天災兎は平和な世界でISを造りたいようです   作:ライかぐ推し

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もう5月ってま?


天災兎は招き入れたいようです

 

 

「やぁやぁゼロ、今ちょっといいかな?」

 

 扉の向こうからそんな声が聞こえる。いつもの騒がしいあのウサ耳女の声だ。

 定期報告以外であの女が訪ねてくることなど珍しいと思ったが、(言動を除けば)かなり有能な人材のため彼はすぐに返答した。

 

「ああ、入れ」

「よっと」

 

 了承を得た所で、彼女はすぐにその場に姿を現した。

 ただし、正面の扉からではなく、床下からであるが。

 

「……何処から入って来ているんだお前は」

 

 仮面越しに痛くなる頭を押さえ、呆れつつそう呟く。

 何故扉から声がしたのに下から出てきたのか、いつ改造したのかなど聞きたい事は他にもあったが、この女の言動に一々反応するのはリソースの無駄であると最近学習したからだ。

 

「いや〜普通に入って来ても面白くないでしょ?人生ってのは楽しんでなんぼなんだからさ」

「御託はいい。で、何の用だ?通信ではなくわざわざ訪ねて来たのだからそれ相応の理由があるんだろうな」

「そりゃ勿論、確かまだ新入団員って募集してたよね。この子が尋ねてきたら入れて欲しいなってお願いに来たんだよ」

 

 そう言って彼女はUSBメモリをゼロに受け渡す。

 

「珍しいな、お前が兵器以外のことで口を出してくるなんて」

「まぁーね。個人的に興味があるって言うのもあるけど、上手く行けば…………何ていったっけ、あの紅髪の子?」

「カレンの事か?」

「そうそう!その子並みのパイロットとしての才能(ポテンシャル)あるし、頭脳面も君がいない間の指揮を任せられるくらいには優秀そうだよ!」

 

 その言葉を聞き、素直に彼は驚く。

 現在、黒の騎士団は知名度も団員も増加傾向にはあるものの、依然としてブリタニアに対抗するには心許ないという他ない。

 特に頭脳面の問題は深刻だった。

 現在騎士団のNo.2である扇要は優柔不断な気質が目立ち、事務処理はできるものの、作戦指揮などは絶望的である。

 それをカバーできる上にカレン並みのパイロットという戦闘方面にも活用できる駒は是が非でも手に入れたいモノであった。

 また、皮算用ではあるものの、これによって一つ抱えていた問題が解決する見通しができた。

 本来の歴史ではカレンに与えられていた筈の紅蓮弍式だが、現在のカレンには紅葉が与えられており、性能的にも汎用性も紅葉の方が上の事もありわざわざ乗り換える必要が無かったのだ。

 

「じゃ。私は例の手術のための裏工作に勤しむから」

 

 そう言って今度は普通にドアから出て行く女。

 帰る時は普通なのかなど、どうでも良い事を片隅に考えつつ、彼は近くにあったパソコンにUSBメモリを差し込んだ。

 

「…………は?」

 

 そこに記されていたのは最近見たばかりの顔写真と経歴とは名ばかりの彼が受けた非人道的な実験の数々であった。

 その経歴書を隅から隅まで読み込んで思考を整理した彼が再びあの天災を呼びつけたのは言うまでないことであった。

 

 

 

 

 あれから彼は自身の記憶の手がかりを知るであろうKMFのパイロットを探しゲットーへと足を運んでいた所、ひょんなことからあの時一緒にいた女生徒カレン・シュタットフェルト、いや紅月カレンが黒の騎士団のメンバーであると知ることとなる。

 驚くライであったが、彼女が迷いながらも発した言葉に更に心を揺さぶられることとなる。

 

「黒の騎士団に入って欲しい」要約すればそんな事を言われた。

 

 また、カレンがライの事を観察し、信用できる人間だと思えたならば勧誘しても良いとも付け足されたそうだ。

 なのでここ数日カレンはライのことを観察していたことを謝られた。その結果ちょっとしたハプニングなどもありはしたが、概ね信用できる人間だと判断したので勧誘する事にしたそうだ。

 これはライにとって正に渡に船という状況だった。

 自分は記憶の手がかりを探すため、彼らはライという力を欲している。

 どちらにとっても損はない。ならば断る理由などなかった。

 

 それからトントン拍子に話は進み、無事に彼は黒の騎士団の一員となった。

 最初はテロリストのような粗暴な人々の集まりかと思えば意外と気さくで接しやすい人が多かったのには驚いた。

 自分がブリタニア人かも知れないと疑いをかけられた事もあったが、驚くことにゼロ本人がそれを否定してくれた。

 「彼は紛れもなく日本人だ」

 そう断言したことによってその場はなんとか収まることができた。

 本当の顔も声も知らない相手だったが、そこまでして自分を庇ったゼロに恩義を感じるライだった。

 そして衝撃はそこで終わらない。

 黒の騎士団として活動し始めて数日後のこと、突如ゼロに連れられてやって来た先は黒の騎士団のKMF格納庫であった。

 何人か団員がKMFを整備している中、彼はその最奥にまで連れられて来た。

 暗く、何かある事だけはうっすらとわかるものの、殆ど何も見えない。

 ゼロが高く右手を挙げ、指を鳴らすとどこからか複数の光が眼前の闇を照らす。

 明かされた闇の中、現れたのは紅く輝く炎を思わせるようなKMFだった。

 それはよく見るサザーランドとも、黒の騎士団のKMFとも異なる独特の特徴をもち、またそれはまるでライを待っているかのように静かに佇んでいた。

 

「これは紅蓮弍式、キョウトから送られて来た日本製のKMFだ。ライ、次の作戦ではこれに乗って先陣を切ってもらう事になる」

 

 ゼロの言葉に応えるように、紅蓮の輝きが一層強く煌めいたような気がした。

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