Muv-Luv Alternative Plantinum`s Avenger   作:セントラル14

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episode 01

[1997年6月8日 帝国軍白陵基地 正門前]

 

 装甲車に押し込められた俺は状況確認をしていた。一緒に放り込まれた純夏に今日は何年何月何日かを聞き出したところ、「タケルちゃん遂にボケた?」と本気で心配された。バカにされる方がまだマシな程、屈辱を味わったぜ。

心配している純夏曰く、今日は1997年6月8日である。どう考えたって2001年10月22日に飛ぶ筈だったのに、どうして4年も前にずれ込んでいるのか甚だおかしいことだったのだが、それもこれも全て純夏の発言によって消し飛んだ。

 

「確かに今日が2001年10月22日じゃないのは変かもしれないけど、全部タケルちゃんが望んたことだよ?」

 

意味が全く分かりません。ともかく、大暴走する装甲車の中で事情を知っている純夏が説明をしてくれたのだ。

 

「はじめに、私はタケルちゃんが知ってる純夏で間違いないよ。タケルちゃんに分かりやすく言えば"前の世界"の私。まぁ、因果の流入で"元の世界"の私も混じってるけどね」

 

前置きにそんなことを言った純夏は、そのまま話を続けた。

 

「消える瞬間、タケルちゃんは願ったよね? 皆失って得た時間を、自分は役目を終えて香月先生に押し付けるような形で消えるなんて嫌だーって。俺はまだ戦えるんだーって。出来ることがまだあるんだーって」

 

「そ、それは……」

 

あの時、00ユニットである純夏は機能停止していた筈。なのに、何故知っているんだ。俺が光の中、願ったことを。

 

「ま、いいじゃないのさ!! 私もタケルちゃんと同じ願いがあるし、だからこうして一緒に世界を渡ったの。タケルちゃんを助けるために、そして、タケルちゃんが助けるみんなのために」

 

「純夏……」

 

「ま、いろいろ問題が発生してるみたいだけどね。詳しくは香月先生と落ち着いた場所で話すよ」

 

「す、純夏ぁ……」

 

「でも丁度よかったよ。失敗は失敗でも、結果オーライ? ね、香月先生」

 

 今まで純夏との会話に集中していたが、話はずっと聞いていたみたいだ。装甲車を運転してきたのは夕呼先生ではないので、こっちを向いて話を聞いてたみたいだ。ちなみにドライバー姿は見えないが、市街地を爆走中のため全く聞こえない模様。

 

「そーよー? 全く、鑑は白銀の願いを叶えるために、私を巻き込んだわ。横浜基地の桜の木の下で、私は白銀を包んでいたパラポジトロニウム光に取り込まれた。多分だけど、アンタもあの光の中で漂っていたんでしょうね。その間だけ、私もその空間にいた。その時に言われたのよ『こんな終わり、先生も嫌でしょ?』ってね。誰が何のためにそんなことを言ったのかは、その時には分からなかった。だけどあの場には社もいたのよ。社は分かったように『……私は嫌です』って答えた。果たしてそこが終わりなのかは分からなかった。だけど、答えるまでもなかったわね。そうしたらここに居たって訳」

 

 外を見なさい、と言わた俺は、装甲車のハッチを開いて外を見る。そこには見慣れない軍事施設があった。門扉には『日本帝国軍 白陵基地』と書かれている。

 

「ここは横浜基地が建設されるまで私が拠点にしていたところ。まぁ、後で仙台基地に移るんだけどね……。ここの執務室で私は起きた。そして状況を理解したの」

 

「……ループしたことに、ですか?」

 

「そうよ。記憶は保持したまま。状況を確認していたら、血相を変えた社がすっ飛んできて私に報告。私よりも先に目覚めた社が確認を取ってくれていたのよ。そうしたらあら不思議、4年前に遡ってたってワケ」

 

 ケラケラと笑いながら、夕呼先生は俺にあるモノを投げつける。慌てて受け取ると、そこには辞令と共に階級章と衛士徽章が入れられていた。

 

「世の中の女の宿願、若返りを経験させてもらったお礼よ。次いでに、アンタは否応なしに私の元に来るただろうから、先に手を打たせてもらったわ」

 

「先生……でも俺、さっき確認したんですけど、子どもっすよ?」

 

「へーきよ~。表向きは私にスカウトされた天才児って扱いだから。別に今更学校で勉強して訓練兵する気にもなれないでしょ?」

 

「そうですけど……」

 

 辞令は簡単。本日付で国連軍少尉に任官。

 

「それに、アンタにはこれまでの鬱憤を晴らすべく、あちこち駆けずり回って貰うわけよ。そうなれば既に衛士としての技量も実戦経験もある現役衛士で、私の計画を知っているアンタを遊ばせておくわけにもいかないわ」

 

「いやですから俺子ども!!」

 

「聞こえないわ。気合でどうにかしなさい」

 

「科学者が根性論?!」

 

 かなり頭の痛い思いをするものの、横浜基地での夕呼先生とはかけ離れた姿をしている目の前の夕呼先生が、本来の夕呼先生であるかのように思えた。唯我独尊・傍若無人な人であることを、すっかり忘れていた。

 

「まぁまぁタケルちゃん。夕呼先生も気合入ってるんだよ。これまで好き勝手言ってた人たちを叩き潰す気みたいだから」

 

「好き勝手ってまさか」

 

「うん。世界中に"あの爆弾"を落とした後、ラグランジュ点で建造してる跳躍航宙艦で外宇宙に逃げるつもりの人たち」

 

「うげ……」

 

 人類から選別された10万人と共に跳躍航宙艦で地球圏を脱出するのと同時に、地球上の全ハイヴに"G弾"を大量投下することで焦土作戦を立案しているオルタネイティヴ5。俺はそれを目の当たりにしているからこそ、それがどれほど愚かな選択であったのかを理解していた。それと同時に夕呼先生の提唱するオルタネイティヴ4が人類にとってどれほど有益なものであるのかも。

 

「ま、ほぼほぼ私のオルタネイティヴ4も完遂ってところだしぃ。BETAを叩き出す次世代計画を立案するために、発動期間を先延ばしさせながら徹底的に虐めてやるわよ」

 

「いじめっ子の顔してますよ、夕呼先生」

 

「あら、今まで私はいじめられっ子だったのよ? それに、仕返しは当然。やったのならやられることも想定していないとねぇ」

 

 ふふふっ、と怪しい笑みをする夕呼先生を横目に見つつ、純夏の方を見る。さっきまで気が動転したり、自分のことを考えていて気も回らなかったが、ようやく純夏のことを気にすることが出来る。

よくよく見れば、純夏の姿は"俺が前見た時"と変わっていない。そして俺はというと、少々身長が縮んでいた。白陵の制服がブカブカだもんなぁ。筋力は少し落ちているものの、軍人としてなら問題無いレベルだ。元に戻すトレーニングをする必要がありそうではあるのだが……。

 

「というか純夏、身体の方は大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だよぉ~。あ、でもESP能力は残ってるかな? 流石に量子電導脳はないと思うけど、白陵基地に入ったら香月先生に検査してもらうつもり」

 

「首筋のパーティションもないもんな」

 

「うん。ま、タケルちゃん同様に身長も縮んだし、13歳になっちゃったけどね」

 

 暴走装甲車は入場手続きを終えたらしく、そのまま地上施設で一番大きいところへと着けられた。夕呼先生に降りるよう言われ、装甲車から降りる。そのままどこか連れて行かれるのかと思いきや、夕呼先生は装甲車の近くに立ったままだ。

 

「あれ? 行かないんですか?」

 

「あぁ、ちょっとね。ドライバーが降りてこないから」

 

 さっきまでは不思議には思わなかったが、一体誰だったのだろうか。会話内容はかなりオルタネイティヴ計画に関するものだったので、夕呼先生が話すとは思えなかった。それに、俺たちの会話もかなり機密レベルの高いものだったはず。気にしてなかったが、考慮するべくだったかと後悔する。

 

「……お待たせました」

 

「お疲れ様、社」

 

「霞ぃぃぃぃーーーーっ?!?!」

 

 運転席から降りてきたのは、動かしていた自動車からしたら想像も付かない少女だった。というか夕呼先生は何平然としているんですかね。軍法については学んでいるから知っているにしても、この世界の道路交通法はどうなっているんだろうか。

 

「なーに変な顔しているのタケルちゃん。霞ちゃんは国連軍の軍人だから、資格の中に国際特殊車両運転免許もあるんだよ」

 

「んなもの知るかー!!!!」

 

「……乗り物は、一通り運転出来ます」

 

 やれやれと言いたげに純夏が説明してくれるが、確かに記憶の中ではその資格があるのは俺も知っている。しかし、霞では手足が届かなくて運転出来ないのではないだろうか。

 

「……これは私の装甲車なんです」

 

「うそーん」

 

「……うささん号です。専用のパーソナルマークもあります」

 

 霞が指さした先には、先程俺たちが乗ってきたもの、オルタネイティヴ計画の誘致国が装備を提供しているため、帝国軍でも採用されている装甲車。本来は指揮戦闘車ではあるのだが、国連軍用に塗り替えられたカラーリングの上にデフォルメされたうささんのパーソナルマークが書かれている。

 

「社、車庫には別の奴が戻すから、行くわよ」

 

「……はい」

 

 夕呼先生を先頭に、子どもが3人並んで歩く。建物に入ってから、どうも視線を感じる。どう考えても、夕呼先生が子ども3人連れて歩いているからだろうな。

 

※※※

 

[同日 帝国軍白陵基地 国連軍専有区機密区画 香月博士執務室]

 

 夕呼先生の執務室に到着すると、俺たちはソファーに座るように言われた。霞はどうやらやることがあるらしく、執務室まで来ると何処かへ行ってしまった。

目の前には夕呼先生がコーヒーカップを傾けながら、俺たちに説明を始めようとしていた。

 

「さて、アンタたちにこれからしてもらうことを説明するわ」

 

 執務室には書類や本が山のように積み上げられており、整理も部分的にしかされていない。デスクにはパソコンとペンが転がっており、横浜基地の執務室と同じ様子になっていた。

 

「まず白銀。アタシが春に設立したばかりのA-01に入ってもらおうかと思っていたけど、年齢的に問題しかないからパス。しばらくの間は特務兵として動いてもらうことになるわ。それと同時に衛士としての体作りもしなさい。直近だと大陸、確実なのはBETA上陸の時までには戦闘に耐えうるだけにはなりなさい」

 

「了解」

 

 想像通りではあった。俺の利用価値なんてものはそれくらいしかない。しかし、俺の機動特性はこの世界には存在しないものだ。更に、もし夕呼先生がXM3の開発を行うのならば、俺がいなければ完成には漕ぎ着けないはずだ。

 

「次に鑑。アンタは検査、00ユニットの痕跡がないかの調査をするわ。もしなかったとしてもESP能力があるのなら、そのまま放り出しておくことは危険なの。社と共にオルタネイティヴ4構成員になりなさい。どのみち勉強漬けになるけど、00ユニットだった頃の記憶とかあるの?」

 

「ありますよ。ですけど、体感的には他次元の量子電導脳と並列接続しながら、なにかをするっていうのは無理です」

 

「知識は?」

 

「あ、あはは~」

 

「はぁ……社を付けるから、必要知識を全て叩き込みなさい」

 

「りょーかいでぇす」

 

 一通り俺たちへの今後の説明をし終えた夕呼先生に、純夏が手を挙げる。

 

「はいはーい!! 香月先生ー!!」

 

「なに?」

 

「私、衛士になりたいです!!」

 

「はぁーー??」

 

 純夏はそんなことを口走る。俺としては是非とも反対するが、純夏がどうして衛士になりたいのか理由を聞いてからでも遅くない。

 

「ど、どうして衛士になりたいのかね、純夏クン……」

 

「タケルちゃんが何を考えてるか分からなくもないけど、私は嫌だよ!! 絶対ぜったい、ゼーッタイ嫌!! 私は守られるだけじゃ嫌!! タケルちゃん言ってたじゃないのさ。『純夏は俺の半身だ』って。私もそう。だから私はタケルちゃんと同じところに立つ。そして守られるだけじゃなくて守るよ!! 香月先生は私たちをオルタネイティヴ4のために色々なところに連れて行くだろうし、人前に出ることもあると思う。そこできっとタケルちゃんは色々な人の悪意に晒されるハズ。香月先生は覚悟の上だろうし、"やらなくちゃいけないこと"もあるから何とかするだろうからね。大人だし。でもタケルちゃんは違うじゃん。私が願って"こんな世界"に放り出されて、しなくてもいいことして、傷つかなくていいのに傷ついてさ……。きっと、これからもそういうことがあると思う。だからさ、そんなタケルちゃんの横には私が居るの。1人よりも2人なら怖くないよ!!」

 

「純夏……」

 

「はいはい、イチャコラしないの。それで、私としては別にいいけど、そうすると鑑、アンタは訓練兵からよ?」

 

「えぇ~~!!」

 

 ブーたれる純夏が俺に助けを求めてきた。純夏の思いは分かったし理解した。でもやっぱり反対ではあるのだが、純夏はいくら言っても分からないだろうから、仕方がない。もし共に戦場へ行くのなら、俺が守ってやればいいだけだしな。あと、強引に撤退させる。これに尽きる。もし任官したら夕呼先生に言って、純夏は撤退厳命してもらおう。

 そんなこんなで、今後の大方針が確定した。この後は、出来るだけ今話せる内容を話し合い、細かな方針を決めていくことになった。主にオルタネイティヴ4に直接関わる内容について。兵力・資源・人材・資金を視野に入れた大戦略だ。

会議は時間を気にすることなく続いていき、気付けば夜は更けていった。そして、純夏が活動限界を迎えると、一旦会議がお開きとなったのだった。夕呼先生は、間違っていた数式の訂正作業と報告書の作成、論文の執筆等々を始めるらしい。しかし、部屋を追い出されると思ったら『アンタたちの部屋はないわよ? だって、今朝飛び出して来たままだったからねぇ』と、デスクに着いてパソコンを操作しながらそう言うのだ。結局、隣の仮眠室のベッドに純夏を寝かせ、俺は壁に凭れながら寝ることになったのだった。

 

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