「………………はぁ。何度目だろうか、ここに来るのは。」
飽きた。この景色を見るのも。
そこは真っ直ぐな、先が見えないほど長い道のりと、周りには白い壁だけが見える。
あまりにも殺風景なその場所は、面白みもなく単純な場所だった。
初めて見た時は何も感じず、変な夢だなと思ったぐらいだ。
直ぐに目が覚め、朝の紅茶を飲みながら友の話を聞いていた。
……のだが。
たくさんの人間を屠る夢よりも、世界が紅い霧に包まれる夢よりも、この夢を見ることが1番多かった。
夢を自由に見られないとは、不便なものだ。
仕方なく私はその道を歩くことにした。道のりを歩くのは初めてである。
歩く。
周りには白い壁……もとい空間が広がっている。
何も無い。
「空間」が存在している時点で「何も無い」という表現は何かおかしいのかも分からないが、とにかく何も無かった。
あるのは、体の先にある道のりだけだった。
歩く。
歩く。
歩く。
不思議と疲れは無かった。脚が痛くなることもなかった。
飛べばいいのだろうが、何故か浮遊が出来ない。
重力が強いのだろうか。圧迫感は無いのに。
何も考えず、何も無い場所をただひたすら歩く。
夢というのは「今見ているのは、夢だ。」と理解し、「覚めろ、覚めろ。」と念じれば自然と起きられると友が言っていた気がする。
だが、今回は何故か起きれなかった。
腕をつねり、頬を叩き、覚めろと念じた。
しかし、目の前に広がるのは1本の道だけだった。
歩く。
歩く。
人影だ。
なぜ、私の夢に人影が出てくるのだろう。
そう思い、近づこうとした。
突然、周りは闇へと変わり、目の前には見覚えがある少女がひとり居た。
白い羽、黒いドレス、 蒼い槍。
「…………姉さん。」
紅魔館には先代の当主がいた。名前は不明。それを知っている妖怪は幻想郷にはごく少数しかいないという。素性を調べようとした者は容赦なく排除されたと聞く。
彼女は当時、鬼と比べられる大妖怪だった。
人間の血を一滴残らず吸い、体を鮮血に染めるその姿は、「スカーレット・サタン」(紅い魔王)と呼ばれていたらしい。
私が物心ついた頃、スキマのやつがそう言っていたのを覚えてる。
戯言だと思っていたのに、どうやら信じなければならないらしい。
目の前の少女は低く、耳に残るような声で話しかけてきた。
「貴様ハイツマデ、人間、妖怪ト仲良シゴッコヲシテイルツモリダ?」
「オ前ハ最強ノ吸血鬼デアル私ノ血ヲ継イデイルノダ……」
「コノ幻想郷ヲ支配スル!ソレガスカーレットノ「運命」ダ……」
「コッチ二来ルガイイ。私ノ力ヲ使エバスグニデモ……」
もう、喋るな。
そう思った私は気がつくと、紅い槍を彼女の胸に突き刺していた。
どうやら夢の中でも出せるらしい。
「……後悔スルコトニナルゾ。レミリア………」
「お前の指示を受ける気は毛頭無い、我が姉よ。」
「私の「運命」は、自分で決める。二度と私の前に出るな。」
彼女は痛む様子も無く、光となって消えていった。
いつもの天井。
暖かい枕。
窓辺から差し込む陽の光。
「お嬢様、お早う御座います。」
いつもの人間の声が聞こえる。どうやら目覚めたらしい。
「嗚呼、咲夜、有難う。」
「朝の仕度は出来ております。本日は……」
「咲夜」
「どうしましたか?」
「久しぶりに、貴女とお茶が飲みたいのだけれど。」
「直ぐ様、ご用意致しますわ。」
「後、美鈴とフランも呼んで。今日はみんなでお茶会としましょうか。」
私は今の幻想郷で満足している。
支配だとか征服だとか、そんな事よりも……
「入るわよー」
「貴女たち……どこから?」
「門番、思いっきり寝てたから普通に入れたぜ」
「アイツ……」
「それよりも折角の客なんだから上質なお菓子とお茶でもてなしなさい」
「霊夢はそれ目当てなんだろう?全く礼儀も何もないんだな」
「そうゆう貴女は本の盗難目当て。」
「盗むなんて失礼な。借りるだけだぜ」
「私の本返して!!!」
……今、この時が一番幸せなんですもの。
その後、あの様な夢を見ることは無くなった。
あの夢は「偶然」だったのか?「運命」だったのか?
どうでもいい。
次は……素敵な夢が見れるといいな。