とある侍の漂白剤   作:カツヲ武士

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嫌いな人は読み飛ばし


26話。戦わずに勝つのが最良。兵法書にも書いてある

「・・・大丈夫そうだな。行こう井上さん」

 

「うん!」

 

茶渡泰虎が降伏し、黒崎一護が捕縛され、

四楓院夜一が負傷して逃走した現在。

 

残る旅禍は井上織姫と石田雨竜の二名となった。

 

その二人は現在その辺の死神が着ていた

死覇装を奪い、死神の振りをして懺罪宮を

目指していたのだが、当然彼らの行動は

二番隊と一二番隊によって観測されている。

 

本来ならば、ここで複数の上位席官による捕縛を

試みるところなのだが、すでに捕らえられた

とはいえ、旅禍のひとりである黒崎一護が浦原

喜助の弟子であり、班目一角と阿散井恋次を

倒すだけの実力者であったことや、石田雨竜も

『鎌鼬』の異名を誇る一貫坂慈楼坊を鎧袖一触で

破る実力者であった為に、彼ら旅禍との接触は

副隊長以上の者が当たるよう命令が下されており、

現在、各隊の席官や一般の隊士たちは元々の訓練

内容である『獲物を捕らえる訓練』から、

『獲物を檻に誘導する訓練』へと、その行動指針を改めていた。

 

「こっちには死神がいないみたいだ。少し

遠回りになるけど、潜入作戦なんだから

戦闘は控えめにしたほうが良いだろうね」

 

「うん! 戦わなくて済むならその方が良いよね!」

 

そんな死神たちの方針の変更を知る由もない

二人は、誘導されるままに彼らが用意した檻

の中へと誘導され・・・

 

「戦わなくて済むならその方が良い。確かにその通りね」

 

「「?!」」

 

開けた空間に出た二人に、突如として女性の声がかかる。

 

「誰だ?!」

 

「いや『誰だ?!』って言われてもねぇ・・・侵入者は貴方たちでしょ?」

 

真剣な表情で石田が誰何すると、声の主は

呆れたような声を上げながら、その姿を

彼らの前に現した。

 

「お、女の人?!」

「ちっ(井上さんの前では殺りづらい相手だ)」

 

その姿は女性にしては長身で、亜麻色の髪と

整った表情が非常に特徴的な美女であるが、

何よりも彼女を特徴付けるのは、井上織姫を

超えるほどの胸部装甲だろう。

 

「ま、聞かれたからには名乗りましょうか。

一〇番隊副隊長、松本乱菊よ。ねえ貴方たち。

痛い思いする前に降伏してくれない?」

 

「「ふ、副隊長?!」」

 

相手が女性であることだけでなく、これまで

出会った死神の中で最上位の相手であること

を知った二人は、思わず声を上げる。

 

(ふぅん。死神と違って見た目相応の年齢、ね。

それに、滅却師はともかくとして、女の方は

どうみても戦場に出るようなタイプじゃない。

そりゃ『鎌鼬』も狙うわよ)

 

松本は滅却師の石田への評価を後回しにして

一目で戦士ではない井上に注意を向ける。

 

前に彼らと接敵した一貫坂慈楼坊が、石田では

なく井上を先に狙ったことで、石田から『卑怯』

と罵られたが、戦場に於いて弱い敵から処理する

のは当然の戦法であり、その判断は決して卑怯

と呼ばれるようなものではない。

 

松本からすれば、狙われて困るような弱者を

戦場に連れてきておきながら、狙われたら

被害者面して『卑怯』などと抜かす者の方が

よっぽど卑怯者だと思うし、死神の大半は

そう思うだろう。

 

さらに一貫坂慈楼坊は目の前の若造の青臭い

価値観で、死神として殺されているのだ。

 

まともな死神なら、この二人に嫌悪感を抱くなと言う方が難しい。

 

嫌悪感丸出して二人を眺める松本の後ろに、

さらにもう一人の死神が姿を現す。

 

黒髪黒目で、身長は松本よりも高く、体の

線は細めとも見えるが、鍛えこまれた様子

はその立ち姿からも良くわかる。

 

そして彼を特徴付ける最大のポイントは

左頬に刻まれた69と言う刺青だろう。

 

「ろくじゅうきゅう?」

「(いや、あれはシックスナイ・・・

何を考えてるんだ! 集中しろ!)」

 

数字をただの数字と受け止める井上と、

69が示す数字の意味を考察する石田(ムッツリ)

 

「・・・松本さん。向こうは弓の使い手みたい

なんですから、単身で姿を晒すのは危険ですよ」

 

男も松本と同様に、一目見て井上を戦士では

無いと判断し、注意すべきは滅却師の石田で

あると松本に警戒を促す。しかし当の松本は

あっけらかんとした表情で、返事を返す。

 

「あら? 別にいいじゃない。私に攻撃を

仕掛けて来たらそのまま潰すわよ。

いくらなんでも『鎌鼬』を破ったくらいで

調子に乗られても困るし?」

 

「・・・はぁ」

 

死神で最強の飛び道具使いに与えられる

称号らしい『鎌鼬』であるが、松本に

してみたら副隊長にもなれない未熟者たち

が自分たちを慰めるために自称している

痛い称号でしかない。

 

よって彼女には(飛び道具系って条件付きとはいえアレを最強なんて思われても困る)と言う思いがある。

 

そもそもの話、自分の灰猫は勿論のこと、上司

の少年が使う氷輪丸や、総隊長が使う

流刃若火だって遠距離攻撃が可能な斬魄刀だ。

もっと言えば劈烏(つんざきがらす)が飛び道具

として認められるなら、あれの完全上位互換

である朽木白夜の千本桜はどうなるのか。

 

そんな感じで、松本からしたら『鎌鼬』など

実の伴わない称号を自称して調子に乗る三下

という認識しかない。

 

しかし三下であっても死神である。

 

上位席官の癖に侵入者に負けたのは、まぁ良い。

 

班目一角や阿散井恋次が負けた以上、相手の

実力は確かなのだから、松本だって負ける

可能性が有るのだから。

 

そうである以上、そこに文句を付ける気はない。

 

で、負けたなら殺されることもあるだろう。

虚に負けた死神が殺されるのは当然なので

それについても、文句を言うつもりはない。

 

しかし生殺しは頂けない。

死神としての力を奪うくらいなら、何故一思いに止めを刺さないのか。

 

松本は戦士として、また、死神として石田に

対して隠しきれない嫌悪感を抱いていた。

 

檜佐木も勿論松本の気持ちを理解している。

と言うか『鎌鼬』は彼の部下なのだ。

 

部下が滅却師に生殺しの屈辱を味合わされた

のは業腹だし、こんな予期せぬタイミングで

上位席官を失ったせいで、今後の業務に支障が

出ることは確実である。

 

勿論、生殺しにも不満がある。

 

故に檜佐木の中にある石田に対する憤りは、

松本と同等、否、松本を凌駕していた。

 

自分達に対して降伏を勧告しておきながら

明確な敵意を向ける二人を前にした、

石田はこの時点ではまだ(井上さんを

守りながら殺れるか?)と抵抗の意志を

持っていた。

 

そう、この時点では。

 

「護廷十三隊、五番隊副隊長、雛森桃です」

「同じく、三番隊副隊長、吉良イヅルだ」

「十二番隊副隊長涅ネムと申します。

滅却師の貴方ではなく、そこの少女の情報を

持って来いと言う命により参りました」

 

松本と檜佐木に注意を払っていた石田を

囲むように、三人の死神が現れる。

 

彼らが現れたのは偶然ではない。

 

これは茶渡から侵入者の総数を聞き、残る

旅禍はこの二人しかいないと言うことを知った

京楽が、山本に対して

『全ての副隊長で囲んで確実に終わらせよう』と

提案し、二番隊や十二番隊からの情報と照らし

合わせて情報に誤りがないことを確信した

山本がその提案を認めた結果、差し向けられた

ものだ。

 

まぁ、ネムに関しては少し違う命令も

含まれているようだが、それはそれ。

 

「チッ! 副隊長が三人も増えたかッ」

 

「あぁ、俺はまだ名乗ってなかったな。

九番隊副隊長、檜佐木修兵だ。

俺達はお前らが降伏しない場合は

殺さずに死ぬほど痛い目に合わせる

よう命令を受けている」

 

「69の人もッ?!」

「チッ!」

 

思わず声を上げる井上と、5人の副隊長

に囲まれていることを悟り、井上を守り

ながらの戦闘は厳しいと判断する石田。

 

(抵抗しても殺さない。と言ったな。

それは何故だ? 僕たちが人間だから?

兎に角、殺されないと言うなら井上さんを

ここで置いて・・・駄目だな。

死神の言葉を信じるわけにはいかないし

何より回復役を失う訳にはいかない。

しかしこれは・・・・・・)

 

「石田君・・・」

 

一瞬、石田はここで井上を見捨てることも

考えたが、その場合今後の展望が見えなく

なることに思い当たり、その考えを改める。

 

圧倒的な不利の中、抵抗するか、それとも

降伏するかの葛藤の中、石田と井上の迷いを

感じとった松本は一つ選択を促す為の情報を

提供することを決める。

 

「あぁ、ちなみにチャド?って子は降伏

したし、クロサキって子は捕まったわよ。

で、貴方たちが頼みにしているであろう

四楓院夜一は負傷して逃げ回っているから

助けは来ないわよ」

 

「黒崎君と茶渡君が?!」

 

(黒崎は負けたか。そして茶渡君は降伏?

そう簡単に折れそうになかったが、嘘では

なさそうだ。しかし四楓院夜一? 夜一

さんのフルネームなんだろうが・・・

やっぱり彼女は向こうの知り合い、つまりは

死神だった、か)

 

「わかった。降伏する」

「石田君?!」

 

石田も薄々感じてはいたが、ここで夜一が

死神であることが確定したことは、死神を

憎む彼にとって大きな判断材料であった。

 

(黒崎が抱く「朽木ルキアさんを助けたい」

と言う思いに嘘がないことは分かる。

だがそれに便乗する死神の狙いが分からない

以上、僕が命を賭ける場所はここじゃない)

 

「ふぅん? まぁいいわ。修兵」

 

「了解です。吉良、雛森、捕縛を手伝え」

「「はい!」」

 

松本も檜佐木も、できたら石田を叩き潰したかった。

 

しかし上からの命令は捕縛であったし、

彼女たちは降伏した者を痛めつけるような

真似を好む小物でもない。

 

こうして、己の戦う意味を見出せなかった

石田と、そもそも荒事が苦手な上に黒崎が

捕まったことを知って、抵抗の意志を

無くした井上は死神に降伏することとなる。

 

残る旅禍は四楓院夜一唯一人。

 

しかし死神たちは、今も彼女の後ろにいる

であろう死神の存在を忘れてはいない。

 

かつて数多の隊長格を手玉に取った死神、浦原喜助。

 

これまで尸魂界から逃げ回っていた彼が、一体

何を考えて朽木の娘や旅禍の少年たちに干渉

してきたのか?

 

そして、何の為に盟友とも言える四楓院夜一を

足手纏いと共に送り込んで来たのか?

 

その謎が解明されない限り、死神たちが

油断をすることはないのだ。

 

 

 

朽木ルキアの処刑の日時が刻一刻と迫る中

元二番隊隊長によるラストアタックを警戒

する護廷の死神たちは、万全の態勢を整えて

来たる襲撃に備えるのであった。

 

 

 

 




石田=サンと井上=サン脱落。

他の隊の副隊長たちが出陣してきたので、涅えもんによる人間(死神)爆弾は発動しませんでした。

あれ、普通に仲間殺しですよね?
真面目に任務に当たっている最中の死神を使ったら駄目だと思うの。


護廷のエリートをあんな風に使って
罪に問われないはずがありません。

涅えもんはMADですが、MADだからこそ
迂闊な真似はしないのですってお話。

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