「東方project」の二次創作作品です。
私の動画で登場する霊夢、魔理沙、椛、アリス、うp主の日常をメインとした物語。
その為、キャラの設定や世界観は原作とはかなり異なると思います。
基本的にキャラの関連性や性格は動画を見て頂いたらより理解できると思います。
それでもよければゆっくりしてください。

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アリスとうp主が炬燵に入ってお話してます。


ディミーアカラーの二人 

「そろそろ寝ますか」

 私はそう言うと動画の編集を辞め、パソコンをシャットダウンした。

 時間は11時半を過ぎたくらい。外の月は機嫌が悪いのか黒い雲に隠れて雨を降らしている。

 今日はこの家に私以外に誰もいなかった。椛は今ごろ町のパトロールを、霊夢さんと魔理沙さんは晩御飯を食べたら自宅に帰ってしまった。椛が雨に濡れてなきゃいいですけど。

 そんな事を思いながら携帯を開くと、アリスさんから連絡が来ていた。

 

アリス「うp主おきてる?」

 

 連絡が来たのは大体20分前。編集中はイヤホンをしているから気づかなかったのだろう。

 

うp主「まだ起きてますよ」

 

 私はいそいそと8文字を打ち込みすぐに送信。するとすぐに既読が付いた。どうやらアリスさんも携帯を見ていのだ。

 

アリス「そしたら今からうp主の家に行く」

 

 絵文字もスタンプもない短文。いつものアリスさんらしくない。

 

アリス「お風呂を沸かしてほしい」

 

 そして魔理沙さんみたいに図々しい。どうやらアリスさんはお酒を飲んだと推測できる。私は了解のスタンプを返信して、携帯を机に置いた。既読の確認はしなかったが大丈夫だろう。なぜなら急いでお風呂掃除をしないといけないからだ。

 

 

 

 ピンポーン

 雨音が聞こえる中、チャイムは鳴った。

 私はお風呂掃除を終えた後、パソコンを再度付けて動画を見ていた。どれだけパソコンに依存しているのだろうか?そんな事を考えつつパソコンの右下の時間を確認すると12:13だった。

 ピンポーン

「今出ますよ」

 少し大きめな声で返答をし、パソコンをスリープ状態にした。

 素足だと寒いので、スリッパを履き廊下に出てアリスさんを迎えに行く。

「どうぞーー」

 私はそう言いながら自分の家の戸をガラガラと開けた。

 そこまでは何気ないいつもの行動だ。だって自分の家の扉を開けただけなのだから。

 だけど自分の視界に広がる人物の姿に戸惑った。

 髪型はいつもの肩に触れる小麦色のウェーブの掛かったセミロングではなく、横で括るサイドアップ。そして髪飾りには白い鈴蘭がモチーフになっていそうな物を付けている。そして衣装はネイビーカラーの胸元が空いてるドレスで、胸元にはネックレスが付けられている。男の性としてやはり一番に注目してしまう。

 そんな邪な考えを振りほどく為に勢いよく首を振る。

「うp主どうかしたのかしら?」

 アリスさん首を少し傾けはほほ笑みながら疑問を唱える。どうして私が首を振った理由をわかっているのに多分質問したのだろう。性格が悪い。

「シンデレラがカボチャの馬車なしに帰って来たからびっくりしたんですよ」

軽口で返す。シンデレラが咄嗟に出てきたのは、さっきまでシンデレラの歌を聴きながら動画を編集してたからだ。

「魔法が解けて自力で帰ってきました。おかげで雨に当って体が冷えてしまいましたは」

アリスさんだけがいつも軽口に付き合ってくれる。こんなよくわからないやり取りが私は好きだった。

「できればすぐに温めてくれないかしら。王子様。」

 ただしお酒が入ったアリスさんは、少し危なっかしい。ボディタッチが多くなり、老若男女問わず魅了しようとする。現に今もこのセリフを言いながら私の頬に手を当て、重心を私の方に寄せて顔を近づけている。

「お風呂ならもう溜まってると思いますよ、姫。」

流石に恥ずかしくなって顔を反らしてしまった。私の負けです。なんの勝負かわからないけど。

「ありがとう。うp主」

にっこりと答え私の横を通り抜ける。これにて王子様は終了。

「うp主できればタオルを持ってきてくれないかしら?」

どうやら次の役は黒いカラスの使い魔だ。

 

 

 

 

 居間で炬燵に入りながらテレビを眺めていた。入れたてのお茶と蜜柑はもちろん用意してある。

 テレビの内容はよく切れる包丁の宣伝だ。今は潰さないでトマトを切っている。うちには椛がいるから買う必要はないだろう。刃物の拘りは人一倍あって、週に1回は包丁を研いでくれている。しかも椛の趣味と拘りで種類の違う包丁が10本以上ある。そしてその全てが妖しく霞色に輝いていて、「切る」事だけを追求した機能美を感じる事ができる。切れ味は生卵を砕かずに切る事ができるレベル。まぁこれは椛の技量がないとできない技ですけどね。

「お風呂ありがとう」

 アリスさんがお風呂から上がったようだ。

 恰好は当たり前の事ながら先ほどのドレスではない。全体的に水色で統一され、襟や袖に黄色のラインが入っているパジャマだ。ネグリジェというには色気がないパジャマ。さっきまでとは違い幼く見える。もちろんアリスさんはスタイルも顔も整っているから、何を着ても似合うけど。

「いきなり押しかけてごめんなさい」

 どうやら酔いはすでに覚めてしまっているらしい。7割りほっとして、3割りしょぼんとした気分。

「気にしなくていいですよ」

「ありがとう」

 こういう感謝の言葉はどんな時でも嬉しいものだ。

 アリスさんも私と同じように炬燵に入り始める。場所は私の左手で手を伸ばせば耳に手が届く距離。絶妙に近くて遠い距離間が心地よい。いつもは椛や霊夢さん、魔理沙さんがギュウギュウで賑やかな炬燵だからか、アリスさんと二人きりなだけで非日常を感じる。こんな静謐なひと時もたまには良いですけどね。

「今日は何のパーティーだったんですか?」

「ただのパーティーよ」

「ただのパーティーなんてないと思いますけど?」

 パーティーなんてそんなコンビニに行くような感覚で開かれる物じゃないでしょうに

「確か、そこそこ金持ちの子供の誕生会だったはずよ。人も2,30人ぐらいの中規模なやつ」

 2,30人って中規模なんですかね?パーティーの相場を知らないのでなんとも言えないですけど。少なくとも私の誕生日を祝ってくれる人は右手で足ります。言ってて悲しい。

それとアリスさんのそこそこ金持ちは私の5倍は稼いでる人たちである。本当になーんでこの人は私の隣で炬燵に入ってるのだろうか?しかも結構くつろいで。だらーんと背中を丸めて頬は机に付けてる。そして蜜柑を人形に剥かせて食べさせてもらってるし。なんか微笑ましいです。

「それでパーティーはどうでしたか」

「最悪」

 やばいなんか地雷を踏んだ気がする。アリスさんの目がギロッてなりました。

「そのパーティーを開催した家の男に不倫を申し込まれた」

 今さらって言ってはいけない事を言いましたよ!?青二才とはいえ新聞記者にそんな事を軽はずみに言っちゃ駄目ですよ。そして後ろでアリスさんの人形はフォークとナイフを持ってる。これは怒ってるのでしょうか?

「よくもまぁ自分の妻が妊娠して子供もいるのにそんな事言えるわよね。信じられないわ」

アリスさんは突っ伏して愚痴をぼやく。そして2体の人形は廊下に出ていった。

「浮気の理由だって自分に時間を割いてくれないからよ?子供がいるんだから当たり前でしょ」

怒りというよりかは飽きれに近い感情で言葉を放つ。突っ伏したままに。多分さっきの人形と視界を共有してるのだろう。アリスさんは人形と視界を共有する時に目を瞑る。多数の視界を同時に処理するのは脳と目が疲れるらしいから

「愛情の量だって無尽蔵じゃないですからね」

「・・・なんか違う気がするんだけど」

アリスさんが起き上がって否定する

「あはは・・・」

こういった合いの手は苦手なんですよね。全般的に的の中心から外します。

 そう言って微妙な空気になった所で、廊下からアリスさんの人形がワインとコップを運んできた。そこそこ高いから隠してワインだ。まぁパーティーで飲んだワインの方が高いんでしょうけどね。

「アリスさんお酒飲むんですか?」

「中途半端にパーティーでお酒を飲んだからね。」

「外でアリスさんがお酒を飲むなんて珍しいですね」

アリスさんはお酒に弱い。ワインならコップ1杯で顔を赤らめ、饒舌で妖艶で子供っぽくなる。ようは男性からしたら心臓に悪くなるのだ。

逆に霊夢さんは一切酔わない。アルコールに強いとかじゃなくて、アルコールが効かない。なんでも博麗の血が状態異常や毒を無効にするらしい。

「その男にしつこく誘われて、しょうがなく飲んだのよ」

 アリスさんは不満そうに言い、人形に注がせたワインを口に含む。アリスさんはパジャマで、ワインを入れてる容器はマグカップだ。それでもアリスさんは絵になる美しさだった。これがパーティーという華やかな会場で、ドレスを着たアリスさんがいるのなら、その美しさは男女問わずに目を奪われるだろう。

「最終的には勝手に持ってきたし」

「それを飲んだんですか?」

「まさか」

 目を細めて意地悪な笑みを浮かべてアリスさんは答えました。

私はほっとした。その手の行動では見えないとこで薬が盛られてる可能性があるからだ。ソースは私。

「だから『私はお酒に弱いから、あなたのワインを一口頂けないかしら?』って言って、あえて関節キスして話を切りあげたわ」

 やられた方はドキッとしたでしょうね。薬を服用しようとしてたならなおさらに。

「その時の男の照れてる顔は、面白かったわぁ」

 まさしく男を誑かす魔女ですね。そんな事をしてるから不倫の申し出をされるのではないんですかね?もちろん申し込む方が9割悪いですけど。

「だけどその後もしつこく誘われて、お酒の勢いで男を逆さ釣りにしそうだったから抜け出してきたのよ」

パーティーでそんなことしてもエンターテイメントにはならないですからね。良い判断だと思います。

「やっぱりお酒は親しい人と飲むに限るわね」

 アリスさんは炬燵の蜜柑を口に含む。当たり前のように全て人形の全自動化されている。

「私の事を親しい人と認めてくれてるんですね」

少しだけ、その言葉が嬉しかった。人との関係性を常に意識する事なんてほとんどない。人と接していれば毛糸のように絡まるのが人との縁だ。それを常に意識して縛りあげるとそれは鎖となり、お互いを束縛する。

「このワインに薬が入ってない程度にはね」

「それはかなり高い信頼ですね」

 

 

 

アリスさんが炬燵に入ってから30分ぐらいが経過した。

テレビも時報に替わっていたので消した。この世界の音は時計の針と外の雨音。それとお互いの言葉だけ。

「うp主。今日はこっちで寝て良い?」

眠そうに目を擦ってる。

アリスさんは魔法使いだけど食事をしないとお腹が減るし、眠らないと睡眠不足になる。その二つをしなくても済む魔法もあるそうだが、アリスさんはしていない。

「人形を作ってる私が、人の型から逸脱したらダメでしょ」

 という理由から辞めたそうだ。

「いいですよ」

私はそう言ってぬるくなったお茶を飲みほした。

私の家は基本的に椛と二人暮らしだが、他の人が泊まる事もある。特に魔理沙さんとかは週2ぐらいでこの家に泊まってる。魔理沙さんの日常的な生活用品は置かれてるし、服だってこっちで洗濯してる事が多い。なんでも魔理沙さんの家は日向だから洗濯ものが乾きにくいらしい。

「そしたらここに布団を引くから少し待っててください」

そう言って空いたコップ二つと半分も飲まれてないワインを持って、ぬくい炬燵から立ち上がろうとすると両肩に人形が止まった。まるで立ち上がるのを拒否しているみたいだ。

「う~~」

アリスさんは恨めしそうにこっちを見ている。頬はやや赤く酔いもそれなりに回っている。ここからは酔った人の相手をしないといけないようだ。

「うp主と一緒に寝る~」

酔った人が無理難題を言うのは法律で決まっているのでしょうか?しかも体を摺り寄せてきて、裾を掴んでる。止めてください心臓に悪いから。

「男は狼なんですよ?ギャオーと食べられてしまいますよ?」

それでもこんな状態で慌てずに、笑顔でテキトーな事を言える自分に感謝する。嘘が得意なのは良い事だ、本当に。

「そしたら鋏でお腹を裁いて、針と糸で口を縫い合わせるわ」

 アリスさんもにんまりとした笑顔で答える。そしてアリスさんの右手が私の左手を持ち上げて、手を合わせる。アリスさんの手は私よりも冷たくて、細い。女性らしくて繊細な事を生業としている人の指だ。

「何をしてるんですか?」

 少しだけ戸惑いながら、苦笑いで声をかけてみる。

「ん~~~」

そんな甘えた声を出しながら、アリスさんの小指が私の小指と薬指の隙間にするりと差し込まれ、折りたたまれる。それを後4回ゆっくりと、丁寧に行われた。

「後は・・・」

 その言葉ではっとした。

 時間はあった。テキトーな言葉を言いながら離れる事も、少し語彙を強めて拒絶する事も、照れたふりをして抜け出す事もできたはずなのだ。それなのに私はその意味不明の行動をただ見てるしかできなかった。

その行動があまりにも扇情的だったから。

そしてアリスさんの2体の人形が、恋人握りされた手の周りをふよふよと笑顔で回る。まるで楽しそうに、二人を祝福するかのように。

「完成~」

そうアリスさんが言うと手の甲の皮膚が人形が回った数だけ、軽く食い込んでいた。

私は馬鹿ですか。

アリスさんは目には見えないぐらいの細く、伸縮自在も糸で人形を操っている。室内で使う時は邪魔にならならないように床や天井に糸を這わせて横軸の移動をしている。クレーンゲームの要領だ。だけど今回は空間に少し長めの糸を通して、人形でお互いの手をぐるぐる巻きにして、糸を縮めたのだろう。そして実行犯は机の上に着地して、役目を終えたからか計画犯によって瞳の色が失われた。人形との接続を切ったのだ。

「離してくれませんか」

恋情のどきどきよりも、自分が策略に謀られた事に苛立ちの方が大きい。

「嫌よ」

目を細め、ニヤニヤしながら答える。

アリスさんは束縛されてない左手で人形の背中を触った。そうすると瞳に色が戻り、再び空に舞う。

「こんな糸で束縛できると思ってるんですか?」

その気になればこんな糸、力づくで切るなんて訳ない。多少手の肉が削がれても、治癒の妖術で治せばいいだけだ。烏天狗の力を舐めないでください。

「力づくで解こうとか思わない方がいいわよ?」

私がアリスさんから手から離れようとしたのを察したのか、その行動に釘を刺してきた。

「手がぼろぼろになるわよ」

「そんなの構わないですよ」

 お互いの表情から笑みは消える。空気は冷え切り、お互いの体温だけが熱を持つ。

「私の手がなっても?」

 当たり前の事だ。

 片方が引っ張れば片方も同じ方向に引っ張られる。勢いよくやればやるほどに。

 私の手は妖術によって肉を削ぐ程度で済むだろうけど、アリスさんの手と手首は離れ、ここら辺一体が鮮血で染まる。

「それとも椛のように後で治すのかしら?」

 お酒を正常な判断を狂わす。普段は思ってても言わない事を発する。

 だけどそれは普段から思ってる事なのだ。相手を傷付けたくないから言いたくない真実。だからこそ心に刺ささり傷つける。お互いに。

「椛の事は関係ないですよ」

 アリスさんの目を見て冷たく言い放つ。

 椛と私は主従関係だ。名前を捨てたとしても。命を捨てたとしても。この関係が変わる事は未来永劫ない。

 それが正しい答えなのだから。

「・・・」

 少しだけの沈黙。お互いの顔を見続けて多分1分ぐらいだろうけど、凄く長く感じる。

「ふわぁ」

アリスさんが眠そうに欠伸をして、目線が逸れる。それが沈黙を破る合図。

「どうしてこんな事をしたんですか?」

 アリスさんの奥にある扉を見て言葉を放つ。

 理由を聞かずにはいられなかった。どんな答えが返ってきたとしても疑うだろうけど。

「うp主と一緒に寝て、起きた時にうp主の寝顔を見たかったから」

「こんな事をしなくてもできますよね?」

いつも返すような言葉。だけどいつものように苦笑いで話す事はしなかった。

「こんな事をしないとできないと思ったのよ」

アリスさんは視線を落として言葉を続ける。

「二日酔いを和らげる為とか言いながら睡眠薬入りの水を差しだしたり、私が眠ったとわかったらすぐに手を放して別の場所で寝たりとかするでしょ」

 当たってる。アリスさんと眠ってるのを魔理沙さんにでも見られたりしたら困りますからね。椛なら見られても誤魔化せると思いますけど。なによりアリスさんの思い道理に物事が進む事に腹が立つ。

「だからわざわざこんな事をしたのよ」

アリスさんの指に力は入る。

「どうして一緒に寝たいと思ったんですか?」

 私は淡々と業務的に質問する。自分の探求心を満たす為だけに。

「う~ん」

 アリスさんの視線が上に向き瞳を閉じる。そして思考しているアピールなのか、左手の人差し指を唇にトントンと当てる。子供っぽいのに色っぽいです。

「独りでいるのが寂しいから?」

「疑問形で答えないでくださいよ・・・」

えへへーと苦笑いしたって納得しませんよ。こんな事されてこっちだって困ってるんです。お互い様で、死なばもろともです。

「うp主は独りでいる事が寂しい時とかない?朝起きて部屋が寒い時とか、夜遅くに帰ってきても電気が付いてないとか」

「特には」

「・・・」

ジト目で見ないでください。

「椛が一人でいて心配する時はありますけど?」

「そうじゃないのよね・・・」

やはり的に外れる。誰か私の言葉にホーミング機能を付けてください。特に女性の質問によく当たるやつを。

「パーティーとか華やかなとこに行った後だと、特に感傷的になるのよね。なんで自分は今独りなんだろう?って家で考えたりするの」

 祭りの後が寂しく感じるあれでしょうか?私はよくわからないですけど。ネットとかでよく見る気がします。椛もそういう事をよく言う気がしますし。

「だからまだ特別な刺激が欲しかったんだと思うの」

 それならパーティーの話で出てきた男と浮気でもすれば良いのにと思った。そうすれば非日常の人生に特急で向かうのにと。もちろんこんな事を言わない。そしてこれが出てくる時点で、その男より私は最低な性格してるなと思った。

「ふふっ」

「うp主?」

 自分の最低さに呆れてたら、乾いた笑い声となって音を出てしまっていた。

 アリスさんは心配そうにこっちを見つめている。

なんてことはない。ただの我儘なんだと理解した。普段は大人だから隠さなきゃいけないけど、お酒のおかげで出てきた我儘。それを普段の不満と共に出てきただけなんだと。それならこの状況を役得と考えた方が良いはずですね。

「私の負けですね」

 よくよく考えるとこの状況になった時点で私の負けなのである。お互いの手を合わせして、糸でぐるぐる巻きにされた時点で。それなら白旗を振るしかないだろう。

「そしたら一緒に寝ましょうか」

 アリスさんの表情がお日様のように輝く。いつもの笑みとは違う。クリスマスプレゼントをサンタからもらったみたいな表情に。

 そんな表情も一瞬で変わりましたけどね。恥ずかしくなってコホンと咳払いをして態勢を整えようとしてます。

「この糸を解いても」

アリスさんが不安そうに、目を潤ませながら言葉を紡ごうとしてる。

ここから寸劇の開幕。この一瞬で涙を流す事ができるって、どんな涙腺しているんですか?女優ですかあなたは?

「離したりしない?」

「しないですよ」

 私とアリスさんの関係はこれで良いのだと思う。

 本音で話す事なんてしないで、こんな他愛もない会話をしてるぐらいが丁度良い距離間なのだ。

「私が起きるまで手を繋いでてくれる?」

 アリスさんに手に力が入る。

訂正。この距離感は近すぎる気がします。もう少し離れてくれないと、心臓の鼓動が五月蠅いです。

「私が寝てる間の事は保証しかねますよ」

 アリスさんはジト目でこっちを見てる。「そこはそんな現実的な言葉じゃないでしょ?」と訴えかけてくる。ここで「絶対に離さない」と言えるほど私は主人公の柄じゃない事は、アリスさんだってわかってるでしょうに。

だけど観客のいない舞台を、こんなつまらない終わり方で締めたくはない。二人しかこの世界にいないのなら、二人が望む言葉だけがこの世界の正解だから。

その為に気の利いた返しを考える。いつもアリスさんとの寸劇は童話に関連した言葉を用いる事が多い。だから今回もそこから会話を広げようとした。

「・・・」

 思いつかないです。どうしましょう・・・

 朝になったら存在が消える童話といえば小人の靴屋があります。靴屋の老夫婦がお店を繁盛させてくれた小人に感謝したら、小人は二度と姿を現さないお話です。この状態から「靴」という関係ない言葉を入れないといけないのはキツイです。シンデレラのガラスの靴と合わせましょうか?多分ごちゃごちゃになる気がします。

「やっぱりと私と眠るのは嫌なのかしら?」

アリスさんが言葉を繋ぐ。言葉が詰まれば放送事故。それを嫌ったアリスさんのファインプレー。

「初めての恋が、憎い家系の人から生まれるなんてとんだ皮肉ね。知らずに逢うのが早すぎて、知ったときにはもう遅い。私は私の恋心が憎いわ」

 考える時間の為に、一人語りのシーンを差し込んだ。たった一言を考えるのにこんなに時間が掛かる私と、アドリブでこんな長いセリフを言えるアリスさん。役者としての格が違いますね。だけど同じ舞台に上がったのなら、そんなのを気にしてる暇はない。

 それにしてもこのセリフはどこかで聞いた気がします。

「うp主。あなたはどうしてうp主なのかしら?」

 それ「ロミオとジュリエット」じゃないですか!!

 私は主人公なんて柄じゃないってわかってる癖に。世界で最も恋に盲目な主人公をあてがってきましたよ。しかもこのセリフを言った本人はニコニコしてます。「素早く返さないからこうなるのよ?」とか思ってるんでしょうね。

 だけど返す言葉は見つかりました。不格好な言葉でもやられた分はやり返しますよ。こっちのターンです。

「私のロミオも似合わないですけど、アリスさんのジュリエットなかなかの配役ミスですね。シンデレラの方がお似合いですよ」

 私はアリスさんにとっての王子様ではない。別の物語なら出合う事もできずに平行線をたどるだけだ。

「これ以上寝るのが遅くなると悪夢にうなされるので」

だけどそんな平行線を歪ませた歌を私は知っている。人間よりも純粋に歌い、国を超えても感動を与える機械姫の歌を。アリスさんが好きな歌だ

「大人はもう寝る時間です。一緒に寝ましょう」

 アリスさんが笑った。繋いでない左手で口元を隠しながら。

「夢の中で狼に食べられそうになったら助けてくれる?」

「金の斧を振り回してやっつけます」

「幸せが詰まってるのは「小さい箱ですね」

二人同時に笑い出す。

スパイごっこの秘密の暗号みたいだ。秘密という甘い果実に少年と少女が胸を躍らせ、それが特別な関係を作り出す。そしてその特別を知っているのは世界で二人だけという優越感。そんな子供のころに憧れた大人の遊びを、大人の二人をしたらどうなるか?

滑稽な喜劇で笑うしかできなくなる。とても幸せですよね、アリスさん。

「60点ってとこかしらね」

アリスさんが糸を解きながら厳しめな採点をする。これにて喜劇は終了。

 10分ほどしか繋いでないのに、自分の一部を取られた気分だ。繋いでた右手が冷たく感じるので、炬燵に入れて他のぬくもりを求める。

「糸を解くんですね」

「このままだとトイレに行けないからね」

 サラッと言われても困まるんですけど・・・

「それに縛られた人間関係は好きじゃないから」

 ずっと言いたかったのはこっちなのだろう。

私と椛の関係は歪なのかもしれない。椛は私の為なら命を簡単に捨てるだろうし、私もそれを止めようとはしてない。椛が望む事を拒絶したくはないし、そもそも拒絶する道理が思いつかない。椛は私にとって大切な従者であり、刀でしかないのだから。

「まぁ人の関係性に口出すほど、私はお人良しじゃなから。安心して」

「ありがとうございます」

 どうでもいい。世界の全ての人から非難されても、椛との関係は変える気はない。

「そしたらワインを片付けるから、うp主は布団を敷いておいてね」

「わかりました」

 そう言ってアリスさんと同時に炬燵から出ていく。2体の人形は空いたコップを持って。

私は居間の電気を消して部屋を出る。

 

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