を一閃。その軌跡より生まれた斬撃は直前で間に合った迎撃のエネルギー刃を容易く斬り裂き、ダークメガミの胸部装甲に傷を付ける。

 

「ふむ、装甲ごと斬り裂くにはもう一歩踏み込む必要があるか…」

「グッ……貴様ァァァァッ!」

 

 装甲のみとはいえ、難なく一撃を与えたと言わんばかりの彼女に対し、ダークメガミは怒りを露わに集中砲火。エネルギー刃と遠隔操作端末の波状攻撃を仕掛けるが、それを神次元の私は自在に飛び回る事で回避し、逆に放った魔弾で肩部のエネルギー刃発射部位を破壊。その後も弾幕の中を駆け抜けながら、飛翔する斬撃や魔法で反撃を撃ち込む。

 

「そら、どうしたどうした。貴様の攻撃ならば、一発二発で私の動きを大きく鈍らせる事が出来るのだぞ?」

「黙レッ!貴様トテ我ガ外装ヲ傷付ケルダケデ精一杯ダロウガッ!」

「さぁて、何十何百もの攻撃で一発たりとも当てられていない貴様と、その数割にも満たない攻撃で着実に貴様の装甲を傷付けている私は、一体どの程度の差があるのだろうなぁ?」

 

 再び発されるようになった煽りは奴の精神へと突き刺さり、言葉通りに一発も当たらない状況が更に奴の怒りを加速させる。

 それは、こちらの攻撃が一切通用せず、力技で押されていた先程までと、戦況が変わったからこそ意味のある煽り。だが同時に、私には分かる。神次元の私の攻撃回数が奴と比べて大幅に少ないのは、勿論元の手数の差が大きいのだが…同時に今の姿となっても尚、エネルギー刃と端末による迎撃に邪魔をされているのだと。彼女の煽りは、それに気付かせない為のミスリードでもあるのだと。

 

(…不味いな……)

 

 回避し、斬り払い、僅かな隙を利用し反撃する神次元の私と、より苛烈になった迎撃で叩き落とそうとするダークメガミとの攻防戦。それを前に、私は手出しが出来ずにいた。

 間違いなく、今奴の意識は神次元の私へと向いている。されどより過激になり、暴れるようになった迎撃の砲火は、はっきり言ってこれまでよりも読み辛い。自分を狙っていない分、予測はむしろ難しく…かと言って狙われれば、今の私に捌き切るだけの力はない。割って入り、立ち回るだけの能力が……この私には、足りていない。

 

「消エ去レェッ!」

「ふ……ッ!」

 

 空を裂くようにして放たれる、左掌底部からの光芒。その薙ぎ払いを大きく上昇する事で避けた神次元の私は、端末の追撃を急降下で振り切り着地。そこから気配で私の事を感じ取ったのか、こちらへ背中を向けたまま口を開く。

 

「なんだ、まだいたのか。…引っ込め、最早お前の出る幕はない」

「…何故、それを私との戦いで使わなかった。それを使えば、今の私を圧倒出来ただろうに」

「だろうな。…だが、それでは意味がない。同じ姿で、同じ力で勝ってこそ、私は私一人で十分だという事が証明されるのだ。…もう一度だけ言うぞ、引け。お前では勝てん、信次元の私」

 

 淡々と、背中越しに彼女は言う。そこに私への気遣いや、ましてや心配などはない。ただただ、彼女は事実を言っているのだ。裏の意図があるとすれば…さしずめ、こんなところだろう。──お前も私だと言うのなら、戦場で情けない姿を晒すな…と。

 全くもってその通りだ。悔しくも、悲しくもない。純然たる事実として、私はこの戦いに付いていけない。人である私に、完全に人の領域を超えた、神域とでも言うべき戦いに喰らい付くだけの力はない。…だが……

 

「…そうだな。今の私では無理かもしれない」

「ならば……」

「…しかし、だからこそ…今ここで、私は示そう。我が背負いし罪の…そして、時代を超えて女神達と築き上げてきた、マジェコンヌ(信次元の私)という存在の全てを」

 

 私は引かない。引くつもりなどない。何故なら私は、決めたのだから。今度こそ力の全てで、何者でもない私自身の意思で、戦い続けると。女神の友として、同じ道を歩み続けると。そして……自分という誇りを失い、傀儡となった無様な私の目を覚まさせてやるのだと。

 ゆっくりと息を吐いた私は、ある物を取り出す。それは、これからの私に必要なもの。紫、黒、緑、白…澄んだ四つの輝きを持つ、四色の結晶。

 

「……!?それは……」

「──さぁ、再び舞い上がろう。我が辿り着きし、天上の領域に」

 

 振り返る神次元の私。何かを感じ取ったようで動きを止めるダークメガミ。双方の視線を感じる中、私は手にした四色の結晶…ネプテューヌ、ノワール、ベール、ブランより譲り受けた、シェアクリスタルを浮かび上がらせ……この身体に残った力と、クリスタルより流れるシェアエナジーを糧に、女神化する。

 

(…あぁ、懐かしいな…懐かしく…心強い……)

 

 流れ込むシェアエナジーの感覚。眠っていた力が再び覚醒し、全身に力が溢れ出す。

 そう。嘗て私は、負のシェアの女神…即ち犯罪神に近しい存在となった。その時の私はネプテューヌ達に打ち倒され、イリゼによって救われ、そのイリゼと共にネプテューヌ達四人に助け出され…女神としての能力を、失った。だがそれは、シェアエナジーの配給側を失ったというだけで、女神としての力はこの身体の中に残ったまま。コピーした…或いは手に入れた四人の力は、眠ったまま。だからこそ、私には確信があった。再びこうして、シェアエナジーを得る事が出来れば…もう一度、私は翔べると。

 されど、この力は負のシェアの女神としてのものではない。四人から託された、四人の力による女神化。善意と希望の体現者に、近しい姿。

 

「犯罪神……否、一度は罪に染まり、されども罪の神へと反旗を翻し、女神と共に悪意へと争い続けるこの姿──叛罪神(クロム)マジェコンヌとでも、名乗ろうか」

 

 姿形はあの時の私と同一。だが私を突き動かすのは私の意思であり、四人のシェア。そして、ここから始まるのは、私の、私による……マジェコンヌという存在の証明。

 

「…ふっ、くくっ……ハハハハハハ!なんだ、お前も真の力を隠していた訳か!しかも、その力、その根源……限りなく忌々しいが、そこまで至ればいっそ清々しいな。あぁ、そうだ…私でありながら私と真逆の道を歩むと言うのなら、その位してもらわなくては」

「なに、隠していた訳ではないさ。あくまで真の、全力の姿に過ぎないお前と違って、私のこれは『切り札』なのだからな」

「ほぅ。だが呼び方なぞどうでもいい。それ程の力があるのなら、私も……」

「……ッ…エェイ、何ヲゴチャゴチャト話シテイルッ!貴様等ノ相手ハ…コノ私ダァアアアアッ!」

 

 驚愕の顔から一転して、神次元の私が上げたのは高笑いではない普通の笑い。同時に私を認めるような発言をした彼女に対し、私もほんの少し笑みを浮かべながら肩を竦めると、彼女は視線を鋭くさせ……次の瞬間、自分を無視するなとばかりに何十もの光芒が私達へと降り注ぐ。

 それは、一切の油断のない射撃と砲撃。普段の私であれば、無傷で凌ぎ切るなど恐らく不可能な飽和攻撃。だがそれを私は、私達は……一瞬の跳躍で回避する。

 

「……ッ!ダガ……」

『遅いッ!』

 

 私は左に、神次元の私は右に。避けると同時に急上昇をかけた私達は、次なる射撃を急加速で回避し、接近と同時に魔力の斬撃を素早く放つ。

 

「いいだろう、前言撤回してやるッ!だが、私の足を引っ張るなよ?」

「その言葉、そっくりそのまま返させてもらおう…ッ!」

 

 唸りを上げて飛来する斬撃。少し前の再現をするように私達の斬撃はどちらも奴の胴体を傷付け、そのまま私達は空を疾走。

 次なる攻撃を叩き込むべく、私は杖に力を収束。その私達を追うように端末は飛び回り、背後も行く手も阻もうとする。だが、この姿になっても尚奴の端末を自由にさせる私ではない。

 

「その攻撃……」

「貴様だけのものだと思うなよッ!」

 

 流れるように視線を動かし端末の位置を目に捉え、神次元の私はにやりと笑い、次の瞬間私も彼女も翼に揃った羽根を射出。大小合わせて数十の羽は、翼から離れた瞬間遠隔操作端末として動き出し、仕掛けようとしていた奴の端末へ攻撃開始。突如一方的に追う側から追い立てられる側へと変わったダークメガミの端末は回避行動を余儀なくされ、私達と奴との間に空白が生まれる。

 

「ン、ナ……ッ!?」

「喰らえッ!」

「とくと味わえッ!」

 

 驚きの声を上げるダークメガミ。迎撃の刃は当然健在だが、半端に私達両方を狙おうとした結果その密度は大きく低下。到底今の私や彼女を追い払えるだけの力などなく……私の撃ち込む光芒と、神次元の私が放つ電撃が、ダークメガミの装甲を砕き貫く。

 戦場に響く奴の悲鳴。そこに籠る怒りと憎悪。それをはっきりと耳にしながら……在るべき姿を無くした奴を討つべく、私達は構え直す。




今回のパロディ解説

・「〜〜ヴィブラスラップでも使いそうな〜〜」
お笑いコンビ、スピードワゴンの井戸田潤さんが扮するキャラ、ハンバーグ師匠の事。と言っても、彼みたいな感じに「甘ーい!」と言っていた訳ではないですよ?

・「〜〜お前では勝てん、信次元の私」「…そうだな。今の私では無理かもしれない」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズに登場するキャラ、マクギリス・ファリドとガエリオ・ボードウィンのやり取りのパロディ。…女神化 type-Eではありませんよ?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。